Stereophileの下記リンクにMQAを測定的に検証した記事が載っています。
https://www.stereophile.com/content/mqa-tested-part-1
これはMQA非対応のBenchmark DAC3 HGCとMQA対応のMytekのBrooklyn DACにそれぞれテストデータを送ってインパルス応答を見るというものです。これでMQAが唱えている「時間的正確性」の正しさが確認できるというわけです。
データは5us幅で、グラフではひとつのドットが1サンプル幅です。
この結果から見てわかることは3点あると思います。
1. 本来時間的対象性を持った(それゆえ左側にアーティファクトであるプリリンギングが生じてしまう)リニアフィルタ(Fig1)のBenchmark DACにMQAエンコードしたデータを送ると、対象性がくずれてプリリンギングが減ること。
これはつまりMQAエンコードすればMQA非対応DACでも音質が良くなるはずというMQAの主張を裏付けています。この場合の「音が良くなる」、はプリリンギングが少なくなり音が自然に聴こえるはずということです。
*アーティファクト(人工生成物)とはデジタル処理によって元のアナログ信号にはなかった音ができることで、本来の音の前に無いはずの音が生じるプリリンギングなどです。これはデジタルオーディオが自然に聴こえない原因の一つとされています。
*ちなみにこれに対してMQAエンコードによりノイズ成分は増えるので「音は悪くなるはず」というのが反MQA側の言い分だと思います。念のためにこちらも書いておきます。
2. MQAデータをMQA対応のMytekに送るとかなり理想的なインパルス応答特性に近くなる(Fig5)。つまり音が良くなるはず。(インパルス応答は音楽ではないので、「はず」と書いておきます)
これはたとえばMytekのオリジナルの結果(Fig3)も優れているが、MQAだとグラフの左にプリリンギングもでずに、全体も短くおさまっているから、ということです。これがつまりMQAの提唱する「時間的正確性」というわけです。
3. しかしなぜかMQAエンコードしていないデータを送っても(2)と同じ結果になる。(Fig6)
つまりMQAエンコードされていても、されていなくても、MQAデコードすれば同じ結果が出るということです。ここはなぜかというところが謎なのですが、テストデータの故ではないかとは書かれています。つまりテストデータはデジタルドメインで作成されたものなので、MQAエンコードで低減されるはずのDeburringが効いていないのではないかという仮説です。しかしこれは1とも相反しているように思えますね。
これはわかりませんが、あるいはハードごとに異なるMQAファームウエアの実装にも関係しているかもしれません。
いずれにせよちょっと興味深い結果ではありますね。