昨日発売開始されたプレミアム・ヘッドホン・ガイド・マガジン(Vol6)に執筆しました
P122から見開き2ページでBeat Audioのケーブル解説とLaylaIIと組み合わせた試聴記事を書いています。
本誌は名作ヘッドホン特集という事でゼンハイザーHE-1の記事もあり、フェンダーイヤホンの誕生秘話、ハイレゾプレーヤー紹介など盛りだくさんでスピンフィットも付録についていますのでぜひお買い上げください。
Music TO GO!
2016年05月31日
2016年05月26日
JH Audioらしいプロ品質のエントリー機、ROSIEレビュー
* ROSIE登場
Sirenの新世代シリーズで唯一発売が延びていたROSIE(ロージー)の発売日が5月27日に決まりました。各ショップで予約を受け付けています。価格はオープンで参考の直販価格は税込みの139,980円です。
ROSIEはマルチドライバーのBA機でユニバーサルモデルです。ドライバー数は片側計6 (高音域に2基、中音域に2基、低音域に2基)個、クロスオーバーは3Wayです。
JH Audioの「THE SIRENシリーズ」では末妹となり、Angieの下に来るエントリー的な位置付けです。他のSiren姉妹同様にロックガールズから名を取っていて、名称由来はAC/DCの「ホール・ロッタ・ロージー」です。
ROISEは価格もSirenシリーズでは手ごろであることから、はじめてSirenシリーズに手を出したいと言う人も多いと思います。そこでまず「THE SIRENシリーズ」を簡単にまとめます。
端的に言うと「THE SIRENシリーズ」とはジェリーハービー率いるJerry Harvey Audioの新世代IEM(In Ear Monitor)シリーズのことです。特徴は以下の通り。
1. 新設計ドライバーとマルチBAドライバーの採用
Sirenシリーズでは高域・中域・低域の各帯域ごとに複数のBAドライバーが採用されています。これによりひとつのドライバーの負荷が減るので全体的な性能が改善されて、特に高域方向の周波数特性も伸ばすことができます。またドライバーも新設計されたものです。
2. 位相を正確に制御した「FreqPhase テクノロジー」を採用
JH Audioの製品ではFreqPhaseと呼ばれる位相特性を改善する技術を搭載していることが特徴です。これにより音場感、音のピントの良さを改善できます。
3. 低域調整機能を搭載したケーブルとロック式プラグを採用
ケーブルはユーザー自身で低域の調整ができる調整機構がついています。(試聴では標準状態にしています)
またアルミ加工によるロック機構を搭載した独自のコネクターにより、安全で強固な接続を実現しています。
またアユートから発売されている「THE SIRENシリーズ」のユニバーサルモデルはAstell&Kernとのパートナーシップ契約により、2.5o 4極のAstell&Kern用バランスケーブルを同梱しています。ROSIEにも含まれています。
「THE SIRENシリーズ」は最近第二世代となりました。ROSIEは第二世代で加わったモデルで、これまでのエントリー的な位置付けのAngieに代わってより手ごろな価格帯を担当します。といってもジェリーの設計したシリーズですからみな個勢揃いのモデルですので単純に松竹梅とはならないかもしれません。自分に好みが合うモデルを見つけるのもまたこのシリーズの魅力の一つです。(他のモデルに関してはこちらとこちらの記事を参照してください)
第二世代は「フルメタルジャケット」と言う愛称の通りにハウジングにそれまでのカーボンやケプラーではなく、チタンやアルミなどのメタル素材が使われています。
ROSIEでは黒色のアルミシェルとカーボンフェイスプレートを採用しています。ベゼル(縁)もアルミ製です。エントリーモデルであっても高級感が感じ取れるボディ造形だと思います。ボディは適度なサイズで装着しやすいのが特徴です。他のSiren姉妹に比べると軽く小さく感じられます。
わずかAngie IIより能率が低いようにおもいますが、ほとんど変わらないくらいだと思います。
箱は他のSirenシリーズ同様に豪華なもので、内箱の中に本体とアクセサリーが詰まっています。
金属製のケースの中に2.5mmバランスケーブルが入っています。これはAstell & Kernなどの2.5mmバランス端子に適合します。
* 音質
音質ですが、製品版をAk320やAK380+AMPで聴いてみました。主に3.5mmで聴いています。イヤピースは標準のラバータイプです(他のSirenシリーズでもそうです)。
時間の都合で一晩だけエージングして、ケーブルはすでにエージング済みのAngieIIのJH Audioの第二世代の標準ケーブルを付け変えて聴いたのですが、ぱっと聴いて音がとても良いので驚きました。あれ、覚えているより良い、と言う感じです。
実はROSIEについてはヘッドフォンブック2016に乗せるためにそのころ(今年の二月)の試聴機(初期版?)を使用してレビューを既に書いています。そのときには高音域と低音域がコンシューマー向けに味付けされて強調されている、つまりヴォーカルが引っ込むドンシャリ傾向があると言う旨で書きました。
そのときは実際にそう思ったんですが、それからROSIEの発売延期があり、満を持して出てきたこの日本での製品版を聴いてみると帯域的には初期版のようにヴォーカルが後退している印象はなく、ヴォーカルは明瞭で聴き取りやすく、引っ込んでいる印象もないですね。むしろ中域は厚く音に適度な厚みがあって、帯域バランスがとても良い感じです。
前に試聴機を聞いた時にはコンシューマーライクな味付けにすることで、プロユースも考えられている上のSiren3姉妹とは差をつけたのだろうと思ったけれども、製品版では十分にプロユースにも使えるのではないかという良い感じのバランスの良さを感じます。JH Audioというブランドから感じる堂々とした音の完成度の高さをROSIEでも感じます。Angieに近いという感じよりも、JH13に近いと言う方が正しいかもしれません。Angieは適度な低域の量感と中高域に強みがあるように思いますが、ROSIEは中高域はAngieほど強くなく、重心が中低域にあるような感じです。低域の量感はAngieよりも抑えてあるように思いますが、十分にあります。(ベース調整ノブの標準位置であっても
初期版の試聴機で雑誌記事を書いていた時は自分のブログで記事にするときは「JH Audioの作るコンシューマー機の音」というタイトルにしようと考えていたんですが、いま製品版を聴いてみると「JH Audioらしいプロ品質のエントリー機」という方が正しいように思えます。
この音のバランスの良さのほかに製品版のROSIEを聴いてみて、特に標準ケーブルのままで音のクリアさ・明瞭感がとても高い点に驚きました。リケーブルの必要性をあまり感じさせない点は特筆ものかと思います。そしてもう一つのROSIEの音の強みは立体感が際立って良いことだと思います。
帯域バランスの聴きやすい良さと共にこの標準ケーブルでもクリアなことでROSIEはとても広い音楽の守備範囲を持っていると感じます。それに加えてFreqPhaseらしい音の立体感が際立ち、音場感の良さで音質レベルを上質なものにしています。
たとえばAK320との相性が良いと感じます。AK320もDAPとイヤフォンだけのようなシンプルな組み合わせにおいて分かりやすい抑揚のある音の良さがありますが、シンプルに標準ケーブルで音が良いROSIEとも良い組み合わせです。
楽器やヴォーカルの音がクリアに明瞭感高く聴き取れます。シャープでソリッド、音が濃くて中低域に厚みがあり、重厚感を感じさせるほどよいロックンロールサウンドと言う点もJH Audioらしい音のエッセンスがよく伝わってきます。
音楽をランダムに聴いていても、ロックでのインパクトの強さ、クラシックでのオーケストラのスケール感、ポップでのヴォーカルの明瞭感、ジャズトリオの楽器の切れの良いシャープさなど、とてもオールラウンドに会う基本力の高さを感じさせる完成度の高さです。
* ROSIEとANGIE II
それでは上級のAngie IIと比べてどうかということで、Angie IIとAK380+AMPで標準ケーブルで比較してみます。聴いてみるとやはりAngieIIの方がスケール感があり、高域の伸びや力強さ、低域の量感は良いように思います。たとえばバロックバイオリンの中高域で比較すると、ROSIEはやや線がか細く、Angie IIの方がより豊かに倍音の情報量を持っているように思えます。
しかしROSIEは比べると小ぶりに感じますが、Angieのように強くなくても自然に伸びる中高域とともに中低域の厚みがまとまった音の良さを感じさせ、音の輪郭のピントはよりシャープで甘さが少なく、音の立体感がより際立っているように感じられます。この点で標準ケーブルではむしろROSIEの方が好印象と感じる人も多いでしょう。
もうひとつの差のポイントは帯域バランスの重心位置です。ROSIEはAngie IIよりも重心が低く感じられ、より好ましいバランスとなっているように思います。低域の量感はむしろAngieの方があるのですが、重心位置の問題と言いますか。。これによって聴く人の好みの問題が違ってくると思います。
性能的にどうというと、やはりAngie IIの方がよりワイドレンジであると答えますが、そうした重心位置のバランスの関係でROSIEの方がむしろ音としてまとまって聞こえることもあります。
Layla/Angie系のフラット・ワイドレンジ傾向のチューニングとはやや違うのかもしれません。
JH Audioらしい濃密感・濃ゆさはAngie IIの方がありますが、ROSIEも負けずに十分に感じられます。だいたいJH Audioのイヤフォンは濃厚感が特徴ですが、それが上級機に行くほど強くなる感じです。
たとえばBlackDragonやBeatなどでリケーブルする人はAngie IIの方がリケーブルすると伸びしろがあり、より高いところに行く感じです。最終的にはAk380+AMPの良さもより引き出せるようになります。ROSIEでBlackDragonリケーブルするとよりクリアにはなりますが、もともと持っていた良さがなにかなくなるようで、好ましいという言い方をすると、ROSIEは標準ケーブルで使用した方がむしろ好ましいように思えます。
Angie II,Roxanne II,Layla IIはかならずBlackDragonにリケーブルして音を楽しみたい感じですが、ROSIEではあえてリケーブルしない方が音が好ましいように感じられます。チューニングの関係かもしれませんが。。
* まとめ
ROSIEは濃密なジェリーハービーの音のエッセンスが詰まっているハイエンドイヤフォンであるSirenシリーズのエントリー機と言えます。
完成度が高い音で、標準ケーブルのままで音が良く、帯域バランスの良さでオールジャンルの音楽に合います。高い交換ケーブルに頼ることなく立体感が高く、鮮明な音が楽しめます。コンパクトで軽い点も魅力ですので、LaylaやRoxanneでフィットに苦労した人にも良いでしょう。
イヤフォンを標準ケーブルのままで使う人にはROSIEがお勧めです。ポータブルアンプを組み合わせたり、高価なリケーブルをして音を突き詰めたい人にはポテンシャルのより大きな上級機の方がよいかもしれませんが、それぞれ個性のある音なのでひとそれぞれの音の好みもまたあります。
前のレビューでSirenシリーズを擬人化したときにイメージにあったのは来生三姉妹だったんですが、4姉妹となると、ROSIEは三姉妹に末っ子が増えたという点では海街ダイアリーのすずですけど、感覚的には姉たちにも譲らない面もある若草物語のエイミーの方が近いかもしれません。
他のSirenシリーズの姉妹たちが個性あふれているように、ROSIEにも単なる上下のランクに収まらない独特の音の魅力があります。
ROSIEは全国各地のお店でも試聴機が用意されていますので、そのROSIEの魅力を是非確かめてください。
Sirenの新世代シリーズで唯一発売が延びていたROSIE(ロージー)の発売日が5月27日に決まりました。各ショップで予約を受け付けています。価格はオープンで参考の直販価格は税込みの139,980円です。
ROSIEはマルチドライバーのBA機でユニバーサルモデルです。ドライバー数は片側計6 (高音域に2基、中音域に2基、低音域に2基)個、クロスオーバーは3Wayです。
JH Audioの「THE SIRENシリーズ」では末妹となり、Angieの下に来るエントリー的な位置付けです。他のSiren姉妹同様にロックガールズから名を取っていて、名称由来はAC/DCの「ホール・ロッタ・ロージー」です。
ROISEは価格もSirenシリーズでは手ごろであることから、はじめてSirenシリーズに手を出したいと言う人も多いと思います。そこでまず「THE SIRENシリーズ」を簡単にまとめます。
端的に言うと「THE SIRENシリーズ」とはジェリーハービー率いるJerry Harvey Audioの新世代IEM(In Ear Monitor)シリーズのことです。特徴は以下の通り。
1. 新設計ドライバーとマルチBAドライバーの採用
Sirenシリーズでは高域・中域・低域の各帯域ごとに複数のBAドライバーが採用されています。これによりひとつのドライバーの負荷が減るので全体的な性能が改善されて、特に高域方向の周波数特性も伸ばすことができます。またドライバーも新設計されたものです。
2. 位相を正確に制御した「FreqPhase テクノロジー」を採用
JH Audioの製品ではFreqPhaseと呼ばれる位相特性を改善する技術を搭載していることが特徴です。これにより音場感、音のピントの良さを改善できます。
3. 低域調整機能を搭載したケーブルとロック式プラグを採用
ケーブルはユーザー自身で低域の調整ができる調整機構がついています。(試聴では標準状態にしています)
またアルミ加工によるロック機構を搭載した独自のコネクターにより、安全で強固な接続を実現しています。
またアユートから発売されている「THE SIRENシリーズ」のユニバーサルモデルはAstell&Kernとのパートナーシップ契約により、2.5o 4極のAstell&Kern用バランスケーブルを同梱しています。ROSIEにも含まれています。
「THE SIRENシリーズ」は最近第二世代となりました。ROSIEは第二世代で加わったモデルで、これまでのエントリー的な位置付けのAngieに代わってより手ごろな価格帯を担当します。といってもジェリーの設計したシリーズですからみな個勢揃いのモデルですので単純に松竹梅とはならないかもしれません。自分に好みが合うモデルを見つけるのもまたこのシリーズの魅力の一つです。(他のモデルに関してはこちらとこちらの記事を参照してください)
第二世代は「フルメタルジャケット」と言う愛称の通りにハウジングにそれまでのカーボンやケプラーではなく、チタンやアルミなどのメタル素材が使われています。
ROSIEでは黒色のアルミシェルとカーボンフェイスプレートを採用しています。ベゼル(縁)もアルミ製です。エントリーモデルであっても高級感が感じ取れるボディ造形だと思います。ボディは適度なサイズで装着しやすいのが特徴です。他のSiren姉妹に比べると軽く小さく感じられます。
わずかAngie IIより能率が低いようにおもいますが、ほとんど変わらないくらいだと思います。
箱は他のSirenシリーズ同様に豪華なもので、内箱の中に本体とアクセサリーが詰まっています。
金属製のケースの中に2.5mmバランスケーブルが入っています。これはAstell & Kernなどの2.5mmバランス端子に適合します。
* 音質
音質ですが、製品版をAk320やAK380+AMPで聴いてみました。主に3.5mmで聴いています。イヤピースは標準のラバータイプです(他のSirenシリーズでもそうです)。
時間の都合で一晩だけエージングして、ケーブルはすでにエージング済みのAngieIIのJH Audioの第二世代の標準ケーブルを付け変えて聴いたのですが、ぱっと聴いて音がとても良いので驚きました。あれ、覚えているより良い、と言う感じです。
実はROSIEについてはヘッドフォンブック2016に乗せるためにそのころ(今年の二月)の試聴機(初期版?)を使用してレビューを既に書いています。そのときには高音域と低音域がコンシューマー向けに味付けされて強調されている、つまりヴォーカルが引っ込むドンシャリ傾向があると言う旨で書きました。
そのときは実際にそう思ったんですが、それからROSIEの発売延期があり、満を持して出てきたこの日本での製品版を聴いてみると帯域的には初期版のようにヴォーカルが後退している印象はなく、ヴォーカルは明瞭で聴き取りやすく、引っ込んでいる印象もないですね。むしろ中域は厚く音に適度な厚みがあって、帯域バランスがとても良い感じです。
前に試聴機を聞いた時にはコンシューマーライクな味付けにすることで、プロユースも考えられている上のSiren3姉妹とは差をつけたのだろうと思ったけれども、製品版では十分にプロユースにも使えるのではないかという良い感じのバランスの良さを感じます。JH Audioというブランドから感じる堂々とした音の完成度の高さをROSIEでも感じます。Angieに近いという感じよりも、JH13に近いと言う方が正しいかもしれません。Angieは適度な低域の量感と中高域に強みがあるように思いますが、ROSIEは中高域はAngieほど強くなく、重心が中低域にあるような感じです。低域の量感はAngieよりも抑えてあるように思いますが、十分にあります。(ベース調整ノブの標準位置であっても
初期版の試聴機で雑誌記事を書いていた時は自分のブログで記事にするときは「JH Audioの作るコンシューマー機の音」というタイトルにしようと考えていたんですが、いま製品版を聴いてみると「JH Audioらしいプロ品質のエントリー機」という方が正しいように思えます。
この音のバランスの良さのほかに製品版のROSIEを聴いてみて、特に標準ケーブルのままで音のクリアさ・明瞭感がとても高い点に驚きました。リケーブルの必要性をあまり感じさせない点は特筆ものかと思います。そしてもう一つのROSIEの音の強みは立体感が際立って良いことだと思います。
帯域バランスの聴きやすい良さと共にこの標準ケーブルでもクリアなことでROSIEはとても広い音楽の守備範囲を持っていると感じます。それに加えてFreqPhaseらしい音の立体感が際立ち、音場感の良さで音質レベルを上質なものにしています。
たとえばAK320との相性が良いと感じます。AK320もDAPとイヤフォンだけのようなシンプルな組み合わせにおいて分かりやすい抑揚のある音の良さがありますが、シンプルに標準ケーブルで音が良いROSIEとも良い組み合わせです。
楽器やヴォーカルの音がクリアに明瞭感高く聴き取れます。シャープでソリッド、音が濃くて中低域に厚みがあり、重厚感を感じさせるほどよいロックンロールサウンドと言う点もJH Audioらしい音のエッセンスがよく伝わってきます。
音楽をランダムに聴いていても、ロックでのインパクトの強さ、クラシックでのオーケストラのスケール感、ポップでのヴォーカルの明瞭感、ジャズトリオの楽器の切れの良いシャープさなど、とてもオールラウンドに会う基本力の高さを感じさせる完成度の高さです。
* ROSIEとANGIE II
それでは上級のAngie IIと比べてどうかということで、Angie IIとAK380+AMPで標準ケーブルで比較してみます。聴いてみるとやはりAngieIIの方がスケール感があり、高域の伸びや力強さ、低域の量感は良いように思います。たとえばバロックバイオリンの中高域で比較すると、ROSIEはやや線がか細く、Angie IIの方がより豊かに倍音の情報量を持っているように思えます。
しかしROSIEは比べると小ぶりに感じますが、Angieのように強くなくても自然に伸びる中高域とともに中低域の厚みがまとまった音の良さを感じさせ、音の輪郭のピントはよりシャープで甘さが少なく、音の立体感がより際立っているように感じられます。この点で標準ケーブルではむしろROSIEの方が好印象と感じる人も多いでしょう。
もうひとつの差のポイントは帯域バランスの重心位置です。ROSIEはAngie IIよりも重心が低く感じられ、より好ましいバランスとなっているように思います。低域の量感はむしろAngieの方があるのですが、重心位置の問題と言いますか。。これによって聴く人の好みの問題が違ってくると思います。
性能的にどうというと、やはりAngie IIの方がよりワイドレンジであると答えますが、そうした重心位置のバランスの関係でROSIEの方がむしろ音としてまとまって聞こえることもあります。
Layla/Angie系のフラット・ワイドレンジ傾向のチューニングとはやや違うのかもしれません。
JH Audioらしい濃密感・濃ゆさはAngie IIの方がありますが、ROSIEも負けずに十分に感じられます。だいたいJH Audioのイヤフォンは濃厚感が特徴ですが、それが上級機に行くほど強くなる感じです。
たとえばBlackDragonやBeatなどでリケーブルする人はAngie IIの方がリケーブルすると伸びしろがあり、より高いところに行く感じです。最終的にはAk380+AMPの良さもより引き出せるようになります。ROSIEでBlackDragonリケーブルするとよりクリアにはなりますが、もともと持っていた良さがなにかなくなるようで、好ましいという言い方をすると、ROSIEは標準ケーブルで使用した方がむしろ好ましいように思えます。
Angie II,Roxanne II,Layla IIはかならずBlackDragonにリケーブルして音を楽しみたい感じですが、ROSIEではあえてリケーブルしない方が音が好ましいように感じられます。チューニングの関係かもしれませんが。。
* まとめ
ROSIEは濃密なジェリーハービーの音のエッセンスが詰まっているハイエンドイヤフォンであるSirenシリーズのエントリー機と言えます。
完成度が高い音で、標準ケーブルのままで音が良く、帯域バランスの良さでオールジャンルの音楽に合います。高い交換ケーブルに頼ることなく立体感が高く、鮮明な音が楽しめます。コンパクトで軽い点も魅力ですので、LaylaやRoxanneでフィットに苦労した人にも良いでしょう。
イヤフォンを標準ケーブルのままで使う人にはROSIEがお勧めです。ポータブルアンプを組み合わせたり、高価なリケーブルをして音を突き詰めたい人にはポテンシャルのより大きな上級機の方がよいかもしれませんが、それぞれ個性のある音なのでひとそれぞれの音の好みもまたあります。
前のレビューでSirenシリーズを擬人化したときにイメージにあったのは来生三姉妹だったんですが、4姉妹となると、ROSIEは三姉妹に末っ子が増えたという点では海街ダイアリーのすずですけど、感覚的には姉たちにも譲らない面もある若草物語のエイミーの方が近いかもしれません。
他のSirenシリーズの姉妹たちが個性あふれているように、ROSIEにも単なる上下のランクに収まらない独特の音の魅力があります。
ROSIEは全国各地のお店でも試聴機が用意されていますので、そのROSIEの魅力を是非確かめてください。
2016年05月16日
ラズベリーパイのオーディオ日記 Moode Audio 2.6のAP機能とラズパイ3のパワー
Moode Audio 2.6のテストリリース(TR)が入手可能となったので、さっそくAPモードをはじめとして試してみました。(現時点でTR4)
APモードはWiFiルーターがなくてもスマートフォンとラズパイを直結できるもので、ラズパイ3の内蔵WiFiでも動作します。
今回は内蔵WiFiで使うためにRaspberry PI 3を使用しました。これに今回はUSB DACとしてLH labsのGeek Out 450を使用しています。
ちなみにMoode AudioはOSコアがJessie-liteをベースにしたMoodeOS1.0と呼称するものに変わったようです。
Moode Audio 2.6(テストリリース)はホームページのTest Codeボタンからダウンロードできます。インストールすると特に設定もなく、MoodeというWiFiネットワーク名がiPhoneのWiFi画面に出てきますのでそれを選択してパスワードはmoodeaudioで入ります。
立ち上げたときに普通にWiFi設定をしているとそれが優先となり、AP機能は働きません。AP機能のオンオフと言うボタンはないようです。WiFi設定をしていても、そのネットが見つからない場合とか、WiFi設定をしていない場合にAP機能が働くようです。AP機能使うとインターネットを見られないのでこれは場合によりけりです。ただMPoDはAP機能の方が早くプレーヤーを見つけられるような気がします。
使用するプラットフォームをラズパイ2からラズパイ3に更新して面白いのはアップサンプリングです。ラズパイ3では192kどころか、384kHz/32bitのリサンプリングが可能で、しかもSoXの最高品質でリサンプリングできます。ラズパイ2ではVolumioですけど96/24の中品質リサンプルどまりだったことを考えるとさすがすごいパワーです。これで32bitモードですから64bitモードだとさらに向上するでしょう。
背面の黒いケースがmSATA USBケース
またストレージにはpiCorePlayerで使えなかったmSATAの500GB SSDを使ったところ動作しました。
384/32でES9018K2MのGeek Outを動作させ、純A級増幅(かなり熱い)、無線ルーターも不要でリモートでiPhoneから500GBの音源を管理できます。その辺のノートPC顔負けのPCオーディオシステムです。ただSSDは使ってみるとやはり動作が不安定なのでいまはUSB メモリを使ってます。
Geek OutやSSDの使用を考えるとPi3で化された電源も効いているのかもしれません。Geek outでは384kHzでロックしたのをLEDで確認しました。
とはいえバッテリーはいつもの2500mAh(1A)を使うとこんな感じで容赦なく使ってるとだいたい一時間でなくなりました。なかなか音が良いので軽くするよりも、大きなバッテリー付けたいシステムです。
いまは4000mAhのバッテリーを使ったますが、一応これで2時間はカバンの中に入れてもファンレスで熱暴走せずに動作するのを確認しました。ラズパイ3のSOCには放熱ブロックを付けています。
ただ純A級増幅をするGeek Outもラズパイ3も熱くなります。Geek Outは一秒以上は触れない感じ、放熱ブロックは一瞬でも触れません。
実際音質はかなり良いです。冗談で組んだけど冗談じゃないくらい良いですね。このなんだかよくわからないポータブルオーディオデバイス、結構いけます。音質が力強くひずみが少ない感じです。Moode AudioだとリサンプリングはSoXを使用するのですけど、SoX very highでリサンプリングしたときにデジタルフィルターがかかったような歪み感を減らす効果が同時にあるような気がします。音が細かくなると言うよりもむしろあいまいさがなく正確になるという感じです。
問題は384/32再生時にMPodでアルバムアートを多数MPDから取り出すときなど、パチパチとノイズが乗りますね。たぶん前に書いたUSBとWiFiの同一パスの競合によるラズパイならではの干渉問題だと思います。
GPIO経由のUSB拡張ボードがあればよいのですが、意外とないのですよね。
本日Raspberry PIではZeroのV1.3が発表されてカメラコネクションポートがZeroに追加されました。Raspberry Piファウンデーションもかなりやる気を見せてますね。iPhoneもカメラコネクションで音楽出してるんですから、パイゼロもこのカメラコネクションで音楽を出せるようになってほしいものです。
APモードはWiFiルーターがなくてもスマートフォンとラズパイを直結できるもので、ラズパイ3の内蔵WiFiでも動作します。
今回は内蔵WiFiで使うためにRaspberry PI 3を使用しました。これに今回はUSB DACとしてLH labsのGeek Out 450を使用しています。
ちなみにMoode AudioはOSコアがJessie-liteをベースにしたMoodeOS1.0と呼称するものに変わったようです。
Moode Audio 2.6(テストリリース)はホームページのTest Codeボタンからダウンロードできます。インストールすると特に設定もなく、MoodeというWiFiネットワーク名がiPhoneのWiFi画面に出てきますのでそれを選択してパスワードはmoodeaudioで入ります。
立ち上げたときに普通にWiFi設定をしているとそれが優先となり、AP機能は働きません。AP機能のオンオフと言うボタンはないようです。WiFi設定をしていても、そのネットが見つからない場合とか、WiFi設定をしていない場合にAP機能が働くようです。AP機能使うとインターネットを見られないのでこれは場合によりけりです。ただMPoDはAP機能の方が早くプレーヤーを見つけられるような気がします。
使用するプラットフォームをラズパイ2からラズパイ3に更新して面白いのはアップサンプリングです。ラズパイ3では192kどころか、384kHz/32bitのリサンプリングが可能で、しかもSoXの最高品質でリサンプリングできます。ラズパイ2ではVolumioですけど96/24の中品質リサンプルどまりだったことを考えるとさすがすごいパワーです。これで32bitモードですから64bitモードだとさらに向上するでしょう。
背面の黒いケースがmSATA USBケース
またストレージにはpiCorePlayerで使えなかったmSATAの500GB SSDを使ったところ動作しました。
384/32でES9018K2MのGeek Outを動作させ、純A級増幅(かなり熱い)、無線ルーターも不要でリモートでiPhoneから500GBの音源を管理できます。その辺のノートPC顔負けのPCオーディオシステムです。ただSSDは使ってみるとやはり動作が不安定なのでいまはUSB メモリを使ってます。
Geek OutやSSDの使用を考えるとPi3で化された電源も効いているのかもしれません。Geek outでは384kHzでロックしたのをLEDで確認しました。
とはいえバッテリーはいつもの2500mAh(1A)を使うとこんな感じで容赦なく使ってるとだいたい一時間でなくなりました。なかなか音が良いので軽くするよりも、大きなバッテリー付けたいシステムです。
いまは4000mAhのバッテリーを使ったますが、一応これで2時間はカバンの中に入れてもファンレスで熱暴走せずに動作するのを確認しました。ラズパイ3のSOCには放熱ブロックを付けています。
ただ純A級増幅をするGeek Outもラズパイ3も熱くなります。Geek Outは一秒以上は触れない感じ、放熱ブロックは一瞬でも触れません。
実際音質はかなり良いです。冗談で組んだけど冗談じゃないくらい良いですね。このなんだかよくわからないポータブルオーディオデバイス、結構いけます。音質が力強くひずみが少ない感じです。Moode AudioだとリサンプリングはSoXを使用するのですけど、SoX very highでリサンプリングしたときにデジタルフィルターがかかったような歪み感を減らす効果が同時にあるような気がします。音が細かくなると言うよりもむしろあいまいさがなく正確になるという感じです。
問題は384/32再生時にMPodでアルバムアートを多数MPDから取り出すときなど、パチパチとノイズが乗りますね。たぶん前に書いたUSBとWiFiの同一パスの競合によるラズパイならではの干渉問題だと思います。
GPIO経由のUSB拡張ボードがあればよいのですが、意外とないのですよね。
本日Raspberry PIではZeroのV1.3が発表されてカメラコネクションポートがZeroに追加されました。Raspberry Piファウンデーションもかなりやる気を見せてますね。iPhoneもカメラコネクションで音楽出してるんですから、パイゼロもこのカメラコネクションで音楽を出せるようになってほしいものです。
2016年05月12日
ポスト3.5mmの新顔、インテルの提唱するUSB-Cデジタルオーディオ
最近のポータブルオーディオ界のトピックの一つにiPhoneの3.5mmプラグがなくなるのではないかと言う噂があります。これはさらなる薄型を進めるためにはもう3.5mmの端子が厚すぎると言うわけですね。実際に他の薄型を標榜する海外のスマートフォンではイヤフォン端子を排してしまっているのもすでにいくつか出ています。
この3.5mmステレオミニ端子は初代Walkmanで初めて採用されたものです(3.5mmモノはもっとはるかに古い)。それがデファクトスタンダードになったという経緯があります。それではこの3.5mmステレオミニ端子がなくなってしまったら、そのあとはどうするのか、と言うのはいくつかの候補があります。まずBluetooth、そしてiPhoneならライトニング端子があります。Audeze SINEのライトニングケーブルはなかなか好評です。
そしてもうひとつ新しい可能性が出てきました。それがインテルの提唱するUSB-Cオーディオ端子です。Ananda techに詳しい記事が載っています。
http://www.anandtech.com/show/10273/intel-proposes-to-use-usb-typec-cables-to-connect-headsets-to-mobile-devices
これはチャージやデータ交換用のスマートフォンのUSB-C端子をそのまま音楽用に使うというわけで、Appleのライトニングのインテル版みたいなものです。
USBというとああデジタル出力専用ね、と思うかもしれませんが、USB-Cにはサイドバンド・ユーティリティ(SBU-1,SBU2)というピンアサインがあり、これはなにを通してもかまいません。つまりアナログ信号も通せます。またサイドバンドの名の通りに、ここの伝送は他のメインの信号伝送とは独立しています。つまりデータの転送をしながら、アナログ出力でオーディオを聴くと言うこともできます。ただ規格がまだできていないのでアナログ伝送まで含められるかはわかりません。
Anandatechによるとこの仕様はまだ完全に決まってないが、USB オーディオクラス2.0の仕様にも影響を与えるかもしれないと言います。たとえば電源供給とか、同期の仕方などです。
またAnandatechの別記事によると、このUSB-Cオーディオに即したチップが出てきたようです。ConexantのCX20985とCX20899です。
http://www.anandtech.com/show/10311/conexant-introduces-usb-c-digital-audiocompliant-chips
これはいわゆるスマートフォンのオーディオCODECチップ(ADCとDACを兼ねるIC)になるとおもいます。これが今年の2Qなかには出荷できるということなので、早ければ今年後半にはUSB-Cオーディオを採用したスマートフォンが登場するのではないかと言うこと。まだUSB-C自体が規格化されていませんが、これらはUSB-Cオーディオに対応しているとのこと。インテルと協業関係なのでしょう。
CX20985はコンパクトで48kHzどまりですが、ヘッドセットに特化したものでイコライザ内蔵、カップリングコンデンサ内蔵などヘッドセットなど機器を簡単に接続できるようになっています。目的はおもにスカイプ用のヘッドセットのサポートにあるようです。
CX20899は大型でおそらくスマートフォンの外に付けるデバイス用。こちらはDSP内蔵、ハイレゾ対応、SPDIFやI2S対応でオーディオ用途も考慮されているようです。
具体的なチップも出てきているのでインテルは着々と地盤固めをしているように思えます。
基本的にはPCやAndroid向けですが、AppleもEUでは端子を独自ではなくUSBに変えるように勧告されてもいますのでどうなるかはわかりませんけれども。。
この3.5mmステレオミニ端子は初代Walkmanで初めて採用されたものです(3.5mmモノはもっとはるかに古い)。それがデファクトスタンダードになったという経緯があります。それではこの3.5mmステレオミニ端子がなくなってしまったら、そのあとはどうするのか、と言うのはいくつかの候補があります。まずBluetooth、そしてiPhoneならライトニング端子があります。Audeze SINEのライトニングケーブルはなかなか好評です。
そしてもうひとつ新しい可能性が出てきました。それがインテルの提唱するUSB-Cオーディオ端子です。Ananda techに詳しい記事が載っています。
http://www.anandtech.com/show/10273/intel-proposes-to-use-usb-typec-cables-to-connect-headsets-to-mobile-devices
これはチャージやデータ交換用のスマートフォンのUSB-C端子をそのまま音楽用に使うというわけで、Appleのライトニングのインテル版みたいなものです。
USBというとああデジタル出力専用ね、と思うかもしれませんが、USB-Cにはサイドバンド・ユーティリティ(SBU-1,SBU2)というピンアサインがあり、これはなにを通してもかまいません。つまりアナログ信号も通せます。またサイドバンドの名の通りに、ここの伝送は他のメインの信号伝送とは独立しています。つまりデータの転送をしながら、アナログ出力でオーディオを聴くと言うこともできます。ただ規格がまだできていないのでアナログ伝送まで含められるかはわかりません。
Anandatechによるとこの仕様はまだ完全に決まってないが、USB オーディオクラス2.0の仕様にも影響を与えるかもしれないと言います。たとえば電源供給とか、同期の仕方などです。
またAnandatechの別記事によると、このUSB-Cオーディオに即したチップが出てきたようです。ConexantのCX20985とCX20899です。
http://www.anandtech.com/show/10311/conexant-introduces-usb-c-digital-audiocompliant-chips
これはいわゆるスマートフォンのオーディオCODECチップ(ADCとDACを兼ねるIC)になるとおもいます。これが今年の2Qなかには出荷できるということなので、早ければ今年後半にはUSB-Cオーディオを採用したスマートフォンが登場するのではないかと言うこと。まだUSB-C自体が規格化されていませんが、これらはUSB-Cオーディオに対応しているとのこと。インテルと協業関係なのでしょう。
CX20985はコンパクトで48kHzどまりですが、ヘッドセットに特化したものでイコライザ内蔵、カップリングコンデンサ内蔵などヘッドセットなど機器を簡単に接続できるようになっています。目的はおもにスカイプ用のヘッドセットのサポートにあるようです。
CX20899は大型でおそらくスマートフォンの外に付けるデバイス用。こちらはDSP内蔵、ハイレゾ対応、SPDIFやI2S対応でオーディオ用途も考慮されているようです。
具体的なチップも出てきているのでインテルは着々と地盤固めをしているように思えます。
基本的にはPCやAndroid向けですが、AppleもEUでは端子を独自ではなくUSBに変えるように勧告されてもいますのでどうなるかはわかりませんけれども。。
2016年05月06日
64 AudioのADELモジュールによる音質の差(S1とB1)
ながらくかかりましたが、Kickstarterで頼んだ64 Audio ADELシリーズのKickstarterモデルが届きました。これは一般販売はされないと思いますが、X2と言うモデルです。
X2はKickstarterのダイナミック型であるControlがポシャってその代替の2ドライバーモデルです。その切り替えに時間がかかって到着が遅れました。
もともとControlの代替にはU1というモデルを作る予定だったのですが、ユーザーフィードバックでより小さいシェルで、耳掛けではなくストレートイン可能な手軽なものという要望にこたえて、Uシリーズとは別にX2が作られました。作りは3Dプリントという感じでちょっとチープです。
しかし音質は素晴らしくKickstarter価格ではありますが、$100という点からは想像つかないくらい高い音質でADELの音の可能性が感じられます。独特の透明感と立体的な音の広がり方がADELの特徴ですね。
リケーブルできないのが惜しいくらい音が良いので、独特な音の魅力があって1964 earsがADELよりになる理由もわかります。
このX2を用いてADELモジュールを変えたことによる音質の違いと言うのを調べてみたのが本稿の趣旨です。
* ADELモジュールと音質の変化
この64 Audio ADELシリーズの中核をなすADELモジュールについてはKickstarterで登場した時に紹介しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/408595702.html
ADELモジュールは「第二の鼓膜」というキャッチフレーズから聴覚保護のための機構とよくとらえられています。それは正しいことではありますが、すべてでもありません。それはこのADELモジュールにより音質を向上させることができ、さらにモジュールを交換することで音質傾向を変えることができるからです。
ADELモジュールによる音質の向上についてはホームページに説明がありますが、ADELモジュールで音の信号とは別に音の空気圧(pneumatic pressure)を抜くことで位相的によりよい音質が得られ、音が立体的になるとともに、楽器の分離が優れたものになると言うことです。またモジュールを交換することによって音質傾向が変えられるのは小技ということではなく、はじめからメーカーによって設定された仕様です。
現在64 AudioのADELシリーズを購入すると付属しているシルバーのADELモジュールはS1と呼ばれます。メーカーが初期のころから公言している他のモジュールにはMAM(マニュアルモジュール)があります。そして最近出たのがブラックのB1です。S1とB1は色だけではなく音質が異なります。S1とB1はMAMに対してAutoモジュールと呼ばれますが、実際はプリセットモジュールといったほうが正しいと思います。S1とB1はADELモジュールのベントとしての外気への開度がことなります。S1がもっとも閉じた状態に近く、B1はもっとも開いた状態に近いのですがフルオープンではありません。このためS1とB1では音質傾向と遮音性に違いがあります。(遮音性についてS1は-18dB、B1は-10dB)
64 Audioでは将来的には出荷時にS1かB1を選ぶようにするようですが、これはまだ分かりません。ちなみにS1がシルバーのみで、B1がブラックのみなのはそれぞれ2種類のカラーを用意すると手間がかかると言うことのようです。ちなみにB1モジュールはミックスウェーブでも国内取り扱い予定だそうです。
B1モジュールは上のような小さなケースに入ってきます。これはスペアを入れておくにも好都合です。
まずS1を付けたままのX2の音質ですが、AK380とAMPで聴きました。まず高い透明感と立体感のある独特の音の広がり方に圧倒されます。実際にこの二点がADELの音質的な特徴ともいえると思います。聴覚保護というとなんとなくまったりとした甘い音を考えるかもしれませんが、X2の音はかなり明瞭で解像力も高いものを感じます。
$100とは到底思えないほど音質はかなり高いです。$100はKickstarter価格ではあり等価と思われるU2となるとそれなりの値段になりますが、それでも同価格帯の中ではかなり秀でているでしょう。低域はかなり豊かです。
ADELモジュールは爪をかけてぐいっと引くと外れます。引き出すと第二の鼓膜の振動板がわかると思います。
B1に変えると低音が抑えられてヴォーカルがよりクリアに聞こえるようになります。周波数特性的にはS1よりもフラットに近くなっていると感じます。音も全体に整った感じがします。またドラムのアタックがより鋭くなったように聞こえます。ただしB1だと低域が物足りないと思う人も多いかもしれません。
ふたたびS1に戻すとダブルベースとヴォーカルがごちゃっとして混濁しているようにも感じます。B1は全体にもっとすっきりとしています。パーカッションやダブルベースのピチカートはB1に比べるとやや鈍く感じます。ただ低音がたっぷりあるのでジャンルによってはS1の方が好ましいことも多いと思います。
ちなみにどちらもつけずにベント穴をフルオープンで聴いても音楽は再生できますが、かなり気が抜けた音になってしまうので実用にたえません。ADELベントはそれなりになにかしているということですね。
このようにどっちもよい点があるので、その開度を手動で調整可能なMAM(マニュアルモジュール)も発売が待たれるところです。
またADELではS1やB1をイヤチップに直接装着して耳栓にするアクセサリーがあるようですが未発売です(海外でも)。
このように私がADELに注目していることはBAドライバーとベントの関係です。
昨年ハイブリッドが隆盛を極めたおかげでイヤフォンとベントの関係について焦点が集まりました。FitEar Airのようにベントレスの道を歩むものもあります。
もちろんエアフローはイヤフォンでは重要なテーマではあるし、これらのベントは主に従来からあるようなダイナミックドライバーに関するもので、一般的にはダイアフラムのPET素材の脆弱性についての対策です。しかしながら、最近ではこの64 ADELのようにBAドライバーなのにベントを持ったものも出てきました。他にもWestoneのAM Proなどがあります。
AM Proの場合は主に外の音を聴くという目的がありADELとは異なりますが、音質もまたちょっと個性的なので気にはなっています。外の音を聴くと言うアンビエント機能のためにベントを開けると言うのはUE11時代などのカスタムにもあったのでいままでにBAでベントと言うのがなかったわけではないのですが、UE11アンビエントモデルなどはこんな複雑ではなかったと思います。
いずれにせよADELモジュールを変えて音質が変わると言うことは、BAでもベント次第で音質が変わると言うことです。これは(うちのブログで取り上げる他の話題と同様に)まだよくわからないことの一つではあるが気になるもので、ちょっと興味あるテーマではあります。
X2はKickstarterのダイナミック型であるControlがポシャってその代替の2ドライバーモデルです。その切り替えに時間がかかって到着が遅れました。
もともとControlの代替にはU1というモデルを作る予定だったのですが、ユーザーフィードバックでより小さいシェルで、耳掛けではなくストレートイン可能な手軽なものという要望にこたえて、Uシリーズとは別にX2が作られました。作りは3Dプリントという感じでちょっとチープです。
しかし音質は素晴らしくKickstarter価格ではありますが、$100という点からは想像つかないくらい高い音質でADELの音の可能性が感じられます。独特の透明感と立体的な音の広がり方がADELの特徴ですね。
リケーブルできないのが惜しいくらい音が良いので、独特な音の魅力があって1964 earsがADELよりになる理由もわかります。
このX2を用いてADELモジュールを変えたことによる音質の違いと言うのを調べてみたのが本稿の趣旨です。
* ADELモジュールと音質の変化
この64 Audio ADELシリーズの中核をなすADELモジュールについてはKickstarterで登場した時に紹介しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/408595702.html
ADELモジュールは「第二の鼓膜」というキャッチフレーズから聴覚保護のための機構とよくとらえられています。それは正しいことではありますが、すべてでもありません。それはこのADELモジュールにより音質を向上させることができ、さらにモジュールを交換することで音質傾向を変えることができるからです。
ADELモジュールによる音質の向上についてはホームページに説明がありますが、ADELモジュールで音の信号とは別に音の空気圧(pneumatic pressure)を抜くことで位相的によりよい音質が得られ、音が立体的になるとともに、楽器の分離が優れたものになると言うことです。またモジュールを交換することによって音質傾向が変えられるのは小技ということではなく、はじめからメーカーによって設定された仕様です。
現在64 AudioのADELシリーズを購入すると付属しているシルバーのADELモジュールはS1と呼ばれます。メーカーが初期のころから公言している他のモジュールにはMAM(マニュアルモジュール)があります。そして最近出たのがブラックのB1です。S1とB1は色だけではなく音質が異なります。S1とB1はMAMに対してAutoモジュールと呼ばれますが、実際はプリセットモジュールといったほうが正しいと思います。S1とB1はADELモジュールのベントとしての外気への開度がことなります。S1がもっとも閉じた状態に近く、B1はもっとも開いた状態に近いのですがフルオープンではありません。このためS1とB1では音質傾向と遮音性に違いがあります。(遮音性についてS1は-18dB、B1は-10dB)
64 Audioでは将来的には出荷時にS1かB1を選ぶようにするようですが、これはまだ分かりません。ちなみにS1がシルバーのみで、B1がブラックのみなのはそれぞれ2種類のカラーを用意すると手間がかかると言うことのようです。ちなみにB1モジュールはミックスウェーブでも国内取り扱い予定だそうです。
B1モジュールは上のような小さなケースに入ってきます。これはスペアを入れておくにも好都合です。
まずS1を付けたままのX2の音質ですが、AK380とAMPで聴きました。まず高い透明感と立体感のある独特の音の広がり方に圧倒されます。実際にこの二点がADELの音質的な特徴ともいえると思います。聴覚保護というとなんとなくまったりとした甘い音を考えるかもしれませんが、X2の音はかなり明瞭で解像力も高いものを感じます。
$100とは到底思えないほど音質はかなり高いです。$100はKickstarter価格ではあり等価と思われるU2となるとそれなりの値段になりますが、それでも同価格帯の中ではかなり秀でているでしょう。低域はかなり豊かです。
ADELモジュールは爪をかけてぐいっと引くと外れます。引き出すと第二の鼓膜の振動板がわかると思います。
B1に変えると低音が抑えられてヴォーカルがよりクリアに聞こえるようになります。周波数特性的にはS1よりもフラットに近くなっていると感じます。音も全体に整った感じがします。またドラムのアタックがより鋭くなったように聞こえます。ただしB1だと低域が物足りないと思う人も多いかもしれません。
ふたたびS1に戻すとダブルベースとヴォーカルがごちゃっとして混濁しているようにも感じます。B1は全体にもっとすっきりとしています。パーカッションやダブルベースのピチカートはB1に比べるとやや鈍く感じます。ただ低音がたっぷりあるのでジャンルによってはS1の方が好ましいことも多いと思います。
ちなみにどちらもつけずにベント穴をフルオープンで聴いても音楽は再生できますが、かなり気が抜けた音になってしまうので実用にたえません。ADELベントはそれなりになにかしているということですね。
このようにどっちもよい点があるので、その開度を手動で調整可能なMAM(マニュアルモジュール)も発売が待たれるところです。
またADELではS1やB1をイヤチップに直接装着して耳栓にするアクセサリーがあるようですが未発売です(海外でも)。
このように私がADELに注目していることはBAドライバーとベントの関係です。
昨年ハイブリッドが隆盛を極めたおかげでイヤフォンとベントの関係について焦点が集まりました。FitEar Airのようにベントレスの道を歩むものもあります。
もちろんエアフローはイヤフォンでは重要なテーマではあるし、これらのベントは主に従来からあるようなダイナミックドライバーに関するもので、一般的にはダイアフラムのPET素材の脆弱性についての対策です。しかしながら、最近ではこの64 ADELのようにBAドライバーなのにベントを持ったものも出てきました。他にもWestoneのAM Proなどがあります。
AM Proの場合は主に外の音を聴くという目的がありADELとは異なりますが、音質もまたちょっと個性的なので気にはなっています。外の音を聴くと言うアンビエント機能のためにベントを開けると言うのはUE11時代などのカスタムにもあったのでいままでにBAでベントと言うのがなかったわけではないのですが、UE11アンビエントモデルなどはこんな複雑ではなかったと思います。
いずれにせよADELモジュールを変えて音質が変わると言うことは、BAでもベント次第で音質が変わると言うことです。これは(うちのブログで取り上げる他の話題と同様に)まだよくわからないことの一つではあるが気になるもので、ちょっと興味あるテーマではあります。
2016年05月02日
ヘッドフォン祭2016春
恒例のヘッドフォン祭が開催されました。今回もと言うか、当日朝に電車が止まるというトラブルがあり、天気雨が降ると言う波乱の幕開けではありましたが。内容はまた興味深いものでした。
今回の目玉はやはりゼンハイザーの新オルフェウス、HE-1でしょう。
ゼンハイザー HE-1 「新オルフェウス」
私は昨年の末にオリジナルのオルフェウス(HE-90)を聞いてきたばかりだし、ベビーオルフェウス(HE-60)の方は持っているのですが、HE-1の音はオリジナルのオルフェウスとはかなり異なった音傾向です。
「オルフェウス」 HE-90
HE-90の暖かく滑らかな音に比べると、だいぶ硬質でシャープ、音傾向で言うとどちらかというとHE-60に近いですね。もちろん音質的にはHE-1の方が大きく上回っています。実のところ、静電型(コンデンサー型)はバイアス電圧が必要なので専用アンプと対にして語られることがどうしても多くなります。これは後でMrSpeakerの静電型をライトニングとブルーハワイで聴き比べた時にも感じます。
オリジナルオルフェウスのHE-90の音の印象はブラデリウスの真空管アンプの音の影響が強いと思いますが、HE-1もまた専用アンプの影響が強いと思います。
HE-1の音はだいぶ余裕があると言う感じで、ダイナミックレンジが広く全体に余裕がある音と聴こえます。また低域はだいぶ量感がありますが、同時にコンデンサーらしい細やかさというか音のトランジェントの速さを感じます。ゼンハイザーのアクセルは今回来てませんけど、彼が言うにはHD650を考えたということで低音はそれなりに強くなっています。
置いてある試聴曲ではノラジョーンズとかパットメセニーが良かったと思います。パットメセニー聴くと音はすごく速いという感じで音は間違いなくコンデンサータイプの音です。
ちなみに機能としては真中のノブはクロスフィードになっているようです。
Ultrasone Tribute 7
またもうひとつの今回の目玉はなんといってもUltrasoneのTribute 7です。ヘッドフォン祭と言うか、中野・フジヤさんと言うとやはりEdition 7が中心となってヘッドフォン好きの文化を作ってぃったわけなので、ここでTribute 7の発表があると言うことは感慨があります。
レビューは下記リンクに書いています。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/436871772.html
このほかではMrSpeakerの静電型ヘッドフォンの発表会がありました。
ここではHead-FiのJudeもプレゼンテーターとしてコメントをしました。こういう我々のオーディオをパーソナル・オーディオって言ってるところが興味深いところです。
MrSpeakerの静電型ヘッドフォンのポイントはあまり高くなりすぎないということ、快適性重視ということで、Etherのハウジングを流用するようです。また既存の機材(アンプ)を使えるということ、そして音的にはダイナミック型顔負けの低域の性能ということだそうです。既存のアンプを使うと言う点については、互換性はSTAX Proとなるようです。
Ether statとブルーハワイ(左)、ライトニング(右)
試聴ではCavalli ライトニングとHeadampのブルーハワイ(真空管)を使ってました。この機材選択がいかにもMrSpeakerがHead-Fi文化をベースにしていると感じます。いずれにせよアンプについては協業関係を模索中ということで変わるかもしれません。
静電型にはSTAX Pro以外にもいくつか規格があって、オルフェウスもHE-90とHE-60では異なりますので念のため。
* プレーヤー・アンプ系
またDAPではAstell & KernのAK300が登場しました。これはAK第3世代の普及品に位置するもので、シングルDACとなりAK320の下位となります。AK320が第二世代のAK120II的だと言えば、AK300はAK100II的と言えるでしょう。
Ak300とレコーダー
ただし第二世代と違ってポイントはAK300シリーズの周辺機器との互換性があると言うことで、この点については面白いところです。カラーがブラックと言う点もよいですね。
またAK300シリーズの周辺機器であるレコーダーも発表されています。
Mojoの新アクセサリーはまだですが、ジョンフランクスに私のMojoラズベリーパイシステムを聞いてもらったりしました。なかなか興味深そうにしてました。
* ヘッドフォン
Audeze SINE
ヘッドフォンでは待望のAudezeのSINE(サイン)が日本に登場しました。コンパクトなポータブルの平面型です。音もよいです。SINEもHE-1も思ったけど、やはり平面型は音が速いというかトランジェントが高いですね(SINEとHE-1が同じという意味ではありませんが)。音の歯切れが良いです。SINEは特にiPhoneとライトニングDAC内蔵ケーブルで聞いた音が良いですね。このケーブルはうわさ通りになかなか良くできています。
Pendulamic T1
こちちらは新星Pendulamic(ペンデュラミック)のBTヘッドフォンです。宮地商会さんが取り扱い、フジヤさんでもおけるようです。S1のレビューを書きましたが、T1は低音も良くでて音質よいです。これはデモ機をおいていってもらったのでそのうちにまた記事を書きます。
HiFiman edition-s
HiFimanは独自の流通となって新規一点と言う感じです。こちらはHiFima edition-S。マグネットのカバーを外すことで開放型と密閉型をきりかえられるというもの。たしかにそれっぽく音は変わります。
今回面白かったのは前方定位するというCrosszoneヘッドフォンです。
Crosszoneヘッドフォン
Crosszoneは片側に三つドライバーがあって、画像で見えてる右のがツイーター、下のがウーファー、また反対チャンネルのドライバーがハウジングの張り出しに逆向きについてチューブで遅延させてこの写真の右下くらいに出るとのこと。
なぜ左右チャンネルの音が片方のハウジングから出せるかというと、ケーブルの音が両ハウジングに両チャンネルとも入ってます。で4極のプラグです。このためケーブルを左右反対にさしてもオーケーとのこと。ある意味便利というのか。。
Crosszoneの効果は実のところは微妙なところはありますが、多少前にヴォーカルが来るようには思います。前方定位と言うよりは独特の音場感のヘッドフォンと言う感じです。正直S-Logic系統よりも良いかと言うと、ヘッドフォン自体の性能と言う意味でどうなんでしょうか。
たしかに音の作り手からするとスピーカーでモニターして作ったんだからヘッドフォンだと正しく再現されないと言うかもしれませんが、受け手としては音的にはスピーカーはスピーカー、ヘッドフォンはヘッドフォンのそれぞれ良い点があるし、それで良いかなと思います。ヘッドフォンは音のダイレクト感と言うか独自の良さがあると思いますし、それがたぶん新しい時代の魅力なのでしょう。それをなくしてまで頭内定位云々にこだわる必要があるのかと言うとちょっと考えてしまいます。
これはクロスフィードも同じで、いままでわたしもHeadRoomからはじまってK1000も含めてプレーヤーの機能なども、数多くのクロスフィードとか左右の音を混ぜると言う試みを聴いてきましたが、これを使い続けようと思うものはあまりないように思います。ほとんどスピーカーといった方が良いK1000を除けば一番良かったのは特許問題にもなったマイヤーのクロスフィードですが、これも常時オンにしておきたいとまでは思いませんでした。
これはもちろん"個人的な感想"ですし、一方でクロスフィードが好きと言う人もまたいるので、これはもちろんひとそれぞれの好みではあります。そういう意味ではプレーヤーやアンプの機能として簡単にオンオフできるようなクロスフィードの仕組みが一番良いようには思います。もちろんいろんな選択肢があるということは良いことだと思います。
むしろヘッドフォンへのスピーカー世界の応用と言う点ではやはりAQのNighthawkのアプローチがただしいようにも思います。無理してヘッドフォンをスピーカーのようにするよりは、ヘッドフォンが主役になるには欠けていた点を長年主役だったスピーカーの先例に見習うと言う感じでしょうか。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/414941920.html
* イヤフォン
イヤフォンではJabenの新作、セラミックドライバーとダイナミックのハイブリッドが興味深く、また独特の音場感がありました。
セラミックドライバーもダイナミックだよね?と聞いたら違うようでなにか特殊な形式のようです。(わからないけどハイルとかそういう感じのものらしい)。セラミックドライバーはスーパーツイーターとして使用してダイナミックはフルレンジのようです。これはカスタムも考慮しているようで、要チェックだと思います。
こちらは今回新参入のqdc(ミックスウェーブ扱い)です。ちなみにqdcがUEのOEMをやっているというのは単なる都市伝説と言うことです。ただし試聴機を聴くと音はかなり良いと思いました。
5SHは5ドライバー、スタンダード(=ユニバーサル)、HiFi(音楽愛好家向け)の意味です。8SLだと8ドライバー、スタンダード、Live(ミュージシャン向け)の意味だそう。Cはカスタムモデルです。
FLAT4チタン
こちらはFLAT4のチタンモデルです。前モデルよりもぐっと音はクリアでよく聴こえます。ハウジングのみならずチューニングもハウジングに合わせて変えているそうです。やはりFLAT4シリーズはなかなか音良いと思います。
* 周辺機器など
4.4mmバランスプラグ
統一規格として提唱された4.4mmバランスプラグ。おもったよりは小さいですね。ただ少し周りを見ると、スマートフォンが次々に3.5mmプラグさえ薄さのために廃止している現状を考えると、そうした世界のトレンドに比してどうなのか、と言うこともあるとおもいます。もちろん4.4mmは6.3mmよりも音は良くできると言うことで、オーディオ的には良いでしょうし、いろいろと考慮点はあると思います。いろんなのがあると選択肢が広いし、面白いという意味では良いんですが、これに統一と言うのはどうなんでしょう。すでに日本では2.5mmがデファクトスタンダード化していますしね。
それと気になるのは4.4mmを据え置きとポータブルの統一をしようとしている点です。普通は能率の低いHD800のようなヘッドフォンをポータブルでは使わないし、能率の高いカスタムイヤフォンを据え置きでは使わないですから、据え置きとポータブルの両用と言う点はあまり意味がないように思えます。ポータブル機器でHD800バランスが聴けたらそれは便利と言うかもしれませんが、それは4.4mmは2.5mmよりも音が良いから採用すると言うことと矛盾します。音の良さを追求するならば最適の組み合わせで聴くべきでしょう。また据え置きとポータブルではケーブルの長さも違います。スピーカーとは異なってヘッドフォンやイヤフォンはいくつも所持して使い分けるもの、ということもあります。バランスをやる人ならば特にそうでしょう。
これを唱えている人たちは本当に家や外でバランスヘッドフォンやイヤフォンを常用して使っているのでしょうか、 あるいはなぜ据え置きよりもポータブルの方がバランス端子の種類が多いのかということを調べてみたことはあるのでしょうか? そうすればQC(科学的手法)的に言うと「悪さ」はどこかを絞れるはずです。
上で書いたクロスフィードのところでもそう思ったのですが、ヘッドフォンやイヤフォンが流行りと言うことで、他のオーディオ領域からいろいろと参入してくるのは良いのですが、ヘッドフォンはヘッドフォン世界で、クロスフィードにしろ、バランスにしろ、たくさんの歴史と蓄積がありその理由がありますので、まず先人の知恵を調べてみる、尊重すると言うことが大切なように思います。そのためにもヘッドフォン祭があります。まずここに来てみる、文化に触れる、自分で使ってみると言うのが大事だと思います。なによりもこの「ヘッドフォンオーディオ」の世界はボトムアップ主導で来たのですから。
話題のMQAはヘッドフォン祭でもいくつか出ていました。
パイオニアのDP-X1ではFLACとMQAで比較をしていました。ちなみにMQAでは.mqaと拡張子があるように見えますが、拡張子として有効なのはあくまで末尾の3文字なので、xx.mqa.flacの場合は.mqaは拡張子ではなくファイル名の一部となります。
左:Brooklym、右:DP-X1
DP-X1ではMQAのオンオフはすぐに聴き取れる効果の違いが分かりやすいように思えました。
一方でMytek BrooklynもMQA対応されてます。これはオンオフでの効果が微妙でした。これを考えるとファームの作り方も関係があるかもしれません。いずれにせよサイズのコンパクト化と言うメリットはあります。
Brooklynの音質自体はかなり良いと思いました。やはりMytekはなかなか良いですね。
ちなみにMQAともうひとつのトレンドの軸のRoonはエミライさんのところでPlayPointのデモをしていたようです。
PAD Impressa
上はPADのヘッドフォンケーブル、Impressa。うちも最近使ってませんがスピーカーアンプのLINNクラウトの電源ケーブルは(液体の抜けた)PADなんですが、PADはなんだかんだと言われても音は良いように思います。なかなかソリッドでがっちりしたな音でした。11万円くらい?
また今回はNutubeの説明会に参加しました。
Nutubeはシミュレーターのようなものではなく、本当に真空になってアノードやフィラメントがある真空管だそうです。真空管は今でも使いますが、安定供給がネックなのでまずそこを探したということ。はじめは丸い形ではじめたようですが、施設がないので蛍光表示管に音を通したら、という発想をしたということです。それをがんばってオーディオ用に仕上げたということで、結果的に平たくなったということです。12AX7とよく比較がなされていましたが、基本的にはそれらのように前球的に使うようです。12ax7の2%の消費電力で5vで動作するそうです。ポータブルにもよいですね。
試聴ではNutubeとICEpowerの組み合わせのアンプを使っていました。
* お仕事
今回はわたしはヘッドフォンアワード2016とカスタム座談会の司会を行いました。
ヘッドフォンアワード2016では前回同様に司会進行を務めました。
ダブル受賞したSE Master-1
二日目にはアワードの盾がヘッドフォン会場の各ブースに置かれていましたが、この風景もそのうちヘッドフォン祭の春の恒例となるようにしていきたいですね。
カスタム座談会ではほとんどチャペルが満席と言う盛況ぶりでした。FitEar、Just Ear、くみたてLab、Canal Works、センサフォニックス、Westone、qdc、UM、Noble、JH Audio(順不同)のそうそうたるメーカーの代表者、代理店の方に登場いただきました。
今回はカスタムのシェルや耳型に関するテーマを扱いましたが、やはり一回一テーマが限界ですね。。少しずつ軌道修正しながら、良くしていきたいと思います。
次回はまだ決まってませんが、その場合はまたよろしくお願いします。
* Head-Fiジャパン
最後に今回のヘッドフォン祭で登場したHead-Fiジャパンについて補足いたします。
Head-Fiジャパンは今回のヘッドフォン祭でJudeが率先してブースに立って活動してたことでもわかるように、あのHead-Fiの公式な日本版です。それは日本人のための日本語でのHead-Fiという意味です。
Head-Fiジャパンの中心で運営しているのはWikiaジャパンという会社です。なじみのない方も多いと思いますが、Wikia (USA)はあのWikipediaの傘下でコミュニティやフォーラム活動(例えばStarwarsファンサイトとか)を担当する会社です。Head-FiのWkiaプラットフォームの強化の一環として今回のHead-Fiジャパンの話が出てきたという認識です。Wikia傘下なのでWikipediaのような形になるのではなく、あくまでフォーラム(掲示板)的な形態となると思いますが詳細はまだ分かりません。
Head-Fiジャパンの件でWikia USAのCraigという代表の一人とも昨年会ったのですが、私がびっくりするぐらいのヘッドフォンマニアでポタアン二段重ねとリケーブルしたAudezeをミーティングの場に持ってきてたのでちょっと驚きました。こうした点からもHead-Fiコミュニティに注目したのでしょう。
私はこのオーディオ世界ではブログや雑誌に書くほかにいろいろなことをやっていて、よく海外のメーカーの人から国内参入の話も受けるんですが、そういうときに日本のHead-Fiのようなコミュニティはどこだとよく聞かれます。そういうときにあちこちに掲示板があって、twitterがあって、と答えるしかありませんでした。そういう意味ではこうしたフォーラムと言うのはいままでにありそうでなかったように思います。
現在のサイトはこちらです。
http://ja.head-fi.wikia.com/wiki/Head-Fi_Japan
今回の目玉はやはりゼンハイザーの新オルフェウス、HE-1でしょう。
ゼンハイザー HE-1 「新オルフェウス」
私は昨年の末にオリジナルのオルフェウス(HE-90)を聞いてきたばかりだし、ベビーオルフェウス(HE-60)の方は持っているのですが、HE-1の音はオリジナルのオルフェウスとはかなり異なった音傾向です。
「オルフェウス」 HE-90
HE-90の暖かく滑らかな音に比べると、だいぶ硬質でシャープ、音傾向で言うとどちらかというとHE-60に近いですね。もちろん音質的にはHE-1の方が大きく上回っています。実のところ、静電型(コンデンサー型)はバイアス電圧が必要なので専用アンプと対にして語られることがどうしても多くなります。これは後でMrSpeakerの静電型をライトニングとブルーハワイで聴き比べた時にも感じます。
オリジナルオルフェウスのHE-90の音の印象はブラデリウスの真空管アンプの音の影響が強いと思いますが、HE-1もまた専用アンプの影響が強いと思います。
HE-1の音はだいぶ余裕があると言う感じで、ダイナミックレンジが広く全体に余裕がある音と聴こえます。また低域はだいぶ量感がありますが、同時にコンデンサーらしい細やかさというか音のトランジェントの速さを感じます。ゼンハイザーのアクセルは今回来てませんけど、彼が言うにはHD650を考えたということで低音はそれなりに強くなっています。
置いてある試聴曲ではノラジョーンズとかパットメセニーが良かったと思います。パットメセニー聴くと音はすごく速いという感じで音は間違いなくコンデンサータイプの音です。
ちなみに機能としては真中のノブはクロスフィードになっているようです。
Ultrasone Tribute 7
またもうひとつの今回の目玉はなんといってもUltrasoneのTribute 7です。ヘッドフォン祭と言うか、中野・フジヤさんと言うとやはりEdition 7が中心となってヘッドフォン好きの文化を作ってぃったわけなので、ここでTribute 7の発表があると言うことは感慨があります。
レビューは下記リンクに書いています。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/436871772.html
このほかではMrSpeakerの静電型ヘッドフォンの発表会がありました。
ここではHead-FiのJudeもプレゼンテーターとしてコメントをしました。こういう我々のオーディオをパーソナル・オーディオって言ってるところが興味深いところです。
MrSpeakerの静電型ヘッドフォンのポイントはあまり高くなりすぎないということ、快適性重視ということで、Etherのハウジングを流用するようです。また既存の機材(アンプ)を使えるということ、そして音的にはダイナミック型顔負けの低域の性能ということだそうです。既存のアンプを使うと言う点については、互換性はSTAX Proとなるようです。
Ether statとブルーハワイ(左)、ライトニング(右)
試聴ではCavalli ライトニングとHeadampのブルーハワイ(真空管)を使ってました。この機材選択がいかにもMrSpeakerがHead-Fi文化をベースにしていると感じます。いずれにせよアンプについては協業関係を模索中ということで変わるかもしれません。
静電型にはSTAX Pro以外にもいくつか規格があって、オルフェウスもHE-90とHE-60では異なりますので念のため。
* プレーヤー・アンプ系
またDAPではAstell & KernのAK300が登場しました。これはAK第3世代の普及品に位置するもので、シングルDACとなりAK320の下位となります。AK320が第二世代のAK120II的だと言えば、AK300はAK100II的と言えるでしょう。
Ak300とレコーダー
ただし第二世代と違ってポイントはAK300シリーズの周辺機器との互換性があると言うことで、この点については面白いところです。カラーがブラックと言う点もよいですね。
またAK300シリーズの周辺機器であるレコーダーも発表されています。
Mojoの新アクセサリーはまだですが、ジョンフランクスに私のMojoラズベリーパイシステムを聞いてもらったりしました。なかなか興味深そうにしてました。
* ヘッドフォン
Audeze SINE
ヘッドフォンでは待望のAudezeのSINE(サイン)が日本に登場しました。コンパクトなポータブルの平面型です。音もよいです。SINEもHE-1も思ったけど、やはり平面型は音が速いというかトランジェントが高いですね(SINEとHE-1が同じという意味ではありませんが)。音の歯切れが良いです。SINEは特にiPhoneとライトニングDAC内蔵ケーブルで聞いた音が良いですね。このケーブルはうわさ通りになかなか良くできています。
Pendulamic T1
こちちらは新星Pendulamic(ペンデュラミック)のBTヘッドフォンです。宮地商会さんが取り扱い、フジヤさんでもおけるようです。S1のレビューを書きましたが、T1は低音も良くでて音質よいです。これはデモ機をおいていってもらったのでそのうちにまた記事を書きます。
HiFiman edition-s
HiFimanは独自の流通となって新規一点と言う感じです。こちらはHiFima edition-S。マグネットのカバーを外すことで開放型と密閉型をきりかえられるというもの。たしかにそれっぽく音は変わります。
今回面白かったのは前方定位するというCrosszoneヘッドフォンです。
Crosszoneヘッドフォン
Crosszoneは片側に三つドライバーがあって、画像で見えてる右のがツイーター、下のがウーファー、また反対チャンネルのドライバーがハウジングの張り出しに逆向きについてチューブで遅延させてこの写真の右下くらいに出るとのこと。
なぜ左右チャンネルの音が片方のハウジングから出せるかというと、ケーブルの音が両ハウジングに両チャンネルとも入ってます。で4極のプラグです。このためケーブルを左右反対にさしてもオーケーとのこと。ある意味便利というのか。。
Crosszoneの効果は実のところは微妙なところはありますが、多少前にヴォーカルが来るようには思います。前方定位と言うよりは独特の音場感のヘッドフォンと言う感じです。正直S-Logic系統よりも良いかと言うと、ヘッドフォン自体の性能と言う意味でどうなんでしょうか。
たしかに音の作り手からするとスピーカーでモニターして作ったんだからヘッドフォンだと正しく再現されないと言うかもしれませんが、受け手としては音的にはスピーカーはスピーカー、ヘッドフォンはヘッドフォンのそれぞれ良い点があるし、それで良いかなと思います。ヘッドフォンは音のダイレクト感と言うか独自の良さがあると思いますし、それがたぶん新しい時代の魅力なのでしょう。それをなくしてまで頭内定位云々にこだわる必要があるのかと言うとちょっと考えてしまいます。
これはクロスフィードも同じで、いままでわたしもHeadRoomからはじまってK1000も含めてプレーヤーの機能なども、数多くのクロスフィードとか左右の音を混ぜると言う試みを聴いてきましたが、これを使い続けようと思うものはあまりないように思います。ほとんどスピーカーといった方が良いK1000を除けば一番良かったのは特許問題にもなったマイヤーのクロスフィードですが、これも常時オンにしておきたいとまでは思いませんでした。
これはもちろん"個人的な感想"ですし、一方でクロスフィードが好きと言う人もまたいるので、これはもちろんひとそれぞれの好みではあります。そういう意味ではプレーヤーやアンプの機能として簡単にオンオフできるようなクロスフィードの仕組みが一番良いようには思います。もちろんいろんな選択肢があるということは良いことだと思います。
むしろヘッドフォンへのスピーカー世界の応用と言う点ではやはりAQのNighthawkのアプローチがただしいようにも思います。無理してヘッドフォンをスピーカーのようにするよりは、ヘッドフォンが主役になるには欠けていた点を長年主役だったスピーカーの先例に見習うと言う感じでしょうか。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/414941920.html
* イヤフォン
イヤフォンではJabenの新作、セラミックドライバーとダイナミックのハイブリッドが興味深く、また独特の音場感がありました。
セラミックドライバーもダイナミックだよね?と聞いたら違うようでなにか特殊な形式のようです。(わからないけどハイルとかそういう感じのものらしい)。セラミックドライバーはスーパーツイーターとして使用してダイナミックはフルレンジのようです。これはカスタムも考慮しているようで、要チェックだと思います。
こちらは今回新参入のqdc(ミックスウェーブ扱い)です。ちなみにqdcがUEのOEMをやっているというのは単なる都市伝説と言うことです。ただし試聴機を聴くと音はかなり良いと思いました。
5SHは5ドライバー、スタンダード(=ユニバーサル)、HiFi(音楽愛好家向け)の意味です。8SLだと8ドライバー、スタンダード、Live(ミュージシャン向け)の意味だそう。Cはカスタムモデルです。
FLAT4チタン
こちらはFLAT4のチタンモデルです。前モデルよりもぐっと音はクリアでよく聴こえます。ハウジングのみならずチューニングもハウジングに合わせて変えているそうです。やはりFLAT4シリーズはなかなか音良いと思います。
* 周辺機器など
4.4mmバランスプラグ
統一規格として提唱された4.4mmバランスプラグ。おもったよりは小さいですね。ただ少し周りを見ると、スマートフォンが次々に3.5mmプラグさえ薄さのために廃止している現状を考えると、そうした世界のトレンドに比してどうなのか、と言うこともあるとおもいます。もちろん4.4mmは6.3mmよりも音は良くできると言うことで、オーディオ的には良いでしょうし、いろいろと考慮点はあると思います。いろんなのがあると選択肢が広いし、面白いという意味では良いんですが、これに統一と言うのはどうなんでしょう。すでに日本では2.5mmがデファクトスタンダード化していますしね。
それと気になるのは4.4mmを据え置きとポータブルの統一をしようとしている点です。普通は能率の低いHD800のようなヘッドフォンをポータブルでは使わないし、能率の高いカスタムイヤフォンを据え置きでは使わないですから、据え置きとポータブルの両用と言う点はあまり意味がないように思えます。ポータブル機器でHD800バランスが聴けたらそれは便利と言うかもしれませんが、それは4.4mmは2.5mmよりも音が良いから採用すると言うことと矛盾します。音の良さを追求するならば最適の組み合わせで聴くべきでしょう。また据え置きとポータブルではケーブルの長さも違います。スピーカーとは異なってヘッドフォンやイヤフォンはいくつも所持して使い分けるもの、ということもあります。バランスをやる人ならば特にそうでしょう。
これを唱えている人たちは本当に家や外でバランスヘッドフォンやイヤフォンを常用して使っているのでしょうか、 あるいはなぜ据え置きよりもポータブルの方がバランス端子の種類が多いのかということを調べてみたことはあるのでしょうか? そうすればQC(科学的手法)的に言うと「悪さ」はどこかを絞れるはずです。
上で書いたクロスフィードのところでもそう思ったのですが、ヘッドフォンやイヤフォンが流行りと言うことで、他のオーディオ領域からいろいろと参入してくるのは良いのですが、ヘッドフォンはヘッドフォン世界で、クロスフィードにしろ、バランスにしろ、たくさんの歴史と蓄積がありその理由がありますので、まず先人の知恵を調べてみる、尊重すると言うことが大切なように思います。そのためにもヘッドフォン祭があります。まずここに来てみる、文化に触れる、自分で使ってみると言うのが大事だと思います。なによりもこの「ヘッドフォンオーディオ」の世界はボトムアップ主導で来たのですから。
話題のMQAはヘッドフォン祭でもいくつか出ていました。
パイオニアのDP-X1ではFLACとMQAで比較をしていました。ちなみにMQAでは.mqaと拡張子があるように見えますが、拡張子として有効なのはあくまで末尾の3文字なので、xx.mqa.flacの場合は.mqaは拡張子ではなくファイル名の一部となります。
左:Brooklym、右:DP-X1
DP-X1ではMQAのオンオフはすぐに聴き取れる効果の違いが分かりやすいように思えました。
一方でMytek BrooklynもMQA対応されてます。これはオンオフでの効果が微妙でした。これを考えるとファームの作り方も関係があるかもしれません。いずれにせよサイズのコンパクト化と言うメリットはあります。
Brooklynの音質自体はかなり良いと思いました。やはりMytekはなかなか良いですね。
ちなみにMQAともうひとつのトレンドの軸のRoonはエミライさんのところでPlayPointのデモをしていたようです。
PAD Impressa
上はPADのヘッドフォンケーブル、Impressa。うちも最近使ってませんがスピーカーアンプのLINNクラウトの電源ケーブルは(液体の抜けた)PADなんですが、PADはなんだかんだと言われても音は良いように思います。なかなかソリッドでがっちりしたな音でした。11万円くらい?
また今回はNutubeの説明会に参加しました。
Nutubeはシミュレーターのようなものではなく、本当に真空になってアノードやフィラメントがある真空管だそうです。真空管は今でも使いますが、安定供給がネックなのでまずそこを探したということ。はじめは丸い形ではじめたようですが、施設がないので蛍光表示管に音を通したら、という発想をしたということです。それをがんばってオーディオ用に仕上げたということで、結果的に平たくなったということです。12AX7とよく比較がなされていましたが、基本的にはそれらのように前球的に使うようです。12ax7の2%の消費電力で5vで動作するそうです。ポータブルにもよいですね。
試聴ではNutubeとICEpowerの組み合わせのアンプを使っていました。
* お仕事
今回はわたしはヘッドフォンアワード2016とカスタム座談会の司会を行いました。
ヘッドフォンアワード2016では前回同様に司会進行を務めました。
ダブル受賞したSE Master-1
二日目にはアワードの盾がヘッドフォン会場の各ブースに置かれていましたが、この風景もそのうちヘッドフォン祭の春の恒例となるようにしていきたいですね。
カスタム座談会ではほとんどチャペルが満席と言う盛況ぶりでした。FitEar、Just Ear、くみたてLab、Canal Works、センサフォニックス、Westone、qdc、UM、Noble、JH Audio(順不同)のそうそうたるメーカーの代表者、代理店の方に登場いただきました。
今回はカスタムのシェルや耳型に関するテーマを扱いましたが、やはり一回一テーマが限界ですね。。少しずつ軌道修正しながら、良くしていきたいと思います。
次回はまだ決まってませんが、その場合はまたよろしくお願いします。
* Head-Fiジャパン
最後に今回のヘッドフォン祭で登場したHead-Fiジャパンについて補足いたします。
Head-Fiジャパンは今回のヘッドフォン祭でJudeが率先してブースに立って活動してたことでもわかるように、あのHead-Fiの公式な日本版です。それは日本人のための日本語でのHead-Fiという意味です。
Head-Fiジャパンの中心で運営しているのはWikiaジャパンという会社です。なじみのない方も多いと思いますが、Wikia (USA)はあのWikipediaの傘下でコミュニティやフォーラム活動(例えばStarwarsファンサイトとか)を担当する会社です。Head-FiのWkiaプラットフォームの強化の一環として今回のHead-Fiジャパンの話が出てきたという認識です。Wikia傘下なのでWikipediaのような形になるのではなく、あくまでフォーラム(掲示板)的な形態となると思いますが詳細はまだ分かりません。
Head-Fiジャパンの件でWikia USAのCraigという代表の一人とも昨年会ったのですが、私がびっくりするぐらいのヘッドフォンマニアでポタアン二段重ねとリケーブルしたAudezeをミーティングの場に持ってきてたのでちょっと驚きました。こうした点からもHead-Fiコミュニティに注目したのでしょう。
私はこのオーディオ世界ではブログや雑誌に書くほかにいろいろなことをやっていて、よく海外のメーカーの人から国内参入の話も受けるんですが、そういうときに日本のHead-Fiのようなコミュニティはどこだとよく聞かれます。そういうときにあちこちに掲示板があって、twitterがあって、と答えるしかありませんでした。そういう意味ではこうしたフォーラムと言うのはいままでにありそうでなかったように思います。
現在のサイトはこちらです。
http://ja.head-fi.wikia.com/wiki/Head-Fi_Japan