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2018年08月28日

Roonの日本語化について #1

先日Roonがアップデートされたときに日本語表示が追加されました。しかし翻訳品質の難が多々あったため、文句を言うより参加して直しましょうと私も翻訳アカウントをもらって翻訳品質の向上に協力することにしました。

翻訳品質の難は仕方ないところもあり、翻訳するときには文面だけ見て翻訳しますが、画面がわからないので場所によっては変な翻訳になることがあります。このため、いったん翻訳して画面を確認し、また修正するという繰り返しが必要になります。
また日本語翻訳では汎用翻訳の流用もしているようですので、オーディオ的な表現が不自然なところがあるかもしれません。

Roonには翻訳のためのサブシステムがあって、翻訳アカウントを持つユーザーはそこで原文の英語をローカライズ翻訳することができます。
実際に翻訳システムに入ってみると、「〜によって演奏された」などの不自然な部分にはすでに修正が入っていましたので、次のビルドで修正翻訳が適用されると思います。(毎ビルドで翻訳修正があれば適用するそうです)

* 文字欠け問題について 

厄介なのはこのほかに日本語固有の問題が見つかったことです。これについてRoonの開発者と話して解決方法を見付けましたのでシェアしておきます。(これ以降は主にRoonの翻訳アカウントを持つ方だけ関係します)

その問題は文の折り返しのさいの文字欠けです。
いくつもあるのですが、代表的なのは「Overview/概要」の画面の下の方です。

JP2b.png

英語では正しい表示なのが、日本語では右端が欠けて正しく折り返しがされていません。これはテキストの表示幅によって折り返す際に英語的にスペース区切りの単語単位で判断しているため、スペースのない日本語ではシステムが折り返し場所がわからないためです。
この場合は翻訳者が意図的に折り返し場所を翻訳に含める必要があります。
しかしながらここに別な問題があります。それはRoonがマルチプラットフォームのソフトウエアであるために、予期しないレイアウト崩れを防ぐためには原文にない文字はなるべく避けなければならないということです。

例えば下記のように改行をEnterで入れることは可能ですが、これはやってはいけないそうですので注意してください。また半角スペースを意図的に入れればよさそうですが、これも特定のシステムでは折り返されないでスペースが見えてしまう可能性があるためにあまり好ましくありません。(複数マーカーが必要な場合が考えられます)

JP4c.png

Roonの開発者からこの件で指示されたのは下記のいずれかによって改行場所に見えないスペースのようなコード(UNICODE)を入れることです。これらは可視できないため翻訳文に影響しません。

1. ゼロ幅非接合子
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%AD%E5%B9%85%E9%9D%9E%E6%8E%A5%E5%90%88%E5%AD%90

2. ゼロ幅スペース
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%AD%E5%B9%85%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9

少し試行錯誤しましたがUNICODEのコード入力は入力するOSとテキストボックスに依存するため、コード入力は避けてコピー&ペーストが簡単なゼロ幅スペースを使うことにしました。(上のWikiページからコピペできます)

しかしこれだと他の翻訳者が見てどこに意図的改行のためのゼロ幅スペース文字が挿入されているかがわからりません。そこでRoon開発者がゼロ幅スペースがある場所に空白記号␣を入れてくれるように改良してくれました。いまでは下記のようにゼロ幅スペースが可視できます。

jp5b.png

仕込みはしたんですが、効果は次のビルドの後でないとわかりませんのでまた報告します。(Roonでは次のビルドリリースの予定は非公開です)

この件についてはレポートするために下記のRoonフォーラムにスレを立てました。
https://community.roonlabs.com/t/improving-japanese-translations/48441
この問題はほかにもトラックエディタ画面など多数あります。

もしかするとスマートフォンでRoonリモートを見る場合など、マーカーが一つでは足りない場合も出てくるかもしれませんが、そこはまた考えねばなりませんね。
posted by ささき at 10:56| __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月20日

Luxury & PrecisionのDAP(L3-GT、L4、L6、LP5 Ultra)レビュー

中国のオーディオブランド、Luxury & PrecisionのDAPが国内で発売開始されます。8/18からまずL3-GTが発売され、その後にL4、L6と続く予定です。
Luxury & Precisionというと、HeadFiなど海外フォーラムを見ている人にはおなじみの人気メーカーですが、あのColorfly C4の設計者たちが立ち上げたブランドでもあります。
Colorfly C4はうちのブログではJaben取り扱いでだいぶ前に紹介したユニークなDAPです。もともとこの会社はIT関係のグラボやパーツを製造していた会社ですが、スタッフがオーディオ好きでDAPの開発を始めたといいます。Colorflyのときにはドイツの代理店の後押しもあって開発を進めたが、自分たち独自のブランドを模索した結果がLuxury & Precisionというブランドで約3年ほど前のことだそうです。

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Luxury & Precision L6

今回発表された国内販売予定の製品は、L3-GT、L4、L6、LP5 Ultraの4機種です(LP5 Ultraについては発売未定)。Lが頭に付くシリーズはモバイル用途であり、LPが付くシリーズはポータビリティはあるがデスクトップなど据え置きに近い位置づけとなります。このLPシリーズがかつてのColorflyに近いレトロ・フューチャー的なデザインを感じさせます。Lシリーズはもっと新しいDAPデザインであり、大きなタッチパネルを備えています。このタッチパネルも同社の得意分野だということです。

* L4について

この中のラインナップではL4がもっとも最新機種で、今回発表されるL&Pシリーズの中核に位置するモデルです。DACも最新のシーラスロジックのCS43198をデュアルで搭載しています。特徴はフルバランスのアンプ設計がなされていて、アンバランス主力はそこから取るので、使用はバランスが推奨されていることです。実際にスペック上のバランスでのS/Nは130dBと、とても高い値が提示されています。音の鮮明さが重視される設計が見て取れます。出力レベルもバランスで3.5Vrmsとかなり高くなっています(アンバランスは1.75Vrms)。
また入出力も豊富で、スマートフォンに対応したUSB DAC(セルフパワー設定あり)、アナログとSPDIF出力兼用端子での外部アンプへの出力、そして2.5mmバランス端子が装備されています。ボディはアルミマグネシウム合金で見た目にとても高精度に感じられます。
画面は3.5インチ(480×320)でタッチ操作に対応しています。バックパネルはカーボン製となかなか良い出来です。
このように高い性能の割には軽い重量(170g)、豊富な入出力、そして高品質なボディ設計がポイントと言えます。またブランド名のLuxury(贅沢、豪華)とPrecision(精密、高精度)を見た目でも実感できるところです。

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対応フォーマットはWAV 32Bit 352.8kHz/384kHz, FLAC 24Bit 192kHz DSD256(11.2896M)。独自OSなので対応フォーマットも記載しておきますが、MP3, WMA, ALAC, FLAC, WAV, DSD(DIFF, DSF, ISO)とほぼ問題なく使えるでしょう。 内蔵メモリは32GBです。
もともとIT関係のメーカーということもあり、OSは独自のUnixベースのファームを使用し、動作はかなり早いと思います。ただしこのために使用するSDカードはFAT32でフォーマットする必要があります。

なおL4についてはサンプル用の先行デモ機で試聴をしています。他機種は製品版のデモ機を使っています。

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手に取ってみるとたしかに大きさの割には軽く感じられ、金属製のひやりとした感触の中に高い剛性感を感じます。ボタンのパーツやボリュームノブの切削精度も高そうです。ボリュームは軽く、クリック感があって回しやすいと思います。ボリュームガードがついているのも安心感となるでしょう。他の機種にあるC1やC2のようなカスタマイズキーはないのですが、これはカスタマー要求を考えて機能を精査していった結果だといいます。
上部には3.5mmの通常(アンバランス)イヤフォン出力端子、2.5mmの4極バランス端子、そして3.5mmのアナログ/デジタル出力兼用端子があります。兼用端子のデジタルとアナログの切り替えは画面上の設定の切り替えで行います。
側面には電源、再生、早送り、巻き戻しの各物理キーが配置され、電源のオンオフは電源キーの長押しで行います。

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底面にはSDカードスロットとマイクロミニUSB端子があります。このUSB端子は充電とUSB DACの兼用です。PCとの接続はAndroidではないのでMTPではなく、一般的なストレージクラスを使用します。つまりSDカードをPCにカードリーダーで接続したときと同じです。このため、音源を加えたら設定の中のメディアライブラリー更新を実施する必要があることに注意してください。

独自OSだけあって起動時間は早く、画面では音源管理、再生、設定などのボタンが並んでいて、タッチで操作を行います。メタデータだけではなく、フォルダ移動による選曲やプレイリストの作成もできる。曲リストのスクロールではタッチ操作でのスクロールが可能です。画面は日本語化されていて、特におかしな翻訳もないように思えます。再生画面ではアルバムアートのほかに音源のデータやゲイン設定が表示されます。この辺はLシリーズではほぼ共通です。

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設定ではリピートやシャッフルなどの一般的な機能のほかに、ロックやポップなどの選択ができるイコライザーの設定やデジタルフィルターの設定、DSD関係の設定、デジタル出力の設定など細かな設定ができます。USB DACの設定もここで行うが、USB給電モードも選択できるため、バスパワーを使うかセルフパワーを使うかの設定もできます。PCとの接続の場合にはバスパワー、スマホとの接続の場合にはセルフパワーを選ぶとよいでしょう。
またHigh、Lowのゲイン設定もついています。L&Pに総じて言えますが、出力レベルが高めなのでイヤフォンで聴く際にははじめにゲインをLOWにしておくことをお勧めします(特にL4とL6)。
デジタルフィルターの選択は細かく、FAST/SLOW/低レイテンシーFAST/低レイテンシーSLOW/ノンオーバーサンプリングなど細かく音色を変化することができるのはなかなかマニアックと言えるでしょう。

バランスでのリスニングが推奨されているため、試聴にはバランスとアンバランスの切り替えがプラグ一つで簡単にできて最新かつ高音質のDita AudioのFidelityを使用しました。(以下の機種でも同じ)

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まずアンバランス(3.5mm)で試してみました。試聴してまず感じられるのは透明感がとても高いということで、最新のDACチップを使っていることもありますがフルバランス回路が聴いていると思います。高い音はかなり突き抜けるように伸び、低音もかなり低いところが出ています。高音域ではベルの音が力強くかなり鮮明に聞こえるので高音域の伸びもかなり良いと感じられます。
音の個性は正確性重視のフラット基調ですが、アカペラボーカル曲では硬さではなく中域の豊かさが感じられ、中音域も充実しているFidelityの良さがよく発揮されていることが感じられました。
LINNのハイレゾ音源からジャズヴォーカル曲を聞くと、発音が良く聴こえるだけではなく、やはり音の豊かさが感じられるので中音域はかなり充実しているように思えます。低音域のふくらみも極端にならない程度に十分あり、パンチもあります。音空間の広がりに関しては標準的なところだと思います。解像力も高く細かい音はよく聴こえます。
またL4の良い点は音の歯切れがよく、スピード感が感じられる点で、アップテンポの曲は特に気持ちよいですね。低域に重みのあるパンチがあって、パーカッションやドラムの打撃感が小気味よく感じられます。
音のチューニングに関してはワイドレンジで正確性重視ですが、硬く無機質になりすぎないように入念に考えられているように思います。
操作はもたつきがなく、曲を変える際にも素早く行うことができます。イコライザーはあまり極端なものではなくイコライザーをかけても音の曇りが少ないので使いやすいと思います。

次にバランス端子にイヤフォンを挿入すると、かなり端子が硬くてしっかりとはまることがわかります。抜く際にもかなり抜けにくいですね。2.5mmは端子自体が弱いことが良く指摘されますが、この点についてよく考えられているようです。3.5mmと2.5mmの切り替えはなく自動で行われています。
アンバランスに比べると明らかに音圧が高くなり、力強さが増すのがわかります。また独特の歯切れの良さも一層鮮明となり、ジャズではスピード感のある演奏が楽しめて、ライブでは生き生きとした感覚が伝わってきます。130dBものSNがあるかは耳ではわかりませんが、確かにかなり鮮明な音質だと感じることができます。アンバランスでのパンチの鋭さはひときわ向上しています。
L4はとてもシャープな音を出すDAPであり、その点からDSD再生ではその音の柔らかさが良くわかります。L4の真価を発揮するにはバランスでDSDを聴くのが良いかもしれません。

アンバランスに戻すとやや甘く感じられますが、これはこれでよいと感じられるので、バランスだとすこしきついと感じられる音源の場合にはアンバランスで聴くのもよいと思います。


* L3-GTについて

L3-GTはラインナップの中ではもっとも求めやすい価格のモデルですが、デュアルDACでフルバランスのアンプ設計と価格にしては贅沢な設計のモデルです。DACはCS4398を採用しています。
他機種にはありませんが物理ボタンのC1、C2はそれぞれに機能をカスタマイズすることができるものです。ボディは表面はサンドブラスト処理、ボタンの一つ一つにCNC加工と彫刻技術を使用してブランド名称通りの精密感が感じられます。バランスの出力は2.5v、アンバランスは1.25Vです。

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難点は内蔵メモリが8GB(システム領域含む)と低いことですが、このシリーズは外部SDカードに音源を入れるものと割り切ったほうが良いかもしれません。設定項目はL4と共通していますが、デジタルフィルターはFAST/SLOWの2つのみとなる。電源ボタンはないのでオンオフは再生キーで行います。
出力端子は底面にあります。質感はエントリーモデルにしてはかなり高いと感じられ、手に持った重さはL4と同程度です。
軽いOSのせいか、エントリー機としての操作のもたつきはなく、かなり素早い操作ができます。

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音を聴いてみるとたしかに明瞭感は鮮烈なL4に譲りますが、エントリー機としてはかなり良いほうだと思います。全体の音の個性はL4に似ていて、フラット基調だが聞きやすく、適度な湿度を感じさせます。ただエントリーモデルとしての過度な低域の味付けはないように思います。あくまでフルバランス回路を生かした鮮明な音質で勝負しようということのようです。
L3-GTもフルバランス回路であり、バランスにすることでより力強く洗練された音を聴くことができます。L4ではバランスにすると少し先鋭すぎる点があったんですが、L3-GTではそうしたことはないのでいろんなイヤフォンで楽しみやすいかもしれません。こちらも2.5mm端子がかなりがっちりとはまる点は共通であり、ボディの高い剛性感とともに品質の高さを感じることができます。なかなかコストパフォーマンスの良いエントリーモデルと言えるでしょう。

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また価格の安いL3-GTの場合にはデジタルケーブルを使用して外部アンプを使う母体とすることもできます。L3-GTはアナログアウトが2Vrmsと真のラインレベル出力を実現していて、設定の切り替えでSPDIFでも出力ができます。
たとえばChord Mojoにつなぐためにはデジタルケーブルを用意し、L3-GTの画面設定から、音声出力設定、SPDIF、ONにします。実際に聴いてみるとレベルの高い一ランク上の再生が可能となります。こうしたシステムのベースにも良いかもしれません。


* L6について

L6はLP5で使用されているDACチップを採用したもので、LP5の音性能をよりポータブルで扱いやすいLシリーズで継承しようとしたモデルと言えます。Lシリーズでは最上位機種で、LP5と同様の期のケースに入れられてくる点が高級感を感じさせます。DACはAKM AK4414を採用しています。これはシングルですが4chの出力ができるICなので、あえてデュアルにする必要はないでしょう。
軍用規格のコンデンサーが使用されていたり、デジタル部分の電磁輻射はより優れた導電性を持つ黄銅(真鍮)メッキカバーを使用するなど、設計にもより高品質なパーツが使われています。

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ボディカラーは最もシックな深い色合いのカラーリングで落ち着いた感じを出しています。キー配置はL4と同じです。設定項目もほぼ同じですが、デジタルフィルターはFAST/SLOWの2つのみです。

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L6の音を聴いてみると、全体的な音の個性はL3-GTやL4とも通じますが、若々しい感じのするL4に比べると楽器音の細かな表現でより厚みのある豊かな音調を感じます。いわば高級感のある余裕ある音と言うべきでしょう。例えば女性ヴォーカルはより艶めかしく聴こえます。細かな音のニュアンスを楽しむユーザー向けと言えます。

* LP5 Ultraについて

L5 Ultraは限定生産されたL5 LTD199という機種を一般生産可能にしたものであり、これまでのLシリーズとはさまざまな点で異なります。Lシリーズとは異なり、回路はアンバランス設計です。DACはL6同様にAKM AK4414ですが、L6がLP5をローコストにしたものと言ってもよいかもしれません。ただ音質的にはLP5 UltraはLシリーズよりもかなり上を行きます。

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LP5 ultraはColorflyの伝統を継承するようなレトロ感覚のデザインでかなり重いのですが、これは金メッキされた真鍮製のボディだからです。高級感を感じさせるバックパネルは天然木材を使用しています。

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音質はいままでのモデルの中では一番優れていて、解像力が高いとかSNが良いというよりも、音が豊かで滑らか、かなり高級オーディオを感じさせるおとです。音の広がりも素晴らしく、余裕のある音を感じさせます。音の深みもひときわ豊かに感じられます。
液晶は小さくタッチはもちろん使えないのでキー操作ですが、再生中はメーターが触れるなど楽しい仕掛けが施されています。

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もっともLP5 Ultraの場合にはイヤフォンよりもヘッドフォンを使用するほうが本来的な用途と言えるでしょう。ハイエンドヘッドフォンで聴いてみると、しっかりとした厚みのある良質な音を聴かせてくれます。据え置きのヘッドフォンアンプに負けないような、かなり品質の高い豊かで余裕のある音です。アカペラのボーカルでも声が痩せることはなく豊かな再現で、バロックバイオリンの音色にはしっかりと倍音表現が乗っています。クラシックでのオーケストラの雄大な表現も圧巻です。
Lシリーズとも一味違うアナログ的で骨太な品質の高い音を味わえるのがLP5 Ultraと言えます。


* まとめ

Luxury & PrecisionはHeadFiなどでは話題になっていましたが、日本市場に参入となります。
Lシリーズについては高いボディの精密感と、フルバランス回路を生かした鮮明な音質が特徴的です。ポータブルユーザーに向いています。そのうえで、ベーシックなL3-GT、最新のL4、高級パーツのL6とグレードわけがなされています。おすすめを上げるとやはり歯切れのよいシャープな音のL4です。
LP5 Ultraは個性的なハイエンドDAPを求めている人、特にポータブルサイズでも据え置きで使ってヘッドフォンで聴くのがメインという人に向いています。
中国製品というと故障や品質の低さが問題となるが、そこを聴いてみたところもとがIT関係の実績があるので不良率は1-2%ととても低いそうです。

フジヤさんでは下記リンクのように今週末にL&Pの試聴会を開催するということなので、興味ある方はぜひ参加してみてください。
https://www.fujiya-avic.jp/blog/?p=41250
posted by ささき at 09:32| __→ Colorfly C4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月13日

SONY DMP-Z1とS-Masterの功罪について考える


SONYが香港AVショウで超ド級のDAP、DMP-Z1を発表したと下記Philewebなどに報じられて話題をまいています。
https://www.phileweb.com/news/audio/201808/09/20057.html
少し調べてみるとこのDMP-Z1で興味を引いたのが、ウォークマンのみならず据え置きのTA-ZH1ESまで採用されていたSONY自慢のS-Masterが採用されず、一般的なDAC IC(AK4497)+アンプIC(TPA6120)という組み合わせに収まっているということです。

本稿ではこの辺の理由を考え、SONYのこれからを推察していくことにします。

まず下記のスペックからDMP-Z1ではDSD Remastering engineという機能でPCMを 5.6MHz DSDに変換するということが書かれています。ここから推察されるのはDMP-Z1がDSD中心のアーキテクチャになっているということです。これはDSDをネイティブ処理する能力に長けているAKMのAK4497を採用していることでもわかります。
http://www.sony.com.hk/en/electronics/walkman/dmp-z1
また下記のHeadFi投稿にありますが、このDSD Remasteringを行うDSPはSONYの自家製だが、Walkmanでも採用されていたがS-Masterとの相性が悪いのでRemastering機能は使えず、TA-ZH1ではそのためにFPGAを使う羽目になったと書かれています。
https://www.head-fi.org/threads/official-sony-dmp-z1-thread.886122/page-9#post-14417586
つまりS-Masterから決別した第1の理由はここで、S-MasterはPCMに特化した設計であったため、DSDを中心とするアーキテクチャには向いていないと言えます。

次に下記のPhileweb記事にも乗っているSONY自身の説明にもあるように、S-Masterでは大出力が取り出しにくいということがあります。HeadFiでも同様なことを開発者から聴いたという投稿がありましたが、これもそれを裏付けています。
https://www.phileweb.com/news/d-av/201808/11/44729.html

また、これらを解決するためにはDSD中心で大出力のS-Masterを開発すればよいのでは、と思われる人もいるかもしれません。しかしS-Masterのような大規模なカスタムICは設計開発費がかさむので、小ロット高利益率のような製品には向いていないということがあります。一般ウォークマンのようなコンシューマ向け大量生産品の性能を上げるには向いていますが、似た用途でも高級オーディオのカスタムICではCHORDのようにFPGAか、XMOSのような小回りの利くものが向いています。おそらくS-MasterはASICのようなものだと思います。

そして、これまで出てきた断片からDMP-Z1が新技術のテストベッドではないかということも推測できます。ほんとのワンオフの特別モデルであれば最高性能を追求するためにはDACはともかくアンプはディスクリートを使う手もあります。しかしあえてDAC IC+アンプICというスキーム(図式)を取っているのは、周辺のガワとか高級パーツを簡易化すれば、のちにもっと求めやすい「なにか」になるのではないかということです。それがWMなんとかかはわかりませんが。
ソニーはかつて技術の最高のものを集めてコスト度外視でクオリアを作りましたが、これは次につながるものにはなりませんでした。DMP-Z1は新しい技術を試したくてコスト度外視となり、次につなげたいということがあるのかもしれません。


以上からソニーはS-Masterを捨てて、DAC IC+アンプICでDMP-Z1を開発したのではないかと推測します。もちろん省電力の良さもあってコンシューマープロダクトではS-Masterは継続すると思いますが、DMP-Z1はひとつのマイルストーンになるのかもしれません。


ところで蛇足ながら最後にもっと推測をひとつ。
ソニーは自分の固有形式・技術にこだわる会社で、この場合それはDSDだと思います。ソニーはDSDをソニーが生み出した形式として捉えているのではないでしょうか。PCMに縛られるS-Masterを捨てることで、そこに立ち返ろうとしたのではないかとふと思いました。まあ私のただの思いつきですけれども。

posted by ささき at 14:09| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする