Music TO GO!

2023年06月20日

アスキーにLE Audioを実際に試聴したレポートを執筆しました

アスキーにLE Audioを実際に試聴してみましたというレポートを執筆しました。
下記二篇です。

ついにLE Audioに対応したLinkBuds Sの音を聴く、低遅延には魅力あり
https://ascii.jp/elem/000/004/141/4141415/

なぜ、LinkBuds SのLE Audio対応はベータ版なのか? ソニーに確認した
https://ascii.jp/elem/000/004/140/4140465/
posted by ささき at 08:26 | TrackBack(0) | ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヒマラヤDAC搭載の音質優先完全ワイヤレス「Svanar Wireless」レビュー

Svanar WirelessはHIFIMANが開発したANC搭載の完全ワイヤレスイヤフォンです。ANC搭載ながらも、あらゆる点で音質優先が徹底されているのがポイントです。本日6月20日に発売が開始され、価格は79,860円(税込)です。

IMG_0485_filtered_s.jpg

特徴

1 R2R DAC「ヒマラヤ NANO」とバランスアンプを搭載

普通の完全ワイヤレスイヤフォンではオーディオ回路がBluetoothの通信チップに統合されているために音質はそれなりということになります。
このSvanar WirelessではBluetoothの通信チップとは別に独立したDAC回路とアンプ回路を搭載することで、その制限を超えてより本格的な音の再生が可能です。HIFIMANでは過去にTWS800というこうした設計の先駆的な完全ワイヤレスがありましたが、その延長上にある製品といえます。

スクリーンショット 2023-06-18 7.51.31_s.jpg

さらに特徴的なのはそのDAC部分にHIFIMANが独自開発したヒマラヤDACを搭載していることです。これはヒマラヤNANOと呼ばれるさらなる小型版を開発しているようです。ヒマラヤDACとはHIFIMAMが独自開発したDACで、R2RラダーDAC設計を採用したいわゆるマルチビットDACです。これはPCMの再生時にデジタルっぽさを低減するというメリットがあります。ヒマラヤDACは高性能DAC ICであるPCM1704並みという高音質を実現しただけではなく、他の高性能DAC ICの数十分の一という低消費電力を特徴としているのもポイントです。
また独立したアンプ部分はなんとバランス出力が採用されています。このことにより一層力強い再生が可能となります。
つまりイヤフォンの中に小さなDAC内蔵ポタアンが入っている様なものです。しかもそれがR2R DAC、バランス駆動アンプというマニアックな仕様というわけです。この辺はマニア市場で好評を得ているHIFIMANらしさ全開と言えます。

2 HIFIMAN独自のトポロジー振動版を採用

Svanar WirelessではDACやアンプの様なエレクトロニクス部分だけではなく、音響部分でもHIFIMAN独自のトポロジー振動版を採用することで高性能化が図られています。トポロジー振動板とはHIFIMAMが独自開発した振動版の技術名称です。

スクリーンショット 2023-06-18 7.51.14_s.jpg

振動板上にナノサイズの粒子をさまざまな形状やパターンにした層を組み込むことで、これらのナノサイズコーティングが振動版の動きを正しくチューニングすることができ、そのためドライバーの音質の最適化ができるという技術です。つまりナノサイズの粒子で振動板の動きを正しくコントロールすることができるというわけです。

3 ANCと外音取り込み機能を搭載

Svanar Wirelessでは音質だけではなく、アクティブノイズキャンセリング(ANCモード)と外音取り込み機能(トランスペアレント・モード)も搭載されています。これらは左ユニットのボタンを長押しすることでモードを変更させることができます。
ANCモードはANC ディープノイズキャンセリングと呼ばれていて、最大で-35dBのノイズ低減効果があるとのことです。

4 HIFIモード搭載

面白いのはアクティブノイズキャンセリング・モード、トランスペアレント・モードの他に音質優先のHIFIモードが搭載されていることです。
このHIFIモードのときにはANCモードよりも再生時間が短くなるというのが音質優先の製品らしい特徴です。Svanar Wirelessはトランスペアレント・モードの時に約7時間、ANCモードの時に6時間、HiFiモードの時に約4時間の再生が可能です。
おそらくはHIFIモードの時にバランス出力になるのではないかと思いますが、ここは詳しくはわかりません。

5 人間工学的なデザイン

Svanarとはスエーデン語の白鳥を意味する言葉のスヴァナールから来ています。Svanarは白鳥という意味で、HIFIMANでは形状が白鳥を模したイヤフォンをSvanarと呼んでいるようです。フェイスプレートはカーボンファイバーで反対側はABS樹脂製です。有線のSvanarは真鍮製ですが、これはワイヤレスで電波を通す必要性からでしょう。

スクリーンショット 2023-06-18 7.52.00_s.jpg

Svanar Wirelessはたくさんのエレクトロニクスが満載されているからか多少大柄なシェルのサイズなんですが、この白鳥を模したような人間工学的なデザインにより装着感を向上させています。充電ケースもユニークで未来的な造形がなされています。ケースは本体を3回分充電することができます。

IMG_0927_filtered_s.jpg
パッケージ内容物

この他の特徴としてはBluetoothのコーデックとしてはSBC、AACに加えてLDACにも対応しています。

* インプレ

製品を手に取るとまずケースのユニークな形状に感心してしまいます。まるでSFの小道具のようです。本体もユニークな形状で大柄な回路とかドライバーが詰まっている感じがします。ただし軽量でユニバーサルイヤフォンのような曲面が耳にぴったりフィットすることで装着感は快適です。

IMG_0481_filtered_s.jpg  IMG_0483_filtered_s.jpg

操作はタッチコントロールで、フェイスプレートの四角い部分をタップすることで行います。タップするたびにピッとトーンが出るのでわかりやすく使用ができます。
ANCや外音取り込みのモード切り替えは左ユニットを3秒長押しで切り替えができます。ANCを電車内で使用するとガタガタという騒音はスッと消えてゆきますが、車内アナウンスは聞こえています。他のANCと比べてそう劣る様でもないように思います。音質優先の完全ワイヤレスではありますが、ANC機能も思ったよりも良く効く感じです。外音取り込みはレジで使ってみると、AirPodsみたいに強調されるような感じではないが、自然に使える感じです。
HIFIモードと他のモードではあきらかな音質差があります。またANCオフでも地のパッシブノイズ低減でわりと音は低減できます。そのため、基本的にはHIFIモードで使うことをお勧めします。音楽は基本的にHIFIモードにして電車内で本を読みたい時などにANCにすると良いかもです。

IMG_0486_filtered_s.jpg  IMG_0488_filtered_s.jpg

音質は端的に完全ワイヤレスイヤフォンとしては前例がないほど高音質です。特にアナログ的で豊かな高性能オーディオを思わせるようなサウンドが感じられ、とても強い力強さをも感じます。これはR2R DACとバランス回路が効いているからでしょう。完全ワイヤレスとしてはちょっと驚くほどで、思わずケーブルでDAPに繋がっているんじゃないかと錯覚して手が動くほどです。
楽器音はとても細かい音まで解像する感があり、音場の立体感も包み込まれるように感じられます。帯域バランス的には低音重視で、低音が太く豊かで音のスケール感があります。しかしDACやアンプの効果なのか、低音はタイトで歯切れも良いのでコンシューマー的な緩んだ低音の強調感ではありません。しっとりとしたジャズヴォーカルものを聞いていてもそうベースが誇張した違和感はないので普通に聞けるレベルで盛り上げている感じがあり、本当に高性能DAPが耳に詰まっている様な音の制御の巧みさが感じられます。低音が太く豊かで広がりもあるので音にスケール感があります。
このように音傾向はフラットではなく低域が強調されたサウンドですが、もともと回路と一体型なので様々なDAPに合わせる必要はないので、上手に味付けがなされているといえるかもしれません。
またANCは音が出てるのと同じ振動板を動かして逆位相作るのであまりいいことではなく、特に低音再現に影響するとも言われています。そういう意味で低音に強いサウンドにしたのは差別化という点でもありなのかもしれません。

IMG_4448_s.jpg

楽器音はとても細かい音まで解像する感があり、音の立体的な広がり方も気持ちよく包み込まれるような感じで立体的な広がりです。エレクトリカとか曲によっては音が自分の周りを飛び回るように聞こえる感じもします。完全ワイヤレスではあまり味わったことがないほどのレベルです。音が絡み合うような複雑な曲で真価を発揮します。
ヴァイオリンの音では響きの余韻が感じられ、音に厚みがあって、より耳に近く感じられます。少し前列で聞いている感じです。声自体は明瞭感があってはっきりと聞こえて、歌詞もよく聞き取れます、ここはさすがにDACの解像力の高さでしょうね。
パーカッションやドラムのアタックの叩きつけるような鋭さも完全ワイヤレスではおよそ聴いたことがないレベルです。アタック感があるのでロックにも良いです。また細かい音を再現するのでクラシックやジャズトリオにも向いています。

IMG_4453_s.jpg

他にもDACが独立内蔵されているTWSがありますが、Svanar wirelessはDACもさることながらアンプが強力な気がします。それがこの豊かな音鳴りと空間表現の元になっていると思います。そして楽器音がきつくなくアナログ的な感じがするのはヒマラヤDACの効果ではあるでしょう。
AirPods Pro2に比べるとかなり音質は普通に据え置きのオーディオ機器で聞いているように感じます。比較するとAirPods Pro2の音はやはりコンシューマデジタル機器の音で、かなり薄く軽く感じられます。AirPods Pro2は化学調味料で味付けした音で、Svanar Wirelessは自然のダシで味付けしたオーディオ機器らしい音とも言えます。
HM800はハイインピーダンスドライバーという点にポイントがあって、ゲインが大きすぎた気もするけど、Svanarは欲張らないで自然に鳴っている感じです。

Main.jpg


例えると普通の完全ワイヤレスはiPhone直差しの音、これはDAC内蔵ポタアンを通した音。一般的なスティックDACよりも広がりの点で優っている。完全ワイヤレスは仕組み上元々モノDAC・モノアンプですし、さらにバランスですからね。
楽器音の解像力と滑らかさはDACの良さ、空間表現と厚みはアンプの良さかもしれません。

まとめ

マニアックな製品だけど思ったより普通にANCイヤフォンとして使える。ポケットに入れやすさ、外音モードへの切り替えとかもう少し改善
音が良いのにケーブルもなにもないので違和感がある。
まるで上質のDAC内蔵ポタアンと高性能イヤフォンが耳の中に詰まっている不思議な感覚さえ覚えるような、大変音質に優れた完全ワイヤレスイヤフォンだ。
R2RはPCMに強いのですがDSDに弱いという欠点もあります。しかしBluetoothワイヤレスの場合にはこの欠点は問題になりませんので、完全ワイヤレスにはとても向いているのがヒマラヤDACの利点がフルに発揮されている。
posted by ささき at 07:00 | TrackBack(0) | __→ HiFiMan HM-901, 801 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする