クラウドファンディングで一躍有名になったLH Labsが新しいDSDネイティヴ再生の方式であるPureDSDモードを発表しました。
http://lhlabs.com/force/announcements/4106-puredsd-announcement
DoPの良いところは毎サンプルにDSDマーカーを付加することで双方向性がないSPDIFでもDSDネイティヴ再生を可能にするという点です。このPureDSDではここを切り捨ててUSBのような双方向性があるプロトコルに特化したということです。つまりDAC側がDSD対応をデバイスプロファイルかなんかで宣言してから送るんでしょう。Modeって名称に付いてるのでモード切り替えの考え方でしょう。
これによってDSDマーカーを省いてロスを減らし352kHz対応のDACならDSD256を可能にし、ソフトウエアのエンコードのオーバーヘッドを減らすというものです。
Macでもオーケーと言ってるのでCoreAudioとクラスドライバは通るものと思いますが、その辺ちょっと分かりません。謎部分も少し残りますが、さて。
Music TO GO!
2015年04月30日
2015年04月24日
Astell & KernからAK Jr誕生!
Astell & Kernから新しいファミリーの登場です。その名はAK Jr(エーケー ジュニア)です。
まずデザインが8.9mmとスリムなスタイリッシュさが特徴です。重さは100gを割る98gと、第一世代より軽量です。ポケットにするっと入りそうですね。
DACはWM8740で第一世代と同じです。容量は内蔵64GBとMicro SDスロットで64GB増設の最大128GBです。ただしMicro SDは聞くところによると128GBでも大丈夫かも?
USB接続も第一世代と同じくUSBマスストレージです。
PCMは最大192kHzで、DSD再生は2.8Mが可能ですが88/24に変換となります。
出力はイヤフォンのミニ端子がひとつで、光出力と2.5mmバランスはありません。またソフトの機能は第一世代に近いようでWiFi関連機能等はないようです。
Jrの名の通りコンパクトでカジュアルな弟分という感じでしょうか。AKシリーズのラインナップがまた広がったという感じですね。
まずデザインが8.9mmとスリムなスタイリッシュさが特徴です。重さは100gを割る98gと、第一世代より軽量です。ポケットにするっと入りそうですね。
DACはWM8740で第一世代と同じです。容量は内蔵64GBとMicro SDスロットで64GB増設の最大128GBです。ただしMicro SDは聞くところによると128GBでも大丈夫かも?
USB接続も第一世代と同じくUSBマスストレージです。
PCMは最大192kHzで、DSD再生は2.8Mが可能ですが88/24に変換となります。
出力はイヤフォンのミニ端子がひとつで、光出力と2.5mmバランスはありません。またソフトの機能は第一世代に近いようでWiFi関連機能等はないようです。
Jrの名の通りコンパクトでカジュアルな弟分という感じでしょうか。AKシリーズのラインナップがまた広がったという感じですね。
2015年04月23日
Westoneインタビュー掲載
昨年Westoneのハンクさんにインタビューした内容がテックウインドさんのホームページに掲載されました。カスタム・ユニバーサルイヤフォン製品について広く深くカバーしてるのでぜひご覧ください!
【対談】オーディオライター佐々木氏 × WestoneAudio Hank Netherton氏
http://www.tekwind.co.jp/specials/WST/entry_170.php
ほとんど同時期にJH Audioのジェリーにもインタビューしてそちらはヘッドフォンブック2015に載ってます。ハンクともジェリーとも直接英語で話したわけですが、面白いと思ったのは、彼らと直接話してみると印象も大きく違うという点です。ジェリーとアンディーとの会話はアメリカらしいカジュアルで自由闊達ですが、ハンクは日本のように真面目で実直な感じです。この辺もJH AudioとWestoneの個性というものをちょっと感じさせてくれ、面白いですね。
【対談】オーディオライター佐々木氏 × WestoneAudio Hank Netherton氏
http://www.tekwind.co.jp/specials/WST/entry_170.php
ほとんど同時期にJH Audioのジェリーにもインタビューしてそちらはヘッドフォンブック2015に載ってます。ハンクともジェリーとも直接英語で話したわけですが、面白いと思ったのは、彼らと直接話してみると印象も大きく違うという点です。ジェリーとアンディーとの会話はアメリカらしいカジュアルで自由闊達ですが、ハンクは日本のように真面目で実直な感じです。この辺もJH AudioとWestoneの個性というものをちょっと感じさせてくれ、面白いですね。
2015年04月16日
ショパン・プロジェクト - アリス=紗良・オット/オラフ・アルナルズ
アリス=紗良・オットとオラフ・アルナルズという組み合わせで「おっ」と言う人がどれだけいるかわかりませんが、とにかく私はタワレコ店頭で見かけて「おっ」と言ったのでそのまま購入しました。ピアニストのアリス=紗良・オットはご存知の方が多いと思いますが、オラフ・アルナルズはエレクトロニカ・現代音楽系の人で最近日本でも人気です。私はどちらのアーティストも好きでそれぞれアルバムも持っています。ただ別々のジャンルの人だと思っていました。ショパン・プロジェクトはショパンの作品をこの二人が再解釈するというものです。
この組み合わせでひとつ思い出したのは、「クラシックの有名演奏家 + エレクトロニカ・現代音楽家」という組み合わせは前にも書いたということです。それは前に書いた記事のハウシュカとヒラリーハーンの"Silfra"です。
ちなみにアリス=紗良・オットはFransisco Tristanoとコラボしてやはりクラシック再解釈アルバム"Scandal"を出してます。クラシック作品にしてはポップなアルバムジャケットアートが面白いんですが、これも中身は良いです。こうしたコラボを好む人でもありますね。
ショパン・プロジェクトは音楽的にはこれも前に書いたやはりエレクトロニカ・現代音楽家であるマックス・リヒターの四季(邦題は"25%のビバルディ")のように、クラシックの有名作品を現代エレクトロニカ音楽家が再構築をするというものです。ただし手法は異なっています。
マックス・リヒターがサンプリングとかループと言った、わりと今風のDTM手法をクラシックの曲に適用したのとはある意味逆で、オラフ・アルナルズの目指すところは「作品における人間臭さ、ヒューマニティの復権」です。別な言い方をすると聴いている人間に近いという感じでしょうか。詳しくは下記リンクの海外ウェブマガジンにインタビューが載っています。
http://nbhap.com/interviews/olafur-arnalds-alice-sara-ott-chopin-project/
クラシックの録音は普通はとてもきれいで、ある意味で潔癖症です。正確に演奏し、余分なノイズを排除して行いますが、そこにもっと演奏者の息使いや椅子のきしみなど環境音を入れることで人の存在を感じられるものとしたいというのが二人の共通意見です。アリスはタワレコのショパン大使になったこともあり普通のショパンのアルバムも出していますが、彼女の好きな昔のショパン弾きは実のところ誤った音をたくさん弾いているけど、昔の録音だとそれが悪くなくむしろ人間的に思える、しかし今日の潔癖症録音でそれをやってしまうと粗が目立つだけのアルバムに仕上がってしまうという点に不満を寄せています。
そこで「ショパン・プロジェクト」では録音にはビンテージマイクとアナログ機材を使い、録音方法も演奏者の息遣いを意図的に入れるように工夫しているということです。またピアノはプリペアドにして音色を調整しています。ピアノはこのプロジェクトのためにプリペアドピアノとして「改造」されたようです。たぶんちょっとモノを挟めた程度ではないんでしょう。コンサートというかライブで披露したときはステージのピアノを20分かけてプリペアドにしたということです。それだけ音色にはこだわっています。
これにアルナルズの電子音およぴストリングスのパートと、アリスの弾くショパンの曲が交互に展開していきます。アルナルズのパートはショパンのメロディをアレンジしたもので、After Chopin(ショパンにならい、みたいな感じ)と英語版ではタイトルについています。ピアノパートにもフィールド録音した水音や会話のサンプリングなどを少し混ぜています。
ショパン自身は即興的な傾向の人で、同じ曲で出版社に渡した楽譜が異なるというのもよくあるそう。その辺もショパンを選んだ理由のひとつだそうです。彼女らはおそらく決まり切ったものを正確にこなすというところに、非人間性のような問題意識をもっているのでしょう。
こちらにプロモーションビデオがあります。
実際に聴いてみると、ピアノの音は普通に良録音で聴くようなエッジが立って硬質感があるような音ではなく、霧の中に響くようなぼやけた不明瞭な音で響いています。録音機材だけではなくプリペアドピアノの音色変更の効果もあると思います。
たしかに背景にアリスの声にも思えるハミングのような音がするけど、グールドのような明瞭な鼻歌ではなく、それももしかすると電子音のノイズや水の音のサンプリングと区別がともすればつきにくく感じられます。彼女の弾くショパンもピアノであることの主張を控え、アルナルズのストリングや電子音と混じっていき渾然一体となっていきます。それらは電子音なのか生楽器なのかあいまいになり、そうしたことはどうでも良いのではないかと思えるようになります。
録音を工夫してギシギシ言う環境音を言わばアコースティックなグリッチ的にわざとピアノ曲に絡めるのは、ポストクラシカルとも呼ばれるこの辺の音楽家の最近の常套手段だと思いますが、オラフ・アルナルズはそれをもっと別な角度から行いたかったのではないか、ともちょっと思います。
また、ピアニストのハミングなど交えたという点からは上にも書いたようにグールドを連想しますが、実際に彼らもそれを意識しているようです。とはいえ、グールドが観客との交わりであるコンサートを避けてあえて録音のみを志向していったのは彼なりの音楽追求なわけですが、このアルナルズやアリスの方向性はそれと逆なのか、あるいは実は同じなのか、とあれこれと考えてみるのも音楽の楽しみのひとつではありますね。
もうひとつ面白いのはこの実験的な感じのアルバムがマーキュリーというメジャーレーベルで出ているということで、インタビューの中でもインディーレーベルならこういうのは出しやすいが、メジャーでこうしたアルバムがリリースされるというのは業界が変わりつつあるということではないかと書かれています。
国内ではCDの他にe-Onkyoからハイレゾ配信されています。私は両方買いましたが、意図的に古い機材で録音しているのにその良さを引き出すのにハイレゾで聴くというのもまた面白いところではないでしょうか。
e-onkyoサイト
http://www.e-onkyo.com/music/album/uml00028948115044/
2015年04月12日
ハイサンプリングレートの利点とは、MeridianとBenchmarkの例
ハイサンプリングレートの利点について、MQAを研究してきたRealHDサイトの人とBenchmarkの設計者(John Siau)との興味深いやり取りが書かれています。
http://www.realhd-audio.com/?p=4361
Benchmarkはハイレゾのホワイトペーパーをアップして96kHzより上はあまり要らないという要旨(後述)ですが、それにRealHDの人がMeridianのMQA的見地からタイミング利点を得るには196kHzが必要と言ってるが、と質問をするという感じです。
日本だとハイレゾ音源のハイサンプリングレートの利点は、というと22kHz以上の超高音域の情報が記録されていて云々、それで倍音の効果が云々、という感じが多いと思います。
一方でそれよりも人の知覚を左右する音の「タイミング」が重要なんだ、と説いたのがMQAでのMeridianのボブスチュワートです。つまり少し誇張して言うと、MQA的には高い周波数の音の中身が伝わるよりも、音のタイミングの細かさが重要というわけです。
具体的に言うと、タイミングが正しく伝わるためには5-10マイクロ秒のタイミングが重要だというのがMeridianの主張です。5-10マイクロ秒が必要だとすれば、言い換えると50万分の1秒から10万分の1秒が必要だということで、それをサンプリングレートに換算すると500kHzから100kHzが必要だということになります。
つまり196kHzは19万6千分の1秒ですから、196kHzまたは384kHzのハイサンプルの音はこの辺に届きますが、96kHzではちょっと足りないということになります。
もう一方Benchmarkの言うハイサンプリングレートの利点はプリ・リンギングなどアーチファクトに関するものです。これはデジタル信号での計算誤差などで音が鳴る前にないはずの不自然な音が発生してしまうような問題です。BenchmarkのSiau氏によると、このような問題はナイキスト周波数のあたりに起きるので、CD品質の44kHzのナイキスト周波数である22kHzで起こると人の知覚に影響を与えてしまう。特にそれが20kHz以下のIMD歪みとなって表れてしまうというのが問題となるとのこと。
そこでサンプリングレートをあげて96kHzにしてしまうと、そのナイキスト周波数の48kHzは人の知覚に影響しないのでリンギングが起こっても音質に影響を与えにくくなるということです。またサンプリングレートが高くなると、リンギングの時間幅が短くなるので、このこともリンギングの悪影響を減らすそうです。(たぶん影響を受ける1サンプルの長さが短くなるということだと思います)
つまりハイサンプリングレートの利点と言うのは、高い周波数の音が聞こえるというよりも、Meridianに言わせるとタイミングがより正しくなることが良い、Benchmarkに言わせるとアーチファクトの悪影響を減らすことができるということが良い、というわけです。
Benchmarkの人は96kHzがそうした利点がある反面で、今日のスピーカー性能を考えると176kHzや192kHzの音源は意味がない、仮にそれが進歩したとしても人の耳が進歩しないのであまり意味がないと言っています。こちらはBanchmarkのホワイトペーパーに書かれています。
http://benchmarkmedia.com/blogs/news/14949325-high-resolution-audio-sample-rate
ちなみにBanchmarkのホワイトペーパーの前半ではナイキストの定理について、私がこの前の記事でナイキスト周波数の説明には車輪スポークの説明がある、と言ったその車輪の回転の例が書かれています。
一方でRealHDの人との問答では「タイミングはサンプリングレートの役割ではない」と書いてます。
MeridianのBob Stuwartも、BenchmarkのJohn Siauもとても高い知見と研究結果から書いているので、私がどうこういうものではありませんが、ぱっと見て結局196kHzって意味あるの?というところではなんとなく噛み合ってないようにも思います。
ハイレゾの利点というのは最近よく本に書かれますが、たいていはCDの数倍の情報量と書かれています。それ自体は前の記事で画像の大きさの例をあげたように間違いではありません。では実際に意味あるの、というとプロでも見解が分かれ、しかもタイミングにしろアーチファクトにしろ情報量はどこいった、という展開です。
一方で24bitの方は情報量は確実に16bitより増えます。しかし増える8bitは下位ビットですから微小音であり、それ(広いダイナミックレンジ)を活かすにはSNの高さが必要です。
イヤフォンならアイソレーション、電気回路ならノイズの減少、とそういう基本的なところが重要になるはずが、サンプルレートの方ばかり目がいって、それらがなおざりになると本末転倒になりかねないのではないでしょうか。
http://www.realhd-audio.com/?p=4361
Benchmarkはハイレゾのホワイトペーパーをアップして96kHzより上はあまり要らないという要旨(後述)ですが、それにRealHDの人がMeridianのMQA的見地からタイミング利点を得るには196kHzが必要と言ってるが、と質問をするという感じです。
日本だとハイレゾ音源のハイサンプリングレートの利点は、というと22kHz以上の超高音域の情報が記録されていて云々、それで倍音の効果が云々、という感じが多いと思います。
一方でそれよりも人の知覚を左右する音の「タイミング」が重要なんだ、と説いたのがMQAでのMeridianのボブスチュワートです。つまり少し誇張して言うと、MQA的には高い周波数の音の中身が伝わるよりも、音のタイミングの細かさが重要というわけです。
具体的に言うと、タイミングが正しく伝わるためには5-10マイクロ秒のタイミングが重要だというのがMeridianの主張です。5-10マイクロ秒が必要だとすれば、言い換えると50万分の1秒から10万分の1秒が必要だということで、それをサンプリングレートに換算すると500kHzから100kHzが必要だということになります。
つまり196kHzは19万6千分の1秒ですから、196kHzまたは384kHzのハイサンプルの音はこの辺に届きますが、96kHzではちょっと足りないということになります。
もう一方Benchmarkの言うハイサンプリングレートの利点はプリ・リンギングなどアーチファクトに関するものです。これはデジタル信号での計算誤差などで音が鳴る前にないはずの不自然な音が発生してしまうような問題です。BenchmarkのSiau氏によると、このような問題はナイキスト周波数のあたりに起きるので、CD品質の44kHzのナイキスト周波数である22kHzで起こると人の知覚に影響を与えてしまう。特にそれが20kHz以下のIMD歪みとなって表れてしまうというのが問題となるとのこと。
そこでサンプリングレートをあげて96kHzにしてしまうと、そのナイキスト周波数の48kHzは人の知覚に影響しないのでリンギングが起こっても音質に影響を与えにくくなるということです。またサンプリングレートが高くなると、リンギングの時間幅が短くなるので、このこともリンギングの悪影響を減らすそうです。(たぶん影響を受ける1サンプルの長さが短くなるということだと思います)
つまりハイサンプリングレートの利点と言うのは、高い周波数の音が聞こえるというよりも、Meridianに言わせるとタイミングがより正しくなることが良い、Benchmarkに言わせるとアーチファクトの悪影響を減らすことができるということが良い、というわけです。
Benchmarkの人は96kHzがそうした利点がある反面で、今日のスピーカー性能を考えると176kHzや192kHzの音源は意味がない、仮にそれが進歩したとしても人の耳が進歩しないのであまり意味がないと言っています。こちらはBanchmarkのホワイトペーパーに書かれています。
http://benchmarkmedia.com/blogs/news/14949325-high-resolution-audio-sample-rate
ちなみにBanchmarkのホワイトペーパーの前半ではナイキストの定理について、私がこの前の記事でナイキスト周波数の説明には車輪スポークの説明がある、と言ったその車輪の回転の例が書かれています。
一方でRealHDの人との問答では「タイミングはサンプリングレートの役割ではない」と書いてます。
MeridianのBob Stuwartも、BenchmarkのJohn Siauもとても高い知見と研究結果から書いているので、私がどうこういうものではありませんが、ぱっと見て結局196kHzって意味あるの?というところではなんとなく噛み合ってないようにも思います。
ハイレゾの利点というのは最近よく本に書かれますが、たいていはCDの数倍の情報量と書かれています。それ自体は前の記事で画像の大きさの例をあげたように間違いではありません。では実際に意味あるの、というとプロでも見解が分かれ、しかもタイミングにしろアーチファクトにしろ情報量はどこいった、という展開です。
一方で24bitの方は情報量は確実に16bitより増えます。しかし増える8bitは下位ビットですから微小音であり、それ(広いダイナミックレンジ)を活かすにはSNの高さが必要です。
イヤフォンならアイソレーション、電気回路ならノイズの減少、とそういう基本的なところが重要になるはずが、サンプルレートの方ばかり目がいって、それらがなおざりになると本末転倒になりかねないのではないでしょうか。
2015年04月07日
ニルス・フラームと世界最大のピアノ、Klavins M370
さる3月29日は「ピアノの日」だったそうです。知らなかった人が多いと思いますが、それは無理もありません。これはピアニストのニルス・フラームによって今年制定というか提唱されたもので、ピアノの88腱にちなんで新年から88日目が3月29日なのだそうです。(ちなみに日本でのピアノの日はシーボルトがピアノを輸入した日にちなんで7月9日だそうです)
ニルス・フラームはこの日のために専用のウエブサイトを作成しています。ここで彼は新作のピアノソロアルバム、"Solo"を無料配信しています。
http://www.pianoday.org/
ここまではよくありそうな話ですが、この話が面白くなってくるのは彼が使用したピアノです。それはピアノ技師であるDavid Klavinsによって製作された世界最大のピアノ、Klavins M370です。このM370というのは小型のパイプオルガンのような大きさで2トンもあるものです。普通のグランドピアノで約300kg、より大型のコンサートタイプで約500kgというので、M370の巨大さが分かるでしょう。下記に紹介ビデオがあります。
ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調
M370の特徴はその弦の長さです。鍵盤は88腱と変わりませんが、低音弦が普通は2メートル低度のところ、このM370では3メートルを超えます。そのため横ではなく縦に弦が配置されています。つまり移動は不可能で、スタジオの二階と一階をぶっ通して製作されていて、演奏者は二階まで歩いて上がることになります。
弦が長くなるとなにが良いかというと、大きなコンサートピアノの弦長でも本来の低域再生が難しいそうで、調律師が妥協をして張力を調整しているため、本来得られるべき音になっていないとのこと。そうした低音の倍音を正しく再現してこそ、ピアノのあるべき音がはじめて分かるということです。つまり基本的には低域再生力の向上ですが、倍音の影響で全体の音質もよくなるということですね。そのためにこんな巨大なピアノを製作したというわけです。M370については記事がこちらにあります。
http://gigazine.net/news/20150407-klavins-piano/
David Klavins氏はピアノの調整や修理を請け負っている人なのだそうですが、その本来の音を出すための挑戦と言えるでしょう。そしてこの冒頭に書いた「ピアノの日」と言うのはDavid Klavinsがさらなる次の巨大ピアノであるM450を完成させるためのサポートのためということです。私もけっこうニルス・フラーム好きなんでよく聴きますが、ピアニストと言うよりは、エレクトロニカ・ミュージシャンということで日本では有名です。また他のミュージシャンのエンジニア仕事もよくやっているように思います。
彼の演奏するM370の音はさきに書いた「SOLO」で聴くことができます。96/24ハイレゾWAVとMP3で無料ダウンロードできますので、世界最大のピアノの音をぜひハイレゾで楽しんでください。Wallなんかはニルス・フラームらしいミニマルな現代曲に仕上がっています。
このプロジェクトはKlavinsの夢にささげられたとあります。そもそもピアノの発明者はバートロメオ・クリストフォリという人ですが、ピアニストのデビッド・ランツによるクリストフォリの夢という名曲がありますのでM370とは関係ありませんが、最後にこちらを聴きながらピアノの将来に思いをはせたいと思います。バイオリンは完成された形とはよく言いますが、ピアノはまだまだ発展できるものなんですね。
クリストフォリの夢 - デビッド・ランツ
ニルス・フラームはこの日のために専用のウエブサイトを作成しています。ここで彼は新作のピアノソロアルバム、"Solo"を無料配信しています。
http://www.pianoday.org/
ここまではよくありそうな話ですが、この話が面白くなってくるのは彼が使用したピアノです。それはピアノ技師であるDavid Klavinsによって製作された世界最大のピアノ、Klavins M370です。このM370というのは小型のパイプオルガンのような大きさで2トンもあるものです。普通のグランドピアノで約300kg、より大型のコンサートタイプで約500kgというので、M370の巨大さが分かるでしょう。下記に紹介ビデオがあります。
ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調
M370の特徴はその弦の長さです。鍵盤は88腱と変わりませんが、低音弦が普通は2メートル低度のところ、このM370では3メートルを超えます。そのため横ではなく縦に弦が配置されています。つまり移動は不可能で、スタジオの二階と一階をぶっ通して製作されていて、演奏者は二階まで歩いて上がることになります。
弦が長くなるとなにが良いかというと、大きなコンサートピアノの弦長でも本来の低域再生が難しいそうで、調律師が妥協をして張力を調整しているため、本来得られるべき音になっていないとのこと。そうした低音の倍音を正しく再現してこそ、ピアノのあるべき音がはじめて分かるということです。つまり基本的には低域再生力の向上ですが、倍音の影響で全体の音質もよくなるということですね。そのためにこんな巨大なピアノを製作したというわけです。M370については記事がこちらにあります。
http://gigazine.net/news/20150407-klavins-piano/
David Klavins氏はピアノの調整や修理を請け負っている人なのだそうですが、その本来の音を出すための挑戦と言えるでしょう。そしてこの冒頭に書いた「ピアノの日」と言うのはDavid Klavinsがさらなる次の巨大ピアノであるM450を完成させるためのサポートのためということです。私もけっこうニルス・フラーム好きなんでよく聴きますが、ピアニストと言うよりは、エレクトロニカ・ミュージシャンということで日本では有名です。また他のミュージシャンのエンジニア仕事もよくやっているように思います。
彼の演奏するM370の音はさきに書いた「SOLO」で聴くことができます。96/24ハイレゾWAVとMP3で無料ダウンロードできますので、世界最大のピアノの音をぜひハイレゾで楽しんでください。Wallなんかはニルス・フラームらしいミニマルな現代曲に仕上がっています。
このプロジェクトはKlavinsの夢にささげられたとあります。そもそもピアノの発明者はバートロメオ・クリストフォリという人ですが、ピアニストのデビッド・ランツによるクリストフォリの夢という名曲がありますのでM370とは関係ありませんが、最後にこちらを聴きながらピアノの将来に思いをはせたいと思います。バイオリンは完成された形とはよく言いますが、ピアノはまだまだ発展できるものなんですね。
クリストフォリの夢 - デビッド・ランツ
2015年04月02日
CanJamでの新製品についてなど
先週末にロスアンゼルスで開催されたHeadFiのイベントCanJamの試聴レポートなどが下記にあがってきています。これを見ていて感じたことをちょっと書いていきます。
http://www.head-fi.org/t/758649/canjam-socal-2015-impressions-thread
個人的に見ていて気になったのは先日のビデオでは出ていなかったんですが、おなじみALOの新製品、Continental Dual Monoです。これはDAC内蔵のポータブルアンプで、いままでのContineltalとは完全別で$1500というハイエンド製品です。
ビンテージNOSの6111サブミニ管を使用したアンプはDCDC回路など昇圧なしでノイズレスを重視、トップモデルのWM8741を採用したDAC部分、クロックジェネレーターIC、iOS入力対応のデジタル入力などなど優れたオーディオ回路と、真空管が見れるゴリラガラスのウインドウなどデザイン的にも優れています。オーディオあたりはVinnieさん設計です。
下記リンクに詳細があります。
http://www.head-fi.org/t/760478/the-all-new-continental-dual-mono
ALOのところではiModやRWAKでもおなじみのVinnieさんのLIOも展示されてますね。これはコンデンサーベースの仮想バッテリー(?)のような電源とモジュラー式に機能をくみ上げる点が特徴的です。電源は弱いどころかかなり駆動力も高いようです。スマートフォンからのリモート操作にも対応していて、機能はフォノアンプ、ヘッドフォンアンプ、DACなどを自由に組み合わせられるようで、オールインワンのオーディオ機器になるように考えられています。
ちなみにLIOではブランド名が"Red Wine Audio"から"Vinnie Rossi"に変わっています(会社名は変わらず)ので、これはVinnie Rossi LIOになります。リンクは下記です。
http://vinnierossi.com/
またCavalliのポータブルアンプであるCavalli Siliconも注目です。Cavalliのフルディスクリート設計と言うことで、音質評価も上々です。
みたところ背面にアナログ入力があって前面に3.5mm出力が2個出ていますが、PONO(SONY)バランスでしょうかね?上位の新型Cavalli Carbon(ミドルクラス据え置き)はフルバランスです。
デザインは無難ですがシャーシは航空機グレードアルミなので実際に持つと質感は高いでしょう。SiliconはDACなしポータブルアンプとしてはひさびさに気になる製品です。
電流出力ハイレゾプレーヤーのQueStyle QP-1/1Rも音質はなかなか良いようです。ただしHD800をデモに使ったと言いますが、QP-1は電流出力と言う特徴がありますのでフルサイズヘッドフォンをうまく鳴らせたからと言って、BAマルチのイヤフォンで楽々というわけには単純にいかないかもしれません。その辺が気になるところです。
それとPeachTreeのShiftもビデオにはありませんでしたが、会場では展示されていたようです。これはCESでも展示がありましたが、革貼りの筐体と言い、機能と言い、Oppo HA-2を強く意識したようなDAC内蔵ポータブルアンプです。
またビデオになかった新製品ではNobleがスピーカーを出しています。HeadFiのコメントではスタジオモニターと言う言い方をしている人もいますが、さてどうなんでしょうか。NobleもBluetoothモジュールともども多角化していきますね。
新型のヘッドフォンではEnigma AcousticsのハイブリッドDharma D-1000の評価が高いように思います。AKG K340はちょっと色もの扱いと言う点もありますが、いよいよこの静電+ダイナミックの2wayスタイルも完成系になったんでしょうか。
http://www.head-fi.org/t/750437/enigmacoustics-dharma
Etherは評価はいろいろありますが、どの製品も人によってけっこうばらつきがあって、こればかりは自分で聴いてみないとですね。
さて、そろそろ5/16,17のヘッドフォン祭の準備もはじまっておりますが、上のうちのいくつかはヘッドフォン祭で見られるかも?!
http://www.head-fi.org/t/758649/canjam-socal-2015-impressions-thread
個人的に見ていて気になったのは先日のビデオでは出ていなかったんですが、おなじみALOの新製品、Continental Dual Monoです。これはDAC内蔵のポータブルアンプで、いままでのContineltalとは完全別で$1500というハイエンド製品です。
ビンテージNOSの6111サブミニ管を使用したアンプはDCDC回路など昇圧なしでノイズレスを重視、トップモデルのWM8741を採用したDAC部分、クロックジェネレーターIC、iOS入力対応のデジタル入力などなど優れたオーディオ回路と、真空管が見れるゴリラガラスのウインドウなどデザイン的にも優れています。オーディオあたりはVinnieさん設計です。
下記リンクに詳細があります。
http://www.head-fi.org/t/760478/the-all-new-continental-dual-mono
ALOのところではiModやRWAKでもおなじみのVinnieさんのLIOも展示されてますね。これはコンデンサーベースの仮想バッテリー(?)のような電源とモジュラー式に機能をくみ上げる点が特徴的です。電源は弱いどころかかなり駆動力も高いようです。スマートフォンからのリモート操作にも対応していて、機能はフォノアンプ、ヘッドフォンアンプ、DACなどを自由に組み合わせられるようで、オールインワンのオーディオ機器になるように考えられています。
ちなみにLIOではブランド名が"Red Wine Audio"から"Vinnie Rossi"に変わっています(会社名は変わらず)ので、これはVinnie Rossi LIOになります。リンクは下記です。
http://vinnierossi.com/
またCavalliのポータブルアンプであるCavalli Siliconも注目です。Cavalliのフルディスクリート設計と言うことで、音質評価も上々です。
みたところ背面にアナログ入力があって前面に3.5mm出力が2個出ていますが、PONO(SONY)バランスでしょうかね?上位の新型Cavalli Carbon(ミドルクラス据え置き)はフルバランスです。
デザインは無難ですがシャーシは航空機グレードアルミなので実際に持つと質感は高いでしょう。SiliconはDACなしポータブルアンプとしてはひさびさに気になる製品です。
電流出力ハイレゾプレーヤーのQueStyle QP-1/1Rも音質はなかなか良いようです。ただしHD800をデモに使ったと言いますが、QP-1は電流出力と言う特徴がありますのでフルサイズヘッドフォンをうまく鳴らせたからと言って、BAマルチのイヤフォンで楽々というわけには単純にいかないかもしれません。その辺が気になるところです。
それとPeachTreeのShiftもビデオにはありませんでしたが、会場では展示されていたようです。これはCESでも展示がありましたが、革貼りの筐体と言い、機能と言い、Oppo HA-2を強く意識したようなDAC内蔵ポータブルアンプです。
またビデオになかった新製品ではNobleがスピーカーを出しています。HeadFiのコメントではスタジオモニターと言う言い方をしている人もいますが、さてどうなんでしょうか。NobleもBluetoothモジュールともども多角化していきますね。
新型のヘッドフォンではEnigma AcousticsのハイブリッドDharma D-1000の評価が高いように思います。AKG K340はちょっと色もの扱いと言う点もありますが、いよいよこの静電+ダイナミックの2wayスタイルも完成系になったんでしょうか。
http://www.head-fi.org/t/750437/enigmacoustics-dharma
Etherは評価はいろいろありますが、どの製品も人によってけっこうばらつきがあって、こればかりは自分で聴いてみないとですね。
さて、そろそろ5/16,17のヘッドフォン祭の準備もはじまっておりますが、上のうちのいくつかはヘッドフォン祭で見られるかも?!