世に数々のイヤフォン・イヤモニがありますが、その最高峰の一つがJH AudioのLaylaです。
うちのブログでは過去にユニバーサル版のLaylaを取り上げてきましたが、今回はカスタム版の記事を書きます。
* Layla再訪
Sirenシリーズにはカスタムモデルとユニバーサルモデルがあります。2014年暮れに発表されたLayla(レイラ)とAngie(アンジー)以降はユニバーサルモデルはAstell & Kernとのコラボ製品となり日本ではアユートが販売を担当しています。カスタム版はひきつづきミックスウェーブが担当しています。
レイラはロクサーヌと同じ4x4x4の12ドライバーですが、ドライバーは一新されています。特にクロスオーバーに改良がくわえられ、フラットな特性のために急峻な4次クロスオーバーを使用しています。ちなみにロクサーヌは2次クロスオーバーだそうです。名称はロクサーヌに続いてロック女性名でクラプトンの名曲レイラから取られています(原曲はデレク&ドミノス)。
もともとひとつの帯域に複数のドライバーを配するというのは、ジェリーがJH13で創始したもので、彼のエンジニアとしてのPAの経験から着想を得たと言われます。こうすることでひとつのドライバーの負担が減って、歪みなどが抑えられるというものです。Sienシリーズのロクサーヌではこれをさらに発展させて、各帯域(低域、中音域、高音域)に4つずつを配置しています。
これは特に高域の周波数特性をフラットに23kHzまで伸ばすのに効果的で、Angieの高域だけが4個なのもこの理由です。
一方でマルチウエイにすることやドライバー数を増やすことは一概に有利なわけではなく、不利な点は大型化・高価格化もありますが、音の面では位相を揃えることへの不安もあります。そうしないと音がぼやけて広がり感も失われてしまいます。そこをJH Audioでは特許技術のFreq Phaseで音導管の長さを適正に調整することで、位相の問題を解決しています。実際にJH Audio IEMは音像が鮮明で立体的なのも特徴ですので、この機構は正しく働いていると言えます。
またSirenシリーズとしては新しいLaylaでは周波数特性を正しく保つために4次クロスオーバーの導入をしています。これは従来(たとえば旧Roxanneは2次)のイヤフォンに比較するとより急峻な特性を確保することができ、帯域分割をより正しくすることが可能となっています。
現在Laylaには発表順に、第一世代ユニバーサル(UF)、カスタムモデル、第二世代(フルメタルジャケット)ユニバーサル(UF)の3つがあります。
標準ケーブルについては少し前に調整して送り返してもらった時に第二世代ケーブルがついてきたので、今購入すると第二世代のケーブルがついてくると思いますが、気になる場合はかくにんしたほうが良いかもしれません。
パッケージ
Laylaカスタムではシェルの作成から選ぶことができます。
デザインはJH Audioのアンディーのものなんですが、このまえあったときに「あ、おれの。。」と言われてしまいましたが、本人にも「しっかりコピーさせてもらいました」と言っておきました 笑
大きさは12ドライバーのゆえに大きいのですが、カスタムだとそれほどマイナス要素にはならないような気がします。
ドライバーが多いと良いのかというのはなかなかどちらが良いとは言えませんが、ただ経験的にドライバー数が多いものほど音が濃ゆい傾向はあると思います。特にJH Audioではそうですね。
* Laylaカスタムの音
まず一般的な音質ですが、AK380+AMPなどで聴きました。
聴いてみると改めてLaylaのワイドレンジ、高域の鮮明さ、超低域の沈み込みと量感がズバ抜けたレベル。高い方と低い方のレンジの広さがずば抜けてるという感じ。この辺はまさにトップレベルの存在感を感じさせてくれます。ヴォーカルもぽっかり浮かび上がってFreqPhaseらしい立体感を感じられます。
音はフラットで、ケーブルのベースチューニングは標準位置でも超低域がたっぷりあるので低域不足とは感じません。
楽器音の再現は明瞭感が強くて鮮明に聴こえます。濃密で情報量がギッシリ詰まった感じもLayla独特の良さです。
ロックを聴く時のアタックがとても鋭くインパクトが強いのがLaylaというかJH Audioの良さで、モニターモニターした無機的なイメージがありません。ダイナミックも顔負けってくらいのダイナミックさも兼ね備えてます。
帯域的にワイドレンジで広く、フラットに近く、解像力も高い、と言わば優等生だけれどもただの優等生ではない感じで、おとなしい音ではなくむしろパワフル、つまりフラット・パワフルみたいな感じですね。
* ユニバーサル(1UF・2UF)との違い
Layla 1 UFと同じベース調整にして聴き比べると、音質はほぼ同じだけれども、カスタムのほうが全体により少しクリアで、アタックも強いのが感じられます。言い換えるとLayla 1 UFは聴きやすく、カスタムはより鮮明だがわずか強めで、Layla 1UFとは音質の違いがあるように思えます。
これは別記事で書いたようなLayla 1 UFとLayla 2 UF(フルメタル)との音の違いに似ています。実際にLayla 2 UF(フルメタル)とカスタムLaylaを比べると、そうした差はあまり感じられません。ただし、もちろんカスタムとユニバーサルの違いがあってそうした違いはあります。
たとえば解像度、情報量は同じだと思う。ただカスタムのほうが遮音よくSN高いため、より良い感じはありますね。
Layla UF(左)とLayla II UF(フルメタル)
はじめはUFとカスタムでは、カスタムの方がフラットでUFの方がFitEarのToGo334的に低域を強調していると思ったのですが、これはジェリーに直接聞いたのですが、カスタムLaylaとユニバーサルではそうしたチューニングの違いは行っていないということです。
つまりはカスタムできちんと耳型が取れて、ユニバーサルでもきちんとイヤチップがフィットできれば同じように聞こえるはずということです。
ただそれでもカスタムとユニバーサルの基本的な違いはあるでしょうし、ユニバーサルでイヤチップで音が変えられるという違いも残ると思います。そうした違いは音の差となると思います。
* まとめ
Laylaの音は周波数特性がよく整って、立体感も高く、音楽を俯瞰的に客観的に見るにはとても適しています。また同時に解像力も高くリアルでありながら、動的で濃く、音楽的に主観的に楽しむこともできます。こうしたパーフェクトはフラッグシップの名に恥じないものです。
AK70 + Laylaカスタム
そのlaylaを買う時にカスタムとユニバーサルの選択があります。
第一世代ユニバーサル(UF)、カスタムモデル、第二世代ユニバーサル(UF)の3タイプがありますが、すべて比較して聴くと、第一世代ユニバーサル(UF)よりもカスタムの方がやや音質は上(カスタムということを考えなくても)、カスタムモデルと第二世代ユニバーサル(UF)はほぼ同じだと思います。それにカスタムモデルと第二世代ユニバーサル(UF)はそれぞれカスタムとユニバーサルならではの一般的な差異がある(遮音性やシェルの違いなど)、と考えてもらってよいのではと思います。ですので、ここはリセールバリューやイヤチップで凝るか、やはりカスタムでこだわるか、という好みの問題であるともいえます。
第一世代ユニバーサル(UF)とカスタムモデル、第二世代ユニバーサル(UF)の差はケーブルではなく、なにか基本的な部分だと思いますが、そこはよくわかりません。
一時期ロクサーヌのころにJH Audioは納品が遅いともいわれましたが、Laylaでは割と早く届いたと思いました。シェルの調整も一度やったのですがそのときもわりと対応は早かったと思います。事務所が変わってからは改善されたようですね。
カスタムはチタンやカーボンシェルがない分価格的にお得になるともいえます。為替の変動などの恩恵を受けて8/1からミクスウェーブでカスタム製品が求めやすくなるということです(下記リンク)が、このタイミングで最高のIEMをカスタムで入手というのを考える手はあると思います。
http://www.mixwave.co.jp/c_audio/c_news/caudio_news160721_01.html