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2017年09月27日

Campfire Audioの青い新星Polarisレビュー

POLARIS(ポラリス)は好評のCampfire Audioの新製品で、BAとダイナミックのハイブリッドタイプのユニバーサルイヤフォンです。青い筺体が特徴的ですね。価格は希望小売価格(税別):67,800円ということで、発売は9月29日より開始されます。

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* 特徴

1. チャンバー技術の全面的投入

POLARISは1BA(高域)+1ダイナミック(低域)のハイブリッド構成ですが、特徴的なのはいずれのドライバーもチャンバー(空気室/音響空間)を設けているということです。
まず高音域側のBAドライバーには定評のあるTAEC、つまりチューブレス設計を用いています。これはチューブを排してチューブのあるべき部分にアコースティックチャンバー(音響空間)と呼ばれる空気室を設けるというものです。これが高音域側のチャンバーです。

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また低音域側には8.5mmのダイナミックドライバーが採用されていますが、これも新技術「Polarity Tuned Chamber」と呼ばれる空気室、つまりチャンバーで覆っています。これはダイナミック型ドライバーをスピーカーで例えるところの「キャビネット」のように機能するチャンバー(空気室)に配置することで、これまで以上にドライバーの音響特性を制御し、ドライバー本来のパフォーマンスを引き出す為の新技術ということです。またこのチャンバーによりベント穴へのフロー制御も行われているようです。このチャンバーは3Dプリントによって製作されているということです。
なんとなくベント穴がバスレフポートで、チャンバーがスピーカー内空間というたとえと言えるのでしょうか。
なおダイナミックドライバーはベリリウムではなく新設計の別素材のようです。

2. 3Dプリントを駆使

最新の3Dプリンタ技術もふんだんに投入され、チャンバー技術という点ではその複雑な形状を製作するために3Dプリンタが駆使されています。

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またイヤチップ部分(イヤフォンの先端部)にはプラスチックが使われていて、半透明になっていますが、これは3Dプリンタによって作られたもので、この複雑な内部形状は金属とかモールドでは作ることができないということです。これはつまりイヤチップ部分がTAEC(チャンバー)と一体になっているということのようです。

3. 新しい筺体の採用

筺体はAndromedaのような無骨なデザインですが、POLARISには筐体に新しいセラミックコーティングを採用しているということです。Cerakote(セラコート - セラミック・パウダー・コート)と呼ばれるこのセラミックコーティングを行うことで、耐摩耗性、耐食性、耐薬品性、耐衝撃性、硬度などの物理的性能を向上させているとのこと。

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コートの中はアルミ切削によってボディが作られています。

4. 新しいケーブルの採用

POLARISにはALO品質の新しい特製イヤフォンケーブルが標準でついてきます。「Litz Wire Earphone Cable」というケーブルですが、通常のLitz Wire Earphone Cableは外観がシルバーですが、このPOLARISに付属するLitz Wire Earphone Cableは外観がブラックです。これは本体のカラーリングに合わせてあつらえたものです。

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導体材料も同様にPolarisの音にあわせて変更しており、通常の銀メッキ銅導体のLitz Wire Earphone Cableではなく、銀メッキを施していない「純銅導体」の線材を採用しています。これはPOLARISのチューニング過程において、POLARISに搭載している8.5mmのダイナミック型ドライバーとこの純銅導体ケーブルの相性が非常に良かったため、特別にこのLitz Wire Earphone Cableを採用することにしたからということです。

* インプレッション

パッケージングはいままでのCampfire Audioを踏襲したものです。

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外観は名器Andoromedaを思わせるような武骨なものですが、青いカラーがとても美しく映えて印象的です。またCampfire AudioというとALOの流れをくむケーブルが特徴的ですが、また標準ケーブルが変わって黒になったことがわかります。それとイヤチップ(イヤフォンの先端)部分が半透明でプラスチック素材になったことも特徴的です。

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POLARISというモデルが出るというのを海外のショウの情報で聴いたときは、ドライバー2基でハイブリットということで、Dradoの廉価版かと思っていました。
それで少し前にKenさんにこれを送ってもらったんですが、届いて箱を開けて聞いてみてあまりに音が良いのでちょっとびっくりするくらい音が良く、思っていた音とだいぶ違うので驚きました。
まず音の個性はDRADOとはかなり違います。どう違うかというと、DRADOでは高域のシャープなBAと低域の太いダイナミックの音がかい離していました。これはこれでハイブリッドらしい個性ではあるのですが、POLARISでは継ぎ目がわかりにくいくらいに高い音と低い音のシームレス感があります。これだけでもDRADOの流れとは違うのがわかります。

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また聴き進めてみるといままでのCampfire Audioの音とも異なるように思えます。ただし音が滑らかな点はKenさんのポリシーを残していると思います。

音質的にPOLARISで印象的なのは音の透明感の高さ、圧倒的な音の解像力、再現性の高さです。これはSP1000SSで聴くと圧巻の音質を引き出してくれます。音はシャープで音の歯切れが良く、ドラムスの打撃感やベースのピチカートが気持ち良く感じられます。ロックを聴いてもかっこよさに震えてきますね。
SP1000SSだと立体感が際立って良いのも特徴的で、ジャズヴォーカルなど録音が良いものではリアルさが半端なく感じられます。また客観的な音ではなく、耳に近めでアグレッシブな音再現でライブの熱さも感じられます。
ただSP1000SSだと音源によってはきついこともあり、そういう場合にはプロEQを適用すると良いと思いますね。SP1000CPではCPの音の深みや音のきれいさを堪能できます。

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ただPolarisではSP1000SSの音のすごみを感じることができるという点で、個人的にはSP1000SSを使いたくなります。ナレーション音声を聞くと、たくさんの音が闇から浮き上がってくるようにものすごく情報量が豊富でハスキーな声の再現性が特に優れています。

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透明感が高いから細かい音が浮き出てくるようで、まさにSP1000のハイエンドDACを堪能できるでしょう。
しかしSP1000のような圧倒的な情報量の怪物とタメで渡り合えるというのは実売67,800円という価格を考えると驚きます。この価格でSP1000のメインイヤフォンとして使うことができ、SP1000の性能を十二分に引き出せますよ、と言えるものは少ないと思います。

* まとめ

Polarisは3Dプリントを駆使して、チャンバーで最適な空気の流れを作り出して高音質を生んでいます。
音的には高い透明感、解像力とワイドレンジなど基本性能の高さが特徴的で、それと独特の空気感と滑らかな音楽性が魅力的です。

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この価格としては特筆すべき高い音質を持っていると思います。特にSP1000を持っている人に勧めます、とこの価格帯で言えるのは驚きます。
Campfire AudioのKenさんもPolarisの価格は戦略的な設定で、より多くの人にこの音を聴いてほしいということから設定したそうです。また特にアンプを必要とせずにDAPから直に音を良く鳴らせるように設計したとも言います。

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KenさんはPOLARISについて、自分がこれまで学んできたことに総決算である、というようにも語ってくれました。
POLARISとは北極星の意味ですが、北極星が天に動かぬ道標として人々に道を示しているのと同様に、このCampfire AudioのPOLARISも今後のイヤフォンの道標、マイルストーンになるものかもしれません。

posted by ささき at 21:35| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする