恒例のヘッドフォン祭のレポートです。
私は今回は1日目にトップウイングさんのSONOREの紹介と、ヘッドフォンブック・ヘッドフォンアワードの司会進行を務めました。二つイベントがあると準備やら何やらで忙しく、1日目はほとんど見られませんでしたが、2日目はけっこう見て回りました。今回は10連休のせいか、土曜日のお客さんが多かったように思いましたね。
Spirit trinoの開放型twin pulse。立体的な音場が特徴的ですが、躍動感もあるように思いますね。
Spirit Trinoの密閉型。密閉型は周波数特性を取るのが難しいので初めからイコライザーありきで設計したのがポイントということ。試聴もまず据付のDAPを使った方がとても音が良かったです。イコライザーカーブはダイナミックレンジのヘッドルームも考慮したもので、製品につけて提供するということ。
Dream XLSベータ版。OSLOケーブルが付属してます。Dreamのシャープさを持ったまま音楽的になった印象。ドライバーも再設計されてるとのこと。
ファイナルの新Bシリーズ。Eシリーズは万能設計だったが、Bはもっと音をモデルごとに特化させたとのこと。たとえば音にはまれば手放せない感じになってほしいとのこと。モデル名は上下を意味せず開発順。B1は解像感優先、B2はダイナミックレンジ優先、B3はB1とB2の折衷とか。音もファイナルらしくすこぶる良かったですね。特にB1。
Campfire Audioからは新製品IOとPolaris改。IOは2ドライバーで音響抵抗レス、コスパの高いエントリーモデルで、Polarisは改良点が多数で価格は前モデルと同じくらいとのこと。
ミックスウエーブさんではマクベスカスタム。明瞭感も高く立体感が独特で良かったですね。
今回は以前からちょっと知り合いのベトナムの会社(会社は中国かも)のSimphonioというブランドが参加していました。某有名メーカーのOEMをやってたりするところで技術力はたしかだと思います。とにかく音質第一をあげていて、いくらなんでもやりすぎかという普通の100円イヤフォンのようなイヤフォンが5万円という Dragon3がまずすごい。チタン振動板と優秀な線材のケーブルだそうです。Yuin PK1を思い出しますね。
また右のセラミックドライバーというモデルもかなり音が良かったですね。
フォスター電機はDIYコンテスト。すぐユニット売り切れたとか。
おなじみJabenのブースでは新製品tralucentのIEMがユニークなのがいっぱい出ていました。
これダイナミックが「一発で」ハイとローを受け持ち同軸BAがミッド。ダイナミックのミッドはクロスオーバーでカットしてるよう。
他にも好評ファンタジーアンプが4.4mm端子を搭載したよう。
HIFIMAN の静電型システムJade II。ものすごく軽量で、ドライバーがキラキラ光るとか面白い。音も軽快感がありますが、アンプの駆動力が高いというか、能率が高いというか。
エミライさんのところ、ラールレグジットのヘッドホン。これで完成形ですか?って開口一番に聞いてしまいましたが、これで完成形のフルオープンのリボン振動板だそうです。AKGのK1000みたいな感じでスピーカーアンプで駆動させます。
WestoneはBシリーズがメインとなります。こちらについては私の書いたPhilewebの記事もどうぞ。
LP6TI199もやはり音質の良さに関心高く、さっそく売れたそう。LP6はその低価格版。
HugoIIの外殻の交換で5万円くらい。
今井商事さんのところのWooオーディオの石のアンプ。バランスインのバランスアウト。20万弱くらいのよう。USB DAC付き。
ファーウエイのHWAレシーバー。音は悪くないけどせっかくなのでMMCX対応とかにしてちょうだいってお願いしました。
なんだこれは。
根元さんの中国オーディオショウ報告会は、持ち帰った怪しい機器の試聴会になりました。意外とみんな音良かったのに驚き。ただ思ってたより価格も高いですね。長細いQLSのDAPが7-8万円、小さいDAPが5万円くらいというと音は悪くないけど、ちょっと高め。
ショウの開催はJabenのようなディーラーが中心でerj.netがスタッフ参加してるような感じのよう。ほかにもCanJamはHeadFiがやってるので群雄割拠みたいな感じでいろいろなショウが行われているのでしょう。イヤフォンよりもヘッドフォンが優勢で、イヤフォンは2000元(3万円)くらいがひとつの上限のよう。
そして、、
平成のWシリーズか、何もかも、みな懐かしい。
ということで令和のヘッドフォン祭も楽しみです。
Music TO GO!
2019年04月29日
2019年04月26日
Astell & KernからKANNの新型、KANN CUBE登場
Astell & KernからKANNの新型であるKANN CUBEが登場します。
これはKANNのデスクトップ的な使い方を突き詰めた新型で、旧KANNは併売されます。特徴としては従来よりひとまわり大きくなり、CDリッパーと合わせたデザインとなりました。またES9038proをデュアル搭載し、ラインアウトにmini XLRを採用しています。XLRの場合はアンプをバイパスする仕様のようです。
またいままでより一段高いハイゲインが設けられましたが、これは平面型ヘッドフォンを意識してのことだと思います。(従来のハイゲインはミドルゲインになっています)
音質もなかなか良好でした。家で使うことが多いという人には興味ある新製品だと思います。
現行KANNとの比較
これはKANNのデスクトップ的な使い方を突き詰めた新型で、旧KANNは併売されます。特徴としては従来よりひとまわり大きくなり、CDリッパーと合わせたデザインとなりました。またES9038proをデュアル搭載し、ラインアウトにmini XLRを採用しています。XLRの場合はアンプをバイパスする仕様のようです。
またいままでより一段高いハイゲインが設けられましたが、これは平面型ヘッドフォンを意識してのことだと思います。(従来のハイゲインはミドルゲインになっています)
音質もなかなか良好でした。家で使うことが多いという人には興味ある新製品だと思います。
現行KANNとの比較
2019年04月22日
DITAの新機軸、Project71レビュー
DITAはAnswerからDream、Twinsと様々な製品ラインナップを広げていき、シリアスで硬派なダイナミック型イヤフォンの代表格の一つになりました。PROJECT 71は同社の記念モデルであり、全世界で300個の限定生産販売となります。
Project71の名の由来はDITAの親会社であるシンガポールのPackager Pte Ltd.が1971年に創業されてから47年目を意味するということです。この会社は自動包装機械のメーカーであり、DITAイヤフォンの優れた機械加工技術はこの会社あってのものです。
* Project71の哲学
他のDITAイヤフォン同様にこのProject71もCEOであるダニー・タン氏の理想の実現と言えます。ダニー氏がProject71の秘話を教えてくれたんですが、まずそのキーワードは"enjoyable"、つまり楽しめることです。
彼がProject71のアイディアを思いついた当初、2つのことを考えたということです。
まずひとつは昔ながらのイヤフォンの形を取りながらも、他から大きく違う個性を持つものです。使いやすく楽しみやすいということですね。彼は高品質なものこそ、マニアだけではなく多くの人に楽しめるものでなければならないと考えているということです。
この場合は耳に回すいわゆるShure掛けタイプのイヤフォンはプロやマニア向けであり、一般の音楽愛好家にはあまりなじみがないので、普通に耳にストレートに装着できるものを目指しているわけです。
マルチドライバーのように手段が目的になりがちな、あまりマニア的なものに陥らずにいかに音質をよくするかというところに注力したい、音楽を楽しむのに手段を忘れるようなものを作りたいというわけです。
つまり良い靴がそれを履いていことを忘れるようにしたいというわけですね。
もうひとつは従来のDITAのラインナップとは別のラインナップを作りたいということです。AnswerからTwinsのようにどこかメカニカルでオーディオファイル的なものもよいけれども、もっと別のアナログ的なものを作りたかったということですね。
* 特徴
そうした点で今回は素材・材料を重要だと考えたということです。Project71では真鍮とマッカサルエボニーという楽器にも用いられる木材を組み合わせています。
このように真鍮や木材が使われるのには音質的な意味が必要であり、よくある木製のイヤフォンのように表面だけ木材で中身がプラスチックというようなものは作りたくなかったということです。ただしここがかなり難関となります。Project71のポイントの一つはこのように真鍮と木材を組み合わせたという点で、独特の音響効果を生み出せますが、金属と木材という加工の難易度はかなり高いということです。
Project71ではパーツを個々に製作されて重ねられていきますが、双方の加工中の熱膨張率の違いなどで精密な加工は難易度が高かったようです。特にMMCX端子の部分の接合が難しかったということです。またベント穴を設けるのも大変で、Project71では大きな独自の音響チャンバーを作ってエアフローのコントロールをしているのですが、その設計も難しかったようです。
また、音響的な効果だけではなく、この筐体は使い込むほどに味が出てくるということで、まさに持ち主の個性が出るでしょうとのこと。
ドライバーには複合材を採用した第3世代の新しいもので、音楽的な情感に訴えるような特性を持たせたということ。
木材と真鍮製の筐体、新型のドライバーに加えてProject71のさらなるポイントは独自開発のOSLOケーブルです。
従来のVan Den Hulのケーブルは硬いこともあり、今回の製品には向いていないので、日本のケーブルメーカーと共同で開発したのがOSLOケーブルです。
OSLOはまったく新しいケーブルでOil Soaked Long Oxygen Free cableのことです。Oil Soakedはオイルに浸したという感じの意味で、金と銀の粒子がサメ油に浮いているような感じです。これによって顕微鏡的な大きさでのPC-tripleCの高品質線材表面の不規則さを整えて、信号伝達を高めて豊かな音と細かなニュアンスの再現に貢献するということです。たぶん接点活性剤のようなものではないかと推測しています。
端子は今回はMMCXであり、ノッチがあって不要なMMCXの回転をロックするメカニズムがついています。もちろん好評のAwesomeコネクターが引き続き採用されてリケーブルを簡単にしています。このAwsomeコネクターはかなり便利で、3.5mmと2.5/4.4mmバランスをすぐに交換できるのでDAPとスマホを使い分けて聞いているときなどに便利です。端子だけポケットに入れておけばいいですからね。
* パッケージ
記念モデルということもあって、パッケージもなかなか豪華なものです。
* 音質
Project71の最大のポイントはその独特の音質です。
音はこれまでのDITAの硬質なイメージとは変わって、暖かみのある滑らかなものです。いわば聴いていて楽しく美しい、音楽的というべきものですが、DITAらしい切れ味の良さは残していて、ダイナミックにしては解像力もかなり高いと思います。音楽的で甘いというと、クリアではなく鈍い音のように聴こえますが、Project71の場合はそうしたことはなく、甘くて滑らかな音ですが、透明感が高く歯切れの良さ・解像力はtwinsと比べてもそうひけをとらないでしょう。
基本的な性能が高く、ハイエンドDAPの底力も引き出しています。AK380よりもSP1000でより実力を発揮できるのはDITAならではで、楽器の響きが豊かで、音楽の情熱を伝えてくれると言えますね。
能率は低めですが、スマホやBTアダプターで鳴らせないほどではありません。
SP1000CPとProject71
Project71の音の個性で際立っているのは音の滑らかさ・スムーズさの部分で、なかなか書いて説明がむずかしいのですが、ほかのイヤフォンと比べてもわりと差がわかります。バターのようにスムーズ、シルクのように滑らか、という感じです。美しくきもち良いのでもっと聞いていたくなるという感じの音です。
Mojo+PolyとProject71
DITAはダイナミック型らしい低域の充実感が良さの一つでしたが、Project71でも低域の迫力はいっそうパワフルです。低域の量感はわりとある方ですが、膨らんで贅肉がついている感じはなく、すっきりとしてパンチがあります。音は低音に迫力があり暖かみのあるダイナミックドライバーらしい音ですが、低域の細かな再現力もDITAらしく情報量が多く、楽器の響きがよく聴こえます。中音域でのヴォーカルの深みも良いですね。
Awesomeプラグで簡単に2.5mm/4.4mmに変えることでバランス駆動でよりスケール感も楽しめます。SP1000でバランス駆動で使った音の迫力と躍動感の魅力は格別です。
音はケーブルを変えてもこうした傾向があるのでOSLOのみの効果ではありません。
* 別売りのOSLO交換ケーブル
OSLOケーブルにはリケーブル用の単体売り交換ケーブルが用意されています。MMCXと2pinです。ちなみにMMCX仕様でもProject71に付属しているケーブルとは端子部分の形状が異なり、またメモリーワイヤになっています。
MMCXはどのイヤフォンでもあまり問題がありませんが、2ピン版は最近の2ピンが出たり引っ込んだりしているので適合するのがなかなか見つからないかもしれないので、店で試着させてもらったほうが良いでしょう。
SolarisとOSLOケーブル
MMCX版をCampfire Audio Solarisにつけてみました。Solarisの標準ケーブルもかなりよいものが付属していますが、OSLOケーブルの効果は高く、いわゆるすべての音源を聴きなおしたくなるくらい向上効果があります。
音がよりリアルで滑らかに聴こえ、音の深みが増して濃くなるという感じです。また音場がさらに少し大きくなります。適度に暖かみは加わりますが、着色感が大きいわけではないようです。
ケーブル替えたというよりDACを変えたような感じでもありますね。一枚ベールをはがすというよりも、音色が別な感じになるという感もあります。
標準ケーブルに戻すと少しこじんまりとして、あっさりとした感じに聴こえます。
* まとめ
Project71のポイントは、普通でありながら個性的であること。
ストレートに耳に入れられる簡単な取り扱いで、真鍮と木材、そしてOSLOケーブルのもたらす音楽的で絹のように滑らかな音質、その材料がもたらす経年変化など持つ喜びもあります。
個性的という点ではDITAの中で個性的というだけではなく、シングルダイナミックの高性能イヤフォンの中でも個性的です。
DITAのラインナップに新しい魅力が加わったと言えますね。
SP1000などのハイエンドDAPでダイナミックドライバーの音楽性を楽しみたい人に薦めたいですね
月末のヘッドフォン祭にてぜひ試してみてください。
Project71の名の由来はDITAの親会社であるシンガポールのPackager Pte Ltd.が1971年に創業されてから47年目を意味するということです。この会社は自動包装機械のメーカーであり、DITAイヤフォンの優れた機械加工技術はこの会社あってのものです。
* Project71の哲学
他のDITAイヤフォン同様にこのProject71もCEOであるダニー・タン氏の理想の実現と言えます。ダニー氏がProject71の秘話を教えてくれたんですが、まずそのキーワードは"enjoyable"、つまり楽しめることです。
彼がProject71のアイディアを思いついた当初、2つのことを考えたということです。
まずひとつは昔ながらのイヤフォンの形を取りながらも、他から大きく違う個性を持つものです。使いやすく楽しみやすいということですね。彼は高品質なものこそ、マニアだけではなく多くの人に楽しめるものでなければならないと考えているということです。
この場合は耳に回すいわゆるShure掛けタイプのイヤフォンはプロやマニア向けであり、一般の音楽愛好家にはあまりなじみがないので、普通に耳にストレートに装着できるものを目指しているわけです。
マルチドライバーのように手段が目的になりがちな、あまりマニア的なものに陥らずにいかに音質をよくするかというところに注力したい、音楽を楽しむのに手段を忘れるようなものを作りたいというわけです。
つまり良い靴がそれを履いていことを忘れるようにしたいというわけですね。
もうひとつは従来のDITAのラインナップとは別のラインナップを作りたいということです。AnswerからTwinsのようにどこかメカニカルでオーディオファイル的なものもよいけれども、もっと別のアナログ的なものを作りたかったということですね。
* 特徴
そうした点で今回は素材・材料を重要だと考えたということです。Project71では真鍮とマッカサルエボニーという楽器にも用いられる木材を組み合わせています。
このように真鍮や木材が使われるのには音質的な意味が必要であり、よくある木製のイヤフォンのように表面だけ木材で中身がプラスチックというようなものは作りたくなかったということです。ただしここがかなり難関となります。Project71のポイントの一つはこのように真鍮と木材を組み合わせたという点で、独特の音響効果を生み出せますが、金属と木材という加工の難易度はかなり高いということです。
Project71ではパーツを個々に製作されて重ねられていきますが、双方の加工中の熱膨張率の違いなどで精密な加工は難易度が高かったようです。特にMMCX端子の部分の接合が難しかったということです。またベント穴を設けるのも大変で、Project71では大きな独自の音響チャンバーを作ってエアフローのコントロールをしているのですが、その設計も難しかったようです。
また、音響的な効果だけではなく、この筐体は使い込むほどに味が出てくるということで、まさに持ち主の個性が出るでしょうとのこと。
ドライバーには複合材を採用した第3世代の新しいもので、音楽的な情感に訴えるような特性を持たせたということ。
木材と真鍮製の筐体、新型のドライバーに加えてProject71のさらなるポイントは独自開発のOSLOケーブルです。
従来のVan Den Hulのケーブルは硬いこともあり、今回の製品には向いていないので、日本のケーブルメーカーと共同で開発したのがOSLOケーブルです。
OSLOはまったく新しいケーブルでOil Soaked Long Oxygen Free cableのことです。Oil Soakedはオイルに浸したという感じの意味で、金と銀の粒子がサメ油に浮いているような感じです。これによって顕微鏡的な大きさでのPC-tripleCの高品質線材表面の不規則さを整えて、信号伝達を高めて豊かな音と細かなニュアンスの再現に貢献するということです。たぶん接点活性剤のようなものではないかと推測しています。
端子は今回はMMCXであり、ノッチがあって不要なMMCXの回転をロックするメカニズムがついています。もちろん好評のAwesomeコネクターが引き続き採用されてリケーブルを簡単にしています。このAwsomeコネクターはかなり便利で、3.5mmと2.5/4.4mmバランスをすぐに交換できるのでDAPとスマホを使い分けて聞いているときなどに便利です。端子だけポケットに入れておけばいいですからね。
* パッケージ
記念モデルということもあって、パッケージもなかなか豪華なものです。
* 音質
Project71の最大のポイントはその独特の音質です。
音はこれまでのDITAの硬質なイメージとは変わって、暖かみのある滑らかなものです。いわば聴いていて楽しく美しい、音楽的というべきものですが、DITAらしい切れ味の良さは残していて、ダイナミックにしては解像力もかなり高いと思います。音楽的で甘いというと、クリアではなく鈍い音のように聴こえますが、Project71の場合はそうしたことはなく、甘くて滑らかな音ですが、透明感が高く歯切れの良さ・解像力はtwinsと比べてもそうひけをとらないでしょう。
基本的な性能が高く、ハイエンドDAPの底力も引き出しています。AK380よりもSP1000でより実力を発揮できるのはDITAならではで、楽器の響きが豊かで、音楽の情熱を伝えてくれると言えますね。
能率は低めですが、スマホやBTアダプターで鳴らせないほどではありません。
SP1000CPとProject71
Project71の音の個性で際立っているのは音の滑らかさ・スムーズさの部分で、なかなか書いて説明がむずかしいのですが、ほかのイヤフォンと比べてもわりと差がわかります。バターのようにスムーズ、シルクのように滑らか、という感じです。美しくきもち良いのでもっと聞いていたくなるという感じの音です。
Mojo+PolyとProject71
DITAはダイナミック型らしい低域の充実感が良さの一つでしたが、Project71でも低域の迫力はいっそうパワフルです。低域の量感はわりとある方ですが、膨らんで贅肉がついている感じはなく、すっきりとしてパンチがあります。音は低音に迫力があり暖かみのあるダイナミックドライバーらしい音ですが、低域の細かな再現力もDITAらしく情報量が多く、楽器の響きがよく聴こえます。中音域でのヴォーカルの深みも良いですね。
Awesomeプラグで簡単に2.5mm/4.4mmに変えることでバランス駆動でよりスケール感も楽しめます。SP1000でバランス駆動で使った音の迫力と躍動感の魅力は格別です。
音はケーブルを変えてもこうした傾向があるのでOSLOのみの効果ではありません。
* 別売りのOSLO交換ケーブル
OSLOケーブルにはリケーブル用の単体売り交換ケーブルが用意されています。MMCXと2pinです。ちなみにMMCX仕様でもProject71に付属しているケーブルとは端子部分の形状が異なり、またメモリーワイヤになっています。
MMCXはどのイヤフォンでもあまり問題がありませんが、2ピン版は最近の2ピンが出たり引っ込んだりしているので適合するのがなかなか見つからないかもしれないので、店で試着させてもらったほうが良いでしょう。
SolarisとOSLOケーブル
MMCX版をCampfire Audio Solarisにつけてみました。Solarisの標準ケーブルもかなりよいものが付属していますが、OSLOケーブルの効果は高く、いわゆるすべての音源を聴きなおしたくなるくらい向上効果があります。
音がよりリアルで滑らかに聴こえ、音の深みが増して濃くなるという感じです。また音場がさらに少し大きくなります。適度に暖かみは加わりますが、着色感が大きいわけではないようです。
ケーブル替えたというよりDACを変えたような感じでもありますね。一枚ベールをはがすというよりも、音色が別な感じになるという感もあります。
標準ケーブルに戻すと少しこじんまりとして、あっさりとした感じに聴こえます。
* まとめ
Project71のポイントは、普通でありながら個性的であること。
ストレートに耳に入れられる簡単な取り扱いで、真鍮と木材、そしてOSLOケーブルのもたらす音楽的で絹のように滑らかな音質、その材料がもたらす経年変化など持つ喜びもあります。
個性的という点ではDITAの中で個性的というだけではなく、シングルダイナミックの高性能イヤフォンの中でも個性的です。
DITAのラインナップに新しい魅力が加わったと言えますね。
SP1000などのハイエンドDAPでダイナミックドライバーの音楽性を楽しみたい人に薦めたいですね
月末のヘッドフォン祭にてぜひ試してみてください。
2019年04月13日
Poly 2.0アップデートとPolyでのAirPlay使用のヒント
Chord PolyがVersion 2.0となりました。
今回からアップデート方法が変更されましたので注意してください。まずGoFigureを最新版にする必要があります。
まず1.0.41というバージョンにいったん更新してから、GoFigureからDevice Settings→Firmware Updateです。あとはつけっぱなしでP-Statusが青赤黄色の点滅をするとファーム更新中です。今回から自動でリブートを行うようになりました。
2.0ではBluetoothやWiFiドライバーなどがより安定するとともに、今回から正式にRoonの認証を受けてRoonReady機器となりました。
Roonでつなぐと384kHzアップサンプリングをRAATで受けられるので、とてもポータブルで聴いているとは思えません。
またDLNAアプリからTIDALやQobuzのストリーミングの使用が可能となりました。MQA対応していないのでTIDALではハイレゾストリーミングできませんが、FLACで送ってるQobuzならハイレゾストリーミングもいけそうです。
方法はGoFigureから下にあるUserをクリックするとログイン画面が出ますのでストリーミングサービスのアカウントを入力します。次にPolyをOther(DLNA/MPD)モードにします。
コントロールはDLNAアプリから行うので、8playerアプリにいって、Polyをサーバー(DMR/DMS)として追加。
TIDAL(またはQobuz)というタブができているのでそこから階層を辿ってジャンルとかMyMusicで曲リストが出てきます。
また新規にRadio機能がついています。GoFigureからRadioを立ち上げることができます。BBCのラジオがプリセットされてますが、自分で追加できます。
ところでPolyはiPhoneを使っているときはAirPlayで接続できるのが強みです。Bluetoothと比べてみるとやはり音質的には一枚上で、特にハイエンドイヤフォンを使っているときはかなり差が出ます。Bluetoothと違ってロスレスのALACで送信していますからね。
とはいえAirPlayはWiFi環境下でないとつなげないので、外出時にはモバイルルーターを使わなければなりません。しかしPolyにはHotspotモードがあり、GoFigureが出てからはピンでつかなくてもGUIで変更できるようになりましたので、外出時でもPolyをHotspotモードに入れればAirPlayを使えます。Hotspotモードに入れて、Poly-xxxというネットワークにつなげばPoly自身が持っているローカルWiFiにつなげます。
ところが、、このままだとiPhoneがインターネットにつながらなくなり、Polyに音楽は流せますがネット作業がなにもできなくなります。
この時はWiFiとセルラー4Gを同時に使う方法があります。(以下iOS12の場合)
1.WiFiでPoly-xxxxにつないだら、その右の(i)を押下してください。
2.ipアドレスとサブネットマスクをメモって下さい。(たぶん192.168.1.xと255.255.255.0です)
3.その画面の「IPを構成」を"手動"に変えてください。
4. さきのIPアドレスとサブネットマスクを入力してください
5.画面を戻ります。これで右上に4Gと出ていたらインターネットがセルラーで使えています。音楽はいままでどおりにPoly-xxでつながっています。
今回からアップデート方法が変更されましたので注意してください。まずGoFigureを最新版にする必要があります。
まず1.0.41というバージョンにいったん更新してから、GoFigureからDevice Settings→Firmware Updateです。あとはつけっぱなしでP-Statusが青赤黄色の点滅をするとファーム更新中です。今回から自動でリブートを行うようになりました。
2.0ではBluetoothやWiFiドライバーなどがより安定するとともに、今回から正式にRoonの認証を受けてRoonReady機器となりました。
Roonでつなぐと384kHzアップサンプリングをRAATで受けられるので、とてもポータブルで聴いているとは思えません。
またDLNAアプリからTIDALやQobuzのストリーミングの使用が可能となりました。MQA対応していないのでTIDALではハイレゾストリーミングできませんが、FLACで送ってるQobuzならハイレゾストリーミングもいけそうです。
方法はGoFigureから下にあるUserをクリックするとログイン画面が出ますのでストリーミングサービスのアカウントを入力します。次にPolyをOther(DLNA/MPD)モードにします。
コントロールはDLNAアプリから行うので、8playerアプリにいって、Polyをサーバー(DMR/DMS)として追加。
TIDAL(またはQobuz)というタブができているのでそこから階層を辿ってジャンルとかMyMusicで曲リストが出てきます。
また新規にRadio機能がついています。GoFigureからRadioを立ち上げることができます。BBCのラジオがプリセットされてますが、自分で追加できます。
ところでPolyはiPhoneを使っているときはAirPlayで接続できるのが強みです。Bluetoothと比べてみるとやはり音質的には一枚上で、特にハイエンドイヤフォンを使っているときはかなり差が出ます。Bluetoothと違ってロスレスのALACで送信していますからね。
とはいえAirPlayはWiFi環境下でないとつなげないので、外出時にはモバイルルーターを使わなければなりません。しかしPolyにはHotspotモードがあり、GoFigureが出てからはピンでつかなくてもGUIで変更できるようになりましたので、外出時でもPolyをHotspotモードに入れればAirPlayを使えます。Hotspotモードに入れて、Poly-xxxというネットワークにつなげばPoly自身が持っているローカルWiFiにつなげます。
ところが、、このままだとiPhoneがインターネットにつながらなくなり、Polyに音楽は流せますがネット作業がなにもできなくなります。
この時はWiFiとセルラー4Gを同時に使う方法があります。(以下iOS12の場合)
1.WiFiでPoly-xxxxにつないだら、その右の(i)を押下してください。
2.ipアドレスとサブネットマスクをメモって下さい。(たぶん192.168.1.xと255.255.255.0です)
3.その画面の「IPを構成」を"手動"に変えてください。
4. さきのIPアドレスとサブネットマスクを入力してください
5.画面を戻ります。これで右上に4Gと出ていたらインターネットがセルラーで使えています。音楽はいままでどおりにPoly-xxでつながっています。
2019年04月11日
トップウイングでSONORE国内導入
うちのブログでは何回か取り上げてきたSONORE(ソノーレ)の製品がいよいよ国内でもトップウイングさんから販売が開始されることになりました。月末のヘッドフォン祭で発表となります。
SONOREはmicroRenduという製品で最近話題となり、いくつか製品があるのですが、まずultraRenduとultraDigitalを5月中旬頃に発売の予定ということです。
わたしは記事を書くためにデモ機を試用してみました。まず簡単にultraRenduを紹介しますと、背面を見てもらうとわかりますが、microSDスロット、RJ45ネットワーク端子、USB-A、電源端子というシンプルなものです。端的に言うとネットワークブリッジ製品で、PCにネットワークでつなげてUSBに変換してDACに出力する、というようなものです。SDスロットはSonicorbiterというOSを入れるスロットで音源ではありません。
PCからはRoon、MPD、DLNA、Squeezelite(SqeezeBox)などの出力先として見えます。
つまりいままでPCから直差ししていたUSB DACをultraRenduを介することで音質を上げるという製品です。聴いてみるとかなり効果は高いと思います。
実際に構成を見て、聴いてみるとよくわかると思いますのでPCオーディオ興味ある方はぜひヘッドフォン祭のトップウイングブースならびに発表会にお越しください。
SONOREはmicroRenduという製品で最近話題となり、いくつか製品があるのですが、まずultraRenduとultraDigitalを5月中旬頃に発売の予定ということです。
わたしは記事を書くためにデモ機を試用してみました。まず簡単にultraRenduを紹介しますと、背面を見てもらうとわかりますが、microSDスロット、RJ45ネットワーク端子、USB-A、電源端子というシンプルなものです。端的に言うとネットワークブリッジ製品で、PCにネットワークでつなげてUSBに変換してDACに出力する、というようなものです。SDスロットはSonicorbiterというOSを入れるスロットで音源ではありません。
PCからはRoon、MPD、DLNA、Squeezelite(SqeezeBox)などの出力先として見えます。
つまりいままでPCから直差ししていたUSB DACをultraRenduを介することで音質を上げるという製品です。聴いてみるとかなり効果は高いと思います。
実際に構成を見て、聴いてみるとよくわかると思いますのでPCオーディオ興味ある方はぜひヘッドフォン祭のトップウイングブースならびに発表会にお越しください。
2019年04月08日
Westoneのカートライト兄弟のインタビュー公開、新Bシリーズ登場
Westoneの人気Wシリーズが刷新され、新しいBシリーズが登場しました。
カートライト兄弟にわたしがその改良のポイントをインタビューしましたが、その内容がPhilewebにアップされました。
なかなかマニアックなところまで突っ込んで聞いていますので、どうぞご覧ください。
https://www.phileweb.com/interview/article/201904/08/651.html
カートライト兄弟と真ん中がMeze Antonio氏
カートライト兄弟にわたしがその改良のポイントをインタビューしましたが、その内容がPhilewebにアップされました。
なかなかマニアックなところまで突っ込んで聞いていますので、どうぞご覧ください。
https://www.phileweb.com/interview/article/201904/08/651.html
カートライト兄弟と真ん中がMeze Antonio氏
MEZEの新フラッグシップ、平面型のEmpyreanレビュー
MEZE Empyrean(エンピリアン)はMEZE Audioの新しいフラッグシップ・ヘッドフォンで、平面駆動のダイナミック型ヘッドフォンです。このタイプは一般的に静電型と区別してマグネット設計からアイソ・ダイナミック型と言います(オルソ・ダイナミック型とも言います)。日本語で等磁力型と言っているのはこの翻訳だと思います。
MEZE Audioは工業デザイナーでありオーディオマニアでもあるMeze Antonio氏が創設したブランドで、99 Classicは昨年度の音楽出版社のヘッドフォンアワードを受賞した名機です。
しかしMEZE Audioと言えば99 Classicなどの手ごろな価格でデザインと音質の調和したヘッドフォンのブランドというイメージでしたが、なぜ一足飛びのように平面型のフラッグシップを出したか少し疑問に思いました。これについてはもう一社、RINARO社の存在がポイントになります。EmpyreanではあちこちにRINARO社のブランド名も記載がされていますね。
この点については昨年Meze Antonio氏とRINAROの責任者とお会いして直接話を聞いてきました。
* Empyreanのはじまり
RINAROは旧ソビエト時代からある会社でウクライナ政府出資の会社です。さまざまなエリアでヘッドフォンやカーオーディオの経験があるそうですが、なかでも平面駆動型は30年もの経験があるということです。平面ダイナミック型で30年前というとあれですか、と聞いてみたところ口を濁していたので、もしかするとその辺に関係があるのかもしれません。このようにずっとOEMのように開発してきたので、自社の名を出した製品はEmpyreanが初となるそうです。
Empyreanでの担当はRINAROがドライバー部分と音響設計の担当で、MEZEはそれ以外すべて(構造設計やハウジングデザインなど)となるそうです。
つまりMEZEが急に平面型を出したわけではなく、他社の技術ベースがあるということです。この協業は2016の秋にドイツのショウで出あったことで、MEZEは最高の技術がほしかったし、RINAROは自分の技術を世に出したかったので協業体制が始まったということです。つまりEmpyrean(天国とか最高という意味)の始まりです。
もともとMEZEは99クラシックのようなデザインと音のバランスの良いヘッドフォンが評判だったので、実のところディーラーも99クラシックの続きのようなものを望んでいたそうです。しかし、ここでRINAROと出会ったことで、デザイナーとして最高のものを作りたい夢がかなうという機会が訪れたと考えたそうです。デザイン(快適性)と音質という最高のシナジー(相乗効果)が達成できるというわけですね。ビジネスよりも作りたいという情熱だとMEZE Antonio氏が言っていました。この情熱という部分が音質面でのチューニングにもポイントになると思います。
* Empyreanの特徴
1. ハイブリッドのコイルパターンとマグネット
平面型では振動板すべてが動くために、振動板にプリントされたボイスコイルパターン(形状)が音のキーの一つとなります。これがEmpyreanの革新なのですが、Empyreanではスイッチバック(ジクザク)とスパイラル(らせん)の組み合わされたハイブリッド型のコイルパターンが採用されています。等磁力ハイブリッド配列ドライバーと呼ばれています。
もちろんボイスコイルだけではなく、マグネットもパターンに応じたハイブリッド形状をしています。この平面型ドライバーはMZ3と呼ばれています。
スイッチバック(ジグザグ)は低域に特化し、スパイラル(らせん)は中高域に特化したコイルパターンだそうです。ポイントは中高域用のパターンは耳に近い位置に置かれているということです。これによって耳の中での不要な反射を抑えて耳に直接入れるという考えです。これによって不要な共振を抑えて元の音を忠実に再現しているとのこと。低域の方はあまり指向性がないので、そこを分けたということでしょう。
従来の平面型と比べての長所としては、聴覚的に音場が良くなるとかハーモニックディストーションが低くなる。またワイドレンジが実現できるということだそうです。
2. 軽量化設計と高能率化
平面駆動型と言えば鳴らしにくいヘッドフォンの代名詞ともなっているように、アンプ側の駆動力も必要になるのが普通です。そこで高能率化、つまり鳴らしやすくすることが特に最近の平面型ダイナミックヘッドフォンのキーとなっています。Empyreanでもこの点に注意が払われています。
Empyreanではまずドライバーを楕円形にして有効ドライバー面積を広くし、振動板を軽量化することで高効率化が図られています。
また振動板には特殊なポリマー材料を使って超軽量になりひずみも下げています。振動板の厚みは非公開なため書けませんが、だいたいこのタイプでは標準的だと思います。そのためキーはこの素材がとても特殊だということです。なぜかというと、同じ平面型と言ってもアイソ・ダイナミック型ではコイルが必要なために静電型ほど振動板は薄く作れないので、素材が軽いというのは大きく有利な点です。
このように軽量なため高音域が110kHzまで出せるという点がもうひとつのポイントです。
普通のヘッドフォンではシンプルなバーマグネットを使いますが、より高能率なマグネットを作れたので軽く済んでいる(従来他社製品の1/2くらい)ということです。これも軽量化に貢献しています。
イヤパッドは磁石がないのに磁石のようにくっつくのですが、これはドライバー用のマグネットをうまく使っています。このイヤパッドの金属はフェライトで知られるフェロ磁性体というもので、このネットのおかげで磁場を拡散させずにドライバーに効率よく閉じ込めて12%ほど効率化し、またこの金属ネットのために人に届くような強い磁界を95%もさえぎってくれる優れた設計です。
* インプレッション
MEZEといえばやはり美しいデザインですが、Empyreanもまるで未来ガジェットを見るように優れたデザインです。
HeadFiでも発表された当時はMEZEホームページに発表されたEmpyreanの背景のレインボウカラーのデザインがスタートレックのイメージデザインと似ているので、かなりスタートレックを意識したのではないかと書かれていましたね。まさに宇宙船をほうふつとさせる美しくて頑丈なデザインです。ドライバーハウジングのメッシュもCNC加工され、デザイン性とエアフローを両立させているようです。機能的にもよく考えられている点が工業デザインという感じです。
ハイブリッド平面型コイルパターンがRINARO社の功績であるのと同様に、Empyreanの外形デザインは工業デザイナーたるMeze Antonio氏の面目躍如と言えるでしょう。
ヘッドフォンはアルミのトランクに格納されていますが、このトランクはなかなか高級感があって優れたものだと思います。
ヘッドレストは独特の形状で頭によくフィットします。これは装着した時に頭に沿うように密着することで圧力が分散されます。頭に装着した時に感じる軽量感は手に持った時よりも高いので、圧力を分散させるヘッドバンドの設計が優れていることが良くわかります。
サイズ調整はスライドバーを使うのですが、この感触も高級感があって、がっちりと固定されます。
また側圧は開放型にしてはわりと高い方で、頭にしっかりと密着します。装着感に関してはかなり良好で、最近ではAudioquestのNighthawkと同様に人間工学的によく考えられたヘッドフォンであると思います。
試聴で長時間聴いていても耳が痛くなるとか疲れてしまうということはありませんでした。これは音の優しさという点もあります。
ケーブルはミニXLRで接続する方式で、この方式は他でも採用されているので交換ケーブルも見つかるかもしれません。ケーブルは購入時にいくつかの端子のタイプが選べます。
鳴らしやすさに関してはHD800と同じボリューム位置だとより大きな音になるので、平面型にしては能率もよく鳴らしやすい方だと思います。ここは最近の平面型らしい点ですね。アンプのLowゲイン位置でも音量は取れるくらいです。
ポータブルプレーヤーでも十分音は取れますが、Empyreanの性能を引き出すにはハイエンドのDAPかまたはやはり据え置きのシステムを使ったほうが良いと思います。一般的なヘッドフォンアンプでも音量は問題ないと思います。
* 音質
第一印象は楽器音や声のリアルさと、音の豊かさや厚み、音の立体的な広がりに圧倒されるということで、多声のアカペラヴォーカルを聴くと感動的です。
思っていたよりも低域の量感がたっぷりとあるのが第一印象ですが、低域に重みが感じられ質感表現に優れています。特にAudiophile Recordingsなど試聴によく使われる良録音ではかなり良質な低域を堪能できます。
高域もどこまでも伸びる感じでかなりワイドレンジ感があります。試聴のさいにはMeze Antonioもいたのですが、コメントを言うとハイはロールオフしないだろう、と言っていました。
また110kHzという領域では聴覚的には感じられませんので、倍音成分が豊かという方向に効果が出ていると思います。実際に音の厚みとか豊かさからくる音楽性というのがEmpyreanの大きな特徴だと思います。音の厚みというか濃さがスーパーツイーターのついたスピーカーに近いものを感じさせるような気がします。
また音の立体感に優れていて、音が空間を移動するタイプの録音では気持ち悪くなるくらいリアルに感じます。マルチドライバーイヤフォンだとこのイヤフォンは位相がよく合っていると言いたくなるタイプの音だけれども、この場合はおそらくこのリアルさはハイブリッドコイルパターンの良さのように思いますね。
HD800と比較して平面型を実感するのは音のトランジェントが速いことで、音の立ち上がりと立ち下がりが速く歯切れがよい音です。この辺もMeze Antonio氏にコメントを言うと、振動板の軽さが効いているんだ、と言っていました。振動板が軽いことと、剛性が高くたわまないということの両立は難しく、この実現はかなり大変だったようです。
しかし反面でシャープな音のヘッドフォンにありがちな高音域やサ行の音の痛さが少ない感じですね。これは実にHD800と比べてもより顕著で、音の高級感というようなものを感じさせます。
楽器音やヴォーカルがリアルで、細かい音の明瞭感が高く感じられます。細かい音が消え入りそうな表現にも長けていて、解像力が高いということもあるけれども、それよりも情報量が多いという言葉を使いたいですね。
バイオリンの音や楽器音がきれいで澄んでいるのも特徴的で、おそらく歪感がとても少なく正確な音が出ているのだと思います。楽器の擦れる音や金属を叩く音などの響きの良さがとても印象的です。
また開放型の典型的なHD800と比べると、少し密閉型に近い密度感のある音を感じます。モニターではなくリスニング寄りの音で、アナログ的なやさしさと滑らかさがありデジタル的に硬くてきついのではありません。音楽を楽しむタイプですね。ただ楽器の音や声など音自体はとてもリアルで高忠実に思えます。
イヤパッドは主にアルカンターラで聴いたのですが、レザータイプにも交換してみました。、Empyreanでは着脱がとても簡単なために音を変えたいというときに手軽にできるのが隠れた魅力かもしれません。
レザータイプはとても革の高級感がありかつ装着感も柔らかい仕上がりです。高級ヘッドフォンを使用しているという満足感が得られるでしょう。レザータイプでは少し密閉型に近いようなやや重みを増した低音域のインパクトが感じられます。ただ音の広がりと開放感らしさはアルカンターラのほうが良いように思えますね。ここは着脱の容易さもあるので音楽の好みやジャンルで手軽に取り換えて使うのが良いと思います。
オーケストラや多声アカペラなど複雑で多彩な音楽で光るヘッドフォンだと思います。よく試聴に使うアカペラグループThe Real GroupのWordsではそれぞれの声の音域の広さ、豊かさに驚くとともに、声が空間のあちこちに浮かび上がり、それがまとまってひとつの厚いハーモニーを奏でるさまがよく分かります。こういう曲では空間に音のないところと、あるところがかなり明瞭にわかります。
またGo Go PenguinのようにEDMっぽいユーロジャズなどでは躍動感や重み・パワー感が楽しめます。最新アルバムのA hundrum StarのRavenでは冒頭のピアノの叩きつけるような響きが感動的なほどに美しく響き、続くハイスピードなドラムスやベースの低音の豊かさ・体が動き出すような躍動感に圧倒されてぞくぞくとする感動が味わえました。音に密度間があって躍動感があるのでこうした音楽にも良く向いてますね。
これだけ音が分厚くて濃い音で、かつ軽やかに躍動感を感じるヘッドフォンは他にあまり例を見ないほどではないかと思います。重くて量感のある低域から、リアルな中音域、美しく伸びあがる高域までワイドレンジ感も圧倒的です。
Empyreanについては設計の様々な要素がうまく調和して最高の音を奏でているという感じです。聴いているうちに音の厚みや豊かさ、リアルさやスケール感にどんどんのめりこんでいって、音楽に引き込まれていく感じがします。豊かで深みのある音空間に音楽の感動が感じられますね。
聴くほどに良さがわかるので、じっくりと聴くと聴くたびに発見があると思いますし、それだけ手間をかけて丹念に設計した成果だと思います。
月末のヘッドフォン祭ではぜひテックウインドさんのブースで聴いてみてください。