今年もいろいろと書いてきましたが、今年度の振り返りの記事を書いて終わりとしたいと思います。
いわゆるこの「ヘッドフォンオーディオ」界隈では近年はイヤフォンがトレンドの主導をする傾向がありましたが、今年は年明けからスピーカー技術を取り入れたAudio QuestのNighthawkや、ポータブル平面型のOpo PM-3そしてAstell & KernのベイヤーコラボモデルであるAKT5pなどヘッドフォン復権とも言うべき盛り上がりがありました。
ポータブルでは久々のEditionシリーズであるEdition Mなんかもありましたが、ポータブル系だけではなく、ハイエンド方面でもMrSpeakersの野心作Ether、テスラ第二世代T1 2ndとAK T1p、ゼンハイザーHD800Sなど他にも多数発表がありました。
平面型はわりと定着してきたと思います。もともと平面型は新しい技術ではなくオーディオ黄金期に流行っていたものですが、いったん廃れて最近再び流行るきっかけとなったのはHiFimanとAudezeが推進材となったからです。その両者ともHE1000系やLCD4などトップモデルを更新しています。静電型もオルフェウス2やSTAXの新製品、ポータブルのShureなど驚きの展開となりました。
イヤフォン方面では近年のマルチBAの多ドライバー化のアンチテーゼともいうべき流れが出てきたことが注目事項だと思います。
ひとつはダイナミックの復権で、いままでのDita AnswerやIE800の流れを受けて、CampfireのLyraやAstell & KernのAK T8iE、ビクターのFX1100など、ハイエンド・ダイナミックの流れが定着してきたように思えます。
Shureのまさかのポータブル静電型であるKSE1500もやはりスタッフが語っていたようにマルチBAのアンチテーゼの一派と言えるでしょう。
またCampfire audioのOrion,Jupiterなどで採用されたアコースティック・チェンバー方式(チューブレス)も複雑化に対してのアンチテーゼの一種と言えます。
またカスタム方面ではハイブリッドが人気のカテゴリーとなり、マーヴェリックカスタム、FitEar Air, Justear MH-1/2などなど、たくさん人気機種が登場してきました。
また閉鎖空間の耳道におけるベントホールの問題も、そうしたハイブリッドモデルはもちろん、ちょんまげ3号のA.I.R.や64 AudioのADELモジュールなど注目をされました。
カスタムではWestone Sシリーズやオンキヨーのように一層の低価格化が進むとともに、3Dスキャナ・3Dプリンタの導入など新しい技術動向にも注目です。
それと今年はWestone 3のオマージュであるWestone30やTriple.fi 10 proのオマージュであるJH Audio TriFiなどかつての人気機種の10周年を祝うモデルも話題となりました。これらが日本限定というのもこの10年で日本市場の果たした役割の重さを感じさせます。
DAP(デジタルプレーヤー)では中国製DAPの隆盛は大方の予想通りですが、オンキヨー・パイオニア連合など国産も加わって戦国時代の様相を呈してきている一方で、いち抜けしているAstell & KernはAK380/AK320、AK Jrとラインナップを大きく広げました。
イヤフォンも含めてポータブル製品の価格帯は引き上げられていますが、普通はこうした従来の価格トレンドから離れた高価格製品はオルフェウスのようにメーカーの看板としてあるもので売れるものではありません。しかしポータブル製品の場合は売れ行きも好調であるというのがポイントです。つまり試しに作ったというものではなく、それが価格帯のレンジを引き上げて恒常的に商品選択の幅を増やしたと言えるように思います。
またポータブルアンプではChord Mojoが好評のHugoをついでより小型・低価格で発売されたのが大きな話題となりました。来年は拡張性を広げるアクセサリーの登場にも期待したいところです。
PCオーディオでは、、、なにかありましたっけ?と私が聴きたいくらい。それは技術トレンドに欠けているからだと思います。たとえばDoPによるDSDネイティブ再生やクラス2による96Kの壁の突破などの技術的なブレークスルーがなく、スペックもDSD11Mの浸透くらいで頭打ちに近い状態です。
ハイレゾはもはやマーケット用語であり、技術的なトレンドとしてはすでに48Kや96Kの壁を突破したときに終わってます。40kHzで数10dBも落ち込む「ハイレゾ対応」製品を技術的な壁を突破したと言えるのでしょうか。
MQAについては昨年末に話題となりましたが、対応機種がいくつか出たものの一年たっても市場に登場していません。PCでどうやって聴くかのガイドも十分に提示されていません。
ストリーミングについてはApple Musicの登場や日本での導入、年末のビートルズ、海外でのTidal人気など話題性はいまだありますが、技術トレンドと言うべきか。
ソフトウエアでも今年はPCの音楽ソフトウエアではRoonが海外では話題になっているということは知っていたのですが、RoonはAudirvanaやHQ Playerのようにソフトウエアで音質を高めると言うような方向性の技術主導のソフトウエアではなく、あまり興味が持てなかったということでうちの記事にすることはありませんでした。
PCオーディオ界隈はかつて技術トレンドの先端として、自分でも情報収集がわくわくと楽しみでしたが、最近は正直言ってかなり退屈です。普及期に入って安定したのだ、と言えば良いのですが、トレンドの牽引車に欠けると言う印象も否めません。
昨年の終りに来年(今年)はPCオーディオにできてポータブルにできないことはなくなる、と書いたのは予言というよりすでにその時すでにCelsus Companion oneなどを使っていたのでそう書いたんですが、さらに今年はAstell & Kernの第二世代機以降がDLNA互換のネットワークプレーヤーの機能を有するに至り、Mojoのアクセサリーでもそうしたモジュールが検討されているなど、PCオーディオ的なお株を奪ってしまったように見えます。ポータブルではさらに無線の方面でネットワークオーディオが発展していく期待感もあります。
スマートフォン方面ではあいかわらずの煮え切らないAppleの対応もありますが、Androidでは期待していたUSB標準ドライバーに失望し、レイテンシー向上で期待し、というところでしょうか。来年はさらなる薄型化のためにスマートフォンのイヤフォン穴の動向に注目でしょうか。
高音質アプリでは久々に本格的なiOSのRelistenが出ました。これは使いこんでいくとiPhone直でもAnswerのような高性能イヤフォンで不満ないようにはなります。
また個人的にはシンガポールのMookショウも興味深い経験でした。
今年はヘッドフォンアワードの表彰式の立ち上げしたり、カスタム座談会などの司会も面白かったですね。
現在もいろいろ活動していて、来年はなにか面白い報告ができれば良いなと思ってますが、まだわかりません。
さて来年はどうなるか。