Music TO GO!

2017年10月31日

イントラ・コンカ型の人気イヤフォン、水月雨(MoonDrop)のLiebesleid

イヤフォンというといまでは耳穴に挿入するカナルタイプが主流だけれども、なかにはこのタイプが苦手という人もいます。
そこでイントラ・コンカ(インナー・イヤー)と呼ばれるいわゆる普通のイヤフォンも一定の人気があるのですが、最近人気なのは水月雨(MoonDrop)というメーカーの日本限定モデル、Liebesleidです。フジヤさんの専売で税込み26,670円です。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail144504.html

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なかなか良いお値段ですが、実物を見ると作りの良さに納得します。
過去にもソニーのe888とかYuin PK1など、こうした普通のイヤフォンで音が良いというものがありましたが、MoonDropは作りの良さでまず異なります。
真鍮削り出しに電気メッキという仕上がりでかなりモノ感は高いですね。ダイナミック型ですが、1T以上という強力な磁束密度で20kHzくらいまでフラットに近く、45kHzで-35dBという性能を得ているということです。

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ボックスは日本市場を意識したのか、影響されたのかアニメチックなイラストです。イヤフォンはずっしりとした重さで、パッケージのなかでぶつからないようにビニールパックに入っています。
ボディは真鍮削り出しで重く、メッキが美しい仕上がりです。

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イヤフォンはこの手にありがちなほど能率が低いわけではないのでiPhoneでも十分音は取れると思います。
音質レベルはかなり高く、こうしたイヤフォンでは私はPK1を思い出しますね。PK1はシャープでその進化型だったOK1ではさらにきつさを感じるほど先鋭だったんですが、このLiebesleidはそれとはまた異なって、刺激的なシャープさは避けながらもとても鮮明でクリア、かつ響きが良く滑らかな音を作り出しています。
ベルの音も整っていて高域の出方も優れていると思うし、倍音再生も優れているのか音に深みと高級感を感じます。楽器が立体的に重なり合い、音の立体感も高いですね。かなり上質な音再現ができていると思います。
ただこのタイプは超低域は漏れるので、あまりカナル型と比べた周波数的にどうこう言う比較をしても仕方ないとは思います。

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高性能ながら刺激成分はわりと少なめなので長時間聴いていられると思います。ただロック・ポップできつい録音のものだとやはり刺激的ではありますが、これらはもっと低性能のオーディオ機器をターゲットにしてきつめ強めに録音しているので仕方ないところではあります。

普通イヤフォンとかポータブルオーディオは電車とか外で使うものですが、このイントラコンカ型のイヤフォンは音漏れもするし、遮音性もありません。ちょっとポータブルには不向きに思えますが、実のところポータブルユーザーはホームオーディオを持たずに良いポータブルオーディオ機材を持っているので、家でもポータブルで聴きたい人も多いそうです。
そうしたときに家でもカナル型で耳穴に差し込むものだと疲労感や不快感があるので、こうした耳において開放的に楽しむタイプは人気があるようです。オープンで家の人の声が聞こえるのもプラスなんでしょう。

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夜にストリーミング音源の新譜のチェックなどをしたくてもデスクトップスピーカーでも音が大きい、というときなど重宝するでしょう。
ヘッドフォンだと長時間かけていると重くて蒸せるという場合にもよいですね。DragonFlyのような手軽なUSB DACやAK70のDACモードを使用してPCに接続して聴いてみるのもまた良いと思います。

週末のヘッドフォン祭でぜひ試聴してみてください。
試聴ブースは14Fロビー(3)のNGS(農義社)さんです。また13Fのフジヤさんブースで特価販売の予定だそうです。
posted by ささき at 21:58| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月17日

Cavalli Audioが解散、昨年のインタビュー公開します

Headfi関係の情報に精通している方にはおなじみのCavalli Audioが残念ながら今月末で解散するということです。細かい事情はよくわかりませんが、下記のHeadFi記事に正式なアナウンスがあります。
https://head-fi.org/threads/cavalli-audio.862917/
サポートもなくなりますが、Avenson Audioというところが引き継いでくれるということです。

Cavalliは昨年のヘッドフォン祭にも来ていて、そのさいに機会を得たのでCavalliの海外向けの販売担当(当時)であるスタン・アン氏にインタビューができました。
本格的に日本参入する際に公開しようと思っていたのですが、その機会もなくなったのでここで公開いたします。下記は2016年10月の情報となります。
Cavali ポータブルとかをオークションでもどうしてもほしいとか、いまからCavalliに興味を持ったという人もいると思いますので、情報として参考までにそのときの内容を公開しておきます。
私自身はこのインタビュー以外はCavalliになんのコネクションもありませんので念のため。

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Cavalli SPARK ポータブルアンプ

会社名は「カ・バ・リー オーディオ」で、もとはイタリアの馬の名前ですが創立者の名前です。
成り立ちは2000年の初頭にさかのぼり、ヘッドフォンアンプを作成しようと集まったネットでのグループがあった。静電型がはじめであったが、それから普通のアンプを作り、真空管とICのハイブリッドを作り、とラインナップを広げていったということ。Dr Cavalliはリーダー的な存在で、その後に販売を考えるようになったそうです。
Liquid Fireがはじめての製品(真空管ハイブリッド)で、次にLiquid crimson(真空管ハイブリッド)、Liquidライトニング(静電型)を作った。みながチューブローリング(真空管交換)したいというのでLiquid グラスを作ったそうです。これは前段がICで後段が真空管で変えられるものです。CavalliはICはディスクリートでクラスAでフルバランス、フルディファレンシャルをモットーにしているということです。Liquidグラスはチューブローリングで8pinと9pinを間違えないように上手に配置した点が特徴だそうです。
次がいま(当時)のフラッグシップのLiquid GoldでこれはICでフルバランス、フルディファレンシャル、XLRx2を持っているものです。

次に当時の現行製品ですが、製品ラインナップはアナログアンプに特化しています。
カバリーのアンプはLiquidなんとかという名前ですが、これはアンプを音楽的に滑らかにしようとしたのでLiquidとよんでいたそうです。

ポータブルのSPARCはディスクリートでフルディファレンシャル、クラスA。LIquid Goldのミニチュア版として作ったそうです。
LiquidカーボンもLiquid グラスと Goldをベースにして、フルバランス、トランスポータブルでSEアウトもバランスから変換しているということ。
LiquidタングステンはSE(フルバランスではない)だけどフルディファレンシャル、ダイレクトカップル、アウトプットトランスフォームレス、チューブが直接ドライバーにつながっているそう。昔のチューブらしくなく、とても精密で解像力も高い。フルチューブ。EL509(549?)。真空管変更はできません。

カバリーの強みは設計力。DR Cavalliはプラズマ物理博士(PHD)、引退して趣味で作り始めた。他とはとても明確な音の差があるということ。レアなパーツに重きを置く会社もあるが、我々はあくまでdrカバリーの回路設計に重きをおいている。彼の哲学はレア部品ではなく、標準の部品でも良い音を出すこと。フルディファレンシャル、クラスAはすべてに通じる。オペアンプは使わない。
他のアンプは解像力に走るあまり、とてもきつくてブライトになりがちだが、Cavalliは解像力を待ちながら滑らかな音が特徴。真空管だけどICのように感じる音も特徴。真空管の味を売りにしていないが、ただしウォームで滑らかを目指しているとのこと。

またカバリーのアンプはぎりぎりのスペックで出力を公表しないで、そこにマージンがあり、出力に余裕があるので平面型などでもよくデモに使われたそう。測定値が良いアンプではなく、音が良いアンプをモットーとしているということです。

昨年のいまころはCavalliの転換点で、それまでのビジネスモデルはオーダーを取って、作り、売るというもの(DIY的)。大量生産に向かず、長期的な使用や信頼性なども考えた製品に移行が必要となったと言っていました。Liquidカーボンの成功を契機にCavalliは自社販売から代理店販売形式に変更し、これを契機にラインナップを刷新するといっていました。カーボンもこれで最後でLiquid Goldやクリムゾンはもう売らないといってました。
この方針変更がうまくいかなかったのでしょうか。Cavalliは上にあるように設計者がコミュニティで有名になって、他から求められて、というHeadFiというかDIY世界ならでは成り立ちでした。それを継続するビジネスにつなげるのはむずかしいのでしょうね。
posted by ささき at 22:22| ○ ホームオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする