Music TO GO!

2020年02月22日

Jaben Japanから新ブランドのイヤフオンと高級交換ケーブル登場

Jaben Japanからポタ研で展示していたイヤフォンと、リケーブル用の高級交換ケーブルの新ブランドが発売されています。

オンラインショップはこちらです。
https://jabenjapan.thebase.in/
Jaben Japanでは2/22から3/2までの期間に全品10%オフというクーポンをJaben Japanのtwitter(@JabenJapan)とfacebook(Jaben Japan)のアカウントで配布していますので興味ある方はどうぞ。

○ 1 Custom Universal

イヤフオンの新ブランドは1 customという名前ですがカスタムではなくユニバーサルイヤフォンです。customというのはスイッチによって音色が変えられるというところからきているようです。BAマルチドライバーのMR,SRとハイブリッドのJRの3モデルが販売されています。
スイッチはデフォルト、Vocal, Detailed, Bassの4種類が可能で、これは各機種に共通の特徴です。スイッチを切り替えるための小さなピンが付属しています。

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以下は機種ごとのインプレッションです。試聴はAK380を使用しています。

* MR(4Hi, 2Mid/low, 1Low) 27Ω 68,000円 (発売記念特価 58,000円 税込)

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マルチドライバーなので大柄なシェルだけれども、軽くて耳にぴったりとフィットして装着感はよいと思います。おそらくシェルの形が良いと思いますね。まずデフォルトで聴いてみます。
音数が多い感じで情報量が豊富という印象です。透明感もわりと高く、高域は響きが美しいけれども、あまりきつくなりすぎないよい特性だと思います。低域は多くなりすぎずに程よくいい感じ。周波数特性のバランスはわりと優等生的です。
ヴォーカルは少し前に出る感じで、明瞭感も高く聴きやすいと思います。あまり低域が中域をマスクしている感も少ないと思います。
全体に厚みがあって、音楽を聴く魅力があります。この価格でのマルチドライバー機としてはなかなか良いと思います。

次にVocalモードにしてみます。添付のピンで1番を左右ともONにすることでVocalモードになります。ちょっと細かいのでやりにくい点はありますね。変えるとVocalというよりも全体が前に出る感じではあり、全体にやや甘めな感じになります。次にDetailedにするVocalよりはやや引いた音になって聴きやすくなる感じですね。Bassにすると低域が盛り上がるというよりはヴォーカルが少し引いた感じになると思います。

試聴ではデフォルトのバランスが良いのであまりスイッチで変える必要性はないように思うけれども、いろいろと自分の音楽で聴いてみてモードを使い分けるとよいのかもしれません。テイストが少しずつ異なるような感じだと思います。これはもうちょっと激変したほうが面白いのではなかったかと思います。

* SR(2HI,1Mid,1Low) 14.8Ω 42,000円 (発売記念特価 38,000円 税込)

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装着感としてはMRよりも小さい分で耳へのおさまりはよいという感じです。
音は高域が少し強めでややきつい感じはあります。実のところ高域ドライバー数の多いMRの方が質が良くなめらかな高域表現であると思います。
低域はMR同様にわりと穏やかであまり強くはないですね。SRでもBASSモードを試してみたけれども、あまり激変する感じではなくやや低域が盛り上がる感じです。こちらもMR同様に基本のデフォルトモードのバランスがよいので、スイッチでもっと味付けしてもよかったと思います。

* JR(ハイブリッド、1Hi,1Mid,1DD) 8.6-9.5Ω  26,000円 (発売記念特価 18,000円 税込)

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JRのみダイナミックドライバーとのハイブリッドでベント穴があります。
高域はあまりきつくなく聴きやすい感じです。伸びも悪くないのですが、MRと比べると情報量には欠ける感じがします。
低域はハイブリッドらしくたっぷりとしていてSR/MRよりもだいぶ低域が多いように感じられます。躍動感があって、音楽を楽しく聴くことができます。低価格でハイブリッドらしい楽しさを感じられる良い機種だと思います。
スイッチの切り替えもこのモデルが一番違いが分かるような気はします。

3機種ではMRとJRが価格にしては音が良い感じがするので、この二機種のどちらかがお勧めです。


○ Creator Cable (香港)

こちらは高級な交換ケーブルのブランドです。2010年よりハンドメイドにより交換ケーブルのOEM展開をしていたブランドで、2018年にそのノウハウを生かした自社ブランドの「CREATOR」を立ち上げたということです。

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特徴としては音色に分けたケーブルの展開をしていることで、リファレンス的な位置づけのSilver4、ボーカル表現に重きを置いたVocal cable、音楽のたたずまいの再現と高品位な高域に重点を置いたというMusical cableの3種類があり、それぞれに2pin、MMCX、Fitearの3タイプが用意されています。アンプ側は4.4mmバランスです。

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FitEar (335univ)

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MMCX (HS1675SSS)

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2pin (Maverick3 CIEM)

またアダプターも多種類用意されています。

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音は代表してMMCXタイプをAcoustune HS1670SSで聴いてみました。されざれ自分でのエージングはしていない状態です。共通して高級ケーブルらしく重く硬いケーブルで、耳にかけるところの癖が付けられていないので耳にかける使い方はやややりにくいところはあります。タッチノイズはかなり少ないと思います。

* Silver4 (特殊処理、最高級高純度、純銀線) \ 235,000税込

リファレンスというだけあって、音のバランスが良いと思います。たしかに純銀らしい上質感があると思います。
ちょい聞きには低域が多いようにも感じますが、高域もよく伸びていて、とてもワイドレンジに感じられます。音の広がりも3本の中で一番広いですね。透明感が高く解像力が高いが、軽いとかきついという感が少ない感じです。
音に厚みと重みがあってよくある「銀線です」というようなシャープさのみを主張するケーブルではないと思います。上質な銅線にも思えるくらいです。それでいて低域のインパクトに切れあじがあって音の歯切れが良いところは銀線らしいですね。低域の深みと重さもよい感じです。
ヴォーカルもよく聞き取れるので、全体的に明瞭感が高い上質なケーブルだと思う。これはかなりレベルが高いケーブルです。

* Vocal (特殊処理、銀メッキ高級OFC) \ 118,800税込

Silver4と比較すると高域と低域のワイドレンジ感が少なくなり、やや小さくまとまった音になりますが、低域のインパクト感も高域も悪くはありません。
特徴はやはりヴォーカルがとにかく明瞭感が高いとともにとても前に出てくる感じです。相対的にヴォーカルに注意が行くような音です。Silver4のヴォーカルも明瞭感は高いが、少し奥にいて客観的な感じがします。

* Musical (特殊処理、銀メッキ高級OFC) \ 173,000税込
特殊処理銀メッキ特殊OFCという点でヴォーカルと同じですが、こちらは各パートにバランスが取れていると思います。全体的に厚みや程よい暖かみがあって、いわば銅線的な鳴りのケーブルです。きつさも少ないので音楽を長い時間楽しく聴くことができると思います。Silver4よりも再現力ではやや劣るけれども、わりとオールマイティに使えると思います。

3機種では再現力はSilver4ですが、Musicalも悪くありません。
個人的には特にSilver4はかなり気に入りました。純銀線のお手本的な音の良さがあると思います。銀コートはときにハイや子音がきつくなるのですが、ほんとによい純銀線はSilver4みたいにきつくないのですよね。
もう一つヴォーカルは癖がありますが、特徴的なのでヴォーカルものをよく聞くという人にお勧めしたいと思います。他の二本はオールマイティに使えると思います。
posted by ささき at 15:12| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月21日

Chordのホームページに見る2goと2yu

先週のCanJam NYで披露されたChordのPoly相当の2goと、2goのデジタル出力モジュールである2yuですが、Chordのホームページに情報が公開されています。2goはTo Goとうちのブログ名と同じく、日本語の「テイクアウト」と同じで外に持ち出すという感じの名前です。

2go
https://chordelectronics.co.uk/product/2go/
2yu
https://chordelectronics.co.uk/product/2yu/

2goの方は予想通りにPoly相当で、Polyとの違いはMIcroSDが2基あるということと、有線イーサネットのRJ45の口があるということ。
それと特徴的なのはオートスイッチングという機能で、PolyではDLNAとRoonを切り替えが必要でしたが、おそらく2goではこれが不要なんではないかと思います。

2yuの方ですが、基本的には2goと組み合わせてデジタル出力端子を提供してネットワークブリッジとして使い、Hugo2以外にも使えるようにした機種です。CanJamではHugo TTと組み合わせてデモしていました。
ただ説明をよく読むとなかなか興味深い機能があり、2yu内部にもプロセッサーが内蔵されていて接続するDACに応じたダウンサンプリング機能が用意されています。
またこのプロセッサーはPLLにも使用していると書かれています。PLLというかこのリサンプル機能はおそらくASRCとして働いてジッターを低減させるのではないかと思います。ここは推測なので後で確かめてみたいですね。
それと注目は2yuは単に2goのデジタル出力モジュールというだけでなく、2yu単独でPCと繋ぐことができるようですね。おそらく2goと接続するMicroUSBの口を直にPCに繋げるんではないかと思いますが、これも確かめたいところ。

2yuは思ってたより深い...
posted by ささき at 19:17| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月13日

HeadfiのCanJam NYプレビュー動画、Chord 2goいよいよ発表

今週末にHeadFiのイベントであるCanJam NYが開催され、展示品のプレビューがHeadFi TVで公開されています。
https://www.head-fi.org/threads/canjam-nyc-2020-february-15-16-2020.918387/page-35#post-15464227



1:06 Chord 2goが発表されています

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Hugo2のワイヤレスモジュールで機能的にはPolyと同じようでDLNA,RoonReadyの他にQubuzなどのストリーミング機能も付いています。
加えて有線のイーサネットコネクタがついています。SDカードスロットは二つ。スイッチ不要で入力を切り替えられます。

3:19 2goはアナウンスされていたんですが、ほんとのサプライズ。Chord 2yuが出ます。

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これはHugo2ではなく、2goに接続して使うものです。2yuは2goのデジタル出力先を提供するもので、これを2goにつければ2goを汎用のコンパクトなネットワークブリッジ(ネットワークトランスポート)としてHugo2以外でも使うことができるわけです。BNCデジタル出力、光出力などが装備されています。

4:24 HEDD Heddphoe AMTドライバー
スタジオモニターのようなニュートラルでマイクロダイナミックス(諧調性)が豊富と言ってます。

6:25 DUNU DK-3001 pro, Luna
Lunaはポタフェスでも出てましたが、ピュア・ベリリウム振動板です。

14:25 HIFIMAN DEVA 安価なワイヤレスヘッドフォン

15:00 12月にわたしがJudeをfinal storeに連れて行った話が出でfinal A8000が紹介されています。
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A8000はきつくならずに解像力が高いと言ってますね。高域と低域も素晴らしくabsolutely superbと言ってます。

23:24 Warwick の静電型システムも気になっています。
25:45Cayin HA-6A KT-88使う真空管ヘッドフォンアンプって珍しい。EL-34も使えます。ポータブルのN6iiは日本でも披露されていますね。
27:48 Campfire Solarisスペシャルエディション フェイスプレートがきれい (すでに売り切れのよう)
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37:29 iFi hipdacももちろん出ます。drop can XXという新製品も出ますね。ゼンハイザー6xx系用のイコライザースイッチがあります。
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43:27 Shiitの$99のハイコスパコンボ
44:41 EarManのちょっと面白そうなDAC
46:24 ハイエンドクラスのinnuosのデジタル製品群

次のヘッドフォン祭ではこれらの日本披露も期待したいですね!
posted by ささき at 09:40| ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月06日

セラミック・フルレンジ振動板のハイエンドイヤフオン Simphonio VR1レビュー

Simphonio VR1はシングルドライバーダイナミックのハイエンドイヤフォンです。VR1は昨年の春のヘッドフォン祭に出展されて好評を得ています。この時はCHORD DAVEのシステムでデモされていて驚くほど高い音質を味わわせてくれました。

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私はその後に雑誌の記事を書くために再度借りたのですが、その時はまずAK380と組み合わせてみると、良いけれどもさすがにDAVEで聴いたほどではないか、とはじめは考えました。その後にSP1000と組み合わせたところ、あのDAVEと組み合わせたようなものすごい音質を再生して、えっなんでこんなにプレーヤーで違うのとあらためて驚いたのを覚えています。
それでVR1に興味を持ち、また貸し出してもらって今回詳細にレビューを書いているというわけです。VR1は七福神商事から発売が決定されて、フジヤさんで専売されます。今度のポタ研に出展されますので参考になればと思います。

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*Simphonioについて

この開発者の方とは随分前からメールでのやり取りをして知ってはいました。聞いた話によるともとは有名メーカーのOEMを手がけていたのですが、Sunriseという自社ブランドを立ち上げて製品を作ってもいました。私がまだヘッドフォン祭で自分のブースを持っていたとき(2011年頃)にデモ機を送ってもらって参考展示したりしていたのですが、ここにちょっと書いています。(自分のブースを持っていると他に参加できないので、のちに自分でブースを持つのはやめましたが)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/199951950.html

その後にSimphonioという会社を立ち上げています。Simphonioはとにかく音質を第一に提供するというブランドで、他の要素は二次的に考えるというオーディオファイル的なブランドということです。VR1の他にはDragon3というハイインピーダンスのインイヤー型のイヤフオンもありますが、こちらも見た目はスマホの付属イヤフォンだが音はよいというものなのでコンセプトがわかってもらえると思います。
他の製品などについては公式ホームページをご覧ください。
http://www.simphonio.com/index.html

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*VR1とセラミック振動板

VR1は形式的にはシングルドライバーのダイナミック型イヤフオンです。
ユニークなのはセラミックを積層させて形成した「セラミック振動板」を採用していることです。普通セラミックは陶器みたいなものなので成形して焼き入れして加工しますが、ここではまったく新しい方式でセラミックをあるベース素材に積層を繰り返すことで成形するという研究所レベルの技術をもちいて製作されています。良い例えかわかりませんが、セラミックの3Dプリントみたいなものでしょうか。

これはSimphonioの件の開発者の知人にこうした研究者がいて、その要素技術をなにかに応用できないかということで、 開発者がイヤフオンの振動板に応用することを思いついたということのようです。つまり他でこの技術が使われるということはないでしょう。

いままでもVSTのようにイヤフォンでいわばスーパーツィーターでのセラミック応用はあったのですが、この技術を採用することで14.2mmという大型のフルレンジ振動板が可能となりました。そしてもう一つ重要なポイントがありますが、これはもう少し後で書きます。

このセラミック振動板はセラミックなので軽くて硬いという、振動板に好適な特徴を持っています。硬くてたわみにくいので、ダイナミックドライバーが中央の一点で振動していても場所によって振動が異なるということが生じにくいわけです。このことで全面が均等に動きやすいので平面型のような特性を持つことができます。
また軽くてすぐ動けるので入力信号に正確で動きが早いという利点もあります。また止めたいときに止められるので余分な附帯音もつきにくいというわけです。
それなりの解像力だとそれなりの音になるし、解像力が高いとすごい音になるというのもこの辺から推測ができます。

そして先に書いたもう一つのポイントはこの積層方式の成形によって、振動板の厚みを局所的に自由に変えることができるということです。このことで振動板の周辺部・縁の部分を薄くすることで、あたかもスピーカーのエッジを持ったようにここだけ柔らかく作ることができるというわけです。
このことにより振動板の動きの自由度が高くなり、イヤフォンというよりはスピーカーのように深みのある音を出すことが可能になるということです。

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公式サイトから

このセラミック振動板のデメリットはやはり高価について、まだ大量生産に向かないということです。まだ研究室レベルの技術の応用ですからそれは仕方のないところでしょう。

*VR1の他の特徴

他のVR1のイヤフオンとしての特徴はダイナミック型なのでベント穴がありますが、ベントが二個あるという点です。これは振動板を挟むように前と後ろにいわゆるアコースティックチャンバーのような空気室があってそれぞれについているということです。一つは耳穴の内側に空いていて耳内の空気室と連動しているということです。これらのことにより振動板がより自由に、かつ最適に動くことができるので豊かな音を実現できるということです。
こうしたイヤフオンの工夫はさきに書いたような開発者の長年の経験からくるもので、けっしてセラミック振動板だけのアイディア企業ではありません。

またVR1の外観を特徴付けているのはサファイア製のフェイスプレートです。サファイアも硬いので強度を上げるためということもありますが、一番の理由は見た目の良さで、開発者の意向として宝石のような製品を作りたいので加工しやすく強度を稼げる宝石としてサフアイアを選んだということです。

* VR1とケーブルについて

このVR1の音を引き出すには、このブログを見ている人にはいうまでもなく良いケーブルが必要です。
VR1は発売形態としてケーブル無しと推奨ケーブル付きの二種類があります。

推奨ケーブルにはCS1とCS10があり、それぞれ3.5mm端子と4.4mm端子のモデルがあります。
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青いほうがCS10、黒いほうがCS1

CS10(いちぜろ)は単結晶の銅線と、銀メッキではなく無垢の銀線と、無垢の金線をよった線材を使用しています。

CS1は単結晶の銅線をクライオ処理したものと、シルバーの上にパラジウム(レアメタル)コーティングした線材を採用しています。

* インプレッション

Simphonio VR1は緑色の立派な化粧箱に入っています。中にはケーブルはなく、先に書いたようにオプション扱いになっています。イヤチップはいくつか入っていて、今回は標準添付のシリコンチップを試聴に使いました。

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公式サイトから

またイヤチップと共にユニークな形状のイヤフォンバッグもついてきます。

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VR1本体は14.2mmの大口径ということもあってそれなりに大柄な筐体ですが、耳に入れた時の装着感は悪くありません。金属製なのでずっしりとくる感じですね。ケーブルはCS1とCS10を使いましたが、どちらも凝った線材のわりには取り回しはしやすい感じです。ポータブルで使いにくいような硬いものではありません。この点で他の8芯線などの高級交換ケーブルなどに比べると使いやすい方だと思います。

はじめにAK380を使用してCS1で聴き始め、時折CS10に変えて違いをみてみます。

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まずいままで聞いたことがないくらいの高いレベルの透明感と解像力の高さに驚きます。解像力というよりも情報量の多さというべきかもしれません。音の響きというか余韻、いわゆる楽器の松ヤニがとびちるような感覚ですね。このVR1の音を特徴付けているのはこの豊富な情報量からくる緻密な音の再現力です。一音一音の音の余韻によって、ものすごく小さな音が積み重なって豊かな音空間を作り上げているという感じです。

例えばバロックバイオリンは典型的な例ですが、古楽器らしい倍音というか音の響きのこまかな音がよく聞こえて来ます。中高域はとてもシャープで鋭いのですが、ベルの音が整っていて淀みのない美しい音色を聴かせてくれるのも特徴的です。この辺はハイエンドでなければとうてい味わえないレベルの音楽体験といえるでしょうね。

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低音域もとても深く、ダイナミックドライバーらしい重みもあります。このため、ポップやロックのようなジャンルでもパンチのある音楽が楽しめます。ここはCS10に変えてみるとやや様子がことなり、CS1ではよりワイドレンジでより低い方の超低域が豊かであり、CS10はいわゆる低音を感じるところのやや上の方がやや強調されているように感じられます。

中域はもちろん声の明瞭感が高くはっきりと歌詞が聞き取れますが、ここでも情報量の多さがかなり効いていて、アカペラを聞くとよくわかるけれども、音の広がりと重なりが音のよいホールで聴いているようにリアルで鮮明に感じられます。
細かい音の重なりがとても立体的ですが、これはシングルらしい良好な位相特性による影響も大きいと思います。また楽器音が正確で、音色がそれぞれ違うのがよくわかるのも特徴です。

このVR1とCS1の組み合わせはおそろしく透明感が高く、解像力があるけれども、ずっと聞いていたくなるような豊かさがあって、この無数の音の粒子に包まれるような気持ち良さにいつまでも浸っていたい感じになります。
またCS1の特徴として透明感の高さ、ワイドレンジという他にわずかな心地よい味付けがなされているように感じられます。AK380はSP10000SS/CPなどのような特殊筐体とはことなり、それ自体に付帯音がないのでわかりやすいのですが、ちょっと隠し味的な味付けがなされているように思います。それがちょっと音を麻薬的な美しい魅力あるものにしているように思います。このために性能が高いからといって音楽を無機的に感じることはありません。CS10はもっと着色感は少なくプレーンな感覚です。

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次にSP1000に変えてみると、いっそう音レベルが高くなるのがわかります。特に立体感は顕著に良くなり、音の細かさも一層上がってきます。よく聞くSpanish Harlemもあまり聞いたことがないくらいの高いレベルの再現力で楽しめます。こういう試聴曲は文字通り飽き飽きするほど聞いているのですが、新しい魅力を感じさせてくれます。
またSP1000では鋭いベースパーカッションのインパクト・アタック感など打撃感がより高く感じられます。この辺はスピーカーオーディオでも再現が難しいところですが、AK380だと音の良さはよくわかるけれども、こうした音再現の凄みというところまでは及ばないように思いますね。
SP10000ではSSとCPの違いもかなり明確にわかるのですが、特にVR1ではCPがおすすめです。低域の深みと重みを堪能でき、高性能ながら美しい音色で長い時間でも聞いていたくなります。

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AK380にHugo2を加えてみてもさらに生き生きとした迫力ある音世界を聞かせてくれます。なにしろミニDaveのようHugo2ですから、再現レベルは東京インターナショナルオーディオショウに出てくるようなハイエンドスピーカーをきいているようなかなり高いものです。
情報量がたっぷりとしていて、それが音楽的に魅力的な音の豊かさ厚みにつながっているのがよい点ですが、こうしてみると普通のイヤフオンで拾いきれない小さな音はずいぶんあるものだと感心します。

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* ケーブルの違いについて

ケーブルの違いについてもう少しまとめてみます。ただし両方ともエージングはあまりしていない状態ですので、使い込むとまた印象は変わるかもしれません。

3.5mmと4.4mmのバランスを比べてみるとCS1/CS10ともに、バランスにすると音の広がり、音の力感ともに向上します。これは一般的なバランスとシングルエンドの差と同じですが、CS10の方がややバランスとシングルエンドの差が大きいように思います。これはおそらくCS10の低域の出方によるものだと思います。双方ともシングルエンドに戻すと音が軽めに感じられますが、線材がよいせいかあまり音が薄くなる感じはありません。

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またCS1とCS10の違いをいうと、CS1の方はより透明感が高く、周波数特性が良くてフラットに近く聞こえ、よりハイエンドで高域と低域がより広がって聞こえます。CS1はより声とか楽器の違いがわかる感じですね。またさきにも書いたように着色感というよりはより音が美しく聞こえます。
特に透明感の高さが顕著で、いままで聞いたケーブルの中でもかなり高いレベルです。
CS10の方はやはり高いレベルですが、先に書いたように少しですが低域に強調感があってよりポップやロックには向いている感じがします。 CS1はより良録音のジャズやクラシックに向いているような音再現です。

* まとめ

このVR1は音への追従性能が高く、かつポテンシャルが高いので、プレーヤー側のレベルを上げたり、よいケーブルを使うとそれがわかりやすいと言えます。ただし相性はあると思います。自分でもいろいろと手持ちのケーブルを使ったけれども、これだけVR1の能力を引き出せるものは実はあまりないので、推奨ケーブルセットをおすすめします。あるいは試聴会でいろいろと試してみるのがよいでしょう。

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このVR1に関しては「スマホで聴いても良い音を再生してくれる」と書くつもりはありません。持っている最高のプレーヤーを使ってみてください。ハイエンドプレーヤーを持っている人が、さらに高みを目指すためのイヤフォンといえるでしょう。

posted by ささき at 10:35| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月04日

Bluetooth LE Audioのアイソクロナス転送について

Bluetoothの新オーディオ規格であるLE Audioを含むBluetooth 5.2の最新改訂版(2020/1/6付け)のオーバービューが公開されています。
ここでは3つの追加が書かれていますが、ここでは3つめの(LE Audioのために)物理層にアイソクロナス(同時性)転送が追加されるというところについて書いてみます。(P26の3章から)

3.1.5のオーディオセクションで新しいLE Audioに対して、A2DPは古いBluetooth BR/EDRに基づいていると書いているので、LE AudioはA2DPとは異なるソフトウエア(プロファイル)になるような気がしますね。

3.2ではLE Isochronous Channel(アイソクロナス - 同時性転送)について書かれています。
これは複数のSink(受け手)が単一のソースから送信された時間的制約のあるデータ(time bounded data)、つまり音楽とかを同時に同期して受け取るということです。アイソクロナスというのは同時性とか等時性と訳されますが、時間が意味を持つという意味です。

これは定められたレイテンシー通りに転送する、time-limited validity(時間的有意)がなくなれば捨てられるとありますので、時間で受け取れなかったデータは欠けるということになりますね。
アイソクロナスはUSBにもIEEE1394にもありますが同じです。つまりデータの正しさよりも時間が優先ということです。たとえばアプリデータの転送ならばこれは許されなく、時間よりもデータの正しさが優先なので欠けたら再送させます。同時性転送の場合には欠けたら時間的にもう有意ではないので再送しても意味がありません。
ちなみにUSBの場合には転送モードのひとつとしてデータ転送用のバルクモードなどと並んで音楽用にアイソクロナスがあって、アイソクロナスの下にアシンクロナス(非同期)とシンクロナス(同期)があります。

ユースケースとしては次のものがあげられています。

1. Personal Audio Sharing
ひとつのスマートフォンから何人もの友人が同時に音楽を楽しむこと。この場合は友人たちのBluetoothヘッドフォン(sink)が一つのグループとみなされるようです。
2. Public Assisted Hearing
シアターなどで映像の会話をブロードキャストするということ。
3. Public television
例えばジムなどで映像の音声を同時に聴く
4. Multi-language Flight Announcement
飛行機内でBluetoothイヤフォンなどで言語選択してから機内放送を聞く。

3.2.2は具体的なアイソクロナス転送が書いてありますが、ここは技術者向けです。この転送は新しいLEアイソクロナス物理チャンネルが使われますが、コネクションあり(CIS - connected Isochronous stream)となしがあって周波数ホップしてアンカーを決めLE-SとLE-Fがどうたらこうたらというやつです。このコネクションありが友人同士で、コネクションなしがブロードキャスト(不特定多数)となるでしょう。
3.2.2.2のところでCISはグループ化してCIG(Connected Isochronous group)となり、それぞれの転送スケジュールはイベントとサブイベントで制御されるとありますので、これがさきに出てきた受信グループでしょう。このイベントは5msから4sまでの1.25ms単位のトリガーになるというので、LE AudioにおけるBluetoothのレイテンシーは理論的な最小値が5msで、レイテンシーのカウントは1.25ms単位となりますね。

3.2.2.4ではグループ内のSinchronization(同期)が書いてありますが、ここはたとえば完全ワイヤレスの左右ユニットの同期のことが触れられています。完全ワイヤレスの左右は二つのSink(受信機)とみなされます。それどれCIS(コネクションあり)でスマートフォンと接続され、CIGとみなされます。
この転送は連続したイベントになります。それぞれのイベントは決められた遅延時間内にすべてのSink(左右イヤフォン)に届いてはじめて再生されます。つまり一つ目のイベントはかならず二つ目のイベントよりも前に再生される(レンダリングされる)ため、左右の音の同期が確保されるということになるのでしょう。
ちなみに今話しているのは物理層(パケットの送受信)の話なので、プロファイルなど上の論理層では違った遅延の定義があるかもしれません。


ちなみにCIGには31個までのCISを含むことができます。完全ワイヤレスは2つのCISを使うので、完全ワイヤレスを使う場合には、15人まで同時に音楽シェアリングできるということになりますね。15人も一緒に聴きたい友達がいる人はそうないと思うのでこれはいいでしょう。

ブロードキャストではコネクションなしなので、いささか状況が異なりますが、いずれにせよブロードキャスト内にある完全ワイヤレスでも左右の音は同期しなければならないので、やはり似たような同期メカニズムがあります。
BIGでも持てるBISは31までなので、空港ラウンジ内に完全ワイヤレスの人が多いとちょっと困ったことになるように思いますが、その場合は論理層でなんとかするのでしょうね。

あと3.2.2.7のセキュリティですが、この辺はペアリングに関係してきますね。ペアリングは送り手と受け手が相互にカギを交換することです。
コネクションありはいままでのペアリングとして、コネクションなしのブロードキャストってペアリングはどうなるんだと思いますが、このために新しいLE security Mode3という新しいセキュリティレベル群が用意されています。レベルはセキュリティなし、認証されたブロードキャストコードの使用、未認証のコードの使用とあります。おそらくコードは以前のBluetoothの様に画面に3241とか出てきてそれをタイプインするというようなことだと思いますが、イヤフォンでそれができるのかはちょっとわからないところですね。現実的にはおそらくセキュリティーなしのモードになると思います。
posted by ささき at 21:03| __→ 完全ワイヤレスイヤフォン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月03日

ニールヤングがMacbookの音質を批判

先週のトピックにニールヤングがvergeのインタビューに答えてMacbookの音質を批判するということがありました。
この辺はASCII.JPの記事に書きましたのでこちらをご覧ください。
https://ascii.jp/elem/000/004/001/4001655/?topnew=6
posted by ささき at 21:14| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする