前回のヘッドフォン祭ではレッドプルエアレースとかぶると言う(私にとって)非常事態のため、一日しか参加できず、しかも一日目はいろいろ仕事があったので結局レポートは書かなかったのですが、今回はたっぷりとレポートを書きました。
* Chord Mojo発表会
ここではアユートの藤川氏が概要を紹介したのちに、私がデモ機を使った使用感と音について述べ、その後にChordのジョンフランクスにインタビュー形式でMojoについて対談すると言う形で参加しました。
Mojoについては先に下記の記事を書きましたので、こちらを参照ください。
Chordの新しいポータブルDAC内蔵アンプ、Mojoレビュー
ジョンへのインタビューについては、なかでハイエンドメーカーとしてのポータブル市場への想いと言うことで、「日本に来た時、タバコケースでアンプ作って盛り上がったりとかエンスージアズム(マニアック)なこだわりを感じた。それは私が昔熱狂したセパレートコンポのHiFiと同じであり、我々が何かをしなければと思った。」と言う点が印象に残りました。
また注目すべきは今後のアクセサリー展開で、Mojoをモジュール的なアクセサリーで展開し、WiFi(DLNA)モジュール、Bluetoothモジュール、スマートフォンUSBモジュール(Appleカメコネ直さしみたいな)、そしてSDモジュール(単体プレーヤーみたいな機能)という形で展開していくという点です。まだ開発中でモックしかないそうですが、こういうものがほしいと思ってた人も多いでしょう。今後の展開に期待したいところです。
* AKT1pとGroovers発表会
こちらではやはりアユートの藤川氏が概要を紹介したのちに、私が音の感想を述べるという形で参加しました。
AKT1pはさきほど発売のあったベイヤーの第二世代テスラドライバーを使ったT1 2ndをベースにしたもので32オームのインピーダンスとしたモデルです。またケーブルもT1 2ndの使用に基づいて根元からリケーブルができます。
AKT1p
音質はフラッグシップらしい高いレベルで解像力もあり、上も下もよく出てる感じで、音場もかなり広い思います。
音性能的にはいうことはありませんが、一番感じたのはT1との音傾向の違いです。私はT1オリジナル、T5pオリジナル、AKT5pと使っていますが、もともとT1の音はT5pと比べた時に顕著ですが、かなり引き締まった音で贅肉がなく、端的に言うとクールでモニター的な感じでスタジオエンジニア向きかと思ってました。
このAKT1pの音を聞いたときに思ったのはT1オリジナルとは音の傾向が違うと言うことです。かなり暖かみのある音で、低音域が豊かです。音楽を聴くのが楽しく、オーディオリスナー向けになったように思います。
T1 2ndと直接比較していないのですが、この差は32オームの違いと言うのもありますが、それよりもT1 2ndで変えた点ではないかと思います。
ただし持ち運びできるとは言え、セミオープンなので電車では使えません。Ak380AMPなどでイヤフォンでは高音質で聴いているが、家でヘッドフォンで聴きたいと言う人に向いていると思います。
Grooversは待望のAKから直接ダウンロードできるサイトで、AKユーザーにより良い音源を提供して満足度を高めるというのが目的と言うこと。注目ポイントはあのDSDで知られるジャレッドさんのchannel classicsが配信されるということです。Channel Classicsについては前に書きましたのでこちらを参照ください。Grimm AudioのADコンバーターの上手な使用も光ります。これは2012年の情報ですが、今ではDSD専門サイトなども運営していますね。
クラシック向けDSD音源のサイト、オランダのChannel Classics
* AK380のDSD256対応
また驚いたのは今回の発表会でAK380のDSD256(11.2MHz)対応が実現したことです。これはダウンサンプリングではなく、ネイティブで実現しています。いよいよ来ましたね!
前回AK開発陣が来たときに、DSD11MHz対応について取り組んでくれそうだったので、しつこくやってやってとお願いした効果があったかもしれません(笑)。Astell&Kernってほんとによく声を吸い上げて真摯に対応してくれるのです。
AK380の仕様面での唯一の不満が克服され、あるべき姿になったということでますます魅力を高めるでしょう。またDSD256全体の普及にも貢献することでしょう。
* Fitear Air発表会
私は少し前からAirのデモ機を使う機会を得ていたので、ここでは須山さんと山口さんの解説の後に音や使用感のコメントを述べると言うことで参加しました。
FitEar Air
Fitear Airのポイントは端的に言うと、
*ハイブリッドカスタムとしてBAとダイナミックを採用し、ダイナミックはFOSTEX提供。
*ダイナミックをフルレンジとして採用し、BAを補助的に高音域に使う構成。
*閉鎖空間でのダイナミックの動作効率の問題を改善するために普通は遮音性を犠牲にしてベント穴を使用するが、遮音性を同時に満たすためにショートレッグシェルと言う工夫をした。
*ショートレッグシェルによりステムの断面積が上がったため、逆に装着性や音導穴の形状などの工夫の余地もできた。
外観的には空気ばねを減らすために工夫されたショートレッグが目を引きます。私みたいにカスタムをずっと使いこんでる人ほど違和感を抱くかもしれませんが、見た目の印象よりはきちんと耳にはまります。また実際に電車でもつかいましたが、普通のカスタムと同じくらいの遮音性があると思います。ダイナミックドライバーでかつカスタムの遮音性があると言うのがAirの特徴ですが、これは生きていると思います。
音質はまずぱっと聴きはダイナミックの音が支配的と感じます。文字通りダイナミックで迫力のある音はダイナミックドライバーならではのもので、BAだと低音域のインパクトがか細くなりがちですが、骨太で厚みのある音再現はダイナミックドライバーらしいところだと思います。全体の音のつながりもよいですね。AK Jrみたいな元気でパンチがあるプレーヤーと合わせてロックポップが楽しく聴けます。
また聴きこんでいくとダイナミックの音ではあっても、独特の音再現も持っているのがAirのポイントだと思います。普通のダイナミックだと丸く鈍く聞こえるようなところが、鮮明に明瞭感があって、楽器の音再現もクリアに聞こえます。ここはBAの隠し味が効いているように思います。
今までのFitearというかカスタムIEMにはなかった音でぜひ試聴してほしいですね。
* カスタム座談会 第二回
2日目は第二回のカスタム座談会の司会を務めました。
今回は前回と同じメーカーのほかにJH Audioのアンディ、Westoneはハンクに来てもらい国際色を高めました。そうそうたる顔ぶれですね、また内容もよりマニアックにして、1時間半ですが3つのみ(ハイブリッド、カスタムとユニバーサル、マルチドライバーの功罪)の議題で一テーマ30分も討議すると言う内容の濃いものになったと思います。アンディの陽気さとハンクの真面目さなど、メーカーのイメージをほうふつとされる点も面白かったと思います。開発者の方々の話を直接聞くことで、より製品に愛着がわいてくるのではと思います。
やっていて途中で内容がマニアックになりすぎたかなあとも思ったのですが、こちらから見ていても客席のほとんどの人は身を乗り出すように耳を傾けていたのでそのまま進めました。私自身も面白かったですね。
ぜひ次も開催したいものです。
* Shure KSE1500
今回のヘッドフォン祭でもMojoやFitear Airの他にさまざまな発表会が行われました。
特に注目されていたのはやはりShureが出したコンデンサー型のイヤフォンシステムであるKSE1500でしょう。
(右端はSHA900とLyra)
これはポータブルでSTAXのようなコンデンサー型を実現しただけではなく、密閉型とすることで実際に外で使いやすくしたものです。遮音性が高ければそれだけ細かい音が聴き取りやすくなりますのでこの点でもコンデンサー型に向いていますね。コンデンサー型では電圧をかけるために専用のドライバーが必要になりますが、ポータブルアンプに慣れてきた今のリスナーには問題になりにくいでしょう。またこのアンプ部分を切り離したSHA900というポータブルアンプも発売しています(上の右端)。
実際に使ってみましたが、取り回しの良さはさすがにShureという感じでコンパクトな筺体は他のイヤフォンと遜色ありません。装着感もよいですね。ただケーブルがやや太いのが難ですが特に耳に回しにくいというのはないように思いました。
KSE1500だとアンプとイヤフォンの一体の音評価となってしまいますが、なるべく切り離したかったのでSHA900の方も聞いてみました。SHA900自体はかなり着色感が少なく素直なアンプで、イヤフォンを生かそうとした設計であるのがうかがえます。KSE1500はいかにもコンデンサー型らしい歯切れの良さ・トランジェントの良さと音場の広さ、意外なほど広い帯域特性が感じられます。iPhoneで使うと96/24対応の内蔵DACも素直な音作りのように思います。アナログ入力もありますが、こちらはちょっとコメント保留しておきます。
発表会にも参加してみました。8年開発していたそうで、プロトタイプをたくさん作ってきたということ。
コンデンサ型の利点は軽い振動板で音声信号に素早く反応できる(慣性が少ない)こと、従来のマルチBA(846)と比べても過渡特性に優れるそうで、ソースに忠実である。また従来のコンデンサ型と比べると、はるかに小さいので、小型化に苦心したとのこと。
ケーブルも従来の(静電容量を減らすための)幅広ではなく、ポータブルらしい丸型にするのに苦心したそうです。あくまでポータブルでの使い勝手にこだわっていたことがうかがえます。
8年前にはポータブルアンプもあまり一般的ではなく、開発途中で機能を追加していった(アナログ入力の追加、iPhone対応)ため、回路も工夫して普通は4層程度だが10層ものPCBを採用したということ。
SE846ではノズルインサートで音を変えたが、1500ではイコライザーで音を変えたいとのこと。4バンドでパラメトリックイコライザーを搭載しています。
アナログ入力の場合はデジタルセクションをバイパスできる機能もあります。
私的に思ったのは最近LyraやAKT8iのようにシングルダイナミックのハイクラス機が流行ってきだしたのは、ひとつにはマルチBAのドライバー数競争というところとは別な方向性の模索のひとつだと思います。しばらく前にデジタルカメラの画素数競争が頭打ちに来た時に手ぶれ補正など別な方向に打開策をもとめて市場が動いたように。KSE1500もそのひとつではないかということです。実際に開発者のマット自身もシングルでどこまで行くかやりたかったそうで、新しい試みをしたかったということです。
ただしデジカメもいったん壁を破るとまた画素数競争に戻っていますので、技術動向というのはどうなるかわかりません。
* NighthawkとBeetle
D&Mではこの前書いたNighthawkの設計者であるSkylar Grayによる解説トークショウと新製品Beetleの発表がありました。
Beetleの発表を行ったスティーブ・シルバーマンは開発マネージャーでコンピュータとオーディオの融合を図りたいということです。もとはエアーに居てアシンクロナスUSBのDAC(QB-9でしょうね)を作っていたそう。ただAudioquestでもっと価格の安いものを作りたかったということです。Droagonflyを作ってたようで、おそらくゴードンのAQでのカウンターパートなのでしょう。
Beetleは光デジタルもついたUSB DACでUSBとしてはAndroidとかさまざまなコンピュータと最適に接続できるそう。
Blueetoothのアシンクロナス機能を始めて搭載したというのが売りですが詳細ははよくわかりません。これちょっと残念なことに(USBバスパワー以外は)AC電源なのです。バッテリーで動作するならもう少し興味を持って聞いたんですが。。ただこの価格できちんとファームアップができたり、コンピューターとオーディオの融合と言うのはわかります。ヘッドフォン祭でポータブル方面にもっと興味を持ってもらうことを期待しています。aurender flowなんかは据え置きなのにバッテリー搭載できるので注目されたわけですからね。
NighthawkではSkylar Grayが発表しました。この前の記事と内容はかぶりますが、彼はヘッドフォンの開発責任者でWestoneにいました。Nighthawkはゼロから作って、自由度があったそうです。
ドライバー技術ではハイエンドのラウドスピーカー技術をどのようにヘッドフォンに適用するかを工夫したそう。ラバーサラウンド(ロールエッジ)でNighhawkが均質なピストンモーションが出来るデモを見るとドライバーの効果的な動作がよくわかります。エッジがあると振動の跳ね返りがなく不要な鳴きがないとのこと。
スプリットギャップは溝によって磁力が両端にあり影響範囲を広げられます。これで低音域の信号歪みが下がるわけです。
またスピーカー応用としてはボイスコイルフォーマー(ボビン)がありますし、アコースティック・リキッドウッドを採用してイヤーカップ(キャビネット)もスピーカーに近い切削ではできない構造を可能にしています。補強リブでカップの変異が少ないわけです。
最新技術では3次元のデフュージョングリルで背面のエアフローが複雑に拡散するのがポイントで、従来の二次元グリルだとそのまま戻ってくるエアーが拡散して効果的に動きます。これは3Dプリンタでのみ製作が可能ということ。
エルゴノミクスではサスペンションシステムで4つのラバーで支持して自由に動くのがポイントです。ワンサイズ・フォー・オール(日本語で言うとフリーサイズ)といっていました。
Nighthawkについては下記記事をご覧ください。
AudioQuestのヘッドフォン、NightHawkレビュー
* Dita Dream発表会
Trueが好評のDitaでは次世代モデルの開発発表ががありました。まだ実機はないのでコンセプトの発表になります。
発表会は15Fアユートブースで代表のダニー・タン氏によって行われました。Ditaの設計の思想であるシンプルさや、シンプルななかでも細かな工夫点(暗くても小さな突起で左右がわかるなど)が解説されました。
Dreamの筐体はチタンで作ってるのがまずポイントです。今回はリケーブル(カスタマイズ版?MMCX)で作ったのでハウジングが大きくなったそうで、チタンの採用は音質面だけでなくサイズ変更による重心の変化も考慮したそうです(チタンの方が軽く作れるから)。この辺も機械加工系に強いDitaのバックボーンがあるのでしょう。
もうひとつの今回のポイントの一つはawesome plugというプラグシステムです。これは先端が外れるので2.5mmバランス/3.5mmに付け替えられます。なぜリケーブルができるのにプラグも変えられるのか、と思うかもしれません。ここが実は本当のポイントで、ケーブル交換はMMCXといっても独自?仕様になるかもしれないのでケーブル交換はどちらかというと断線対策です。これはDitaの製品が比較的高いので長く使って欲しいからだそう。ただしプラグはいろんな規格が出る可能性があるので、プラグの2.5mmバランスと3.5mmは変えられるようにしたということ。つまりAnswerがプラグやケーブルを含めてトータルでこだわったように次回もおそらくトータルにこだわりの音設計をするのは変わりなく、リケーブルできるからってDita自体のポリシーが変わったわけではないということでしょう。
Dreamの価格はわかりませんが、シングルダイナミックのハイエンド機の選択がまた増えると言うことになりそうです。
* イヤフォン系新製品
今回よかったイヤフォンの一つは1964 ADEL(アデル)です(下画像)。すっきりと抜けよく音場も広い感じで、生っぽく鮮度感高いリアルな印象。ADEL独自のベント機構は写真で見るといじれそうですが自動のみということで、手では動きません。音源のレベルで自動調整されるとか。ところで私のKickstarterのダイナミック版は...
ちなみにADELと独自ベント機構についいてはこちらの記事を参照ください。
1964earsのKickstarterキャンペーンと耳を守るRealLoud技術
Campfire Audioの新製品であるOrionとJupiterもありました。さきほどからシングルダイナミックの隆盛とShure KSE1500をマルチBAに対する反動と書いてきましたが、実はこのOrionとJupiterもBAながらまた別なベクトルを持ったその仲間と言えるかもしれません。この辺はKenさんに技術について聞いたのでまた別に記事にします。
Jabenのブースではさまざまなドライバー数のユニバーサルの新型が展示されていました。音場が広くリッチな音で、6,9,10,12のドライバーバリエーションがあると言うことです。
音茶楽さんのブースではオープンエアの開放感と密閉の両立ということで新方式を採用した「ちょんまげ3号」が出ていました。たしかに独特の音場感覚です。
また意外と面白かったのは語学学習用と言う「ちょんまげ君」で、実際にiPhoneに入っていたTOEICリスニングテストアプリを使ってみたら、英語が苦手の人が感じるところの発音のごにょごにょっとしたところが少なくなり、かなり発音が明瞭に聴き取りやすくなります。上下の帯域をカットしたということで学生さんにはお勧めです。
* ポータブルアンプ系新製品
トップウイングさん扱いのAROMA A10はよかったですね。ジャズトリオなど聴くとスピードとか音のキレの良さが気持ち良く、かなりレベル高いと思います。
またA10に外部電源つけると音が上質になり、ヘッドフォンつけて家用でもよいですね。出力はトランジスタで、前段のオペアンプは交換可能ということ。
Jabenではphatlabという真空管を使用したアンプの大きいのと小さいのが展示されていました(下画像)。大きい方(左)は出力はトランス入ってると言うことで、ポータブルと言うにはいささか重いんですが、音はかなり良かったですね。小さい方も真空管らしい感じでなかなかよかったと思います。どちらもレイセオン製真空管です。
ANALOG SQUARED PAPER(A2P)さんでは新しいタイプのSIT仕様の電流駆動型ポータブルアンプ(07)を聴いてみました(下画像)。Campfire Lyraで聴きましたが真空管っぽいと言うSITの良さがわかるようで滑らかで高性能と言うことでかなりよかったですね。時代がシングルのダイナミックタイプイヤフォンが流行ってくると、電流駆動型のアンプが脚光を浴びてくることになるかもしれません。
* ヘッドフォン系新製品
ゼンハイザーではHD800の新型HD800Sが発表されました。これはHD800の上位版でHD800は併売するそうです。HD800の薄く聞こえる部分をを濃くしてもっと中音域重視にした感じで、ヴォーカルも聴きやすく、モニター的だったHD800がよりリスニング向けになった感じです。細部もより細やかで高音質音源の繊細なニュアンスがわかります。全体のレンジも上がってるそうです。
HifimanではHE1000のedition Xがよかったですね(下画像)。より鳴らしやすくなりポータブル機器でも大丈夫だそうです。試聴機では3.5mmミニケーブルがついていました。音のレベルはHE1000ゆずりでかなり高いと思います。
MrSpeakerの平面型Etherも発表が行われました。開放型と密閉型があります。これもかなり音質は高く、Alpha dog(いわゆるRP mod)とはもう別物です。特に開放型モデルは音の歯切れの良さが際立っていて驚くほどの音質でした。
* デジタルプレーヤー系新製品
今回DAPはかなり出ていたのですが、なかでもOnkyo/パイオニアのブースは人気があったようです。Onkyoのモデルを聴きましたが、素のAndroidを使用していてアプリの操作性もよい感じでした。音はハイレゾソース狙いと言う感じで解像感重視と言う感じでしょうか。2.5mmバランスを選んだのは薄さからということです。
ベンチャークラフトのVALOQもなかなか面白く、小さく軽いボディでUIは独自仕様です。音は元気でパンチがあると言う感じでしょうか。アナログ出ししてアンプを外付けにするとまた別の印象があるかもしれません。
* Westoneの3Dスキャン
今回はWestoneブースでカスタムイヤフォンの3Dスキャンを体験してみました。これをベースにS20を製作する予定です。
これはレーザーによる非接触タイプで、時間は5-10分ほどです。耳にかける白いリングは位置の検出用で、センサーが光りながらその位置を特定するようです。
液晶とPCにスキャンの状態がまるでペイントソフトのように描かれていき、塗り絵を塗りつぶすようにスキャンしていきます。画面に指示が出るのでベテランでなくても出来るということ(実際はやや難しいようです)。
終わったら「データはもうWestoneに送られたよ」と言われてちょっとびっくりというか軽いショックを覚えます。わたしのように以前から耳型を取ったら、国際便で郵便局に行って送ってどきどきしながら到着を待つ、と言うプロセスを経た人には驚きです。これで耳に負担をかけずに納期の短縮もできるそうです。医療資格が不要というのもポイントですが、この辺はグレーゾーンかも。
この方式にも長短があり、耳型を取るときはベテランが経験から毛穴とか細かいところを補ったり推測したりするのですが、こういう点についてはWestoneは長い経験からソフト的に(?)補完することをしているということ。
また自動でカスタムができるようでいて、最後にドライバー詰めてばりとって綺麗にするのは人力ということ。それにしてもカスタムも進化したものです。
この辺も次のカスタム座談会で取り上げていきたいですね。
と、いうわけで次のヘッドフォン祭にも期待です !
Music TO GO!
2015年10月30日
2015年10月23日
ヘッドフォン祭2015秋の私的見どころ
さて、今年も秋のヘッドフォン祭の時期となりました。今週末に中野サンプラザで開催されます。
今年の私的見どころですが、まずは期待のCHORDのMojoですね。
土曜日の午前に6Fチャペルで発表会が行われます。発表会では私も出席してCHORDのジョンフランクス氏も交えてお話をしたいと思います。
(発表会はプレス限定となります)
ところで、Mojoの発表を見て、音質は良さそうとはいえDAC内蔵ポータブルアンプは珍しくないと思った人もいるかもしれません。もしかするとそこで興味深い話が聴けるかもしれません。MojoはMojoのみにあらず、"Mojo Concept"がキーとなるかもしれません。
またT1 2ndをAK仕様としたAKT1pも11:30からチャペルで発表会があります。こちらはフリー参加です。私はAKT1pも少し使わせてもらったのですが、こちらでも登場させてもらいコメントなどを述べる予定です。
それとアユートさんではもう一つ、Ditaの新製品も発表会があります。10/24(土)14:00〜 10/25(日)13:00〜の二回行います。
場所は15Fリーフルーム(Astell&Kern / aiuto ブース内)です。さてAnswerで人気を博したDitaの新製品はどういうものなのでしょうか。
また土曜日の15:00からはチャペルで待望の須山さんの製品説明会も行われます。内容は当日に発表されます。これにも参加させていただく予定です。
そして2日目のトリを飾るのが第二回のカスタム座談会です。(日)16:15〜17:45で、場所は6F チャペルです。
今回は私が司会を務めさせてもらい、私自身の興味を交えて、前回よりマニアックに、国際色も加えて行おうと思っています。
MixwaveではCampfire Audioの新作であるOrionとJupiterも展示予定だそうです。Lyraを作ったCampfireのBAの新作、という以上に実はこのOrionとJupiterはいままでのBAイヤフォンにはない独自の特徴を持っています。
OrionとJupiterも私のところにいまデモ機があるのですが、Lyra同様に音質も期待できると思います。
またD&MさんのところではNighthawkの開発者であるSkylar Grayが来てトークショウをするようですので、Nighthawkに興味ある方は是非どうぞ。10 月 24 日(土) 13:30 〜 14:30 / 10 月 25 日(日) 11:00 〜 12:00で場所は6F D&Mイベントブース
近日発売予定の製品の話もあるかも。
音茶楽さんのところでは新技術をもちいた新製品が展示されますのでこちらも楽しみなところです。
おなじみJabenでは人気のPorta Tube新型の他になにか隠し玉が出るかも??
A2PさんもJabenブースで展示するようです。
iFIでもトルステン博士が来日して新製品の発表を行うようです。
10/24 13:15〜14:15 iFi Audio 新製品発表会
トップウイングさんも大量の新製品を用意してますので、ブースで見られることでしょう。
Shureもすごい製品を発表しましたので、もちろん注目です。
Mojoにしろ、Shureにしろ、やはりポータブルが目玉のヘッドフォン祭とは言えますね。
今年の私的見どころですが、まずは期待のCHORDのMojoですね。
土曜日の午前に6Fチャペルで発表会が行われます。発表会では私も出席してCHORDのジョンフランクス氏も交えてお話をしたいと思います。
(発表会はプレス限定となります)
ところで、Mojoの発表を見て、音質は良さそうとはいえDAC内蔵ポータブルアンプは珍しくないと思った人もいるかもしれません。もしかするとそこで興味深い話が聴けるかもしれません。MojoはMojoのみにあらず、"Mojo Concept"がキーとなるかもしれません。
またT1 2ndをAK仕様としたAKT1pも11:30からチャペルで発表会があります。こちらはフリー参加です。私はAKT1pも少し使わせてもらったのですが、こちらでも登場させてもらいコメントなどを述べる予定です。
それとアユートさんではもう一つ、Ditaの新製品も発表会があります。10/24(土)14:00〜 10/25(日)13:00〜の二回行います。
場所は15Fリーフルーム(Astell&Kern / aiuto ブース内)です。さてAnswerで人気を博したDitaの新製品はどういうものなのでしょうか。
また土曜日の15:00からはチャペルで待望の須山さんの製品説明会も行われます。内容は当日に発表されます。これにも参加させていただく予定です。
そして2日目のトリを飾るのが第二回のカスタム座談会です。(日)16:15〜17:45で、場所は6F チャペルです。
今回は私が司会を務めさせてもらい、私自身の興味を交えて、前回よりマニアックに、国際色も加えて行おうと思っています。
MixwaveではCampfire Audioの新作であるOrionとJupiterも展示予定だそうです。Lyraを作ったCampfireのBAの新作、という以上に実はこのOrionとJupiterはいままでのBAイヤフォンにはない独自の特徴を持っています。
OrionとJupiterも私のところにいまデモ機があるのですが、Lyra同様に音質も期待できると思います。
またD&MさんのところではNighthawkの開発者であるSkylar Grayが来てトークショウをするようですので、Nighthawkに興味ある方は是非どうぞ。10 月 24 日(土) 13:30 〜 14:30 / 10 月 25 日(日) 11:00 〜 12:00で場所は6F D&Mイベントブース
近日発売予定の製品の話もあるかも。
音茶楽さんのところでは新技術をもちいた新製品が展示されますのでこちらも楽しみなところです。
おなじみJabenでは人気のPorta Tube新型の他になにか隠し玉が出るかも??
A2PさんもJabenブースで展示するようです。
iFIでもトルステン博士が来日して新製品の発表を行うようです。
10/24 13:15〜14:15 iFi Audio 新製品発表会
トップウイングさんも大量の新製品を用意してますので、ブースで見られることでしょう。
Shureもすごい製品を発表しましたので、もちろん注目です。
Mojoにしろ、Shureにしろ、やはりポータブルが目玉のヘッドフォン祭とは言えますね。
2015年10月21日
Android 6.0でプロフェッショナル・オーディオの新定義
Android 6.0(Marshmallow)の更新が始まって、うちのNexus9も更新しました。
オーディオ周りで変更されたところは一見ないようにも思えますが、6.0では下記のAndroid互換性ガイド(compatibility difinition document - CDD)にプロフェッショナル・オーディオの項が追加されて、プロオーディオで満たすべきレイテンシーが定義されてます。(P33の5.10 Professional Audio)
一般的にはレイテンシーはその前の項で100ms以下と定義されてますが、プロオーディオの項ではさらに20ms以下が必須で、できれば10ms以下と定めています。
https://static.googleusercontent.com/media/source.android.com/en//compatibility/android-cdd.pdf
以前うちのブログでAndroidのレイテンシーについての記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/279139456.html
これは4.1の頃の話し(2012/7月)でしたが、Androidはこの辺りから低レイテンシーについて取り組み始め、今回の6.0において低レイテンシー化が十分に出来たので、さきのCDDドキュメントで公式に定義したということに思います。
AndroidではDTM関連はiOSに比べると遅れてましたが、これからに期待ということのようです。
追記 2015/11/1
下記のAndroid公式ソースページにあるAudio Latency Measurementsでは、Android 6.0でのNexus 9が実測値でレイテンシー15msと公開されています。
https://source.android.com/devices/audio/latency_measurements.html
直前のAndroid 5.1.1では32msだったのでAndroid6.0で大きく改良されて、2012年の記事に書いたターゲットである10ms台に載せたので今回のプロフェッショナル・オーディオの規定を公開したのでしょう。
オーディオ周りで変更されたところは一見ないようにも思えますが、6.0では下記のAndroid互換性ガイド(compatibility difinition document - CDD)にプロフェッショナル・オーディオの項が追加されて、プロオーディオで満たすべきレイテンシーが定義されてます。(P33の5.10 Professional Audio)
一般的にはレイテンシーはその前の項で100ms以下と定義されてますが、プロオーディオの項ではさらに20ms以下が必須で、できれば10ms以下と定めています。
https://static.googleusercontent.com/media/source.android.com/en//compatibility/android-cdd.pdf
以前うちのブログでAndroidのレイテンシーについての記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/279139456.html
これは4.1の頃の話し(2012/7月)でしたが、Androidはこの辺りから低レイテンシーについて取り組み始め、今回の6.0において低レイテンシー化が十分に出来たので、さきのCDDドキュメントで公式に定義したということに思います。
AndroidではDTM関連はiOSに比べると遅れてましたが、これからに期待ということのようです。
追記 2015/11/1
下記のAndroid公式ソースページにあるAudio Latency Measurementsでは、Android 6.0でのNexus 9が実測値でレイテンシー15msと公開されています。
https://source.android.com/devices/audio/latency_measurements.html
直前のAndroid 5.1.1では32msだったのでAndroid6.0で大きく改良されて、2012年の記事に書いたターゲットである10ms台に載せたので今回のプロフェッショナル・オーディオの規定を公開したのでしょう。
2015年10月15日
Chordの新しいポータブルDAC内蔵アンプ、Mojoレビュー
ハイエンドメーカーであるCHORDが世に出したポータブルオーディオ製品、HugoはDAC内蔵アンプとしては最高クラスの音質を誇り、それゆえにアナログ部を強化したHugo TTなど"HUGOファミリー"ともいうべき製品展開もされていきました。
しかしHugoはポータブルというよりは「トランスポータブル」ともいうべき大きさで、常に持ち運ぶポータブル製品としては不満も残りました。
そして再びCHORDがHugoの小型版ともいうべきDAC内蔵ポータブルアンプを開発しました。Mojoです。
日本での価格はオープン(想定75000円前後)、アユートから11月に発売される予定です。アユートの製品ページはこちらです。
http://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_1701.php#1
* Mojoとは
MojoはHugo同様に鬼才ロバートワッツにより設計された製品で、FPGAを用いたパルスアレイDACを採用したCHORDらしい製品です。あのパルスアレイDACがこんなに小さなアンプに入ってしまいました。その秘密のひとつはXilinx(ザイリンクス)の第7世代FPGAのArtix-7を採用したことによります。Mojoで採用されているのはさらにワッツによりカスタマイズされ、この8月に本格的にロットが出荷され始めたばかりの最新モデルです。Artix-7の採用は小型化とともにより多くの機能の提供ができるようになり、デジタル入力の自動選択やボリューム位置の記憶などにも活用されています。
そういう意味ではMojoはやはりHugoのときと同様に最新の技術が可能にしたハイエンドメーカー渾身の製品です。
また、Hugoの時はChordが初めてポータブルに取り組むということもあり、イヤフォンプラグの相性問題などがありましたが、Mojoはいわゆるポタアン製品として違和感のないものに仕上がっています。
以降実機を使用して説明していきますが、私の持っているものは製品版ではなく生産前モデルなので承知おきください。
Mojoは旧AK100とほぼ同じ大きさの筐体サイズでとても小さく感じられます。とはいえ、そのがっしりとしたつくりの良さと手に適度な重みの感じられる本体から安っぽさは感じられません。小さくとも本物感がありますね。本体は航空機グレードの切削アルミニウムで「戦車のような」強さを持っています。重さは180gです。
Mojoのユニークなところは電源ボタンと音量ボタンがプラスチックのボールでできていて、カラフルに色が変わり、そしてくるくると動くという点です。
このボールが動くこと自体に機能というのはないのですが、開発責任者のJohn Franksに聞いてみたところ、彼はMojoをユーザーが手で触って感じられるもの(tactile)にしたかったということです。それはあたかも小石をポケットに詰めるようにポケットに入れることができ、子供が小石をこすり合わせて遊ぶようにMojoを楽しんでほしいという願いからきています。
MojoではHugoにあったCHORDの「窓」のようなアイコンはなくなりましたが、かわりにこのカラフルなボールが新しいMojoのアイコンとなるでしょう。
ボールの色については意味があり、音量ボタンの色はdb単位の音量変化、電源ボタンの色はロックしたデジタル入力の周波数を示しますが、製品版とは異なるかもしれないというのでここでは詳細には色の変化については書かないことにします。だいたいHugoを知っていればわかるでしょう。
カラフルなボールがくるくる回るのはおもちゃ感覚もあって面白いんですが、こうしたJohn Franksの「遊び心」が生きているのはCHORDらしい点だと言えると思います。ちなみにMojoとは"Mobile Joy"の略称です。
Mojoは設計のみならず製造もイギリスで行われています。
Mojoはスマートフォンをターゲットにして多彩なデジタル入力が可能な点が特徴です。操作がシンプルで簡単であるというのも特徴で、入力選択は自動で行われます(優先順はUSB->同軸->光)。
本体にはUSB入力と光入力、そして同軸デジタル入力が装備されています。出力はミニのヘッドフォン出力が2つです(Hugoと同様に同一のものです)。ヘッドフォンは4オームから800オームまで対応していてかなり駆動力の必要なヘッドフォンでも対応が可能です。
入力はPCMが44kHzから768kHzまで入力できます(光では192kHzまで)。DSDはDoP入力でDSD64/128/256(11.2MHz)のネイティブ再生が可能です。
MojoをDACとして使用したい場合には二つの音量ボタン(音量ボール)を電源投入時に同時に押すことにより、固定出力のラインレベルアウトとして使用することができます。
またMojoのポイントの一つは電池で4時間という短時間で充電が可能なことで、8時間の使用が可能とされています。
バッテリー入力ポートには入力中のインジケーターが点灯します。これは使用中はバッテリーのレベルメーターになります。
箱はシンプルで基本的にはUSBケーブルのみ入っています。もし私なんかのようにすでにケーブルを持っている人はこれで十分なはずですが、ケーブルなどアクセサリーについてはまた案内があるかもしれません。
ちなみにHugoから省略されたものはBluetoothとクラス1専用のUSBポートとクロスフィード機能、RCAアナログ出力、同軸デジタルのRCA端子などです。
* Mojoの音質
Mojoを手に持つとその小ささが良くわかります。Hugoの小型版が出るというのは聞いてはいたんですが、予想よりもずいぶん小さいサイズです。筐体は高級感があり、その強靭さをうかがうことができます。
サイズが旧AK100と合わせるとぴったりということもあり、私はAK100の光出力を使用してMojoと組み合わせて聞いてみました。ケーブルはタイムロードの光ケーブルもありますが、慣れているSys-Opticのhugo用ケーブルを使いました。こうするとちょっと大きいんですが、プラグ向きが同じなのでだいたい使えます。
ポケットにMojoを入れてる時には独特のボールボタンのおかげで手探りでわかりやすく操作はしやすいですね。
これだけ小さいと音はどうなんだろうと思いますが、ダイナミックレンジ(SN比)は125dBを誇り、数値的にもハイエンドオーディオ並みの性能があります。出力インピーダンスは0.075オームという低さです。低インピーダンスのカスタムでも無問題ですね。
ただ数値以上に驚かされるのは価格レベルを超えた音の良さです。これは誰もが驚くでしょう。
John FranksはFPGAはあくまで絵画をはめこむ枠に過ぎず、その絵画は我々の技術であると言います。そうしたいままでのスピーカーの世界の頂点で磨かれたハイエンドメーカーの技術力が、この小さなポータブルアンプにも詰め込まれているのが音を聴けばわかります。
まず感じるのは音の透明感の高さで、クリアに澄み切った音空間に端正で明瞭な楽器音が鳴りわたります。楽器の音は引き締まって贅肉がまったくなく弛んだところがありません。音像は非常に正確で鮮明です。
どんな高感度イヤフォンでも背景は非常に静粛で黒く、とても細かい音が粒立つように聞こえてきます。とにかくケーブルもイヤフォンも最高のものを使って細かい音が抽出されてくるのを聞きたくなるでしょう。
良録音のアコースティック楽器の音源だと細かな擦れ合う音など、すごく細かい音がはっきりと鮮明に聴こえます。リマスターしたアルバムの音も光りますね。
音楽の再現力は素晴らしく、音の立体感、楽器やヴォーカルの重なり合わせの明瞭さは値段を忘れてしまうくらいのクラスにあります。たとえば女性ヴォーカルがふっとため息をつき、ささやくようなヴォーカルのリアルさ、なまめかしさは逸品ですね。
次に感じたのはHugoにも通じる、ベースのパワフルさやダイナミックさ、つまりアンプとしての音楽性の高さです。Mojoは音の再現性能が高いのですが、味気ない音を奏でるいわゆるモニターライクな機器ではありません。
打ち込み系でもアコースティックベースでも低音域の重みが伝わってきます。ドラムやパーカッションの打撃感にパワフルな力がこもり、音楽的にも躍動感が伝わってきます。スピード感も一流ですね。
DACもさることながら、アンプ部分のすばらしさが光ります。音像のたるみの無さは力強いインパクトやアタックの鋭さにも繋がっています。
Mojoは小さいながら十分すぎる駆動力があり、平面型のHifiman HE560を存分に鳴らすことができます。HE560はゼンハイザーHD800より鳴らしにくいヘッドフォンです。Mojoでは単に音量が取れるというだけでなく、HE560の性能を発揮できるくらい良い音でならせることができます。
Mojoの正確な音再生能力からはクラシックやジャズ向きにも聞こえるかもしれませんが、実のところロックやエレクトロニカが非常によく楽しめました。力強く鋭いインパクトが音楽のカッコ良さを感じさせます。
イヤフォンでは私はCampfire AudioのLyraがとてもよく合うように感じました。あとは最高のリケーブルをしたカスタムイヤフォンでもいうことはありません。
ピアノの打撃音の正確さ、ウッドべースのピチカートの鋭さと引き締まりの良さ、あくまで静かな背景には感嘆の声が出てしまいます。このAK100+Lyraで聞いてるMojoの音は、10万円以下の機材の音とはちょっと思えません。おそらく10万円台のDACやプレーヤーでもこの音質はむずかしいのではないかと思います。
音質のレベル的にはさらにHugoにかなり肉薄するレベルの素晴らしい音質があります。このサイズで、です。
* スマートフォンとの接続
Mojoの狙いの一つはスマートフォンとの親和性です。
実際にiPhoneとは非常によく適合します。iPhone/iPadとはカメラコネクションキットを介してデジタル接続をします。標準の音楽アプリからも再生ができるのでApple Musicなどストリーミングの再生機にも良いですね。試したOSはiOS9.0.2ですが、ほかでも最近のものなら問題ないでしょう。
またHF Playerなどを使えばハイレゾ音源の再生も可能です。DSDは11.2MHz(DSD256)まで実際にロックしてスムーズにDSDネイティブ再生できることを確認しました。DoPですが、切り替え時のノイズなどはないように思います。
またAndroidとはNexus 9(OS 5.1.1)で試してみましたが、Androidの標準ドライバーだと音が割れてしまうことがあってあまりよくありません。このためGoogle PlayやNeutronなどは使えません。これは他のDAC機材でもそうなので、MojoではなくAndroid側の問題だと思います。この辺はそろそろ予定されているAndroid OS5.2に期待です。
*2015/10/21追記:Nexus9にAndroid 6.0 (Marshmallow)を入れて試しましたが、結果は変わらないようです。
一方でUSB Audio Player ProやAndroid版のHF Playerのようにアプリ内蔵ドライバーを持っているアプリは問題ないようでした。スムーズに再生ができ、ハイレゾもロックしています。
またSONY ZX1ともNWH10を使用して接続ができました。これはiPhoneとカメラコネクションキットを介して繋ぐのと同じですね。
ちなみにUSBはオーディオクラス2ですのでWindowsではドライバーのインストールが必要となります。
* まとめ
"No Compromise"(妥協なし)
Mojoの資料には誇らしげにそう書かれています。そしてMojoを聴いたものは誰しもそれを認めざるを得ないと思います。
Chord Mojoは数年前ならポータブルの世界からは遠いハイエンド機材にしか採用されなかったパルスアレイDACを、手のひらに入る大きさと手頃な価格で実現し、価格帯を超えた音質を達成しています。
Mojoを手にしてもらえれば、このポータブルの世界にChordが参入した意義がわかるでしょう。
Mojoはヘッドフォン祭にて試聴ができます。ぜひ15階リーフのアユートブースにお越しください。
しかしHugoはポータブルというよりは「トランスポータブル」ともいうべき大きさで、常に持ち運ぶポータブル製品としては不満も残りました。
そして再びCHORDがHugoの小型版ともいうべきDAC内蔵ポータブルアンプを開発しました。Mojoです。
日本での価格はオープン(想定75000円前後)、アユートから11月に発売される予定です。アユートの製品ページはこちらです。
http://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_1701.php#1
* Mojoとは
MojoはHugo同様に鬼才ロバートワッツにより設計された製品で、FPGAを用いたパルスアレイDACを採用したCHORDらしい製品です。あのパルスアレイDACがこんなに小さなアンプに入ってしまいました。その秘密のひとつはXilinx(ザイリンクス)の第7世代FPGAのArtix-7を採用したことによります。Mojoで採用されているのはさらにワッツによりカスタマイズされ、この8月に本格的にロットが出荷され始めたばかりの最新モデルです。Artix-7の採用は小型化とともにより多くの機能の提供ができるようになり、デジタル入力の自動選択やボリューム位置の記憶などにも活用されています。
そういう意味ではMojoはやはりHugoのときと同様に最新の技術が可能にしたハイエンドメーカー渾身の製品です。
また、Hugoの時はChordが初めてポータブルに取り組むということもあり、イヤフォンプラグの相性問題などがありましたが、Mojoはいわゆるポタアン製品として違和感のないものに仕上がっています。
以降実機を使用して説明していきますが、私の持っているものは製品版ではなく生産前モデルなので承知おきください。
Mojoは旧AK100とほぼ同じ大きさの筐体サイズでとても小さく感じられます。とはいえ、そのがっしりとしたつくりの良さと手に適度な重みの感じられる本体から安っぽさは感じられません。小さくとも本物感がありますね。本体は航空機グレードの切削アルミニウムで「戦車のような」強さを持っています。重さは180gです。
Mojoのユニークなところは電源ボタンと音量ボタンがプラスチックのボールでできていて、カラフルに色が変わり、そしてくるくると動くという点です。
このボールが動くこと自体に機能というのはないのですが、開発責任者のJohn Franksに聞いてみたところ、彼はMojoをユーザーが手で触って感じられるもの(tactile)にしたかったということです。それはあたかも小石をポケットに詰めるようにポケットに入れることができ、子供が小石をこすり合わせて遊ぶようにMojoを楽しんでほしいという願いからきています。
MojoではHugoにあったCHORDの「窓」のようなアイコンはなくなりましたが、かわりにこのカラフルなボールが新しいMojoのアイコンとなるでしょう。
ボールの色については意味があり、音量ボタンの色はdb単位の音量変化、電源ボタンの色はロックしたデジタル入力の周波数を示しますが、製品版とは異なるかもしれないというのでここでは詳細には色の変化については書かないことにします。だいたいHugoを知っていればわかるでしょう。
カラフルなボールがくるくる回るのはおもちゃ感覚もあって面白いんですが、こうしたJohn Franksの「遊び心」が生きているのはCHORDらしい点だと言えると思います。ちなみにMojoとは"Mobile Joy"の略称です。
Mojoは設計のみならず製造もイギリスで行われています。
Mojoはスマートフォンをターゲットにして多彩なデジタル入力が可能な点が特徴です。操作がシンプルで簡単であるというのも特徴で、入力選択は自動で行われます(優先順はUSB->同軸->光)。
本体にはUSB入力と光入力、そして同軸デジタル入力が装備されています。出力はミニのヘッドフォン出力が2つです(Hugoと同様に同一のものです)。ヘッドフォンは4オームから800オームまで対応していてかなり駆動力の必要なヘッドフォンでも対応が可能です。
入力はPCMが44kHzから768kHzまで入力できます(光では192kHzまで)。DSDはDoP入力でDSD64/128/256(11.2MHz)のネイティブ再生が可能です。
MojoをDACとして使用したい場合には二つの音量ボタン(音量ボール)を電源投入時に同時に押すことにより、固定出力のラインレベルアウトとして使用することができます。
またMojoのポイントの一つは電池で4時間という短時間で充電が可能なことで、8時間の使用が可能とされています。
バッテリー入力ポートには入力中のインジケーターが点灯します。これは使用中はバッテリーのレベルメーターになります。
箱はシンプルで基本的にはUSBケーブルのみ入っています。もし私なんかのようにすでにケーブルを持っている人はこれで十分なはずですが、ケーブルなどアクセサリーについてはまた案内があるかもしれません。
ちなみにHugoから省略されたものはBluetoothとクラス1専用のUSBポートとクロスフィード機能、RCAアナログ出力、同軸デジタルのRCA端子などです。
* Mojoの音質
Mojoを手に持つとその小ささが良くわかります。Hugoの小型版が出るというのは聞いてはいたんですが、予想よりもずいぶん小さいサイズです。筐体は高級感があり、その強靭さをうかがうことができます。
サイズが旧AK100と合わせるとぴったりということもあり、私はAK100の光出力を使用してMojoと組み合わせて聞いてみました。ケーブルはタイムロードの光ケーブルもありますが、慣れているSys-Opticのhugo用ケーブルを使いました。こうするとちょっと大きいんですが、プラグ向きが同じなのでだいたい使えます。
ポケットにMojoを入れてる時には独特のボールボタンのおかげで手探りでわかりやすく操作はしやすいですね。
これだけ小さいと音はどうなんだろうと思いますが、ダイナミックレンジ(SN比)は125dBを誇り、数値的にもハイエンドオーディオ並みの性能があります。出力インピーダンスは0.075オームという低さです。低インピーダンスのカスタムでも無問題ですね。
ただ数値以上に驚かされるのは価格レベルを超えた音の良さです。これは誰もが驚くでしょう。
John FranksはFPGAはあくまで絵画をはめこむ枠に過ぎず、その絵画は我々の技術であると言います。そうしたいままでのスピーカーの世界の頂点で磨かれたハイエンドメーカーの技術力が、この小さなポータブルアンプにも詰め込まれているのが音を聴けばわかります。
まず感じるのは音の透明感の高さで、クリアに澄み切った音空間に端正で明瞭な楽器音が鳴りわたります。楽器の音は引き締まって贅肉がまったくなく弛んだところがありません。音像は非常に正確で鮮明です。
どんな高感度イヤフォンでも背景は非常に静粛で黒く、とても細かい音が粒立つように聞こえてきます。とにかくケーブルもイヤフォンも最高のものを使って細かい音が抽出されてくるのを聞きたくなるでしょう。
良録音のアコースティック楽器の音源だと細かな擦れ合う音など、すごく細かい音がはっきりと鮮明に聴こえます。リマスターしたアルバムの音も光りますね。
音楽の再現力は素晴らしく、音の立体感、楽器やヴォーカルの重なり合わせの明瞭さは値段を忘れてしまうくらいのクラスにあります。たとえば女性ヴォーカルがふっとため息をつき、ささやくようなヴォーカルのリアルさ、なまめかしさは逸品ですね。
次に感じたのはHugoにも通じる、ベースのパワフルさやダイナミックさ、つまりアンプとしての音楽性の高さです。Mojoは音の再現性能が高いのですが、味気ない音を奏でるいわゆるモニターライクな機器ではありません。
打ち込み系でもアコースティックベースでも低音域の重みが伝わってきます。ドラムやパーカッションの打撃感にパワフルな力がこもり、音楽的にも躍動感が伝わってきます。スピード感も一流ですね。
DACもさることながら、アンプ部分のすばらしさが光ります。音像のたるみの無さは力強いインパクトやアタックの鋭さにも繋がっています。
Mojoは小さいながら十分すぎる駆動力があり、平面型のHifiman HE560を存分に鳴らすことができます。HE560はゼンハイザーHD800より鳴らしにくいヘッドフォンです。Mojoでは単に音量が取れるというだけでなく、HE560の性能を発揮できるくらい良い音でならせることができます。
Mojoの正確な音再生能力からはクラシックやジャズ向きにも聞こえるかもしれませんが、実のところロックやエレクトロニカが非常によく楽しめました。力強く鋭いインパクトが音楽のカッコ良さを感じさせます。
イヤフォンでは私はCampfire AudioのLyraがとてもよく合うように感じました。あとは最高のリケーブルをしたカスタムイヤフォンでもいうことはありません。
ピアノの打撃音の正確さ、ウッドべースのピチカートの鋭さと引き締まりの良さ、あくまで静かな背景には感嘆の声が出てしまいます。このAK100+Lyraで聞いてるMojoの音は、10万円以下の機材の音とはちょっと思えません。おそらく10万円台のDACやプレーヤーでもこの音質はむずかしいのではないかと思います。
音質のレベル的にはさらにHugoにかなり肉薄するレベルの素晴らしい音質があります。このサイズで、です。
* スマートフォンとの接続
Mojoの狙いの一つはスマートフォンとの親和性です。
実際にiPhoneとは非常によく適合します。iPhone/iPadとはカメラコネクションキットを介してデジタル接続をします。標準の音楽アプリからも再生ができるのでApple Musicなどストリーミングの再生機にも良いですね。試したOSはiOS9.0.2ですが、ほかでも最近のものなら問題ないでしょう。
またHF Playerなどを使えばハイレゾ音源の再生も可能です。DSDは11.2MHz(DSD256)まで実際にロックしてスムーズにDSDネイティブ再生できることを確認しました。DoPですが、切り替え時のノイズなどはないように思います。
またAndroidとはNexus 9(OS 5.1.1)で試してみましたが、Androidの標準ドライバーだと音が割れてしまうことがあってあまりよくありません。このためGoogle PlayやNeutronなどは使えません。これは他のDAC機材でもそうなので、MojoではなくAndroid側の問題だと思います。この辺はそろそろ予定されているAndroid OS5.2に期待です。
*2015/10/21追記:Nexus9にAndroid 6.0 (Marshmallow)を入れて試しましたが、結果は変わらないようです。
一方でUSB Audio Player ProやAndroid版のHF Playerのようにアプリ内蔵ドライバーを持っているアプリは問題ないようでした。スムーズに再生ができ、ハイレゾもロックしています。
またSONY ZX1ともNWH10を使用して接続ができました。これはiPhoneとカメラコネクションキットを介して繋ぐのと同じですね。
ちなみにUSBはオーディオクラス2ですのでWindowsではドライバーのインストールが必要となります。
* まとめ
"No Compromise"(妥協なし)
Mojoの資料には誇らしげにそう書かれています。そしてMojoを聴いたものは誰しもそれを認めざるを得ないと思います。
Chord Mojoは数年前ならポータブルの世界からは遠いハイエンド機材にしか採用されなかったパルスアレイDACを、手のひらに入る大きさと手頃な価格で実現し、価格帯を超えた音質を達成しています。
Mojoを手にしてもらえれば、このポータブルの世界にChordが参入した意義がわかるでしょう。
Mojoはヘッドフォン祭にて試聴ができます。ぜひ15階リーフのアユートブースにお越しください。