Music TO GO!

2016年02月29日

Raspberry Pi 3登場

最近いろいろとラズベリーパイを使ってますが、本日その新型のRaspberry Pi3が発表されました。
今日はRaspberry PI の初期モデルが発売されてからちょうど4年目で、この間に800万個以上のラズパイが売れたそうです。
https://www.raspberrypi.org/blog/raspberry-pi-3-on-sale/
海外での価格はラズベリーパイ2と据え置きの$35で、国内販売元のページはこちらです。
http://jp.rs-online.com/web/p/products/8968660/

これまでとの違いはまず64bitに対応したARMv8アーキテクチャ(Cortex-A53)のBCM2837プロセッサを採用し、1.2GHzで動作する点です。これはパイ2に比べて同じ32bitモードで50-60%の性能向上となるとのこと(ARMv8は32bitモードと64bitモードがあります)。プロセッサは前モデルとの互換性があります。当面は32bitモードでのバイナリの提供となるでしょう。
また3ではWiFiとBluetooth4.1が搭載されています。このためLEDの位置が変わりましたが、WiFiのためのUSBが一つ空きそうです。BTはLE(low Energy)にも対応しています。
ハードウエアは前モデルとはHAT(拡張ボード)コンパチなのでPI-DAC+のようなGPIOを使うHAT DACは同様に乗せられるでしょう。ただし消費電力が増えたのとUSB電源供給能力強化のために電源が変更された点がネックではあります。パイ2でも必要性が言われていたプロセッサヒートシンクは必須となりそうです。
ラズパイも肥大化の道を歩みそうですが、それを望まない人にはPI ZEROがあるということでしょう。
またオーディオ的に言うと、USBとネットワークの競合問題は解決してないのでこれまでと同じのようです。
ちなみに以前のモデルは1、2ともに同じ価格で併売されます。また今回発売の3はモデルBになります。
さてこれでまたなにができるのか。
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2016年02月27日

RoonReadyの音質

それではRoonReady機器が手に入ったので、今年のCESのキーワードでもあったRoonReadyとは音はよいのか?、ということでまずAirPlayと聴き比べてみました。AirPlay接続とRAAT接続(RoonReady機器)の音の違いを比べるわけです。

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簡単に整理すると、RoonReadyとはRoon独自のプロトコル(通信手順)であるRAAT - Roon Advanced Audio Transportに対応したネットワーク機器のことです。ここではラズベリーパイとPI-DAC+にRAATがIQaudioの人によって実装され、I2Sドライバーと組み合わされて提供されたものを使います。これはRoonの世界ではRoonBridgeと呼ばれるRoonのOutput(Endpoint)だけのモジュールとして機能します。

接続はいままでと同様にPCにインストールしたRoon、ラズベリーパイとPI-DAC+を使いますが、条件を同じにするために両方とも有線接続にしました。
RoonReadyつまりRAATとAirPlayのそれぞれの接続構成は以下の通りです。Roonの3要素であるControl, Core, Outputの各機能がどこにあるかに注目してください。

スクリーンショット 2016-02-27 20.54.24.png
RoonReady - シグナルパス品質はロスレス(最高)

RoonReady
PC : Roon - Control, Core
   ↓
  有線ネットワーク - RAAT
   ↓
ラズベリーパイ : RoonBridge(Output) -> Pi-DAC+

スクリーンショット 2016-02-27 20.38.59.png
AirPlay - シグナルパス品質はハイクオリティ(中)

AirPlay
PC : Roon - Control, Core, Output -> Aiplayドライバー
   ↓
  有線ネットワーク - AirPlay
   ↓
ラズベリーパイ : RuneAudio -> Pi-DAC+

この組み合わせで44/16のリッピングソースで聞き比べると、やはりRoonReady(RAAT)の方がはっきりと明瞭感やベースギターのピチカートの切れの良さがわかるくらい優れていると思います。
これは以下のように伝送方式がRAATのほうがよりオーディオ的な考慮がなされているというのも理由になると思います。

* RAATとAirPlayの伝送方式の違い

機器間のデータの伝送において重要なのはクロック自体の精度というよりも、ある一定時間に100個データ送ったら100個取り出すというように受け渡しのタイミングが合うことです。受け手は90個取り出しても110個取り出してもいけません。(バッファがあってもオーバーフローにもアンダーフローにもなり得ます)

- AirPlayの場合はPCがDACに対して一方的にデータを投げます。DACのクロックのことなど知ったことではありません。このタイプでは受け手が上手に調整する必要があります(例えばASRCなど)。
- RAATの場合はDACのクロックの都合を聞きながら、PCに対して投げる量の調整を要求します。これはある時間単位でパケットを使って受け手から送り手(PC)にフィードバックすることで行います。そのため受け手で面倒なことをしなくても良くなるわけです。

またRoonではゾーンの同期ができると書きましたが、このさいにも適当に双方にデータを投げるのではなく、ゾーン間の機器のクロックが異なる可能性があるので(というか大抵そうなるでしょう)同期(タイミング差)を取るのに同様な方法を使うようです。

RAATではこのように各機器間のタイミングをうまくはかって音質ロスを減らし、かつユーザーから見るとipアドレスなど面倒なことを意識しないという簡単さはAirPlayと同じです。この辺がRoonがユーザーエクスペリエンス(使い勝手)と音質を調和させているというゆえんです。
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2016年02月24日

ラズベリーパイのRoonReady機器化(Roon Bridge)について

さきのラズベリーパイのPI-DACの記事で、IQAudio製品を選んだのはRoon対応もあると書きましたが、さすが仕事早いというかIQAudioの人がさっそくRoonReady化をやってくれてました。まだ正式にアナウンスされてませんが、Roonフォーラムのやりとりを見ていて、IQaudioの人にRC(リリース候補)イメージを頂戴って言ってもらいました。8GBのMicroSDで入ります。いつものようにイメージをW32disk imagerで焼いてMicroSDを作ります。

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ラズベリーパイ2とPI-DAC+

ハードウエア側はさきの記事と同じく、ラズベリーパイ2とIQAudIOのPI-DAC+です。ネットワークは今回は有線で接続しますが、有線の先はWiFiルーターなのでPC(Roon core)とはWiFiでつないでいます。
ラズパイにMicroSDを入れてブートするだけです。

スクリーンショット 2016-02-24 22.48.56.png   スクリーンショット 2016-02-24 22.48.23.png

次にPCでRoonを立ち上げて、Audio setupを開くと上右のようにNetworkのところにRoonReadyのロゴとともにPI-DACが見えます。まだUncertifiedと認識されています。(DHCPで割り振られた)ipアドレスは私が入れたのではなく自動でRoonが見つけたものです。おそらくAvahiかBonjourのような自動認識の実装をしていると思います。この辺はさすがユーザーエクスペリエンスを語るRoonです。
上左の画像は設定画面です。今回はボリュームはRoonのボリュームを使うのでこのままにしておきます。

このネットワークゾーンで名前(RPI PI-DAC+)を付けてRoonに認識させます。
これだけであとは普通のゾーンとしてRoonで再生が可能です。Roonで再生させるとPI-DAC+から音楽が流れます。まだ開発中なのでCD品質は良いけど、ハイレゾはひっかかりますが音はかなり良いです。

スクリーンショット 2016-02-24 22.51.08.png   スクリーンショット 2016-02-24 22.51.50.png

シグナルパスは上のように表示されます。左がCD品質で、右がハイレゾです。AirPlayとは違ってロスレス品質で再生されていることがわかります。きちんとRAATで流れていますね。

AirPlay-roon.png

AirPlayでは上のようにロスレスより落ちるハイクオリティになります。

* 接続のまとめ

今回の接続はこういう流れです。
Roon (PC) ->ネットワーク (RAAT) ->ラズベリーパイ/PI-DAC+ =>アナログ出力

Roon的に言うと、ラズベリーパイはRoonBridgeとして機能しています。つまりControlとCoreはPCにあり、Output(endpoint)はラズベリーパイです。
AirPlayの例ではAirPlayまでがRoonではCoreのPCのOutputとみなされるために、もともとプライベートゾーンではありません。そのためにラズベリーパイでも出力できていました。

これをさらに解説すると、下記のようになります。[]内がRoonの世界です。
前の記事の例で言うと、
[ Core(PC)->Output(AirPlayゾーン) ] ->AirPlay(ネットワーク)->RuneAudio(ラズパイ)
でした。
今回は
[ Core(PC) -> RAAT(ネットワーク) -> Output(Network/RoonSpeakersゾーン、ラズパイ) ]
となります。

これでオーディオ的になにができたかというと、ハイパワーが必要でノイズまみれのPC部分と、ローパワーで済んでローノイズのオーディオ部分をネットワークで分離できたということになります。これがDLNAレンダラーだと両者は同じ箱の中なので分離できません。
これはなかなか画期的だと思います。ラズベリーパイでもできたというのがRoonの柔軟性をひとつ示していますが、このRoonReadyががさらに優れたオーディオデバイスに採用されていくとまた面白くなっていくでしょう。
またRoonBridgeではDLNAレンダラーとは違い、音源をデコードする必要がないので、従来のストリーマー(ネットワークプレーヤー)よりさらに軽量に作れるはずです。従来のストリーマーの流用ではなく、RoonBridge専用機ならさらに新しい可能性が開けそうです。

* 現在のRoonReady機器のリストにIQaudioも載りました
https://kb.roonlabs.com/Partner_Devices_Matrix
現時点で他に対応できているのはAriesとSonicOrbiterです。
posted by ささき at 23:53 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月23日

Qables iQube V5レビュー

久々にiQubeのレビューをします。新しいV5のレビューです。

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iQube V5

V5においては外観はV3とほとんど変更ないのですが、中身は回路再設計やバッテリー変更で大きく変わっています。あえてV4をスキップしたのはV3からの差が大きいということを強調したいからだそうです。
すでにタイムロードはiQubeの国内代理店を終了していますが、本記事ではQables直販でのV5への優待アップグレードの情報と共にこのV5の紹介をします。

* iQubeのこれまで

さて、iQubeもTriFiやWestone30同様に、解説の前にまずは昔話から始めましょう。
2006年はTriple.fi、Westone 3、E500とハイエンドイヤフォンの革新が見られましたが、その翌年2007年は今度はポータブルアンプの当たり年でした。
4月にはポータブルアンプとして初めて真空管が使われたMillet Hybridが発売されました。
6月はおなじみMeier Audioのアナログ傑作機Moveが登場し、8月にはポータブルアンプと同軸/光/USBをサポートしたポータブルDACの一体型機、iBasso D1が出ました。このDAC内蔵分野は老舗のHeadroomもMicroで追いすがります。

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左からMillet Hybrid, CORDA Move, iBasso D1

こうしてポータブルアンプに真空管が乗ったり、DACが内蔵されて進化していく中、10月にはポータブルアンプにクラスDアンプが搭載されるという記事が載りました。HeadFiではなく当時iPod Studioっていうフォーラムがあって、そこも活発だったんですがそこにひっそりとオランダのQablesというメーカーが案内を出し、海外分は20個という割り当てがされました。私はポータブルでのデジタルアンプということで飛びついたのですが、実のところ海外分は半分の10個程度が売れたのみでした。のちに人気を博することになるiQubeも始まりはこのようなものでした。

2007年は他にもなつかしのXinの最後の作Reference、ド級アンプの先駆けLISA IIIの登場なんかもありました。いまから思うと2007年はおそらく前年に登場したハイエンドイヤフォンに刺激されたことで、まるでカンブリア紀の爆発のように多種さまざまな種がポータブルアンプの世界に登場したわけです。いまに続くポータブルのソース機材とイヤフォンとの良い依存関係がこの頃に始まったと言えるかもしれません。
そのころ日本ではまだまだヘッドフォンオーディオは発展途上であり、ヘッドフォン祭の前身であるハイエンドヘッドフォンショウを中野ブロードウェイの会議室でこじんまりとやっていた時代でしたが、それはまた別の話です。

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当時のiQube V1とSR71

はじめは細々としたスタートを切ったiQubeですが、後にベストセラーのように人気を博したのはやはり性能の高さでしょう。
iQubeの売りは元フィリップスにいたD級アンプ(デジタルアンプ)設計の第一人者のBruno Putzeysが設計した本格的なデジタルアンプが採用されたポータブルアンプであると言うことです。PutzeysはいまではHypexなどで有名ですし、Mola Molaを知っている人もいるかもしれません。
デジタルアンプは出力インピーダンスが非常に低い(スピーカーで言うダンピングファクターが高い)という点が特徴でヘッドフォンをがっしりと制御する力に長けていると言えます。またiQubeのデジタルアンプならではの歪みのなさはすっきりと端整な音に現れているでしょう。そしてもちろん効率の良さからくる消費電力の少なさです。

Brunoがこうしたポータブル製品に参加してくれたのは、初めてデジタルアンプをポータブルで採用すると言う興味からだったろうとQablesのハンスさんは語ってくれました。QablesのハンスさんがBruno PutzeysやGuide Tentといったオランダのオーディオオールスターズのような豪華チームをそろえてこのiQubeという製品をプロデュースしたわけですが、ハンスさんはAppleの"Look&Feel"によくマッチするような優れたオーディオ製品を作りたかったというのが動機だったそうです。デザイン的にはレトロとモダンの調和を図ったということでした。たしかにiQubeは性能だけではなくデザインも優れていますね。

2008年には日本でタイムロードさんがiQubeを輸入販売して当時はベストセラーになるほどの売れ行きとなりました。
2009年には簡易的なUSB DACがついたV2が発売されました。オリジナルではバッテリー交換が面白かったんで、ちょっと残念かとも思いましたが、V2ではバッテリーが内蔵型となりました。
そして2012年にV3が登場します。v2とv3は光とSPDIFのデジタル入力が可能となったことが大きな特徴です。
仕様はUSBが48kHz/16bitまで、SPDIF/光入力は192/24までとなります。SPDIFは4ピンのミニ端子の入力で、RCAメス->ミニ端子のケーブルが付属しています。こちらのレビューも参考に。いまならAK100などを使う光出力ソースが当時はでかいQLS QA-350というところが泣かせます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/246334145.html

* V5の特徴

そして昨年、先に書いたようにV4はスキップされ大幅に改良がくわえられたV5が登場しました。

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iQube V5

まず目玉のD級アンプの回路は御大Bruno Putzeysの手によって、再設計されました。主な眼目は能率の低いヘッドフォンに適合するためのパワーの増大です。また以前よりも効率がさらに良くなっているようです。
また残りの回路はBrunoの片腕であるBart van der Laanによって再設計されています。基盤も再設計されて4層のメディカルグレードとなってフロアノイズの低減がなされています。Bartによる再設計の目玉は新しい電源回路です。これによってより安定した電源供給が可能となっり、アンプのパワー増大にも貢献しています。
またバッテリーはそれまでのNiMHからリチウムに変更されています。これも大きい変更で、たとえば以前はデジタルアンプでバッテリーの持ちが良いと言っても一日に数時間使ってしばらくほおっておくと自然放電でかなり低下しますので、実質のバッテリーの持ちは意外とよくなかったのですが、リチウムならばデジタルアンプの効率の良さを生かせます。ちなみにV5ではアナログのみで40時間、DAC込みで12時間使えるということです。

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またV5ではハイレゾ再生能力が高くなり、USBは192/24対応となりました。DSDは5.6MHzまでネイティブ再生(DoP)で対応します。(ただしUSBポートがミニのままなのが残念なところ)。
そして操作系がROM搭載となり、より詳細なLEDによる状態表示ができるようになっています。
細かいところではゲインがそれまでの低2/高7から、低0/高6に低められています。これは高感度IEM対応にも良いかもしれません。

このようにV5では外観は変わりないのですが、中身は「唯一変わったのはその全て」というどこぞのキャッチそのままで別物というくらいに変わっています。

* V5の音と使用感

パッケージはいままでと同様に缶ケースに入っています。同梱はケーブル類で、USBケーブル(mini)の長短二本のほかに、SPDIF同軸デジタルケーブルのRCA/miniアダプタケーブルが入っています。

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取り回しはほとんどV3と同じです。USBプラグがminiのままなのはポータブル使用では難かもしれませんが、据え置きで使う分にはもしかすると高品質USBケーブルの選択ではUSB mini端子もいぜん多いかもしれません。
使用形態はV3と同様に光デジタル、同軸デジタル(専用アダプターがついています)、USB(mini)、アナログ入力があります。ここでは光デジタルでDAC一体型アンプ、アナログ入力で普通のヘッドフォンアンプとして二通りで試してみました。

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AK100+光デジタル+V5

まずAK100IIと光デジタルでiQubeをDAC+アンプとして聴きました。ケーブルはSys-conceptの以前のV3用に作ったのがそのまま使えます。タイムロード/アユートの光ケーブルでも良いです。主にマベカスとBeat Signalを使いましたが、やはり高性能イヤフォンだけではなくケーブルもSignalクラスのケーブルが欲しいほどの高音質です。
音は整っていてデジタルアンプらしく正確さを感じます。SNが高く音の形の明瞭感がくっきりとし、透明感も非常に優れていますね。楽器の音の歯切れの良さは鋭いのですが、きつさはさほど感じません。躍動感があって、ジャズトリオなんかはシンプルな音の際立つ正確さやくっきりとした明瞭感、パワフルな躍動感にちょっと感動すると思う。
やはりパワーアップしたせいかもしれないけれど、アンプ部分はかなり性能向上されたように思います。V1の当時からすると、周りに優れたアンプが増えたんですが、今日の水準と比してもトップレベルだと思います。

このまま光デジタルでV3とV5を比べると、V5ではかなり透明感が上がって、よりクリアになるとともに音場も開けたように感じられるようになります。V5ではひとつひとつの楽器の音もより先鋭で、ヴォーカルの発声も明瞭感が上がっています。音の一つ一つの歪のなさもより少なくなって明確な形ですね。V5では周波数的にも低いほうと高いほうの限界がより広がったように、高い音はより伸びて、低い音は沈み込む感じです。ただしV3とV5では全体のニュートラルでよく整ったiQubeとしての音の個性はほぼ変わらないで、全体的に鮮明さが大きく上がったという印象ですね。
V5からV3に戻すと音がだるく感じられ、鮮明さが後退して濁った感じになります。もちろんV3の音もよかったわけですが、V5と比較すると大きな差があると思います。

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RWAK120+アナログ+V5

次にアナログ接続を試してみましたが、V3のアナログ入力の具合が悪くV5とV3のアンプ自体の差の比較はできませんでした。アナログケーブルはDirigent Red(Crystal Cable Micro)です。イヤフォンは同じくマベカスとSignalを使いました。
V5で試すと、アナログ接続でのiQubeの音の良さに久々に感銘しました。DACなしでコンパクトにアナログアンプだけでも良かったのではないかと思いますね。全体的な音の整った感じはやはりデジタル入力のほうが良いかもしれませんが、このグッと力感がみなぎる感じはいかにもアンプを付けたというアナログ入力ならではの魅力があります。アナログソースのDAPの魅力を生かしたい人には好適です。
はじめはAK100IIのアナログ出力で試していましたが、これはすごいというのでRWAK120(AK120のWM8741x2に改造したラインアウト専用版)に変えたところRed Wineらしい暖かい有機的で高精細な音と、iQube V5の正確で歪みなくワイドレンジの高性能さのマッチングが素晴らしいですね。RWAK120のラインアウトのみっていう潔さがよく似合います。
RWAK120とアナログ入力での組み合わせは濃くて有機的で分厚い感じ、力感と重みがよく乗っています。細かい表現でもWM8741のフラッグシップDACらしさがよく伝わってきます。AK380をアナログ入力してもAK380のよくま整った音の感じが伝わりかなり高レベルの音です。
AK380でも使ってみましたが、同じように力強さと厚みが感じられるのでこれはiQube由来の良さでしょう。AK100IIと光接続で内蔵DACを使ってもよい音ですが、少し軽めに感じられます。
iQubeのアンプは上品なイメージでしたが、V5ではパワーアップしたことで力感が加わってよりアンプっぽくなったと思います。デジタルアンプっていうと硬いイメージだけど、悪い意味での硬さはないですね。強靭という意味なら当たってます。アタック感は鋭く強靭です。

* まとめ

V5のDACも悪くはないけれど、アナログ入力でのアンプの音を聞くとやはりiQube V5はALOのContineltal Dual MonoのようにアンプメインのDAC内蔵型かなととらえたほうがよいように思います。RAWK120(WM8741x2)のような優れたアナログソースプレーヤーと組み合わせたiQube V5は素晴らしいオーディオらしい音、豊かで力強く整っていて躍動感がある、を再生してくれます。もちろんDAC部分も悪くはありませんが、いまはAKプレーヤーのように良いアナログソースが増えましたからね。
V5で生まれ変わったiQubeは音質レベルの高さも現行のトップクラスに比肩できるくらいのレベルがあると思います。

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マーベリックカスタム/Signal

AK380とかRAWK120のように優れたアナログソースを持っている人はアナログ接続、AK100などを活用したい人はDAC一体型として使用、などの使い分けができると思います。iQube再訪というのもよいのではないでしょうか。

* アップグレード情報

最後に既存のiQubeユーザーへのハンスさんからの優待アップグレード情報です。タイムロードさんは関与いたしませんので、Qablesと直接に取引をお願いします。(私も関与いたしませんのであしからず)
現在ヨーロッパにおいては稼働状態のV3を返品することで、200ユーロ引き(税抜き)でV5を販売しているということです。購入者が行きの送料を負担して、Qablesが帰りの送料を負担するそうです。これはヨーロッパでの話しで米国でも考慮中だがまだ開始していないとのことです。
日本でもQablesと直接にやり取りをすることで、ヨーロッパ同様のディスカウントを考えてくれるそうです。ただしコンディションがあるので、直接QablesのHansさんにメールして、ケースバイケースで判断すると言うことです。またV1においても考慮するとのことなので、興味のある方はQablesのHans Oosterwaalさん(sales@qables.com)にメールしてください。
QablesのiQubeページはこちらです。
http://www.qables.com/iqube
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2016年02月20日

スイッチング電源をクリーンに、iFi iPurifier DC

iPurifier DCはiFiらしいユニークな製品です。

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普及クラスのオーディオ機器にはよく外部電源としてスイッチング電源がついてきます。スイッチング電源はコンパクトで安価なのですが、オーディオ的に見てこのスイッチング電源は音質が良いというものではありません。もともとコンピューターなどに使われるものですからね。iPurifire DCは電源ケーブルとオーディオ機器の電源端子に挟むだけという簡単な手順で追加するだけで、電源の質を向上させるという優れものです。
iFIには前にiPurifier USBというUSBの送信品質を向上する製品がありましたが、その電源装置版と言ってよいでしょう。

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箱にはダッソー・ラファール戦闘機の写真が載っていますが、これはiPurifierの技術が軍事技術を応用しているということの証で、具体的にはノイズをキャンセルするためにアクティブ・ノイズ・キャンセレーションを使用しています。これはラファールに使われているレーダー技術の応用だということです。

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iPurifire DCの特徴はやはり音質改善で、これは効果がとても大きいです。アクセサリーというと眉に唾をつけたくなる人がいると思いますが、この効果はだれにもすぐにわかるくらい大きいと思います。

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またiPurifier DCのもうひとつの良いところは簡単ということで、単にケーブルのプラグと機器側のプラグの間に挿入するだけです。プラグの径が異なっても大丈夫なようにいくつかのアダプターも入っています。

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左:標準状態、右:iPurifier DC使用

実際に最近よく使っているUSB DACであるLH LabのGeek Pulseに使ってみました。Pulseを注文するときに専用電源のオプションもあったのですがまあよいかと思っていたんですが、Geek Pulseの音がとてもよかったので注文しておけばよかったと後悔してしまっていたところでした。Geek Pulseでは標準のままですぐにiPurifierが使えました。
iPurifier DCを入れて気が付くのはまず透明感がぐっと上がり、音に力強さがみなぎり豊かさが感じられます。音場も開けたように感じられ、声はより明瞭に聞こえるようになります。アカペラコーラスでの透明感は際立っています。元の状態のiPurifierなしに戻すとちょっとこもった、こじんまりとした感じがしてしまいます。実のところ音の差は切り替えて確かめなくても、いつも聴いてる機材ならすぐわかるでしょう。
おそらく試しに一個買ってみて、すぐにもう一個ほしくなる人が多いのではないかと思います。ぜひ使ってみてください。ホームページは下記リンクです。
http://ifi-audio.jp/ipurifierdc.html

Amazonでも購入することができます。


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2016年02月13日

ポタ研2016冬レポート

今年もポタ研が開催されました。
みなが雪の思い出に寒さを予感したところ、当日は春を通り越すような暑さとなり意表を突いたところはさすがマニアックなポタ研というべきか。

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上左はNAMMで発表されたWestoneのAM proです。アンビエント型で外部音が聞こえやすいだけでなく、ベント技術となにか音響室のようなチャンバー(中図の3)によって周波数を制御するという技術によって独特の音質があります。上右のように同じドライバー構成のUM10と聴き比べると音がすっきりと抜けが良く聞こえます(クロスオーバーも異なるようです)。

ベント技術は64 ADELを思わせますし、ちょんまげ3号も連想させます。また音響チャンバーはCampfireも連想させます。この辺が最近のイヤフォンのトレンドなのかもしれませんね。

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またテックウインドさんでは上のようにたくさんの機器を同時充電することで便利なマルチUSBチャージャーも用意してます。1万程度とのこと。

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やはりありました、Astell & KernのCopper AMP! Copperアンプは音も良く、豊かでぶ厚くなる感じでしょうか。

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上はDita Answerのブラスバージョン。ずっしり重いと感じます。ケーブルを見てもらえるとわかるように線材も違うようです。AK380 copperとDitaブラスを合わせるとキラキラしてます。Ditaブラスは音良く、よりダイナミックっぽい感じです。なかなか良いですね。下記リンクはこのブラスバージョンの記事です。
http://sg.asiatatler.com/arts-culture/life/dita-brass-edition

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茶楽音さんではどんぐりの小型版の「こどんぐり」を出展し、また音違いを用意してアンケートを取っていいました。

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上は話題のiFi DC iPurifierです。USBのクリーン化はありましたが、これは画期的にも上右のようにスイッチング電源などの口に挿入することで音をクリーンにします。レーダー技術でノイズを逆相で打ち消す技術を使ってるそう。 これは予想以上にかなり効果があります。

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上はiPod classicのHDD交換で有名な中野のApple Juiceさん。やはりiPod Classic良いと思えますね。またApple Juiceさんでは上右のようにiPhoneのライトニング - マイクロUSBケーブルも用意しています。Mojoなんかによさそうです。

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上はやはり中野の軍用品屋さん、ユーロサープラスさんのブース。上右はドイツ軍のケースで2200円。AK380も入ります。

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上は須山ジャンク堂の切り絵キーホルダー。右は冬Ayaです。

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エミライさんではラズベリーパイとRune audioとFlowとEther Cで豪華ポータブル組み合わせ。パイの方はWiFiドングル使ってます。

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上はおもわず写真を撮りたくなる組み立てラボさんの新作フェイスプレート。実物みるとかなり精巧です。

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上左はJabenのハイブリッド。わりとパンチあって良いです。価格はアンケート取ってますがこれで決めるんでしょうか。 上右はJabenのとこにあった韓国のBTイヤフォンです。価格も安く音も良いと思います。

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ミックスウエーブさんは固定客があって新作なくてもなんだか盛り上がって混んでました。

ポタ研はまるでオフ会がたくさん集まってるかのようにあちこちでグループができて盛り上がって話し込んでいました。この辺はこのポータブル文化っぽくてよいですね。
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2016年02月12日

ポタ研2016冬 開催!

早いもので明日またまたポタ研冬が開催されます。ポタ研というと天気の話題になりますが、明日はまず持ちそうです。
ポタ研2016冬のページはこちらです。
https://www.fujiya-avic.jp/event/potaken2016_winter/

ポタ研はマニアックの集いで、なぜかラズベリーパイ密度が高くなりそうという情報もありますが、これもポタ研ゆえかと思います。
また製品展示会の側面ももちろんあります。明日はさまざまな新製品が見られそうです。
アユートさんではなんとAK380AMPのCopper版という話もありますが、これは私も楽しみです。Crystal Cable Nextなどはぜひ聴いてみて欲しいところです。またDitaの真鍮バージョンが展示されるそうですが、これは確かシンガポールのお店向けの特別版だったと思います。

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シンガポールのポータブルといえばJabenで、上の画像の謎のハイブリッドイヤフォンが登場するという話ですう。その他にもTEACではT5p 2ndなどが見られるでしょうし、さまざまな新製品がありそうです。須山さんまたジャンク堂を開店させるようです。
さて。。
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2016年02月10日

AK380 CopperレビューとAK380とAK320

Astell & Kernが第三世代のプレミアムモデルであるAK380 copperを2/12から発売します。数量限定で販売すると言うことです。

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AK380のキャッチフレーズは"THE EVOLUTION OF A MASTERPIECE(傑作のさらなる進化)"だったわけですが、このAK380 copperでは"A New Approach to Music"(音楽への新しいアプローチ)と設定されています。つまり傑作であったAK240よりもさらに進化した第三世代のAK380が、新しいアプローチを取ったわけです。それが99.9%の高純度胴をボディ素材に採用したことです。
Astell & Kernではボディ素材にこだわって、AK240でもAK240SS(ステンレス・スチール)というモデルを開発しています。その進化ということもできるかもしれません。

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実際にAK380とAK380 copperの違いはボディ素材の違いという一点で、回路もソフトウエアもAK380と同じです。AK320とAK380はDACチップやクロックは同じとは言え、XMOSがないなど、回路は違いますから音が違っても納得するわけですが、AK380 Copperのアプローチはユニークです。

アユートの販売ページは下記です。
http://www.iriver.jp/products/product_119.php

* AK380とAK380 copperの違い

・ ボディ素材

Ak380 copperでは銅(純度99.9%)をボディ素材に採用しています。

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銅は比重が高く、シールド効果があり導電性が高いため、電気的な特性は良いと言えます。AK240SSのときはDAPのグランドに筺体を使用するために、電気的な特性の変化で音質が変わるという説明がありましたが、AK380 copperではその点をさらに突き詰めた素材と言えますね。
また電気的な特性から離れてみると、この銅のシャーシを持ったAK380 copperはかなりユニークで魅力的なスタイリングをDAPにもたらしています。無垢の銅ブロックから一台当たり4時間かけて切削し、1.7kgからわずか175gを作りだすという作業はかなり手間のかかるものです。表面のヘアライン加工も職人による手作りで、さらに表面には酸化防止のコーティングがなされています。
Ak380に比べたずっしりとした重みや、輝く質感の高さはプレミアモデルの持つ喜びをもたらしてくれます。


・ 背面素材

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もうひとつの筺体の変更がこの背面素材です。AK380 copperではカーボン繊維とケブラー繊維を併用した素材で、その青い色味がかった素材感が特別さを感じさせてくれます。

・ 付属ケース

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Ak380 copperではルイヴィトンのバッグでも使われている、トルコ産の最高級の天然皮革である「The V1」を採用しています。このあたりもプレミア感が感じられます。

* AK380 copperの使用感と音質

箱はAK380と同じ大きなタイプの箱ですが、箱自体が銅色に塗られています。箱はAK380同様に積層されて、内箱にAK380 copperが収まっています。この箱におさまっている状態でAK380 copperはただならぬオーラを発しています。

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手に取ってみると、その明るい赤銅色に輝くハガネのような色彩感覚は他のプレーヤーとはまるで異なった魅力を持っています。これはちょっといままでにない質感で、持っているだけでも特別感を味わえます。ロクサーヌカスタムのカーボンシェルのときも箱を開けた時に美しくて声をあげてしまいましたが、これも声を上げるくらいカッコ良いと感じられます。単に銅の質感だけではなく、ヘアライン仕上げがとてもよくマッチしています。

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ジュラルミンとかステンレスだと先進的というかモダンな感覚ですが、この赤銅の質感はちょっとスチームパンク的というか、レトロフューチャー的というか、新しさとともに昔の道具が持つ古き良き質感を取り交ぜたような不思議な感覚があります。
AK380 copperの魅力はまずなんといってもこのデザインでしょう。
(ただし使用において注意事項もあるのでアユートさんのホームページを参照ください)

ステンレススチールでも通常モデルに対しての高級感というのはありましたが、Ak380 copperの場合は高級感もさることながら特別感と言った方が良いように思います。これは強烈に物欲を刺激されると思いますね。よく考えたなという感じです。
また背面のカーボンも青く見える材質が使われていて、ここも高級感というか特別感を感じさせてくれます。持った時のずっしりとした感じも、そうした質感の違いが本物を主張するように感じられます。

箱から出すと音を聴く前にいつもはじめに写真を撮るのですが、ここでも他のプレーヤーとは輝きが異なるので写真の露出をつかむのがかなり難しく、他の記事の倍の時間をかけてしまいました。オートだと露出(明るさ)が狂うので、マニュアルで設定して撮りました。その点でもやはり他とは違います。

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そしてAK380 copperは外観だけではなく、音質も向上しています。箱から開けてもすぐわかるくらい差はかなりはっきりと感じられ、正直言って同じAK380の回路を使ってるとは信じられません。AK320なら回路も違うだろうからまあ納得はできますが。AK380に慣れている人ならば、特にとなりにおいて聴き比べをしなくても違いがあることはわかると思います。
本当は設計し直したんじゃないかと疑りたくなるけれど、もし再設計してこの音出すとすると、抵抗とかコンデンサをグレード高いものにして、電源の低ノイズ化をさらに徹底して、ケーブルもより高品質にした感じでしょうか。一番近いたとえはオーディオで電源をクリーン電源に変えた感じのような気がします。AK240SSのときに説明のあったグランドによる差というのがさらにはっきりと出ているのでしょう。

音の差はAK320とは異なって、AK380と同じ傾向・個性だけれど、すべての面において一段良くしたという感じだと思います。
より全体的に深みと広がりがあり、より音楽的に滑らかで豊かです。また性能的な感覚でも、より高域が伸びやかで、より低域が深いワイドレンジ感もあります。音場と言うか包まれるような音空間が心地よいですね。さらにエージングが進むと抜けが良くクリアに聞こえてきます。
個人的感想かもしれないけれど、通常モデルとの音の差はより「美しい」と感じられるところだと思います。バロックバイオリンとか古楽器系の弦の鳴りが心地よく、聞きなれた曲を聴くのがより楽しみになります。
いつものライブラリをAK380から移して聴いていても、AK380 copperでは、この曲こんなにカッコ良かったっけ?と思って液晶の曲名を見返したり、音再現にはっとするような瞬間を感じることがあります。もしかしたら電気的にはちょっとした違いかもしれませんが、音楽を聴く上では大きな違いになっているように思います。

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AK380AMPとの相性も良いのですが、残念ながらAK320同様に色が合わなくなります。できればAK380 Copperはカッコ良いので単体で手に持って使いたいですね。でもAK380AMPのcopperバージョンがあれば。。と思っていたら、なんとAK380 copperのAMP版がポタ研で出展されるとのこと。これも楽しみです。

Ak380 Copperはまさにプレミアムモデルというのにふさわしい独特な魅力を持っていると思います。
こうしたデザインと質感のカッコ良さ、持つ喜びと音質の違い、またトルコ皮革製の特製ケースを考えるとAK380標準モデルとAK380 Copperの価格差は意外と小さいのではないかと思います。

* Ak380 copperとAk380とAK320のまとめ

それではAK320、AK380、AK380 Copperの兄弟ともいえる3機種の差について、AK380の標準モデルを基準にしてまとめてみたいと思います。

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まず使用感ですが、それぞれ機能的には同じということもあり、使い方に変わるところはありません。ただし手に持った感覚がそれぞれ違います。
AK320では右手の片手で操作ができ、特有のボリュームもそうして使うといっそう使いやすく感じます。またやや小さくて持ちやすく思います。
AK380 Copperはずっしりとした重さがあって、このなかでは一番重いのですが、単体で持つ分にはそう重くは感じないでしょう。ただ通常のAK380に持ちかえるとAK380が軽く感じられます。

デザインと外観についてはやはりAK380 Copperがいち抜けして独特のオーラを持っています。この存在感はさすがで、元ライカのデザイナーがまた関与しているかはわかりませんが、そうした優れた道具を持つ喜びというものを感じさせてくれます。AK320も他のブランドのプレーヤーに対してはずっとすぐれた質感がありますが、やはり通常のAK380のジュラルミンの質感もなかなかすぐたもので、これらはいずれもAstell & Kernというトップブランドの名に恥じないものでしょう。

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音の差は3機種間で驚くほどあると思います。ただその差の傾向が違います。AK320とAK380標準モデルとは違う音の個性があります。AK320はやや強調感があって若い躍動感があります。ロックやポップに会うでしょう。
AK380標準モデルとAK380 copperは同じ音傾向ですが、AK380 copperでは音質全体を一段ブーストアップした感じです。AK380 copperではより深く豊かになり、音が洗練されて濁りがより少ないピュアで綺麗な表現ができます。細かな音に満ち溢れてじっくり聞きたい音楽に向いています。

もちろんAK380標準モデルも標準器のようにリファレンス的で優れた音質再現です。AK380標準モデルはAK380AMPと組みで使って完成された音が楽しめるように思います。対してAK320は独特の強調感で単体で使いたいし、AK380 Copperも単体楽しみたいプレーヤーだと思います。
組み合わせるイヤフォンはAK320はキレが良くアタックがあり、元気なイヤフォンが良いように思いますね。Ditaとか、マーべリックカスタムとか。AK380とAK380 Copperはより厚みがあり豊かなイヤフォンが向いているように思います、JH Audio Laylaとか、AT T8iEなどでしょう。

価格的な点からはやはりAK320のアドバンテージが大きいですね。また価格的な差としてはAK380とAK380 Copperは十分に見合う差があると思います。むしろ価格差が銅のボディを作る手間を考えると思ったほどないようにも思えますね。ただしAK380 Copperは個数限定でもあり、あくまでこのファミリーのなかでは特別モデルと位置付けたほうが良いでしょう。やはりAK380は第3世代のトップモデルであるという位置付けは変わらないと思います。

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AK380ファミリーとでも言うべき、これら第三世代機の間でもけっこう違いはあります。ぜひ店頭で手にとって質感を感じ、試聴して個性の差を楽しんで選んでください。
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2016年02月09日

Roon補足4: ゾーンとキュー管理、ゾーンの同期について

ラズベリーパイDACのおかげでAirPlayデバイスが増えたので、Roonのキュー管理がさらによく分かるようになりました。

RoonではMPDのように楽曲をキューに入れて管理しますが、このキューはゾーン(出力先)ごとに設けられています。つまりゾーンが異なれば別々にキューを持つことができ、さらにそれらを同時に再生することができます。また再生とかポーズなどのコントロールもゾーンごとにすることができます。ラジオ機能もゾーン単位です。

先にも書きましたが、ゾーンは出力先の種類に応じていくつかの種類があります。AirPlayゾーンやMeridianゾーンなどです。Roonではゾーンごとに再生ができるのと同時に、この種類ごとに同期させてグループ化させることができます。このときは同じ種類のゾーンとのみグループ化ができると言う条件があります。これはつまり同じプロトコルのもの同士は同期できるということです。

そこでAirPlayゾーンを例にとってみます。ここではRoonのインストールされたPCと同一のWiFiネットワーク上にAirPlayデバイスとしてCompanion oneとラズベリーパイ/Rune Audioがあります。それぞれは別のゾーンであり、別々に楽曲をキュー管理して別個に再生できます。

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二つ以上こうして同じ種類のゾーンが存在すると、上のように"グループ"というボタンが自動的に表れます。そしてこのボタンで二つのゾーンをグループ化することができます。

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こうすると上のようにキューはひとつとなり、音楽はそれぞれのデバイスに同時に同期して再生されます。

AirPlayだけではなく、RoonReady機器もこうした取り扱いができると思います。たとえばAuralic Ariesなどのようなオーディオ機器(ストリーマー)だけではなく、最新のJohn Darkoの記事にあるようなSonore SonicorbiterのようなコンピュータでもRoonReady機器となることができます。違う種類の機器でもこれらは単にゾーンとしてRoonでは簡単に取り扱うことができるでしょう。
この辺もRoonではとてもわかりやすく扱えますが、このあたりが優れたユーザーエクスペリエンスを持つと言われるゆえんです。
posted by ささき at 20:53 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月07日

ラズベリーパイ・デジタルプレーヤー試作とGPIO(I2S)接続

ちょっとひさびさにラズベリーパイをいじってみました。GPIO(I2S)接続のDACを使ったラズベリーパイ・デジタルプレーヤーの試作です。iPhoneで操作が可能で、バッテリーでポータブル・ラズパイでも使えます。USBメモリの音源やAirPlayを使ってApple Musicを聴くこともできます。

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* Raspberry Piと周辺機器の進化

前(2013年)にも下記記事でラズベリーパイとUSB DACを組み合わせてRaspyFi(いまは名前をVolumioと変えています)でオーディオ向けシステムを試作してみました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/374988227.html
このときはMPDを使用したディストリビューション(OS)であるRaspyFiが簡単に使えるようになったのでオーディオにも応用できないかとUSB DACを組み合わせてみました。
この記事から、現在までのラズパイ環境の変化を簡単に振り返っていきます。

- Raspberry Piについて

まずRaspberry PI自体が変わりました。私が2013年に使ってたのはBモデル。Bというのがネットも使える高スペックタイプです。
それからハード的に変わりB+となります。この時にUSBポートが増えてGPIOポートも26ピンから40ピンに変わってます。またSDカードがMicroSDに変わってます。

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Raspberry Pi 2

そして2015年にRaspberry Pi 2が出ます。ただし2とは言っても変わったのは主にCPUやメモリーで、ハード規格の変更はありません。つまり実質的に大きく変わったのはB+の時で、2では性能がアップしただけです。このため製品を買うときに重要なのはハード互換はB+以降ということです。
今回はあとで述べるオーディオDACボードを使うため、Raspberry Pi2を買いました。
最近ではさらに小型で安価なPi ZEROが出ています。

-ソフトウエア(ディストリビューション)

前回2013年にRaspyFiを紹介した時はラズベリーパイのピュアオーディオ取り組みでも初期の頃だったのですが、その後にRaspyFiがVolumioと名を変え、Volumio以外でもRune AudioなどMPDを採用したオーディオファイル向けディストリビューションが増えてます。
今回は最近評判の良いRune Audioを使ってみました。ただし基本的にはMPDなのでそう大きくは違いません。Rune AudioはArch Linuxをベースにしています。(Runeはルーン文字のルーンです)

- オーディオDACボード

ラズベリーパイの最大の魅力は世界が広いことです。周辺機器での変化はGPIOでI2Sを使えるオーディオDACボードがたくさん出てきているということです。

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ラズパイ2とPI-DAC+

そのため以前はUSBからDACをつなげるしかありませんでしたが、最近ではたくさんのこうした拡張ボードが選べます。これらはI2S接続ができるという利点があります(後述)。
Volumioのフォーラムには下記のリストのようにたくさんのI2SオーディオDACボードがリストされています。
https://volumio.org/forum/list-i2s-dacs-for-raspberry-t1103.html

中にはXLRバランス出力ができる本格的なものもありますし、フルデジタルアンプ内蔵でスピーカーを駆動するものもあります。また国内でも作ってる人がいるようです。
ここではIQaudIOのPI-DAC+を選びました。

* IQaudIO PI-DAC+

私がIQaudioを選んだのは、このラズベリーパイでのGPIO(I2S)オーディオだけではなく他の目的があります。それはRoonです。
そもそもなんでいままたラズベリーパイをやろうと思ったかというと、最近Roonを調べるためにRoonフォーラムをよく読んでいるんですが、RoonのLinuxへの応用のところでRoon LabsがLinuxの中でもラズベリーパイに大きな関心を寄せているということがあります。これは同じイギリスということもあるでしょう。
そしてそのRoonフォーラムの中でこのIQaudIOの人がRoonSpeakersについて質問して関心を寄せているのを見つけて、もしRoonの機能のなにがしかがラズパイにポートされたときに、それに機器のドライバーを組み込んだビルドを提供してくれそうなところが必要になりますので、このIQaudIOに目を付けました。(実際どうかわかりませんが)
またラズパイをAirPlay化することでRoonの応用の研究もはかどります。

IQaudIOは評判も良く、次のような製品があります。

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PI-DAC+

PI-DAC+ (31.5ポンド 約5300円) - ラズパイのGPIOを使って接続するDACでDACチップはTI PCM5122を採用しています。この種のオーディオDACボードはたいていはTI 5122かESSの9023を使っています。
PI-DACではRCAアナログ出力機能のほかにTI TPA6133Aを使ったヘッドフォンアンプが備わっています。このため3.5mm端子で直接(外部アンプ無しでも)音楽を聴くことができます。
http://www.iqaudio.co.uk/home/8-pi-dac-0712411999650.html

PI-AMP+ (45ポンド 約7600円) - TIのクラスDアンプチップを使ったデジタルアンプで、スピーカーを鳴らせます。これはPI-DAC+と組み合わせて使うことができます。
http://www.iqaudio.co.uk/home/25-pi-amp-0712411999698.html

PI-DigiAMP+ (55ポンド 約9300円) - これはDAC機能とアンプ機能がひとつになったものです。
http://www.iqaudio.co.uk/home/9-pi-digiamp-0712411999650.html

専用ケース - ラズパイにPI-DACを付けたまま収納できるケースです。色がいくつかあります。
http://www.iqaudio.co.uk/home/10-pi-case.html

私の場合はDACとしてほしかったのと、単体でヘッドフォンが聴けるようにしたかったのでPI-DAC+を買いました。
これらは上記のIQAudIOのサイトから直接購入できますし、日本でも輸入しているところがあるようです。
私はModMyPIというイギリスのサイトが少し安かったのでそこから買いました。またModMyPiでもRaspberry PIとPI-DAC+の組み合わせ専用ケースがありますので、それも買いました。
https://www.modmypi.com/

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PI-DACを付けたまま格納できるケース

RPI2(ちなみに日本では略してラズパイと言いますが、海外ではRPIといいます)が約五千円くらい、PI-DACが5300円ですから、送料とケースも含めて一万数千円くらいです。発送も翌日発送と迅速で、安い海外郵便を使って届くまで約一週間ほどでした。

* ラズベリーパイにおけるオーディオへの応用とUSBの功罪、GPIO(I2S)の利点

さて、なぜGPIO(40ピンの拡張スロット)を使うかということですが、これはオーディオ的にUSBよりI2Sのほうがいいじゃない、という他にラズベリーパイならではの問題があります。それはラズベリーパイが普通のコンピュータとは異なり、あくまで低価格コンピュータだということです。
そのため回路もコストダウンのため合理化・簡易化されてます。
例えばラズパイ内蔵のイヤフォン端子の音声出力はDACやオーディオCODECは高価なので使われずに簡易アナログ変換を使っています。ラズパイ自体が学研の科学の付録みたいなものですから。。(実際にPI Zeroは雑誌の付録になった)

簡易化のためUSBバスもネットワークと供用され、USBトラフィクがネットワークトラフィックと競合してしまいます。
これはVolumioの前身のRaspyFiのときにすでに問題視されていました。下記リンクのこの件について書かれた記事はRaspyFiの人が書いたものです。私も2013年のうちの記事にもちょっとコメントを入れてありますが、当時はUSB DAC以外の出力機の選択は無かったと思います。

Anatomy of a Pi – Raspberry Pi i2s and usb connections (ラズベリーパイとUSB接続)
http://www.raspyfi.com/anatomy-of-a-pi-raspberry-pi-i2s-and-usb-connections/
Anatomy of a PI – USB Audio quality and related issues on Pi (ラズベリーパイにおけるUSBオーディオ品質と関連する問題について)
http://www.raspyfi.com/anatomy-of-a-pi-usb-audio-quality-and-related-issues-on-pi/

このため初期のラズパイ系のオーディオスレッドだとUSB DACを使った時にハイレゾ音源でクリックとかポップが起こるって報告が書いてあったりします。これはパワーアップされたラズパイ2では力で改善されましたが、やはり根本的な対策は専用線である別経路のGPIOを使うことです。
もともとラズパイのオーディオ出力はHDMIが想定されていました。ラズパイのオーディオ取り組みの最初期のRaspbmcではHDMIを採用し、RASPYFI(現Volumio)でUSB DACに対応し、それ以降でGPIO対応サウンドカードが増えてきたというのが流れだと思います。

また、ラズパイみたいなシンプルなコンピュータで高性能なUSB DACを使うのも面白いですが、やはりラズベリーパイの良さは安さ・手軽さと、世界の広さですので、今回はGPIOサウンドカードの一つであるPI-DAC+を使って見ました。

* ラズパイデジタルプレーヤー

これは試しに作ってみた「ラズパイ・デジタルプレーヤー」です。作ってみたというか、PI-DAC+そのままですが、ここまでできますという例です。

使用したのは
- Raspberry PI2
- IQaudIO PI-DAC+
- PLANEX GW-USNANO2A (無線USBドングル)
それと初回は設定のために有線LANネット接続とキーボード、HDMIモニターが必要です。

手順は下記のとおりです。
まずドライバーの組み込まれたビルドが必要なので、IQaudIOのページからドライバー組み込み済みのイメージファイルをダウンロードします。VolumioやRune Audioなどいくつもありお好みで選べます。
http://www.iqaudio.com/downloads/
次にそのイメージファイルをWin 32disk imagerなどでmicroSDに書き込みます。Rune Audioは最低16GB必要です。このサイトはダウンロード速度がわりと遅めなので、注文したら到着前にここまで用意しておいたほうが良いと思います。

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PI-DAC+の組み立て

到着したら、PI-DAC+とラズパイ2を組み合わせます。まず基盤間のスペーサーになる4本の足をスクリューして設置し、GPIOのスロットにPI-DAC+のピンを差し込みます。ハンダは不要です。

次にラズパイ2にキーボードとモニターとLAN線をつなぎます。あとでWiFi設定をするので、LAN線は無線LANに接続しているルーターなどから取ります。
電源を投入するとHDMIにつなげたモニター上でRune Audio(Arch Linux)が立ち上がってブートが始まります。ブートが終わったらコマンドプロンプトにUser:root、Password:runeで入ります。
コマンドラインからifconfigとタイプして、出てきた数字の中からinet=xxx.xxx.xxx.xxxという数値を探します(ラズパイのipアドレスです)。

iPhoneで無線LANに入って、ブラウザからhttp://xxx.xxx.xxx.xxx/とタイプします。するとRune UI(MPDクライアント)が表示されます。
ビルドによってはhttp://runeaudio.local/でもつながるかもしれません。

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Rune UI (iPad)

ラズパイにWiFiのUSBドングル(ここではPlanex)をさしこみます。
Rune UIの右のメニューのNetworkからWiFiの設定をします。WiFi機器の再読み込みをしてWiFiドングルをリストから選びます。それをクリックし、出てくるリストで自分のWiFiネットを探してWPAかWEPのパスワードを入力します。

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直接イヤフォンを使えます

これで設定は終了です。あとはキーボードやモニターは不要です。抜いてかまいません。
またラズパイは5Vで動作するので、モバイルバッテリーでも駆動できます。

以後の操作はiPhoneで行います。もっとも簡単なのはUSBメモリに音源を入れてRune UIからLibralyで選択して再生することです。

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iPhoneからAirPlayで再生

またこのままでAirPlayにも対応しているので、この場合はUIすら不要です。電源を立ち上げるだけです。iPhoneからはApple Musicが効けますし、このままでRoonからはAirPlay機器として再生が可能です。RoonでAirPlayゾーンを設定してください。シグナルパスの品質はハイクオリティです(ロスレスより落ちる)。

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USBメモリとWiFiドングルの追加

実際にPI-DAC+の3.5mm端子にEdition8やAK T1pを入れて聴いてみましたが、さすがにI2S接続しているだけあってわりと音はよいですね。
これらの高性能ヘッドフォンを使用してもあらがあまり無いくらいの割と良い音質で聴くことができます。最高かというとそこまでではありませんが、コストパフォーマンスはかなり良いと思います。
Apple MusicをAirPlayで聞いても上々です。
あとはバッテリーとのマッチングをなんとかすれば。。

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バーソンのアンプとAirPlay DAC

あとはAirPlay対応DACとして、PI-DAC+のRCA出力とアナログ入力ヘッドフォンアンプであるパーソンのSoloistとRCAケーブルでつなげても使いやすく音質が高いものとなります。この場合にはPC上のRoonからAirPlayで再生すればバーソンがワイヤレスで手軽に使えます。

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Roonでの再生画面(左)、Rune UIでの表示(右)

勉強のために買ったのではありますが、ケースなどを付けてあげればかなり実用的にも使えそうです。

こうして自分がほしいと思うモノを手軽に実現できるのがこうしたシステムの神髄かと思います。
posted by ささき at 22:30 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月05日

新世代のハイエンドケーブル、Crystal Cable Next登場

待望のCrystal Cable製のハイエンド・イヤフォンケーブルが発売されます。Astell&Kern Portable Cable-Crystal Cable Nextです。
Astell & Kernとのコラボモデルであり、国内ではアユートが販売します。製品紹介ページは下記リンクです。
http://www.iriver.jp/products/product_120.php

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Astell & Kernのバランス端子に最適の2.5mmバランスプラグ仕様で、イヤフォン側はカスタムなどに使われる2pinと、いまや広く使われているMMCXの二種類が用意されます。

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左: 2pin、右:MMCX

Crystal Cableはハイエンドケーブルの代名詞的な存在のひとつで、うちのブログでもいままでにCrystal Cableの線材であるPiccolinoを使ったJabenのHD800用のヘッドフォンケーブルと、Microを使用したsimilar techのDIRIGENT crystal microケーブルをレビューしたことがあります(現在はどちらも絶版)。

Crystal Cableの特徴は美しい外観と、独自の冶金技術による金と銀の合金を線材として用いていることです。線材は銀の結晶間の隙間に金を埋めるという技術で作られ、これによってより太い銀や銅の線材よりも高い電導率を持ち、さらに曲げに強いという長所もあると言います。

Crystal Cableはオランダのケーブルメーカーです。代表者は女性で元ピアニスト、いまは同じオランダのシルテックの社長の奥様です。
シルテックとは施設は一部共用していますが、基本的に別ブランドで別に製品を開発しています。

いままでCrystal CableはPiccolinoとかMicroといった製品シリーズがあったのですが、このNextは新しいラインナップでPiccoloをベースとしているようです。特にポータブル用として高音質のみならず耐久性や肌への優しさも考慮されているのが特徴です。特にAstell & KernのAK T8iEの交換ケーブルとして期待されます。

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まだほとんどエージングされていませんが、
さっそく実機をAKT8iEと組み合わせて軽く聴いてみました。
MMCXプラグはかなりしっかりはまります。ケーブルはとてもしなやかで柔軟、前にPiccolinoを試した時より柔軟に思えます。線はわりと太いにもかかわらず、硬さをまったく感じさせないほどしなやかなのが不思議な感覚です。とても軽く感じられます。
高性能ケーブルはたいてい太くて硬く、ヘッドフォンにはよくてもイヤフォンに合わせると取り回しに難があったりしますが、Nextはそうしたことはありません。

AK380AMPのバランスで聴いてみました。
たまたま再生したのがアカペラのヴォーカルもの(フィンランドのラヤトン)だったのですが、生々しさが異常なほどで、はっと思って思わず手に持ってたAK380を落としそうになりました。CDリッピングですけど聴いてて、あれ?これってハイレゾで買ったっけ?とほんとに液晶のデータ表示を見直してしまいました。

高域の伸びや低音域の沈みと豊かさ、空間の深さ、いずれも圧倒されますが、次に気がつくのは音再現があくまで自然で滑らかなことです。
普通ケーブルは銀線っぽいか、銅線っぽいかどちらかで、特に箱から出したてではそれを強く感じますが、Nextはそうした素材のバイアスをあまり感じさせません。あくまで自然な音再現に聞き入ってしまいます。AK T8iEとの相性はとても良いと思います。

このケーブルの良い点は情報量やワイドレンジ感のような性能の高さだけではなく、音楽的な豊かさと自然さを高い次元で調和していることだと思います。そうした上質な音再現が音の高級感というかハイグレードさを感じさせます。やはり元ピアニストがやってるブランドですね。
ちょっと聴いてもいままで聴いたケーブルの中でもトップクラスであることは間違いないと思いますが、もう少しきちんとエージングして聴いてからまた詳しく書きたいと思います。


プラグが2.5mmなので3.5mmの機種で使いたいときは、このリンクでいま単体売りしているAK T5p用のショート変換ケーブルを用意しておくとよいのではないかと思います。この変換ケーブルはかくれ人気商品のようです。

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Crystal Cable Nextは本日から予約受付開始で、2016 年2 月12 日(金)から販売開始ということです。販売は直販のアキハバラe市場、フジヤエービック、e☆イヤフォンの限定です。
価格はオープンで、直販価格 99,980円(税込)です。2月13日のポタ研でも聴くことができるでしょう。

これはぜひJH AudioのSirenシリーズ用の4pinでも作成してほしいですね!
posted by ささき at 11:03 | TrackBack(0) | __→ AK100、AK120、AK240 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月03日

Astell & Kern 第三世代のスタンダード機、AK320レビュー

Astell & Kernから第三世代のスタンダード機ともいうべきAK320が発売されました。

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アユートの製品ページはこちらです。
http://www.iriver.jp/products/product_117.php

AK320はAK380の提供する素晴らしい音質をより多くのユーザーに届けると言う方針のもとに開発されたと言います。AK320は単なる廉価版の枠を超えて、最上位機種のAK380の音質的なキーポイントであるDACやクロックをそのまま採用しているところがポイントです。ただし細かい相違点もあります。
本記事ではAK380との共通機能については詳しくは解説しませんが、主にその違いについてみていくことにします。共通機能についての詳細はAK380のレビューをご覧ください。

* AK320とAK380の主な共通点

- AKM DACチップ、VCXOクロックなど音の主要部品が同じである。
このことからAK320は音質という点でAK380にかなり肉薄していることがうかがえます。

- 周辺機器が共通で、AK380AMPが使用可能(CDリッパーやクレイドルも共通)。
AK380はいわばAK500をばらばらにして、分散したようなシステム的な側面も持ちます。その点ではこうした周辺機器の存在が大きいのですが、AK320ではほとんどAK380用のものを使うことができます。拡張性が高いというわけですね。

- ソフトウエア的にほぼ同等(AK connect機能も使えます)。
AK380は優れたネットワークプレーヤーとしての素質も持ち、スマートフォンから操作ができるなど、音質の高さだけではなく優れた機能を持っています。AK320ではそれもほとんどそのまま使うことができます。

* AK320とAK380のおもな違い

前述のようにAK320は主要なAK380の長所をそのまま引き継いでいて、かつ価格をほぼ半分にした優れたコストパフォーマンスを持っています。しかしながらやはり相違点もいくつかあります。

内蔵メモリ容量

AK320 128GB
AK380 256GB

ここは大容量の必要なハイレゾ時代に残念なところですが、前にAK240のときも内蔵256GBというのはなかなか実現が難しいというのを聞いたことがあるので、コストを低減するには仕方ないトレードオフかもしれません。

DSD再生能力

AK320 PCM変換(上限DSD128)
AK380 ネイティブ再生可能(上限DSD256)

これはXMOSが省略されているというゆえだと思います。前に書いたようにDACチップがDSDをサポートしていても、デジタルの搬送自体がDSDに対応していないとネイティブ再生はできません。そのためにはXMOSなどが必要です。AK380では11.2MHzまで最近ネイティブ再生可能になったのでAK380の大きな差別ポイントではありますね。考慮点としてはここはDSD音源を良く使うかどうかというところだと思います。

PCM再生能力

AK320 上限192/24 (384/32までダウンコンバート再生可能)
AK380 上限384/32

これは現実的にハイレゾと言っても192kHzが最大のものが多いので大きな問題にはならないようにも思います。

筺体

AK320: アルミニウム、ガンメタル色、約217g
AK380: 航空機グレードアルミ(ジュラルミン)、メテオリックチタン色、約230g

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AK380の方がやはり全体的な質感が優れていて、ここも差別化にはなりますね。質実剛健に音質のみ聴ければよい、というのであればAK320がクローズアップされてきます。

背面

AK320: アルミ
AK380: カーボン

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AK380の背面はAK240から伝統のカーボンで、AK320の背面はAK120IIに似たアルミと表面加工がなされています。

ボリューム位置

AK320:背面(AK Jrタイプ)、
AK380:側面(従来AKタイプ)、

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Astell & kernのAK240以降の特徴的な「光と影デザイン」は左手で持ちやすかったと思います。AK380もそうですが、この場合は左手で持って右手でボリューム操作することが前提だったと思います。
AK320は右手で片手持ちして親指でのボリューム操作がしやすく、この点でも多少変わったと感じます。

付属ケース

AK320 : Conceria WALPIERのレザーケース・ブラック
Ak380 : INCASのサイドカーフチュドール・ブラウン

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これも質感の差があります。やはりAK380のケースの方が高級感を感じるところです。
ただしAK320のケースもAK120IIと比べると高級感があります。

* AK320とAK380の音質と使用感の差について

ボックスはAstell & Kernのスタンダードで外箱と内箱の組み合わされた立派なものです。内箱にはきれいにAK320が格納されています。

IMG_9358_filtered[1].jpg  IMG_9058_filtered[1].jpg  IMG_9061_filtered[1].jpg

実際に持ち運んで比べると、スペック以上にAK320のほうが多少小さく感じます。また使っていて気がついた点ですが、AK320のボリューム操作は右手で片手で持った時に親指で操作しやすい感じです。

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またAK320では右上の出っ張りがないので持ちやすく感じます。

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AK380とAK320はDACが共通であるということから音質的にも似ていることが想定されますが、DSDネイティブ再生がないという点から回路も異なると思われます。XMOSがないということから、よりシンプルになっているかもしれません。またAK240とAK120IIに見られたような音のチューニングの違いもあるでしょう。AK240ではクラシック向けに味付けされ、AK120IIではジャズ向けと聞きました。

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実際にAK320を数日エージングして聞いてみましたが、AK320とAK380の音質差はたしかにあると思います。音質と言っても音傾向が違うと言う感じで、全体的な音質レベル・性能とで言うとかなり近しいので、差は好みの部分かもしれません。その点ではやはりAK320のお買い得感はあると思います。
音の差に関してはケーブルで違いを楽しむ人ならば差ははっきりわかるくらいあると思います。

細かいAK320とAk380の音の差ですが、Layla UF、マベカスさん、FitEar Air、Dita Answerなどの高性能イヤフォンでくらべてみました。だいたい傾向の違いは同じに感じ取れます。
AK320はAK380とくらべるとより高い方が強く感じられ、ヴァイオリンの高いあたり、中高域が刺激的に感じられます。きついというくらいではなく、AK380より少し強めに感じます。
また感じられるのは、全体にAK380のほうがややキー低めに聞こえます。同じ女性ヴォーカルで比べてもAK320は少し若く聞こえる感じです。
低域表現では、いわゆる重低音の部分はAK380のほうが量感があり、通常の低音ではAK320のほうがやや強く鋭く聞こえるように思います。AK320のほうがドラムのインパクトに少し鋭さ硬さがあります。パーカッションの打撃感、インパクトはAK320のほうが鋭いようで打ち付ける感覚がわかりやすいですね。逆に言うとAK380は誇張感が少なく感じます。

情報量とか厚みという点ではAK380のほうがあるように思います。弦の鳴りとか、ヴォーカルの表情とか細かいところで豊かというか倍音が載ってる感じがします。AK320はちょっとドライにでる感じでしょうか。ただ細かい音のチッとかピンって音の明瞭感はAK320のほうが鋭く聴き取りやすい気はします。
音場はAK380がやや広いように思いますが、大きな差ではないと思います。

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誇張して言うとAK380はややアナログっぽい暖かみが少しあり、しかし強調感のなさ、味付けの少なさはAK380です。そういう意味ではむしろAK380の方がニュートラルだと思います。AK380の方がややリッチで深みがある音に思えます。
AK320の方は全体にやや細身でシャープな感じ、より若い感じの音で元気の良さも感じます。ただ少しドライに思えます。高域も低域もAK320の方が強調感があり、低域のインパクトもAK320の方が強く感じます。

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DSDネイティブに関してですが、AK320とAK380にそれぞれBlue Coastの同じ曲の96K PCM版とDSD64版を入れて聴いてみました。
AK320ではたしかにどちらも区別ができませんが、AK380ではやはりDSDの方がデジタルっぽい音のエッジのきつさが緩和されてDSDらしい再現にはなるので違いはあると思います。

AK320ではAK380専用アンプも使用ができます。色が異なり多少形は異なるためやや一体感がなくなりますが、あまり問題はないと思います。ボリュームも問題なく使えます。
AK380AMPを加えると音はよりいっそう洗練されて上下が伸びるようになり、音の厚みも加わります。やはりAK380と同じアクセサリーが使えるというのは大きいと思います。

* まとめ

実質的にAK320とAK380の関係はAK240とAK120IIに似ています。メモリ容量や筺体デザインもそうですが、音質の差も似ています。またAK320の背面パターンはAK120IIを感じさせます。個人的にはAK120IIの音質に関してのコストパフォーマンスは優れていたと思いますが、カタチ的にAK240との差が大きかったことで見た目で損をしていたマシンかなと思います。その点ではAK320はAK380にそう格差を感じさせずに、かえって改良された点もあると思います。ただAK380の方がやはり全体的な質感などはケースも含めて高いとは言えます。
AK380は音の素材感の良さと音の相性からAK380AMP付けっぱなしにして音質をさらに上げて使いたいDAPで、AK320はちょっと強調された音再現から単体で楽しみたいDAPだと思います。

AK320とAK240とはシリアスに比べてはいませんが、おそらく音質レベル・性能的にはAK320の方が上ですが、やはりシーラスの音はそれなりに魅力的なのでここも好みのところが大きいかもしれません。またAK240はAK320や380とくらべるとなんと言ってもコンパクトさが魅力です。

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聴き比べから離れて、単純に音楽を聞いた感じでは、個人的な好みではありますがAK320ではマベカス+シグナルとの相性が抜群だと感じました。AK380だとlayla UFを選ぶと思います。その辺もあるので、音で選びたい人は試聴してみるとよいかもしれません。

ただ音質のレベルという点で言うとAK380とAK320ではそう大きな差はないと思います。コストパフォーマンスで言うとAK320はかなりお勧めです。AK320とAk380の差をわかりやすく書くためにやや誇張気味に書いたところもあるかもしれませんが、AK320とAK380の差よりもAK320/380と他の機種の差の方がずっと大きいと言えます。たとえばAK380とくらべるとAK320の質感は落ちると書きましたが、他のDAPに比べると質感は高くトップクラスだと思います。
そうした点ではAK320はAstell & Kern第三世代のスタンダードモデルの名にふさわしい優れたDAPであるといえるでしょう。
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2016年02月01日

Triple.fiの進化、JH Audio TriFi レビュー

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いまはイヤフォンの黄金期と言っても構わないでしょう。10万円をはるかに超える高性能イヤフォンが駅前の量販店でさえ簡単に手に入ります。とはいえ、昔はイヤフォンなんかはただのWalkmanのおまけ程度、形もラジオについているような昔ながらのイヤフォンと変わり映えはありません。
それがいまのようにカナル型(インナーイヤー型)の高性能イヤフォンの隆盛につながる流れがはじまるのはだいたい10年ほど前にさかのぼります。その理由はこの時期にプロ用のステージモニター(IEM - In Ear Monitor)がコンシューマー用イヤフォンに影響を及ぼしてきたからです。

そのころ、iPod、MP3プレーヤー、ポータブル・ヘッドフォンアンプなど様々な新製品に魅了された日米のユーザーたちは、音の出口であるイヤフォンでもより高い音質を目指していました。彼ら(私も含め)は市場の製品に飽き足らず、ネットコミュニティを通じて情報を交換し合い、しだいにプロ向けの製品に目を向けはじめました。
そしてShure、Westone、UE、Etyなどのプロ用メーカーがコンシューマーから注目され、コンシューマー市場に参入を始めます。
(たとえばShureのE2cのcは従来と異なるコンシューマー向け販路モデルを示しています)
そしてプロ市場からのIEMという新しい遺伝子を組み込まれて、コンシューマー向けイヤフォンは新たな進化をはじめました。

その時期に重要な役割を果たしたイヤフォンの名機が昨年あらたに生まれ変わりました。ひとつは先にレビューしたWestone 3をベースにしたWestone 30、そして今回レビューするUE Triple.fi 10proをベースにしたJH AudioのTriFiです。これらの当時のオマージュと言える新作を語ることで、この10年というイヤフォンの歴史を俯瞰するにはよいタイミングと言えるかもしれません。
またどちらも日本限定という点もこの間の日本市場の発展を考えさせられます。

* ジェリーハービーとUE Triple.fi 10 pro

Westoneが自社のWestone 3を進化させてWestone 30を作成するのは説明不要でしょう。ではJH AudioのTriFiの場合はなぜ会社の違うUEのTriple.fi 10 proがベースなのかというと、そこにジェリーハービーという偉大なエンジニアの作品というつながりがあるからです。今回の記事はジェリー自身に聞いたTriFiの情報を参考にしています。

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ジェリーハービー

1995年、ジェリーハービーはヴァンヘイレンに請われて彼としては初めてのイヤーモニター(以降IEM)を作ります。それは好評であり、彼はUltimate Earsという会社を作り、そのIEMはUE5となります。
そしてUltimate Earsは順調に大きくなっていきます。

2006年2月、HeadfiではCESで発表されたShureの新型イヤフォン、E500の話題で持ちきりでした。価格の高さの話題性もさることながら、トリプルドライバーというスペックはみなの期待を集めていました。しかしそのころ、一つのうわさが書き込まれました。"UEがトリプルドライバーの新型を開発しているらしい"。
その噂はすぐに広まり、"Super.fi 10か?"、"UEの新型はカスタムのUE10ベース"、"E500と同等以上か"などと、またたく間に新型イヤフォン論議に火を注ぎます。やがてさらにWestone 3が加わることで高性能イヤフォンの新世代に対しての期待感が燃え上がっていきます。
そしてそのUE新型の名称はSuper.fi XXXであるらしいという情報が伝わってきます。
ジェリーに聞くと、このSuper.fi XXXという当時の名前は本当で、XXXはトリプルドライバーを意味していたそうです。しかしこれはあくまで内部コード名であり、XXX(トリプルエックス)は同時に成人指定映画という意味も持つのでいずれ名称変更が必要になりました。そこでHeadFi上で名称公募が行われます。

そして同年9月、その新型イヤフォンの名称がUE Triple.Fi 10 proと正式に決まりました。日本ではよく10proと呼ばれますが、私は10proって略すとUE10pro(カスタム)と区別ができないなあと思って、HeadFi略称のTF10を使っていたのですが、カスタムを普通の人が買うなどとはまだ遠い時代の話です。
TF10の発売開始は遅れ、一般に行きわたり始めたのは年を越した2007年となりました。私は4月にEarphone Solutionからリミテッド版(プリオーダー分でケースが付く)を入手し、ブログに記事をアップしました。
Triple.fi 10 レビュー

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Triple.fi 10 proとRSA Tomahawk

そしてここからジェリー・ハービーという名前が一般のオーディオマニアにも知られるようになります。
なぜならTriple.fiが出た時にその箱に設計者としてジェリーハービーの名前が書かれていたからです。ジェリーは当時を振り返って、あれはUEがやってくれた最大の功績だったよ、と冗談めかして語ってくれました。ジェリー・ハービーという名を世に知らしめたのはこのTriple.fiなのです。

Triple.fi 10はトリプルドライバー機で、低域に2基、高域に1基のBAドライバーを採用している2Wayです。TF10では低域の多すぎた前作(5 pro)がオーディオファイルに人気がなかったため、よりオーディオファイル向けのチューニングを施したかったというのがジェリーの方針だったそうです。
詳しくは2007年にレビューしていますが、簡単にまとめると音質の良いところは高域がきれいで切れがあり、低域がたっぷりあってスケール感があるということ。
また弱点としては音質ではよく言われたことですが、中域が引っ込む、ヴォーカルの明瞭感がいまひとつというところでしょう。
また装着性でも筺体が大きくて装着に難がありました。しかしこれは当時のトリプルドライバー機には酷かもしれません。ちょっと前のイヤフォンなどはクロスオーバーがイヤフォン内に入らずに外に出ていたくらいですから。

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Triple.fi 10 proとRSA Tomahawk

そのころ、UE社内では製作者であるジェリーとUE経営側の対立が深刻化していました。UE経営側はTriple.fiを安く作れと指示したのにもかかわらず、ジェリーは音質を優先するべきだと主張したことで対立がおこり、製作は隠れて行うほどだったと言います。ジェリーは初志を貫き、10年後にいる我々にとって、どちらが正しかったかは言うまでもないことでしょう。

その後ジェリーはUEを離れます。スティーブジョブズやマークレビンソンがそうであったように自ら作った会社を出たわけです、みずからが本当に作りたいものをつくるために。
そしてジェリーはJerry Harvey Audio - JH Audioを設立します。

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JH Audio JH13

2009年のCanJamでJH AudioはJH13 proを発表します。それは片側6機のドライバー、各帯域に2基ずつのドライバーを配置するという画期的なものでした。そしてUEもUE18を発表し、さらにJH AudioはJH16を発表するなど、一般ユーザーも巻き込んだ戦火はカスタムに広がります。そしてこのころから一般ユーザーがカスタムを強く意識しだしたと思います。
このように、この10年のイヤフォンの進化の陰にはジェリーハービーがいました。その代表作のひとつはやはりTriple.fi 10 Proになるでしょう。
その高い音質はユーザーを集め、Triple.fi 10はロングセラー機になっていきますが、それも惜しまれつつ生産終了してしまいました。

* JH Audio TriFi

そしてTriple.fi発表から10年の時を経て、Triple.fiの正統な後継機が同じジェリーハービーの手によって設計されました。それがTriFiです。

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ミックスウェーブのTriFiページは下記リンクです。
http://www.mixwave.co.jp/c_audio/c_news/caudio_news151217_02.html
TriFiは日本のみ販売、1000個限定でミックスウェーブから販売されます。これはTriFiは日本からの強い要望によって出来たからということです。たしかに海外に比べると10pro人気は高いように思えます。

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価格はTriple.fiの発売時の正式価格(米価格)と同じくらいだと思いますので、米国価格では10年前からの据え置きという感じです。ただし日本価格が当時よりやや高めと感じるのはこの10年の間の円ドル為替差によるものだと思います。
日本限定といってもWestone 30とは異なりチューニングに特に日本の音楽を考慮しているわけではないということです。これは別に刊行される予定の日米カスタム開発者座談会でも出てきますが、ジェリー自身は特定の音楽をリファレンスとすることは好まないということです。

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AK320とTriFi

TriFiのドライバー構成はジェリーの話によると、Triple.fiと同じく低域x2、高域x1の2wayだそうです。あえてTriple.fiと同じ構成を取ったわけですが、中身は大きく異なります。まずドライバーは高域も低域も刷新されています。低域ドライバーは新しくより高性能のもので、より量感が出てよりクリーンであるということです。高域はさらに上に伸びているということ。そして今回新しくFreqPhaseを採用しています。これは前はなかった技術なのでこの導入が目玉の一つです。そしてもちろんクロスオーバーも新設計されています。
つまり前と同じ「クラシック」な低域x2、高域x1というデザイン構成を最新の技術(ドライバー、クロスオーバー、FreqPhase)で作り直すというのがTriFiです。そこがまたTriple.fiの直系たる所以です。実際にFreqPhaseは音場だけではなく、高域の伸びの良さにも関係しているということで、技術は単体ではなく相互補完関係にあります。
ジェリーの言によると、TriFiを設計した狙いは以前のものよりさらに良い音質、さらにより良い装着性を目指したということです。彼の言葉のなかでもよく「前と比べると」という言葉が出てきていたので、やはり設計には前のTriple.fiを意識してそれが根底にあったことがうかがえます。

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外観は以前のTriple.fiとは大きく異なりますが、よりコンパクトに作られていて前の大きくて装着性に難があった点を改良したことが分かります。形状はギターのピックを模したもので、これは最近のJH Audioユニバーサル機の特徴を引き継いだものです。
またフェイスプレートは限定品らしく、マザーオブパール(真珠母)というユニークで高級感のある素材を採用しています。これは名前の通りに真珠の母体になる貝殻の虹色の光沢部分のことです。主に装飾品につかわれますが、イヤフォンに使われるのは珍しいことでしょう。
本体カラーはTriple.fiを思わせるブルー(ブルーパールカラー)で、マザーパールのフェイスプレートは限定品ならではの豪華さを感じさせます。
ケーブルは2ピンでリケーブルできます。

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肝心の音質ですが、TriFiはかなり低い音まで再現し、低域の量感がたっぷりあってTriple.fiの直系を感じさせます。低音域は強調感はあるが膨らんだりするものではなく、すっきりと質感の良い表現です。ジェリーはTriFiではTriple.fiよりも数dB低域を上げたと言っていました。それと新型ドライバーの効果か、低域はたっぷりとありながら質感の良いすっきりとした再現を可能にしたと思います。ベースのパンチ・アタックも気持ち良いものがあります。
深くて量感がある低域が音楽の迫力と雰囲気を上手に作り上げてくれ、エレクトロ系のロックやポップには特に良く合うと思います。
クラシックでもオーケストラの迫力を十分感じられます。旧Triple.fiの頃はEty ER4などが普通だった頃なので、旧Triple.fiでオーケストラが楽しめるというところに単に感動したものだけれども、それをちょっと思い出しました。スケール感が良いのは音場の広さにFreqPhaseが効果的だからだそうです。

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特筆したい点は低域の量感がたっぷりあるのにもかかわらずヴォーカルが埋もれずに明瞭に聞こえる点です。ヴォーカルの質も高く、肉質感豊かに細かい声の震えも良くわかります。ここが旧Triple.fiとの大きな違いでしょう。
Triple.fiは初期の2way機であることを考えると致しかたないと思いますが、10年も時間が経った今、最新の技術でそこを作り直したいと設計者が考え、ユーザーが改良されたTriple.fiを望むのは当然のことかもしれません。
この辺の音のコメントを話したところ、これはクロスオーバーの改良とFreqPhaseの効果だと言うこと。3wayなみにスムーズな周波数特性を2wayが持つというのもこの時間の流れを感じます。またFreqPhaseがさまざまなところで効いているというのもわかります。

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AK JrとTriFi

私が第一印象として感じた前のTriple.fiとの音の相違は前のTriple.fiでは全体にやや硬めで荒削りだった音が、TriFiでは滑らかで前よりも柔らかく聴こえるということです。それとTriple.fiの特徴の一つだった高域の強さがTriFiでは少し穏やかに出ているように思います。
TriFiを聴くと低域が多いからといって決して低グレードの入門機と一緒にすべきものではなく、上質な音再現力を持っているのがわかります。ただ高性能イヤフォンではプロ用も兼ねてバランスの整った音造りなのに対して、TriFiではコンシューマーの音楽鑑賞用に割り切って低音域を強調気味に作ってると思います。

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プレーヤーとしてはAK Jr、Pono、ZX1などが相性が良く価格的にも適合するあたりだと思います。デジタルアンプのZX1と組み合わせるとTriFiの音の整って再現域の広さが分かり、強調感のある味付けのAK JrやPonoでは音楽的に楽しく聞くことが出来ました。
さらにAK320やPAW Goldなど良いDACを搭載した上級機と組み合わせると音の細かさがさらに感じられ、より端整で整った歪み感の少ない音再現が感じられるので、音再現の力の余力は十分あってTriFiのポテンシャルは高いと思います。
iPhoneとの組みあわせでもわりとバランスの良い音再現がありますが、物足りなく感じるでしょう。やはりそれなりの良いプレーヤーと組み合わせたいところです。

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TriFiとBeat Signal

またこれまでのコメントは標準ケーブルで書きましたが、音質面で一言書いておきたいのはTriFiはぜひリケーブルして使ってほしいということです。リケーブルしたうえで、他のリケーブルしたハイエンドイヤフォンと比べてみればTriFiの真の力、ポテンシャルの高さがわかると思います。(ただ2ピンプラグが固いので注意が必要です)
試しに2pinの高性能ケーブルであるBeat Signalを使ってAK320と組み合わせてみましたが、別物っていうくらい高い音質を発揮します。封印されてた能力が解放されたっていう感じです。
高域もキレが格段に上がり、低域はソリッドでパンチがあるのに加えて、全体的な解像力の向上は驚くくらい。逆にSignalはよいけれど低音がもう一つほしいと思っていた人にはTriFiとの組み合わせはうってつけだと思います。Signalの低域のゆるみないレスポンスが、低域多めのTriFiとあいまって驚きますね。SignalもTriFiも新たな面を発見する素晴らしい組み合わせです。
TriFiとSignalを足して10数万のイヤフォンと考えてもよいくらいだと思います。ちょっと三発の2wayとは思えないくらいのレベルというか、2wayならではのシンプルさゆえの良さかもしれません。
わりと低価格のLinumでもかなり顕著な性能向上があります。特にクリアさ・解像感の向上は大きいですね。ケーブルは好みですので、ぜひ自分なりのTriFiを見つけてください。そうするとジェリーが作りたかった、Triple.fiよりよりよい上質な進化がわかるのではないかと思います。

(追記:なお国内リリースでは当初TriFiは3wayと記されていましたが、JH Audioの英語リリースに3Wayと記載されていたからのようです。再度確認した結果はやはりTriple.fiと同じ2Wayということです。)

* UE Triple.fi 10 proとJH Audio TriFi

それではオリジナルと実際に聴き比べたらどうかということで、今回久しぶりにTriple.fi 10 proを聴いてみました。私の当時のものはすでにないので、わりと最近のものを借りて使いました。

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UE Triple.fi 10 pro

ひさしぷりに使ってみると装着は思ったほど難ではありませんが、これはこの10年の間にこのタイプになれたからかもしれません。やはり依然として大きくて装着しにくいということはあると思います。
TriFiはずっとコンパクトで極めてすっきりと装着することができます。ステムをみるとTriple.fi ではおなじみのUEのブタ鼻がわかりますが、ステムを比べても同じ2穴でもTriFiの方が細くて入れやすく出来ています。全体的にもTriFiは軽いですね。実のところFreqPhaseでは音導管の長さにより全体に大きめになりやすいようですが、その辺もTriFiではうまく処理されているようです。

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左がTriFi

しばらく使っていませんでしたが、最新のAK320などと合わせるのは新鮮な感じがします。
端的に言って、いま聴いてもよいですけれども、いま聴くと物足りないという感じもします。それが10年の変化というものでしょうか。

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AK320とTriple.fi 10 pro

全体にバランスよく、過不足はあまりなく聞こえます。それがオーディオファイル向けに設計したという感じでしょうか。低域もたっぷりあって、高域もシャープで悪くないのですが、全体にいま基準だとちょっと寸詰まりの間がします。音の広さも昔は広大だと思っていましたが、ER4sとかの時代ですからね。。
また中域表現の弱さはやはり感じられるところはあります。

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同じ曲でTriFiとTriple.fiをくらべてみました。まずTriFiの方が若干能率は良いようです。
Triple.fiからTriFiに変えると、ぱっと開けて広く感じられます。また見通しがクリアになって、楽器の音の形もより明瞭感が増して歯切れよくなります。なによりTrFiに変えるとより帯域全体に滑らかにつながり良く聞こえる感じがします。

特にTriFiでは中音域・ヴォーカルはより鮮明に聞こえるようになり、Triple.fiより前に出る感じがします。もうひとつはっきり分かるのは低音域がTriFiの方がより量感があって、かなりたっぷりとした低音域の豊かさを感じさせます。中音域が生きたことにより、より低音域を出すことができたという感じでしょうか。高音域はTriFiの方がより上に伸びているがきつさはむしろ少なめでしょう。比較するとTriple.fiは全体に痩せて荒く感じられます。

同じ2Wayの同じドライバー構成だから比較するとよくわかりますが、やはり全体の自然な感じが違います。TriFiの方が低音域がたっぷりあるのに逆にTriFiの方が自然に感じられるというのは興味深い点です。音場・音像の明瞭さもそうですが、これが10年間の進歩というものかもしれません。

* まとめ

TriFiを聴くと、Triple.fiの問題を一つ一つ減らしながら、全体を現代的にアレンジして進化させている、と感じます。
大きくて装着しにくかった筺体はコンパクトになり装着感は快適です。ヴォーカルが聞こえにくかった低域はいまやクリアで明瞭にヴォーカルが楽しめます。

音は良いけど荒削りだったTriple.fiが上質な高級機になった感があります。落ち着いているけれど伸びている高音域とか、全体に滑らかでスムーズになった点。そして
、低域の強さを音楽的に活かしている良さは引き継いでいます。これらにより、コンシューマー用として音楽を聴いて楽しめるイヤフォンになっています。
若い才能ある荒武者が、10年の修行ののちにFreqPhaseのような新たな技を習得し、弱点を克服し、長所を伸ばして成長して戻ってきたというかんじでしょうか。

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2wayのクラシックな構成でもいまの技術ならここまで出来るという挑戦でもあります。FreqPhaseなどジェリーのもたらした10年のイヤフォンの進化を語るにふさわしいイヤフォンと言えるでしょう。
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