ASCII.jpにジェームズ・リー氏開発の新DAP、K100をいち早く試聴することが出来たので早速レビューを書きました。
https://ascii.jp/elem/000/004/024/4024093/
Kontinum K100を試聴してみて感銘するのはその独特な音質の良さです。これは32bitモードというのがキーのようです。
電池を交換できるというのは単に寿命を伸ばすだけでなく、発熱を許容できるとか電力消費を気にしないということで間接的に音質を高められるということでもあるかもと思いました。
Music TO GO!
2020年08月25日
2020年08月17日
ASCII.jpにSE200とYoutube Musicの連携の記事を書きました
ASCII.jpにSE200ファームアップの記事を書きました。
特にV-link music(Youtube Music)を使ってCDリッピングした曲を(メモリーに移さずに)Youtube Music経由でSE200にストリーミングする方法も試していますので興味あればどうぞ。
https://ascii.jp/elem/000/004/023/4023208/
特にV-link music(Youtube Music)を使ってCDリッピングした曲を(メモリーに移さずに)Youtube Music経由でSE200にストリーミングする方法も試していますので興味あればどうぞ。
https://ascii.jp/elem/000/004/023/4023208/
2020年08月13日
コスパの良い平面型HIFIMAN DEVAと専用Bluetoothアダプター、レビュー
平面磁界型ヘッドフォンでは老舗のHIFIMANの新製品の特徴は、平面型なのに33,000円と価格が安いということ、そしてBlueminiというワイヤレス/USBアダプターが付属しているということです。DEVAとはサンスクリット語で「天国のような」という意味ということ。
HIFIMAN DEVAとBluemini(右)
* DEVAの特徴
平面磁界型ヘッドフォンとしての特徴はHIFIMAN独自のNEO "supernano" 振動板(NsD)を採用していることです。この新しいNsD振動板はSusvaraなどの高級モデルのために開発された技術で以前の設計よりも80%薄く、早いレスポンスと高解像力を実現して豊かなフルレンジの音質を実現するということです。HIFIMANはAUDEZEと並んで平面磁界型ヘッドフォンのパイオニアのひとつですが、こうした技術的な蓄積が生かされているということですね。また最近の平面磁界型ヘッドフォンのトレンドでもある高能率化も取り入れられているので、ソースを選ばないで鳴らせるということです。
次の特徴は新しい付属アダプターであるBlueminiとそれを生かした多彩な入出力、つまりさまざまなシーンで使えるということです。本体はアナログ入力ですが、4本独立したバランス対応の設計になっています。
Bluemini
そのためDEVAでは下記の3種類の使い方ができます。
1.アナログ有線接続
3.5mmステレオミニ、6.3mm標準プラグアダプタ付き(ヘッドフォン側はTRRS 3.5mm4極端子)
2. Bluetooth ワイヤレス (Bluemini使用)
aptx,LDAC,LHDC(HWA)に対応
3. USB デジタル有線接続 (Bluemini使用)
USB-C端子
BlueminiはDEVAに「合体」できる専用アダプターで、DAC内蔵のヘッドフォンアンプでもあります。Blueminiによって、Bluetoothワイヤレス機能と、USB DAC機能が使えるようになります。
内蔵アンプの出力段は据え置きヘッドフォンアンプ並みの高出力を実現したということ。確認してみたところ内部はフルバランス仕様ということです。実際に音を聞いてみると納得します。またBluetoothレシーバーとしては多彩なコーデックに対応しているのも特長です。BlueminiにはUSB端子があるので、これを使用してUSB DACとしても使えます。
*実機インプレ
DEVAのキャメルカラーの本体はなかなか高級感があって価格以上の感じがします。本体は軽くて側圧が弱めなので装着感は高いほうだと思います。ただしオープンタイプなので遮音性はありません。家で使うヘッドフォンですね。
やはり平面磁界型なので少し能率は低めです。DAPで音量が取れないことはないですが、Astell&KernでいうとAK380クラスだとややきつくて、SP1000以降のハイパワータイプが必要になってくるでしょう。本機は音性能的にも高いので、ソースにDAPを使うならばそのクラスが好適だと思います。
きちんと駆動力のあるアンプを使えば音は明るめで能率は平面型としては高いほうの感じがします。据え置きならばあまりハイパワーのアンプでなくても鳴らせるでしょう。
1.アナログ有線接続
まず付属の標準ケーブルでアナログ接続で聴いてみます。
感じるのは音の広がりがよい立体的な音場で、包まれるような心地よさがあります。高音域はよく伸びるがきつさがない程度に抑えられ、ベルの音が美しく響き、古楽器では倍音成分がたっぷり楽しめます。
低域は誇張感が少なく整っていて、超低域の深みがあって誇張感は少ないのですが低域は豊かです。低音にパンチのある曲では驚くほどの打撃感を感じます。全体に音のチューニングは高級機志向で、価格が安いからドンシャリで、というものではありません。
また中音域は適度な温かみがあって、厚みがあり音楽を楽しめる表現です。いわゆる音楽的な感じに近く、モニター的で無機的なものではないですね。ただしあまり過剰に暖かいわけではありません。この辺はケーブルでも変わるかもしれませんね。
かなり細かい音まで明瞭に聞くことができ、解像感もかなり高いものがあります。またスピード感があってリズムの刻みが気持ち良く、テンポの速い曲によく乗れる感じです。この辺は平面型の良さの一つです。
全体に価格に対してはかなり高いレベルでコストパフォーマンスは高いと思います。Blueminiなしでこれだけでも十分価格に見合うと思います。
HIFIMANはマニア系メーカーなので低価格モデルでもケーブルはそれほど悪くないですが、本体性能が高いのでリケーブルしても良いかもしれません。ただヘッドフォン側TRRSという点に注意が必要です。
2. Bluetooth ワイヤレス (Bluemini使用)
Blueminiを3.5mm端子に取り付けるだけで簡単にDEVAに合体できます。これによってBTワイヤレスとUSB DACが使えるようになります。ワイヤレス機能はiPhoneから使用してます。電源ボタンを青緑の明滅まで押し続けるとペアリングモードになります。
音を聞くとちょっとびっくりするくらいのパワー感を感じます。音に力感があって、躍動感があってパワフルなサウンドです。こんな小さなアダプタなのに。たしかにバランスという感じで、押しが強く立体感もあります。音には厚みもあって解像力もあり、音は安く感じません。たださすがにハイエンドDAPやDACほどの細かさはありません。躍動感があってロックにも向いていて、音の歯切れも良くトランジェントが高い感じです。
BTレシーバーとしてもかなりレベルが高いほうでしょう。これがおまけとは信じられないくらいですね。Bluminiは汎用化して単体販売しても良いと思う。
3. USB デジタル有線接続 (Bluemini使用)
BlueminiにUSBケーブルを接続します。付属のケーブルはBluemini側はUSB-CでPC側はUSB-Aですが、別にケーブルを用意すればさらに広く使えると思います。Windows 10のRoonで使用してみましたが、とくにドライバーインストールは不要で標準ドライバーで使えます。
基本的にはBluetoothワイヤレスと同じく立体感があって力感がある音ですが、有線なのでいっそう音が良く感じます。かなりレベルが高く、透明感も高いですね。
この方式のメリットはRoonなどで192/24にアップスケールして使うこともできることです。ただヘッドフォン側ボリュームがないのでDSPボリュームを使ったほうが便利です。
* まとめ
DEVAはかなりコストパフォーマンスが良く、用途が広いヘッドフォンです。ヘッドフォン自体の音質が高いのはもちろん、付属のBlueminiがやはり音も良く柔軟に使いこなせるのでかなりお得感のあるヘッドフォンです。
HIFIMAN DEVAとBluemini(右)
* DEVAの特徴
平面磁界型ヘッドフォンとしての特徴はHIFIMAN独自のNEO "supernano" 振動板(NsD)を採用していることです。この新しいNsD振動板はSusvaraなどの高級モデルのために開発された技術で以前の設計よりも80%薄く、早いレスポンスと高解像力を実現して豊かなフルレンジの音質を実現するということです。HIFIMANはAUDEZEと並んで平面磁界型ヘッドフォンのパイオニアのひとつですが、こうした技術的な蓄積が生かされているということですね。また最近の平面磁界型ヘッドフォンのトレンドでもある高能率化も取り入れられているので、ソースを選ばないで鳴らせるということです。
次の特徴は新しい付属アダプターであるBlueminiとそれを生かした多彩な入出力、つまりさまざまなシーンで使えるということです。本体はアナログ入力ですが、4本独立したバランス対応の設計になっています。
Bluemini
そのためDEVAでは下記の3種類の使い方ができます。
1.アナログ有線接続
3.5mmステレオミニ、6.3mm標準プラグアダプタ付き(ヘッドフォン側はTRRS 3.5mm4極端子)
2. Bluetooth ワイヤレス (Bluemini使用)
aptx,LDAC,LHDC(HWA)に対応
3. USB デジタル有線接続 (Bluemini使用)
USB-C端子
BlueminiはDEVAに「合体」できる専用アダプターで、DAC内蔵のヘッドフォンアンプでもあります。Blueminiによって、Bluetoothワイヤレス機能と、USB DAC機能が使えるようになります。
内蔵アンプの出力段は据え置きヘッドフォンアンプ並みの高出力を実現したということ。確認してみたところ内部はフルバランス仕様ということです。実際に音を聞いてみると納得します。またBluetoothレシーバーとしては多彩なコーデックに対応しているのも特長です。BlueminiにはUSB端子があるので、これを使用してUSB DACとしても使えます。
*実機インプレ
DEVAのキャメルカラーの本体はなかなか高級感があって価格以上の感じがします。本体は軽くて側圧が弱めなので装着感は高いほうだと思います。ただしオープンタイプなので遮音性はありません。家で使うヘッドフォンですね。
やはり平面磁界型なので少し能率は低めです。DAPで音量が取れないことはないですが、Astell&KernでいうとAK380クラスだとややきつくて、SP1000以降のハイパワータイプが必要になってくるでしょう。本機は音性能的にも高いので、ソースにDAPを使うならばそのクラスが好適だと思います。
きちんと駆動力のあるアンプを使えば音は明るめで能率は平面型としては高いほうの感じがします。据え置きならばあまりハイパワーのアンプでなくても鳴らせるでしょう。
1.アナログ有線接続
まず付属の標準ケーブルでアナログ接続で聴いてみます。
感じるのは音の広がりがよい立体的な音場で、包まれるような心地よさがあります。高音域はよく伸びるがきつさがない程度に抑えられ、ベルの音が美しく響き、古楽器では倍音成分がたっぷり楽しめます。
低域は誇張感が少なく整っていて、超低域の深みがあって誇張感は少ないのですが低域は豊かです。低音にパンチのある曲では驚くほどの打撃感を感じます。全体に音のチューニングは高級機志向で、価格が安いからドンシャリで、というものではありません。
また中音域は適度な温かみがあって、厚みがあり音楽を楽しめる表現です。いわゆる音楽的な感じに近く、モニター的で無機的なものではないですね。ただしあまり過剰に暖かいわけではありません。この辺はケーブルでも変わるかもしれませんね。
かなり細かい音まで明瞭に聞くことができ、解像感もかなり高いものがあります。またスピード感があってリズムの刻みが気持ち良く、テンポの速い曲によく乗れる感じです。この辺は平面型の良さの一つです。
全体に価格に対してはかなり高いレベルでコストパフォーマンスは高いと思います。Blueminiなしでこれだけでも十分価格に見合うと思います。
HIFIMANはマニア系メーカーなので低価格モデルでもケーブルはそれほど悪くないですが、本体性能が高いのでリケーブルしても良いかもしれません。ただヘッドフォン側TRRSという点に注意が必要です。
2. Bluetooth ワイヤレス (Bluemini使用)
Blueminiを3.5mm端子に取り付けるだけで簡単にDEVAに合体できます。これによってBTワイヤレスとUSB DACが使えるようになります。ワイヤレス機能はiPhoneから使用してます。電源ボタンを青緑の明滅まで押し続けるとペアリングモードになります。
音を聞くとちょっとびっくりするくらいのパワー感を感じます。音に力感があって、躍動感があってパワフルなサウンドです。こんな小さなアダプタなのに。たしかにバランスという感じで、押しが強く立体感もあります。音には厚みもあって解像力もあり、音は安く感じません。たださすがにハイエンドDAPやDACほどの細かさはありません。躍動感があってロックにも向いていて、音の歯切れも良くトランジェントが高い感じです。
BTレシーバーとしてもかなりレベルが高いほうでしょう。これがおまけとは信じられないくらいですね。Bluminiは汎用化して単体販売しても良いと思う。
3. USB デジタル有線接続 (Bluemini使用)
BlueminiにUSBケーブルを接続します。付属のケーブルはBluemini側はUSB-CでPC側はUSB-Aですが、別にケーブルを用意すればさらに広く使えると思います。Windows 10のRoonで使用してみましたが、とくにドライバーインストールは不要で標準ドライバーで使えます。
基本的にはBluetoothワイヤレスと同じく立体感があって力感がある音ですが、有線なのでいっそう音が良く感じます。かなりレベルが高く、透明感も高いですね。
この方式のメリットはRoonなどで192/24にアップスケールして使うこともできることです。ただヘッドフォン側ボリュームがないのでDSPボリュームを使ったほうが便利です。
* まとめ
DEVAはかなりコストパフォーマンスが良く、用途が広いヘッドフォンです。ヘッドフォン自体の音質が高いのはもちろん、付属のBlueminiがやはり音も良く柔軟に使いこなせるのでかなりお得感のあるヘッドフォンです。
PhilewebにBenchmark HPA4記事を書きました
こちらPhilewebに記事を執筆しました。HPA4は音質と駆動力の高さの両面で優れたヘッドホンアンプです。ピュアな音質の高さもさることながら、あのHE6を軽々と鳴らすのには驚きますよ。
2020年08月05日
完全ワイヤレスの「左右同時伝送」とMCSync方式の謎の解明
ASCII.jpにRHAの完全ワイヤレスTrueConnect2のレビュー記事を書きました。なかなか音質に優れたイヤフオンですが、ポイントの一つは「左右同時伝送」です。
https://ascii.jp/elem/000/004/022/4022322/
RHA TrueConnect2
今回はじめてAiroha(MediaTekの子会社)のMCSync(MultiCast Synchronization)方式を採用した「左右同時伝送」イヤフオンを使ったのですが、たしかになかなか優れた方式です。再生やスキップも左右別々にできるので完全に左右で双方向の伝送をしています。
従来のTWS Plusや前に書いたTempow( http://vaiopocket.seesaa.net/article/460813992.html )、あるいは最新の標準規格のLE Audioも含めて完全ワイヤレスの「左右同時伝送」には本来スマホ側の対応が必要になるため、例えばTWS Plusではクアルコムと疎遠のiPhoneでは使えないのが大きな難点です。LE AudioはiOS14で対応するかもしれないけど未知数ですし、OSのフラグメンテーションが多いAndroidではプロファイル更新が必要な点は不利です。
しかしMCSyncではスマホ側の対応の必要がありません。そのためAndroidでもiPhoneでも変更なしで使えます。これは大きなメリットであり、最近採用例が広がってきた大きな要因でしょう。ソニーのWF1000XM3の「左右同時伝送」もカスタマイズしているけれどもこの方式を使っているようです。
またクアルコムの新しいTrueWireless Mirroringも同時伝送に関してはTWS Plusの延長ではなく、McSyncと似たような方式ではないかと推測されます。
ただ、この方式の謎はなぜBluetoothのA2DPの1:1制限にかからないか、ということです。そもそもA2DPがひとつのオーディオデバイスとしか伝送できないという制限があったので、従来の完全ワイヤレスでは片方で受信してもう片方に転送するという手間をかけてたわけです。そしてこの過程で(ほぼ水分で)電波を通しにくいユーザーの頭を挟んで接続性に難が生じ、遅延も大きくなっていたわけです。これについては調べてもなかなか載ってないのですが、自分的に納得できないと気持ち悪いのでまずちょっと推測してみました。
これは推測なのでASCII記事には書かなかったのですが、おそらくペアリングするときは片側だけペアリングして、ペアリング成功するともう片方に接続情報(ペアリングコードやアドレスなど)を転送して、それから左右ユニットが(本来片側のみが受けるべき)同じ通信を受信し、右ユニットはRチャンネルのみ再生、左ユニットはLチャンネルのみ再生するんではないかと思います。もし違ってたら私がこの方式を特許に出しますw
それでだいたいのあたりを付けて次にUS特許データベースを検索してみました。すると次の特許を見つけました。
Hsieh; Kuen-Rong (Hsinchu, TW)
Assignee: Airoha Technology Corp.
Bluetooth audio packet sharing method
U. S. Patent 9,794,393 , November 27, 2015
おそらくこれがAirohaのMCSyncの特許(の一部)だと思います。特許だから広く請求を得るために一般的に書いてありますが、骨子は複数のBluetoothデバイスがあったときに、一つ目のデバイスが確立した接続情報(link information)をブロードキャストするという点です。二つ目以降のデバイスはその情報を使用して一つ目のデバイスと同じ接続を利用することができます。
ここでは共有するBluetooth接続情報はBDアドレス, Bluetooth clock, channel map, link keyとされています。BDアドレスはBluetoothのMACアドレスのことです。それならBDアドレスって別々のデバイスが同じアドレスを持てるのか、と思いますがそこをなんとかしたからこそ2つのデバイスが1つのデバイスとみなされてA2DPの制限にかからないのでしょう。Bluetooth clockはBTデバイスの内部クロックで周波数ホップのタイミングなどで使います。channel mapは左右チャンネルではなくBTが周波数ホップするときのチャンネルです。Link keyはマスター・デバイス間の暗号カギでペアリングコードですね。これらの情報を左右デバイスが共有することで、スマホから見るとあたかも一つのユニットとだけ伝送してるように見えるので、1:1制限から逃れられるというわけですね。
*ちなみに周波数ホップについては下記のKleerの時に書いた記事の4をご覧ください。ただし最近ではBluetoothもチャンネル専有方式が可能になっていす。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html
公開特許なので図を引用しますが、fig2を見るとまずスマホとBTデバイスで接続を確立し、その情報をブロードキャストするとあります。
cf. fig2 of U. S. Patent 9,794,393
またこの方式では2個を超える音声接続が可能となるのでブロードキャストができますね。Link情報の共有の方法はA2DPである必要はないので複数のデバイスとコネクションが張れます。
ちなみに特許では「完全ワイヤレスイヤフォンの左右同時伝送方式」というアイディア自体は特許になりません。実現可能な仕組みを提示して初めてその実装方法が特許になりますので、クアルコムが似たような方式だけれども違う実装を提示すればそれは特許の抵触にはならないでしょう。クアルコムのTrueWireless Mirroringでは親子のロールスワッピングを前に打ち出してますし、それでSynchronizationではなくMirroringという言葉を使用しているのではないかと思います。
さて仕組みを自分的に(だいたい)納得したところで今後を考察してみると、MCSyncあるいは同様な方式が普及していくと、iPhoneで使えないTWS Plusは分が悪くなり、プロファイル更新が必要で古いOSでは対応できない出たばかりのLE Audioも先行きは怪しくなって来ます。ただクアルコムのTrueWireless Mirroringを採用しているQCC514x/304x系の新SoCはLE Audio Readyを表明しているので両方に保険は掛けてあると言えます。
ただしMCSyncが無敵かというと、クアルコムのQCC514x系の新SoCはAirohaよりも消費電力でアドバンテージがあるようなので、その他いろいろオンチップ機能を考えると十分巻き返しは可能かもしれません。
ただMCSync方式はやはり「ゲームチェンジャー」でしょうし、これが強者クアルコムの一角を崩すとなると、もちろんSoCはこの二社だけではなく中国製の低価格オンチップANC付きSoCとかいろいろ出てきてますし、完全ワイヤレスSoCはちよっとした戦国時代の様相を呈してきたのかもしれません。
https://ascii.jp/elem/000/004/022/4022322/
RHA TrueConnect2
今回はじめてAiroha(MediaTekの子会社)のMCSync(MultiCast Synchronization)方式を採用した「左右同時伝送」イヤフオンを使ったのですが、たしかになかなか優れた方式です。再生やスキップも左右別々にできるので完全に左右で双方向の伝送をしています。
従来のTWS Plusや前に書いたTempow( http://vaiopocket.seesaa.net/article/460813992.html )、あるいは最新の標準規格のLE Audioも含めて完全ワイヤレスの「左右同時伝送」には本来スマホ側の対応が必要になるため、例えばTWS Plusではクアルコムと疎遠のiPhoneでは使えないのが大きな難点です。LE AudioはiOS14で対応するかもしれないけど未知数ですし、OSのフラグメンテーションが多いAndroidではプロファイル更新が必要な点は不利です。
しかしMCSyncではスマホ側の対応の必要がありません。そのためAndroidでもiPhoneでも変更なしで使えます。これは大きなメリットであり、最近採用例が広がってきた大きな要因でしょう。ソニーのWF1000XM3の「左右同時伝送」もカスタマイズしているけれどもこの方式を使っているようです。
またクアルコムの新しいTrueWireless Mirroringも同時伝送に関してはTWS Plusの延長ではなく、McSyncと似たような方式ではないかと推測されます。
ただ、この方式の謎はなぜBluetoothのA2DPの1:1制限にかからないか、ということです。そもそもA2DPがひとつのオーディオデバイスとしか伝送できないという制限があったので、従来の完全ワイヤレスでは片方で受信してもう片方に転送するという手間をかけてたわけです。そしてこの過程で(ほぼ水分で)電波を通しにくいユーザーの頭を挟んで接続性に難が生じ、遅延も大きくなっていたわけです。これについては調べてもなかなか載ってないのですが、自分的に納得できないと気持ち悪いのでまずちょっと推測してみました。
これは推測なのでASCII記事には書かなかったのですが、おそらくペアリングするときは片側だけペアリングして、ペアリング成功するともう片方に接続情報(ペアリングコードやアドレスなど)を転送して、それから左右ユニットが(本来片側のみが受けるべき)同じ通信を受信し、右ユニットはRチャンネルのみ再生、左ユニットはLチャンネルのみ再生するんではないかと思います。もし違ってたら私がこの方式を特許に出しますw
それでだいたいのあたりを付けて次にUS特許データベースを検索してみました。すると次の特許を見つけました。
Hsieh; Kuen-Rong (Hsinchu, TW)
Assignee: Airoha Technology Corp.
Bluetooth audio packet sharing method
U. S. Patent 9,794,393 , November 27, 2015
おそらくこれがAirohaのMCSyncの特許(の一部)だと思います。特許だから広く請求を得るために一般的に書いてありますが、骨子は複数のBluetoothデバイスがあったときに、一つ目のデバイスが確立した接続情報(link information)をブロードキャストするという点です。二つ目以降のデバイスはその情報を使用して一つ目のデバイスと同じ接続を利用することができます。
ここでは共有するBluetooth接続情報はBDアドレス, Bluetooth clock, channel map, link keyとされています。BDアドレスはBluetoothのMACアドレスのことです。それならBDアドレスって別々のデバイスが同じアドレスを持てるのか、と思いますがそこをなんとかしたからこそ2つのデバイスが1つのデバイスとみなされてA2DPの制限にかからないのでしょう。Bluetooth clockはBTデバイスの内部クロックで周波数ホップのタイミングなどで使います。channel mapは左右チャンネルではなくBTが周波数ホップするときのチャンネルです。Link keyはマスター・デバイス間の暗号カギでペアリングコードですね。これらの情報を左右デバイスが共有することで、スマホから見るとあたかも一つのユニットとだけ伝送してるように見えるので、1:1制限から逃れられるというわけですね。
*ちなみに周波数ホップについては下記のKleerの時に書いた記事の4をご覧ください。ただし最近ではBluetoothもチャンネル専有方式が可能になっていす。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html
公開特許なので図を引用しますが、fig2を見るとまずスマホとBTデバイスで接続を確立し、その情報をブロードキャストするとあります。
cf. fig2 of U. S. Patent 9,794,393
またこの方式では2個を超える音声接続が可能となるのでブロードキャストができますね。Link情報の共有の方法はA2DPである必要はないので複数のデバイスとコネクションが張れます。
ちなみに特許では「完全ワイヤレスイヤフォンの左右同時伝送方式」というアイディア自体は特許になりません。実現可能な仕組みを提示して初めてその実装方法が特許になりますので、クアルコムが似たような方式だけれども違う実装を提示すればそれは特許の抵触にはならないでしょう。クアルコムのTrueWireless Mirroringでは親子のロールスワッピングを前に打ち出してますし、それでSynchronizationではなくMirroringという言葉を使用しているのではないかと思います。
さて仕組みを自分的に(だいたい)納得したところで今後を考察してみると、MCSyncあるいは同様な方式が普及していくと、iPhoneで使えないTWS Plusは分が悪くなり、プロファイル更新が必要で古いOSでは対応できない出たばかりのLE Audioも先行きは怪しくなって来ます。ただクアルコムのTrueWireless Mirroringを採用しているQCC514x/304x系の新SoCはLE Audio Readyを表明しているので両方に保険は掛けてあると言えます。
ただしMCSyncが無敵かというと、クアルコムのQCC514x系の新SoCはAirohaよりも消費電力でアドバンテージがあるようなので、その他いろいろオンチップ機能を考えると十分巻き返しは可能かもしれません。
ただMCSync方式はやはり「ゲームチェンジャー」でしょうし、これが強者クアルコムの一角を崩すとなると、もちろんSoCはこの二社だけではなく中国製の低価格オンチップANC付きSoCとかいろいろ出てきてますし、完全ワイヤレスSoCはちよっとした戦国時代の様相を呈してきたのかもしれません。
2020年08月02日
ASCII.jpにAcoustune新製品の記事を書きました
ASCII.jpにAcoustune 新製品の記事を書きました。
https://ascii.jp/elem/000/004/021/4021065/
今回特にケーブルのイヤフォン側端子の「Pentaconn Ear端子」が良かったですね。MMCXだと取り外しに泣かされますが、これはするっと入って、するっと外せる感じ。MMCXタイプのスタンダードになって欲しいと思います。
https://ascii.jp/elem/000/004/021/4021065/
今回特にケーブルのイヤフォン側端子の「Pentaconn Ear端子」が良かったですね。MMCXだと取り外しに泣かされますが、これはするっと入って、するっと外せる感じ。MMCXタイプのスタンダードになって欲しいと思います。
ASCII.jpにAUDEZEの新ゲーミングヘッドフォン、Penroseの記事を書きました
ASCII.jpにAUDEZEのMobiusに次ぐ新しいゲーミングヘッドセット、Penroseの記事を書きました。
https://ascii.jp/elem/000/004/020/4020515/
今回自前の3Dエンジンはなくなったのですが...ということで3Dエンジンをどこに持つかって言うのも今後次世代ゲーム機ヘッドフォンのポイントかもしれません。
Penroseはロジャーペンローズという数学者の名前から取ってますが、記事中に書いたようにAUDEZEのロゴマークのモチーフは「ペンローズの三角形」という不可能図形です。
あと不確実だったので記事には書かなかったんですが、PenroseのUSBロスレス通信ドングルは任天堂スイッチでも使えるようです。任天堂スイッチのOSがプレステ4と同じようにFreeBSDベースだからだと思います。
今後また3Dオーディオエンジンは戦国時代を迎えていくのかもしれません。アップルの空間オーディオで出てきた「指向性オーディオフィルター(directional audio filter)」っていわゆる3Dオーディオエンジンのことだと思います。もう一つの空間オーディオの核のヘッドトラッキングはまた別の話ですね。
https://ascii.jp/elem/000/004/020/4020515/
今回自前の3Dエンジンはなくなったのですが...ということで3Dエンジンをどこに持つかって言うのも今後次世代ゲーム機ヘッドフォンのポイントかもしれません。
Penroseはロジャーペンローズという数学者の名前から取ってますが、記事中に書いたようにAUDEZEのロゴマークのモチーフは「ペンローズの三角形」という不可能図形です。
あと不確実だったので記事には書かなかったんですが、PenroseのUSBロスレス通信ドングルは任天堂スイッチでも使えるようです。任天堂スイッチのOSがプレステ4と同じようにFreeBSDベースだからだと思います。
今後また3Dオーディオエンジンは戦国時代を迎えていくのかもしれません。アップルの空間オーディオで出てきた「指向性オーディオフィルター(directional audio filter)」っていわゆる3Dオーディオエンジンのことだと思います。もう一つの空間オーディオの核のヘッドトラッキングはまた別の話ですね。