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2015年04月12日

ハイサンプリングレートの利点とは、MeridianとBenchmarkの例

ハイサンプリングレートの利点について、MQAを研究してきたRealHDサイトの人とBenchmarkの設計者(John Siau)との興味深いやり取りが書かれています。
http://www.realhd-audio.com/?p=4361
Benchmarkはハイレゾのホワイトペーパーをアップして96kHzより上はあまり要らないという要旨(後述)ですが、それにRealHDの人がMeridianのMQA的見地からタイミング利点を得るには196kHzが必要と言ってるが、と質問をするという感じです。

日本だとハイレゾ音源のハイサンプリングレートの利点は、というと22kHz以上の超高音域の情報が記録されていて云々、それで倍音の効果が云々、という感じが多いと思います。
一方でそれよりも人の知覚を左右する音の「タイミング」が重要なんだ、と説いたのがMQAでのMeridianのボブスチュワートです。つまり少し誇張して言うと、MQA的には高い周波数の音の中身が伝わるよりも、音のタイミングの細かさが重要というわけです。
具体的に言うと、タイミングが正しく伝わるためには5-10マイクロ秒のタイミングが重要だというのがMeridianの主張です。5-10マイクロ秒が必要だとすれば、言い換えると50万分の1秒から10万分の1秒が必要だということで、それをサンプリングレートに換算すると500kHzから100kHzが必要だということになります。
つまり196kHzは19万6千分の1秒ですから、196kHzまたは384kHzのハイサンプルの音はこの辺に届きますが、96kHzではちょっと足りないということになります。

もう一方Benchmarkの言うハイサンプリングレートの利点はプリ・リンギングなどアーチファクトに関するものです。これはデジタル信号での計算誤差などで音が鳴る前にないはずの不自然な音が発生してしまうような問題です。BenchmarkのSiau氏によると、このような問題はナイキスト周波数のあたりに起きるので、CD品質の44kHzのナイキスト周波数である22kHzで起こると人の知覚に影響を与えてしまう。特にそれが20kHz以下のIMD歪みとなって表れてしまうというのが問題となるとのこと。
そこでサンプリングレートをあげて96kHzにしてしまうと、そのナイキスト周波数の48kHzは人の知覚に影響しないのでリンギングが起こっても音質に影響を与えにくくなるということです。またサンプリングレートが高くなると、リンギングの時間幅が短くなるので、このこともリンギングの悪影響を減らすそうです。(たぶん影響を受ける1サンプルの長さが短くなるということだと思います)

つまりハイサンプリングレートの利点と言うのは、高い周波数の音が聞こえるというよりも、Meridianに言わせるとタイミングがより正しくなることが良い、Benchmarkに言わせるとアーチファクトの悪影響を減らすことができるということが良い、というわけです。

Benchmarkの人は96kHzがそうした利点がある反面で、今日のスピーカー性能を考えると176kHzや192kHzの音源は意味がない、仮にそれが進歩したとしても人の耳が進歩しないのであまり意味がないと言っています。こちらはBanchmarkのホワイトペーパーに書かれています。
http://benchmarkmedia.com/blogs/news/14949325-high-resolution-audio-sample-rate
ちなみにBanchmarkのホワイトペーパーの前半ではナイキストの定理について、私がこの前の記事でナイキスト周波数の説明には車輪スポークの説明がある、と言ったその車輪の回転の例が書かれています。
一方でRealHDの人との問答では「タイミングはサンプリングレートの役割ではない」と書いてます。

MeridianのBob Stuwartも、BenchmarkのJohn Siauもとても高い知見と研究結果から書いているので、私がどうこういうものではありませんが、ぱっと見て結局196kHzって意味あるの?というところではなんとなく噛み合ってないようにも思います。

ハイレゾの利点というのは最近よく本に書かれますが、たいていはCDの数倍の情報量と書かれています。それ自体は前の記事で画像の大きさの例をあげたように間違いではありません。では実際に意味あるの、というとプロでも見解が分かれ、しかもタイミングにしろアーチファクトにしろ情報量はどこいった、という展開です。

一方で24bitの方は情報量は確実に16bitより増えます。しかし増える8bitは下位ビットですから微小音であり、それ(広いダイナミックレンジ)を活かすにはSNの高さが必要です。
イヤフォンならアイソレーション、電気回路ならノイズの減少、とそういう基本的なところが重要になるはずが、サンプルレートの方ばかり目がいって、それらがなおざりになると本末転倒になりかねないのではないでしょうか。
posted by ささき at 21:08 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする