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2021年12月27日

2021年の注目技術1 MEMSスピーカー

今年注目の技術をまとめていきます。まず一つ目はMEMSスピーカーです。この分野で知られているのはUSound社とXMEMS社です。
MEMSスピーカーとは簡単に言うと「シリコンドライバー」とも言えます。つまり従来のダイナミック型ドライバーやBAドライバーのように使用することができ、イヤフオンにも使うことができます。現在ではFaunaなどオーディオグラスにダイナミックドライバー(ウーファー)とハイブリッド構成で使われたりしていますが、2022年にはXMEMSのドライバーによる完全ワイヤレスイヤフオン「IAC Chiline TR-X」がアナウンスされており、USoundも多額の資金調達に成功して市場参入を伺っています。

MontraMEMSスピーカー_xMEMSホームページから.PNG
Montra MEMSスピーカー(XMEMS社)

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とは、機能の集合体がワンチップに集積されたもののことです。SoCが機能別のICがワンチップに集積されたパッケージであるのに似ていますが、MEMSがSoCと異なる点はICなどデジタル部だけではなく機械的な稼動部を持つ点です。つまりメカトロニクス分野の産物です。メカ部分はアクチュエーターなどの機能も可能なので、シリコンチップですが空気を振動させるスピーカーも作れます。ドライバーの種類としては圧電型ドライバーとなります。
音質はFaunaを聞いた限りでは思っていたよりも良く、iPhoneの内蔵スピーカーのような無機的な音ではなくもっと滑らかで、包まれるような音場再現があります。

MEMSスピーカーの利点はまとめると以下のようなものですが、いずれも完全ワイヤレスには適しています。

1. 超小型

なんといってもICのようなシリコンチップにドライバーが統合されているため、従来型ドライバーと比べた場合には比較にならないほど薄型・小型化できます。

MEMS比較_USoundホームページから.JPG

2 超低電力

電力消費が低いのもMEMSのシリコン一体型ならではの特徴です。これは再生時間を伸ばすのに有効でしょう。

3 防水適性がある

チップはそれ自体がIP58くらいの防水でもあるために防水の必要性がある完全ワイヤレスイヤフォンにも好適です。

4 位相特性に優れる

ドライバーを組み立てるよりもシリコンから作るほうが製造公差を劇的に減少できるでしよう。ハイエンドイヤフォンでは位相特性を揃えるために両耳ユニットごとのインピーダンスマッチを取りますが、その必要性が低くなるかもしれません。この点ではおそらくは立体感の向上として現れるので、空間オーディオ流行りの今日では好適です。

5. 超高音域特性に優れる

USoundの解説によると、
https://www.usound.com/usounds-mems-speakers-extreme-bandwidth-technology/
GanymedeというタイプのUSound社のMEMSスピーカーは20kHzを超える超高域特性に優れているということです。これはMEMSスピーカーの駆動部が極めて正確に動作が可能であり、普通のドライバーと違いコイルなどがないので駆動部が極めて軽量だから特に超高域での歪みを減らすことができるからということ。
超高域での歪みが極めて少ないために、普通のドライバーよりもより高いSPLを超高域で発揮できるそうです。


このように今流行りの完全ワイヤレスに向いた特性が並びますが、位相特性が揃っていることからマルチアレイのように複数個使用する例もあるとのこと。つまりヘッドフォンのハウジングにぎっしりと複数個のMEMSスピーカーを並べるてスピーカーアレイのようにすることで、空間オーディオやVRなどに向いたものを作ることもできるでしょう。

Bamboo Installation

また最近では隈研吾氏とOPPOのコラボで制作した現代アート的なBambooインスタレーションにもMEMSスピーカーが採用されています。これは竹の共鳴で音を大きくしているようで、この動画を見るとMEMSスピーカーの音色がわかると思います。
posted by ささき at 16:42| ○ ホームオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする