Music TO GO!

2016年06月30日

シーラスロジックから公式?ライトニングヘッドホン開発キット登場

次のiPhoneではイヤフォン端子がなくなると噂されていますが、それを裏付けるようにシーラスロジックからMade for iPhone認証を受けたライトニングヘッドホン開発キットが今週公開されてます。
https://investor.cirrus.com/news-and-events/media-center/news-details/2016/Cirrus-Logic-MFi-Headset-Development-Kit-Simplifies-Design-of-Lightning-Based-Audio-Accessories/default.aspx

http://www.businesswire.com/news/home/20160629005791/en/

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画像はBussiness Wireから転載

これはCRD42L42-MFIというキットです。(下記PDF)
http://www.cirrus.com/en/pubs/proBulletin/MFi_TB_RevF.pdf

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CS42L42を使用してAD/DAとも114dB性能があります(マイクが必要だから)。キットにはコードのサンプル、アプリのサンプルと大小二つのリファレンス基盤が入ってます。小さい方はAudezeのようにケーブルに内蔵されるものだと思いますが、大きい方はアナログ端子があるのでアダプタ的な製品のサンプルのようですがこちらはデバッグ用でもあります。


今週はライトニング端子のついたEarPodsの「リーク」画像や、
http://www.digitaltrends.com/mobile/iphone-7-lightning-earpods-leak/?utm_source=socialm&utm_medium=twitter

iPhone7とも言われるボディのリーク画像にイヤフォン端子のないことがうかがえたり(代わりにステレオスピーカーになっている)、
http://gori.me/iphone/iphone-news/87606

どれも真偽は不明ですが、BT関係ともども新iPhoneに向けて動き出してるように思えます。
posted by ささき at 08:05 | TrackBack(0) | __→ iPod, iPhone, iPad | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月24日

ER4SR/XR発売と、わたしとER4S

「あの」Etimotic ER4Sの後継機であるER4SRとER4XRが先日発表され、昨日あたりから海外販売店に出回るようになりました。早い人はもう入手してるようです。
etyのホームページに行ってニュースをみると下記サイトのアナウンスが紹介されてます。
http://www.prweb.com/releases/2016/06/prweb13471162.htm

簡単に言うとER4SR(Studio Reference)がおそらくER4Sの正統な後継機で正確再現のリファレンス機、ER4XR(eXtended Response)はおそらくER4P系のコンシューマ向けで低音域が強化されてるモデルですね。SRもSよりは鳴らしやすくなってるとのこと。価格は$349です。またケーブル端子はMMCXとなったようです。

ER4Sと言うと、一時期は神イヤフォンの代表格でいまでも一定の支持者のある伝説的なイヤフォンですが、当時からのブログやホームページもめっきり少なくなったので、ちょっとまた昔話をしようと思います。

わたしがこのマニアックイヤフォンの領域に関心を寄せ始めた2000年代はじめころにはER4Sというのはすでに国内のネット界隈では話題の存在でした。本当かよというようなあまりにも高い音質評価や、当時のイヤフォンに比べてあまりにも高い値段も話題で、当時の高級機のソニーE888でさえ八千円くらいの時に4-5万円くらいという驚異の高価格はまさに神格化されるに十分でした。当時は飯田橋の店なんかが有名だったと思います。

わたしも興味を覚えつつも、あまりにも高いので海外から安く買えるのではないかと考えて、アメリカのHead-Fiというフォーラムを探し当て、そこで情報をあさり始めたというのがわたしとHead-Fiの関わりの始まりです。

ER4Sといっても試聴などして見ると、当時使ってたプレーヤーのソニーVaio Pocket(このブログのURLとなった)で使って実際に気に入ったのはインピーダンスを下げたER4Pでした。とはいえSの音も欲しいので、結局わたしが買ったのはER4Pと4P-24というER4S相当にするアダプターケーブルでした。だいたい$200だったように思います。

当時はわたしはすでにShureはE5cまで使ってたので、すごく性能が高いというよりもシャープさ、トランジェントの速さ、正確さ、鳴らしにくさといったShureとの個性の対比が印象的でした。下記に当時(2004年8月)書いたレビューがあります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/434392.html

そのころ、オーディオ屋さんに行くとDr. Headという電池駆動式のヘッドフォンアンプなるものを見つけ、鳴らしにくいER4もこれなら真価を発揮できるのではないかと考えて、プレーヤーもiPodならラインアウトで出力が取れる、ドックもラインアウトから出せるものを探して、と組んだのが下記の初期のポータブルオーディオです。

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これで聴くとER4Sの音の良さが引き出せれ、特に弦の鳴りに電車の中で感動したのを覚えてます。

その後はHead-Fiで買えるものをベースにこのシステムが進化をしていき、いまに至るという感じです。
そうした意味ではポータブルオーディオもシステムの力だ、普通のオーディオと同じだと気づかせてくれたのがER4Sということになります。それから10年以上経ってあらわれたER4SRは今の我々になにをもたらしてくれるのか、どうなのか。。
posted by ささき at 10:50 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月21日

AK70 & AK T8iE MKII登場、AK70にはUSB出力搭載!

本日発表会があり、AK Jrを継ぐAstell & kernの低価格モデルとしてAK70、AK T8iEの後継モデルとしてAK T8iE MkIIが発表されました。

AK70_05[1].jpg   AK T8iE MkU_03[1].jpg

AK70製品ページ
AK T8iE MkII製品ページ

AK T8iE MkIIについては初代との変更点はボイスコイルが改良されたこと、ケーブルが銀コート銅の新型になったこと、ケーブル端子が改良されたことなどが変更点です。
AK70はAK240をシンプルにしたようなデザインで夏らしいミントカラー、2.5mmバランス端子、CS4398を搭載、AK上位機種のようにネットワーク機能も使えるファームウエアなど充実した内容のモデルです。

またAK70の驚き機能はUSB出力に対応するということです。DoPでのDSD出力にも対応するようです。はじめUSB入力と書き間違えたのかと思いましたが、AK機からUSB出力ができると言うことでまたシステム対応が柔軟にできそうです。PCレスでUSB DACを使うとか、ネットワーク機能と合わせてAK70を介してUSB DACをつなげるとネットワークブリッジ的な使い方ができそうです。MojoにUSB経由で使ってみることもできそうですね。
しかし、USB出力の実装にはLinuxレベルのクラスドライバを生かしたのか、UAPPやOnkyoのようにアプリドライバーを実装したのでしょうか、興味あるところです。
これは現行の第3世代や第2世代にも搭載されていくそうですので、またいろいろと使い方が広がりそうです。

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2016年06月20日

左右独立型ワイヤレスイヤフォンのトレンドと秘密

最近のイヤフォンのトレンドのひとつとして、左右が独立したワイヤレスイヤフォンが数多く出てきていると言うことがあげられます。ケーブルレスでワイヤレスの自由さ、加えてiPhoneがイヤフォン端子をなくすという観測が後押ししていることもありますが、やはりEarinのヒットが要因でしょう。
Earinのほかにもさまざまな特徴をもった左右独立のワイヤレスタイプが出ています。スマートイヤフォンであるDash、ダイナミックドライバーのAria One、ワイヤレス充電のTruu、スポーツ用のPhazon、バッテリーの持ちが良いTrueBuds、Onkyoのなぞの海外発表品のW800BTなどもあります。またこのほかにもまだまだあります。

このようにたくさん出てきた背景にはEarinのヒットという商業的なものもあると思いますが、短期間でみなが追いついてくるというとなにか技術的な課題が解決されたのではとも考えてしまいます。
たとえばネットワークプレーヤーがどんどん出てきた背景にあるのは、オーディオメーカーではむずかしいネットワークのソフトウエアをStreamUnlimitedのようなOEMメーカーが引き受け、オーディオメーカーはそれに独自のオーディオ回路を加えるだけでよかったということがあります。
そこでこの左右独立型ワイヤレスイヤフォンの共通の技術課題はなんだろうとちょっと考えてみることにしました。

もともとBluetoothはこうした左右独立型のワイヤレスイヤフォンには向いていませんでした。Bluetoothではマスターとスレーブの関係が明確で、1:1のコネクションのみが可能だからです。そのためケーブルが目立たないヘッドフォンは良いのですが、イヤフォンではどうしても左右をケーブルで結ぶ必要があります。つまり左の耳のユニットでワイヤレス信号を受けて、それを有線で右耳のユニットに伝えるわけです。

この問題を解決したワイヤレス技術は2008年ころのKleer(クリア―)が先鞭を切りました。KleerはCD品質の伝送や、マルチチャンネル伝送の伝送が可能であったため、左右のユニットにそれぞれワイヤレス信号を送ることができました。ゼンハイザーのMX W1がはじめての完全左右独立のイヤフォンとして知られています。

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ゼンハイザー MX W1

ところが特別なドングルを送信機に付けねばならないKleerは流行ることなく、いつのまにか表舞台からいなくなってしまいました。

Bluetoothでの左右独立のワイヤレスイヤフォンはクラウドファンディングで2014年に登場しました。実際はEarinよりもスマートイヤフォンを標榜するBragi Dashの方が早かったと思いますが、Earinのコンパクトさにより注目が集まりました。フィットネス機能もあるDashは複雑すぎる点もあったと思います。

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Earin - Kickstarterページから

ではどうやってEarinではBluetoothでこのケーブルレスの左右独立を可能にしたかというのはKickstarterのページに書かれています。
earin.png
出展: https://www.kickstarter.com/projects/earin/earin-the-worlds-smallest-wireless-earbuds/description
つまりEarinで採用されているBluetoothチップは送り手と受け手の両方が使えるもので、左耳のユニットがワイヤレスでBluetoothの信号をうけたのちには、右チャンネルのデータをやはりBluetoothで右側ユニットに送ると言うものです。
これは左右独立のBluetoothスピーカーなどでも採用されているものだと思います。これだけでも左右の同時接続やシンクロ、バッテリーマネージメントなどはEarinのコンパクトさを考えると十分にハードルは高いと思います。

しかし、実はこれだけではまだ完全な答えではないと思います。それは縦の変化球が消える魔球の秘密の80%でしかないのと同様に、それだけでは完全に(ケーブルが)消えないでしょう。その最後の20%の秘密は障害物をよけて左右の電波を送信する方法です。その障害物とは人の頭です。
スピーカーとEarinにはコンパクトさ以外にも大きな違いがあります。スピーカーでは互いのユニットが見通しが取れているのに対して、Earinでは左右間にBluetooth電波の透過ができない(むずかしい)と言われる人の頭があります。加えてBTの2.4GHz帯という電波は直進性がとても高いので曲がりにくいのです。左右のユニット間の電波の送信はイヤフォンにとっては思った以上の難しい課題と思います。

これについては面白い記事がWall Street Journalのテックレビューにありました。
それは電波の壁面反射を使うという方法です。直進性の高い電波を壁面にあてて、その反射を特殊アンテナで拾うという方法です。これはコンパクトな耳内におさまるためアンテナ配置に自由度のないEarinには特に重要だと思われます。
実際にこのライターが試してみたところによると、Earinでは室内よりも(壁面反射の使えない)屋外で右接続の不良がよくおこったと言うことです。
ただここは明確にそうかはメーカーの明記がないのでわかりません。左の入力をBTで右に飛ばしているよという普通に思いつくところは公開していますが、こうした最後の細かなノウハウが実はポイントではないかと思います。

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Dash - Dash home pageから

一方でDashについては左ユニットまではBluetoothですが、左右ユニット間の電波の送信はNFMI(Near Field Magnetic Induction)という技術を採用していると明記されています。つまり左右接続はBluetoothではありません。
NFMIは近距離(2m程度)専用の14Mhzくらいの長い波長の通信を使うもので、頭を回り込んでいけるんでしょう。頭を気泡でくるむようにという説明があります。NFMIは補聴器などでも使われているようです。
2.4G帯ではないのでBluetoothのような干渉は受けないでしょうからWiFi環境にも強いでしょう。
こちらのDashのサポートページにも記載があります。


たくさん出てきている「左右独立型ワイヤレスイヤフォン」については左右チャンネルのシンクロとかレイテンシーとか課題はいろいろあるとは思います。ただそこは左右独立ワイヤレススピーカーでもやったことですから、イヤフォン独自の課題となるとこの障害物である頭をどうよけるかという左右の電波送信技術ということはあるかもしれません。
実際測ったわけではないので、どの程度の影響があるかはよくわかりませんが、この左右の電波送信というところにポイントを見つけるとスペック外の長所短所も見えてくるのかもしれません。
posted by ささき at 21:29 | TrackBack(0) | __→ 完全ワイヤレスイヤフォン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月17日

Campfire Audioの新フラッグシップ、ANDROMEDAレビュー

ANDROMEDA(アンドロメダ)はCampfire Audioの新しいフラッグシップとなるもので、バランスドアーマチュアの5ドライバー形式を採用しています。

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ドライバー構成は高音域x2、中音域x1、低音域x2となります。ドライバーは新規の中音域ドライバー以外はJUPITERと同じものだそうです。またANDROMEDAではJUPITERで好評だったレゾネータ―チャンバー方式を採用しています。レゾネータ―チャンバーは高音域ユニットに適用されます。
このことから、ANDROMEDAはJupipterの発展版ととらえることができます。
明日、6月18日から発売で価格はメーカー希望小売価格が129,300円です。発売元のミックスウェーブのリンクはこちらです。
http://www.mixwave.co.jp/dcms_plusdb/index.php/item?category=Consumer+AUDIO&cell002=Campfire+Audio&cell003=ANDROMEDA&id=34

手に取るとまず分かるのはANDROMEDAは珍しい緑色のハウジングに包まれているということです。これはおそらく山の緑なのだと思いますが、アウトドア派のKenさとんが好きな色なんだそうです。外観もかなりがっしりとして丈夫そうです。角くてねじが見えるところなど質実剛健な機械っぽさはやはりアウトドア機材のイメージなのでしょうか。
ケースは高級感のあるものです。チップにはコンプライも入っています。

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また次に気がつくのは標準ケーブルがLyraやJUPITERの世代とは異なっているということです。前と同じようにきれいなケーブルですが、これは前のケーブルよりも良さそうです。実際にこの新ケーブルがANDROMEDAの第二のポイントとなります。

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ANDROMEDAの特徴としては、JUPITERに中域ドライバーが追加されたということ、高音域にはJUPITER同様にレゾネータ―チャンバー(チューブレス設計)が採用されていること、そして標準ケーブルが新しくなっていることの3点が大きいと思います。
またこの3点はいずれも音質面で大きくANDROMEDAの音に寄与しています。

ANDROMEDAを聴いてみてまず感じるのは高い透明感、瑞々しく生々しい中高域と厚みのある中域、そしてタイトで張り出し感の少ないフラットな低音域です。この透明感が高くて生々しい中高域はJUPITERゆずりでレゾネータ―チャンバーが効いているところだと思いますが、ANDROMEDAとJUPITERをくらべて大きな差があるのは厚みがある中域です。つまり一枚ベールを取ったような中高域の生々しい 鮮やかな鮮度感はJUPITERそのままで、全体に厚みが加わった感じですね。JUPITERでは薄味に感じられるところがありましたが、ANDROMEDAではほどよく濃くなりました。JUPITERより厚みがあり豊かで、より周波数的に整ってます。
特にヴォーカルがよくなった感じですね。女性ヴォーカルが艶っぽく、くらべるとJUPITERはちょっとドライでした。ヴォーカルは耳に近く臨場感あるところも良い点です。

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Complyをつけると低域に重心が移るので、ヘビーな曲には良いが、中域重視で標準フォームの方がANDROMEDAには向いていると思います。

もう一つ特記して置きたいことは、付属ケーブルがJUPITERよりもだいぶクリアになったことです。ためしに慣れたJUPITERで前の標準ケーブルと今回のケーブルを比べるとかなり今回のケーブルの方が透明感が高く、音の広がりが良いことに気が付きます。今回のはほんとにはじめからリケーブルされたものを売っていると言って過言ではないと思います。
まじめな話、下手にリケーブルするとかえって音質が下がるかもしれないので慎重に交換ケーブルは選んだ方が良いと思います。リケーブルしないほうがよいかも、と書くことはめったにありませんが。。
また引き締まった低音域はケーブルによるところも大きいかなとも思います。解像力とかクリアさというだけではなく、周波数特性的なイヤフォンとの相性もあるので、標準ケーブルで良いというのはそうしたメリットがあると思います。
ただ今回残念なのは2.5mmバランスケーブルが付属していないということです。

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MojoやAK380シリーズのような高性能プレーヤーやアンプで聴くと標準ケーブルでも今までリケーブルして得られるような「ハイエンドっぽい」音の世界が感じられます。上質で端正なところがAK第3世代とよく合います。
ANDROMEDAは基本性能が高く、素姓も素直なのでケーブルを変えたり、DAPを変えることでさまざまな味が楽しめます。たとえばAK300をつかうと標準ケーブルでもパワフルになり、低域の量感も高くなります。
AK320だと透明感が高く、ANDROMEDAの透明感と済んだ中高域の魅力を引き出すにはうってつけだと思います。AK320は単体でも良いけれども、AMPをつけると良さが一層引き立つように感じられますね。

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AK380ではわずかな暖かみの感じられるようなオーディオっぽい音楽性の高さも感じられます。AK380はイヤフォンによってはモニターライクで無機的に聴こえる場合もありますが、ANDROMEDAではJUPITERよりもAK380によく合うようになり、かつAK380の良さも引き出せるようになった。よい組み合わせの相棒という感じです。

まとめ

ANDROMEDAはJUPITERの良さはそのままに、厚みが増して豊かさを感じさせる音になりました。追加の中域ドライバーの力は大きいと思いますし、差はけっこうあると思います。
さらに向上した標準ケーブルもKenさんブランドとしての良さを感じさせてくれます。

ANDROMEDAという名前はアンドロメダ銀河から来ています。そのくらい知っていると言われるかもしれませんが、おそらくアンドロメダ銀河が肉眼でも見える銀河であり、すごく大きいということは知らない人も多いと思います。その大きさは実に月の5-6倍もあります。ただし実際はとても遠くて暗いので普通は気がつかないだけです。
仮にアンドロメダ銀河が十分明るかったらこう見えるはずという画像がこちらです。
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(画像の出展はこちらです)
SFにありそうな光景ですが、ほんとうにこんなのがいつも空に浮かんでいるわけです。なにしろアンドロメダ銀河への距離は230万光年もありますが、直径が20万光年もありますからね。
まさに稀有壮大な話ですが、Campfire Audioで星座の名前を用いてきたKenさんがANDROMEDAという名前にこめた期待感をここから感じ取ってもらえれば、と思います。
posted by ささき at 22:17 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月14日

Astell & Kernの第3世代シリーズのエントリーモデル、AK300レビュー

Astell & Kernの第3世代シリーズは上位機種のAK380、特別モデルのAK380 copper、中堅機のAK320とすでに展開されていますが、第3世代としてのエントリーモデルが追加されました。AK300です。

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第二世代で言うとAK240がAk380に相当し、AK120IIがAK320に相当するとすると、AK100IIに相当するのがAK300となります。ただし第2世代とは異なり、ボディは基本的にみな同様なデザインで、アクセサリーが共通して使用できると言うところが第3世代のポイントです。
発売開始は6月11日で、価格はオープンですが、参考価格として直販価格は129,980円です。

* 特徴

もちろん第3世代としてデザインは共通でも他のモデルとはさまざまな相違点はあります。まずDACが同じAKM AK4490でありながらシングルとなり一基となりました。またボディがアルミボディとなり、低価格化に貢献しています。
一方でAK300の一番の特徴ともいえる点はAK380/320のオーディオ機器としての強みであった高精度Femtoクロックをそのまま搭載しているということです。AK320/380とくらべると簡略化スペックにも見えるAK300ですが、考えてみるとシングルDACは他のDAPでは普通のことですから、AK490というAKMの新鋭DACチップと高級オーディオなみの高精度Femtoクロックの組み合わせはこの価格帯のDAPとしては音に関しては破格なスペックともいえると思います。

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ボディカラーは精悍なブラックです。これはなかなか良いですね。
そのほかの点では内蔵のメモリが64GBとなりました。USB DACがクラス1(96/24まで)であること、DSDがPCM変換であること、PCM上限が192/24であること(再生は変換により384/32まで対応)はAK320と同じです。

Astell & Kern第3世代機として、ソフトウエア機能のDLNA/uPnP互換はそのままで高度なネットワーク対応やiPhoneからのリモコン的な使い方にも対応しています。また4ピンのアナログ端子があるので専用アンプが使えるなど、拡張性はかなり高いと言えます。


* 実機の印象

箱は他のAstell & Kern機種同様に外箱と内箱に分かれ、内箱を開けるとAK300が入っています。

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アクセサリー箱には革ケースとワランティカードがはいっています。このケースはなかなかよく出来ています。

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ボリュームはAK320タイプです。この形式は片手で回しやすい半面でポケットに入れた時に回りやすいのでキーロックをしておいたほうが良いと思います。

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* 音質

AK300の音質はきわめて高く、エントリー機という印象ではありません。特に中音域から高音域にかけての洗練された音像再現性、きりっと引き締まった解像力の高さには感じ入ってしまいます。ヴァイオリンなど弦楽器の「ヤニが飛ぶような」響きや、ギターのピッキングの切れの良さ、ベルの音のシャープさなどとてもリアルな音色で無駄な贅肉が少ないと感じます。
このように音再現は細いし、よく整ってまずが、これはシングルになったとはいえ新しいAK4490の性能の高さもありますが、やはり高精度クロックを上位機から引き継いでるおかげと感じます。やはりこのようによく整って引き締まった音は高精度クロックならではの世界だと思います。高精度フェムトクロックの採用はこのクラスでは反則技的で、群を抜いた音つくりに貢献していますね。

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AK300で、この高い音再現性とともにもう一つ気が付くのはこれまでのAstell & Kernの機種に比べて低音域がかなり強調されて強めということです。AK320のところでAK380と比べるとAK320は高域と低域の音の強調感があり、AK380はもっと味付けが少ないと書いたけれど、AK300はさらにはっきりと低音域の量感が多く、低域がパワフルに聞こえるのがわかると思う。このためにロックやポップでのインパクトの強い、アップテンポの曲が気持ちよく聴くことができます。
Astell & KernのDAPはプロのモニターとしても使えると言うところもポイントだったわけですが、AK300ではもっとコンシューマー寄りにふって設計されていると感じられます。

AK300の魅力はこのパワフルな低音域に、高解像、高音質で整った中高域が組み合わされているところだと思います。安価などんしゃり傾向とは違ってヴォーカルは埋もれずに鮮明に聴き取れますし、中高域は品よく音が作られているのできつさがあるわけではありません。ベースの力強さが強調され、全体に聴きやすいピラミッドバランスの音になっているという感じです。

AK300とAK320や380など上位機種を比較した場合にミクロ的に細かな音再現に注意して聴くと、やはり上位のデュアルDACの機種の方が情報量が豊かだし、音もよりシャープで明瞭感も高いように思います。
ただしマクロ的に聴いた場合、分かりやすい違いは、細かな音再現力の違いというよりも、むしろ味付けの違いでしょう。音質の差というより、音造りの差の方が分かりやすいというべきでしょうか。
AK300ではより味付けがあって低域の量感豊かにパワフルに鳴り、ドラムやベースが気持ちよく、電子的なビートもAK300では迫力満点に聴かせてくれます。ポップ・ロックやエレクトロなどを聴く人は上位機種よりもむしろ好印象だと思う人も多いかもしれません。上位機種と比べた時の機能の差が少ないのもコスパの良さを感じさせます。
AK Jrと比べるとAK300の方が音質と機能の両面でだいぶ上に感じられます。もちろんコンパクトさというJrの利点はあります。

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今回は主にJH Audio ROSIEで聴きました。最近はROSIEを気に入って聴くことも多いんですが、AK300ではROSIEの低音調整は変えないで使ってほぼ標準位置でベースギターやドラムスの迫力がAK320よりもはっきりと強調感を感じます。
ROSIEはワイドレンジ・フラット基調の現代的なANGIE に比べるといわば古風というか、クラシックな音バランスの良さがあると思います。AK300でロックを聴くとそれがよくいかされています。Sirenシリーズは低音域は調整ができるけれども、低音調整をすると音が膨らんであいまいになる傾向があるので、できればあまり低音調整を利かせない範囲でパワー感が得られるAK300はうってつけだと思います。もちろんバランス駆動で聴くとまた別な良さがあります。

第3世代の拡張性の高さとしてAK380専用AMPをまったく問題なく使うことができます(わずかなデザインの違いがありますが)。やはり専用アンプを付けると低ゲインでもAK300のパワフルさがよりいっそう引き立つように感じられます。より密度感が濃くなるという感じでしょうか。これを高ゲインにすると。。これはオーナー特権だと思いますのでぜひ買ったらやってみて独自の音世界を堪能ください。
またAK380専用AMP copperを使うと、声音の艶とか弦の深みとかそうした感性的な部分でAK300を一クラス上にしてくれます。AK300のパワフルさとcopperの音の豊かさが調和して、ハイレベルの音質への一番コスパの高い道のひとつと思えるでしょう。ちょっと重いですけどね。

* まとめ

AK300はAK320やAK380と比較してしまうと下位機種となりますが、実売10万前後のDAPとして見ると、新鋭のAK4490を搭載し、高精度フェムトクロックを採用するなど音質面でのスペックは高く、加えてDLNA/uPnP互換のネットワーク対応の柔軟性、専用アンプが使用できる高い拡張性など魅力を持っています。
音質的にも上位機種に肉薄するような高解像度と、上位機種にはない音楽的な低音のパワー感の味付けなど優れた内容をもっています。
またボディの質感も高く、精悍なブラックのカラーリング、専用ケースと合わせてAstell & Kernという高級ブランドの所有する喜びを味わわせてくれるでしょう。

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AK300は実際に聴いてみると予想と違った部分と予想通りだった部分がありました。予想と違ったのは(AK120IIとAK100IIの差から)思ってたより音が良いということで、予想通りだったのは音に味付けがなされていたということです。実際にはこの音の良さと音の味付けのミックスされたところがAK300の魅力と言えるでしょう。
プロが仕事の現場で録音モニター的に使うというには向いていないかもしれないけれども、主にCDリッピングでパワフルなロック・ポップを高音質で楽しみたいという人にはお勧めです。

AK300がAK320やAK380と異なるのは、ライバルが少ないAK380やAK320とは異なり、価格帯の近傍にライバルが多いということだと思います。AK300は10万円前後というにはやや高い方ですが、高精度クロックの採用による音質の充実感や、専用アンプの用意、ネットワーク拡張性は他のDAPにはない長所なので納得感はあると思います。精悍なブラックボディの作りも含めてAstell & Kernというブランドバリューも譲ったところはありません。予算10万円を考えたていた人たちはちょっと背伸びをしてみたいと思うのではないでしょうか。

専門店では買取キャンペーンと合わせてよりお得に買えるところもあります。たとえばフジヤさんでいうと他機種の下取りが1万円アップというものです。実質的にはよりお得になっていると思いますので店頭でいろいろと比較試聴の上で、AK300の魅力を発見してください。
posted by ささき at 10:46 | TrackBack(0) | __→ AK100、AK120、AK240 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月06日

RoonとDLNAとブリッジ

Roonフォーラムをちょっと眺めていたらひとつスレッドが目に留まりました。それは「RoonではDLNA機器が使えないのか?」というものです。
いやいやそれはRoonとDLNAではそもそも違うもので、、とひとりごちていたら、それはどちらかというと質問というより要望だと気が付きました。Roonはたしかに使ってみるとすばらしいライブラリ管理能力や使いやすさを提供してくれます。それではなんでRoonでは私の素晴らしい音質のLINN DSに再生できないのか?というわけです。
ネットワークオーディオ機器はRoonReady化、つまりRAATというプロトコルへの対応がされていなければRoonでは使えません。いかにRoonが使いやすく音質も良いと言っても、今年のミュンヘンのハイエンドショウでRoonReady化が進んでも、やはりネットワークオーディオ機器のメインストリームはいまでもDLNA/uPnP機器です。

それ - つまりRoonのDLNA/uPnP対応 - を実現するためにはRoon自体がuPuPに対応する必要がありますが、RoonとDLNAではアーキテクチャが大きく異なります。
Roon Core=DLNA メディアサーバではなく、Roon Output=DLNAメディアレンダラーでもありません。Roon Coreでは音源管理とともに音源のデコードも行います。DLNAレンダラーでは音源をデコードしますが、Roon outputでは音源をデコードしません。
もしRoonをuPnPに対応させるなら、Coreに音源をデコードする代わりにストリーミングでレンダラーに送るという新たな機能が必要になります。それは大きなことでしょう。

いずれにせよRoonのなかの人の答えはすぐにそうした対応はないけれど、そちらのデバイスがRoonReadyになるまでRoonBridgeでしのいでおいてください、というものです。
これは具体的に言えば、RoonBridge化したPCやラズベリーパイにデジタル出力を付けて、デジタル入力のあるLINN DSのようなネットワークプレーヤーに接続してくださいというわけです。つまりなんらかの形のブリッジを使うと言うことです。

Phileweb記事のPlayPointのところでも書きましたが、そのRoonBridgeとかPlayPointのような機器はネットワーク上のトランスポートと言ってもよいですが、こうした機器はネットワーク・ブリッジとも呼ばれます。もともとブリッジというのは二つの世界を橋渡しするものという意味です。これであればネットワークデジタル転送の世界(uPnPやRAAT)とシリアルデジタル転送の世界(USB、SPDIF)を橋渡しするものです。Sonicorbiter SEやPlayPointなどもブリッジ製品です。

USB DACおよびPCオーディオの黎明期では直接USBを入力できるDACが少なかったので、hiFaceのようなDDCが活躍したのを覚えている人がいると思いますが、そのDDCのネットワーク版と言えるのがブリッジです。デジタル信号をデジタル信号に変換すると言う意味では、DDC(Digital to Digital Converter)と同じです。DDCではUSB to SPDIFでしたが、ブリッジではuPnP to SPDIFのように機能します。
またブリッジを使えばUSB DACをネットワーク対応することができるともいえます。

シリアルデジタル転送の世界(USB、SPDIF)ではケーブル長に限界がありますので、ネットワークデジタル転送をかませることでオーディオ機器のレイアウトに自由度ができるのはRoonの大きな利点です。
以前はResolution AudioのCantataのようにUSB over IPの機能を使って、この長さの限界を突破する試みもありました。こうした機器に比べればRoonはDACをネットワーク化するのにかなり現実的な解法です。
デジタルオーディオのデータをネットワークで搬送するいわゆるAudio over IPには、最近ではほかにAVB(Audio Video Bridge)、RAVENNAやDANTEなどがあります(もっとあります)。RAVENNAはMergingのNADACで知っている人も多いと思いますが、これらはまたちょっと別の話になります。またDARKOの記事にあるようにNADACがRoonReady対応を表明したことで状況も流動的です。RAATはAES67系ではないと思いますが、そこまではわかりません。


しかしLINN DSのようにすでにRJ45ネットワークの口を持っているネットワークプレーヤー(海外で言うストリーマー)にデジタル入力を使って別の機器(ブリッジ)でネットワーク対応させるのは抵抗がある人も多いと思います。
PlayPointは優れたブリッジですが、出力先はexaSoundのUSB DACのみです。安価なブリッジのSonicorbiter SEから光デジタルでLINN Klimax DSにつないでも、LINNオーナーは良い顔をしないでしょう。


もうひとつの可能性はソフトウエアブリッジです。ネットワークブリッジという言葉は普通にIT機器でも(別な意味で)使いますが、やはりハードウエアとソフトウエアがあります。
方法はRoonのSqueezeboxサポートを使用して、Squeezebox(LMS)側でuPnP変換のLMSプラグインを使用するという方法です。Roonから見るとLINN DSはSqueezeboxデバイスとして見えるでしょうが、それは設定の話で、使うときはあくまでひとつのゾーンです。
これは実際に試した人がいます。これでLINNのKlimax DSに接続しようとしたが、エラーで出来なかったようです。


いずれにせよ、RoonでuPnPが実装できれば便利なのは間違いないとは思います。多少作るのが難しいとは言っても、すでにRoonではAirPlayとSqueezeboxという二つのプロトコルを持っていますので、uPnP/DLNA対応というのは出来ないわけではないでしょう。ただRoonでuPnPを実装してしまうとRoonReady化、つまりRAAT化が進まなくなりRoonの利点も限られたものになると言う戦略的な打算があるのかもしれません。
posted by ささき at 21:27 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする