左右独立した完全ワイヤレスイヤフォンを達成する技術の一つとして前回の記事で取り上げたBragi Dashに採用されたNFMIですが、その後少し調べてみました。
NFMI(Near Field Magnetic Induction)とは電波(RF)ではなく、電磁誘導を利用する技術のようです。ただし電波のように変調して情報を載せることができるのであたかも至近距離にしか届かない電波のように使えるということ。だいたい2m程度が限界でそれより外には届かないので逆にセキュリティの高い通信としても使えるそうです。
NFMIはFreeLincという会社の独自技術のようです。
http://www.freelinc.com/technology/
(画像はFreeLincページから転載)
主に補聴器用に用いられていたそうで、歴史は長いということ。身につける携帯電話との中継機と耳のデバイスを接続するのに用いられるそうです(この場合は携帯と中継器はBT)。
球状に広がるのでまず人体で遮られるということはなく、水を貫通できるので水泳でも使えると言うこと。Dashならば内蔵4GBメモリがあるので、水泳に使える唯一のステレオイヤフォンとなるでしょう。もしかするとDashがNFMIを採用したのは左右の音切れというよりも、むしろ水泳とかエクササイズ的な側面からかもしれません(Dashは水深1mの防水)。
省電力にも向いているようです。またマルチチャンネル通信も可能ということ。もちろん電波ではないのでBTのようなWiFiとの干渉もありません。電車みたいにWiFi密度が濃いところでは特に良さそうです。
良さそうですが、弱点は情報量が少ないことでBT4.0の3Mbpsに対してNFMIでは596Kbpsと制限があるようです。
実際に海外のワイヤレスイヤフォンのフォーラムで聴いてみたところ、EARINのような右だけの音切れはDashではまず起こらないということです。ただしDashはiPhoneとデバイス自体の音切れが頻発するそうで、EARINではこれはあまりありませんから、製品としては長短あるということになりますね。また音質においてもEARINとDashをくらべるとEARINの方が良いと言う人がいたので、製品的な問題かもしれないけれども、もしかするとDashは情報量制限の問題でそうした弱点もあるのかもしれません。APT-Xを採用できないのもこの辺でしょうか。
総じて言うとNFMIは左右の音切れ対策には有効ですが、音質的には不利であるかもしれません。ただ製品数が少ないので今後この方式が使われることをちょっと期待して見ています。
また他の完全ワイヤレスイヤフォンであるKANOAは左右接続をBluetoothに独自技術を加えているということで、NFMI以外の取り組みもまだありそうです。