iFi NEO StreamはiFiの中級機であるNEOシリーズとしてはNEO iDSDに次ぐ二作目であり、機材の性格としてはZEN Streamのようなネットワーク対応機でそれをさらにグレードアップさせたものと言えます。またZEN Streamはデジタルのみを出力するトランスポート製品でしたが、NEO StreamはDACを内蔵しているいわゆるネットワークプレーヤーです。もちろんデジタル出しも可能です。
標準的な小売価格は198,000円(税込)、発売日は9月26日。初回100セット限定でNEO Stream+NEO iDSDバンドルセットが297,000円で提供されています。
メーカーホームページ
https://ifi-audio.jp/neo/neo_stream.html
* 概要
端的に言うとNEO Streamは音の上流となるプレーヤー機材であり、NEO iDSDのようなDACやアンプにデータを渡す役割を持った製品です。
NEO Streamの場合にはストリーミングやDLNA、Roonなどを駆使してネットワーク経由で音源を取得するだけではなく、自分に接続したハードディスクも音源にできるなど多彩な機能を有しています。さらに標準でネットワーク入力を光デジタルに変換できるコンバーターが付属しているなどiFiらしいユニークな個性も光ります。また出力に関してもデジタル出力もアナログ出力も可能で、HDMIでのI2S出力(いわゆるPS Audio方式)にも対応するなどハイエンド機並みの対応が可能です。NEO StreamはPCMは32bit/768kHzまで、DSDはDSD512までのフォーマットに対応しています。
ハードウエア的にはラックよりはデスクトップに置くのに適した筐体で、縦置きも横置きも可能となっています。また液晶ディスプレイが設けられて縦横置きでの回転に対応しています。アルミ製の金属筐体はNEO iDSDとほぼ同じデザインです。
NEO Streamの中身はほとんどコンピューターであり、高機能を実現しています。内部にはクアッドコアのARMプロセッサーがLinux OSを動作させています。iFiの強みの一つはハードや回路設計の他にソフトウエアに長けていると言う点です。ポータブル製品ではXMOSの実装の巧みさにそれを見ることができますが。NEO Streamでは存分にそれが発揮されていると言えます。
* 特徴
1 豊富な入出力
まずNEO Streamは入出力の種類が豊富です。
入力においては、
●WIFIは802.11a/b/g/n/ac対応デュアルバンドWi-Fi(2.4GHz/5GHz)接続。(384kHz PCM、DSD256以上は、安定した強度の高い5GHzのWi-Fi接続が 必要です)
●LANはRJ45端子、M12端子、光ファイバー端子搭載
●USB-A x 2, USB-C x 1 (サービスアップデート用USB-C)
出力においては、アナログ出力とデジタル主力が可能です
●アナログ出力はRCAシングルエンド、4.4mmバランス端子
●デジタル出力はI2S-HDMI(いわゆるPS Audio方式) (PCM768kHz/DSD512対応)、USB-A(PCM768kHz/DSD512対応)に加えてS/PDIF同軸, 光角、AES/EBU (PCM192kHz)も対応。
つまりPCM768kHz/DSD512まで対応したければUSBかI2Sが必要です。
2. さまざまなネットワーク規格に対応
NEO StreamはDLNA、Roon、AirPlayなど一般的なネットワークプロトコルの他にTIDALなどストリーミングサービスにも対応し、マニアックなNAAや独自のアプリにも対応しています。ここまで対応されている機材は少ないでしょう。
さらにこれらはAIO(All-in-one)という特定のサービスを意識しないで受けられるモードと、そのサービスだけ受けて音質を高められる「排他モード」が用意されています。つまりRoonモードにしていると音質は高められますがDLNAは受けられません。DLNAを受けるためにモード切り替えが必要です。AIOにしていればモードを切り替える手間はありません。(ただしAIOでも一度には一つのサービスのみ)
●Roon Ready
海外のデファクトスタンダード的な音楽再生ソフトウエアであるRoonにネットワークで対応できる認証を受けた機器のことをRoon Readyと言います。日本でよく使うDLNAとは異なったものです。
●DLNA/UPnP/OpenHome
DLNA/UPnP対応のソフトウエア(BubbleUPnP、mconnect、Audirvanaなど)が使用できます。
●TIDALとSpotify connect
それぞれのアプリケーションから直接ストリーミングすることができます。(TIDALは国内では純正アプリはありませんが、さまざまなアプリに組み込まれてます)
●Apple AirPlay
アップル機器から簡単にストリーミング再生ができます。
●HQPlayer NAA(Network Audio Adapter)
NEO StreamはSygnalist HQPlayerと連携し、NAA(Network Audio Adapter)として動作させることが可能です。
●Stream-iFiアプリによるローカルストレージからのストリーミング再生
iFiの「Stream-iFi」アプリは、NEO Streamの初期設定を支援するシンプルなツールで、 NASなどのローカルストレージからストリーミングを開始することができます。
3 標準装備の光アイソレーション
有線ネットワークに接続する際にNEO Streamでは一般的なRJ45端子に加えてオプティカルLANという選択肢があります。この目的は光を使って電気的なノイズの絶縁をすることです。
このためになんと標準でOptiBox(iFi特製のLAN/光 ファイバー変換器)というメディアコンバーターが付属しています。普通こうしたアクセサリーは後付けで購入するものですが、そうすると相性問題に悩まされることになります。標準でついてくるのだから単に接続すればよいだけ、簡単です。
