Music TO GO!

2015年04月07日

ニルス・フラームと世界最大のピアノ、Klavins M370

さる3月29日は「ピアノの日」だったそうです。知らなかった人が多いと思いますが、それは無理もありません。これはピアニストのニルス・フラームによって今年制定というか提唱されたもので、ピアノの88腱にちなんで新年から88日目が3月29日なのだそうです。(ちなみに日本でのピアノの日はシーボルトがピアノを輸入した日にちなんで7月9日だそうです)
ニルス・フラームはこの日のために専用のウエブサイトを作成しています。ここで彼は新作のピアノソロアルバム、"Solo"を無料配信しています。
http://www.pianoday.org/

ここまではよくありそうな話ですが、この話が面白くなってくるのは彼が使用したピアノです。それはピアノ技師であるDavid Klavinsによって製作された世界最大のピアノ、Klavins M370です。このM370というのは小型のパイプオルガンのような大きさで2トンもあるものです。普通のグランドピアノで約300kg、より大型のコンサートタイプで約500kgというので、M370の巨大さが分かるでしょう。下記に紹介ビデオがあります。


ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調

M370の特徴はその弦の長さです。鍵盤は88腱と変わりませんが、低音弦が普通は2メートル低度のところ、このM370では3メートルを超えます。そのため横ではなく縦に弦が配置されています。つまり移動は不可能で、スタジオの二階と一階をぶっ通して製作されていて、演奏者は二階まで歩いて上がることになります。
弦が長くなるとなにが良いかというと、大きなコンサートピアノの弦長でも本来の低域再生が難しいそうで、調律師が妥協をして張力を調整しているため、本来得られるべき音になっていないとのこと。そうした低音の倍音を正しく再現してこそ、ピアノのあるべき音がはじめて分かるということです。つまり基本的には低域再生力の向上ですが、倍音の影響で全体の音質もよくなるということですね。そのためにこんな巨大なピアノを製作したというわけです。M370については記事がこちらにあります。
http://gigazine.net/news/20150407-klavins-piano/

David Klavins氏はピアノの調整や修理を請け負っている人なのだそうですが、その本来の音を出すための挑戦と言えるでしょう。そしてこの冒頭に書いた「ピアノの日」と言うのはDavid Klavinsがさらなる次の巨大ピアノであるM450を完成させるためのサポートのためということです。私もけっこうニルス・フラーム好きなんでよく聴きますが、ピアニストと言うよりは、エレクトロニカ・ミュージシャンということで日本では有名です。また他のミュージシャンのエンジニア仕事もよくやっているように思います。
彼の演奏するM370の音はさきに書いた「SOLO」で聴くことができます。96/24ハイレゾWAVとMP3で無料ダウンロードできますので、世界最大のピアノの音をぜひハイレゾで楽しんでください。Wallなんかはニルス・フラームらしいミニマルな現代曲に仕上がっています。

このプロジェクトはKlavinsの夢にささげられたとあります。そもそもピアノの発明者はバートロメオ・クリストフォリという人ですが、ピアニストのデビッド・ランツによるクリストフォリの夢という名曲がありますのでM370とは関係ありませんが、最後にこちらを聴きながらピアノの将来に思いをはせたいと思います。バイオリンは完成された形とはよく言いますが、ピアノはまだまだ発展できるものなんですね。


クリストフォリの夢 - デビッド・ランツ
posted by ささき at 23:35 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする