Astell & Kern 「AK HC2」はA&Kが開発したスティック型DACです。AKとしてはAK PEE51(AK HC1)の後継機となります。AK HC1とは異なりアダプターの標準添付によりiPhoneのライトニング端子にも対応しています。
スティック型DACは最近4.4mmバランス対応のモデルが増えてきましたが、HC2も4.4mmバランス端子に対応しています。4.4mm対応スティック型DACは軽量なDAPの代替として使うこともできますが、例えばフラッグシッブDAPを4.4mm端子のハイエンドイヤフオンで聴いていて、ちょっとYoutubeの映像を見たいと思った時にそのままスマートフォンに接続することができるという便利なアダプターとしての役割も兼ねていると思います。
HC2は2022年6月17日(金)発売で、価格は税込 29,980 円 と手ごろな点もポイントです。
https://www.iriver.jp/products/product_226.php
* 特徴
まずHC2は4.4mm5極バランス出力搭載という点がポイントです。 GND接続された5極バランスに対応しているのはイヤフォンを接続している時ではなく、ラインアウトとしてアンプに接続する時に意味を持ちます。このためPCと他の4.4mm対応ヘッドフォンアンプとの接続にも便利に使えると思います。ちなみにHC2から明記されてますがGND接続は以前のAKの4.4mm対応機種は同じだそうです。
HC2はコンバクトですがハイパワーで4Vrmsもの高出力が可能です。この点ではノートPCに接続してヘッドフォンで使うのにも向いているでしょう。
AK HC2はコンパクトながら本格的な回路設計が行われ、CS43198を左右別にAKオーディオプレーヤーのようにデュアルDAC搭載しています。またAKオーディオプレーヤーにも使用され、電源変動を抑制して安定したシステムとオーディオ性能を実現するテーラード超小型タンタルコンデンサーを搭載しています。L/Rセパレーションも驚異的とカタログにありますが、実際に音場感が素晴らしいのを感じる点も音質のポイントです。
そして最近のAKオーディオプレーヤーの流れをくむ様に、徹底したノイズ低減も図られている点もポイントです。機器に直接接続されたUSB端子側にDACを配置するのではなく、リアオーディオ出力構造を採用することでノイズ低減をしています。HC2ではケーブルは外せませんが、これもより接点を少なくすることでノイズ対策を行った結果と言います。ケーブル部にはデュアルノイズシールドケーブルを採用してノイズ低減を果たしています。
この辺にも徹底した低ノイズ化へのAstell & Kernの最近のこだわりが現れていると思います。デュアルDACにノイズレスと小さくてもきちんとAstell & Kern製品であるということです。
使用は簡単でスマホやPCに挿すだけで使えるプラグ&プレイです。Android スマートフォン及びタブレット PC、Windows10/11 および Mac OS の PC、iOS デバイスなどに対応しています。入力は最大PCM 368KHz/32bit、DSD256のネイティブ再生に対応しています。なおAndroidでは専用のアプリがあるということです。
またAK HC2はRoonチームによる「Roonテスト済みデバイス」です。Roonテスト済みデバイス(Roon tested device)というのはRoonのUSB DACに対する認証規格です(ネットワークデバイスの規格はRoon Ready)。これはつまりPCと組み合わせて使用することも前提とされているということです。
* インプレッション
箱もしっかりAstell&Kernらしいパッケージングがなされています。筐体は値段のわりにソリッドでしっかりしているという印象です。ケーブルの質も良さそうですね。
AK HC2のデザインコンセプトは、"Slope"です。パワフルな性能を象徴する六角柱形状のアルミボディに、斜めに走るスロープがデザインのポイントということで、Astell & Kernのアイディンティティをも象徴しています。
ボリュームもボタン類もなく、シンプルに徹しているのが印象的です。機能を求めず音に徹した質実剛健な感じですね。約29gと軽いのでスマホにぶら下げても負担になりにくいと思います。
試聴はiPhoneにアダプターを付けて行いました。イヤフォンはAK ZERO1に4.4mmバランスケーブル「AK PEP11」を使用しています。このPEP11はなかなか優れたケーブルで他のイヤフォンに使用してみてもなかなか高音質です。
聴いてみると、まず音場がとても広いのに驚きます。空間オーディオの仕組みはないけどナチュラル立体オーディオみたいな感じ。次はピュアな音で透明感がとても高いということですね。音質レベルはずっと高価なDAPと遜色ないと思います。特に音場の広さと透明感はかなり良い。
パワーはかなりあって、どちらかというとダイナミックとか中低感度向きに感じます。高感度IEMだと少しボリュームの余地が少ないですが、それでもホワイトノイズは少ない感じです。ゲイン切り替えはあった方がよかったかもしれません。AK ZERO1はすこし低感度なのでHC2とちょうど良いと思います(ボリューム位置真ん中くらい)。たぶんもう少し低感度のヘッドフォンでも十分ならせるでしょう。
帯域バランスでは誇張感が少なく、その点でもAK Zero1と相性が良いですね。楽器音もシャープで自然でAKらしい素直で高解像度な音です。
DITA Perpetuaでもかなり良かったです。ダイナミックには向いてますね。ダイナミックイヤフォンだとバランス駆動らしい力感のあるパンチが気持ち良いと感じます。
音の良さは3.5mmを入れないで4.4mmに割り切ったところも音に余裕があるせいかもしれません。
* まとめ
AK HC2はAKらしいデザインでAKらしいサウンドが楽しめるスティック型DACです。Astell & Kernが気になっていた学生さんなどのMyファーストAKにもいいと思いますね。手軽な価格でコスパがとても高いと思います。
パワーがあるのでノートPCに使って平面型ヘッドフォンにも向いているかもしれません。いろいろな使い出のある高コスパのスティック型DACを探していた人にオススメです。