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2015年07月23日

HiFimanのダイナミックドライバー採用カスタムIEM、RE1000

HiFiman RE1000はHiFimanブランドでは初のカスタムIEMです。HiFimanではいままでにもRE600のような高性能イヤフォンを活溌してきましたが、このカスタムIEMを出すにあたってはUnique melodyとの共同開発となります。

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*RE1000の構成

RE1000の大きな特徴はフルダイナミックドライバーを採用しているということです。最近ではBAとダイナミックのハイブリッドは増えてきましたが、ダイナミックドライバーだけでのカスタムIEMの構成は珍しいといえるでしょう。

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RE1000では9mmと8.5mm口径のダイナミック・ドライバーを2個使用しています。この二つは100hzという低い領域ででクロスオーバーでつながれるのがポイントです。つまりスピーカーに例えるとフルレンジ+サブウーファーという構成になるわけです。
つまり一基のドライバーはメインとなり、メインは事実上フルレンジと考えてよいわけです。こちらはたしかRE600のドライバーをベースにしていると思います。もう一方の100Hz以下を担当するベースドライバーは新設計です。

*なぜハイブリッドではなくフル・ダイナミックなのか

この方式では音質的にはスピーカーの世界で得られるようなサブウーファーのメリットも享受できます。つまり単に低域の量感が確保できるということだけではなく、中高音域の音質向上や音場感の向上にもつながるということです。

なぜハイブリッドではなくフル・ダイナミックを選んだのかという理由をCEOのFang Bienに聞いてみたところ、HiFimanはダイナミックドライバーで高性能を追及してきており、RE600ではシングルドライバーでトップクラスの高性能の評価をHeadFiなどでは獲得している、そこに超低域用(サブウーファー的)にドライバーを加えることで可能性を感じたということです。さきに書いたように低域だけではなく音場や中高域も改善されるだろうというわけです。

そしてBAに対してダイナミックドライバーはより音楽的であり、歪みの低さも十分にBAに対抗できるとのこと。
また周波数特性の狭いBAに対して、ダイナミックならば2個のドライバーでBAの5〜6ドライバーモデルよりもコンパクトに設計できるということです。これは快適性も向上させることができます。

この方式のメリットのひとつはハイブリッドに比べると特製の同じドライバーを組み合わせることによるクロスオーバーのカバー範囲がスムーズであるということが挙げられます。(下図)
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左がハイブリッド機のイメージ、右がRE1000

* なぜいままでダイナミックドライバーを用いたカスタムIEMは少ないのか

これはハイブリッドでも同じですが、カスタムIEMでダイナミックというのは意外とありそうでなかったのには理由があります。それは端的にいうとカスタムIEMのような構造上完全にクローズしたシェルの場合にはダイナミックドライバーのベント問題があるからです。
一般的なイヤフォンでもカナル型でダイナミックドライバーならばベントは必要ですが、デザイン的に違和感ないように処理することができます。ところがカスタムのような、あるいはカスタム系の造形のユニバーサルの場合には構造上密閉されたシェルになるため、ベントのための穴をあける工夫が必要となります。反面でBAドライバーであればこうした問題はないので、特にベントをあける必要はなくなります。つまりカスタムIEMでBAドライバーがよくつかわれるのは音を細かく再現するという点のほかに、BAでなければならないベントの問題があったということも言えます。

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RE1000のベント孔

なぜダイナミックだとベント穴が必要かというと、閉鎖空間における鼓膜とダイアフラムの剛性の問題のようです。通常PET(マイラーなど)で作成されるダイナミックドライバーのダイアフラムは弱いので閉鎖空間での鼓膜と空気の剛性の問題があり十分な振動ができなくなってしまいます。そのため空気をベントで逃がしてダイアフラムの動ける余地を作ってあげるわけです。いっぽうでBAドライバーの場合はダイアフラムが金属で剛性が高いのでこうした問題が起きにくいということのようです。
イヤフォンにおいて鼓膜とダイアフラムの関係は見過ごされがちですが重要です。たとえばCardasはダイナミックドライバーの直径が鼓膜と同じ大きさの時にもっとも効率的であるという特許を出していたと思います

RE1000ではフェイスプレート部分にベント穴が開いています。この問題はハイブリッドでも同様で、前に書いたJustear MH1も背面にベント穴が5つ開いています。Marverickでもベント穴があります。
このようにカスタムシェルにダイナミックドライバーを採用すると完全密閉にはできませんが、これを利用して音の調整を図ることもできます。

* RE1000到着

RE1000はカスタムなので耳型を取得しますが、ここはまた東京ヒアリングケアセンターの大井町店で取ってきました。
実際の製品ではHiFiman JAPANが取り扱いを始めるまでは、直接HiFimanに耳型を送りますがここでは英語でやりとりが発生すると思います。HiFiman Japanが取り扱いを始めてからは日本のHiFiman Japanに日本語でやりとりをして送付するということになると思います。私はデモ用ですが、直接中国に送りました。

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実際に届いたユニットは艶消し黒で中のドライバー等はわかりませんが、ベントは空いていますね。
すでに手慣れたUM製ということもあり、シェルの出来はよくて耳へのフィットもよく遮音性も高くできています。ベントがあるので外の音が筒抜けで聞こえるということはありません。ここはなにか処理がなされていると思います。

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製品版では多種なカラー指定ができます。

そしてRE1000で感じるのはとても軽いということですね。これは快適性を上げています。
また、音の出るポートは一穴ですがかなり広く開口部が製作されています。

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* RE1000の音質

はじめはAK240などで聴いてみました。RE1000で聴いてみてまず感じるのはベースが重い、ということです。ベースの量感が多いというのはよくありますが、RE1000の場合は多いというより重いと感じます。低音域の質がやはりいつも聞きなれているマルチBAとは違いますね。低音域がヘビーでパワフルです。これはいままでのマルチBAではなかった感じで、CIを2基使ってもこういう感じにはならないでしょう。やはりダイナミックらしい個性を感じられます。新開発というサブウーファーも効いているんでしょうね。ドラムスやパーカッションの打撃感が個性的で重厚さと迫力があります。
ヘビーロック、エレクトロ・クラブ系の音楽だと今までマルチBA機では感じたことがないくらいのベースやドラムスの破壊力に打ちのめされる感じでしょう。
一方で高音域も十分シャープで、中音域も明瞭な再現性があります。ここはRE600譲りの高性能でしょうか。

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RE1000とAK Jr.

全体的な音の印象ではBAに比べると線は太めですが、シャープで切れ味が良く、音の歯切れも気持ちよくシャープです。また音がスムーズで滑らか、暖かみがあります。この辺もBAに比べたダイナミックの良さと言えますね。中域は肉感的に艶っぽく、女性ヴォーカルが心地よく聴こえます。ただ曲によっては少しベースがかぶるかもしれませんが、ヴォーカル自体は鮮明です。
全体的な音のレベルでも同価格帯のマルチBA機と勝るとも劣らないでしょう。

そして立体感・空間表現もなかなかすぐれています。音場も程よく自然に広がり、バーンイン後はかなり広く感じられます。オール・ダイナミックなのでエージングで音はかなり変化しますが、はじめのころの荒々しさもちょっと取っておいてほしいところでもあります。
この立体感の良さはメインがフルレンジ一発で位相の問題が少ないからか、あるいはサブウーファーの謎の効果か、ちょっと面白いところです。以前オーディオショウでソロバイオリンの曲でサブウーファーの有り無しという聴き比べをやっていて、ソロバイオリンだけでもサブウーファーの効果があるのにちょっと興味を持ちましたが、そうした倍音かなんかの効果というのはありかもしれません。

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プレーヤーやアンプの性能差が分かりやすいので、いろいろとプレーヤーを変えても楽しめると思います。
全体に文字通りダイナミックでメリハリがあるのでiPhone直でも十分楽しめます。iPhone直でも太いベースラインと迫力を楽しみたい人にはお勧めです。AK240との組み合わせではバランスの取れた感じがします。AK Jr.も良いですね。

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iPhone + Astell&Kern AK10との組み合わせもなかなか良好で、Apple Musicを楽しく聴かせてくれます。ダイナミックなのでDENON DA10のようなパワーのある外付けポータブルアンプを使うことでより迫力あり、さらに暖かみのあるオーディオらしい音を出すこともできます。
もちろんAK380やPAW Goldなど高性能のDAPと合わせることで、なかなか個性的で迫力のある音世界を演出することができます。

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* RE1000とリケーブル

RE1000は2ピンでリケーブルすることができます。プラグ穴が凹んでいる旧UEタイプなのでちょっと気を付ける必要はあるかもしれません。
BEATはOKでした。Beat SuperNovaを使ってみたところ、音がさらに洗練されて高品質になり低音域はよりバランスが良く、帯域バランスも改善したように思います。標準のケーブルも新設計のものでなかなか悪くないのですが、帯域バランスにいささか影響があるようには感じられます。リケーブルすると優等生感が増しますね。
Estron Linumは残念ながら入らないようです。Whiplashは入ります。ここはさすがHeadFi文化の製品です。TWagなんかはもう少し透明感がほしいというときに良いかもしれません。

* まとめ

RE1000の市場想定価格は予価90800円(税込)です。海外価格は$699ですが、為替と日本語サポートを考えるとなかなか良い値段ではないでしょうか。日本ではHiFiman Japanが取り扱います。HiFiman JapanのFacebookページは下記リンクです。
https://m.facebook.com/HIFIMANJapan?refsrc=https%3A%2F%2Fwww.facebook.com%2FHIFIMANJapan

マルチBAとは音の個性も違うので一味違うカスタムIEMを求めている人、ダイナミックの音でカスタムがほしい人、重厚なベースを望む人などにお勧めです。
posted by ささき at 22:21 | TrackBack(0) | ○ カスタムIEM全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする