ASCII.jpにfinalとDita Audioのコラボ製品「SHICHIKU.KANGEN」発表会の記事を執筆しました。音のコメントもありますのでご覧ください。
Music TO GO!
2020年12月22日
2020年12月05日
ASCII.jpにFALCON PROのレビュー記事を執筆しました
ASCII.jpにNoble FALCON PROのレビュー記事を書きました。
ハイブリッド化で高音質になっても使い勝手が損なわれてない点が良いと思います。
2020年12月04日
「Bluetooth東京セミナー 2020」レポートをASCII.jpに執筆しました
ASCII.jpに先日のBluetoothセミナー聴講の記事を執筆しました。なぜLE Audioでは遅延が少ないのか、ソニーとBluetoothの関わり合い、そしてソニーのワイヤレス戦略に興味ある方はぜひどうぞ。
https://ascii.jp/elem/000/004/036/4036138/
この講演で面白かったのはもともとBluetooth SIGはLE Audioは補聴器のために始めたということです。それからソニーが参加してオーディオにも向いたものにしたと言うこと。
LE Audioでは補聴器の項目がはじめから大項目でしたが、そういう理由だったわけです。
https://ascii.jp/elem/000/004/036/4036138/
この講演で面白かったのはもともとBluetooth SIGはLE Audioは補聴器のために始めたということです。それからソニーが参加してオーディオにも向いたものにしたと言うこと。
LE Audioでは補聴器の項目がはじめから大項目でしたが、そういう理由だったわけです。
2020年12月03日
世界初のディスクリート方式マルチビットDAC搭載のポータブルプレーヤー、L&P P6とP6Proレビュー
Luxury & Precision(以下L&P)は中国のオーディオブランドで、はじめはHeadFiなど海外マニアックフォーラムで人気を集めていましたが、2018年からサイラスが国内でも扱いを始めました。L&Pは一時期うちでもよく書いていたColorFly C4の流れを汲む会社でもあります。L&PはクラシカルなC4の流れとL4やL6のような現代的なDAPを主に販売しています。

P6とfinal A8000
少し前にインテル製のFPGAと医療用のR2RラダーDAC ICを搭載したハイエンドDAP、LP6の記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/464787064.html
R2R形式DACのRはRegister(抵抗)の意味で抵抗を組み合わせたDACのことで、日本ではマルチビットDACという名のほうが通りが良いと思います。マルチビットDACというのは現代のDACがほとんどそうである1ビット形式のデルタシグマ方式のDACとも対になります(現代デルタシグマDACが実際には複数ビットであるということはおいといて)。
世のほとんどのデジタルオーディオのデータはPCM形式です。PCMはいわばコード化された音楽のデータであり、そのまま音として聴くことはできません。音楽として再生するには各ビットごとに対応するコードを復号する必要があり、これを抵抗を組み合わせた回路で行うのがマルチビットDACです。つまりマルチビットDACとはコード化(エンコード)されたPCMをデコードするためのDACであり、抵抗回路はPCMを復号するためのコード表のようなものです。
しかしながら世のほとんどすべてのDACはハイレゾ化(ハイビット化)のためにデルタシグマ形式となったため、PCMとはまったく違うので必然的に変換が必要になり、そこにデジタル臭さが生まれます。これは逆に言い換えれば、ソースがPCMならば「変換」の必要のないマルチビットDACであれば、デジタル臭さが少なくなるとも言えるわけです。
マルチビットDACはほとんどの場合はすでに生産停止したDAC IC(ハイレゾ対応ならPCM1704、16bitならフィリップス製ICなど)を使用するのですが、LP6は医療用のR2R DAC ICを使うという点で画期的でした。しかしやはりICを使う点は同じです。
今回登場したP6およびその特別モデルのP6Proはポータブルとしては世界初のディスクリート方式のR2RラダーDAC(マルチビットDAC)を搭載しています。つまりICではなく抵抗を使ってディスクリートで組んだわけです。(ちなみにアンプではよくオペアンプではなくトランジスタを使ったものをディスクリートと言いますが、もともとdiscreteとは分離したという意味でトランジスタを使ったという意味ではありません)

LPシリーズがヘッドホン向けのフラッグシップラインであったのに対して、このPシリーズはイヤホン向けのフラッグシップシリーズです。
国内での発売時期は12月下旬で、販売価格はP6/P6Proともオープン価格ですが、市場価格はP6は34万円前後、P6Proは43万円前後と想定しているということです。
* 特徴
1. ディスクリート方式のR2R(マルチビット) DAC採用
既述しましたが、LP6の時は医療用のR2R DACのICを使ってたのですが、P6/P6Proではそれを抵抗組み合わせてICを使わずにディスクリート設計にしたということです。ビット数(深度)は24bitまで対応しています。
R2R DACの弱点はビット深度が深くなるほど精度を確保するのが難しくなるということです。よく知られているマルチビットDAC ICのPCM1704も24bitと言われていますが、実際は23bit精度で最上位ビットは符号ビットとしてしか使用できません。
L&Pでは開発チームが今までの開発で纏めたノウハウで、既成の抵抗を自社基準で一個一個選別しているそうです。精度の決めは絶対値ではなく、他のパーツとの相対的な数値が合格品かどうかで決めるため、他社に特注するよりもLP5の時代から積み重ねてきた自社の独自ノウハウを使って選別しているということです。もちろん一つ一つ測定しながら生産するには時間や人件費などのコストが掛かりますが、L&Pではそれを必要だと思っているということです。

またPCMが入力されてからアナログに変換されるまでの過程に関して具体的にどういうアーキテクチャかというと、まずファイルの解析からはじまって、MCUで再生される予定のファイルのサンプリング数を判断し、それをFPGAのクロック管理機能によってどのクリスタルオシレーターを使うかを決めます。その後にFPGA内でファイルのデータ上のクロック数に合わせてデコードします。あとはR2R回路経由でアナログ信号に変換して、のちに述べるL.L.M.V.S.システムにより音量調整され、アンプへ送り込みます。
性能としてはPCM1704Kが8個相当のダイナミックレンジを達成しています。これはLP6同等ですね。ちなみにProは16個相当となるそうです。

2. R2R方式でもDSDネイティブ再生が可能
これもICからディスクリートにした利点かもしれません。
R2R方式はいわばPCMに特化した方式なので、これまではDSDを再生する時にはいったんPCM変換が必要でした。P6/P6ProではDSDを入力した時の信号経路は、DSD信号は1bitのままで、OSからFPGAへ、そしてDAC回路に流れます。P6/P6Proは自社設計の回路の中に流すことで、基本的にPCM変換しないで完全にネイティヴ方式で1bitそのままでDSD信号を処理します。
つまりはDSD用の別DACがあるわけではないが、この自社製のDAC回路の中でDSDネイティブ再生ができるような回路部分があるのだと思います(ローパスフィルタやバッファなど)。
また、設定でデコード方式をPCM変換に設定すると、OS上でマルチビットのPCM信号に変換してからR2R回路に流すこともできます。
3. 独自のボリュームコントロールシステム
LP6/LP6Proではボリュームも凝っていて、独自の電子リレーアレイ・ロスレスボリュームコントロール、LLMVS(Luxury&Precision Lossless Matrix Volume control System)というメーカー独自のシステムを採用しています。これは電子方式のステップアッテネーターのようなもののように思います。実際にP6ではボリュームが操作UIの上下ダイヤルも兼ねるのでデジタルエンコーダーとなっているのがわかります。アナログボリュームではありません。
つまりP6シリーズは、DAC回路はもちろん音量調整システムも抵抗回路ベースで構築したわけです。これはある意味で据え置きピュアオーディオを意識しながら開発されたということです。

この独自のシステムを採用する理由は、全ての音量レベルのもとでダイナミックレンジが低下せず、かつ情報量が減らないということだそうです。このシステムは、ハイエンドの据置機で採用されているディスクリート式の音量調整機構に近いということ。それをポータブル機器に合わせてサイズと消費電力の面で一番バランスの良い設計をしたそうです。この方式だと音量調節もイヤフォンに合わせてカスタムや最適化が可能なので設計の幅が広いというメリットもあるということ。
4. 独自のFPGAを採用
LP6ではインテル製のFPGAがキーでしたが、P6では中国製FPGAを使用しています。LP6を開発した時にインテルのFPGAを使った理由の一つは、インテル側と共同でデジタルフィルダーなどの開発をしたからということです。今回はその時の経験から、高性能なものでなくてもシステムに合うFPGAを使えば、同じ機能を実現させられるということでインテル製採用をしなかったということのようです。
FPGAは主に下記のタスクを遂行しています。
R-2R回路の線形補償
SPDIFとI2Sプロトコルの解析とデコード
クロック管理
R2R回路のデコード
FPGA内部のDSPリソースを使って、イヤホン&ヘッドホンごとに最適化するカスタム機能(後述)
5. 特定のイヤホンやヘッドホンに合わせたDSP調整が可能
さきに書いたFPGAのタスクの一つがこの特定のイヤホンやヘッドホンに合わせてDSP調整を行うという機能です。
これはシステム設定内の音声出力設定に、サウンドスタイルという項目が追加され、特定のイヤフォンに合うDSP設定を選べるということです。これはOSレベルではなく、FPGAの中の設定を調整しているということ。
ちなみにOS自体はLP6と基本的には同じで違うUIデザインになっています。
P6の大きさは124x67.3x20mmで重さは248g、液晶は3.5インチのIPSで解像度は480x320。P6はなるべくノイズ源を避けたということでタッチ操作ではありません。P6Proはタッチ操作です。
内蔵メモリーは64GBでMicroSDカードスロットが一基搭載されています。USB端子はUSB-Cで、PCとのデータ交換とUSB DAC機能に使うことができます。再生時間は15時間です。
* P6のインプレ
まずP6を解説してから、あとでP6Proと違いについて述べます。
はじめに立ち上がりがすごく早いのが印象的です。これはOSが軽量だからでしょうね。P6の操作はタッチではなく決定キーとバックキー、そしてボリュームダイヤルを使用してメニューを上下させる方式です。タッチに慣れた身にはやや使いにくいんですが、この分でAndroidなどの複雑なOSを避けていると言えます。

筐体はシルバーグレイの航空機グレードアルミニウム合金製です。重さ感覚としては軽くはないが、この手のハイエンド機としては特に重いとということもないと思います。大きさも手頃というところですね。持ち運びに不便はないでしょう。ディスクリートDACといってもかなり集積化した設計なんでしょうね。この辺はL&Pらしくもあります。

音を聴いてみると、例えばシャープで正確だが硬質感のあるNoble KATANAやDITA Dreamのようなイヤフオンだと、特に音を大きくした時に不快感が少ない印象をうけます。
さらにこうしたイヤフォンを使った時にP6で印象的に感じるのは、恐ろしいほどに澄み切って奥行きと細かい音が良く聞こえる透明感の高さです。特にThe Real GroupのWORDSみたいなアカペラのときに、声の背景にたくさんの音の重なり合いがあるので驚きます。16bitにこんなに情報が詰まっていたのかと感じるほどで、こんな音があったっけと再発見する感じです。いわゆるホールトーンのような響きが聞こえて音楽が豊かに感じられます。
おそらくノイズフロアもかなり低いと思いますが、聴覚的にもSNもすごく高く感じられます。Andromeda 2020を使ってみたが気になるヒスノイズのようなものはないと思います。
また音の正確さも印象的です。高域は澄んでひときわクリアであり、中域のヴォーカルは鮮明、低域は引き締まって正確なベースラインを感じさせます。R2Rの美点か、いわゆるモニター的な正確さが無機的と感じられることもありません。
DITA Dreamで聞きながら端子のみ4.4mmに変えてみました。4.4mmmバランスで聞くとさらに音が厚みをましてより自然に聴こえます。これはとても魅力的なサウンドです。インパクトの強さもいっそう強くなり、パワフルな感じがあります。やはり4.4mmで聞くのが一番良いですね。
DSD再生のモードでは個人的にはネイティブ(PCM変換しない)の方が好ましいように感じられます。差は大きくないがやはり差はあると感じます。
デジタルフィルターのところにノンオーバーサンプリングがあるのも面白いですが、これはやはり差は微妙ではありますね。
* P6とP6proの違い

左:P6 右:P6Pro
P6とP6proの違いは次のようなものです。
1. R2R回路用抵抗は、P6より選別レベルの高いものを採用

2. PCM1704Kを計16個使用する時のダイナミックレンジと同等なスペックを達成(P6は8個相当)
3. SN比125dBを達成(P6は123dB)
4. G+G液晶タッチ機能搭載。(P6はタッチパネル非搭載)
5. P6はシルバー筐体や強化ガラスバックパネル、P6Proはブラックと天然木

実際に使ってみましたが、P6Proの方はタッチ操作が可能なので操作はだいぶ楽になります。
やはりきになるのは音質差なんですが、P6でもかなりレベルが高い音が、Proだとより一層音が鮮明で、かつよりきつさが少なく感じられます。たとえばサ行のきつさがより緩和される感じだと思います。P6Proではより高品質な音であるので選別品の効果はあると思います。

* まとめ
本機の音はSagraDACのようにR2Rを主張する柔らかなものというよりも、どちらかというとLP6をHD800で聞いた音の進化系というか、L&Pの音のつきつめたところにある音と言えるように思いました。
音楽がニュートラルであるがままに聞こえる、自然で正確に聴こえる、というある意味当たり前だけれどもいままでなかった音と言えるかもしれません。特にDITA Dreamなどを持っている人は要チェックだと思います。

P6とfinal A8000
少し前にインテル製のFPGAと医療用のR2RラダーDAC ICを搭載したハイエンドDAP、LP6の記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/464787064.html
R2R形式DACのRはRegister(抵抗)の意味で抵抗を組み合わせたDACのことで、日本ではマルチビットDACという名のほうが通りが良いと思います。マルチビットDACというのは現代のDACがほとんどそうである1ビット形式のデルタシグマ方式のDACとも対になります(現代デルタシグマDACが実際には複数ビットであるということはおいといて)。
世のほとんどのデジタルオーディオのデータはPCM形式です。PCMはいわばコード化された音楽のデータであり、そのまま音として聴くことはできません。音楽として再生するには各ビットごとに対応するコードを復号する必要があり、これを抵抗を組み合わせた回路で行うのがマルチビットDACです。つまりマルチビットDACとはコード化(エンコード)されたPCMをデコードするためのDACであり、抵抗回路はPCMを復号するためのコード表のようなものです。
しかしながら世のほとんどすべてのDACはハイレゾ化(ハイビット化)のためにデルタシグマ形式となったため、PCMとはまったく違うので必然的に変換が必要になり、そこにデジタル臭さが生まれます。これは逆に言い換えれば、ソースがPCMならば「変換」の必要のないマルチビットDACであれば、デジタル臭さが少なくなるとも言えるわけです。
マルチビットDACはほとんどの場合はすでに生産停止したDAC IC(ハイレゾ対応ならPCM1704、16bitならフィリップス製ICなど)を使用するのですが、LP6は医療用のR2R DAC ICを使うという点で画期的でした。しかしやはりICを使う点は同じです。
今回登場したP6およびその特別モデルのP6Proはポータブルとしては世界初のディスクリート方式のR2RラダーDAC(マルチビットDAC)を搭載しています。つまりICではなく抵抗を使ってディスクリートで組んだわけです。(ちなみにアンプではよくオペアンプではなくトランジスタを使ったものをディスクリートと言いますが、もともとdiscreteとは分離したという意味でトランジスタを使ったという意味ではありません)


LPシリーズがヘッドホン向けのフラッグシップラインであったのに対して、このPシリーズはイヤホン向けのフラッグシップシリーズです。
国内での発売時期は12月下旬で、販売価格はP6/P6Proともオープン価格ですが、市場価格はP6は34万円前後、P6Proは43万円前後と想定しているということです。
* 特徴
1. ディスクリート方式のR2R(マルチビット) DAC採用
既述しましたが、LP6の時は医療用のR2R DACのICを使ってたのですが、P6/P6Proではそれを抵抗組み合わせてICを使わずにディスクリート設計にしたということです。ビット数(深度)は24bitまで対応しています。
R2R DACの弱点はビット深度が深くなるほど精度を確保するのが難しくなるということです。よく知られているマルチビットDAC ICのPCM1704も24bitと言われていますが、実際は23bit精度で最上位ビットは符号ビットとしてしか使用できません。
L&Pでは開発チームが今までの開発で纏めたノウハウで、既成の抵抗を自社基準で一個一個選別しているそうです。精度の決めは絶対値ではなく、他のパーツとの相対的な数値が合格品かどうかで決めるため、他社に特注するよりもLP5の時代から積み重ねてきた自社の独自ノウハウを使って選別しているということです。もちろん一つ一つ測定しながら生産するには時間や人件費などのコストが掛かりますが、L&Pではそれを必要だと思っているということです。

またPCMが入力されてからアナログに変換されるまでの過程に関して具体的にどういうアーキテクチャかというと、まずファイルの解析からはじまって、MCUで再生される予定のファイルのサンプリング数を判断し、それをFPGAのクロック管理機能によってどのクリスタルオシレーターを使うかを決めます。その後にFPGA内でファイルのデータ上のクロック数に合わせてデコードします。あとはR2R回路経由でアナログ信号に変換して、のちに述べるL.L.M.V.S.システムにより音量調整され、アンプへ送り込みます。
性能としてはPCM1704Kが8個相当のダイナミックレンジを達成しています。これはLP6同等ですね。ちなみにProは16個相当となるそうです。

2. R2R方式でもDSDネイティブ再生が可能
これもICからディスクリートにした利点かもしれません。
R2R方式はいわばPCMに特化した方式なので、これまではDSDを再生する時にはいったんPCM変換が必要でした。P6/P6ProではDSDを入力した時の信号経路は、DSD信号は1bitのままで、OSからFPGAへ、そしてDAC回路に流れます。P6/P6Proは自社設計の回路の中に流すことで、基本的にPCM変換しないで完全にネイティヴ方式で1bitそのままでDSD信号を処理します。
つまりはDSD用の別DACがあるわけではないが、この自社製のDAC回路の中でDSDネイティブ再生ができるような回路部分があるのだと思います(ローパスフィルタやバッファなど)。
また、設定でデコード方式をPCM変換に設定すると、OS上でマルチビットのPCM信号に変換してからR2R回路に流すこともできます。
3. 独自のボリュームコントロールシステム
LP6/LP6Proではボリュームも凝っていて、独自の電子リレーアレイ・ロスレスボリュームコントロール、LLMVS(Luxury&Precision Lossless Matrix Volume control System)というメーカー独自のシステムを採用しています。これは電子方式のステップアッテネーターのようなもののように思います。実際にP6ではボリュームが操作UIの上下ダイヤルも兼ねるのでデジタルエンコーダーとなっているのがわかります。アナログボリュームではありません。
つまりP6シリーズは、DAC回路はもちろん音量調整システムも抵抗回路ベースで構築したわけです。これはある意味で据え置きピュアオーディオを意識しながら開発されたということです。

この独自のシステムを採用する理由は、全ての音量レベルのもとでダイナミックレンジが低下せず、かつ情報量が減らないということだそうです。このシステムは、ハイエンドの据置機で採用されているディスクリート式の音量調整機構に近いということ。それをポータブル機器に合わせてサイズと消費電力の面で一番バランスの良い設計をしたそうです。この方式だと音量調節もイヤフォンに合わせてカスタムや最適化が可能なので設計の幅が広いというメリットもあるということ。
4. 独自のFPGAを採用
LP6ではインテル製のFPGAがキーでしたが、P6では中国製FPGAを使用しています。LP6を開発した時にインテルのFPGAを使った理由の一つは、インテル側と共同でデジタルフィルダーなどの開発をしたからということです。今回はその時の経験から、高性能なものでなくてもシステムに合うFPGAを使えば、同じ機能を実現させられるということでインテル製採用をしなかったということのようです。
FPGAは主に下記のタスクを遂行しています。
R-2R回路の線形補償
SPDIFとI2Sプロトコルの解析とデコード
クロック管理
R2R回路のデコード
FPGA内部のDSPリソースを使って、イヤホン&ヘッドホンごとに最適化するカスタム機能(後述)
5. 特定のイヤホンやヘッドホンに合わせたDSP調整が可能
さきに書いたFPGAのタスクの一つがこの特定のイヤホンやヘッドホンに合わせてDSP調整を行うという機能です。
これはシステム設定内の音声出力設定に、サウンドスタイルという項目が追加され、特定のイヤフォンに合うDSP設定を選べるということです。これはOSレベルではなく、FPGAの中の設定を調整しているということ。
ちなみにOS自体はLP6と基本的には同じで違うUIデザインになっています。
P6の大きさは124x67.3x20mmで重さは248g、液晶は3.5インチのIPSで解像度は480x320。P6はなるべくノイズ源を避けたということでタッチ操作ではありません。P6Proはタッチ操作です。
内蔵メモリーは64GBでMicroSDカードスロットが一基搭載されています。USB端子はUSB-Cで、PCとのデータ交換とUSB DAC機能に使うことができます。再生時間は15時間です。
* P6のインプレ
まずP6を解説してから、あとでP6Proと違いについて述べます。
はじめに立ち上がりがすごく早いのが印象的です。これはOSが軽量だからでしょうね。P6の操作はタッチではなく決定キーとバックキー、そしてボリュームダイヤルを使用してメニューを上下させる方式です。タッチに慣れた身にはやや使いにくいんですが、この分でAndroidなどの複雑なOSを避けていると言えます。

筐体はシルバーグレイの航空機グレードアルミニウム合金製です。重さ感覚としては軽くはないが、この手のハイエンド機としては特に重いとということもないと思います。大きさも手頃というところですね。持ち運びに不便はないでしょう。ディスクリートDACといってもかなり集積化した設計なんでしょうね。この辺はL&Pらしくもあります。



音を聴いてみると、例えばシャープで正確だが硬質感のあるNoble KATANAやDITA Dreamのようなイヤフオンだと、特に音を大きくした時に不快感が少ない印象をうけます。
さらにこうしたイヤフォンを使った時にP6で印象的に感じるのは、恐ろしいほどに澄み切って奥行きと細かい音が良く聞こえる透明感の高さです。特にThe Real GroupのWORDSみたいなアカペラのときに、声の背景にたくさんの音の重なり合いがあるので驚きます。16bitにこんなに情報が詰まっていたのかと感じるほどで、こんな音があったっけと再発見する感じです。いわゆるホールトーンのような響きが聞こえて音楽が豊かに感じられます。
おそらくノイズフロアもかなり低いと思いますが、聴覚的にもSNもすごく高く感じられます。Andromeda 2020を使ってみたが気になるヒスノイズのようなものはないと思います。
また音の正確さも印象的です。高域は澄んでひときわクリアであり、中域のヴォーカルは鮮明、低域は引き締まって正確なベースラインを感じさせます。R2Rの美点か、いわゆるモニター的な正確さが無機的と感じられることもありません。
DITA Dreamで聞きながら端子のみ4.4mmに変えてみました。4.4mmmバランスで聞くとさらに音が厚みをましてより自然に聴こえます。これはとても魅力的なサウンドです。インパクトの強さもいっそう強くなり、パワフルな感じがあります。やはり4.4mmで聞くのが一番良いですね。
DSD再生のモードでは個人的にはネイティブ(PCM変換しない)の方が好ましいように感じられます。差は大きくないがやはり差はあると感じます。
デジタルフィルターのところにノンオーバーサンプリングがあるのも面白いですが、これはやはり差は微妙ではありますね。
* P6とP6proの違い

左:P6 右:P6Pro
P6とP6proの違いは次のようなものです。
1. R2R回路用抵抗は、P6より選別レベルの高いものを採用

2. PCM1704Kを計16個使用する時のダイナミックレンジと同等なスペックを達成(P6は8個相当)
3. SN比125dBを達成(P6は123dB)
4. G+G液晶タッチ機能搭載。(P6はタッチパネル非搭載)
5. P6はシルバー筐体や強化ガラスバックパネル、P6Proはブラックと天然木

実際に使ってみましたが、P6Proの方はタッチ操作が可能なので操作はだいぶ楽になります。
やはりきになるのは音質差なんですが、P6でもかなりレベルが高い音が、Proだとより一層音が鮮明で、かつよりきつさが少なく感じられます。たとえばサ行のきつさがより緩和される感じだと思います。P6Proではより高品質な音であるので選別品の効果はあると思います。

* まとめ
本機の音はSagraDACのようにR2Rを主張する柔らかなものというよりも、どちらかというとLP6をHD800で聞いた音の進化系というか、L&Pの音のつきつめたところにある音と言えるように思いました。
音楽がニュートラルであるがままに聞こえる、自然で正確に聴こえる、というある意味当たり前だけれどもいままでなかった音と言えるかもしれません。特にDITA Dreamなどを持っている人は要チェックだと思います。