Music TO GO!

2019年03月27日

プレミアム限定モデル、Luxury & Precision、LP6 Tiレビュー

先日の春のポタ研では70万円近くの高価なDAPが話題となりました。これはLuxury & PrecisionのLP6 Tiという機種です。(正確な価格は販売店に確かめてください)
Luxury & Precisionは中国のオーディオブランドで、HeadFiなど海外フォーラムを見ている人にはおなじみでしたが、昨年からサイラスさんが国内でも扱いを始めました。昨年L3-GT、L4、L6、LP5 Ultraの記事を書きましたのでそちらもご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460897457.html

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Luxury & Precision LP6Ti

Luxury & Precision(以下L&P)はうちのブログでもおなじみだった、ColorFly C4の流れを汲むということです。実際L&Pで話題となったのがColor Fly C4によく似たクラシカルな形をしたLP5 Ultraという限定生産モデルでした。これは上のレビューを持ていただくとわかるように音質的には据え置きなみで、ポータブルよりも格上の印象さえ受けるものでしたが、デザインや操作性も含めてクラシカルで現代的なDAPとは言い難いものでした。
L&Pでは一方でL4やL6のような現代的なタッチUIのDAPを出していましたが、この現代的なラインの延長でLP5 Ultraのような究極のDAPを目指して開発したのがLP6 Tiです。Tiはチタンのことで、ボディがチタン製であるところから名づけられています。

*LP6 Tiの特徴

インテル製のFPGAの採用

ハードウエア的にLP6Tiを特徴づけているのはまずインテル製のFPGAの採用です。これはポータブルオーディオでは世界初ということです。FPGAを採用したDACではChord社製の製品が良く知られていますが、こうした例ではいままでザイリンクス社製のFPGAがよく使われていました。LP6Tiではインテル製の「フルサイズ工業グレードの大型FPGA」が採用されているということです。これはメーカーによるとザイリンクスの上位バージョン以上の性能を持つということです。ただし消費電流に関してはすべての部分を使用してはいないので電力消費を抑えているということです。
L&Pでインテル製のFPGAを使用したのはL&PがPCパーツ由来の仕事をしていた関係もあると思いますが、中国市場でのサポートの良さもあるということです。またL&PのCTOであるWan氏はかつてAMDの中国支社で活躍していたこともあり、こうした分野には長けていると思います。

FPGAとはプログラム可能なICのことで、FPGAを用いたDACと言ってもFPGAでデジタル・アナログ変換をしているわけではありません。そのため当然のことながらDA変換を行うDAC部分が必要です。FPGAの機能としては主にDAC部分に入る信号をきれいに整形するためのデジタルフィルタがメインですが、LP6Tiではそのほかに高音質のEQ機能、ロスレスDSD/PCM変換、超低ジッターSPDIF出力、高精度のクロックソース、ワイドバンド高速通信などの機能も含まれているということです。
ちなみにロスレスDSD/PCM変換というのはこのFPGAの効率が良く他社のようにDSD/PCM変換チップやIPコアを使用する方式に比べて、インテル製のDSP並行処理能力が高いことからそう名付けているということです。

医療用R2R DACの採用

次にLP6Tiのキーとなるのは医療用R2R DACの採用です。R2R DACとはマルチビットDACとも呼ばれ、いわゆる1ビットのデルタシグマ方式ではなく、PCMの各ビットを直接変換できることから特にPCMの再生においてはデジタルっぽさが少なくアナログライクで自然な音質に優れていると言われている方式です。ただし最近では効率の良いデルタシグマ方式が席巻しているため、ほとんど採用されなくなっています。
しかしオーディオマニア向けのDACでは音が良いことからよく採用されるのですが、多くの場合はバーブラウン(TI)のPCM1704というDAC ICが使われます。ただしこのPCM1704はすでに生産が終了していて市場デッドストックの品が使われるのですが、L&PではこのPCM1704を超えるようなR2R DACを作りたかったので医療用R2R DACを採用したということです。

この医療用R2R DACはMRIなどに使われるもので、非常に高精度です。メーカーはADI製ですが、モデルはメーカー非公開品ということです。LP6TiではこのICを4基使用しています。このDAC ICの単価はわかりませんが、MRIは数億円の製品なのでそのDACも推して知るべしというところでしょうか。LP6Tiの価格の高さもちょっとわかります。
R2R DACは精度を高めるのが難しいのですが、このICはPCM1704に比べてはるかに高精度で変換誤差が非常に少なく、低歪みで温度差のばらつきも非常に少ないということです。高精度というのはICのDA変換のエラー自体が極めて少なくリニアリティ(信号の入出力の比例性が高い)があって温度変化に強いという意味です。

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これによって、LP6TiのダイナミックレンジはPCM1704UK(選別品)を32個搭載したDAPに相当し、SN比はPCM1704UKを8個搭載したDAPに相当するということです。また歪率でのTHDもPCM1704UK搭載DAPの約半分ということです。
つまりR2R DACというのは音は自然でよいが性能的には最新のデルタシグマDACに負けてしまいます。LP6Tiでは医療用の高精度DACを採用したことで、音の自然さも性能の高さも両立できたということですね。

そもそもオーディオ用DACでなくてもよいのか、と素人考えしてしまいますが、その点について出てくるのが先ほど説明したインテル製のFPGAです。このデジタルフィルターの性能が良いために、オーディオ用にこの医療用DACを採用できたということもあるということです。
つまりハードウエアとしてのキーはインテル製FPGAの採用とR2R DAC ICの採用で、面白いことにこの二つは関連しているということです。

購入者による音のカスタマイズが可能

LP6Tiのユニークな点のひとつはDAPに自分の音の好みを反映できるということです。カスタムイヤフォンのJust earっぽい感じのサービスです。ポータブルマニアなら電力消費はもっと多くてもよいから音質を上げてほしい、ということを思ったことのある人は多いと思いますが、それが実現できるというわけです。
これには大きく分けて2種類あって、カスタムリストの1-2はFPGAの設定で、こちらは一回程度は後で無料で変更してくれるということです。これはメーカーによるファームの直接の変更で、ユーザーが自分で変更できるわけではありません。

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カスタムリスト

1:音楽ジャンル(POP・アニソン・演歌・EDMなどなど)
2:ボーカル調整(ボーカルの遠さ近さ・横音場の広さ)


3-7の項目はハード設計を直接変えるために納品後の変更はできないということです。

3:ヘッドフォン回路オペアンプ選定(電力消費と音質の兼ね合い)
4:LPF入力電圧の調整(LPF電圧の上下で信号の歪みと動作時間の兼ね合い)
5:出力インピーダンスとZobelフィルター(出力インピーダンスの大きさと保護フィルター設定)
6:ヘッドフォン回路オペアンプ入力電圧と出力電圧(音質と電力消費の兼ね合い)
7:LPFの調整(クラシック音楽で効く信号と位相の兼ね合い)


このほかにもLP6TiではTC4チタニウムを採用したチタン製の筐体や、デジタルとアナログ別でそれぞれ高品質な電源部、高出力のヘッドフォンアンプの搭載なども特徴的です。4.4mmのバランス出力も備え、バランス出力では特に低能率のヘッドフォンでの性能を高め、シングルエンド出力では通常のヘッドフォンやイヤフォンに向けた設計をしているようです。コンデンサーなども軍用グレードの高品質品を使用しているとのこと。(オペアンプのExcelsというのは既製品オペアンプをL&Pがリブランドしたもののようですが、詳細は不明です)
このためにHD800用の専用ケーブルも開発しています。
音源はマイクロSD(FAT32のみ)と64GBの内蔵ストレージです。スペック上の再生時間は7時間となっています。

* HD800専用ケーブル(別売)について

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LP6TiではHD800を開発リファレンス機として使ったということもあり、LP6Tiの能力をフルに発揮するために高純度金メッキPCOCC銅線+らせん状の銀メッキという線材を用いた別売りのケーブルも用意されています。これはUltimate Zone U75というケーブルで4.4mmのバランス仕様です。

* インプレッション

試聴用にはマルチドライバー機のCampfire Audio Solaris(4.4mmバランス)とヘッドフォンにはHD800(6.3mm)を使いました。

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パッケージは木製の化粧箱が採用されていて、ふたをスライドして開ける方式です。開けると中にLP6Ti本体とUSBケーブル、ヘッドフォン用の標準端子アダプター、保証書が入っています。

本体はL&Pらしくいかにも精密機器というか精巧な金属の塊という感じのデザインですが、持ってみると意外に軽いのに驚きます。チタンは非常に硬くて薄く作ることができるので航空機の軽量化にもよく使われています。材質感はアルミとも違った硬質感がありますが、両側面は木製のプレートがはめ込まれていてよいアクセントになっています。

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上部には端子が並んでいます。ヘッドフォン用6.3mm、バランス用の4.4mm、ラインアウト専用(固定出力)の3.5mm端子があります。ボリュームはガード付きで適度なトルク感があるところが好印象です。

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側面には電源ボタン、再生、バック、先送りのハードボタンがあります。

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底面にはSPDIF出力のRCA端子、マイクロSDスロット、USB端子がありUSB DACとしても使えます。

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UIはタッチ操作が可能で独自OSらしいきびきびとしてとても反応が速く感じられます。
設定項目としては基本的なリピートなどの再生設定、グライコ的なEQ設定(プリセットもあり)、またかなり詳細な音質に関する設定があります。デジタルフィルター設定ではおなじみのSLOW/FAST roll-offなどのほかに低遅延やNON Over Samplingなども選択できます。
DACモードに並列モードとタイムシェアリングというのがありますが、並列モードはチャンネルごとにDAC二つが同時に動作、タイムシェアリングは1つのサンプリング周期内でDAC二つが交互に動作するということのようです。
またDCオフセットのオンオフはオンにすると直流信号の修正をするが電力消費がかさむという設定ということです。

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はじめにSolarisで4.4mmバランスで聴き始めました。ゲインは設定項目にあります。
音質はとても透明感が高くて美しく、かつパンチがあって歯切れが良いのが特徴的です。現行品と比べてみると、LP5 Ultraなみの据え置きに近いクラス上のアンプ性能と、L6のような洗練されたサウンドを併せ持つ感じですが、実のところ音質はずっと上のレベルにあることに驚きます。
静かな曲を聴くと消え入るような小さな細かい音の再現にも優れているのがわかります。透明感がとても高く、楽器の音が美しく聴こえます。またヴォーカルの声の艶やかさとリアルさも秀逸です。アコースティック楽器の音色がとても端正で澄み切った感じがするのはR2R DACの美点でもありますが、加えて回路の良さ、歪の少なさで雑味のない端正な音が出ているとも感じます。

ダイナミックレンジを強調しているだけあって、試聴曲のパイプオルガンの音域の広さは圧倒的です。Solarisのような空間再現性に長けたイヤフォンでは音の迫力に圧倒されます。低音域もかなり深く下に沈み込み、高域はどこまでも伸びていくかのようです。
パンチがあってロックやアニソンなど動的な曲での打楽器が気持ちよく、躍動感にたいへい優れています。かなりアンプのパワーがあってトランジェントにも優れているので歯切れが良いですね。おそらく電源の良さもあると思います。必要な時に素早く電流が出ている感じです。
またこうして歯切れの良さやパンチを強調してもきつくなりにくいのもR2R DACでPCM音源を聴くときの良い点だと思いますね。
かなりパワフルで高出力志向であることがうかがえます。どちらかというとヘッドフォン向けの設計がなされていると思います。

そこで次にヘッドフォンのHD800で聴いてみました。まずノーマルのケーブルを使って聴きます。
たしかにリファレンスとしてHD800を使ったというだけあってかなり良い組み合わせだと思いますね。HD800の独特の空間表現力がとてもよく再現され、自然で広い音空間が楽しめます。
また音の自然でリアルな再現力にちょっと驚かされます。アカペラコーラスなどはまさに耳元で本当に歌っているようなリアルさです。もちろんパワーもあって躍動感も楽しめます。HD800でパンチのあるベースや打ち込み音が出るのがちょっとすごいと思いますね。音の細かな残響、ホールトーンの表現も優れて聴こえる。
たしかにHD800とLP6Tiの組み合わせはR2R DACの面目躍如というか、リアルさがちょっとすごいレベルにあると思います。まさにHD800が生き生きとしているようで、おそらくLP6TiのDACもかなりハイエンドに近いようなレベルににあるのではないかとも思いますね。据え置きのヘッドフォンアンプでもなかなかこのレベルのDAC内蔵アンプはないように思います。

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HD800の別売りケーブルを付けてみると、冷っとしていた音にやや温かみが加わります。標準のケーブルが冷たく客観的な音だとすると、こちらはより音楽的な楽しみを持った音と言えるように思います。楽器音がより美しく、ベルの音も澄んで聞こえます。また楽器音もヴォーカルも滑らかで気持ちよいですね。標準ケーブルとは使い分けてみてもよいでしょう。

また平面型ヘッドフォンとしてHIFIMAN HE580を使ってみました。これはHD800よりもやや鳴らしにくいのですが、十分に音量は取れてよい音で鳴らすことができました。ただ相性としてはHD800のほうが良いと思います。

まとめ

音質の高さは圧倒的で、間違いなく現行DAPトップクラスの一つですが、LP6Tiではダイナミックレンジやトランジェントといった性能面の高さと、楽器の音色の良さといった感覚的な良さの両面に優れている点が素晴らしいですね。特に音再現の美しさ・細かさなどDACのレベルはポータブルを超えている感じで、もし試聴会に行くときはイヤフォンで日頃聞いているにしてもぜひHD800を持って行って試してみてください。

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カスタマイズは使用イヤフォンやヘッドフォン、また好みにもよるのでまず試聴したほうが良いでしょう。
わたしなら3はdefault、4は(2)、Zobelフィルターは3か4、出力インピーダンスは1か2、7は1か2、入力電圧は4か5、出力電圧は3か4にするかなと思います、まあオーダーできませんが(笑)考えるのもちょっと面白いですね。

LP6Tiはたしかに高価格も納得できるような高品質・高精度の設計と面白いカスタマイズのサービスですが、日本向けの数は少ないそうです。3/30(土曜日)にフジヤエービックで試聴会を行うそうなので興味のある方はどうぞ参加してこの音を確かめてください。

posted by ささき at 22:48| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月16日

スタインウェイの「ハイレゾ」ピアノと自動ピアノについて

スタインウェイが世界初の「ハイレゾリューション・ピアノ」と銘打った新製品Spirioを発売しています。
https://www.steinway.co.jp/spirio
スタインウェイとしては実に80年ぶりの新製品ということですが、端的にいうと従来のスタインウェイのピアノに自動演奏システムを搭載したもので、いわゆる自動ピアノです。
なぜハイレゾかというとピアノの解像力が高くなったわけではなくて、自動演奏記録の精度(解像力)が高くなったということのようです。自動演奏システムの部分はiPadを使用して、独自のアプリを搭載しています。

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Spirioのカタログより

このフォーマットはSpirio High Resolutionというらしく、記録しているのは打鍵の強さと長さ、ペダルのデータで、おそらく昔のピアノのロール紙をベースにしているように思います。記録方法はSpirioで演奏しているのを記録するか、または音源から解析することができます。
再現精度はハンマー速度が一秒間に880回、1020段階、ペダルが1秒間に100回、256段階ということです。

わたしは自動ピアノにわりと興味があって、前にZenph社がヤマハの自動ピアノを使ってグールドの演奏を再現したときに下記リンクの記事を書いています。
グレングールドは電気ピアノの夢を見るか?

これはグールドの録音したマスターテープを解析してデータ化(MIDI)します。このときは2007年で10年以上前ですが、この当時でも100万分の一秒の精度で鍵盤を叩く角度まで検出していたというので、今だとAIを使用してもっと進んだ解析ができるのでしょう。

こうした先進的な自動ピアノのもとになったのが、昔ながらのロール紙を読んで再生する自動ピアノで英語でいうとPlayer Piano(ボネガットの小説タイトルにもなった)またはReproducing Piano(再現ピアノ)ともいいます。わたしが行った範囲では清里と河口湖にわりと良い自動ピアノがあります。

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清里の自動ピアノ(ホールオブホールズ所蔵)

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河口湖の自動ピアノ(河口湖オルゴール博物館所蔵)

清里ではガーシュインとかラフマニノフが自分で記録したロール紙があります。下記動画は学芸員さんの了承を得て撮った自動ピアノの再生動画で、ガーシュイン自身によるラプソディインブルーのピアノ演奏です。




当時(100年くらい前)は自動ピアノがビジネスとして成立していて、作曲家も小遣い稼ぎになるのでよく自分自身で自動ピアノの記録を行ったそうです。記録には専用の記録ピアノを自動ピアノの発売の前に作っておいて、ロール紙に記録しますが、当時の技術では完全ではありません。そこで記録時に別の演奏家が立ち会って自分でもメモを取っていて、あとでロール紙を手作業で修正するのだそうです。(この辺がいまではAIなんでしょうけれども)

わたしが興味あるテーマの一つはオーディオがない時代はどのように家で音楽を楽しんでいたか、です。
その一つの答えは「自分で演奏する」で、よくオーケストラ曲のソロギターなどのアレンジ版がありますが、あれはギター演奏家のためというよりも、演奏会で楽しんだ感動を家でも味わいたいという人々の需要があったからのようです。そしてもう一つの答えは「オルゴールによる機械演奏」で、これが自動ピアノにつながります。

私自身はピアノを弾くわけではないですが、こうした科学と音楽の融合という分野には心惹かれるものがありますね。オーディオもそうなんですけれども。
posted by ささき at 11:58| ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月12日

iPhoneのTIDALアプリでもMQAサポート開始

AndroidのTIDALアプリでは少し前からMQAサポート(ソフトウエアデコード)が開始されていましたが、iPhoneのTIDALアプリでもソフトウエアデコードができるようになったようです。以下はMQA社のリリース。
https://www.mqa.co.uk/customer/news

とはいえ日本ではTIDALはサービスインしておらず、アプリも日本のApp Storeでは入手できません。ここはソフトバンクあたりになんとかしてほしいところですね。
一応米国アカウントを作る方法はありますがあまりよろしくないので紹介はいたしません。ただMQAは使えませんが日本でTIDALが使えるアプリを簡単に入手するにはmconnect liteがあります。またHIFIMANアプリでもTIDALを使うことができます。いずれにしてもTIDALアカウントは作成する必要はあります。

posted by ささき at 07:37| ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月08日

Ultrasoneから静電型ハイブリッドイヤフォンとEdition15の密閉型が登場

3/1よりアユートが代理店引き継ぎを行ったUltrasoneから2つの新製品が発表されました。
ひとつは静電型ハイブリッド形式のイヤフォン、SAPHIRE(サファイア)とEdition15の密閉型であるEdition15 Veritusです。
当日は再びCEOに戻ったマイケルウインバーグ氏が来日して製品解説をしました。ひげをはやしていたので前のイメージとはちょっと違いますね。

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Veritusとは真実という意味でEdition15の密閉型版です。ドライバーは同じですが、音は密閉型に合わせて一からチューニングしたということです。イヤパッドにも改良があるということ。

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Ultrasoneはチタン振動板の少し硬めの音が特徴でしたが、GTCドライバーでは柔らかめの音を目指しているということです。
デモ機を聴いてみましたが、解像感はとても高くてeditionスタンダードという感じです。

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また密閉型だけども広がりのある音が特徴的で、S-Logicが効いているように思います。もちろん密閉型のパンチもあって、低域は膨らみすぎてないが気持ち良いと思いました。edition9のような低域偏重という感じではなく全体にバランスは良く、高域もかなり伸びてワイドレンジ感も高いと思います。

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もうひとつの新製品、SAPHIREの登場した背景としては、edition7から15年ということで、edition7は当時はなかった価格帯のモデルだったが評判を得てハイエンドヘッドフォンとUltrasoneの礎となった、その15年後にイヤフォンで同じことをしたいということです。

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サファイアの名前はedition7 tributeをインスピレーションに青く輝く名前にしたということです。
Tribute7の記事はこちら
当初editionラインでイヤフォンをやりたかったが、前のIQがレベルが十分高かったので静電型で他社にないものにしたかったということです。
IQではダイナミックとBAのハイブリッドでしたが、BAとのハイブリッドにしたのは主にサイズ的な要因があったようです。実際にマルチドライバー・ハイブリッドとしてはかなりコンパクトです。

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SAPHIREは6ドライバーのBAと静電型とのハイブリッドタイプのイヤフォンで完全密閉型のシェルデザインです。静電型は2ユニットをスーパーツィーターとして使用しているということ。クロスオーバーは設けていないようです。2ユニット使用したのは試行錯誤していろいろな組み合わせを試した結果、この組み合わせが良かったということです。2ユニットはスタガード(ずらし)ではなく同一帯域を担当しているということ。
静電型としてはいわゆるエレクトレットタイプで自己荷電して外部のバイアス電流は不要なタイプです。ちなみに静電型ドライバーユニットはすでに市場に出ている他社の静電型イヤフォンの採用しているユニットとは異なるようです。

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3つ穴が開いているのはそれぞれ高域(と静電ドライバー)、中域、低域と分かれています。

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ケーブルは2ピンでリケーブルできますが、引っ込んでいるタイプで極性指示のためのノッチがついています。
用意されていたアンバランスとバランスは線材も異なり、アンバランスで聴くとIQに似た音調で、高音質だが厚みがあって優しく滑らかな音です。バロックバイオリンの倍音の響きは美しく、スーパーツィーターはアンビエント感のためのようなことを言っていたように音楽的な傾向の音作りのように感じられました。バランスではケーブル線材も異なり、より明瞭感が高くなるように思います。

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(左はFitEar EST)

BTとかワイヤレス製品は、と聴いてみるといまやっているという感じでした。また体制も少し変わったようで今後の展開も興味が持てます。

ところでedition7から15年ということは、考えてみるとうちのブログも15年ということに気が付きました。この世界もスピーカーオーディオ同様に歴史というものが感じられるようになってきましたね。
posted by ささき at 11:02| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月06日

ちょっとややこしいUSB新規格

USB4.0の仕様がUSB.orgで発表されています。(下記リリース参照)
https://usb.org/sites/default/files/2019-03/USB_PG_USB4_DevUpdate_Announcement_FINAL_20190226.pdf

最大40Gbpsという高速規格で、ポイントはUSB3.2、USB2.0やThunderbolt3とも互換性があるということです。上のリリースでもエンドタイプを動的に切り替えることができるとありますので、これらは自由に差し替え可能だと思われます。
さて、ここでもうひとつポイントは上の互換性記述でUSB3.1とかUSB3.0というのがないですよね?これはどうしてかというと、これとは別に最近のMWCで最大20GbpsのUSB3.2の規格が制定され、従来のUSB3.1とUSB3.0は"USB3.2"という規格に統合されたからだと思います。
これがややこしいのはUSB3.0(5Gbps)はUSB3.2 gen1、USB3.1(10Gbps)はUSB3.2 gen2、そしてUSB3.2自体はUSB3.2 gen2x2とリブランドされています。これはUSB3.2が2チャンネルの10Gbpsを使用する規格なので、技術的にはただしいのかもしれませんが、ややこしいとは言えますね。
ただ実のところUSB3.1のときもUSB3.0がUSB3.1 gen1とリブランドされてたようなので、それを引き継いでややこしくなったものと思います。
ちなみに名称はそれぞれ、USB3.1 gen1はSuperSpeed USB、USB3.2 gen2はSuperSpeed USB 10Gbps、USB3.2 gen2x2はSuperSpeed USB 20Gbps、USB4はまだわかりません。USB2.0はHigh Speed USBでしたね。
posted by ささき at 09:32| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする