Music TO GO!

2015年12月18日

日本向け限定モデル、Westone30

Westoneから新製品Westone30が12/26日に発売されます。バランスド・アーマチュアを採用していて3Way・3ドライバーのイヤフォンです。詳細はテックウインドさんのホームページをご覧ください。価格はオープンで市場推定価格は49,800円前後です。
http://www.tekwind.co.jp/information/WST/entry_450.php

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特徴

Westone30には二つの大きな特徴があります。
まずひとつは日本市場向けにサウンドデザインがなされている、日本限定モデルであるということです。これはWestone社のサウンドマイスターであるところのカール・カートライトが日本人好みにチューニングしたものです。
そのためにカールが日本のロック・ポップ、アニメ音楽などを研究したということ。

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Westone30

もうひとつはこれがあのWestone 3のオマージュになっているということです。筐体デザインは似ていますね。本体ロゴも数字の意匠化が踏襲されています。ドライバはWシリーズとは少し異なり、ネットワーク調整を一から日本向けに作っているということです。(つまり現行のW30とは異なります)

昔話を少しすると、2006年初頭のCESに3ドライバーという画期的なスペックを持ち、$500という「驚くほど」高価格のShureのE500がE5系の後継としてデビューして話題となりました。いまでいうハイエンドイヤフォンのはしりですね。それを同じ2006年にUE(というより当時のジェリー)が3ドライバーで追いかけて当初は別のコード名でしたがtriple.fi 10の発表をし、続いて2007年にWestoneが3ドライバーで3Wayという画期的なWestone 3を発表して追いかけるという展開になりました。それまではカスタムには3wayがありましたが、普通のイヤフォンでは2wayが一般的でした。
特にWestoneはこのモデルで一気に高性能コンシューマーイヤフォンの分野に躍り出た記念すべきモデルですね。モデル名もそれまでとは変わりました(Westone 2はこの後)。日本市場ではShureやUEの陰にあった感のWestoneがこのWestone 3で一気に表舞台に登場した感じでした。なかなか発売されずにユーザーがやきもきして待ち焦がれていたのを覚えています。
この後E500はさらにSE530となり、高性能イヤフォンの戦国時代がはじまります。それは「普通の市販イヤフォン」がカスタムに追いつく時代でもありました。そしてジェリーはUEを離れますが、それはまた別の物語です。

それからほぼ10年が立ち、この2015年末というタイミングにJH AudioがジェリーのUE時代のtriple.fi 10のオマージュであるTriFiを発表し、WestoneがWestone3のオマージュであるWestone30を出すというのは面白い符合であると思います。

音質

ここではWestone30とWestone 3を聴き比べてみました。たしかに似ていますね。ロゴはそれぞれ3と30の意匠化です。フィット感もほぼ同じです。ただ30の方はケーブルは新しいepicです。
試聴する時はチップは両方とも形とサイズを合わせてますが、同一のものではないので多少そこで違いが出るかもしれません。

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左がWestone30、右がWetone3

いままでのアルバム随想録を見てもらうと分かるように私はきわめて洋楽偏重な人なんですが、日本向けモデルということで今回は邦楽で選曲してみました。日本人アーティストで有名どころというと戸川純とかヒカシューですか、とか、アニメ関連なら再発されたYBO2でもいいよね、とか言わないで素直に狙ったあたりと思われる音楽でiPhoneで試聴してみました。

志方あきこ: Arcadia
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ヴォーカルにはさまざまな言葉を駆使して言語感覚を大事にする人ですが、Westone30では特に日本語歌詞の部分の明瞭さが高いように思いますね。Westone3よりも全体に音が整理されていてヴォーカル部分が良くわかります。また楽器パートはよりきれいに聴こえる感じがあります。

アンジェラ: 騎士行進曲
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最近のアニソンはヒーロー名連呼型が少なくなって寂しいんですが、これは合格。複雑な曲ですが、Westone30ではスケール感もよく表現され、スピード感も軍歌っぽい高揚感も魅力的に聞こえます。

中村桜: パンツアーリート
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こちらはリアル軍歌がベースですが、原曲の勇壮感とJ-pop編曲されたビートのスピード感がカッコ良く表現されてます。やはりヴォーカルが聞き取りやすく低域はWestone 3よりもわずかに抑えられているように思います。

Babymetal: アカツキ
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最近ようやく新アルバムの発表あったBabymetalのヴォーカルソロパート定番曲。これは武道館ライブ盤ですが、Westone30ではリードするピアノの音色がWestone 3よりもより好ましくなっているように思います。ヴォーカルはあきらかにWestone30の方が明瞭で声質がきれいに聴こえます。

遊佐未森: ロカ
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これはよくドライブでかけるんですが、Westone30では曲の持つ爽やかな雰囲気と遊佐未森の独特な歌声の気持ち良さがよく表れていて気持ち良く聴くことができます。3だとちょっとごちゃごちゃした音楽になってしまいます。

まとめ

Westone30は全体に高域のきつさが少なく全体的に音がうるさくなく整理されていて、かつ低域が中域にかぶらずにヴォーカル域を重視したチューニングがなされているように思います。また楽器の音色もより正しくきれいに再現されているようですね。
30はJ-Popあたりの録音のきつさを和らげるチューニングとも言えます。もともと低価格イヤフォンのためにきつめに強調した録音を、高性能イヤフォンで聴くときつ過ぎるのでそれを和らげると言ってもよいかもしれません。

また女性ヴォーカルがWestone3より明瞭感があり、好ましく聴こえます。ちょっと興味深いと思ったのはヴォーカルの発声は同じヴォーカルでも特に日本語歌詞の場合に好ましく感じられたことです。これは外国語は子音型が多いのに対して日本語は母音型であるというところとか、日本語の発声周波数帯域が低めということに関連しているように思いますがよくわかりません。
マスマーケット用のTVなんかは国別にスピーカーの音を変えることもあるようですが、こうしたあたりも突き詰めていくと面白そうです。

Westone30はJ-Popやアニソンなどを良く聴く人にお勧めだと思います。また洋楽でもロックポップには好みの合う人もいると思います。ぜひお店で自分の音源でも試聴してみてください。そしてこのイヤフォンという分野にも歴史があること、そして日本市場が大きくそこに貢献してWestone30があることもちょっと思い出してみてください。
posted by ささき at 12:01 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする