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2022年02月11日

高いコストパフォーマンスの平面型、HIFIMAN Edition XSレビュー

HIFIMAN EditionXSはHIFIMAN得意の平面磁界型ヘッドフォンで、2015年に発売されて性能の高さで話題となったEdition Xのアップグレードモデルです。
開放型の平面磁界型のヘッドフォンで、静電型ではないので独自の静電型ドライバーのようなヘッドフォンアンプは必要ありません。ただし後に述べるようにかなり本格的なヘッドフォンなので、普通のヘッドフォンアンプを推奨します。
価格は59,950円(税込)で、発売は2月11日からです。

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EDiton XSは外観のデザインからわかるように、HIFIMANの製品系列では図のようにEdition 1000の流れを組む平面磁界型のメインストリーム上にあります。直接的にはEdition Xの後継ですが、実質的にはAnanda同等ですから、それがさらに安くなったものと言うこともできます。

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Edition XSでは主に二点の大きな改良が加えられています。

1. HIFIMAN独自のステルスマグネット技術

従来の平面型ヘッドフォンにおけるマグネットはマグネット自体が回析減少で空気の流れを乱してしまい、音質を劣化させてしまいます。Edition XSでは特殊形状の「ステルス・マグネット」を採用して、空気の流れをあまり乱すことなく透過させることで音質劣化を防いでいるということです。つまり透過的なエアフローを、見えないステルスに例えているわけです。これによって歪みの少ない、ピュアでハーモニーを阻害しない音楽再現を実現しています。
下の図を見てもらうとわかりますが、従来のマグネットは四角く、ステルス・マグネットは丸くなっています。回析というのは波が回り込む現象を言います。回り込みが多いということは直進する成分が減っているということですので、これによってエアフローが最適化されているということでしょう。

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2. HIFIMAN独自のNEOスーパーナノ振動板

この新しいNsD振動板はSusvaraなどの高級モデルのために開発された技術でNEOスーパーナノ(NsD)振動板は以前よりも75%薄く、より歪みのないハイスピードサウンドを提供できるというものです。
HIFIMANはAUDEZEと並んで平面磁界型ヘッドフォンのパイオニアのひとつですが、こうした技術的な蓄積が生かされているということですね。

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* インプレッション

振動板の大きさを最大限にとるための楕円形のハウジングは本格的で大きな感じを受けますが、持ってみると意外と軽く感じます。実際に装着してみると側圧の柔らかさもあって長い時間つけていても快適な感じをうけます。

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音を聞くとすぐにDeva等とは大きく音が違うのに気づくことでしょう。ひとつは音質がよりハイエンドの平面型の音に近いということと、周波数特性がよりフラットでニユートラルな音造りがされていることです。つまりハイエンドに近い音であり、コンシューマモデルよりもよりプロっぽい音造りがなされているわけです。
その分で能率は低く、スマホだとぎりぎり音量が取れるくらいなのでヘッドフォンアンプ推奨です。試聴ではChord Hugo2で聴きました。

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音の印象は透明感がひときわ高く音空間が立体的に広大と感じられます。解像力が高く、ハイスピードで静電型っぽい平面磁界型の良さを味わえるような高いレベルの音質です。価格に対しての実力は相当高いと言えるでしょう。

音傾向はニュートラル・フラットで色付けも少ない感じです。音が遠すぎずにあまり客観的になりすぎないので、モニターというよりは多少リスニング寄りの音に聞こえます。
周波数特性はフラットで密閉型ダイナミックに慣れてると低音は一見軽めに感じると思います。ただし超低域はかなり低い方まで沈んでいてサブベースも含んだ低域の量感はけっこうあります。高音域はベルの音は鮮明だがきつさは少ないので良くチューニングされてるか特性が良いと思います。楽器音は澄んでいて歪みが少ない感じです。かなり自然なワイドレンジ感がありますね。
音の歯切れが良く、歪み感が少ないので楽器音はとても美しく聞こえます。下手に低音誇張してないのでヴォーカルもマスクされずにかなり明瞭感高く声がはっきりと聴こえます。とても細かい音までよく拾う解像力があり、迫力ある音までダイナミックレンジも広いことでしょう。

音楽ジャンルで言うとスケール感のあるクラシックのオーケストラサウンドを堪能したい感じの音です。楽器音の定位感がよく、スピード感もあるのでジャズトリオも良いですね。

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ゼンハイザーHD800に似たモニター的で素直な特性なので、HD800とも聴き比べてみました。
HD800と比べると重量はより軽くて側圧も抑えめなので、より快適さも高いと感じられます。フラットでワイドレンジなど音の個性はよく似ているんですが、Edition XSの方が全体により透明感があって楽器音がより鮮明に楽しめます。Edition XSのほうがより情報量があって音に厚みもあります。音傾向はHD800の方がやはりモニター的というかより客観的で少し奥の席で聞いてる感じです。Edition XSはもう少し前の席でよりリスニング寄りですね。

*まとめ

Edition XSはいわゆるドンシャリとは対極的なハイファイで音が良いヘッドフォンです。音もスピードがあり平面磁界型らしさが味わえます。おそらくリケーブルするとさらにひとランク上になるように思います。ミッドクラスの価格でいきなりハイエンドの音が味わえるコスパの良いヘッドフォンで、本格的な平面型の音を求めている人におすすめです。しかしこの価格でこんな音が手に入るようになったんですね。
posted by ささき at 10:00| __→ HifiMan HE5, HE6 平面ドライバ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする