すいません、またDVD付きCD3枚組ボックスセットとかいうトラップに引っかかってしまいました。
というわけで言い訳を書くんですが、これまずロックのライブものにしては音がいいんです。それとライブにつきものの観客の騒音を消していて、あたかもスタジオアルバムっぽく聴くことができるのが面白いところです。またあまりフリップ先生がやりたがらなかったRED以外の初期ナンバーも宮殿含めて多数入っているのもポイントです。
そういう意味でいうと、今風にちょいアレンジされたクリムゾン・リサージェンス的な新録音アルバムっぽくも聴けます。ただアネクドテンみたいにビンテージメロトロンまで使うようなサービスはさすがになくてシンセで代用してます。70年代ナンバーやるための21 Century Schizoid bandがちょっと気が抜けた感じでもあったのでやはりまあ正統派という感じで楽しめます。
クリムゾンというと最近ライブで40年ぶりに(フリップ先生に封印されたと思われていた)サーカスとかリザードをライブで演ったというのでニュースにまでなりました。デビットボウイのカバーもやっているようで、最近のロックレジェンドの急逝に触れてやはりいろいろと心境の変化というやつでしょうか。
演奏自体はトリプルドラムが印象的な通りにヘビーなもので、ここでは単にうるさいロックではなく、緊張感があってかっこいいというオールドロックの真髄を聴かせてくれます。太陽と旋律からの盛り上がりのパターンも相変わらずいいですね。CD3クラシックだけではなく、CD1もCD2もなかなかよいのでけっこう通して聴けます。買ったのはほとんど発売直後ですが、いまではポータブルアンプのロックリファレンスアルバムみたいになってます。
ただ観客の「ノイズ」がないのは賛否あって、ライブならではというところで盛り上がりの拍手とか声がないとかえって気抜けしたライブみたいな違和感があることもありますね。
ちなみにRoonだときちんと3CDとして分類表示がなされていました。さすがにアルバムコメントはないですね。アーティストコメントに関してもこの前のDhafer Jossefみたいなアーティストはともかく、こういうメジャーアーティストだと「俺の方が知ってるよ」と言いたい人も多いと思いますので、まああってもなくてもという気もします。
あとCD3枚のほかにDVDもしくはブルーレイの映像ディスクも入っています。(DVDは初期のみ)
映像でもけっこう音が良いと思います。ただDVDで48/24収録するなら、DVD-ROMでハイレゾも入れてよと言いたいところですが、まあオールドロックは44/16でいいかという気もありますね。
Music TO GO!
2016年09月16日
RoonのOSバージョンであるRoon OSが登場?
Roonフォーラムに面白い話題が載ってます。いまはアプリケーションソフトのRoonにOSバージョンが登場するということです。これはRoonの人もいつとは言えないけど大体はできてる、と書き込んでるので出るのは確実だと思います。
https://community.roonlabs.com/t/roon-os-operating-system/14175/12
NUC(インテルの小型PC規格)に対応して、たぶん形式はLinuxのディストリビューションになるのではないかと思います。例えばこれはVolumioがMPDを中心にしたLinuxのディストリビューションであるのと似たものではないかと思います。
NUCは下記のようなものです。
http://gigazine.net/news/20160526-skull-canyon-nuc/
Core i3かi5のNUC5またはNUC6を使い、4GB 最小の推奨8GBメモリで、M.2接続の64GBか128GB SSDをシステム領域にして、音源はUSBかSMB接続の外部ストレージを想定しているそうです。
内蔵の音源ストレージを想定してないのはリカバリー関係の問題だそうで、後から対応するかもしれないということ。
ただRoon Labsでハードを売ることは考えてないようです。
今まではRoonでオーディオPC作るなら、PC買って入ってるWindowsかLinuxにRoonサーバーをインストールすることになるわけですが、これでもっとRoonでのオーディオ専用PCが手軽になるでしょう。
https://community.roonlabs.com/t/roon-os-operating-system/14175/12
NUC(インテルの小型PC規格)に対応して、たぶん形式はLinuxのディストリビューションになるのではないかと思います。例えばこれはVolumioがMPDを中心にしたLinuxのディストリビューションであるのと似たものではないかと思います。
NUCは下記のようなものです。
http://gigazine.net/news/20160526-skull-canyon-nuc/
Core i3かi5のNUC5またはNUC6を使い、4GB 最小の推奨8GBメモリで、M.2接続の64GBか128GB SSDをシステム領域にして、音源はUSBかSMB接続の外部ストレージを想定しているそうです。
内蔵の音源ストレージを想定してないのはリカバリー関係の問題だそうで、後から対応するかもしれないということ。
ただRoon Labsでハードを売ることは考えてないようです。
今まではRoonでオーディオPC作るなら、PC買って入ってるWindowsかLinuxにRoonサーバーをインストールすることになるわけですが、これでもっとRoonでのオーディオ専用PCが手軽になるでしょう。
ラズベリーパイ用の新しいDACボード、msBerryDAC
msBerry DACはtwitterではポタ研のレポートで書いたんですが、新しいラズベリーパイ用のDACボードです。
委託販売ですが、Bispaでの販売ページはこちらで製作者の情報なども載っています。
https://bispa.co.jp/1698
使用法はHiFiberry DAC+と同じでHAT(拡張ボード) DACなのでRaspberry PI2または3のGPIOに差し込んで使います。ハンダは不要です。ただ一点、後でも書きますが、プロセッサにヒートシンクを付けているとコンデンサーと干渉しますのでヒートシンクは外す必要があります。
msBerryDACの基盤にはヘッドフォンアンプが実装できるようになっていて、あとでなんらかの方法で提供されるようです。出力端子はアンプ出力とラインアウト出力の二個出せますが、標準ではラインアウトのみです。どちらも3.5mm端子というところがポータブルでも扱いやすいところです。ただラインアウトは横出しなのでポタアンと組み合わせるときにはL字ケーブルが必要になります。できればラインアウトの時にポータブルアンプと合わせられるように縦方向にラインアウト端子を付けてほしかったところです。
いずれも左側がmsBerryDAC、右がHiFiBerry DAC+
写真でくらべてみるとHiFiberryよりもだいぶ回路の密度感が高いですが、音もHiFiberryよりも良いと思います。
簡単におさらいすると、ラズベリーパイをこうしてポータブルで使うために必要なものは、Raspberry PI2または3、このHAT DAC、音源のUSBメモリなど、WiFiドングル(3では不要)、電池、そしてこれはDACなのでポータブルアンプが他に必要です。ここではPortaphileのMicro Muses01バージョンを使いました。Muses01を用いた高性能アナログアンプです。
ドライバーはI2SでHiFiberry DAC+と互換なので広いOSで使うことができます。
まず慣れてるpiCorePlayerを使用しました。ここではRaspberry Pi2にいままでもHiFiberry DAC+を乗せてたのでそのまま使うことができます。piCorePlayerは操作性の高さと機能が豊富でSqueezbox資産を活かすことができます。ちなみにRoonはSqueezeboxをゾーンとしてサポートしているので、Roonからも再生指示ができます。
またMoodeAudioなどもお勧めです。ここではRaspberry PI3に乗せ換えてSoXの最高品質でPCM5122の限界である384/32アップサンプリングしてテストしてみました。RPI3なら楽々対応可能です。
ただしこの場合はRPI3のプロセッサにヒートシンクを付けていると、コンデンサーが干渉してしまいますのでヒートシンクは外す必要があります。またRPI3を安定動作させるには2アンペア電池が必要なので、大きなバッテリーに付け変えました。電力消費も大きいですしね。
熱的にどうかと思いましたが、1-2時間は持つようなので通勤程度には使えるかと思います。音質はなかなか大したものです。解像度も高く上質な感じがします。
ただやはり電池消費とか熱とか無理やり感が強いので、ポータブル用途に使うならRPI2が良いと思います。RPI2だと小さい電池で動作可能です。
アンプ内蔵で出てくると単体+バッテリーだけでもDAP的に使用ができるでしょうね。
こういう風に自分なりに工夫できるところがラズパイベースのよいところで、こういうのがもっと出てきてほしいところです。
委託販売ですが、Bispaでの販売ページはこちらで製作者の情報なども載っています。
https://bispa.co.jp/1698
使用法はHiFiberry DAC+と同じでHAT(拡張ボード) DACなのでRaspberry PI2または3のGPIOに差し込んで使います。ハンダは不要です。ただ一点、後でも書きますが、プロセッサにヒートシンクを付けているとコンデンサーと干渉しますのでヒートシンクは外す必要があります。
msBerryDACの基盤にはヘッドフォンアンプが実装できるようになっていて、あとでなんらかの方法で提供されるようです。出力端子はアンプ出力とラインアウト出力の二個出せますが、標準ではラインアウトのみです。どちらも3.5mm端子というところがポータブルでも扱いやすいところです。ただラインアウトは横出しなのでポタアンと組み合わせるときにはL字ケーブルが必要になります。できればラインアウトの時にポータブルアンプと合わせられるように縦方向にラインアウト端子を付けてほしかったところです。
いずれも左側がmsBerryDAC、右がHiFiBerry DAC+
写真でくらべてみるとHiFiberryよりもだいぶ回路の密度感が高いですが、音もHiFiberryよりも良いと思います。
簡単におさらいすると、ラズベリーパイをこうしてポータブルで使うために必要なものは、Raspberry PI2または3、このHAT DAC、音源のUSBメモリなど、WiFiドングル(3では不要)、電池、そしてこれはDACなのでポータブルアンプが他に必要です。ここではPortaphileのMicro Muses01バージョンを使いました。Muses01を用いた高性能アナログアンプです。
ドライバーはI2SでHiFiberry DAC+と互換なので広いOSで使うことができます。
まず慣れてるpiCorePlayerを使用しました。ここではRaspberry Pi2にいままでもHiFiberry DAC+を乗せてたのでそのまま使うことができます。piCorePlayerは操作性の高さと機能が豊富でSqueezbox資産を活かすことができます。ちなみにRoonはSqueezeboxをゾーンとしてサポートしているので、Roonからも再生指示ができます。
またMoodeAudioなどもお勧めです。ここではRaspberry PI3に乗せ換えてSoXの最高品質でPCM5122の限界である384/32アップサンプリングしてテストしてみました。RPI3なら楽々対応可能です。
ただしこの場合はRPI3のプロセッサにヒートシンクを付けていると、コンデンサーが干渉してしまいますのでヒートシンクは外す必要があります。またRPI3を安定動作させるには2アンペア電池が必要なので、大きなバッテリーに付け変えました。電力消費も大きいですしね。
熱的にどうかと思いましたが、1-2時間は持つようなので通勤程度には使えるかと思います。音質はなかなか大したものです。解像度も高く上質な感じがします。
ただやはり電池消費とか熱とか無理やり感が強いので、ポータブル用途に使うならRPI2が良いと思います。RPI2だと小さい電池で動作可能です。
アンプ内蔵で出てくると単体+バッテリーだけでもDAP的に使用ができるでしょうね。
こういう風に自分なりに工夫できるところがラズパイベースのよいところで、こういうのがもっと出てきてほしいところです。
2016年09月15日
iPhone7のイヤフォン端子廃止とレイテンシー問題
iPhone 7でイヤフォン端子がなくなったんで代わりにBluetoothで聞いてください、と言ってもそう簡単に行かないのは一つにはレイテンシーの問題です。
オーディオは良いんですが、動画は映像と音声がずれてしまいます。ただこれについてはiOSやAndroidの最近のOSではBT通信時の映像再生は少し遅延させるそうで、これでわりと助かるはずです。
ただ問題なのはゲームなどランダムに音と映像の同期が必要なものです。これについては測った人がいて下記の記事にまとめられてます。
http://stephencoyle.net/latency/
これによると有線と比較するとほぼ3倍近いレイテンシーが発生してます。これは問題になる値ということ。
それでもっと面白いのはDaring Fireballのジョングルーバーがこの記事を引用して、AirPodsではかなり向上してると書いてるところです。
まだ感じるほどあるけれども、この人の今使ってるBeatsのBTイヤフォン PowerBeats2よりも良いということ。
http://daringfireball.net/linked/2016/09/14/airpods-latency
W1チップの効果というのもあるかもしれませんが、ちょっと興味あるところです。
オーディオは良いんですが、動画は映像と音声がずれてしまいます。ただこれについてはiOSやAndroidの最近のOSではBT通信時の映像再生は少し遅延させるそうで、これでわりと助かるはずです。
ただ問題なのはゲームなどランダムに音と映像の同期が必要なものです。これについては測った人がいて下記の記事にまとめられてます。
http://stephencoyle.net/latency/
これによると有線と比較するとほぼ3倍近いレイテンシーが発生してます。これは問題になる値ということ。
それでもっと面白いのはDaring Fireballのジョングルーバーがこの記事を引用して、AirPodsではかなり向上してると書いてるところです。
まだ感じるほどあるけれども、この人の今使ってるBeatsのBTイヤフォン PowerBeats2よりも良いということ。
http://daringfireball.net/linked/2016/09/14/airpods-latency
W1チップの効果というのもあるかもしれませんが、ちょっと興味あるところです。
2016年09月13日
トレンドリーダーとしてのアップルと二つの技術トレンド
AppleのiPhone7発表の次の日(9/8)にLightというスタートアップのFacebookに次のようなコメントが載りました。
"Welcome to the multi-aperture future, Apple!"
(マルチレンズの未来へようこそ、アップル)
やっと君もここに来たのかい、というような多少皮肉のこもったコメントは、かつてIBMがパソコン業界にIBM PCで参入したときにアップルが掲げた次の言葉を思い出します。
"Welcome, IBM. seriously"
(ようこそIBM、いやほんとうに)
Appleは業界のトレンドリーダーでもあります。これはAppleが初めて作ったものではなくても、Appleが採用することでマイナーだった技術が一気にメインストリームに浮き上がってくるということを意味しています。昔であればGUIやマウスがそうですし、最近であればWiFi規格の802.11もそうといえるでしょう。
この前のiPhone 7の発表会においてもそうなる可能性のある技術トレンドが二つありました。完全ワイヤレスイヤフォンとマルチレンズカメラです。
* 完全ワイヤレス・イヤフォン
iPhone 7ではイヤフォン端子が廃止されたこともあり、Appleは左右分離型の完全ワイヤレスイヤフォンであるAirPodsも発表しました。
完全ワイヤレスイヤフォン(英語だとtruly wireless)は、左右ユニットが分離したワイヤレスイヤフォンのことです。左右のユニット分離にはいままではKleerなどの技術が必要でしたが、Earinなどをはじめとし、Bluetoothで完全ワイヤレスが採用されることで増えてきました。
BTの場合には1:1通信が基本なので本来は1:2となる左右分離ユニットに送れませんが、それを左か右にまず送ってそこから反対側に送り直すことで解決したイヤフォンです。BTスピーカーでもそういうものがありますが、スピーカーと違ってイヤフォンの場合はコンパクトさが必要であり、さらに電波を妨害する人の頭が近接しているのでより難易度は高いと言えます。
Earin
AppleがiPhone 7のイヤフォン端子を廃止し、AirPodsで完全ワイヤレス採用したことで、一部のITガジェット好きのものだったのが、一般にも周知されて「AirPodsは左右どちらかがなくなるだろう」論争なんて言われだしたのも面白いところで、いかにも黎明期を感じさせます。
また完全ワイヤレスはいままでは$300前後でしたが、AirPodsをはじめ、Erato Muse 5やBragi "The Headphone"など$150前後に価格が低下してきました。Bragi DashがIBMワトソンの端末として同時翻訳などの可能性が出てきたのも見逃せない話題でしょう。まだまだ可能性が高い分野です。
完全ワイヤレスについてはうちのブログでいろいろ書いてきたのでこちらのリンクをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/25978943-1.html
* マルチレンズ・カメラ
もうひとつの技術トレンドは冒頭にあげたmulti-aperture cameraです。ただしマルチ・アパチャーというと一般性が低く日本語の座りが良くないのでここではマルチレンズカメラと書きました。アパチャー(aperture)は通常は絞りと訳されますが、ここでは単に開口部のことでマルチアパチャーは複数の開口部、つまりマルチレンズと言い換えることができます。または複眼カメラともいえるでしょう。別の言い方をすれば、ひとつの大口径センサーの代わりにいくつもの小口径センサーを合算して同様な効果を狙うカメラともいえます。この方がスマートフォンやコンパクトカメラには向いているわけです。
つまりマルチレンズ・カメラは初代ライカより続く従来のカメラが一つのレンズ(光学系)だけだったのに対して、複数のカメラユニットの結果を合成して使うカメラのことです。計算して一枚の絵を作るのでComputional Photografyとも言われます。またいくつものカメラを並列で使うのでアレイ・カメラとも呼ばれます。
代表的なものはLight L16ですが、他にもAndroidスマートフォンではすでにいくつか採用されています(LGやファーウエイとか)。冒頭の言葉はLight社がこのiPhone7plusのデュアルカメラを「仲間」とみなしたのでしょう。
すでにAndroidではデュアルレンズは出てはいるのですが、iPhoneはFlicker調べで(キヤノンやニコンも含めても)世界で一番よく使われている「カメラ」です。これにマルチレンズカメラが採用されたことは大きなインパクトとなるでしょう。
iPhone 7 plusではデュアルカメラとして採用されています。この機能仕様については明確でないところもありますが、iOSの開発者ガイドを見ると、単独ではなくデュアルカメラモードで使用すると両方のカメラの情報を合算(combine)して画質を高めると書いてありますので、やはり事前予想のようにアップルが買収したLinx社の技術を使用していると思われます。
Linxの技術でも前の記事で書いたようなクリアチャンネル(ベイヤーフィルタレス)は使用しているかはわかりませんが、二つの視差の違いから深度(距離)情報を得ていることは確実だと思います。この効果は一眼レフのようなボケ味を作るポートレートモードに使用されるとみられています。
深度マッピングの例(Linxページから)
iPhone 7 plusでは今回は56mm相当の望遠カメラが装備されています(もっとも56mmはカメラ界では望遠ではなく標準の範ちゅうですが)。しかし、35mmカメラの換算焦点距離が56mmと言っても実焦点距離は8mm前後だし、8mm/F2.8のレンズは光学的にさほどボケません。そこでデジタルで画像エンジン(ISP)を使用してぼかしますが、このときに自然に効果を生むために距離情報が効果的だと考えられます。
Lytroもこうしたカメラではあり、以前ジョブズが接近したとも伝えられていますが、Lytroの技術は有効画素数が低くて画質という点で使いにくいのも確かで消えていきました。マルチレンズカメラは画質という点でこれからが期待できます。さきのL16はコンパクトカメラなのに5200万画素の画像を作ることができます。詳細は省きますがこれは補完による水増しではなく、複数画像の合成によるものなので真の解像力です。それでいて深度マップでデジタル処理することで一眼のようなボケも使えるというわけです。
たとえば後からピントを変えられると言っても、Lytroのように人物と背景で変えられますでは何回か試して飽きてしまいます。カメラマンが本当に欲しいのは、まつ毛に合わせたはずのピントがよく見るとまぶたにあっていたというような場合でしょう。
一方でこれらは一枚撮るのに時間がかかるという問題もあります。L16だと一枚の5200万画素の画像を得るために1300万画素x10枚の合成をするので、一枚一分弱かかるのではと言われています。この辺もデュアルだとさほどではないと思いますが、これからの課題でしょう。
先日Google(GV)もLightに投資したことでマルチレンズ技術はAndroidスマートフォンにさらに活かされていくのではないかともいわれています。かたやアップルはLinxの技術でデュアルカメラを作ったというわけです。この分野にも注目していきたいものです。
"Welcome to the multi-aperture future, Apple!"
(マルチレンズの未来へようこそ、アップル)
やっと君もここに来たのかい、というような多少皮肉のこもったコメントは、かつてIBMがパソコン業界にIBM PCで参入したときにアップルが掲げた次の言葉を思い出します。
"Welcome, IBM. seriously"
(ようこそIBM、いやほんとうに)
Appleは業界のトレンドリーダーでもあります。これはAppleが初めて作ったものではなくても、Appleが採用することでマイナーだった技術が一気にメインストリームに浮き上がってくるということを意味しています。昔であればGUIやマウスがそうですし、最近であればWiFi規格の802.11もそうといえるでしょう。
この前のiPhone 7の発表会においてもそうなる可能性のある技術トレンドが二つありました。完全ワイヤレスイヤフォンとマルチレンズカメラです。
* 完全ワイヤレス・イヤフォン
iPhone 7ではイヤフォン端子が廃止されたこともあり、Appleは左右分離型の完全ワイヤレスイヤフォンであるAirPodsも発表しました。
完全ワイヤレスイヤフォン(英語だとtruly wireless)は、左右ユニットが分離したワイヤレスイヤフォンのことです。左右のユニット分離にはいままではKleerなどの技術が必要でしたが、Earinなどをはじめとし、Bluetoothで完全ワイヤレスが採用されることで増えてきました。
BTの場合には1:1通信が基本なので本来は1:2となる左右分離ユニットに送れませんが、それを左か右にまず送ってそこから反対側に送り直すことで解決したイヤフォンです。BTスピーカーでもそういうものがありますが、スピーカーと違ってイヤフォンの場合はコンパクトさが必要であり、さらに電波を妨害する人の頭が近接しているのでより難易度は高いと言えます。
Earin
AppleがiPhone 7のイヤフォン端子を廃止し、AirPodsで完全ワイヤレス採用したことで、一部のITガジェット好きのものだったのが、一般にも周知されて「AirPodsは左右どちらかがなくなるだろう」論争なんて言われだしたのも面白いところで、いかにも黎明期を感じさせます。
また完全ワイヤレスはいままでは$300前後でしたが、AirPodsをはじめ、Erato Muse 5やBragi "The Headphone"など$150前後に価格が低下してきました。Bragi DashがIBMワトソンの端末として同時翻訳などの可能性が出てきたのも見逃せない話題でしょう。まだまだ可能性が高い分野です。
完全ワイヤレスについてはうちのブログでいろいろ書いてきたのでこちらのリンクをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/25978943-1.html
* マルチレンズ・カメラ
もうひとつの技術トレンドは冒頭にあげたmulti-aperture cameraです。ただしマルチ・アパチャーというと一般性が低く日本語の座りが良くないのでここではマルチレンズカメラと書きました。アパチャー(aperture)は通常は絞りと訳されますが、ここでは単に開口部のことでマルチアパチャーは複数の開口部、つまりマルチレンズと言い換えることができます。または複眼カメラともいえるでしょう。別の言い方をすれば、ひとつの大口径センサーの代わりにいくつもの小口径センサーを合算して同様な効果を狙うカメラともいえます。この方がスマートフォンやコンパクトカメラには向いているわけです。
つまりマルチレンズ・カメラは初代ライカより続く従来のカメラが一つのレンズ(光学系)だけだったのに対して、複数のカメラユニットの結果を合成して使うカメラのことです。計算して一枚の絵を作るのでComputional Photografyとも言われます。またいくつものカメラを並列で使うのでアレイ・カメラとも呼ばれます。
代表的なものはLight L16ですが、他にもAndroidスマートフォンではすでにいくつか採用されています(LGやファーウエイとか)。冒頭の言葉はLight社がこのiPhone7plusのデュアルカメラを「仲間」とみなしたのでしょう。
すでにAndroidではデュアルレンズは出てはいるのですが、iPhoneはFlicker調べで(キヤノンやニコンも含めても)世界で一番よく使われている「カメラ」です。これにマルチレンズカメラが採用されたことは大きなインパクトとなるでしょう。
iPhone 7 plusではデュアルカメラとして採用されています。この機能仕様については明確でないところもありますが、iOSの開発者ガイドを見ると、単独ではなくデュアルカメラモードで使用すると両方のカメラの情報を合算(combine)して画質を高めると書いてありますので、やはり事前予想のようにアップルが買収したLinx社の技術を使用していると思われます。
Linxの技術でも前の記事で書いたようなクリアチャンネル(ベイヤーフィルタレス)は使用しているかはわかりませんが、二つの視差の違いから深度(距離)情報を得ていることは確実だと思います。この効果は一眼レフのようなボケ味を作るポートレートモードに使用されるとみられています。
深度マッピングの例(Linxページから)
iPhone 7 plusでは今回は56mm相当の望遠カメラが装備されています(もっとも56mmはカメラ界では望遠ではなく標準の範ちゅうですが)。しかし、35mmカメラの換算焦点距離が56mmと言っても実焦点距離は8mm前後だし、8mm/F2.8のレンズは光学的にさほどボケません。そこでデジタルで画像エンジン(ISP)を使用してぼかしますが、このときに自然に効果を生むために距離情報が効果的だと考えられます。
Lytroもこうしたカメラではあり、以前ジョブズが接近したとも伝えられていますが、Lytroの技術は有効画素数が低くて画質という点で使いにくいのも確かで消えていきました。マルチレンズカメラは画質という点でこれからが期待できます。さきのL16はコンパクトカメラなのに5200万画素の画像を作ることができます。詳細は省きますがこれは補完による水増しではなく、複数画像の合成によるものなので真の解像力です。それでいて深度マップでデジタル処理することで一眼のようなボケも使えるというわけです。
たとえば後からピントを変えられると言っても、Lytroのように人物と背景で変えられますでは何回か試して飽きてしまいます。カメラマンが本当に欲しいのは、まつ毛に合わせたはずのピントがよく見るとまぶたにあっていたというような場合でしょう。
一方でこれらは一枚撮るのに時間がかかるという問題もあります。L16だと一枚の5200万画素の画像を得るために1300万画素x10枚の合成をするので、一枚一分弱かかるのではと言われています。この辺もデュアルだとさほどではないと思いますが、これからの課題でしょう。
先日Google(GV)もLightに投資したことでマルチレンズ技術はAndroidスマートフォンにさらに活かされていくのではないかともいわれています。かたやアップルはLinxの技術でデュアルカメラを作ったというわけです。この分野にも注目していきたいものです。
2016年09月11日
Noble Audioの新フラッグシップ、Katanaレビュー
Noble AudioのKatana(カタナ)はNoble Audioの最新のフラッグシップIEMです。
Katanaはカスタムモデルとユニバーサルモデルがあり、カスタムはWagnus経由、ユニバーサルは宮地商会(M.I.D)経由で各販売店で購入することができます。本稿はユニバーサルモデルのレビューです。
下記は宮地商会のNoble AudioユニバーサルIEM取り扱いページです。
http://www.miyaji.co.jp/MID/brand.php?maker=Noble%20Audio
下記はWagnusのNoble AudioカスタムIEM取り扱いページです。
http://wagnus.exblog.jp/22822571/
* "Wizard" ジョン・モールトン
JH Audioが"IEMの神様"ことジェリーハービーで語られるように、またNoble Audioは"Wizard"ことジョン・モールトンで語られます。モールトンが日本でも知られるようになったのはHeir Audioのころだと思います。もともと彼はオーディオロジスト(聴力の専門家)で、名前にドクターが付きます。そういう意味ではキャリアのスタートはジェリー・ハービーよりもセンサフォニクスのマイケル・サントゥッチに似ているかもしれません。
Heir時代から続くWizard(魔法使い)というあだ名はウッドフェイスプレート(おそらく彼が初)や金銀など様々な素材を使った類まれな製作技術から来ているようです。私はHeir時代のモールトンのIEMはTzar350とTzar90を持っています。これらについては下記リンクをご覧ください。
2012年:Heir Audio Tzar 350と90 - ハイインピーダンスの高性能イヤフォン
そして2013年にHeirを出て、Noble Audioという新しい会社を立ち上げました。モールトンはIEMを芸術的に作りたいという志向が強く、Heirではやりたいことができないのでやりたいことのできる会社を立ち上げたということです。JH AudioもジェリーがUEをやめてやりたいことをやるために作った会社であるように、Noble Audioもジョン・モールトンが作りたいものを作る会社というわけです。それを補佐してきたのがNobleの若いCEOであるブラナン・メイソンです。Nobleでは他のIEMメーカーがミュージシャンをメインターゲットにしているのに対して、オーディオマニアを大きなターゲットにしている点も特徴です。
右:ジョン・モールトン 中:ブラナン・メイソン 左:Wagnus久米さん
モールトンはそれからNobleで水を得た魚のようにだれもが驚くようなアートワークをほどこしたり、Wizardモデルというワンオフ(一点もの)モデルを作ったりとオリジナリティあふれる活動をしてきました。そして傑作と言われるK10(Kaiser 10)を発表します。
Noble Audioというと長い間10ドライバーのK10がフラッグシップというかアイコンのように語られ、K10はJH AudioのロクサーヌのライバルとしてもHeadFiあたりではよく語られてきました。
ジェリーとモールトンの間で好敵手と思ってるかはわかりませんが(今度聞いてみたいところですが)、周りがそういう盛り上げ方をしてきたのはやはりTripleFiからHeadFiにながく関わり、主流派としてのジェリー・JH Audioに、新興勢力としてのWizard・Nobleに期待をしている証拠だと思います。
そして今年発表された最新のフラッグシップがKatanaです。
* Noble Katana
Katanaの名の由来はモールトンがポタフェスの発表会でも語っていましたが、ひとつにはNoble Audioが日本でとても人気があるということ、日本刀(Katana)の正確さ・しなやかさ(flexibility)がオーディオ的見地にも似ていること、そして製作が芸術性も含んでいることなどです。
K10からドライバーをひとつ減らしたことについての大きな理由はサイズをコンパクトにするためのようです。実際にK10よりも2.5mmサイズが小さくなって、耳に収まりやすくなっています。またKatanaからはKnowlesとの協力でNoble Driverという独自仕様のBAドライバーを積んでいます(詳細は不明)。何ウエイかというクロスオーバーについても非公開とのことです。
音についてはK10とは違う音で、もっとHiFi系にしたいという意図があったようです。これはユーザー要望からということですが、モールトン自身もHeadFiの書き込みの中で「私にとってK10は適温のジャグジーのようなもので、入ったら出たくない感じのもの」と語っていますのでもう少し辛口のきりっとした(熱めの風呂のような?)音にしたいという点もあったのではないでしょうか。
モールトンはK10に関してはHeirを始める前から構想を温めていたと言いますから、Nobleになってからのフラッグシップ設計は実質的にKatanaが最初と言えるのかもしれません。Nobleはユーザーに支えられてきた会社という意識があるからこそ、こうしてユーザーの声を生かした成果がKatanaと言えるのかもしれません。
* Katanaのパッケージ
パッケージはシンプルに感じますが、必要性は満たされています。中にはペリカンケースが入っていてその中にイヤチップ、アンプ結束バンド、カラビナ、イヤフォン本体、ステッカーなどが入っています。イヤチップはプレートにはまっている点がユニークで取り出しやすく思えます。以下の試聴では主に赤ラバーチップを使いました。
イヤチップは4種類ついていて、赤シリコンラバー、青ラバー、二段フランジラバー、黒フォームです。これはHeir時代から同じのように思いますが、チップはきれいに格納できる金属プレートについているのが面白い点です。ユニバーサルだとチップが重要だし、音を変えられるという点でカスタムに対するプラスでもありますので種類が多いのはよいことです。
Katanaはステムが太いのでややはめづらいのですが、チップのはめ込み位置を上下に加減することで耳にはまりやすくなります。
これは個人的な耳の相性と音の好みになるのですが基本的には赤シリコンラバーが一番よく、中高域の透明感を出すように思います。また黒フォームもなかなか良く思います。フォームだとフィットはいいけど音を濁らせることがままありますが、これはそうしたことなくバランスよい音です。
社外品だとJVCのスパイラル・ドットがうまく合います。フィットも良いし、音も少し変えられます。
イヤフォン本体はコンパクトで、質感が高く感じられます。たしかに和風の文様のようにも思えますね。カラーリングはユーザー要望もあり中性的な配色を目指したということですが、電車の中で使っていても目立ちにくい控えめな感覚も和風かなと思えます。
装着感もとても軽く感じられます。ステムは太めで大小大きさ違いの音導孔がうがたれています。
標準ケーブルは軽くしなやかでストレートタイプのプラグがついています。イヤフォンのプラグは2ピンなので多様なリケーブルが楽しめるでしょう。今回の記事ではすべて標準ケーブルで行いましたが、この標準ケーブルもなかなか良いと思います。
* Katanaの音質
Katanaの音質の高さにははじめからちょっと驚かされました。
まず箱を開けていつものように撮影して、さてちょっとエージング前に聴こうと思い、手近にあったAK70+ADL USB OTG+iQube V5で聴いてそのまま凍りついてしまいました(英語で言うとJaw dropってやつ)。ゼロエージングなのに透明感がすごいんです。並みはずれた透明感というべきでしょうか、LyraとかAndromedaもすごかったけれども、これはまた一線越えてる感じです。ちょっと聞いたシガーロスの歌がきれいに伸びたのは驚くほどです。透き通るように美しく、中高域はとてもきれいで整っている歌声がきれいに伸びていくのは感動的なレベルです。
エージングを進めると次に感銘するのは解像力の高さです。とにかくソースがよくなるほど直線的に音の細かさが向上して、細かい音がよく聴こえます。
さきのAK70+ADL USB OTG+iQube V5のような優れた機材だと、とても細かい音が聞こえます。一つ一つの音があいまいにならずに鮮明に切り立って聞こえるのも特徴で、標準ケーブルでの解像力は現行IEM/イヤフォンでトップクラスだと思います。特にヴォーカルがかすかにため息をつくように消え行くところ、息使いで表現する質感がリアルで、まるでSTAXで聴いてるようです。
ひとつの音のひずみ感のないピュアな美しさも特筆ものです。音のトランジェントも高く、ベースもドラムスもヴァイオリンも楽器の音は贅肉が取れて引き締まったタイトさがあります。リズム感のよさ、畳みかけるインパクトの気持ちよさもトップクラスですね。
音の立体感も高く3次元的な感覚も覚えますが、イヤチップの装着がよくないとこれは喪失してしまいますので注意が必要です。透明感の高さと合わせて、曲によってはヴォーカルが空中に浮いてるように聴こえますね。
色つけはほぼないんですが、ドライでも無機的でもなく、純粋な音というべきでしょうね。ピュアでニュートラルと感じます。重いとか濃いというのではなく、すっきりと軽快で純度が高い感覚です。
帯域特性はほぼフラットでバランスがとてもよく、固有の味付けがないのでほとんどソースの特性をきれいにトレースしてくれます。プレーヤーやアンプの音を忠実に浮き彫りにする。そのためDAPやポータブルアンプの差が大きいといえます。
いろいろ聴いてアンプを変えてみて分かるのはKatanaはとてもソース忠実性が高いというか、アンプの特性をあばきだすという感じです。iQubeV5の時はDAC特性のままベース抑え目だったけど、Mojoだと気持ち良いくらいパンチのあるベースが楽しめます。解像力があってタイトなベースはちょっと快感ですね。
AK70(USB out), iQube V5, Noble Katana
Noble KatanaをiQubeV5で聴くと高精細な室内楽向けと言う風にも思えたけれども、Mojoで聴くとオールドロック復古バンドのProducersなんかスピード感とかっこよさにあふれまくって楽しめます。隠しトラックのFGTHのTwo Tribesのベースなどは最高ですね。
AK380+AMPだとAK4490とフェムトクロックの高精細感を活かして、声の消え入り具合が見事です。Ryu Mihoの1曲1GBの11.2MHz DSD「ニアネスオブユー」は手島葵をジャズヴォーカルにしたようなRyu Mihoの声のかすれ具合と表現がよくわかります。
Katanaは音色の微妙な色彩感のようなものまで再現できるので、たとえばRWAK120をソースに使うと、解像感やワイドレンジ感というだけではなく、その音色のリアルさがはっきりとわかるようになります。Vinnieさんが工夫したマルチビットDACのようなMPフィルタや回路改造による音色の良さを堪能できます。
AK380+AMP, Noble KAtana 11.2MHz DSDネイティブ再生
とにかくKatanaには最高のDAPとアンプを使ってください、と言いたいところですが実はiPhoneでもかなり良いのです。というか、iPhoneってこんなに音良かったったけ?と思うほどです。
最近Apple Musicで聴いていたLorenzo Naccarato Trioの最新作にしてメジャー移籍アルバム(?)のKometで白熱するユーロジャズの演奏のかっこよさには感激します。iPhoneで聴いて鳥肌立つとは思いませんでした。
https://itunes.apple.com/us/album/lorenzo-naccarato-trio/id1085504313
コンパクトさも含めてiPhoneにも合わせられるというのはまさにflexibilityというものかもしれません。
この音を聴いて思いだしたのは前述したHeir TZar 350です。TZar350は350オームという技を使って音の純度の高さ、究極のシャープさと切れ味を狙ったのですが、そうした純粋な音への追求というところが共通しているように思えます(ある意味ER4Sの進化系とも思える)。しかしもっと使いやすく、音はずっと深く突き詰めて、完成度をとても高くしたのがKatanaです。
モールトンは音の傾向を低音強く楽しみ系のチューニングをしたFunタイプと、音のバランスよく正確なReferenceタイプに分けて設計する傾向があり、Heir時代は3.Ai/Tzar90がFun系、4.Ai/Tzar350がreference系だったんですが、Nobleでもやはりそれを引き継く3系統がFunで低音重視、4系統がリファレンス・バランス系統です。そういう意味でもNobleではKatanaがReference系の頂点と言えるかもしれません。
またモールトンは3.Aiや4.Aiと比べてもTzar350ではあえて位相問題のためにドライバーを減らしているんですが、Katanaもドライバーを減らしたのは主にはコンパクトさだとは思いますが、もしかするとシャープさと究極のイメージングのためのこうした位相配慮もあるのかもしれません。
音レベル的にはLaylaと比肩できるほどだけれども音の濃さなど個性が異なっていて、同じケーブルが使えないのでどちらがどっちとは言えませんが、K10がロクサーヌのライバルとして語られたようにもしかすると、リファレンスタイプのIEMというフィールドでKatanaはレイラのライバルとされるのかもしれません。
* まとめ
音質の項が長くなりましたが、音のキーワードをまとめると、高い透明感、小気味良いタイトさやスピード感、切れの鋭さ、ワイドレンジ感、周波数帯域のバランス良さ、並はずれた解像力、ピュアですっきりした純度の高い音などがあげられます。音レベル的には現行IEMトップレベルで、高価だけれども価格以上のものがあるように思います。
AK70(USB out), Chord Hugo, Noble Katana
あらためてレビューを振り返るとiPhoneと組み合わせても違和感ないコンパクトなイヤフォンが現行ユニバーサルの頂点レベルの性能ということに驚きを覚えます。これはWizradという名に恥じない魔法のような製作技術だと言えるでしょう。
また、Katanaの音には繊細なチューニングを感じます。たしかに「ジャグジーに浸るような」感じとは一味違う、身を正したくなる凄みのある音、鮮明でとても繊細な音です。シャープな音ですが、十分にエージングしておけば聴き疲れするということも少ないと思います。むしろ聴き疲れというよりも緊張感のある音ではありますね。
この緊張感は、カタナ・日本刀を目の前にしたときのものなのかもしれません。日本刀は武器という実用品であると同時に芸術品でもあります。
モールトンはモノづくりと芸術家の両立という点で日本の刀鍛冶に共感したのでしょう。そしてできたものが、このKatanaであり、日本のユーザーへのメッセージでもあると言えるでしょう。
次はリケーブルとかK10との比較編も書きたいと思います。
Katanaはカスタムモデルとユニバーサルモデルがあり、カスタムはWagnus経由、ユニバーサルは宮地商会(M.I.D)経由で各販売店で購入することができます。本稿はユニバーサルモデルのレビューです。
下記は宮地商会のNoble AudioユニバーサルIEM取り扱いページです。
http://www.miyaji.co.jp/MID/brand.php?maker=Noble%20Audio
下記はWagnusのNoble AudioカスタムIEM取り扱いページです。
http://wagnus.exblog.jp/22822571/
* "Wizard" ジョン・モールトン
JH Audioが"IEMの神様"ことジェリーハービーで語られるように、またNoble Audioは"Wizard"ことジョン・モールトンで語られます。モールトンが日本でも知られるようになったのはHeir Audioのころだと思います。もともと彼はオーディオロジスト(聴力の専門家)で、名前にドクターが付きます。そういう意味ではキャリアのスタートはジェリー・ハービーよりもセンサフォニクスのマイケル・サントゥッチに似ているかもしれません。
Heir時代から続くWizard(魔法使い)というあだ名はウッドフェイスプレート(おそらく彼が初)や金銀など様々な素材を使った類まれな製作技術から来ているようです。私はHeir時代のモールトンのIEMはTzar350とTzar90を持っています。これらについては下記リンクをご覧ください。
2012年:Heir Audio Tzar 350と90 - ハイインピーダンスの高性能イヤフォン
そして2013年にHeirを出て、Noble Audioという新しい会社を立ち上げました。モールトンはIEMを芸術的に作りたいという志向が強く、Heirではやりたいことができないのでやりたいことのできる会社を立ち上げたということです。JH AudioもジェリーがUEをやめてやりたいことをやるために作った会社であるように、Noble Audioもジョン・モールトンが作りたいものを作る会社というわけです。それを補佐してきたのがNobleの若いCEOであるブラナン・メイソンです。Nobleでは他のIEMメーカーがミュージシャンをメインターゲットにしているのに対して、オーディオマニアを大きなターゲットにしている点も特徴です。
右:ジョン・モールトン 中:ブラナン・メイソン 左:Wagnus久米さん
モールトンはそれからNobleで水を得た魚のようにだれもが驚くようなアートワークをほどこしたり、Wizardモデルというワンオフ(一点もの)モデルを作ったりとオリジナリティあふれる活動をしてきました。そして傑作と言われるK10(Kaiser 10)を発表します。
Noble Audioというと長い間10ドライバーのK10がフラッグシップというかアイコンのように語られ、K10はJH AudioのロクサーヌのライバルとしてもHeadFiあたりではよく語られてきました。
ジェリーとモールトンの間で好敵手と思ってるかはわかりませんが(今度聞いてみたいところですが)、周りがそういう盛り上げ方をしてきたのはやはりTripleFiからHeadFiにながく関わり、主流派としてのジェリー・JH Audioに、新興勢力としてのWizard・Nobleに期待をしている証拠だと思います。
そして今年発表された最新のフラッグシップがKatanaです。
* Noble Katana
Katanaの名の由来はモールトンがポタフェスの発表会でも語っていましたが、ひとつにはNoble Audioが日本でとても人気があるということ、日本刀(Katana)の正確さ・しなやかさ(flexibility)がオーディオ的見地にも似ていること、そして製作が芸術性も含んでいることなどです。
K10からドライバーをひとつ減らしたことについての大きな理由はサイズをコンパクトにするためのようです。実際にK10よりも2.5mmサイズが小さくなって、耳に収まりやすくなっています。またKatanaからはKnowlesとの協力でNoble Driverという独自仕様のBAドライバーを積んでいます(詳細は不明)。何ウエイかというクロスオーバーについても非公開とのことです。
音についてはK10とは違う音で、もっとHiFi系にしたいという意図があったようです。これはユーザー要望からということですが、モールトン自身もHeadFiの書き込みの中で「私にとってK10は適温のジャグジーのようなもので、入ったら出たくない感じのもの」と語っていますのでもう少し辛口のきりっとした(熱めの風呂のような?)音にしたいという点もあったのではないでしょうか。
モールトンはK10に関してはHeirを始める前から構想を温めていたと言いますから、Nobleになってからのフラッグシップ設計は実質的にKatanaが最初と言えるのかもしれません。Nobleはユーザーに支えられてきた会社という意識があるからこそ、こうしてユーザーの声を生かした成果がKatanaと言えるのかもしれません。
* Katanaのパッケージ
パッケージはシンプルに感じますが、必要性は満たされています。中にはペリカンケースが入っていてその中にイヤチップ、アンプ結束バンド、カラビナ、イヤフォン本体、ステッカーなどが入っています。イヤチップはプレートにはまっている点がユニークで取り出しやすく思えます。以下の試聴では主に赤ラバーチップを使いました。
イヤチップは4種類ついていて、赤シリコンラバー、青ラバー、二段フランジラバー、黒フォームです。これはHeir時代から同じのように思いますが、チップはきれいに格納できる金属プレートについているのが面白い点です。ユニバーサルだとチップが重要だし、音を変えられるという点でカスタムに対するプラスでもありますので種類が多いのはよいことです。
Katanaはステムが太いのでややはめづらいのですが、チップのはめ込み位置を上下に加減することで耳にはまりやすくなります。
これは個人的な耳の相性と音の好みになるのですが基本的には赤シリコンラバーが一番よく、中高域の透明感を出すように思います。また黒フォームもなかなか良く思います。フォームだとフィットはいいけど音を濁らせることがままありますが、これはそうしたことなくバランスよい音です。
社外品だとJVCのスパイラル・ドットがうまく合います。フィットも良いし、音も少し変えられます。
イヤフォン本体はコンパクトで、質感が高く感じられます。たしかに和風の文様のようにも思えますね。カラーリングはユーザー要望もあり中性的な配色を目指したということですが、電車の中で使っていても目立ちにくい控えめな感覚も和風かなと思えます。
装着感もとても軽く感じられます。ステムは太めで大小大きさ違いの音導孔がうがたれています。
標準ケーブルは軽くしなやかでストレートタイプのプラグがついています。イヤフォンのプラグは2ピンなので多様なリケーブルが楽しめるでしょう。今回の記事ではすべて標準ケーブルで行いましたが、この標準ケーブルもなかなか良いと思います。
* Katanaの音質
Katanaの音質の高さにははじめからちょっと驚かされました。
まず箱を開けていつものように撮影して、さてちょっとエージング前に聴こうと思い、手近にあったAK70+ADL USB OTG+iQube V5で聴いてそのまま凍りついてしまいました(英語で言うとJaw dropってやつ)。ゼロエージングなのに透明感がすごいんです。並みはずれた透明感というべきでしょうか、LyraとかAndromedaもすごかったけれども、これはまた一線越えてる感じです。ちょっと聞いたシガーロスの歌がきれいに伸びたのは驚くほどです。透き通るように美しく、中高域はとてもきれいで整っている歌声がきれいに伸びていくのは感動的なレベルです。
エージングを進めると次に感銘するのは解像力の高さです。とにかくソースがよくなるほど直線的に音の細かさが向上して、細かい音がよく聴こえます。
さきのAK70+ADL USB OTG+iQube V5のような優れた機材だと、とても細かい音が聞こえます。一つ一つの音があいまいにならずに鮮明に切り立って聞こえるのも特徴で、標準ケーブルでの解像力は現行IEM/イヤフォンでトップクラスだと思います。特にヴォーカルがかすかにため息をつくように消え行くところ、息使いで表現する質感がリアルで、まるでSTAXで聴いてるようです。
ひとつの音のひずみ感のないピュアな美しさも特筆ものです。音のトランジェントも高く、ベースもドラムスもヴァイオリンも楽器の音は贅肉が取れて引き締まったタイトさがあります。リズム感のよさ、畳みかけるインパクトの気持ちよさもトップクラスですね。
音の立体感も高く3次元的な感覚も覚えますが、イヤチップの装着がよくないとこれは喪失してしまいますので注意が必要です。透明感の高さと合わせて、曲によってはヴォーカルが空中に浮いてるように聴こえますね。
色つけはほぼないんですが、ドライでも無機的でもなく、純粋な音というべきでしょうね。ピュアでニュートラルと感じます。重いとか濃いというのではなく、すっきりと軽快で純度が高い感覚です。
帯域特性はほぼフラットでバランスがとてもよく、固有の味付けがないのでほとんどソースの特性をきれいにトレースしてくれます。プレーヤーやアンプの音を忠実に浮き彫りにする。そのためDAPやポータブルアンプの差が大きいといえます。
いろいろ聴いてアンプを変えてみて分かるのはKatanaはとてもソース忠実性が高いというか、アンプの特性をあばきだすという感じです。iQubeV5の時はDAC特性のままベース抑え目だったけど、Mojoだと気持ち良いくらいパンチのあるベースが楽しめます。解像力があってタイトなベースはちょっと快感ですね。
AK70(USB out), iQube V5, Noble Katana
Noble KatanaをiQubeV5で聴くと高精細な室内楽向けと言う風にも思えたけれども、Mojoで聴くとオールドロック復古バンドのProducersなんかスピード感とかっこよさにあふれまくって楽しめます。隠しトラックのFGTHのTwo Tribesのベースなどは最高ですね。
AK380+AMPだとAK4490とフェムトクロックの高精細感を活かして、声の消え入り具合が見事です。Ryu Mihoの1曲1GBの11.2MHz DSD「ニアネスオブユー」は手島葵をジャズヴォーカルにしたようなRyu Mihoの声のかすれ具合と表現がよくわかります。
Katanaは音色の微妙な色彩感のようなものまで再現できるので、たとえばRWAK120をソースに使うと、解像感やワイドレンジ感というだけではなく、その音色のリアルさがはっきりとわかるようになります。Vinnieさんが工夫したマルチビットDACのようなMPフィルタや回路改造による音色の良さを堪能できます。
AK380+AMP, Noble KAtana 11.2MHz DSDネイティブ再生
とにかくKatanaには最高のDAPとアンプを使ってください、と言いたいところですが実はiPhoneでもかなり良いのです。というか、iPhoneってこんなに音良かったったけ?と思うほどです。
最近Apple Musicで聴いていたLorenzo Naccarato Trioの最新作にしてメジャー移籍アルバム(?)のKometで白熱するユーロジャズの演奏のかっこよさには感激します。iPhoneで聴いて鳥肌立つとは思いませんでした。
https://itunes.apple.com/us/album/lorenzo-naccarato-trio/id1085504313
コンパクトさも含めてiPhoneにも合わせられるというのはまさにflexibilityというものかもしれません。
この音を聴いて思いだしたのは前述したHeir TZar 350です。TZar350は350オームという技を使って音の純度の高さ、究極のシャープさと切れ味を狙ったのですが、そうした純粋な音への追求というところが共通しているように思えます(ある意味ER4Sの進化系とも思える)。しかしもっと使いやすく、音はずっと深く突き詰めて、完成度をとても高くしたのがKatanaです。
モールトンは音の傾向を低音強く楽しみ系のチューニングをしたFunタイプと、音のバランスよく正確なReferenceタイプに分けて設計する傾向があり、Heir時代は3.Ai/Tzar90がFun系、4.Ai/Tzar350がreference系だったんですが、Nobleでもやはりそれを引き継く3系統がFunで低音重視、4系統がリファレンス・バランス系統です。そういう意味でもNobleではKatanaがReference系の頂点と言えるかもしれません。
またモールトンは3.Aiや4.Aiと比べてもTzar350ではあえて位相問題のためにドライバーを減らしているんですが、Katanaもドライバーを減らしたのは主にはコンパクトさだとは思いますが、もしかするとシャープさと究極のイメージングのためのこうした位相配慮もあるのかもしれません。
音レベル的にはLaylaと比肩できるほどだけれども音の濃さなど個性が異なっていて、同じケーブルが使えないのでどちらがどっちとは言えませんが、K10がロクサーヌのライバルとして語られたようにもしかすると、リファレンスタイプのIEMというフィールドでKatanaはレイラのライバルとされるのかもしれません。
* まとめ
音質の項が長くなりましたが、音のキーワードをまとめると、高い透明感、小気味良いタイトさやスピード感、切れの鋭さ、ワイドレンジ感、周波数帯域のバランス良さ、並はずれた解像力、ピュアですっきりした純度の高い音などがあげられます。音レベル的には現行IEMトップレベルで、高価だけれども価格以上のものがあるように思います。
AK70(USB out), Chord Hugo, Noble Katana
あらためてレビューを振り返るとiPhoneと組み合わせても違和感ないコンパクトなイヤフォンが現行ユニバーサルの頂点レベルの性能ということに驚きを覚えます。これはWizradという名に恥じない魔法のような製作技術だと言えるでしょう。
また、Katanaの音には繊細なチューニングを感じます。たしかに「ジャグジーに浸るような」感じとは一味違う、身を正したくなる凄みのある音、鮮明でとても繊細な音です。シャープな音ですが、十分にエージングしておけば聴き疲れするということも少ないと思います。むしろ聴き疲れというよりも緊張感のある音ではありますね。
この緊張感は、カタナ・日本刀を目の前にしたときのものなのかもしれません。日本刀は武器という実用品であると同時に芸術品でもあります。
モールトンはモノづくりと芸術家の両立という点で日本の刀鍛冶に共感したのでしょう。そしてできたものが、このKatanaであり、日本のユーザーへのメッセージでもあると言えるでしょう。
次はリケーブルとかK10との比較編も書きたいと思います。
2016年09月08日
アップルが完全ワイヤレスイヤフォンのAirPods発表
iPhone7に合わせてアップルが左右独立の完全ワイヤレスイヤフォンのAirPods発表したのは面白いと思います。
うちのブログの完全ワイヤレスの記事見てもらうと分かりますが、完全ワイヤレスで再生時間はあまり意味がなく海外の飛行機旅行でもなければ2-3時間あれば十分です。
それより重要なのはチャージャーケースの使いやすさです。充電とイヤフォンをいったん外すときに重要です。
だから完全ワイヤレスの場合にはチャージャーケースとシステムの評価が必要だと思います。
またうちの完全ワイヤレスの記事を見てもらうと、左右接続がポイントということがわかると思うので、AirPodsがステム部分を長くとった理由もわかると思います。
つまりはiPhoneとイヤフォンの接続のためにアンテナ長くしたというよりも、左右ユニット接続のときに電波をさえぎる人の頭を避けるためです。またAirPodsは手の指でコントロールするのでそのとき手で電波を妨害するのも避けてると思います。
他のApple製品とのワンタップ接続でicloudアカウントが必要というのは、おそらくペアリング機器情報をicloudでシェアして他のMacなどの製品とはペアリングしなおさなくて良いようにしてると思います。ここは推測ですが。
iPhone 7からは予想どうりに3.5mm端子がなくなりました。ネットでは#RIPHeadphoneJackのタグでヘッドホンジャック追悼のメッセージを書いてます。
そこではみな1878生まれとしてるけどこれは標準端子の方で、3.5mmモノ(TS)は1964年のソニーのラジオ、3.5mmステレオ(TRS)は1979年の初代Walkmanですね。
ソニーが生み、アップルが葬る。
R.I.P ありがとう、ヘッドフォン端子
うちのブログの完全ワイヤレスの記事見てもらうと分かりますが、完全ワイヤレスで再生時間はあまり意味がなく海外の飛行機旅行でもなければ2-3時間あれば十分です。
それより重要なのはチャージャーケースの使いやすさです。充電とイヤフォンをいったん外すときに重要です。
だから完全ワイヤレスの場合にはチャージャーケースとシステムの評価が必要だと思います。
またうちの完全ワイヤレスの記事を見てもらうと、左右接続がポイントということがわかると思うので、AirPodsがステム部分を長くとった理由もわかると思います。
つまりはiPhoneとイヤフォンの接続のためにアンテナ長くしたというよりも、左右ユニット接続のときに電波をさえぎる人の頭を避けるためです。またAirPodsは手の指でコントロールするのでそのとき手で電波を妨害するのも避けてると思います。
他のApple製品とのワンタップ接続でicloudアカウントが必要というのは、おそらくペアリング機器情報をicloudでシェアして他のMacなどの製品とはペアリングしなおさなくて良いようにしてると思います。ここは推測ですが。
iPhone 7からは予想どうりに3.5mm端子がなくなりました。ネットでは#RIPHeadphoneJackのタグでヘッドホンジャック追悼のメッセージを書いてます。
そこではみな1878生まれとしてるけどこれは標準端子の方で、3.5mmモノ(TS)は1964年のソニーのラジオ、3.5mmステレオ(TRS)は1979年の初代Walkmanですね。
ソニーが生み、アップルが葬る。
R.I.P ありがとう、ヘッドフォン端子
2016年09月07日
Erato Audioからも廉価版の完全ワイヤレスイヤフォン発表
iPhone7の発表目前でまた完全ワイヤレスイヤフォン発表です。
https://eratolife.wishpond.com/promoeratomuse5/
この前Apollo7のレビュー記事を書きましたが、
Bragiに続いてApollo 7のEratoも廉価版の完全ワイヤレスイヤフォンMuse 5を出してきました。定価は$179ですが、メール登録した早割だと$79とかなり低価格です。ただし受付は9/12からで、おそらくBragiのThe Headphoneに影響されてアナウンス前倒ししたのかもしれません。
Erato Muse 5 (画像は上記サイトから転載)
Muse5はApollo7のようにコンパクトではありませんが、FitSeal Sleeveというスリーブの工夫での装着感向上の仕組みがあるようです。
また側面に充電端子がないのでそこにタッチセンサーがついたようで、操作性は逆にApolloより向上してるかもしれません。マイクもついて、IPX5防水です。
* 追記: チャージャーケースが付属し、一回の充電で4時間だそうです。
完全ワイヤレスイヤフォンも$300前後と高価を指摘されてましたが、$100台に低下してきたようですね。
https://eratolife.wishpond.com/promoeratomuse5/
この前Apollo7のレビュー記事を書きましたが、
Bragiに続いてApollo 7のEratoも廉価版の完全ワイヤレスイヤフォンMuse 5を出してきました。定価は$179ですが、メール登録した早割だと$79とかなり低価格です。ただし受付は9/12からで、おそらくBragiのThe Headphoneに影響されてアナウンス前倒ししたのかもしれません。
Erato Muse 5 (画像は上記サイトから転載)
Muse5はApollo7のようにコンパクトではありませんが、FitSeal Sleeveというスリーブの工夫での装着感向上の仕組みがあるようです。
また側面に充電端子がないのでそこにタッチセンサーがついたようで、操作性は逆にApolloより向上してるかもしれません。マイクもついて、IPX5防水です。
* 追記: チャージャーケースが付属し、一回の充電で4時間だそうです。
完全ワイヤレスイヤフォンも$300前後と高価を指摘されてましたが、$100台に低下してきたようですね。
2016年09月06日
64 Audioの新しいAPEXモジュール試聴
先日64 Audioからアナウンスがあり、それまで使用していたADELモジュールをAPEX(Air Pressure EXchange)という新しいモジュールに置き換えると言う発表内容でした。APEXはエイペックスと読みます。
国内ではこれにともない、ミックスウェーブは64 Audioの販売を一時停止していましたが、64 AudioのA-Seriesの販売を9月10日より再開するということです。アナウンスはこちらです。
http://www.mixwave.co.jp/c_audio/c_news/caudio_news160906.html
Aシリーズは「A12」「A10」「A8」「A6」「A4」「A3」「A2」の7機種を扱うということです。数字はドライバー数を表しています(「A5」はメーカー側の生産終了とのこと)。
64 Audio A10
これらはいままでのADEL(S1)モジュールがAPEX(M20)モジュールに置き換えられます。
メーカー説明によると、ADELとAPEXの違いは「ウインドノイズ」について強くなったこと、そして耐久性が増したことの二点が挙げられています。新たにつまみの部分に開けられた穴がウインドノイズ対策だそうです。ADELとAPEXはそれぞれ互換性があります。
APEX M20
APEXもADELも基本的には耳の鼓膜の保護という点をうたっているのですが、うちのブログではADELモジュールの違いによる音の差に着目してレビューしてきました。今回はAPEXのM20モジュール(ADEL S1の代替)を試すことができました。聴き比べには64 AudioのリファレンスモニターとされているA10を使用しました。
A10とAPEX
APEX M20とADEL S1を比較してみると、金属の材質感が異なり、またヘッド部分の形状が異なります。APEXは頭が平たく指にかけやすいつまみ状に加工されています。ADELは鋭角な頭になっています。
また人工鼓膜の部分もADELでは薄膜のような形であったののに、APEXではメッシュ状になっています。
APEX M20とADEL S1
音質は実際に聴いてみると音質的には大差ないようにも聴こえますが、多少違いがありADEL S1はやや開放感があり、APEX M20では密度感がありベースが出ているように思います。
なんとなくADELモジュールで開度が異なるときの音の違いに似ていたので、遮音性を確かめてみました。するとそれぞれモジュールをつけて同じ音量でスピーカーから音楽を出すとAPEXの方が遮音性が高いので、やはり密閉度は少し違うように思えますが、音の違いはそこに起因しているようにも思えます。いずれにしろ音質的にはADELとは大きく違うということではなさそうに思います。
M20の次のモジュールも気になりますね。
国内ではこれにともない、ミックスウェーブは64 Audioの販売を一時停止していましたが、64 AudioのA-Seriesの販売を9月10日より再開するということです。アナウンスはこちらです。
http://www.mixwave.co.jp/c_audio/c_news/caudio_news160906.html
Aシリーズは「A12」「A10」「A8」「A6」「A4」「A3」「A2」の7機種を扱うということです。数字はドライバー数を表しています(「A5」はメーカー側の生産終了とのこと)。
64 Audio A10
これらはいままでのADEL(S1)モジュールがAPEX(M20)モジュールに置き換えられます。
メーカー説明によると、ADELとAPEXの違いは「ウインドノイズ」について強くなったこと、そして耐久性が増したことの二点が挙げられています。新たにつまみの部分に開けられた穴がウインドノイズ対策だそうです。ADELとAPEXはそれぞれ互換性があります。
APEX M20
APEXもADELも基本的には耳の鼓膜の保護という点をうたっているのですが、うちのブログではADELモジュールの違いによる音の差に着目してレビューしてきました。今回はAPEXのM20モジュール(ADEL S1の代替)を試すことができました。聴き比べには64 AudioのリファレンスモニターとされているA10を使用しました。
A10とAPEX
APEX M20とADEL S1を比較してみると、金属の材質感が異なり、またヘッド部分の形状が異なります。APEXは頭が平たく指にかけやすいつまみ状に加工されています。ADELは鋭角な頭になっています。
また人工鼓膜の部分もADELでは薄膜のような形であったののに、APEXではメッシュ状になっています。
APEX M20とADEL S1
音質は実際に聴いてみると音質的には大差ないようにも聴こえますが、多少違いがありADEL S1はやや開放感があり、APEX M20では密度感がありベースが出ているように思います。
なんとなくADELモジュールで開度が異なるときの音の違いに似ていたので、遮音性を確かめてみました。するとそれぞれモジュールをつけて同じ音量でスピーカーから音楽を出すとAPEXの方が遮音性が高いので、やはり密閉度は少し違うように思えますが、音の違いはそこに起因しているようにも思えます。いずれにしろ音質的にはADELとは大きく違うということではなさそうに思います。
M20の次のモジュールも気になりますね。
BragiからDashの廉価版"The Headphone"登場
期待を持たせて発表したBragiの昨日のアナウンスですが、"The Headphone"と呼ばれる新しい完全ワイヤレスイヤフォンでした。(クパチーノうんぬんはフェイク?)
ホームページはこちらです。
http://www.bragi.com/theheadphone/
Bragi "The Headphone" (画像は上記ページより転載)
これはプリオーダー価格が$119(通常は$149)のDashの廉価版と言えるもので、Dashから各種センサー、防水機能、内部ストレージ(4GBあった)を省いたものです。またタッチコントロールも簡易化されてボタンになっているようです。そしてケースには電池が内蔵されてなく、チャージができないようです。その代りにBAドライバーは新しくなり、マイクも新しくなったようです。また動作時間が長くなり、6時間となりました(これがチャージャーを省く言い訳になってます)。左右接続がNFMIかどうかはまだわかりません。
つまりウェアラブルのフィットネス・ヘルス機能は省く代わりに音楽を聴くイヤフォンに特化したものです。たぶんソフトウエアは共通で、同時に新バージョンの2.1.0がリリースされています。
またおそらくはBTチップ自体も刷新されていると思います。The DashではBT接続とかさまざまな問題が指摘されていて、それを根本的に解決するためとも言えるかもしれません。また完全ワイヤレスというと$300前後が相場ですから他の価格でも差別化できます。発売は11月予定です。
* 追記: Bragiが質問に答えてくれましたので明確化。左右接続はNFMIですが、ソフトウェアはアップデートができないそうです。下記のWatson対応は不明。
* 追記2: 日本には現在出荷しないそうです(Kickstarterは特例だそう)。出荷可能な国はUSA, EU, Norway, Switzerland, Canada, Australia, New Zealand, Hong Kong、だそうです
そしてこれに先立ってBragiではIBMのワトソンとの連携を発表しています。つまり完全ワイヤレスイヤフォンがワトソンのデータ端末となりえるということで、翻訳とか知的アシスタントなど広範囲に応用が可能だと思います。ウェアラブルというと単独の分散型コンピューター的なイメージもありますが、IBM ワトソンで集中処理してウェアラブルは端末に徹するというのも「スマートな」切り分けのように思えます。たぶんBragiではこの機会にフィットネスというよりもこちら方向に戦略の舵を取りたいのではないでしょうか。
ホームページはこちらです。
http://www.bragi.com/theheadphone/
Bragi "The Headphone" (画像は上記ページより転載)
これはプリオーダー価格が$119(通常は$149)のDashの廉価版と言えるもので、Dashから各種センサー、防水機能、内部ストレージ(4GBあった)を省いたものです。またタッチコントロールも簡易化されてボタンになっているようです。そしてケースには電池が内蔵されてなく、チャージができないようです。その代りにBAドライバーは新しくなり、マイクも新しくなったようです。また動作時間が長くなり、6時間となりました(これがチャージャーを省く言い訳になってます)。左右接続がNFMIかどうかはまだわかりません。
つまりウェアラブルのフィットネス・ヘルス機能は省く代わりに音楽を聴くイヤフォンに特化したものです。たぶんソフトウエアは共通で、同時に新バージョンの2.1.0がリリースされています。
またおそらくはBTチップ自体も刷新されていると思います。The DashではBT接続とかさまざまな問題が指摘されていて、それを根本的に解決するためとも言えるかもしれません。また完全ワイヤレスというと$300前後が相場ですから他の価格でも差別化できます。発売は11月予定です。
* 追記: Bragiが質問に答えてくれましたので明確化。左右接続はNFMIですが、ソフトウェアはアップデートができないそうです。下記のWatson対応は不明。
* 追記2: 日本には現在出荷しないそうです(Kickstarterは特例だそう)。出荷可能な国はUSA, EU, Norway, Switzerland, Canada, Australia, New Zealand, Hong Kong、だそうです
そしてこれに先立ってBragiではIBMのワトソンとの連携を発表しています。つまり完全ワイヤレスイヤフォンがワトソンのデータ端末となりえるということで、翻訳とか知的アシスタントなど広範囲に応用が可能だと思います。ウェアラブルというと単独の分散型コンピューター的なイメージもありますが、IBM ワトソンで集中処理してウェアラブルは端末に徹するというのも「スマートな」切り分けのように思えます。たぶんBragiではこの機会にフィットネスというよりもこちら方向に戦略の舵を取りたいのではないでしょうか。
2016年09月05日
Android 7.0とUSBオーディオクラスドライバ
さて、Windowsの方のクラスドライバー問題が進展したところで、Androidの方のクラスドライバーの進展を見てみようと、Nexus 9をこの週末に最新のAndroid 7.0(Nougat)にアップグレードしました。7.0は8/22にリリースされて少しずつOTAアップデートがなされています。
前の6.0ではクラスドライバーが入っていましたが、出来はあまりうまくありませんでした。
テストはNexus 9(Android7.0)にUSB OTGケーブルを接続して、ロック周波数が画面に表示されるAurender FLOWを使用しました。
まず44.1/16のCDリッピング音源を標準音楽再生アプリのGoogle Playで再生して見ると、なぜかリサンプリングされ192kHzで再生されます。またノイズやピッチの乱れなど音質は良くありません。ちょっと使えないレベルです。
次に96/24のハイレゾ音源を再生するとこれもまた192kHzにリサンプリングされます。やはりクラスドライバは入っているけれどもうまく動作していないようです。
ためしにUAPPを使ってみると問題なく指定サンプリングレートで正しく再生されます。ちょっとまだ道は遠そうに思えます。
前の6.0ではクラスドライバーが入っていましたが、出来はあまりうまくありませんでした。
テストはNexus 9(Android7.0)にUSB OTGケーブルを接続して、ロック周波数が画面に表示されるAurender FLOWを使用しました。
まず44.1/16のCDリッピング音源を標準音楽再生アプリのGoogle Playで再生して見ると、なぜかリサンプリングされ192kHzで再生されます。またノイズやピッチの乱れなど音質は良くありません。ちょっと使えないレベルです。
次に96/24のハイレゾ音源を再生するとこれもまた192kHzにリサンプリングされます。やはりクラスドライバは入っているけれどもうまく動作していないようです。
ためしにUAPPを使ってみると問題なく指定サンプリングレートで正しく再生されます。ちょっとまだ道は遠そうに思えます。
2016年09月02日
Microsoftが正式にWindows10のUSBオーディオクラス2.0サポートを認めました
昨日のWindows 10ビルド14915でのUSBオーディオクラス2ドライバーの発見を同じフォーラムでマイクロソフトのスタッフがその発見が正しいことを認めました。
マイクロソフトのオーディオプログラムマネージャの人です。
マイクロソフトのフォーラム
http://answers.microsoft.com/en-us/insider/forum/insider_wintp-insider_devices/windows-support-for-usb-audio-20/0d633b9f-3193-4c63-8654-fb10b3614a04?page=19&msgId=d8c47b4b-1175-4482-a1da-60849baf12b3
みられない人がいるかもしれないので下記に引用しますが、これはUSBオーディオクラス2ドライバーが有効化された初めのバージョンで再生のみサポートされているということ。バグ取りに協力して欲しいということです。これまで長くクラス2ドライバーなしに来たことにも触れてますね。
"As you have found out, we have an initial version of a USB Audio 2 driver in the latest Windows Insider release! This is an initial version with only limited features enabled (playback only, no recording support as of now). I encourage everyone to test the driver with your USB Audio 2 devices and file bugs via the feedback app.
Your feedback is important to us and we share your frustration at how long it has taken us to get here. Please keep the feedback coming!
The driver is available in all versions of Windows 10 - including mobile.
- Bala Sivakumar
Program Manager, Audio at Microsoft"
Insider Preview ビルド14915に関しては下記ニュースなどを参照ください。
http://s.news.mynavi.jp/news/2016/09/01/139/
マイクロソフトのオーディオプログラムマネージャの人です。
マイクロソフトのフォーラム
http://answers.microsoft.com/en-us/insider/forum/insider_wintp-insider_devices/windows-support-for-usb-audio-20/0d633b9f-3193-4c63-8654-fb10b3614a04?page=19&msgId=d8c47b4b-1175-4482-a1da-60849baf12b3
みられない人がいるかもしれないので下記に引用しますが、これはUSBオーディオクラス2ドライバーが有効化された初めのバージョンで再生のみサポートされているということ。バグ取りに協力して欲しいということです。これまで長くクラス2ドライバーなしに来たことにも触れてますね。
"As you have found out, we have an initial version of a USB Audio 2 driver in the latest Windows Insider release! This is an initial version with only limited features enabled (playback only, no recording support as of now). I encourage everyone to test the driver with your USB Audio 2 devices and file bugs via the feedback app.
Your feedback is important to us and we share your frustration at how long it has taken us to get here. Please keep the feedback coming!
The driver is available in all versions of Windows 10 - including mobile.
- Bala Sivakumar
Program Manager, Audio at Microsoft"
Insider Preview ビルド14915に関しては下記ニュースなどを参照ください。
http://s.news.mynavi.jp/news/2016/09/01/139/
2016年09月01日
いよいよWindowsにUSBクラス2ドライバーが導入されるか?
Windowsでは10になってもUSB class 2.0ドライバーが実装されてないのがオーディオにとっての難でした。
しかし下記のWindowsフォーラムの最新書き込みを見るとInsider Preview最新ビルドの14915(8/31)ではクラス2ドライバーが入ってるようです。
http://answers.microsoft.com/en-us/insider/forum/insider_wintp-insider_devices/windows-support-for-usb-audio-20/0d633b9f-3193-4c63-8654-fb10b3614a04?page=19&msgId=a3e33175-ae15-46ca-b547-5ef19dbf4d2b
ちょっと期待ですね。
しかし下記のWindowsフォーラムの最新書き込みを見るとInsider Preview最新ビルドの14915(8/31)ではクラス2ドライバーが入ってるようです。
http://answers.microsoft.com/en-us/insider/forum/insider_wintp-insider_devices/windows-support-for-usb-audio-20/0d633b9f-3193-4c63-8654-fb10b3614a04?page=19&msgId=a3e33175-ae15-46ca-b547-5ef19dbf4d2b
ちょっと期待ですね。