この週末はHeadFiでも最大のイベントであるCanJamがロスアンゼルスのサウスコーストプラザ・モールにて開催されます。そこでJudeが紹介ビデオをアップしています。数々の新製品がビデオレビューされていますのでぜひご一覧ください。
Part1とPart2に分かれています。
まずPart1ですが、下記リンクにてビデオが見られます。私の私的興味のあるものをいくつか紹介していきます。
http://www.head-fi.org/t/741136/canjam-socal-2015-march-28-29-2015-only-3-days-away/840#post_11425416
下記説明は私が聞き取りしたものですので念のため。数字はビデオのタイミングです。
2:18Audeze EL8は特にクローズの音が向上したようです。
9:50レイラとアンジー、AKT5pはAstell&Kernのブースで紹介しています。それとカスタム版レイラはCanJamには出ないように思えます。
14:21 Colofly系のLuxualy presision LP5の紹介です。最新L5の方は不明です。Cyan N6なども紹介されています。
16:29 SchiitのフラッグシップDACであるユグドラシルDACの紹介です。これはDSPデジタルフィルターもさることながら、なんとR2R(マルチビット)DACです。海外ではマルチビットDACというよりR2R(レジスター トゥ レジスター)のほうが一般的な呼び方です。噂されていたようにディスクリートではなくDAC ICを使うタイプでAD5791 BRUZというDAC ICを使います。スペックシートを見ると20bit精度のようですね。BRUZは高級(選別?)タイプです。
またラグナロクはユニバーサルアンプと呼ぶハイパワーアンプでヘッドフォンもスピーカーも鳴らせるところが特徴です。
18:49にラグナロクのリレー式のステップアッテネータのカチャカチャいう音でJudeが遊ぶところが収録されりています。
29:20 にはAurender flowとともにAurender CastFiというキッチンなんかで使うTVでスティック型のコンピューターと合わせてストリーミングで使うようなものも紹介されています。
Part2のビデオでは声が枯れて準備で疲れてるかもしれませんね。Part2はこちらです。
http://www.head-fi.org/t/741136/canjam-socal-2015-march-28-29-2015-only-3-days-away/1065#post_11442629
まずHifiManです。HE100は真空管ハイブリッドでUSB DAC付き、$500くらい。HE901Sも出てます。
4:16 HE10000の生産版が紹介されています。グリルが横棒となって新デザインとなっています。Judeはドライバーが消えてしまうようなサウンドだと言っています。私も生産版をちょっと聴きましたが、前より自然というか音楽的に向上しています。価格が$2,999と発表されてますが、性能的にはHD800はずっと超えてて、これに比較するのはSR009とかAbyssだと思いますのでまあ良いところだと思います。
13:47 ChordではHugo TTが紹介されていて、HE1000との組み合わせが聴きものだって言ってます。
18:47 MrSpeakerのここで初披露のEther(イーサー)という平面型の新型ヘッドフォンが紹介されています。平面型でAlpha Primeで採用された技術とともに広いダイヤフラムでオープン型です。RP modではなく新設計です。側圧を適正化できる形状記憶のヘッドバンドなどかなり新しいところも入っていますね。これはプロトタイプで$1499、能率高いということです。
22:13 AyreのUSB DACのCodex(コーデックス)です。CESに出てました。あとPonoはAyreのブースで展示されるようです。
24:08 ハイエンドで高駆動力ヘッドフォンアンプで海外では定評あるCavalli Audioが普及価格のLiquid Carbonを出してます。バランス入力もバランス駆動も可能のようです。おそらく純粋ヘッドフォンアンプです。
24:59ではカスタムIEMも使えるノイズの低さでFitEarが写ってますね。
25:29なんとCavalliがポータブルヘッドフォンアンプも出してます。フルディスクリート設計で名前はPortable(仮?)です。Cavaliは評価高いので要注目かも。
29:18 NobleのBluetooth、BTSプロトタイプです。ショートケーブルも用意するけど、Noble専用ではないようです。
33:57 静電型のスーパーツイーターで知られるEnigma Acousticが出したDharma D1000 ハイブリッドです。CESに出てました。 静電型と和紙ダイナミックのハイブリッドです。AKG K340を持ち出して比較していますね。Judeは音もいい(Wow!)って言ってます。A1というECC82使ったヘッドフォンアンプもありますが、D1000はセルフバイアスのタイプなのでSTAXのような専用ドライバーは不要です。
41:27 Darin Fongのスピーカーエミュレータ(out of your head)も出てますね。
41:55 電流出力ヘッドフォンアンプ作ったQuestyleのQP1電流出力ハイレゾプレーヤーです。Rは高級版。iPhone生産で知られるFoxconnで作ってるのもポイントで、PAW Goldとも中国製も品質でも勝負できるようになってきたのかも。
DSDは単体ネイティブかも?電流出力なのでクロスオーバーのあるIEMには向かない気もしますが、QP1は出力インピーダンスも売りにするちょっと特徴的なところがあります。
AyreやDharmaみたいにCESで出てた機種が実際に発表されてるのも見どころですし、HE1000、Nighthawk、EL8、Ether、Dharmaとヘッドフォンが良いのも今年の特徴を占うようです。
さて本番が楽しみなところです。
Music TO GO!
2015年03月26日
2015年03月19日
ヘッドフォンブック2015に執筆しました
本日ヘッドフォンブック2015が発売されました。私もいくつかの記事を書いています。
まずP28のヘッドフォンアワードです。そしてカスタムvsユニバーサルとして、P158からカスタムとユニバーサルに関する比較研究のような記事を総論とロクサーヌ(カスタムとユニバーサル)、フィットイヤー(MH334とToGo334)、WestoneのW60とES60についてそれぞれ考え方の違いなどを書いています。
レイラとアンジーでは昨年末にジェリーが来日した時にしたインタビューとレビュー記事をP131から書いています。
P186ではオーディオクエストのNightHawkも書いてます。ほかにレビューも数点書いています。
雑誌には話題のヘッドフォン向け音源のHPLが聴き比べできるデモ音源付録もついていますのでぜひご購入ください!
まずP28のヘッドフォンアワードです。そしてカスタムvsユニバーサルとして、P158からカスタムとユニバーサルに関する比較研究のような記事を総論とロクサーヌ(カスタムとユニバーサル)、フィットイヤー(MH334とToGo334)、WestoneのW60とES60についてそれぞれ考え方の違いなどを書いています。
レイラとアンジーでは昨年末にジェリーが来日した時にしたインタビューとレビュー記事をP131から書いています。
P186ではオーディオクエストのNightHawkも書いてます。ほかにレビューも数点書いています。
雑誌には話題のヘッドフォン向け音源のHPLが聴き比べできるデモ音源付録もついていますのでぜひご購入ください!
2015年03月15日
音を画像で考える
私も音質のレビューを書くときによく「解像力」という言葉を使います。しかしながら、突っ込まれれば「解像力」って音ではなく像だからデジタルカメラの言葉じゃないって言われてもおかしくはありません。でもオーディオでも音像っていうし、と言い訳したりもします。
最近ハイレゾ関連の話題もあり、解像力やらレゾリューションなどが語られますが、あいまいに語られることも多いのはひとつは音が目で見えないために説明しにくいということがあると思います。人間は外部情報の9割を視覚に頼っているという話もありますが、実のところ画像化すると納得しやすいというところもあるでしょう。
私はオーディオもカメラもそれなりに深みにはまっているわけですが、デジタルの分野において画像とオーディオが基本的に置き換え可能な共通概念があるということには気がついていました。
1. 音と画像のデジタル処理の共通点
まず簡単にアナログとデジタルのおさらいをしながら、デジタル化におけるオーディオと画像の共通項を考えます。
簡単に言うとある波をデータとして記録する際に、波を波の形として記録するのがアナログ記録方式であり、波をいったん数値に変換するのがデジタル記録です。
たとえば空気を伝わる音の振動の波形をアナログレコード盤の溝でも拡大すると似たように波形のように記録しています。似た形で記録するのでアナログ記録と呼びます。Analogueの英語の意味は"類似"とか"近似"です。
デジタルでは音の振動をアナログのようにそのままではなく0と1の数値にいったん変換して記録します。数値にするとどういう良い点があるかというと、仮に1が多少汚れて1となっても読みだすときは1と見なせますので、メディアに汚れがあっても音質に変化がありません。アナログでは溝が汚れると汚れた音になります。さらに数値ならば加算することで記録に間違いがあっても発見・訂正が容易です。
よくデジタルを断続、アナログを連続と言いますが、それぞれ本当は、断続というより数値化、連続というより類似です。そう理解するとより正しく見えてくると思います。
デジタル記録では数値化が必要ですから、数値にするためにはもともと一続きのものを細切れに分割する(離散化する)必要があります。これをサンプリングといいます。分割(サンプリング)したデータを数値化します。これが量子化です。
このように、サンプリングと量子化の二点がデジタル記録の肝ですが、それぞれデジタルオーディオとデジタルカメラに例えると下記のようになります。
*サンプリング (どう分割するか)
オーディオ: サンプリングレート(例 44kHzとか96kHzなど) → 1秒間の音の変化を細かく区切る
カメラ: 画素数(例 1000万画素とか、4Kなどの言い方) → レンズが結像する像面を細かく区切る
*量子化 (分割したものを数値化)
オーディオ: ビット数(例 16bitや24bit) → 音の強度を記録
カメラ: ビット数(例 8bitや12bit) → 光の明度を記録
量子化後の数値は人の視覚・聴覚に関係するものなので、測定の基準は両方ともダイナミックレンジです(dB)。オーディオでは16bitで96dB、人の聴覚限界は約120dBといわれています。画像では8bitで50dB(不確か)、人の視覚限界は約80dB(不確か)だったと思います。(カメラにおいてはステップ数・段数の方が一般的です)
なお画像では8bitというとRGBの一色についてであり、フルカラー1670万色という場合はRGBの組み合わせです(8bit=256ですから、256^3=16777216)。センサー自体は色は分からず、モノクロの光の強さを感じるだけです。そのため発色にはカラーフィルタを組み合わせて近傍と計算処理後に色に変換してから記録する必要があります。一方でオーディオも時間方向のジッターなどがあるので、オーディオとカメラ画像はまったく同じということではありません、念のため。
しかし、理解のための考え方は置き換えできるということが本稿の趣旨です。
2. 音を画像で見る、アップサンプリング
タイトルで書いた音を画像で見るというのは、音の波形をオシロで解析するというのではなく、音の世界を画像の世界で例えて説明するということです。
下記のHQ PlayerのSignalystのページに面白い例として、アップサンプリングの説明があります。
http://www.signalyst.com/upsampling.html
このページの一番上の大きい画像が192kHz / 24bitを例えた画像です。すぐ下の小さい画像が44kHz / 16bitのCD品質です。これは192kHz / 24bitのマスターをダウンサンプルしたと考えても良いでしょう。
画像で見るとこのようにハイレゾは大きな画像として見ることができます。これによりデータ量が大きいということが視覚的に分かりやすいと思います。実際にはMQAの三角形の説明であったように、ほんとに数倍あるデータの全てが意味があるのかという問題もありますが、それはこうした基本を踏まえたうえで討議すべき問題でしょう。
ちなみにこれは画面解像度を同じにしているため画像サイズの大小として見えますが、同じサイズ(たとえば2Lサイズ)に印刷すると印刷解像度があがることで細かい画像になるということが分かります。
上の44/16と192/24は音源データの例えでしたが、この二枚以降はDA変換されたデータストリームの例えになっています。
44/16の下の二枚ではフィルタを適用しないと本来ないはずの縞模様が浮き出してくるのも分かると思います。これはオーディオでも言うところのアーチファクト(計算副作用)です。初めの一枚にフィルタを加えることで干渉縞を滑らかにすることができます。
次に大きな画像は44/16を4倍オーバーサンプリングした画像で、データサイズは192kHz / 24bitの音源データと同じことが分かると思います。ただし元の192kHz / 24bitのマスターに比べると計算的に拡大したため細部は粗くなっています。次の二枚ではフィルタリングをしたり、高品質アップサンプリングをすることで細部の粗さが改善されていくことが見て分かります。ただし元の192kHz / 24bitデータには画質は及ばないわけで、この辺りが良く「ハイレゾ相当」と呼ばれる品質ですね。
注意してほしいのは「192kHz相当」であってもデータのサイズはあくまで192kHzと同じであるということです。つまり中身の品質がどうあろうと、ナイキスト周波数は同じです。これはローパスフィルタなど回路設計に関係してくると思います。
3. 目で見るナイキスト周波数
もうひとつ画像で考えた場合に分かりやすいものの例はこの「ナイキスト周波数」だと思います。
ナイキストの定理というのは簡単に言うとデジタル記録における実際の解像力は最大解像力の半分であるということです。さきに書いたようにオーディオでの解像力は定義としてはサンプリングレートに相当します。
たとえばCDはサンプリングレートが44kHzですから、実際に有意に記録できるのは22kHzまでで、これをナイキスト周波数と言います。人の耳に聞こえるのは20kHzと言われていますから、人が聞こえる音をすべて記録するためには20kHz必要であり(実際の解像力)、そこから40kHzがサンプリングレートとして必要と言うことが導かれます(最大解像力)。実際には40kHzではなく44kHzになっているのは当時のなんだったかデジタル記録方式との互換性だったと思います。
22kHzから44kHzまでの領域は通常はノイズとしてSNを下げる原因となるのでローパスフィルタで除去されます。なぜノイズとなるのかはエイリアシングという問題があるからです。
ナイキスト周波数とはいいかえるとエイリアシングが発生しない一番高い周波数のことです。もう少し端的に言うと、意味のある信号が得られるもっとも高い周波数です。(ですからMQAの説明でもナイキスト周波数で切られています)
そのためナイキスト周波数の理解の肝はエイリアシングを理解するということだと思います。このエイリアシングは自転車のスポークの回転に例えられることもありますが、オーディオ的にはなかなかどういうものか直観的に理解がむずかしいところです。そこをカメラ画像に置き換えて説明してみます。
ナイキストの定理というのは、たとえばセンサーのピクセルとピクセルの間に髪の毛があるときに、その髪の毛の太さとセンサーのピクセルの大きさとの関係です。
下記の図において、四角はセンサーで、赤い丸は髪の毛です。

この髪の毛がセンサーのピクセルと同じ大きさの時(1と2)、センサーにうまく重なれば記録されます(1)。しかしピクセルとピクセルのあいだに挟まると(2)どちらのピクセルに映るのか映らないかが決定できません。この状態がエイリアシング(aliasing)です。これは言い換えると連続のものをぶつ切りにして記録することで生じる中途半端な状態のことです。Alias自体は別名と訳されますが、偽の(証明されていない)という語彙を含んでいるので、Aliasingは確定していない状態という感じの意味だと思います。
決定できない状態はこの髪の毛を少しずつ左右にずらしても同じです。この髪の毛がセンサーに必ず記録されるための条件は、髪の毛の大きさがセンサーの2倍であることです(3と4)。このとき、どの方向に動かしても髪の毛はかならずどこかのセンサーをカバーします。
つまり言い換えると、ある太さの髪の毛を確実に記録するために必要なセンサーのサイズは、髪の毛の太さの1/2です。つまりセンサーの数は倍必要になり、解像力は2倍必要ということが分かると思います。
オーディオであれば、44KHzのサンプリングレートで44kHzのデータは「確実に」サンプリングできません。不確か、つまりエイリアシングの状態(上図の1と2)でサンプリングされることになります。
つまり1/22000秒というサンプリングの間隔を確実に記録するためにはその半分の細かさの1/44000秒の間隔が必要であるということです。つまり22kHzの周波数の音を記録するためには44kHzの解像力が必要です。
ちなみに画像における「高い周波数」とはビルと家の隙間のようなごちゃごちゃしたところです。低い周波数は青空などです。高い周波数のところではノイズである偽色(アーチファクト)が出やすいので、ローパスフィルタ(カメラの場合は結晶板)を適用します。オーディオにおいては高い周波数とはご存じのように高い音です。
もちろんカメラはADであり、オーディオはDAであるなど違いはありますが、ナイキストの定理というものが連続的なものをぶつ切りにする(デジタル化)ことで生じる原理的なものだということは分かってもらえると思います。
4. シャープネスの単位を考える
最後に「シャープネス」について考えてみます。
はじめに書いたように音質レビューでは音がシャープだとよく書きますが、画像のほうのカメラの世界でもやはりレンズの「シャープさ」と良く言います。
しかし「シャープさ」の単位はなに?と問えば、それが測定できない感覚的な概念だとわかるでしょう。レンズの世界では一般的に使われる解像力はMTFと呼ばれる空間コントラスト密度を使用します。しかし低い周波数のときの10本線MTFと高い周波数のときの30本線MTFに違いがある場合、それぞれで人によって10本線MTFが高いレンズ(いわゆるドイツ型)がシャープであるとか、30本線MTFが高いレンズ(国産型)がシャープであるというのは昔から議論があります。MTF自体は測定できても、それをシャープ、尖鋭的と感じるのは人の感覚によるものだからです。
ここは意図的に解像力とコントラストをごっちゃにして語っているのですが、実のところシャープさというのはあいまいで感覚的なものです。
一方でMTFはフィルム時代から使われているものですが、時代がデジタルになってくるとDXOベンチマークのLens Blurなど、別な視点でのシャープさの定義というのも模索されています。そうした意味ではデジタル信号のシャープさという考え方も必要なのかもしれません。たとえばMQAのところでMeridianのボブ・スチュワートはtemporal Blur(時間方向のプレ・ボケ)という言葉を使っています。オーディオでもなにかそうした新しい基準が必要になってきているようにも思います。
実のところ、実用的なデジタル化が始まったのはカメラは90年代後半くらいですが、オーディオでは80年代のCDからはじまっているので、デジタル化という意味ではオーディオの方が古いのですが、カメラにおいては当初からユーザーがデジタル処理を意識していたのに対して、オーディオではユーザーがデジタル処理を意識するのはPCオーディオが言われてきたここ数年ですから、そうした点ではカメラの方が先駆的な点もあるでしょう。
オーディオもカメラも古くからの伝統のあるものですが、デジタル化によってそれぞれの世界をヒントにしたり智恵を相互に融通ができるようになったと考えれば相乗効果があるといえるのではないかと思います。
最近ハイレゾ関連の話題もあり、解像力やらレゾリューションなどが語られますが、あいまいに語られることも多いのはひとつは音が目で見えないために説明しにくいということがあると思います。人間は外部情報の9割を視覚に頼っているという話もありますが、実のところ画像化すると納得しやすいというところもあるでしょう。
私はオーディオもカメラもそれなりに深みにはまっているわけですが、デジタルの分野において画像とオーディオが基本的に置き換え可能な共通概念があるということには気がついていました。
1. 音と画像のデジタル処理の共通点
まず簡単にアナログとデジタルのおさらいをしながら、デジタル化におけるオーディオと画像の共通項を考えます。
簡単に言うとある波をデータとして記録する際に、波を波の形として記録するのがアナログ記録方式であり、波をいったん数値に変換するのがデジタル記録です。
たとえば空気を伝わる音の振動の波形をアナログレコード盤の溝でも拡大すると似たように波形のように記録しています。似た形で記録するのでアナログ記録と呼びます。Analogueの英語の意味は"類似"とか"近似"です。
デジタルでは音の振動をアナログのようにそのままではなく0と1の数値にいったん変換して記録します。数値にするとどういう良い点があるかというと、仮に1が多少汚れて1となっても読みだすときは1と見なせますので、メディアに汚れがあっても音質に変化がありません。アナログでは溝が汚れると汚れた音になります。さらに数値ならば加算することで記録に間違いがあっても発見・訂正が容易です。
よくデジタルを断続、アナログを連続と言いますが、それぞれ本当は、断続というより数値化、連続というより類似です。そう理解するとより正しく見えてくると思います。
デジタル記録では数値化が必要ですから、数値にするためにはもともと一続きのものを細切れに分割する(離散化する)必要があります。これをサンプリングといいます。分割(サンプリング)したデータを数値化します。これが量子化です。
このように、サンプリングと量子化の二点がデジタル記録の肝ですが、それぞれデジタルオーディオとデジタルカメラに例えると下記のようになります。
*サンプリング (どう分割するか)
オーディオ: サンプリングレート(例 44kHzとか96kHzなど) → 1秒間の音の変化を細かく区切る
カメラ: 画素数(例 1000万画素とか、4Kなどの言い方) → レンズが結像する像面を細かく区切る
*量子化 (分割したものを数値化)
オーディオ: ビット数(例 16bitや24bit) → 音の強度を記録
カメラ: ビット数(例 8bitや12bit) → 光の明度を記録
量子化後の数値は人の視覚・聴覚に関係するものなので、測定の基準は両方ともダイナミックレンジです(dB)。オーディオでは16bitで96dB、人の聴覚限界は約120dBといわれています。画像では8bitで50dB(不確か)、人の視覚限界は約80dB(不確か)だったと思います。(カメラにおいてはステップ数・段数の方が一般的です)
なお画像では8bitというとRGBの一色についてであり、フルカラー1670万色という場合はRGBの組み合わせです(8bit=256ですから、256^3=16777216)。センサー自体は色は分からず、モノクロの光の強さを感じるだけです。そのため発色にはカラーフィルタを組み合わせて近傍と計算処理後に色に変換してから記録する必要があります。一方でオーディオも時間方向のジッターなどがあるので、オーディオとカメラ画像はまったく同じということではありません、念のため。
しかし、理解のための考え方は置き換えできるということが本稿の趣旨です。
2. 音を画像で見る、アップサンプリング
タイトルで書いた音を画像で見るというのは、音の波形をオシロで解析するというのではなく、音の世界を画像の世界で例えて説明するということです。
下記のHQ PlayerのSignalystのページに面白い例として、アップサンプリングの説明があります。
http://www.signalyst.com/upsampling.html
このページの一番上の大きい画像が192kHz / 24bitを例えた画像です。すぐ下の小さい画像が44kHz / 16bitのCD品質です。これは192kHz / 24bitのマスターをダウンサンプルしたと考えても良いでしょう。
画像で見るとこのようにハイレゾは大きな画像として見ることができます。これによりデータ量が大きいということが視覚的に分かりやすいと思います。実際にはMQAの三角形の説明であったように、ほんとに数倍あるデータの全てが意味があるのかという問題もありますが、それはこうした基本を踏まえたうえで討議すべき問題でしょう。
ちなみにこれは画面解像度を同じにしているため画像サイズの大小として見えますが、同じサイズ(たとえば2Lサイズ)に印刷すると印刷解像度があがることで細かい画像になるということが分かります。
上の44/16と192/24は音源データの例えでしたが、この二枚以降はDA変換されたデータストリームの例えになっています。
44/16の下の二枚ではフィルタを適用しないと本来ないはずの縞模様が浮き出してくるのも分かると思います。これはオーディオでも言うところのアーチファクト(計算副作用)です。初めの一枚にフィルタを加えることで干渉縞を滑らかにすることができます。
次に大きな画像は44/16を4倍オーバーサンプリングした画像で、データサイズは192kHz / 24bitの音源データと同じことが分かると思います。ただし元の192kHz / 24bitのマスターに比べると計算的に拡大したため細部は粗くなっています。次の二枚ではフィルタリングをしたり、高品質アップサンプリングをすることで細部の粗さが改善されていくことが見て分かります。ただし元の192kHz / 24bitデータには画質は及ばないわけで、この辺りが良く「ハイレゾ相当」と呼ばれる品質ですね。
注意してほしいのは「192kHz相当」であってもデータのサイズはあくまで192kHzと同じであるということです。つまり中身の品質がどうあろうと、ナイキスト周波数は同じです。これはローパスフィルタなど回路設計に関係してくると思います。
3. 目で見るナイキスト周波数
もうひとつ画像で考えた場合に分かりやすいものの例はこの「ナイキスト周波数」だと思います。
ナイキストの定理というのは簡単に言うとデジタル記録における実際の解像力は最大解像力の半分であるということです。さきに書いたようにオーディオでの解像力は定義としてはサンプリングレートに相当します。
たとえばCDはサンプリングレートが44kHzですから、実際に有意に記録できるのは22kHzまでで、これをナイキスト周波数と言います。人の耳に聞こえるのは20kHzと言われていますから、人が聞こえる音をすべて記録するためには20kHz必要であり(実際の解像力)、そこから40kHzがサンプリングレートとして必要と言うことが導かれます(最大解像力)。実際には40kHzではなく44kHzになっているのは当時のなんだったかデジタル記録方式との互換性だったと思います。
22kHzから44kHzまでの領域は通常はノイズとしてSNを下げる原因となるのでローパスフィルタで除去されます。なぜノイズとなるのかはエイリアシングという問題があるからです。
ナイキスト周波数とはいいかえるとエイリアシングが発生しない一番高い周波数のことです。もう少し端的に言うと、意味のある信号が得られるもっとも高い周波数です。(ですからMQAの説明でもナイキスト周波数で切られています)
そのためナイキスト周波数の理解の肝はエイリアシングを理解するということだと思います。このエイリアシングは自転車のスポークの回転に例えられることもありますが、オーディオ的にはなかなかどういうものか直観的に理解がむずかしいところです。そこをカメラ画像に置き換えて説明してみます。
ナイキストの定理というのは、たとえばセンサーのピクセルとピクセルの間に髪の毛があるときに、その髪の毛の太さとセンサーのピクセルの大きさとの関係です。
下記の図において、四角はセンサーで、赤い丸は髪の毛です。

この髪の毛がセンサーのピクセルと同じ大きさの時(1と2)、センサーにうまく重なれば記録されます(1)。しかしピクセルとピクセルのあいだに挟まると(2)どちらのピクセルに映るのか映らないかが決定できません。この状態がエイリアシング(aliasing)です。これは言い換えると連続のものをぶつ切りにして記録することで生じる中途半端な状態のことです。Alias自体は別名と訳されますが、偽の(証明されていない)という語彙を含んでいるので、Aliasingは確定していない状態という感じの意味だと思います。
決定できない状態はこの髪の毛を少しずつ左右にずらしても同じです。この髪の毛がセンサーに必ず記録されるための条件は、髪の毛の大きさがセンサーの2倍であることです(3と4)。このとき、どの方向に動かしても髪の毛はかならずどこかのセンサーをカバーします。
つまり言い換えると、ある太さの髪の毛を確実に記録するために必要なセンサーのサイズは、髪の毛の太さの1/2です。つまりセンサーの数は倍必要になり、解像力は2倍必要ということが分かると思います。
オーディオであれば、44KHzのサンプリングレートで44kHzのデータは「確実に」サンプリングできません。不確か、つまりエイリアシングの状態(上図の1と2)でサンプリングされることになります。
つまり1/22000秒というサンプリングの間隔を確実に記録するためにはその半分の細かさの1/44000秒の間隔が必要であるということです。つまり22kHzの周波数の音を記録するためには44kHzの解像力が必要です。
ちなみに画像における「高い周波数」とはビルと家の隙間のようなごちゃごちゃしたところです。低い周波数は青空などです。高い周波数のところではノイズである偽色(アーチファクト)が出やすいので、ローパスフィルタ(カメラの場合は結晶板)を適用します。オーディオにおいては高い周波数とはご存じのように高い音です。
もちろんカメラはADであり、オーディオはDAであるなど違いはありますが、ナイキストの定理というものが連続的なものをぶつ切りにする(デジタル化)ことで生じる原理的なものだということは分かってもらえると思います。
4. シャープネスの単位を考える
最後に「シャープネス」について考えてみます。
はじめに書いたように音質レビューでは音がシャープだとよく書きますが、画像のほうのカメラの世界でもやはりレンズの「シャープさ」と良く言います。
しかし「シャープさ」の単位はなに?と問えば、それが測定できない感覚的な概念だとわかるでしょう。レンズの世界では一般的に使われる解像力はMTFと呼ばれる空間コントラスト密度を使用します。しかし低い周波数のときの10本線MTFと高い周波数のときの30本線MTFに違いがある場合、それぞれで人によって10本線MTFが高いレンズ(いわゆるドイツ型)がシャープであるとか、30本線MTFが高いレンズ(国産型)がシャープであるというのは昔から議論があります。MTF自体は測定できても、それをシャープ、尖鋭的と感じるのは人の感覚によるものだからです。
ここは意図的に解像力とコントラストをごっちゃにして語っているのですが、実のところシャープさというのはあいまいで感覚的なものです。
一方でMTFはフィルム時代から使われているものですが、時代がデジタルになってくるとDXOベンチマークのLens Blurなど、別な視点でのシャープさの定義というのも模索されています。そうした意味ではデジタル信号のシャープさという考え方も必要なのかもしれません。たとえばMQAのところでMeridianのボブ・スチュワートはtemporal Blur(時間方向のプレ・ボケ)という言葉を使っています。オーディオでもなにかそうした新しい基準が必要になってきているようにも思います。
実のところ、実用的なデジタル化が始まったのはカメラは90年代後半くらいですが、オーディオでは80年代のCDからはじまっているので、デジタル化という意味ではオーディオの方が古いのですが、カメラにおいては当初からユーザーがデジタル処理を意識していたのに対して、オーディオではユーザーがデジタル処理を意識するのはPCオーディオが言われてきたここ数年ですから、そうした点ではカメラの方が先駆的な点もあるでしょう。
オーディオもカメラも古くからの伝統のあるものですが、デジタル化によってそれぞれの世界をヒントにしたり智恵を相互に融通ができるようになったと考えれば相乗効果があるといえるのではないかと思います。
2015年03月12日
GoogleのNestがホームオーディオへ?
Nestはスマートホーム関連の会社で、ネットワーク化された人工知能ベースの室温調整や火災報知器など、いわゆるIoTのハブ的存在にもなりつつあります。
Googleに巨額で買収されたことでも話題となりましたが、もっとも注目すべきなのはCEOが元アップルで初代のiPodの父と呼ばれ、初代iPhoneまでの重鎮だったトニーファデルということです。
http://www.gizmodo.jp/sp/2014/07/nest_2.html
このNestが今度はオーディオ人材を募集しているということでニュースになっています。
http://www.audiostream.com/content/googles-nest-audio
今年のCESではIoTが注目されましたが、それもNestの影響が少なからずあったのかもしれません。
まだ製品にもなっていませんが、IoTと次世代のホームオーディオのあり方を示すものとして注目していきたいところです。
Googleに巨額で買収されたことでも話題となりましたが、もっとも注目すべきなのはCEOが元アップルで初代のiPodの父と呼ばれ、初代iPhoneまでの重鎮だったトニーファデルということです。
http://www.gizmodo.jp/sp/2014/07/nest_2.html
このNestが今度はオーディオ人材を募集しているということでニュースになっています。
http://www.audiostream.com/content/googles-nest-audio
今年のCESではIoTが注目されましたが、それもNestの影響が少なからずあったのかもしれません。
まだ製品にもなっていませんが、IoTと次世代のホームオーディオのあり方を示すものとして注目していきたいところです。
2015年03月06日
GloveAudio A1販売再開
GloveAudioの合体アンプThe Glove A1ですが、使用していたパーツの不具合があり製品回収と販売を停止していましたが、本日より販売を再開するということです。私のも帰ってきました。やはり2.5mmバランスが使える選択肢が増えるのは良いものです。

A1とAKR03
販売情報などリリース内容については下記のアユートさんのページをご覧ください。
http://www.aiuto-jp.co.jp/information/entry_244.php
なお前は限定数と案内がありましたが、今回から通常扱い品となり限定販売ではなくなったようです。
不具合はありましたがそれがなくなれば、2.5mmバランスを生かしたい人へのおすすめ機材ですので良いニュースではないかと思います。

A1とAKR03
販売情報などリリース内容については下記のアユートさんのページをご覧ください。
http://www.aiuto-jp.co.jp/information/entry_244.php
なお前は限定数と案内がありましたが、今回から通常扱い品となり限定販売ではなくなったようです。
不具合はありましたがそれがなくなれば、2.5mmバランスを生かしたい人へのおすすめ機材ですので良いニュースではないかと思います。
2015年03月02日
AudioQuestのヘッドフォン、NightHawkレビュー
2/14に開催されたポタ研の中でもひときわ注目を引いていたのが、D&Mホールディングスから発表されたAudioQuest社のヘッドフォンであるNightHawkです。
NightHawkはセミオープンタイプで基本的に家で使うフルサイズ・ヘッドフォンです。日本での価格はオープンプライスでだいたい7万円台後半、発売時期は3月下旬です。こちらにD&MのNightHawkサイトがあります。基本データは重さは346gで、インピーダンスは25Ω、能率は100dBSPL/mWです。
http://dm-importaudio.jp/audioquest/
* AudioQuestとNightHawk
まずはじめの疑問は、そもそもなぜケーブルで知られるAudioQuestがヘッドフォンを作ったのだろうか、という点ではないでしょうか。
実のところNightHawkがAudioQuestにとって初めての本格的なケーブル以外の製品というわけではありません。コンパクトなUSB DACであるDragonflyを発売した点でも注目されていました。このDragonflyは前にも書いたように米国PCオーディオ界の雄であるGordon Rankinによって設計されたものです。
AudioQuestは多様化するこのオーディオ業界の中で、顧客がほしいと思う製品を提供していきたいというポリシーがあるということで、このDragonflyの成功により、これに続いたのがNightHawkです。Dragonflyでも外部のエキスパートを登用したように、NightHawkではWestoneに在籍していたSkylar Grayによって設計されました。
![IMG_5868_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5868_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkのイメージ画像
このAudioQuestのポリシーは単に業界のトレンドに迎合していくという意味ではありません。実のところAudioQuestのCEOであるBill LowはAudioQuestブランドでヘッドフォンを出すという考えをずっと持っていたそうですが、安易なものは出したくなかったので製品化はしていなかったということです。
一方でSkylar氏の方も10年近くヘッドフォンに関するアイディアを暖めていたということです。そして2012年にBill LowがたまたまSkylar氏と食事を一緒に取ったさいに4時間もヘッドフォンの理想について話し込んだ結果、数ヵ月後にSkylay氏がWestoneを辞めてAudioQuestに入社して、それからのち2年間をNightHawk開発にかけたということです。
ポタ研では残念ながらSkylar氏は生産現場の最終指揮でこれなかったのですが、今回はメールでもSkylar氏に直接いろいろ伺ったり、Skylar氏の解説ビデオを参考にしながらこの記事を書きました。
* NightHawkの特徴 - ドライバー設計
Skylar氏の考えていたヘッドフォンのあるべき姿を具現化したものとして、またAudioQuest社の初のヘッドフォンとしてNightHawkはユニークな観点からの設計がなされているのがポイントです。これはヘッドフォンメーカーではない同社が過去に縛られないゆえの利点とも言えます。
![NightHawk_Left[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Left5B15D-thumbnail2.jpg)
その特徴はまずNightHawkが、スピーカーから着想を得た設計がなされているという点です。ヘッドフォンはそもそもスピーカーの小さいものではないかと思うかもしれませんが、その実は随所に相違があります。
その例は一番重要なドライバー設計にも見られます。NightHawkのドライバーはまったく一から考えられたもので他の流用ではありません。
![NightHawk_Driver-Cross-Section[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Driver-Cross-Section5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkのドライバーユニット
NightHawkにおいては振動版の外周部にラバーのサラウンドと呼ばれる部分がありますが、これはスピーカーで言うエッジです。対して一般的なヘッドフォンでは振動版がエッジなしで一体化されていることが多いということ。このエッジがあることで正しく振動版を保持することができます。
またボイスコイルにはボイスコイルフォーマーという芯にコイルが巻きつけられています。ボイスコイルフォーマーというのはスピーカーで言うボビン(コイルの糸巻き上の芯材)のことです。普通のヘッドフォンではコイルの線材自体を接合してそのまま振動版に接着しているものも多いということですが、NightHawkではコイルが補強材であるボビンに巻きつけられてから振動版に接着されています。これでボイスコイルを強固に正しい形に保つ働きがあり、正確なドライバーのピストンモーション(前後振動)のコントロールができるということです。
また、このピストンモーションの良好な制御はマグネットでも独自の工夫が生かされています。ここにはスプリットギャップ・マグネットという途中に切り込み(ギャップ)のあるマグネットが使われています。マグネットの磁力は1.2テスラの強力なものです。

ギャップを挟んで二つの磁界があることで、あたかも二つのマグネットがあるかのように広くカバーできることになり、コイルが大きくピストンモーションで振動しても磁力のコントロールができるようになるわけです。この磁力線図は最近のソフトウェアの進化で解析が可能になったということです。
これは低音域での歪みを下げるとともに、重要なのはインターモジュレーション歪み(混変調歪み)を低減させるということです。混変調歪みとは二つの信号が混じった時にもとの信号にない信号ができることで、音質を劣化させます。これらの歪みが低ければタイトでクリーンな低音域のレスポンスが得られるということです。

振動版の材質は音の着色に大きな影響があります。一般的なヘッドフォンはマイラーというポリエチレン素材を使用していますが、NightHawkではバイオセルロースを使用しています。バイオセルロースがマイラーより優れているのは良好な内部損失特性で、つまり固有の色を持ちにくいということです。
これは上の図を見てもらうと分かるのですが、縦軸はstiffness(硬度)で高い方がピストンモーションでたわまず正確に動きます。横軸はself damping(内部損失)で、高い方がレゾナンスでの着色がないわけです。つまりこの図の右上に位置する素材が両方の要所を兼ね備えているわけです。
バイオセルロースはその位置にあるということがわかると思います。これは100種類のヘッドフォンを分析して得たことだそうです。

左:混変調歪み(intermodulation Distortion) 右:THD
振動版の素材の効果とともに、前述した歪みの低減効果については測定的に設計者自身が驚くほど良い値が出たということで、上の図に他の機種との比較表が出ています。
右のTHDで他のヘッドフォンで5-7KHzにピークがあるのはマイラーを使用したダイアフラム設計によるものということで、赤線で示されるNigtHawkではピークが出ていないことが分かると思います。
* NightHawkの特徴 - ハウジング設計
NightHawkでの独自性と最新技術の採用はハウジングにも活かされています。
イヤカップはリキッドウッドというパルプから作られた素材を採用しています。リキッドウッドは名の通りに木でありながら流体であり、自由な形に成形できるのが特徴です。硬くて木材の良さとしてダンピング特性に優れています(振動板でのバイオセルロースのようにやはり理想的な素材に成功したということ)。これも最新の素材であり、5年前には存在していなかったものだそうです。
リキッドウッドのおかげで木の素材を生かしながら人間工学的な外耳に合わせた形を作ることが可能となり、裏側の補強リブなど複雑な構造も可能となっています。また音響特性に優れているだけではなく環境配慮もあります。
![NightHawk_Laid-Down-Right[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Laid-Down-Right5B15D-thumbnail2.jpg)
イヤーカップ内はドライバーのところでも書いたようにスピーカーの考え方が生かされ、補強材や吸音構造などスピーカーのキャビネット内に似ています。このようにNightHawkはヘッドフォンというより、むしろスピーカーのミニチュアのような設計がなされているわけです。

これらの利点は振動解析によって明らかになっています。上の図で左の一般的なイヤカップではカップデザインがよくないので、一か所に振動が集中する結果として振動が高いところと低いところができてしまいます。図の赤い部分が振動の大きい部分で青が振動の少ない部分です。
NightHawkではさきに書いたイヤーカップ(エンクロージャー)内の補強材やスピーカーのようなポリウールのダンピング材により振動を最適化させ、その結果として均一に振動のないイヤカップとなっています(全面が振動が少ない青となっている)。
![IMG_5840_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5840_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
リキッドウッドの他に特筆すべき点は、セミオープン構造のためにイヤカップの背面に設けられたエアダクトのグリルです。これはダイアモンド・キュービック・ラティス・グリル(ダイアモンド・立体形状・格子グリル、略してDCLグリル)という複雑な形状をしています。
このDCLグリルは上の図のように実は昆虫の蝶の翅の細部の形状から着想したディフューザー(かくはん機)です。蝶の羽のメタリックでキラキラしているところは拡大すると上の図のような構造をしていて効率的に空気をかくはんできるのです。これで振動版の背圧に適度な空気抵抗を与えることができます。
その効果をSkylar氏に聴いてみましたが、これは定在波が出て着色の要因となるのをさけるとともに、DCLグリルが音響抵抗となり特定周波数の調整などチューニングの自由度が増すということです。ここはイヤフォンにおいて音響抵抗で音を調整するのに似ているのかもしれませんが、Skylar氏のWestoneでの知見が生きているのかもしれません。
この多孔質で複雑な形式は従来のモールドや機械加工の製造方法では製作が不可能であり、近年出た3Dプリンターの採用によりようやく作ることができるようになったものだということです。

またハウジング内では、バスケットと呼ばれる空気抜きのベント穴の保持部分にも工夫がされています。一般的なヘッドフォンでは上の図の左のようにこのベント穴は不均等に配置されています。
これはコストを低減するために多くのヘッドフォンはボイスコイルのサーキットボード設計の端子配置で仕方なくこうなるそうです。しかし不均等だとエアがバスケットを傾けてしまい歪みがでてしまいます。NightHawkではコストより音質を取りたかったので、その端子をベントホールに影響ない位置に移したということです。結果として均等なベント穴が実現できています。またエアフローも最適にスムーズに流れてよどみないように計算がなされています。
* NightHawkの特徴 - 装着性
NightHawkは快適性にも最大限に注意を払って設計されています。
ここでもNightHawkの独自性が発揮されているのが分かります。NightHawkのデザインの特色として側面からみるとクロスバー(側面から見ると×になっている部分)のような部分でヘッドバンドとイヤカップはバーで支持されて結合されています。これがサスペンションです。

このサスペンションシステムはプロ用マイクのショックアブソーバーから着想を得た独自の構造で特許出願中です。よくプロ用マイクが複雑なかごに入っているように見えますが、あれですね。
この効果は音質的なものと、快適性の両方に効果的です。音質的にはサスペンションでイヤカップの振動を分離できるので、位相的な干渉の問題に効果的だそうです。もっとも効果的なのは快適性についてで、強い側圧で締め付けないでも、弱くて快適な側圧でもぴったりと頭に合わせて固定できます。これによって側圧を弱めに設定することができたので、頭に負担がかかりにくくなっています。このサスペンションは105個もの試作を経て完成したそうで、均一に負荷がかかるように設計された自動調整式のヘッドバンドと合わせて、実物よりも軽いような感覚を与えています。

イヤパッドはプロテイン・レザー(人工皮革)であり、イヤカップ同様に外耳の形状に合わせています。これはなんと卵の殻から作られている天然素材だそうで、そのため人肌にも優しく作られているそうです(日本の会社との協業によるものだそう)。イヤパッドは簡単に取り外しができてメンテナンスにも優れています。
またNightHawkではパッドの後部を厚くすることでダイアフラムを外耳にあたるような角度にすることに成功しています。これにより空間表現に優れた音再現ができるわけです。上の右図で青がイヤパッドで、赤がドライバーです。
* NightHawkの特徴 - ケーブルそのほか
もちろんケーブルはAudioQuestですから下手なリケーブル用の交換ケーブルよりも優れたケーブルが採用されています。
![IMG_5873_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5873_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkのケーブルはスピーカー用のキャッスルロックという高級線材をベースにしているということで、ヘッドフォンだけではなくケーブルもスピーカーオーディオ用のもののミニチュアとして考えているわけですね。基本はミニ端子ですが付属の標準変換プラグは特注の独自設計で、一般的なブラスではなく音響的な配慮もしています。
このようにNightHawkはさまざまな新技術を採用し、独自のアイディアで設計されています。
そのため開発では35のデザインモデル、50を超えるドライバー試作、100を超えるサスペンションの試作、100を超えるイヤカップの試作、10,000を超えるプロトタイプのパーツ作成(ヘッドバンドやグリルなどなど)という試行錯誤を行い、多数のプロトタイピングと施策を重ねた結果NighHawkが生まれたということです。
* 試用と音質
これはプロトタイプでの試聴です。外観や音はほぼ完成版ですが多少の変更があるかもしれません。
![IMG_5846_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5846_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
リキッドウッドの質感はなかなか高く仕上げも丁寧です。サスペンション支持のイヤカップの形状もユニークです。また自動調整式のヘッドバンドは金属ノッチのようなアジャスターが見えないので高級感があります。
NightHawkのユニークさはまず装着してみて分かります。いままでにない柔らかく軽い装着感で、気持ち良く装着できます。いままでに使った中でも独特で心地よい装着感です。弱めの側圧も良い感じですね。ケーブルはちょっと硬めです。
![IMG_5924_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5924_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkとDENON DA300
まずUSB DAC内蔵のヘッドフォンアンプとしてDENON DA300と接続してみました。
全体的には音楽的に滑らかさと抑揚のあるDENONのUSB DACと、音楽的なNightHawkとの相性がなかなか良い感じです。DA300はゲインがないのがネックですが、NightHawkは能率が高いので十分な音量が取れます。
音の第一印象としてはセミオープンということもあり、密閉型のような密度感と抜けの良さを両立して、疲れにくい聴きやすさも兼ね備えているように思います。実際に側面のDCLグリル穴を手で塞ぐと詰まって開放感に欠ける音になります。
![IMG_5856_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5856_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
LINNの24bitクリスマスアルバムを聴いてみましたが、ヴォーカルがリアルで立体的、音は左右に広いよりも立体感・奥行きがある感じですね。細かさの抽出もHD800あたりとそう変わらない気がします。性格が違うかもしれないとは思いつつ、HD800と比べてみたのですが、たとえばHD800のピアノの音は乾いて平板的だけれど、NightHawkは艶っぽくて音に陰影のような立体感を感じます。SHANTIのヴォーカルでも同じ感じで、HD800は音場は広いけど乾いて平板的、NightHawkは艶っぽくて立体的です。NightHawkでは音の広がりとか定位というよりも、一つ一つの音が彫りが深く立体的に陰影があるように感じられます。
![NightHawk_Ear-Grille[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Ear-Grille5B15D-thumbnail2.jpg)
中低域にかけての厚みが豊かで、高音域は落ち着いてきつさはない感じです。中低域が豊かと言っても低域が膨らんで突出した音ではなく、十分な量感を確保しながらスムーズにベースが出てくる感じですね。着色はないと思いますが、いわゆるやや暖かみがあってしっかりとしていながら立体感があるように聞こえます。
中音域から中低域にかけては抜群の再現力で音楽を聴くのが楽しくなるような音の鳴り方です。高音域はきれいに楽器の音やベルの鳴りを再現するがきついという感じはないですね。NightHawkでは意図的に調整しているように思いますが、好みの問題で高音域はHD800が良いという人もいると思います。
NightHawkの低域の量感は多めですが適度にタイトで、膨らんでぶよっとしているわけではありません。コントラバスソロなどでは低域の解像力も高く、ベースではピチカートの切れもよいと思います。すごく硬くタイトというわけではなく聴きやすさもあります。
次にDA300をDACとして使い、専用のヘッドフォンアンプSoloist SLを使うとさらに音質は上がってダイナミックさが堪能できます。解像力も高くかなり細かい音を拾っているのがわかります。Soloistの分析的な感じも緩和されるのでなかなか良い組み合わせかもしれません。NightHawkの音支配を感じますので、個性が生きているのでしょう。
![IMG_5927_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5927_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkとDENON DA10
ケーブル自体はミニプラグなのでポータブルでもよく鳴らせます。背面ポートから音漏れはあるので電車ではお勧めしませんが、お散歩とか家でもポータブル機器を使っている人には良いかもしれません。
DENON DA10と合わせてみましたが、これもDA300同様になかなか良い組み合わせです。厚み・暖かみがあってダイナミックなDENONの音キャラによく合う感じで、意図的ではないかもしれませんがD&Mで扱うには良いラインナップですね。マランツのHD-DAC1と組み合わせるとどうなんでしょうか。
DA10のiPhoneデジタル接続だとかなり細かい音を拾っているのもわかります。楽器音のきれいさ、鮮明さもかなり高いものがあります。なんか家でもこれでよいかなと思える優れたレベルの再生です。能率がわりと高めなのもよいですね。
もちろんAK240などでもよい音を鳴らしてくれます。2.5mmバランスケーブルもあるとよいかもしれませんが、クローズのNightOwlに期待です。
![IMG_5910_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5910_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
左:AQ特製 中:フルテック 右:一般品
最後にNightHawkの隠れたポイントのケーブル端子変換プラグを変えて少し聴いてみました。
NightHawk付属のAudioQuest特製と一般品だとAudioQuestの方がブランデンブルグ協奏曲のような室内楽でより高域がきれいにのびて全体に上質に感じられます。またパーカッションでも音のエッジが上質に思えますね。それとAudioQuest特製のほうがよりしっかりとはまって接続ができます。
フルテックの高音質変換プラグF63とAudioQuest特製だとフルテックが透明感にやや優れますが多少ドライ感が出ます。AudioQuest特製のほうがより暖かみがある感じですね。ここは好みもあるのでNightHawk買った人はフルテックプラグも買ってみると音を少し変えられて面白いと思います。
* まとめ
音はなかなかよく作りこんであると思います。HD800のように分析的ではなく、オーディオ機器の高い音質を生かしながら音楽的に聴くのにお勧めのヘッドフォンです。快適性と高い音質を両立させているのも長い時間楽しく音楽を聴くのに良いですね。
価格的にも音質を考えると高すぎずに抑えていると思います。
![NightHawk_Laid-Down-Left[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Laid-Down-Left5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkは3Dプリンタ、リキッドウッド素材、最新の解析ソフトウエアなど最新技術を採用した今でなければできなかったヘッドフォンです。それにSkylar氏の暖めていた、スピーカー技術を適用して簡略化ではない、真にHiFiスピーカーのミニチュアを作るというアプローチがなされたものです。
ここで説明によく出てきたピストンモーションという言葉もあまりヘッドフォンの世界では使わないと思いますが、主にスピーカーで振幅の大きなウーファーなどで使う言葉で海外文献を読んでいるとよく出てきます。Skylar氏はサブウーファーを作るkickerという会社にもいたのですがその低音域再現のノウハウも十分に生かされているのでしょう。
そう考えるとNightHawkがスピーカーオーディオの世界にいるAudioQuestから出てきたのはそう不思議なことではないように思えます。
今回NightHawkを見て教えられたことはヘッドフォンの進化です。いままでもヘッドフォンは小さなスピーカーであると例えられてきました。しかし、実のところではスピーカーとは異なるところが多々あることに気がつかされます。それはおそらくエッジを省力したり、ボビンを省力したりとヘッドフォンでここまでは不要だろうという考えと、ヘッドフォンは単なるアクセサリーだから安くせねば、という考えがあったと思います。ヘッドフォンケーブルがグランドが共通でいいやと考えられてきたのとも通じるかもしれません。
しかしいまでは時代は変わりそうした考えは変えるべきなのでしょう。いままでのヘッドフォンメーカーではどうしても伝統にしばられてしまうこともあったかもしれません。しかしそれができたのは新規参入のAudioQuestだからであり、そのうえで妥協ないものを作るという同社ポリシーによりエッジとかサスペンションのような細かなこだわりがあったからです。Skylar氏はこのような時代の変化をヘッドフォンによって伝えたいと語っていました。
それがこのNightHawkです。
![IMG_5835_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5835_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
ヘッドフォンオーディオ流行りといいますが、HD800やEdition8などの高性能ヘッドフォンの熱狂は後退して、実態は高性能イヤフォンに傾倒していたというのがここ数年のヘッドフォンオーディオ市場の実情であったと言えます。
いままでにないアプローチで設計されたこのNightHawkが新しいヘッドフォン時代の担い手になれるかが今年の注目点の一つであると言えるでしょう。

NightHawkはセミオープンタイプで基本的に家で使うフルサイズ・ヘッドフォンです。日本での価格はオープンプライスでだいたい7万円台後半、発売時期は3月下旬です。こちらにD&MのNightHawkサイトがあります。基本データは重さは346gで、インピーダンスは25Ω、能率は100dBSPL/mWです。
http://dm-importaudio.jp/audioquest/
* AudioQuestとNightHawk
まずはじめの疑問は、そもそもなぜケーブルで知られるAudioQuestがヘッドフォンを作ったのだろうか、という点ではないでしょうか。
実のところNightHawkがAudioQuestにとって初めての本格的なケーブル以外の製品というわけではありません。コンパクトなUSB DACであるDragonflyを発売した点でも注目されていました。このDragonflyは前にも書いたように米国PCオーディオ界の雄であるGordon Rankinによって設計されたものです。
AudioQuestは多様化するこのオーディオ業界の中で、顧客がほしいと思う製品を提供していきたいというポリシーがあるということで、このDragonflyの成功により、これに続いたのがNightHawkです。Dragonflyでも外部のエキスパートを登用したように、NightHawkではWestoneに在籍していたSkylar Grayによって設計されました。
![IMG_5868_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5868_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkのイメージ画像
このAudioQuestのポリシーは単に業界のトレンドに迎合していくという意味ではありません。実のところAudioQuestのCEOであるBill LowはAudioQuestブランドでヘッドフォンを出すという考えをずっと持っていたそうですが、安易なものは出したくなかったので製品化はしていなかったということです。
一方でSkylar氏の方も10年近くヘッドフォンに関するアイディアを暖めていたということです。そして2012年にBill LowがたまたまSkylar氏と食事を一緒に取ったさいに4時間もヘッドフォンの理想について話し込んだ結果、数ヵ月後にSkylay氏がWestoneを辞めてAudioQuestに入社して、それからのち2年間をNightHawk開発にかけたということです。
ポタ研では残念ながらSkylar氏は生産現場の最終指揮でこれなかったのですが、今回はメールでもSkylar氏に直接いろいろ伺ったり、Skylar氏の解説ビデオを参考にしながらこの記事を書きました。
* NightHawkの特徴 - ドライバー設計
Skylar氏の考えていたヘッドフォンのあるべき姿を具現化したものとして、またAudioQuest社の初のヘッドフォンとしてNightHawkはユニークな観点からの設計がなされているのがポイントです。これはヘッドフォンメーカーではない同社が過去に縛られないゆえの利点とも言えます。
![NightHawk_One-Cup[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_One-Cup5B15D-thumbnail2.jpg)
![NightHawk_Left[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Left5B15D-thumbnail2.jpg)
その特徴はまずNightHawkが、スピーカーから着想を得た設計がなされているという点です。ヘッドフォンはそもそもスピーカーの小さいものではないかと思うかもしれませんが、その実は随所に相違があります。
その例は一番重要なドライバー設計にも見られます。NightHawkのドライバーはまったく一から考えられたもので他の流用ではありません。
![NightHawk_Driver[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Driver5B15D-thumbnail2.jpg)
![NightHawk_Driver-Cross-Section[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Driver-Cross-Section5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkのドライバーユニット
NightHawkにおいては振動版の外周部にラバーのサラウンドと呼ばれる部分がありますが、これはスピーカーで言うエッジです。対して一般的なヘッドフォンでは振動版がエッジなしで一体化されていることが多いということ。このエッジがあることで正しく振動版を保持することができます。
またボイスコイルにはボイスコイルフォーマーという芯にコイルが巻きつけられています。ボイスコイルフォーマーというのはスピーカーで言うボビン(コイルの糸巻き上の芯材)のことです。普通のヘッドフォンではコイルの線材自体を接合してそのまま振動版に接着しているものも多いということですが、NightHawkではコイルが補強材であるボビンに巻きつけられてから振動版に接着されています。これでボイスコイルを強固に正しい形に保つ働きがあり、正確なドライバーのピストンモーション(前後振動)のコントロールができるということです。
また、このピストンモーションの良好な制御はマグネットでも独自の工夫が生かされています。ここにはスプリットギャップ・マグネットという途中に切り込み(ギャップ)のあるマグネットが使われています。マグネットの磁力は1.2テスラの強力なものです。

ギャップを挟んで二つの磁界があることで、あたかも二つのマグネットがあるかのように広くカバーできることになり、コイルが大きくピストンモーションで振動しても磁力のコントロールができるようになるわけです。この磁力線図は最近のソフトウェアの進化で解析が可能になったということです。
これは低音域での歪みを下げるとともに、重要なのはインターモジュレーション歪み(混変調歪み)を低減させるということです。混変調歪みとは二つの信号が混じった時にもとの信号にない信号ができることで、音質を劣化させます。これらの歪みが低ければタイトでクリーンな低音域のレスポンスが得られるということです。

振動版の材質は音の着色に大きな影響があります。一般的なヘッドフォンはマイラーというポリエチレン素材を使用していますが、NightHawkではバイオセルロースを使用しています。バイオセルロースがマイラーより優れているのは良好な内部損失特性で、つまり固有の色を持ちにくいということです。
これは上の図を見てもらうと分かるのですが、縦軸はstiffness(硬度)で高い方がピストンモーションでたわまず正確に動きます。横軸はself damping(内部損失)で、高い方がレゾナンスでの着色がないわけです。つまりこの図の右上に位置する素材が両方の要所を兼ね備えているわけです。
バイオセルロースはその位置にあるということがわかると思います。これは100種類のヘッドフォンを分析して得たことだそうです。


左:混変調歪み(intermodulation Distortion) 右:THD
振動版の素材の効果とともに、前述した歪みの低減効果については測定的に設計者自身が驚くほど良い値が出たということで、上の図に他の機種との比較表が出ています。
右のTHDで他のヘッドフォンで5-7KHzにピークがあるのはマイラーを使用したダイアフラム設計によるものということで、赤線で示されるNigtHawkではピークが出ていないことが分かると思います。
* NightHawkの特徴 - ハウジング設計
NightHawkでの独自性と最新技術の採用はハウジングにも活かされています。
イヤカップはリキッドウッドというパルプから作られた素材を採用しています。リキッドウッドは名の通りに木でありながら流体であり、自由な形に成形できるのが特徴です。硬くて木材の良さとしてダンピング特性に優れています(振動板でのバイオセルロースのようにやはり理想的な素材に成功したということ)。これも最新の素材であり、5年前には存在していなかったものだそうです。
リキッドウッドのおかげで木の素材を生かしながら人間工学的な外耳に合わせた形を作ることが可能となり、裏側の補強リブなど複雑な構造も可能となっています。また音響特性に優れているだけではなく環境配慮もあります。

![NightHawk_Laid-Down-Right[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Laid-Down-Right5B15D-thumbnail2.jpg)
イヤーカップ内はドライバーのところでも書いたようにスピーカーの考え方が生かされ、補強材や吸音構造などスピーカーのキャビネット内に似ています。このようにNightHawkはヘッドフォンというより、むしろスピーカーのミニチュアのような設計がなされているわけです。

これらの利点は振動解析によって明らかになっています。上の図で左の一般的なイヤカップではカップデザインがよくないので、一か所に振動が集中する結果として振動が高いところと低いところができてしまいます。図の赤い部分が振動の大きい部分で青が振動の少ない部分です。
NightHawkではさきに書いたイヤーカップ(エンクロージャー)内の補強材やスピーカーのようなポリウールのダンピング材により振動を最適化させ、その結果として均一に振動のないイヤカップとなっています(全面が振動が少ない青となっている)。

![IMG_5840_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5840_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
リキッドウッドの他に特筆すべき点は、セミオープン構造のためにイヤカップの背面に設けられたエアダクトのグリルです。これはダイアモンド・キュービック・ラティス・グリル(ダイアモンド・立体形状・格子グリル、略してDCLグリル)という複雑な形状をしています。
このDCLグリルは上の図のように実は昆虫の蝶の翅の細部の形状から着想したディフューザー(かくはん機)です。蝶の羽のメタリックでキラキラしているところは拡大すると上の図のような構造をしていて効率的に空気をかくはんできるのです。これで振動版の背圧に適度な空気抵抗を与えることができます。
その効果をSkylar氏に聴いてみましたが、これは定在波が出て着色の要因となるのをさけるとともに、DCLグリルが音響抵抗となり特定周波数の調整などチューニングの自由度が増すということです。ここはイヤフォンにおいて音響抵抗で音を調整するのに似ているのかもしれませんが、Skylar氏のWestoneでの知見が生きているのかもしれません。
この多孔質で複雑な形式は従来のモールドや機械加工の製造方法では製作が不可能であり、近年出た3Dプリンターの採用によりようやく作ることができるようになったものだということです。

またハウジング内では、バスケットと呼ばれる空気抜きのベント穴の保持部分にも工夫がされています。一般的なヘッドフォンでは上の図の左のようにこのベント穴は不均等に配置されています。
これはコストを低減するために多くのヘッドフォンはボイスコイルのサーキットボード設計の端子配置で仕方なくこうなるそうです。しかし不均等だとエアがバスケットを傾けてしまい歪みがでてしまいます。NightHawkではコストより音質を取りたかったので、その端子をベントホールに影響ない位置に移したということです。結果として均等なベント穴が実現できています。またエアフローも最適にスムーズに流れてよどみないように計算がなされています。
* NightHawkの特徴 - 装着性
NightHawkは快適性にも最大限に注意を払って設計されています。
ここでもNightHawkの独自性が発揮されているのが分かります。NightHawkのデザインの特色として側面からみるとクロスバー(側面から見ると×になっている部分)のような部分でヘッドバンドとイヤカップはバーで支持されて結合されています。これがサスペンションです。
![IMG_5840_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5840_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)

このサスペンションシステムはプロ用マイクのショックアブソーバーから着想を得た独自の構造で特許出願中です。よくプロ用マイクが複雑なかごに入っているように見えますが、あれですね。
この効果は音質的なものと、快適性の両方に効果的です。音質的にはサスペンションでイヤカップの振動を分離できるので、位相的な干渉の問題に効果的だそうです。もっとも効果的なのは快適性についてで、強い側圧で締め付けないでも、弱くて快適な側圧でもぴったりと頭に合わせて固定できます。これによって側圧を弱めに設定することができたので、頭に負担がかかりにくくなっています。このサスペンションは105個もの試作を経て完成したそうで、均一に負荷がかかるように設計された自動調整式のヘッドバンドと合わせて、実物よりも軽いような感覚を与えています。
![IMG_5852_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_5852_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)

イヤパッドはプロテイン・レザー(人工皮革)であり、イヤカップ同様に外耳の形状に合わせています。これはなんと卵の殻から作られている天然素材だそうで、そのため人肌にも優しく作られているそうです(日本の会社との協業によるものだそう)。イヤパッドは簡単に取り外しができてメンテナンスにも優れています。
またNightHawkではパッドの後部を厚くすることでダイアフラムを外耳にあたるような角度にすることに成功しています。これにより空間表現に優れた音再現ができるわけです。上の右図で青がイヤパッドで、赤がドライバーです。
* NightHawkの特徴 - ケーブルそのほか
もちろんケーブルはAudioQuestですから下手なリケーブル用の交換ケーブルよりも優れたケーブルが採用されています。
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NightHawkのケーブルはスピーカー用のキャッスルロックという高級線材をベースにしているということで、ヘッドフォンだけではなくケーブルもスピーカーオーディオ用のもののミニチュアとして考えているわけですね。基本はミニ端子ですが付属の標準変換プラグは特注の独自設計で、一般的なブラスではなく音響的な配慮もしています。
このようにNightHawkはさまざまな新技術を採用し、独自のアイディアで設計されています。
そのため開発では35のデザインモデル、50を超えるドライバー試作、100を超えるサスペンションの試作、100を超えるイヤカップの試作、10,000を超えるプロトタイプのパーツ作成(ヘッドバンドやグリルなどなど)という試行錯誤を行い、多数のプロトタイピングと施策を重ねた結果NighHawkが生まれたということです。
* 試用と音質
これはプロトタイプでの試聴です。外観や音はほぼ完成版ですが多少の変更があるかもしれません。
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リキッドウッドの質感はなかなか高く仕上げも丁寧です。サスペンション支持のイヤカップの形状もユニークです。また自動調整式のヘッドバンドは金属ノッチのようなアジャスターが見えないので高級感があります。
NightHawkのユニークさはまず装着してみて分かります。いままでにない柔らかく軽い装着感で、気持ち良く装着できます。いままでに使った中でも独特で心地よい装着感です。弱めの側圧も良い感じですね。ケーブルはちょっと硬めです。
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NightHawkとDENON DA300
まずUSB DAC内蔵のヘッドフォンアンプとしてDENON DA300と接続してみました。
全体的には音楽的に滑らかさと抑揚のあるDENONのUSB DACと、音楽的なNightHawkとの相性がなかなか良い感じです。DA300はゲインがないのがネックですが、NightHawkは能率が高いので十分な音量が取れます。
音の第一印象としてはセミオープンということもあり、密閉型のような密度感と抜けの良さを両立して、疲れにくい聴きやすさも兼ね備えているように思います。実際に側面のDCLグリル穴を手で塞ぐと詰まって開放感に欠ける音になります。
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LINNの24bitクリスマスアルバムを聴いてみましたが、ヴォーカルがリアルで立体的、音は左右に広いよりも立体感・奥行きがある感じですね。細かさの抽出もHD800あたりとそう変わらない気がします。性格が違うかもしれないとは思いつつ、HD800と比べてみたのですが、たとえばHD800のピアノの音は乾いて平板的だけれど、NightHawkは艶っぽくて音に陰影のような立体感を感じます。SHANTIのヴォーカルでも同じ感じで、HD800は音場は広いけど乾いて平板的、NightHawkは艶っぽくて立体的です。NightHawkでは音の広がりとか定位というよりも、一つ一つの音が彫りが深く立体的に陰影があるように感じられます。
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中低域にかけての厚みが豊かで、高音域は落ち着いてきつさはない感じです。中低域が豊かと言っても低域が膨らんで突出した音ではなく、十分な量感を確保しながらスムーズにベースが出てくる感じですね。着色はないと思いますが、いわゆるやや暖かみがあってしっかりとしていながら立体感があるように聞こえます。
中音域から中低域にかけては抜群の再現力で音楽を聴くのが楽しくなるような音の鳴り方です。高音域はきれいに楽器の音やベルの鳴りを再現するがきついという感じはないですね。NightHawkでは意図的に調整しているように思いますが、好みの問題で高音域はHD800が良いという人もいると思います。
NightHawkの低域の量感は多めですが適度にタイトで、膨らんでぶよっとしているわけではありません。コントラバスソロなどでは低域の解像力も高く、ベースではピチカートの切れもよいと思います。すごく硬くタイトというわけではなく聴きやすさもあります。
次にDA300をDACとして使い、専用のヘッドフォンアンプSoloist SLを使うとさらに音質は上がってダイナミックさが堪能できます。解像力も高くかなり細かい音を拾っているのがわかります。Soloistの分析的な感じも緩和されるのでなかなか良い組み合わせかもしれません。NightHawkの音支配を感じますので、個性が生きているのでしょう。
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NightHawkとDENON DA10
ケーブル自体はミニプラグなのでポータブルでもよく鳴らせます。背面ポートから音漏れはあるので電車ではお勧めしませんが、お散歩とか家でもポータブル機器を使っている人には良いかもしれません。
DENON DA10と合わせてみましたが、これもDA300同様になかなか良い組み合わせです。厚み・暖かみがあってダイナミックなDENONの音キャラによく合う感じで、意図的ではないかもしれませんがD&Mで扱うには良いラインナップですね。マランツのHD-DAC1と組み合わせるとどうなんでしょうか。
DA10のiPhoneデジタル接続だとかなり細かい音を拾っているのもわかります。楽器音のきれいさ、鮮明さもかなり高いものがあります。なんか家でもこれでよいかなと思える優れたレベルの再生です。能率がわりと高めなのもよいですね。
もちろんAK240などでもよい音を鳴らしてくれます。2.5mmバランスケーブルもあるとよいかもしれませんが、クローズのNightOwlに期待です。
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左:AQ特製 中:フルテック 右:一般品
最後にNightHawkの隠れたポイントのケーブル端子変換プラグを変えて少し聴いてみました。
NightHawk付属のAudioQuest特製と一般品だとAudioQuestの方がブランデンブルグ協奏曲のような室内楽でより高域がきれいにのびて全体に上質に感じられます。またパーカッションでも音のエッジが上質に思えますね。それとAudioQuest特製のほうがよりしっかりとはまって接続ができます。
フルテックの高音質変換プラグF63とAudioQuest特製だとフルテックが透明感にやや優れますが多少ドライ感が出ます。AudioQuest特製のほうがより暖かみがある感じですね。ここは好みもあるのでNightHawk買った人はフルテックプラグも買ってみると音を少し変えられて面白いと思います。
* まとめ
音はなかなかよく作りこんであると思います。HD800のように分析的ではなく、オーディオ機器の高い音質を生かしながら音楽的に聴くのにお勧めのヘッドフォンです。快適性と高い音質を両立させているのも長い時間楽しく音楽を聴くのに良いですね。
価格的にも音質を考えると高すぎずに抑えていると思います。
![NightHawk_Front[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Front5B15D-thumbnail2.jpg)
![NightHawk_Laid-Down-Left[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/NightHawk_Laid-Down-Left5B15D-thumbnail2.jpg)
NightHawkは3Dプリンタ、リキッドウッド素材、最新の解析ソフトウエアなど最新技術を採用した今でなければできなかったヘッドフォンです。それにSkylar氏の暖めていた、スピーカー技術を適用して簡略化ではない、真にHiFiスピーカーのミニチュアを作るというアプローチがなされたものです。
ここで説明によく出てきたピストンモーションという言葉もあまりヘッドフォンの世界では使わないと思いますが、主にスピーカーで振幅の大きなウーファーなどで使う言葉で海外文献を読んでいるとよく出てきます。Skylar氏はサブウーファーを作るkickerという会社にもいたのですがその低音域再現のノウハウも十分に生かされているのでしょう。
そう考えるとNightHawkがスピーカーオーディオの世界にいるAudioQuestから出てきたのはそう不思議なことではないように思えます。
今回NightHawkを見て教えられたことはヘッドフォンの進化です。いままでもヘッドフォンは小さなスピーカーであると例えられてきました。しかし、実のところではスピーカーとは異なるところが多々あることに気がつかされます。それはおそらくエッジを省力したり、ボビンを省力したりとヘッドフォンでここまでは不要だろうという考えと、ヘッドフォンは単なるアクセサリーだから安くせねば、という考えがあったと思います。ヘッドフォンケーブルがグランドが共通でいいやと考えられてきたのとも通じるかもしれません。
しかしいまでは時代は変わりそうした考えは変えるべきなのでしょう。いままでのヘッドフォンメーカーではどうしても伝統にしばられてしまうこともあったかもしれません。しかしそれができたのは新規参入のAudioQuestだからであり、そのうえで妥協ないものを作るという同社ポリシーによりエッジとかサスペンションのような細かなこだわりがあったからです。Skylar氏はこのような時代の変化をヘッドフォンによって伝えたいと語っていました。
それがこのNightHawkです。
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ヘッドフォンオーディオ流行りといいますが、HD800やEdition8などの高性能ヘッドフォンの熱狂は後退して、実態は高性能イヤフォンに傾倒していたというのがここ数年のヘッドフォンオーディオ市場の実情であったと言えます。
いままでにないアプローチで設計されたこのNightHawkが新しいヘッドフォン時代の担い手になれるかが今年の注目点の一つであると言えるでしょう。