有線のRJ45端子をOptiBoxに接続して、NEO StreamにはOptiBoxから付属の光ケーブルでNEO Streamに接続するわけです。
4 高機能DAC搭載
NEO StreamではZEN Streamとは異なり、バーブラウン製DACチップをベースにしたDAC回路を搭載しています。これまでのiFiを踏襲したPCMとDSDは別々 の経路を通るトゥルー・ネイティブ・アーキテクチュアを採用しています。DACとしては32-bit/768kHz、DSD512対応でMQAフルデコード対応です。
DACとしてもおまけではなく、きちんとした設計がなされているのがわかります。また音作りも後で書きますがきちんとなされているようです。
5 iFi技術の踏襲
NEO Streamはアナログ出力の時は4種類のデジタルフィルターも搭載し ています。(Bit-Perfect、GTO、Minimum Phase、Standard)
特にGTOはiFiらしい特徴です。もちろんXMOSが搭載されていてiFi独自の最適化がなされています。
USBポートは入力、出力ともにiFi独自のANC II(Active Noise Cancellation II)を採用し、 同様にS/PDIF出力はiPurifierテクノロジーを搭載しています。
またNEO Streamには、ANC II技術により他 の類似機器よりも大幅にノイズを低減したという、iFiのACアダプターiPower IIが同梱されています(単売価格:14,300円[税込])。
この他にもたくさんiFiらしさが満載ですが、最大の継承品はマニアック・マインドでしょうか。
* 実機インプレッション
実際に実機を使用してみました。WIFIでネットワークに接続して、Roonでデスクトップのヘッドフォンアンプに接続するシステムをイメージしています。アンプにはA&K ACRO CA1000を使用しています。
本体はスリムですが、ずっしりと重い印象です。同梱物としてアクセサリーが豊富です。中でもメディアコンバーターが光りますね。ACアダプタが添付品にしてはケーブルの質も本体もなかなか質感良いもの(iPower II)なのも特徴的です。
操作は電源オンすると液晶にiFiマークが表示されてから開始できます。ブートしている感じが、中にコンピュータが入ってるのを感じさせますね。2インチTFTディスプレイもオーディオ信号に干渉する電気的ノイズを発生させないよう配慮したSilentLineデザインを採用しています。
電源ボタンの隣がモードボタンで、モードボタンを押下した後にボリュームを回すことで設定を行います。ボリューム自体も押し込んでボタンとして機能します。
設定に関しては例えばWiFi設定は本体をホットスポットモードにしてスマホを本体のWiFiに接続すると、スマホが操作画面になります。ホットスポットモードとはNEO Stream自体がWIFIホストになるモードです。
もう少し具体的に書いていくと、まずモードボタンを押して設定(歯車マーク)までボリュームで選択。AIOになっていることを確認。なっていなければボリュームボタンを押し込んでサブ選択モードにしてAIOにします。
もう一度モードボタンを押してボリュームで二重円マーク(ホットスポットモード)までボリュームで選択、ここでボリュームを押してサブ選択モードにしてボリュームを回してONにする。再度ボリュームボタンを押す。すると液晶の下でipアドレス表示が出てきます。ここでスマホのWifi選択画面を見るとifi-streamerというネットワークが見えるのでそれに入ります。
スマホのブラウザでhttp://192.168.211.1を入力します。するとスマホで設定画面が出てきます。
このネットワーク設定で自分のルーターのネットワークを選んでパスワード入れて接続すると、本体もこのルーターに繋がるモードに自動的にリブートします。(つまりホットスポットモードも終了)
NEO Streamを排他モードでRoon Ready専用機にしたい場合にはモードボタンからボリュームで設定、ボリュームボタン押しでAIOでなくRoon Readyにして再度ボリュームボタンで確定します。操作性は喚くないですが、慣れが必要かもしれません。また一度設定してしまえばあとはあまり変えることはないでしょう。
実際にRoonで使用してみます。信号経路は以下の通りです。
Windows PC(Roonコアと音源)→iFi NEO Stream (Roon Readyモード)→アナログ(RCA)とデジタル(光)→CA1000
PC側の設定は、Roonを立ち上げてsetupを押してaudioを選択、Roon readyの項にiFi NEO Streamが見えます。これをenableします。Audio zoneでNEO Streamを選択します。
ちょっとすごいのは小さな画面にアルバムアートが表示されるです。意外と綺麗で使えそうです。RoonはiPhoneのRoonリモートアプリで操作しています。
ヘッドフォンとしてはデスクトップタイプのAK ACRO CA1000にゼンハイザーHD800を繋いでいます。ベースはフラットでニュートラルな音のはずです。
まずアナログ出しの音はiFiの音に近いと感じます。ケーブルはNEO STream付属のRCAアナログですが、音質は優秀です。滑らかなアナログらしい音で音楽的に気持ち良く感じます。ニュートラルで誇張感は少ないですね。音の広がりもとても良い感じです。iFiらしい誇張感の少ないニュートラルな音です。高域は伸びやかで、低域も量感があってタイトで引き締まっています。スピード感があってテンポの早いロックを聴いても気持ちが良く、声も明瞭感が高いのでヴォーカルもはっきりと聞き取れます。
なかなかNEO Streamの内蔵DACの音質性能は高いと思います。アナログ出しはエージングをきちんとしてケーブル等を良いものにすればかなり追い込めると思うポテンシャルのあるサウンドだと思います。
アナログの時はデジタルフィルターで音を変わるのもiFiの特徴です。minimumは滑らかで良いですが、iFiオリジナルのGTOにすると一層歯切れの良い鮮烈な音になります。これは機器の性格や好みで選べるでしょう。
Roonからのシグナルパス
デジタル出しの場合はかなり生々しい音でDAC側の解像力をうまく引き出しているように思う。楽器音の歯切れが良く途中でのジッターも低く抑えられているように思える。デジタル送出の品質は高いと思う。
とてもSN感が高く楽器音の再現が鮮明に聴こえます。CA1000のDACがノイズ低いこともありますが、背景が黒く透明感も高いですね。おそらく光アイソレーションでRJ45で入れるとかなりSN感は向上すると思います。
手持ちのDACを活かしたい人はデジタル接続を選ぶと良いでしょう。
箱出しで聴いてエージング無しだし、レビュー用に高級ケーブルを使ったわけではないが、アナログ、デジタルともにかなり満足感の高い音が聴けたと思います。機器としてはどちらかというとデジタルがメインですが、アナログもおまけというレベルではありません。内蔵DACもかなり主役級のできです。
アナログ出しでは滑らかなアナログっぽく、デジタル出しでは(特に光だと)デジタルっぽい先鋭な音になるのが面白いんですが、たぶんそう考えて設計していると思います。デジタルの音をもう少しアナログっぽくしたい人は同軸デジタルケーブルを使用すれば良いでしょう。
* まとめ
NEO Streamは多様化された現在のオーディオ環境において、極めて柔軟に組み込むことのできるプレーヤー製品ということができます。古い純粋なDACやアンプを今のストリーミングやRoonやらといった中に柔軟に組み込めます。
音質も素晴らしいもので、中級機の価格帯でハイエンド機並みの機能を持っています。またHQ Player対応や光アイソレーションの標準装備などマニアックな側面がiFiらしい点でもあります。この価格帯でネットワークプレーヤーを欲しいと思っている人にとっては見逃せない機材となるでしょう。
Music TO GO!
2022年09月29日
2022年09月28日
アスキーに「Headphone 3.0とは? Ear OS搭載のヘッドホンが登場し、機能をユーザーが選ぶ時代が来る? 」を執筆
アスキーに「Headphone 3.0とは? Ear OS搭載のヘッドホンが登場し、機能をユーザーが選ぶ時代が来る? 」を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/106/4106457/
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2022年09月21日
Roon 2.0登場
待望のRoon 2.0が登場しました。
https://blog.roonlabs.com/introducing-roon-2-0-and-roon-arc/
内容は端的に家の外でリモートが使えるRoon ARC(アーク)アプリ、アップルシリコンネイティブサポートなど。機能追加はまだ継続するとして1.8も続いてサポートするそう。
最低条件がWin10/11、mac 10.15となっています。
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2022年09月08日
AppleがAirPods Pro 2とiPhone 4を発表、Bluetooth 5.3の採用を確認
本日AppleがAirPods Pro 2とiPhone 4を発表しましたが、
それぞれLE Audioの対応に必要なBluetooth 5.3の採用を確認しました。
LE Audioではアイソクロナス転送をサポートするためにBluetooth 5.2以上の搭載が必要です。
iPhone 14
https://www.apple.com/iphone-14-pro/specs/
AirPods Pro 2
https://www.apple.com/shop/product/MQD83AM/A/airpods-pro
ただしLC3のサポートおよびLE Audioの高レベルスペックの実装は不明なのでLE Audioの対応はまだわかりません。
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https://www.apple.com/iphone-14-pro/specs/
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https://www.apple.com/shop/product/MQD83AM/A/airpods-pro
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「Android 13のオーディオ機能を確認、本命の空間オーディオ、LE Audioはこれから」の記事をアスキーに執筆しました
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https://ascii.jp/elem/000/004/104/4104258/
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「Astell&KernとCampfire Audioの独創的なコラボ、「PATHFINDER」を聴く」の記事をアスキーに執筆しました
「Astell&KernとCampfire Audioの独創的なコラボ、「PATHFINDER」を聴く」の記事をアスキーに執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/099/4099239/
https://ascii.jp/elem/000/004/099/4099239/