
最近はストリーミング音源への移行やiPhoneでのイヤフォン端子の廃止など、ますますBluetoothを使う機会が増えていますが、流行りの完全ワイヤレスではどうしても音質的に満足できないというマニアの方々も多いと思います。そうした時には従来のイヤフォンにBluetoothレシーバーを使いますが、今度はBluetoothレシーバーに音質の良いものがあまりないというジレンマに悩まされます。
そうしたユーザーに向いているのが、この音質重視のBluetoothレシーバーであるOriolus 1795です。イヤフォンメーカーが作ったポータブルアンプっていうと、Heirのアナログ入力時代のRenditionとか、RHAのデジタル入力のDacamp 1などがありましたが、Oriolus 1795はBluetooth入力でストリーミング時代に即して良い音で聴いてほしいという提案なのでしょう。
* 特徴
Oriolus 1795はコンパクトなBluetoothレシーバーでクアルコム製Bluetoothチップを搭載してBluetooth5.0に対応しています。SBC、AACの他にLDACにも対応しているのでWalkmanユーザーにも向いています。

最大の特徴はその高音質設計です。たいていのBluetooth機器はBTチップ内の付属品的なDACでDA変換されていて、コーデックの問題以上にそこで音質が悪くなってしまうのですが、Oriolus 1795ではBluetoothチップからデジタル信号を抜いてそれを本格的なDACでDA変換して、内蔵のアンプで増幅することで高音質を実現しています。
注目すべきはそのシグナルパスの強力さです。Bluetooth信号は普通最大でも48kHzですが、Oriolus 1795ではまず入力した信号を192kHz/24bitにアップサンプリングします。これのためにサンプル変換専用のチップであるAK4125が搭載されています。それを据え置きオーディオ機器でもよく使われる高性能DACチップであるPCM1795(名の由来)に送って高音質の音を再現します。
しかもそのあとにバランスアンプ回路があつて、4.4mm端子でバランス出力ができます。またそれとは別に3.5mm端子専用のシングルエンドアンプ回路も備えています。こんな小さな筐体にこんな本格的な設計がなされています。
この他にも機能的にはマイクを備えているので会話が可能で、NFCペアリング、ワイヤレス充電も備えています。(USB DAC機能もあるようです)
再生時間は7時間ということです。サイズは95.9x50.7x15.4mm、重さは109gです。
* インプレッション
以下はiPhone Xを組み合わせています。
本体はアルミ筐体+両面高強度強化ガラスでなかなかにきれいです。上面に開いた4.4mmバランス端子がコンパクトな筐体になかなかの迫力かあります。



本体側面にはハードの操作キーがあります。ボリュームはiPhone側よりも細かいのでこちらで操作したほうがなめらかな音量調整ができます。
Bluetooth機器としての接続性は良く、電車で使っても特に問題になることはありません。

音はCampfire Audio Solaris(4.4mmバランス)、Acoustune HS1670SS(3.5mm)を組み合わせてみました。
Oriolus 1795を普通のBTレシーバーと考えて聴き始めると、音が良いのにちょっと驚きます。まず音場が広くホールのように立体的に広がりのある音空間が楽しめます。ただ幅が広いだけではなく豊かで厚みがある音再現が堪能できますが、これはBluetoothイヤホンではちょっと無理な音です。また緻密で解像感が高い音で、ギターのピッキングでも単にシャープなだけでなく余韻の響きや音の厚みが美しいのも特徴的です。マルチBAのハイエンドIEMでも普通のDAPと遜色ないレベルの高い音が楽しめます。
全帯域でクリアで鮮明であり、解像力も高くハイエンドマルチBAでの音の繊細さも活かせます。加えてダイナミックドライバーでのパンチもあり躍動感もあります。

特に4.4mmでの音は良好で、力感があって駆動力が高く感じます。音の広がりも一段と良く、バランスらしい一段レベルの高い音が楽しめます。Solarisでは音の細かさと低音のパンチがよく生かされていてハイエンドハイブリッドイヤフオンにもよく合います。
またHS1670SSとの組み合わせでは3.5mmシングルエンドでも十分以上の良好な音質が感じられます。HS1670SSの持ち前の中高域のきれいな伸びやかさの再現はもちろん、低域ではミリンクス振動板らしいパンチの良さと厚みがあって打撃音が気持ちよく深く感じられます。
iPhoneの中のロスレス音源だけではなく、ロッシーのストリーミングで聴いていても滑らかでキツさがあまりありません。ロスレス音源もBTのコーデックでいったんロッシーになるのですが、ワイヤレスとかロッシーの音は有線とかロスレスに較べるとどうしても粗くて乾いた薄い音になってしまいます。しかしこうしたソースの音がロッシーで濁っていても適切なフィルターで濾過すればきれいにできるという感じですね。
わたしみたいにiPhoneに100GB以上のロスレス音源を入れてる人も、ストリーミングオンリーという人も問題なく使えます。

前に雑誌でレビューを書いたときにLDACでWalkmanから聴いたことがあって、その時はワイヤレスとは思えない音と思いましたが、iPhoneで聴いてもやはりワイヤレスで聴いているとは思えません。これもコーデックというよりも内蔵アンプの音質が良いからだといえるでしょう。
Oriolus 1795は単にワイヤレス化するだけのBTレシーバーとは別物で、積極的に音を良くするBT入力ポタアンと言ってほうが良いでしょう。BTレシーバーとしては音が良いと言うのでなく、十分DAC内蔵ポタアンに匹敵する音です。BTレシーバーとしては大柄かもしれませんが、DAC内蔵ポータブルアンプとしてはバランス対応をはじめ、かなりコンパクトにこれだけの音をまとめ込んだと感心します。
* まとめ
AtlasからSolarisに変えると音質の差がはっきり分かるのもイヤフォンの違いを楽しめることを示しています。せっかくハイエンドイヤホンのためにBTレシーバー使うならこのクラスの音でないともったいないと思います。いまの時代は超高性能イヤフオンに向かうベクトルと、手軽なBTワイヤレスみたいなベクトルの分断が起こっていますが、Oriolus 1795はそのジレンマを解消する良い解法になると思います。

ハイエンドイヤホンを使ってるけど、ストリーミングやスマホ内蔵音源も生かしたいというハイエンドイヤホンユーザーにおすすめのワイヤレス機材と言えるでしょう。