Music TO GO!

2018年04月24日

JH Audioの末娘、Billie Jean登場

JH Audioの末娘、Billie Jeanが登場しました。
レビュー記事を今度のヘッドフォンブックに書きましたので発売のさいにご覧ください。

簡単に書くと、まず小さいのが特徴で、Billie Jeanの名はマイケルジャクソンの曲からとってます。音は低域が厚いMichelleと比べると、中高域の鮮明さが特徴的で、これは新規採用のアコースティックチャンバーゆえかもしれません。

このアコースティックチャンバーについてはジェリーに直接聞いてみたんですが、音質的にはTAECのようにアコースティックフィルターを排するものではなく、ロールオフする前の高域のピークをスムーズにして高域を伸ばすためということです。

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2018年04月20日

AKG N5005レビュー

AKG N5005はN30やN40のようなNシリーズの流れをくむハイエンドIEMの新製品です。それと同時に名称からはAKGの名機であり一時期を築いたK3003を連想します。もちろん私的にもK3003との比較が興味あるところでした。(K3003は併売とのこと)

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AKG N5005とSP1000SS

AKG K3003の2011年のレビューは下記リンクです。記事に出てくるプレーヤーが時代を感じさせます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/227180797.html

* K3003からN5005へ

まずK3003を少しおさらいすると、2011年のK3003のデビュー当時はBAとダイナミックとのハイブリッド自体が珍しい形式で先駆的な製品でした。 またK3003はハイブリッド形式というだけではなく、ダイナミックドライバーと直列にBAドライバー(TWFK)をステム(ノズル)内に配置して、チューブレスで耳穴にダイレクトにBAドライバーの音が届くという点で画期的でした。その鮮烈な音が当時のユーザーを魅了したわけです。下のK3003の内部構造と画像を見てもらうとノズル部分の構造が良くわかると思います。
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左: K3003の内部構造(AKGサイトから転載)

音をチューニングする音響フィルターを替えられるという方式もこうしたダイレクトな音作りならではと言えたかもしれません。このフィルター交換とノズル部分の構造はN5005に継承されています。
また共振を抑えたステンレス製の筐体もポイントですが、これもセラミックという形でN5005に引き継がれます。

K3003では3Way 3ドライバーで2基がBAで中域と高域、一基がダイナミックで低域のハイブリッド形式で、N5005では4Way 5ドライバーとなり、中域にドライバーが足された感じです。ダイナミックドライバーはK3003が9.8mmに対してN5005は9.2mmということです。N5005では口径は小型化していますが、後に音質で書くように性能は向上していると思います。

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AKG N5005

N5005ではNシリーズの流れを汲んで筐体デザインが耳掛けできるシュア方式を採用しています。(この方式はWestoneのカートライト兄弟がShureもアウトソースで手がけていた時のデザインなのでカートライト方式というべきかもしれませんが)

* パッケージ

パッケージではまず交換ケーブルの多さが印象的です。K3003はリケーブルできないのが残念なところでしたが、N5005はこれでもかというくらいの交換ケーブルが初めから標準でたっぷり入ってます。

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ケーブルは3.5mm, 2.5mmバランスのほかにBTアダプタケーブルも同梱され、さらに国内ではAKGの純正の交換ケーブルであるCN120-3.5も入っています。これだけはじめから入っているのは珍しいですね。その他にはBTアダプタ用のUSBケーブルや各種イヤチップとクリーナーが入っています。

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BTアダプタはWestoneやShureと同じタイプのように見えます。MMCXプラグの汎用品としても使えそうですが、他のメーカーイヤフォンは保証外ということのようです。

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3.5mmは耳フックの部分がメモリワイヤのようにヒートシュリンク加工がされていてリモコンのついたケーブルが入っています。3.5mmについてはさらに上級グレードのCN120-3.5が付属しています(国内)。2.5mmバランスケーブルは3.5mmの標準と同じケーブルです。

ただケースについてはK3003のケースが気にいってたのでデザインを踏襲してほしかったとは思いますね。

* 音質

イヤチップはSpin Fitと標準的なラバーの二種類が入っています。
K3003と比べるとK3003が従来的なイヤフォンの形を踏襲していたのに対して、N5005ではもっと新しく耳にはまりやすい形をしています。N5005では耳に回す方式のためにK3003のストレートインよりも外れにくくなっています。筐体にはダイナミックハイブリッドらしくベント穴が空いてますね。

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N5005とAK380

まずAstell & KernのAK380を使いました。N5005の能率はやや低めに感じます。
まずリファレンスフィルター、ラバーイヤチップ、3.5mm標準ケーブルという条件で聴いてみると、中高域のバロックバイオリンの音色が響き豊かに美しく再生され、高域の痛さは少なく、厚みのある音の高級感が感じられます。これだけでもハイエンド機の品質と感じられます。また音に粗さが少なくケーブルが高品質な気もしますね。
リファレンスフィルターでも十分に低音の量感はあって、帯域全体では少し低域多めの音楽を楽しみやすいチューニングになっていると思います。低域もわりと低いところまで出ている感じです。中音域ではジャズヴォーカルや楽器とのバランスが良いと感じられます。
全体的にいうと低域の質が高く、深く重く出ていると言えます。これがひとつの要因として豊かさと厚みが感じられてN5005を高級な音にしていると思います。細かい音もよく抽出されていて解像感も高いと感じます。
AKプレーヤーでは2.5mmケーブルを使うことでさらに立体感が高く上質な音楽を楽しむことができます。音の重なりも一層よくなります。


なお国内版ではAKGの純正交換ケーブルであるCN120-3.5が付属しています。
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CN120-3.5はとてもしなやかなケーブルで見た目も高級感があります。柔らかいのでメモリワイヤや曲げ癖がなくとも耳にかけるのは容易です。音質は透明感が高く、音の純度が高いという印象です。高音域がきつすぎずに透明感を堪能できるのが良い点です。低音域も十分な量感があってタイトで膨らみが少なく、品質の良い低域が楽しめます。音調もニュートラルで着色感も少ないですね。
全体に標準ケーブルよりさらに音の粗さが少なく滑らかで高品位なN5005にふさわしいボーナスと言えるでしょう。


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プレーヤーをAstell & Kern SP1000SSに変えるとN5005の音再現性能の高さがより一層高く感じられます。SP1000のハイエンドオーディオ並みの細やかで色彩感豊かな音がN5005をより高みにもっていく感じですね。SP1000SSモデルの持ち味の至高の透明感もN5005では十分に堪能できます。ベルの音が澄んで綺麗なのは中高域ではなく、本当の高域が綺麗に出ているからでしょう。
低域の深さもSP1000で聴くといっそう引き出され、これゆえに広いスケール感も味わえます。ダイナミックドライバーの躍動感がSP1000のパワー感を生かしてるのも魅力的な音楽再生です。N5005はまぎれもなくハイエンドクラスの音を持ったフラッグシップと感じることができます。

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N5005、付属のBTアダプターとiPhone X

Blutoothアダプターケーブルもおまけというだけではなく、かなり高品質を感じさせます。形からはWestoneやShureのアダプターと同じOEM先のように思えるけれども、操作部は左になっています。もっとも電子部分のOEM先が同じでもオーディオ部分のチューニング次第で音は左右されるらしいので、そこはAKGの音に合わせているのでしょう。SP1000とは高品位コーデックであるAptXで接続ができます。透明感が高く、すっきりと音が伸びていく感じです。
iPhoneとの組み合わせでも音質は十分に良く、iPhone X(iOS11.3)との組み合わせではN5005の性能を十分に堪能できるほど音質が高いと感じられます。高低のレンジ感も十分にあり、iPhoneやスマートフォンを見ながらの通勤や通学の手軽で高音質のぜいたくなお供としてお勧めです。

* 音質調整フィルター

調整用の音響フィルターはねじ込み式でK3003と同じ方式です。ねじ込みはスムーズですが、パーツが小さいので広いテーブルか箱の上でやったほうが良いと思います。

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ヴォーカル域に鮮明さを足したいときはMid-Hghフィルターを使うとよいですね。低域はより締まった感じになるのでジャズはこれが良いように思えました。バイオリンもMid-Highで高域がより伸びるように感じられますが厚みがやや失われるので好みもあると思います。
Highフィルターだとさらに高域はシャープになるのですが、個人的にはやや高い音がきつめに感じられます。このフィルターでも低域はあまり落ちないので低域の強さはダイナミックドライバー由来のものだと思います。

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N5005のノズル部分もK3003と共通する設計ということがわかると思います

Bassフィルターは低域強めというよりも高域を抑えめにするという感じに思えます。たとえばヘビメタのようにきつめの曲にはよく合います。リファレンスでもメタルを聴くと高域が刺さる感じがしますので、そうした調整に向いています。
比べてみるとリファレンスはreferenceというよりもMid-Lowといったほうがよいかもしれません。N5005ではMid-Highの調整フィルター種類が増えたのでリファレンスがやや低域寄りになったかもしれませんね。

フィルターに関しては低域はわりと強めでほぼ変わらず、高域の強さを調整するという感じに思えます。曲のジャンルや録音によって変えるとよいでしょう。個人的にはリファレンスかMid-Highが常用できると思いますが、この二つは個人の好みだと思います。HighとBassは曲や録音によって使いわけるとよいのではないでしょうか。

*N40、K3003との音質比較

N40と比べるとN5005は全体に一段上のレベルで、特に音の豊かさ厚みが違います。N40も価格的にはよいと思うけれども、N5005はやはり高級機のハイレベルな格上の音再現を聞かせてくれます。たしかに似た感じの音調ではあるけれども、ここでも中音域のドライバーが違うのが効いているように思いますね。またケーブルの質も違うのではないかと感じます。全体的な解像感や透明感もN5005の方が上です。

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左:N40 右:N5005

K3003と比べてみると、K3003とN5005は能率がだいぶ違うように思います(K3003が高い)。音の個性はAKGイヤフォンとして似ていますが、同じリファレンスフィルターでもK3003は少し高域寄りに聴こえます。K3003の当時にはK3003独特の透明感の高さとシャープな高域に酔っていたので、高域の鮮明さがK3003の美点と思っていたと思います。

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左:K3003 右:N5005

N5005と比べると、N5005のほうが豊かで厚みがあるので高級に聴こえ、K3003のほうが軽い感じの音に聞こえます。理由としては低域ダイナミックドライバーの性能もあるけれども、ドライバーが増えたことによる中音域の充実が大きいのではないかと思います。これはCampfire AudioのJupiterに中音域ドライバーの加わったAndromedaの音の関係にも少し似ているかなともちょっと思いました。

今聞いてもK3003はかなり優れたイヤフォンだと思います。ステンレス製筐体の質感の高さもいまでも見劣りしません。ただN5005とK3003では好みの部分もあるけれども、やはりN5005の方が一段性能は上だと思います。

* まとめ

たっぷりした低域と、それに負けない豊かな中音域が魅力的なイヤフォンです。高音域はフィルターで好みに変えられます。K3003はもはやクラシックという感じですが、N5005はNシリーズで最新イヤフォンのトレンドを抑えたうえで、K3003を超えるような音質を実現したと言えます。

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10万を切る価格でBTアダプターやケーブルもたっぷりとついてますし、音質からするとだいぶお買い得なパッケージだと思います。K3003やN40と大きくは音調というか音の個性は変わらないのでAKGサウンドが好きな人には特に魅力的な製品と言えるでしょう。
posted by ささき at 22:05| __→ AKG K3003 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月17日

UM MAVERICK IIカスタム レビュー

UM MAVERICK IIカスタムはUMのIEMの中でも代表的なモデルの最新カスタムバージョンです。
まずこのシェルの美しさに惹かれますが、音質もまた改善されています。

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*MAVERICKのおさらい

まず簡単にもともとのオリジナルのMAVERICKのまとめをしておきます。
MAVERICK(マーベリック)はカスタムIEMで知られるユニークメロディ(UM)が開発したユニバーサルIEMとして登場してきました。UMの取ったアプローチは国ごとの代理店と共同開発でその国の事情に「カスタム化」した音決めや開発をするということです。日本からはミックスウェーブの宮永さんがUMに赴いて開発に参加しました。普通代理店はメーカーに意見を言うくらいの影響力のように思いますが、このUMのユニバーサルIEM開発においては代理店とメーカーの共同開発と言ってよいほどかなり深く関与しているのが特徴です。

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初代MAVERICKユニバーサル

MAVERICKはダイナミックとBAのハイブリッドで5ドライバー。ネットワークは4Wayです。高域がBAx2、中音域がBAx1、そして特徴的なのは低音域にBAとダイナミックを両方配置しているということです。
ハイブリッド構成では繊細なBAが中高域、迫力のダイナミックが低域という分担が一般的で、同じUMでも以前のCIEMであるMerlinはそうなっています。MAVERICKもはじめの予定ではMerlinのようにダイナミック一発で低域を担当する予定だったそうですが、開発していくうちに20〜40Hz辺りのバスドラムのアタック感が関係してくる箇所がダイナミック一発では再現出来ず、結果的にBAでその部分を補ったということです。
これが音質的に低音域の質を向上させる大きな特徴となり、「独自路線を歩む人」のような意味である"MAVERICK"という名前の由来ともなっています。

*MAVERICKカスタムへの進化

MAVERICKをユニバーサルからカスタムに再設計するにおいては、ドライバーをそのままにしてチューニングを徹底して行うという方針を立てたということです。
なぜかというと、当初ユニバーサルIEMであったMAVERICKをカスタムIEM化するうえでは、まずユニバーサルモデルをそのままカスタム化するという手法も試してみたということですが、全くといっていいほど意図していない音になったということです。

チューニングでは具体的にいうと、MAVERICKカスタムではカスタムシェルにした状態での位相調整、低域の量感調整、4ウェイのスピード調整等を行ったということです。これは主にフィルター、レジスタ(クロスオーバー)、チューブの長さの3点をMAVERICK・カスタム向けに調整したということです。ドライバーユニットユニバーサルとカスタムでは変更していません。
チューニングの方向としては元々宮永氏がドラムなど楽器をやっていたこともあり、楽器の音(特にドラムなどリズム隊)を中心にチューニングしたということです。

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左が初代MAVERICKカスタム

またチューニングのさいにポイントになったのはカスタムとユニバーサルの根本的な違いであるダイナミックレンジだそうです。カスタムでは遮音性が高いために静音がより聞こえる、つまり大きな音と小さな音の差のダイナミックレンジが大きくなるわけです。
MAVERICK・ユニバーサルの時も楽器メインでチューニングを行っていますが、MAVERICK・カスタムとでは使えるダイナミックレンジが異なるため、その点はカスタムモデルが有利になります。これがカスタム化の大きなメリットであり、それを生かしたということですね。

*MAVERICK IIへの進化

低域における大型ダイナミックとBAのハイブリッド構成は変わりませんが、ポート(ベント穴)がMAVISのように二つになっています。またドライバーも初代からはダイナミックドライバーと中高域用のBAドライバーが変更されています。これによりクロスオーバーの最適化、音導管にプラチナ塗装の金属チューブを採用しています。

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左がMAVERICK IIユニバーサル

MAVERICK IIでは全体の音調とか個性は初代と似ていますが、全体に音がより明瞭になり解像力が上がったように思えます。低域もMAVERICK特有のパンチの強さがよりはっきりと感じられます。
良録音のジャズヴォーカルでは初代よりも鮮明にヴォーカルが聞こえベールを1枚取ったように感じられます。初代カスタムと比べた場合でもMAVERICK IIのほうがより明瞭感が高くクリアでよりパンチが鋭い感じで、メリハリがより濃く感じられます。特に一枚ベールを取ったような鮮明さはやはりMAVERICK IIの特徴です。女性ヴォーカルもMAVERICK IIのほうがより聴き取りやすいと思います。

MAVERICK IIでは兄弟としてのMAVERICK+も存在しています。ただし名前が示すような上下関係ではなく、ドライバー違いの兄弟のようなものということです。

*MAVERICK IIカスタムへの進化

そしてMAVERICK IIのカスタムモデルとしてMAVERICK IIカスタムが登場しました。

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このデザインはマクベス2とも似てUMが最近取り扱いを始めたファイバーシェルというタイプです。MASON IIカスタムもシェルが美しいIEMでしたが、MAVERICK II カスタムも負けません。

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紫のIEMはMASON IIカスタム

MAVERICK IIカスタムも宮永氏のチューニングでMACBETH II Classicと同じころに実施したということです。MAVERICK IIカスタムについても初代MAVERICKユニバーサルとカスタムの関係のようにドライバーは同じでチューニングをし直しているそうです。チューニングでは評判のよかったMAVERICK+の意見も考慮しているということ。

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私の持っている初代MAVERICKカスタムに対して、MAVERICK IIカスタムでは2ピンプラグが引っ込んだものに変わっています。よりがっしりと固定できるというプロ仕様ですね。

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左が初代MAVERICKカスタム

* MAVERICK IIカスタムの音質

音質はまず標準ケーブルで比較しています。

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全体にMAVERICKらしいシャープでパンチの効いた音の個性は変わりません。ピアノの打鍵の気持ちよさはピアノが打楽器であるということを教えてくれるようです。MAVERICK IIカスタムで向上したのは透明感だと思います。全体にクリアさを増してより音の明瞭感が高くなった感じです。また楽器の音がより整って歪み感が減っているようにも思いますね。
初代MAVERICKカスタムと比べると音がやや中高域よりになっているようにも感じますが、どちらかというと初代MAVERICKカスタムの中高域のクリアさと伸びがいまひとつなので、ワイドレンジ化したようにも聴こえます。MAVERICK IIカスタムと比べるとですが、初代MAVERICKカスタムは少し詰まって低域よりの音に聞こえます。初代MAVERICKカスタムからMAVERICK IIカスタムに変えると、音世界がぱっと広がり音がよりクリアに聞こえます。中高域の伸びもより気持ちよく伸びていきます。
中高域の楽器音はそれを反映してより鮮明に聴こえ、特にヴォーカルが聴き取りやすくなって歌詞がはっきりと伝わってくるように思います。

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MAVERICK II カスタムの高性能はA&K SP1000で真価を発揮します。標準ケーブルのままでもその音の透明感や深みは感動的なほどですね。Mojo+Polyで聴いてみると歯切れの良さ、透明感の高さがUM MAVERICK II カスタムによく合う感じです。

*MAVERICK II カスタムとリケーブル

MAVERICKでは以前からBeat Signalが良く似合うと思っていたので、MAVERICK II カスタムのケーブルをSignal標準とSignal8芯で聴いてみました。すると8芯の方が音が自然でより細かな音が聴こえます。SP1000CPのほかのDAPにないような音の深みが気持ちよく引き出せる感じで、MAVERICK II カスタムとSignal 8芯はかなり相性良いと思います。SP1000SSと組み合わせると音の透明感がひときわ高く、細かな音がざわざわっと湧き上がるSN感の高さに感動するほどです。
MAVERICKシリーズらしいドラムスやパーカッションの打撃感もいっそうキレよく気持ち良く楽しめます。

ただSignalがよく似合った初代MAVERICKカスタムとは音がやや変わっていて、もともと中高域がよく伸びるので、Signalよりは中高域を抑えたケーブルのほうが良いかなという気もします。MAVERICKIIカスタムはいままでのMAVERICK系よりも違ったケーブル選びが必要かもしれません。

それとMAVERICK II カスタムは標準ケーブルでも良いと思います。UMはMavis、Masonもそうですが、標準ケーブルで十分と言うものが増えてきたように思いますね。


* MAVERICK II カスタムとUM IEM群

初代MAVERICKカスタムと比べて、MAVERICK II ユニバーサルはよりクリアだがスケールダウンする感じです。これは低域の出方のカスタムとユニバーサルの差になっているかもしれません。
MAVERICK II カスタムだとMAVERICK II ユニバーサルよりかなりクリアで、さらに初代MAVERICKカスタムよりスケールアップしてる感じですね。加えて低域もより明瞭になっています。音の個性的にはMAVERICK II カスタムは初代MAVERICKカスタムよりも、特に中高域の伸びやかさと全体の透明感でMAVERICK II ユニバーサルに似ています。MAVERICK II カスタムはMAVERICK II ユニバーサルよりもカスタムの分だけよりユニバーサルよりもよくなっているように感じます。

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左はMAVERICK IIユニバーサル

MAVERICKとMavisは低域(20-40hz)の質の向上というテーマに関しては、それを異なる手段(MAVERICKなら大口径ダイナミック+BA、Mavisなら小口径ダイナミック2発)で実現した兄弟機ともいえる面もあります。しかしながら、それよりも違いはむしろ全体的に異なった音の個性を目標に作られたと言う方が正しいようです。(BAドライバーもMAVERICKとは異なるようです)
それはMAVERICKでは楽器音を鮮明に聞くと言うことを目指しているのに対して、Mavisでは音楽全体を楽しく聴くというコンセプトのもとに設計されているからだそうです。
このようにUMファミリーはそれぞれにテーマがある個性的な製品群です。

* まとめ

MAVERICK II カスタムはシェルの美しさに目を引かれますが、音質もだいぶ良くなってます。

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音としては透明感の向上と楽器音の正確さにこれまでのMAVERICKファミリーとの差が感じられます。向上の幅もより大きい感じですね。
つまりMAVERICKの初代と2の音質改善の上に、MAVERICKユニバーサルからカスタムへの向上もなされているということです。
UMのIEMの進化というのがよく感じられるのが、このMAVERICKシリーズであり、力の入った代表モデルにふさわしいと思います。


posted by ささき at 20:54| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月07日

CanJam SoCal プレビュー

今週末開催されているHeadFiのCanJam SoCal(ロサンゼルス)のプレビュービデオが下記リンクで公開されています。
https://www.head-fi.org/threads/canjam-global-2018-event-thread-nyc-singapore-socal-london-rmaf-shanghai.860196/page-50#post-14149439

ブランド別のタイムテーブルは下記リンクに掲載されています。
https://www.head-fi.org/threads/canjam-global-2018-event-thread-nyc-singapore-socal-london-rmaf-shanghai.860196/page-53#post-14154113

ざくっと興味のあったところでは、
金属筐体のCampfire Audioの新IEM、Cometは新フラッグシップでVegaのようなダイアモンドコート振動板ですが、8.5mmから10mmに大型化されています。またPolarisのチャンバーシステムも採用されているようです。
Atlasは低価格のシングルBAでチューブレスですが、JudeはシングルBAとは思えないビッグサウンドって言ってますね。
AudezeではMobius(モウビウス)というアクティブアンプ、サラウンドプロセッサ、BT、ヘッドトラッキングの採用された平面型のゲーミングヘッドフォンが出ています。これはIndiegogoでクラウドファンディングで予約がされています。
またLCD-4Zという鳴らしやすい低インピーダンスタイプも出ています。Zはインピーダンスの意味ですが、Zタイプはたしか前はハイインピーダンスタイプだったような(真空管や電流駆動アンプ用の)。これはマグネシウムハウジングで従来機よりは軽いと言ってます。
面白いのではAAW x ShozyコラボのPolaで、静電型とダイナミックのハイブリッドのイヤフォン(世界初って言ってます。披露は三月のCanJamシンガポール)が出ています。静電型ドライバーはトランス使うエレクトレットタイプのようです。セミオープンで遮音性は悪くないともSingapore CanJamレポートでは書いてます。USD 600-800だそう。
BenchmarkからはDACのほかにヘッドフォンアンプが出ています。これはHPA4というもので、THX AAAモジュールの入ったウルトラローノイズのアンプです。
ポールバートンのPSBからもイヤフック形式の完全ワイヤレスが出てます。
EchoboxからはTi-22BT 全チタンのBTイヤフォンも出てます。
Moon Audioはブロンズドラゴンという動線主体であったかみのあるタイプの新製品が出ていますね。

ただ私が知っているのでまだ出ていないのもあるので、その辺はヘッドフォン祭に出るのかも。
posted by ささき at 13:35| ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月04日

Bulk Pet方式の記事をPhilewebに執筆しました

USB DACでの話題の新技術、Bulk Pet方式の記事をPhilewebに執筆しました。
https://www.phileweb.com/review/article/201804/04/2995.html

そもそもBulk Pet方式とは何か、技術解説、長所と短所、従来方式と各モードでの聴き比べなどまたまた濃い内容となっていますのでお楽しみください。
posted by ささき at 19:09| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月01日

怪奇と正義 - 科楽特奏隊

ウルトラテーマのロックアルバムを出したグループ、科楽特奏隊の3/28リリースのセカンド。特撮主題歌のロックアレンジアルバムです。
01. 恐怖の町 (「怪奇大作戦」より)
02. 戦え!アイゼンボーグ (「恐竜大戦争アイゼンボーグより」)
03. 夢のヒーロー (「電光超人グリッドマン」より)
04. レッドマン (「レッドマン」より)
05. アンドロメロス (「アンドロメロス」より)
06. 快獣ブースカ (「快獣ブースカ」より)
07. ミラーマンの歌 (「ミラーマン」より)
08. ファイヤーマン (「ファイヤーマン」より)
09. ULTRA 7 (「ウルトラセブン」より)
10. TACの歌 (「ウルトラマンA」より)
11. マイティジャックの歌 (「マイティジャック」より)

ある世代にはよく知られてますが、若いミュージシャンが演奏するとは思えないテーマの主題歌がずらっと並んでます。欲を言えばこういうのならマッハバロンやれよ、って話もありますが、ローリーがすでにカバーしてるので避けたかも。

うまく原曲をロックンロールに乗せて曲ごとにアレンジもなかなか面白い(ミラーマンとか)ところ。ワンダバのTACの歌や、Ultra 7(ワン・ツー・スリー・フォーの歌)では"フォースゲートオープン"とか泣かせどころのSEも入ってます。最後を冨田勲の特撮テーマ代表曲ともいえるマイティジャックで閉めるのもかっこいいところ。

こちらは紹介動画で、アルバムタイトルの怪奇大作戦のテーマ。なんかそれっぽくMVも作られています。



購入はこちらです。

posted by ささき at 00:00| ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする