WestoneのUM56はユニバーサルIEMのイヤチップとして使用する耳型から作るカスタム・イヤーチップです。国内ではテックウインド経由で提供されます。
イヤーチップ部分のみをカスタムオーダーすることで、付属のイヤチップよりも高い装着感を得られます。素材はシリコン(またはビニール)を使用しています。水洗いが可能です。
カスタムなので、作成には各ユーザーの耳型(インプレッション)の採取が必要です。
またWestone社製のイヤフォンだけでなく、オーダー時に指定することで他社製のイヤフォン用に作ることもできます。ステム径が同じであればもちろんイヤフォン間で流用ができます。
作成可能なイヤフォンの対応表は下記の通りです。
http://www.tekwind.co.jp/faq/WST/entry_284.php
カラーバリエーションが豊富で、好きな色を選択可能です。追加料金なしで左右別々に選ぶこともできるので右は赤系など選んでもわかりやすいでしょう。下記のテックウインドのページをご覧ください。
http://www.tekwind.co.jp/products/WST/entry_11190.php
価格は23,000円(シリコンモデル、税込、耳型別)です。
注文はカスタムIEMに準じますが、すでにWestoneに耳型がある人は送付の要はありません(ただしあまり古くないもの)。注文はフジヤエービックとかeイヤのような専門店に問い合わせてください。
カスタムの注文と耳型の取得については下記のES60の記事を参照ください。個人的には東京ヒアリングケアセンターがお勧めです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/406543132.html
まず耳型を採取して、オーダーフォームに色と材質の指定をします。また使うイヤフォンの種類(機種名とメーカー名)も明記してください。
私はW60の音をさらに良くしたかったので、Wシリーズの径で注文し、色はSmokeを選びました。すでにES60でWestoneに耳型があるので耳型を送る必要はありませんでした。
だいたい4週間くらいで届きました。
カスタムの一種なので、簡単な紙の箱に入ってきます。中にはポーチなどが入っています。
UM56のシリコンチップはなかなかきれいな出来で、私は半透明のSmokeを選びましたが透明度もわりと良いと思います。
装着もスムーズにできます。私はバイトブロックの採取法の耳型ですが、かなりぴったりはまりカスタムっぽい装着感です。
ただしカスタムとは違ってイヤピースと本体が別なので、カスタムでやるようにシェルを持ってひねって入れるという感じではなくて、あらかじめイヤチップ部分を耳穴にあてておいて、全体をフィットするように調整するという感じです。
耳道に入れるのでカスタム初めての人はやや違和感を感じるかもしれません。
* 試聴
W60はPONOと良く合わせているので、PONOでレビューします。
まずW60に標準ケーブルでPONOで聴いてみます。
初めの予想は、カスタムチップによって遮音性が高まることで低域の逃げがなくなり、低域の量感がぼんっと増えでボンボンのベースヘビーのバランスになるのではないかということでした。
実際に聴いてみるとたしかに低域も増えていますが、それよりも中高域の鮮明さが上がって、音場が開けた感じになることに驚きました。低音域だけでなく、全体的に音が向上する感覚ですね。
低域は腰がどっしりと座るように安定しますが、ただ低域が漏れずにしっかり出るだけではなく、荒い表現だった中高域もよりスムーズに再現されるように思える。高音域のきつさもやや低減されます。
全体に一ランク上がったように思えますね。また余分な着色はないので、そのまま音質向上された感じです。
次にMoon AudioのBlackDragonバランスケーブルでPONOバランスで聴いてみます。このW60 + BlackDragon+PONOバランスが、鮮明でいながらちょっとメロウで暖かくなかなか音楽的で気に入っているので、この音をそのまま良くしたいと思っていたのがW60を選んだ理由でもあります。
普通のチップからUM56に変えて聴いてみると、細かい音がよりハッキリクッキリと聞こえる感じがします。ベースは芯がしっかりとして、重みのあるベースラインとなります。低域はずぅっと深くなり、パーカッションの打撃感も良くなります。加えて音の一つ一つがより鮮明で、中音域は楽器やヴォーカルの音のこもった感じが取れてあいまいさが少なくなり明瞭に聞こえるように感じられます。やはり全体に整って聞こえますね。
高音域は刺さるようなとげとげしさはやや減退し少し和らぐように感じられます。
全体にすっきりと少しクリアに晴れあがり、音場もぱっと開けるように思えます。広がるというより開けるような感じです。イヤファンをクラス上にした感じはありますね。
例えば低音だけあげたいならフォームチップも良いですが、UM56では明瞭感が損なわれずにより鮮明になり、バランスの崩れもないように思います。ケーブル交換と違って固有の音がつかないので、元のイヤフォンの音調というか個性は変わりません。
帯域バランスは多少変わりますが、特にベースヘビーになるなどの極端な変化はなく、いままでの音が全体に良くなったと感じると思います。
遮音性が良くなったことで良いベースを下支えにしたピラミッドバランスになるためか、あるいはふさがれた耳穴内でのピーク特性も変わっているのではないかと思います。
またステム径が同じShureやUltrasone IQなどにも使えます。
音はやはり音が明るくぱっと広がる。こもっていたのが明瞭感がますという同じ効果が得られると思います。
上の写真はSE215SpeとUltrasone IQです。SE215だと本体に対してやや高価なチップとなってしまいますが、SE846なんかはなかなかよさそうな気がします(ないので試せませんが)。Shureはカスタムがないし、なんていうShureファンも試してみると良いかもしれませんね。
* まとめ
私みたいなカスタムジャンキーからすると、こうした製品はややバカにしてた面もあったけど、良い意味で驚いたというか新たな発見がありました。これは思った以上に効果的だと思います。特にカスタムとユニバーサルでも音が違いますので、気に入ったユニバーサルの音をそのまま上げたいというときに効果的です。
どういう人に向いているかというと、すでにカスタム持ってる人は耳型取らなくて良いので、たとえば私だったら、ES60持っていても、W60の音の個性が好きなのでPONOはあえてW60と合わせてるという場合に良いですね。
そのまま音を良くしたいというと、もうリケーブルはやってるし、あとはチップを変えるくらいですからね。リシェルしたりするとちょっとおおごとになります。またUM56だと中古価値も損なわれません。W60を仮に売ってしまっても、Shureにも使えます。
やはりW60とES60でも違う音なので、W60が気に入っていてこれをもう一段よくしたい、リケーブルなんかとっくにやった、という人にもオススメです。
また標準ケーブルで気に入ってる人はケーブルのように固有のクセがないのでリケーブルよりもまずこちらを試したほうが外れなく良いかもしれません。カスタムをやりたいけど価格的に、という方もまずこれで耳に合わせてみてもよいでしょう。普通のチップでは耳に合わないという人にも良いですね。
Westoneに聞くと、W60は単なるES60のユニバーサル版ではないと言いますが、UM56をつけるとそれが良くわかります。ES60もカスタム版のW60ではありません。
ES60もW60+UM56も個性が違っていてそれぞれの良さがあるという感じなので、W60買ってからステップアップと思ってES60を買ったという人は、Westoneに保存してある耳型を活用してW60の良さを再発見できると思います。
Music TO GO!
2015年02月22日
2015年02月14日
ポタ研レポート2015春
昨年は大雪で大変なことになったポタ研ですが、今回はうららかに晴れて春を思わせる中での開催となりました。
今回の目玉の一つは昨年から話題となっていてCESデビューしたAudioQuestのヘッドフォン、Nighthawkです。この発表会が開催されました。
なぜケーブル専業に思えるAudioQuestがヘッドフォンをと言うかもしれませんが、逆説的ながらNighthawkの特徴は一言でいうとAudioQuestらしいヘッドフォンということです。
どういうことかというと、まず第一はAudioQuestはヘッドフォンを作ったことがないので伝統がなく、一から作れたということです。つまりこれが他のヘッドフォンの延長上ではなく、スクラッチビルドされた設計だということです。そのためにこれまでにないユニークな特徴を持ってます。これはヘッドフォンメーカーではないAudioQuestゆえの良いところでしょう。
具体的にはまずラウドスピーカー(ヘッドフォンに対しての普通のスピーカー)で用いられる技術を随所に採用してます。例えばハウジングの裏側はまるでスピーカーのキャビネットのように吸音材や補強材が施されています。バイオセルロースの振動板の周辺にはサラウンドと呼ばれるスピーカーでいうエッジがあります。これらは従来のヘッドフォンにはなかったもので、Nighthawkはラウドスピーカーのミニチュアのようなものです。
ヘッドフォンはよくスピーカーを例に取られますが実は両者は別々の進化をしてきたということも再認識させてくれます。
またNighthawkでは装着性にもこだわっています。ヘッドバンドはよく見られるノッチやバーで上げ下げするのではなく独自のサスペンションでフィットするように作り、リキッドウッドという木だけど液状に加工できるハウジングで音響的に有利でかつたくさん人に合うように理想の形を作っています。
卵の殻から作ったという人工皮革のイヤパッドはよく馴染むとともに経年劣化のさいの交換も容易です。
ケーブルはAudioQuestの得意とするところで、高純度の線材を採用するとともに4芯でバランスにも対応可能です。
また細部のこだわりは付属のミニと標準プラグの変換プラグにも及び、一般的なニッケルメッキされたブラス素材とはことなりシルバーコートされた銅を使用しています。
Nighthawkはセミオープンで、ダイアモンド形状グリルのディフューザーで背圧のエアフローを整えるのは蝶の一種から着想を得たということで、これは3Dプリンタでないと作れないような構造だそうです。
こうした新しいアイディアを投入して、Nighthawkを設計したのはSkylar Greyという人で、HeadFiメンバーでもありHeadFiでNighthawkの書き込みをしてます。彼はもとはWestoneでカスタムIEMやイヤフォン開発に携わってきた人で、2年の歳月をかけてNighthawkを開発しました。サブウーファーを作ってたこともあるようで、もともとラウドスピーカーの素養を持ってたようです。
Nighthawkは少し聞いただけですが、明瞭感とクローズっぽい密度感が両立されている感じですね。インパクトが強く、 三次元的な立体感も感じられます。
それと装着感はかなり独特なものがあり、なかなか良い感じです。
なぜAudioQuesutがDragonflyやNighthawkのようなケーブル以外の製品も作るのか、と聞いたところ、このオーディオの世界は急激に変化してるので、顧客がほしいと思っているものを我々も作っていきたいのだと言っていました。
次はNightowlというクローズタイプを作るということですので楽しみにしたいところです。
もう一つAK500N試聴会もありました。大入り満員で立ち見も出てましたね。
スピーカーはELAC、プリメインアンプにマークレビンソンの新型とハイエンドのシステムを使用しています。
一曲目でヴォーカルが浮き上がるように鮮明に耳に飛び込んできます。パーカッションのデモ曲での立体感と打楽器の色彩感再現も見事ですね。AK500Nはなかなか真面目に作られていると思います。
そして、こちら。「究極のポータブルシステム」です。
アユートさんのブースは14Fにもあり、こちらではレイラとアンジー試聴の長い列ができていました。またこの前書いたSONY ZX1用のGloveAudio S1も人気だったようです。S1はアユートさんではすべてシルバーカラーの国内タイプを販売します。
こちらはAk240SS(ステンレス)です。筐体の金属素材が異なるとグランドの特性が異なるので音質も異なるということです。国内価格はまだ未定ということです。
またこちらはアユートさんで新規導入のMaster&Dynamicのヘッドフォンとイヤフォンです。ヘッドフォンはなかなか精密に作りになってモノ的な魅力があります。ヘッドフォンもイヤフォンもiPhoneで聴くとなかなか良い音でした。
Oppo JapanではヘッドフォンアンプのHA2と、平面型クローズタイプのPM3でポータブルに向けたシステムを展開していました。HA2は昨年のポタフェスより改良をして音をよりイヤフォン向けになったということです。また大きな改良点として、前はiPhoneと接続する際にはmicroBの口にカメラコネクションキットを使って接続していましたが、この新しいタイプではUSB Aの口がついて、USB-ライトニングケーブルで簡単に接続が可能になりました。Android対応もあるそうです。
これらはOppo Japanが積極的に日本市場に合わせたリクエストをし、Oppo側も日本の市場が重要だということを踏まえて改良をしてくれているということです。
PM3はケーブルが4本線なのでバランス化も期待できそうです。3/20に発売予定で、HA2は39000円くらい、PM3は55000円くらいと価格が安いのも魅力的です。
FitEarブースでは彩、fitearとともにショコラという謎のイヤフォンが展示されていました。ショコラについてはまだしばらく謎ということだそうですので。。
また今回初見参の「須山ジャンク堂」ではこの前記事を書いたShanling M3が展示されていましたが、もう少し販売まで時間がかかりそうです。アンプのH1はすでに販売されています。これらはSNSでのコミュニケーションをしながら育てていくというスタンスを取っていくそうです。
Mixwaveでは1964ADELの展示がありました。ADEL技術については下記記事を参照してください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/408595702.html
これは固定ベントのタイプで、ベントの効果の有り無しを試すことはできませんでしたが、聞いてみるとたしかに詰まったものが取れてすっきりしたという感じはあります。ADELベントによって低域が漏れるということはないようで、他の人が試しているときにも音が漏れてくるということはないようでした。
Jaben JapanではGloveAudio S1のブラックが展示されていました。これは国際版です。またER4SのSpiralStrandケーブルも出ていました。
またCalyx Mのオプションバッテリー(上右)も展示されていました。これは裏蓋を外して内部の電池を取り換えて使うタイプでこれで11時間の動作ができるということです。
A2PさんではSITを採用したTR07hpの完成版(下)が展示されていました。これには電流駆動タイプと電圧駆動タイプがあります。電流駆動タイプはシングルドライバー(クロスオーバーなし)のダイナミックヘッドフォンに向いていて、電圧駆動はクロスオーバーのあるマルチウエイBAなどに向いています。
マス工房ではmodel 404という巨大なポータブルアンプが出ていましたが、これはAbyss用のポータブルだそうです。海外需要があるということ。なかなかパワフルな音でしたね。
iFIでは日本企画でiBalance(下)というヘッドフォン(Sonyタイプバランス)をiDSDのRCAアウトからバランスで聴くためのものが展示されていました。意外と良い音でした。
またiAtteneterというイヤフォンのために抵抗入れてアッテネートするためです。
またPAW VEというPAW Goldの元モデル(上右)も展示されていました。PAW Goldは販売も好調で制作元が驚くほどだそうです。すでにけっこう出てますが返品率はほぼゼロだそうで、さすがナグラ品質。こうしたことはそのうち中国製品のイメージを覆してくれるでしょう。
テックウインドではWestoneのUM56(下)を展示していました。これはユニバーサルのチップとして使用するカスタムイヤチップです。耳型を送って注文し、シリコンのカスタムチップを作ってくれます。かなり豊富なカラー選択もできます。23000円ということ。カスタムではES60が売れてるそうで、これも製造元が驚くほどだそう。
WagnusではPONO用のDiamond dust type Aenigmaというブルガリア線材を作ったケーブルが興味をひきました(下)。K10で聴いてみました。私はいつもはBlackDragonで柔目なPONOの音を再生させてるけど、これだとPONOのより性能が高い面を引き出せるようです。ドライでなく、PONOの良いところも持ってますね。例のフラッグシップは速攻売り切れだそう。
前にうちのブログでARM1の記事を書きましたが、その後継であるAcoustic Research M2(ARM2)も展示されていました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/373836210.html
パッと見るとARM1とARM2は違うんですが、よく見るとARM1とデザインが似てて、ボリュームダイヤルとか底面のプラグも似てます。背面デザインも似て、大きくなってAndroidになった感じです。
音はARM1に比べてよりワイドレンジで音も洗練されて整った感じ。HiFi的で性能は良くなった感じとは言えますが、ARM1のちょっとした個性だったダイレクト感というか鮮度感の高さは薄れています。
今回もなかなか濃くて面白いイベントでした。いままではイヤフォン優位でしたが、Nighthawk、PM3、そしてAKT5pと高性能ヘッドフォンが再び注目を浴びてきたのも面白いですね。
今度はいよいよヘッドフォン祭ですので、またまた楽しみです。
今回の目玉の一つは昨年から話題となっていてCESデビューしたAudioQuestのヘッドフォン、Nighthawkです。この発表会が開催されました。
なぜケーブル専業に思えるAudioQuestがヘッドフォンをと言うかもしれませんが、逆説的ながらNighthawkの特徴は一言でいうとAudioQuestらしいヘッドフォンということです。
どういうことかというと、まず第一はAudioQuestはヘッドフォンを作ったことがないので伝統がなく、一から作れたということです。つまりこれが他のヘッドフォンの延長上ではなく、スクラッチビルドされた設計だということです。そのためにこれまでにないユニークな特徴を持ってます。これはヘッドフォンメーカーではないAudioQuestゆえの良いところでしょう。
具体的にはまずラウドスピーカー(ヘッドフォンに対しての普通のスピーカー)で用いられる技術を随所に採用してます。例えばハウジングの裏側はまるでスピーカーのキャビネットのように吸音材や補強材が施されています。バイオセルロースの振動板の周辺にはサラウンドと呼ばれるスピーカーでいうエッジがあります。これらは従来のヘッドフォンにはなかったもので、Nighthawkはラウドスピーカーのミニチュアのようなものです。
ヘッドフォンはよくスピーカーを例に取られますが実は両者は別々の進化をしてきたということも再認識させてくれます。
またNighthawkでは装着性にもこだわっています。ヘッドバンドはよく見られるノッチやバーで上げ下げするのではなく独自のサスペンションでフィットするように作り、リキッドウッドという木だけど液状に加工できるハウジングで音響的に有利でかつたくさん人に合うように理想の形を作っています。
卵の殻から作ったという人工皮革のイヤパッドはよく馴染むとともに経年劣化のさいの交換も容易です。
ケーブルはAudioQuestの得意とするところで、高純度の線材を採用するとともに4芯でバランスにも対応可能です。
また細部のこだわりは付属のミニと標準プラグの変換プラグにも及び、一般的なニッケルメッキされたブラス素材とはことなりシルバーコートされた銅を使用しています。
Nighthawkはセミオープンで、ダイアモンド形状グリルのディフューザーで背圧のエアフローを整えるのは蝶の一種から着想を得たということで、これは3Dプリンタでないと作れないような構造だそうです。
こうした新しいアイディアを投入して、Nighthawkを設計したのはSkylar Greyという人で、HeadFiメンバーでもありHeadFiでNighthawkの書き込みをしてます。彼はもとはWestoneでカスタムIEMやイヤフォン開発に携わってきた人で、2年の歳月をかけてNighthawkを開発しました。サブウーファーを作ってたこともあるようで、もともとラウドスピーカーの素養を持ってたようです。
Nighthawkは少し聞いただけですが、明瞭感とクローズっぽい密度感が両立されている感じですね。インパクトが強く、 三次元的な立体感も感じられます。
それと装着感はかなり独特なものがあり、なかなか良い感じです。
なぜAudioQuesutがDragonflyやNighthawkのようなケーブル以外の製品も作るのか、と聞いたところ、このオーディオの世界は急激に変化してるので、顧客がほしいと思っているものを我々も作っていきたいのだと言っていました。
次はNightowlというクローズタイプを作るということですので楽しみにしたいところです。
もう一つAK500N試聴会もありました。大入り満員で立ち見も出てましたね。
スピーカーはELAC、プリメインアンプにマークレビンソンの新型とハイエンドのシステムを使用しています。
一曲目でヴォーカルが浮き上がるように鮮明に耳に飛び込んできます。パーカッションのデモ曲での立体感と打楽器の色彩感再現も見事ですね。AK500Nはなかなか真面目に作られていると思います。
そして、こちら。「究極のポータブルシステム」です。
アユートさんのブースは14Fにもあり、こちらではレイラとアンジー試聴の長い列ができていました。またこの前書いたSONY ZX1用のGloveAudio S1も人気だったようです。S1はアユートさんではすべてシルバーカラーの国内タイプを販売します。
こちらはAk240SS(ステンレス)です。筐体の金属素材が異なるとグランドの特性が異なるので音質も異なるということです。国内価格はまだ未定ということです。
またこちらはアユートさんで新規導入のMaster&Dynamicのヘッドフォンとイヤフォンです。ヘッドフォンはなかなか精密に作りになってモノ的な魅力があります。ヘッドフォンもイヤフォンもiPhoneで聴くとなかなか良い音でした。
Oppo JapanではヘッドフォンアンプのHA2と、平面型クローズタイプのPM3でポータブルに向けたシステムを展開していました。HA2は昨年のポタフェスより改良をして音をよりイヤフォン向けになったということです。また大きな改良点として、前はiPhoneと接続する際にはmicroBの口にカメラコネクションキットを使って接続していましたが、この新しいタイプではUSB Aの口がついて、USB-ライトニングケーブルで簡単に接続が可能になりました。Android対応もあるそうです。
これらはOppo Japanが積極的に日本市場に合わせたリクエストをし、Oppo側も日本の市場が重要だということを踏まえて改良をしてくれているということです。
PM3はケーブルが4本線なのでバランス化も期待できそうです。3/20に発売予定で、HA2は39000円くらい、PM3は55000円くらいと価格が安いのも魅力的です。
FitEarブースでは彩、fitearとともにショコラという謎のイヤフォンが展示されていました。ショコラについてはまだしばらく謎ということだそうですので。。
また今回初見参の「須山ジャンク堂」ではこの前記事を書いたShanling M3が展示されていましたが、もう少し販売まで時間がかかりそうです。アンプのH1はすでに販売されています。これらはSNSでのコミュニケーションをしながら育てていくというスタンスを取っていくそうです。
Mixwaveでは1964ADELの展示がありました。ADEL技術については下記記事を参照してください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/408595702.html
これは固定ベントのタイプで、ベントの効果の有り無しを試すことはできませんでしたが、聞いてみるとたしかに詰まったものが取れてすっきりしたという感じはあります。ADELベントによって低域が漏れるということはないようで、他の人が試しているときにも音が漏れてくるということはないようでした。
Jaben JapanではGloveAudio S1のブラックが展示されていました。これは国際版です。またER4SのSpiralStrandケーブルも出ていました。
またCalyx Mのオプションバッテリー(上右)も展示されていました。これは裏蓋を外して内部の電池を取り換えて使うタイプでこれで11時間の動作ができるということです。
A2PさんではSITを採用したTR07hpの完成版(下)が展示されていました。これには電流駆動タイプと電圧駆動タイプがあります。電流駆動タイプはシングルドライバー(クロスオーバーなし)のダイナミックヘッドフォンに向いていて、電圧駆動はクロスオーバーのあるマルチウエイBAなどに向いています。
マス工房ではmodel 404という巨大なポータブルアンプが出ていましたが、これはAbyss用のポータブルだそうです。海外需要があるということ。なかなかパワフルな音でしたね。
iFIでは日本企画でiBalance(下)というヘッドフォン(Sonyタイプバランス)をiDSDのRCAアウトからバランスで聴くためのものが展示されていました。意外と良い音でした。
またiAtteneterというイヤフォンのために抵抗入れてアッテネートするためです。
またPAW VEというPAW Goldの元モデル(上右)も展示されていました。PAW Goldは販売も好調で制作元が驚くほどだそうです。すでにけっこう出てますが返品率はほぼゼロだそうで、さすがナグラ品質。こうしたことはそのうち中国製品のイメージを覆してくれるでしょう。
テックウインドではWestoneのUM56(下)を展示していました。これはユニバーサルのチップとして使用するカスタムイヤチップです。耳型を送って注文し、シリコンのカスタムチップを作ってくれます。かなり豊富なカラー選択もできます。23000円ということ。カスタムではES60が売れてるそうで、これも製造元が驚くほどだそう。
WagnusではPONO用のDiamond dust type Aenigmaというブルガリア線材を作ったケーブルが興味をひきました(下)。K10で聴いてみました。私はいつもはBlackDragonで柔目なPONOの音を再生させてるけど、これだとPONOのより性能が高い面を引き出せるようです。ドライでなく、PONOの良いところも持ってますね。例のフラッグシップは速攻売り切れだそう。
前にうちのブログでARM1の記事を書きましたが、その後継であるAcoustic Research M2(ARM2)も展示されていました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/373836210.html
パッと見るとARM1とARM2は違うんですが、よく見るとARM1とデザインが似てて、ボリュームダイヤルとか底面のプラグも似てます。背面デザインも似て、大きくなってAndroidになった感じです。
音はARM1に比べてよりワイドレンジで音も洗練されて整った感じ。HiFi的で性能は良くなった感じとは言えますが、ARM1のちょっとした個性だったダイレクト感というか鮮度感の高さは薄れています。
今回もなかなか濃くて面白いイベントでした。いままではイヤフォン優位でしたが、Nighthawk、PM3、そしてAKT5pと高性能ヘッドフォンが再び注目を浴びてきたのも面白いですね。
今度はいよいよヘッドフォン祭ですので、またまた楽しみです。
2015年02月12日
Shanling(シャンリン) M3レビュー
Shanling(シャンリン)は中国の大手オーディオメーカーで、1989年に創業してCDプレーヤーやDAC、真空管アンプなどスピーカーオーディオからPCオーディオまで多様なラインナップがあります。以前は真空管アンプなどが日本でも販売されていたと思います。
M3はシャンリンのハイレゾプレーヤーで192/24対応です。
メモリーは内蔵が8GB、MicroSDスロットがひとつ装備されています。最近のFWアップデートでexFATが読めるようになり、最大で128GBまで認識できます。
ファームウエアのアップデートが多いのですが、レビューは音と機能は一番使ったFW1.08、UIは大きく刷新された最新のFW1.15ベータを使用しています。またハード的に昨年の古いユニットといまの新しいユニットがあって、新しいユニットではイヤフォンプラグや音質が改善されているようです。下画像は主に新しいユニットです。
電池の持ちは公称で9時間程度だと思います。重さは220gです。色はブラックとシルバーがあります。
* M3の回路設計
まず私がM3に興味をもった点は、オペアンプ構成がAD8610+BUF634ということです。つまりこれはあのサミュエルズさんのSR71と同じ構成だからです。聞いてみるとやはりSR71同様にデュアルモノを意識して設計しているということです。この辺は音に効いていると思います。
DACチップはシーラスのCS4398で、CS8422によって192kHzアップサンプリングが可能です(中の設定で行います)。最近のファームでは24bit拡張も同時に行っています。またこのCS8422によってジッター制御も行っています(おそらくASRC)。
またM3のタオバオの広告を見ていて興味を引いたのはこれが台湾の有名な博士によって設計されたとうたっていることです。広告に載せるくらい向こうでは有名なのかと、これもShanlingの人に聞いてみたところ、その人はDr Choiという人で台湾のオーディオ世界では名の知られた設計者であるということです。この人は回路設計と音質解析のエキスパートで、38°やESTiなどのブランドを立ち上げたことでも知られているということです。
設計者を広告に使うというのもちょっと興味深いことです。
* M3の操作系と機能
M3のはじめの特徴はユニークな操作系です。M3はAndroidではなく独自ファームウエアを採用しています。そのためタッチパネルではなくキーでの操作になりますが、その操作は右上のコントロールホイールを使用します。これはボリュームと十字キーを合わせたような機能を持ち、回転させるとボリュームの上下、ジョイスティックのように倒すと十字キーのような機能を持ちます。
これは使ってみるとなかなか便利です。よく曲を変えると録音レベルが違ったり、静かな曲とかうるさい曲で音のボリュームをすぐ変えたくなることがありますが、この仕組みだとそれが簡単に可能です。
このほかにある操作系は電源ボタンだけで、これは操作ロックも兼ねています。
シャンリンの人に聞いてみると、普通のハイレゾプレーヤーはボタンが多くてデザインに制約を与えてしまい発想の余地がない、そこで彼らはジョイスティックひとつとボタン一つというシンプルな形にしたかったということです。これによって片手だけでの操作が可能だということ。
このスティック自体はジッポライターから発案したという話で、今後もこのミニマル志向で設計していきたいということです。
画面は2.4インチ液晶でタッチではありません。前はメニュー階層が分かりにくかったし、デザインがいまひとつだったのですが、最新ファームではUIが大きく変わって メニュー階層も分かりやすく、デザインも洗練された感じです。
もうひとつのM3の特徴は入出力が豊富だということです。光出力もついています。入力はアナログインと光イン、出力もアナログアウトと光アウトがついています。ラインアウトがついててるDAPはいろいろありますが、アナログインがついているのはあまりないように思いますね。通常の音楽はDAPに入れておけばよいですが、たとえばiPhoneで動画をみてたりゲームをやってるときに、より迫力ある音で楽しみたいというときにも使えます。
ハイレゾDAPというより、TEACのようにハイレゾDAP+ポータブルアンプととらえることもできるような汎用性も期待できそうです。
* M3の音質
M3はファームウエアで音がよく変わるので、よく覚えてるFW1.08でのレビューです。
イヤフォンはFitEar fitearが良い感じでお勧めです。キレの良さと細かさを堪能できます。私は001ケーブルをつけてチップを変えて使用しています。JVCのFX1100やJH Audioアンジーなんかもお勧めです。ワイドレンジ感や空間表現など、これらの高性能イヤフォンの性能を十分に生かしている感じですね。
M3でまず印象的なのはバランスでなくてなにがわるい、と言いたくなるような広大な音の広がりの良さです。これはバージョン問わずM3の基本的な長所だと思います。おそらくデュアルモノの設計が効いているのでしょうね。
ワイドレンジで高低の帯域バランスはクセがないので、組み合わせたイヤフォンの性格が素直に出ると思います。音色もニュートラルでクセがない方だと思います。
素直な素材感のある一方で、モニター的というよりはコンシューマーライクでメリハリがあって迫力があってパワフルです。耳に近い感じで迫力もありますね。音の良さがわかりやすく、MP3でも音が良いのでエントリーユーザーにも向いてると思います。
楽器音は明瞭感が高くクリアですが、加えて滑らかさがあって、そこが価格以上に上質に感じさせるところでもあります。情報量とか音の正確さはこの価格帯ではかなり良い方だと思います。
それとM3で良いと思うのはいわゆるモニターライクではなく、聴いていて音楽的にきれいな音と感じられる点ですね。
周波数特性は低域が張り出してないでバランスよくフラットに聞こえるけれど、低いほうまでよく出て量感が確保されているのでベースが強いように聞こえると思います。またワイドレンジ感があり、高域も透明によく上に伸びる感じですね。この辺はFWバージョンでも少し異なるかもしれません。
Fitear fitearの空間再現の良さ、雰囲気感、クリアな細かさがよく発揮できます。この組み合わせでは躍動感とかインパクトも良いですね。
fitearだとキレの良さとかスピード感があって、ノリの良いジャズではフットステップ踏みたくなるくらいです。
* まとめ
総じてコストパフォーマンスが良く、価格以上の内容が楽しめると思います。またジョイスティック方式の操作はなかなか良くできていますが、多少慣れは必要かもしれません。
ホタ研では上の新UIでデモするということなので、当日は須山さんブースにどうぞ。
M3はシャンリンのハイレゾプレーヤーで192/24対応です。
メモリーは内蔵が8GB、MicroSDスロットがひとつ装備されています。最近のFWアップデートでexFATが読めるようになり、最大で128GBまで認識できます。
ファームウエアのアップデートが多いのですが、レビューは音と機能は一番使ったFW1.08、UIは大きく刷新された最新のFW1.15ベータを使用しています。またハード的に昨年の古いユニットといまの新しいユニットがあって、新しいユニットではイヤフォンプラグや音質が改善されているようです。下画像は主に新しいユニットです。
電池の持ちは公称で9時間程度だと思います。重さは220gです。色はブラックとシルバーがあります。
* M3の回路設計
まず私がM3に興味をもった点は、オペアンプ構成がAD8610+BUF634ということです。つまりこれはあのサミュエルズさんのSR71と同じ構成だからです。聞いてみるとやはりSR71同様にデュアルモノを意識して設計しているということです。この辺は音に効いていると思います。
DACチップはシーラスのCS4398で、CS8422によって192kHzアップサンプリングが可能です(中の設定で行います)。最近のファームでは24bit拡張も同時に行っています。またこのCS8422によってジッター制御も行っています(おそらくASRC)。
またM3のタオバオの広告を見ていて興味を引いたのはこれが台湾の有名な博士によって設計されたとうたっていることです。広告に載せるくらい向こうでは有名なのかと、これもShanlingの人に聞いてみたところ、その人はDr Choiという人で台湾のオーディオ世界では名の知られた設計者であるということです。この人は回路設計と音質解析のエキスパートで、38°やESTiなどのブランドを立ち上げたことでも知られているということです。
設計者を広告に使うというのもちょっと興味深いことです。
* M3の操作系と機能
M3のはじめの特徴はユニークな操作系です。M3はAndroidではなく独自ファームウエアを採用しています。そのためタッチパネルではなくキーでの操作になりますが、その操作は右上のコントロールホイールを使用します。これはボリュームと十字キーを合わせたような機能を持ち、回転させるとボリュームの上下、ジョイスティックのように倒すと十字キーのような機能を持ちます。
これは使ってみるとなかなか便利です。よく曲を変えると録音レベルが違ったり、静かな曲とかうるさい曲で音のボリュームをすぐ変えたくなることがありますが、この仕組みだとそれが簡単に可能です。
このほかにある操作系は電源ボタンだけで、これは操作ロックも兼ねています。
シャンリンの人に聞いてみると、普通のハイレゾプレーヤーはボタンが多くてデザインに制約を与えてしまい発想の余地がない、そこで彼らはジョイスティックひとつとボタン一つというシンプルな形にしたかったということです。これによって片手だけでの操作が可能だということ。
このスティック自体はジッポライターから発案したという話で、今後もこのミニマル志向で設計していきたいということです。
画面は2.4インチ液晶でタッチではありません。前はメニュー階層が分かりにくかったし、デザインがいまひとつだったのですが、最新ファームではUIが大きく変わって メニュー階層も分かりやすく、デザインも洗練された感じです。
もうひとつのM3の特徴は入出力が豊富だということです。光出力もついています。入力はアナログインと光イン、出力もアナログアウトと光アウトがついています。ラインアウトがついててるDAPはいろいろありますが、アナログインがついているのはあまりないように思いますね。通常の音楽はDAPに入れておけばよいですが、たとえばiPhoneで動画をみてたりゲームをやってるときに、より迫力ある音で楽しみたいというときにも使えます。
ハイレゾDAPというより、TEACのようにハイレゾDAP+ポータブルアンプととらえることもできるような汎用性も期待できそうです。
* M3の音質
M3はファームウエアで音がよく変わるので、よく覚えてるFW1.08でのレビューです。
イヤフォンはFitEar fitearが良い感じでお勧めです。キレの良さと細かさを堪能できます。私は001ケーブルをつけてチップを変えて使用しています。JVCのFX1100やJH Audioアンジーなんかもお勧めです。ワイドレンジ感や空間表現など、これらの高性能イヤフォンの性能を十分に生かしている感じですね。
M3でまず印象的なのはバランスでなくてなにがわるい、と言いたくなるような広大な音の広がりの良さです。これはバージョン問わずM3の基本的な長所だと思います。おそらくデュアルモノの設計が効いているのでしょうね。
ワイドレンジで高低の帯域バランスはクセがないので、組み合わせたイヤフォンの性格が素直に出ると思います。音色もニュートラルでクセがない方だと思います。
素直な素材感のある一方で、モニター的というよりはコンシューマーライクでメリハリがあって迫力があってパワフルです。耳に近い感じで迫力もありますね。音の良さがわかりやすく、MP3でも音が良いのでエントリーユーザーにも向いてると思います。
楽器音は明瞭感が高くクリアですが、加えて滑らかさがあって、そこが価格以上に上質に感じさせるところでもあります。情報量とか音の正確さはこの価格帯ではかなり良い方だと思います。
それとM3で良いと思うのはいわゆるモニターライクではなく、聴いていて音楽的にきれいな音と感じられる点ですね。
周波数特性は低域が張り出してないでバランスよくフラットに聞こえるけれど、低いほうまでよく出て量感が確保されているのでベースが強いように聞こえると思います。またワイドレンジ感があり、高域も透明によく上に伸びる感じですね。この辺はFWバージョンでも少し異なるかもしれません。
Fitear fitearの空間再現の良さ、雰囲気感、クリアな細かさがよく発揮できます。この組み合わせでは躍動感とかインパクトも良いですね。
fitearだとキレの良さとかスピード感があって、ノリの良いジャズではフットステップ踏みたくなるくらいです。
* まとめ
総じてコストパフォーマンスが良く、価格以上の内容が楽しめると思います。またジョイスティック方式の操作はなかなか良くできていますが、多少慣れは必要かもしれません。
ホタ研では上の新UIでデモするということなので、当日は須山さんブースにどうぞ。
2015年02月11日
米国ハイレゾ論争事情
アメリカでも昨年CEAが日本のハイレゾロゴ取り入れたり、ハイレゾ規格を制定したりと、日本のようなハイレゾムーブメントみたいなものはあります。
日本とちょっと違うのはPONOの存在が意外と大きいことです。そのバックにいるニールヤングですね。
日本だとソニーを中心としたメーカーがハイレゾを宣伝してる感じですが、アメリカだとニールヤングが声高に矢面に立ってる感は強いと思います。
昨年PONOが出るあたりからPONOとハイレゾに対してのバッシングの傾向があったんですが、今年になってから加速してきて今ではITメディア対オーディオメディアという感じの対立の構図が出来てきたように思います。
まず米国ギズモの"Don't Buy What Neil Young is Selling"ニールヤングが売ってるものは買うな、っていう記事が書かれました。
http://gizmodo.com/dont-buy-what-neil-young-is-selling-1678446860
論旨はハイレゾってすごく違うというけど、ダブルブラインドテストで科学的に実証できないよね、あと"$400"もの高価な機材が意味があるの?という感じ。
記事の日本語版もあります。下記リンクです。
http://www.gizmodo.jp/sp/2015/01/pono_1.html
米ヤフーでもPONOレビューで批判記事が出ています。iPhoneとPONOでABスイッチでブラインドテストしたけど、大体の場合はiPhoneの方が良いと感じた、これは裸の王様の現代版だとしてます。
https://www.yahoo.com/tech/it-was-one-of-kickstarters-most-successful-109496883039.html
ただこの後でフォロー記事も書いてるんですが、この人の言い分としては(オーディオファイルが差を語るのはともかく)PONOは一般向けだし誰が聴いても差があるって言ってるでしょ?だと思います。
https://www.yahoo.com/tech/the-ponoplayer-review-criticism-and-follow-up-110040409129.html
それに対してニールヤングは「PONOは始まりにすぎない」としながら、こうした批判には「“Science says it doesn’t matter, but who cares about science?” 科学はそれが意味ないっていうけど、誰が科学なんか気にするんだ?」って言ったりしてます。
http://www.digitaltrends.com/music/neil-young-pono-ces-rolling-stone-ponoplayer-hi-res/?utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_content=dmfNOR&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter#!dmfNOR
そしてオーディオメディアもギズやヤフーなど一般ITメディアのこれらの記事に反撃してます。
AudioStreamでは、こういう話はこれまでやってきたよね、いま2015年だよってはじめ、いろいろと反駁してます。
http://www.audiostream.com/content/gizmodos-garbage-dump-pono
Real-HDではヤフー記事を書いた人はオーディオファイルだけどアナログテープ派でハイレゾデジタルオーディオにそもそも批判的ではということも書かれてます。ちょっと宗教戦争っぽくもなってきてますね。
http://www.realhd-audio.com/?p=4118
フォーラムでもComupter Audiophileではこれらを受けて「ここではダブルブラインドテスト話題を禁止すべきか?」という話題が投稿されたりもしてます。「主観主義」対「客観主義」と言ってる人もいますね。
http://www.computeraudiophile.com/f8-general-forum/should-blind-testing-discussion-be-banned-computer-audiophile-poll-23277/
ちなみにHeadFiでは下記のケーブルフォーラムはダブルブラインドテストの話題は禁止です(不毛に荒れるから)。
http://www.head-fi.org/f/21/cables-power-tweaks-speakers-accessories-dbt-free-forum
DBT-FreeはDBTはDouble Blind Testでfreeは日本語的には自由にして良いって勘違いされますが禁止の意味です。Smoke free areaは禁煙場所という意味なのでご注意。
そして今度はAudioStreamでPS AudioとBlue Coast Recordsが米ギズモや米ヤフーに挑戦状を突きつけたと記事になってます。
http://www.audiostream.com/content/ps-audio-and-blue-coast-records-high-res-challenge
PS Audioは米ギズモ記事への反論を書いてます。
http://www.psaudio.com/pauls-posts/warning/
ハイレゾの差がわからないっていうのは馬鹿げている(absurd)ので、飯おごるからうちのオーディオルームでブラインドABテストしようよ、という感じ。
Blue Coast Records(DSDで有名なクッキーさん)はここで米ヤフー記事への反論を書いています。
http://positive-feedback.com/Issue77/pogue.htm
ブラインドテストは私は30年近くやってるけどフェアなテストは難しい、私のスタジオでフェアなテストの手伝いをするよ、あなたの宗旨替えを強いるつもりはないからさ、っていう感じ。
さてこの論争の行方やいかに。
日本とちょっと違うのはPONOの存在が意外と大きいことです。そのバックにいるニールヤングですね。
日本だとソニーを中心としたメーカーがハイレゾを宣伝してる感じですが、アメリカだとニールヤングが声高に矢面に立ってる感は強いと思います。
昨年PONOが出るあたりからPONOとハイレゾに対してのバッシングの傾向があったんですが、今年になってから加速してきて今ではITメディア対オーディオメディアという感じの対立の構図が出来てきたように思います。
まず米国ギズモの"Don't Buy What Neil Young is Selling"ニールヤングが売ってるものは買うな、っていう記事が書かれました。
http://gizmodo.com/dont-buy-what-neil-young-is-selling-1678446860
論旨はハイレゾってすごく違うというけど、ダブルブラインドテストで科学的に実証できないよね、あと"$400"もの高価な機材が意味があるの?という感じ。
記事の日本語版もあります。下記リンクです。
http://www.gizmodo.jp/sp/2015/01/pono_1.html
米ヤフーでもPONOレビューで批判記事が出ています。iPhoneとPONOでABスイッチでブラインドテストしたけど、大体の場合はiPhoneの方が良いと感じた、これは裸の王様の現代版だとしてます。
https://www.yahoo.com/tech/it-was-one-of-kickstarters-most-successful-109496883039.html
ただこの後でフォロー記事も書いてるんですが、この人の言い分としては(オーディオファイルが差を語るのはともかく)PONOは一般向けだし誰が聴いても差があるって言ってるでしょ?だと思います。
https://www.yahoo.com/tech/the-ponoplayer-review-criticism-and-follow-up-110040409129.html
それに対してニールヤングは「PONOは始まりにすぎない」としながら、こうした批判には「“Science says it doesn’t matter, but who cares about science?” 科学はそれが意味ないっていうけど、誰が科学なんか気にするんだ?」って言ったりしてます。
http://www.digitaltrends.com/music/neil-young-pono-ces-rolling-stone-ponoplayer-hi-res/?utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_content=dmfNOR&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter#!dmfNOR
そしてオーディオメディアもギズやヤフーなど一般ITメディアのこれらの記事に反撃してます。
AudioStreamでは、こういう話はこれまでやってきたよね、いま2015年だよってはじめ、いろいろと反駁してます。
http://www.audiostream.com/content/gizmodos-garbage-dump-pono
Real-HDではヤフー記事を書いた人はオーディオファイルだけどアナログテープ派でハイレゾデジタルオーディオにそもそも批判的ではということも書かれてます。ちょっと宗教戦争っぽくもなってきてますね。
http://www.realhd-audio.com/?p=4118
フォーラムでもComupter Audiophileではこれらを受けて「ここではダブルブラインドテスト話題を禁止すべきか?」という話題が投稿されたりもしてます。「主観主義」対「客観主義」と言ってる人もいますね。
http://www.computeraudiophile.com/f8-general-forum/should-blind-testing-discussion-be-banned-computer-audiophile-poll-23277/
ちなみにHeadFiでは下記のケーブルフォーラムはダブルブラインドテストの話題は禁止です(不毛に荒れるから)。
http://www.head-fi.org/f/21/cables-power-tweaks-speakers-accessories-dbt-free-forum
DBT-FreeはDBTはDouble Blind Testでfreeは日本語的には自由にして良いって勘違いされますが禁止の意味です。Smoke free areaは禁煙場所という意味なのでご注意。
そして今度はAudioStreamでPS AudioとBlue Coast Recordsが米ギズモや米ヤフーに挑戦状を突きつけたと記事になってます。
http://www.audiostream.com/content/ps-audio-and-blue-coast-records-high-res-challenge
PS Audioは米ギズモ記事への反論を書いてます。
http://www.psaudio.com/pauls-posts/warning/
ハイレゾの差がわからないっていうのは馬鹿げている(absurd)ので、飯おごるからうちのオーディオルームでブラインドABテストしようよ、という感じ。
Blue Coast Records(DSDで有名なクッキーさん)はここで米ヤフー記事への反論を書いています。
http://positive-feedback.com/Issue77/pogue.htm
ブラインドテストは私は30年近くやってるけどフェアなテストは難しい、私のスタジオでフェアなテストの手伝いをするよ、あなたの宗旨替えを強いるつもりはないからさ、っていう感じ。
さてこの論争の行方やいかに。
2015年02月08日
Joe Grado氏 逝去
Gradoラボの設立者にして、MCカートリッジの発明者。オーディオの殿堂入りを果たしたJoseph Grado氏が逝去されたということです。
http://www.stereophile.com/content/joe-grado-1925%C2%961915
ヘッドフォンの世界ではHP-1000の開発で知られています。私も本格的な記事の第一号にはHP-2の研究を選びました。下記リンクです。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/1769139-1.html
10年ほど前になりますが、HeadFiの世界を知って、HD650だのRS-1だのありましたが、じゃあとにかくなにが一番のヘッドフォンなんだ、と探して行った究極の一つがこのJoe GradoのHP-1000でした。まさにJoe Gradoらしい極めの製品です。自分にとってもこの魅力あるヘッドフォン世界の膨大な知識の中から、まず頂上を見てやろうという野心あふれた頃でした。感慨深いです。
オーディオ界の巨人のご冥福をお祈りします。
http://www.stereophile.com/content/joe-grado-1925%C2%961915
ヘッドフォンの世界ではHP-1000の開発で知られています。私も本格的な記事の第一号にはHP-2の研究を選びました。下記リンクです。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/1769139-1.html
10年ほど前になりますが、HeadFiの世界を知って、HD650だのRS-1だのありましたが、じゃあとにかくなにが一番のヘッドフォンなんだ、と探して行った究極の一つがこのJoe GradoのHP-1000でした。まさにJoe Gradoらしい極めの製品です。自分にとってもこの魅力あるヘッドフォン世界の膨大な知識の中から、まず頂上を見てやろうという野心あふれた頃でした。感慨深いです。
オーディオ界の巨人のご冥福をお祈りします。
JH Audio Sirenシリーズの末妹、アンジー レビュー
先日レイラの記事を書きましたが、引き続いてアンジーの紹介記事です。JH Audioの新世代IEMと言えるSirenシリーズはレイラ、ロクサーヌ、アンジーの順となります。
レイラの記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/412685882.html
AK120II + Angie
レイラはクラプトンの有名な曲でしたが、アンジーはストーンズの曲から取られています。この前ジェリーに聞いたところでは、彼が作るイヤフォンは低域を少し持ち上げている特徴がありましたが、それをジェリー自身は「ロックンロールチューニング」と呼んでいました。私が底を突っ込んで「だから名前はロックンロールガールズなんですね」って言ったらちょっと笑ってました。
ロクサーヌはまさにそういう特性だったのですが、レイラとアンジーはそこをリファレンス的に下げて調整しています。そして周波数特性をフラットにするために4次クロスオーバー(ロクサーヌは2次)で急峻にカットをしています。この低域とクロスオーバーのチューニングはレイラとアンジーでも異なりますが、ロクサーヌに対しては別なアプローチと言えます。
これによってJudeが前に行っていたようにSirenシリーズの特徴であるベース調整の幅が大きいことで、音の調整幅が大きいとも言えます。つまりはロクサーヌのようにはじめから強調していないのであげる余地が大きいというわけです。ロクサーヌは演奏者向けにもう少し明確に低域を持ち上げた「ロックンロールチューニング」をしているというわけです。
ドライバーの構成は3Wayで高域に4つ、中音域に2つ、低音域に2つの8ドライバー構成となり、レイラとロクサーヌの妹という位置づけになっています。
高音域だけ4つのドライバーにしているのはレイラやロクサーヌと同じ特性をもつためです。ジェリーが言うにはIEMにおいて低音域と中音域の特性を得るのはそれほどむずかしくないが、高音域はむずかしいということです。もともとBAは高音域特性を得るのがむずかしく、16kHz以上はなかなか達成しがたいものになっています。しかしSirenシリーズでは16kHzでたしかに特性はおちはじめるが、16kHzから20kHzまではなんと-0.5dBを保ち、20kHzや23kHzでさえもまだ有意なほど特性をもっているということです。ジェリーのIEMは見かけのハイレゾロゴこそありませんが、真実の高域特性をもったイヤフォンだと言えるでしょう。
他の帯域では、低域はやや抑えめで、高めの中音域はやや強調されるので、ヴォーカルやギターが少し前に出てくる特性を持っているということです。アンジーは低音域が2つのドライバーで少なめなのでクロスオーバーではやや持ち上げた(レイラほど急峻でない)調整をしているそうです。
アンジーユニバーサルのシェルサイズはやや小型で、シェルはケブラー製です。ベゼルはCNCアルミでギターピックはカーボンファイバーです。
ジェリーに聞いたところロクサーヌユニバーサルは3Dプリンタで制作されていたそうですが、レイラとアンジーはどちらもシェルは3Dプリントではなくハンドメイドで作られているということです。カスタムとの違いは耳型くらいで違いはあまりないそうです。
* 開封の儀
アンジーはレイラのようにカーボン模様がちょっと覗くという演出はなく、普通の中箱です。紙質も普通のものです。アンジーは中箱がぱかっと折れて開くタイプで、片側にアンジーが格納され、JH Audioのクライアントリストシートは別紙ではなく、この印刷となっています(レイラでは別紙でした)。
アンジーのケースはユニバーサルの丸カンケースです。中を開けると2.5mmバランスケーブルが入ってます。AKR03についてきた2.5mmにくらべると今回アンジーとレイラについてきた2.5mmは金メッキされています。
底のアクセサリー箱にはレイラと似たようにチップと保証書とベース調整ドライバー、クリーニングキットが入ってます。
アンジーはレイラよりコンパクトです。見た目より耳に装着するとよくわかります。レイラだと大きめですがアンジーだとこのクラスでは標準的なサイズでしょう。
アンジーはSirenシリーズではロクサーヌの下に位置するけれども、実際はロクサーヌとはほぼ音質レベルでは変わらずに、音の個性で変わっているというべきだと思う。レイラ記事でも簡単に書きましたが、音質レベルというとロクサーヌとアンジーはほぼ同じくらいで、個性により長短があるという感じです。そうした意味では高い音質に比べてコストパフォーマンスはよいと言えるでしょう。最新の技術を採用したアンジーか、12ドライバーのロクサーヌかという違いですね。
音はロクサーヌ譲りでよく整っていて細かな再現ができています。また立体感に秀でている感じですね。雑踏とアナウンスのような環境音を聴くと、立体感と空間再現はレイラ譲りの良さは感じられます。
ベース調整ノブを標準位置にして、ロクサーヌのA&KモデルであるAKR03と聴き比べてみました。
AKR03よりもさらに音の広がりというか空間再現力、立体感は上がっているように思えます。ベースのパンチが上でより音の歯切れが良い感じ。ただ全体にやや軽くベースの迫力という点でいうとAKR03のほうが量感もある感じではあります。アンジーのほうが楽器の音の甘さが少なく正確に聞こえます。
AKR03のほうが濃くて太いけれども、アンジーはよりすっきりとして聴こえシャープで引き締まっているというかんじでしょうか。音の好みの差ではあるけれども、HiFiとかリファレンスという言葉ではアンジーのほうがより適切だと思います。
アンジーはだいたいにおいてはロクサーヌのような音ですが、よく聴くとアンジーではそうした違いがロクサーヌ(AKR03)に対してありますね。
AKR03(左)とアンジー
アンジーは基本位置でも低域が少ないということはないけれども、調整ノブを上げていくことで上記の迫力少ない感じはわりと埋まってきます。上記は両方とも標準位置での比較だけれども、ロクサーヌのほうがもともと多めなのでより低域は多めと言えるかもしれません。
反面でアンジーでも低域を上げていくとタイトさは減ってゆるくなってくるのでここはさじ加減と好みですね。
またレイラとアンジーはFreqPhaseを突き詰めたせいかわからないけど、チップのはめ込む深さで音が変わってくるように思います。特にレイラはチップのはめ込みの深さでもけっこう音が変わるので深くしたり浅くしたりして調整するとよいと思います。
個人的にはチップをチューブが見えるくらい深くはめないで少し浮かせたほうが空間再現力が上がるように思いますが、ここは人の耳の長さなどでも変わるかもしれません。
アンジーは来週末のポタ研でアユートさんのブースにありますので、レイラともどもぜひ聴いてみてください。
レイラの記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/412685882.html
AK120II + Angie
レイラはクラプトンの有名な曲でしたが、アンジーはストーンズの曲から取られています。この前ジェリーに聞いたところでは、彼が作るイヤフォンは低域を少し持ち上げている特徴がありましたが、それをジェリー自身は「ロックンロールチューニング」と呼んでいました。私が底を突っ込んで「だから名前はロックンロールガールズなんですね」って言ったらちょっと笑ってました。
ロクサーヌはまさにそういう特性だったのですが、レイラとアンジーはそこをリファレンス的に下げて調整しています。そして周波数特性をフラットにするために4次クロスオーバー(ロクサーヌは2次)で急峻にカットをしています。この低域とクロスオーバーのチューニングはレイラとアンジーでも異なりますが、ロクサーヌに対しては別なアプローチと言えます。
これによってJudeが前に行っていたようにSirenシリーズの特徴であるベース調整の幅が大きいことで、音の調整幅が大きいとも言えます。つまりはロクサーヌのようにはじめから強調していないのであげる余地が大きいというわけです。ロクサーヌは演奏者向けにもう少し明確に低域を持ち上げた「ロックンロールチューニング」をしているというわけです。
ドライバーの構成は3Wayで高域に4つ、中音域に2つ、低音域に2つの8ドライバー構成となり、レイラとロクサーヌの妹という位置づけになっています。
高音域だけ4つのドライバーにしているのはレイラやロクサーヌと同じ特性をもつためです。ジェリーが言うにはIEMにおいて低音域と中音域の特性を得るのはそれほどむずかしくないが、高音域はむずかしいということです。もともとBAは高音域特性を得るのがむずかしく、16kHz以上はなかなか達成しがたいものになっています。しかしSirenシリーズでは16kHzでたしかに特性はおちはじめるが、16kHzから20kHzまではなんと-0.5dBを保ち、20kHzや23kHzでさえもまだ有意なほど特性をもっているということです。ジェリーのIEMは見かけのハイレゾロゴこそありませんが、真実の高域特性をもったイヤフォンだと言えるでしょう。
他の帯域では、低域はやや抑えめで、高めの中音域はやや強調されるので、ヴォーカルやギターが少し前に出てくる特性を持っているということです。アンジーは低音域が2つのドライバーで少なめなのでクロスオーバーではやや持ち上げた(レイラほど急峻でない)調整をしているそうです。
アンジーユニバーサルのシェルサイズはやや小型で、シェルはケブラー製です。ベゼルはCNCアルミでギターピックはカーボンファイバーです。
ジェリーに聞いたところロクサーヌユニバーサルは3Dプリンタで制作されていたそうですが、レイラとアンジーはどちらもシェルは3Dプリントではなくハンドメイドで作られているということです。カスタムとの違いは耳型くらいで違いはあまりないそうです。
* 開封の儀
アンジーはレイラのようにカーボン模様がちょっと覗くという演出はなく、普通の中箱です。紙質も普通のものです。アンジーは中箱がぱかっと折れて開くタイプで、片側にアンジーが格納され、JH Audioのクライアントリストシートは別紙ではなく、この印刷となっています(レイラでは別紙でした)。
アンジーのケースはユニバーサルの丸カンケースです。中を開けると2.5mmバランスケーブルが入ってます。AKR03についてきた2.5mmにくらべると今回アンジーとレイラについてきた2.5mmは金メッキされています。
底のアクセサリー箱にはレイラと似たようにチップと保証書とベース調整ドライバー、クリーニングキットが入ってます。
アンジーはレイラよりコンパクトです。見た目より耳に装着するとよくわかります。レイラだと大きめですがアンジーだとこのクラスでは標準的なサイズでしょう。
アンジーはSirenシリーズではロクサーヌの下に位置するけれども、実際はロクサーヌとはほぼ音質レベルでは変わらずに、音の個性で変わっているというべきだと思う。レイラ記事でも簡単に書きましたが、音質レベルというとロクサーヌとアンジーはほぼ同じくらいで、個性により長短があるという感じです。そうした意味では高い音質に比べてコストパフォーマンスはよいと言えるでしょう。最新の技術を採用したアンジーか、12ドライバーのロクサーヌかという違いですね。
音はロクサーヌ譲りでよく整っていて細かな再現ができています。また立体感に秀でている感じですね。雑踏とアナウンスのような環境音を聴くと、立体感と空間再現はレイラ譲りの良さは感じられます。
ベース調整ノブを標準位置にして、ロクサーヌのA&KモデルであるAKR03と聴き比べてみました。
AKR03よりもさらに音の広がりというか空間再現力、立体感は上がっているように思えます。ベースのパンチが上でより音の歯切れが良い感じ。ただ全体にやや軽くベースの迫力という点でいうとAKR03のほうが量感もある感じではあります。アンジーのほうが楽器の音の甘さが少なく正確に聞こえます。
AKR03のほうが濃くて太いけれども、アンジーはよりすっきりとして聴こえシャープで引き締まっているというかんじでしょうか。音の好みの差ではあるけれども、HiFiとかリファレンスという言葉ではアンジーのほうがより適切だと思います。
アンジーはだいたいにおいてはロクサーヌのような音ですが、よく聴くとアンジーではそうした違いがロクサーヌ(AKR03)に対してありますね。
AKR03(左)とアンジー
アンジーは基本位置でも低域が少ないということはないけれども、調整ノブを上げていくことで上記の迫力少ない感じはわりと埋まってきます。上記は両方とも標準位置での比較だけれども、ロクサーヌのほうがもともと多めなのでより低域は多めと言えるかもしれません。
反面でアンジーでも低域を上げていくとタイトさは減ってゆるくなってくるのでここはさじ加減と好みですね。
またレイラとアンジーはFreqPhaseを突き詰めたせいかわからないけど、チップのはめ込む深さで音が変わってくるように思います。特にレイラはチップのはめ込みの深さでもけっこう音が変わるので深くしたり浅くしたりして調整するとよいと思います。
個人的にはチップをチューブが見えるくらい深くはめないで少し浮かせたほうが空間再現力が上がるように思いますが、ここは人の耳の長さなどでも変わるかもしれません。
アンジーは来週末のポタ研でアユートさんのブースにありますので、レイラともどもぜひ聴いてみてください。
2015年02月05日
世界最薄の振動版を採用したHiFiManの新フラッグシップ、HE1000のプレビュー
先日のCESで発表されて話題になったHiFiManの新しいフラッグシップであるHE1000のプリプロダクションモデルを試すことができました。またHiFiMan HM901の新型であるHM901Sの最終生産前モデルを試す機会もあったので合わせてレポートします。
* HE1000
HiFiMan(ハイファイマン)はマニアックな傾向の中国のメーカーで、平面型ヘッドフォンとハイレゾプレーヤーについては昔から手掛けてきました。
いままでのHiFimanのフラッグシップヘッドフォンはやはり平面型で、あの能率が低すぎてアンプをクリップさせちゃうHE6でしたが、HE1000はそれに代わるフラッグシップとなります。HE1000はCES 2015で発表されて話題になりました。HeadFiのJudeはHE1000をベストオブCESに選んでいます。
下記はHE1000のホームページです。
http://hifiman.com/he1000/
HE1000の特徴はまずダイアフラム(振動版)がとても薄いということで、史上最薄となりナノメーターで測るほどだそうです。静電型ではなくオルソダイナミックなのでダイアフラムのほかに導体のパターンが必要ですが、それもサブミクロン程度の薄さということです。またダイアフラムの面積もおそらく世界最大級だと思います。下記にナノメーターダイアフラムがどの程度薄いかということがわかる動画があります。
もうひとつの特徴としてはアシンメトリカル(非対称)・ドライバーを採用しているということです。HE560ではシングルサイドでしたが、HE1000はダブルサイドになります。ただしマグネットなどが対称ではなく非対称に配置されています。この利点としては通常の対称型のドライバーは干渉して位相歪みを生じるけれども、この非対称型だと干渉しないのでそうした歪みが生じないということです。これは下記の図のように片側に逃げていく逆相の音との相互作用なんでしょう。
左側が従来タイプのドライバーで右側がアシンメトリカルドライバーです。
またブラインドグリルと呼ばれるデザインのハウジングも開口性を重視して設計されています。
ケーブルは4pinのバランスが基本で、ここからコネクタで標準プラグと3.5mmミニプラグのケーブルが付けられます。
実際に使ってみるとサイズにしては重さは軽く感じられます。装着の感じはAbyssに似たかぶる感覚に近いですね。ただこの辺はプリプロダクションなのでまた変わってくるかもしれません。
音に関してはHiFiMan HE560とゼンハイザーHD800と簡単に比べてみました。ヘッドフォンはすべて標準ケーブルを使用してます。
ヘッドフォンアンプはパーソンのSoloist SLを使用してみました。次のようなシステムです。
PC(JRMC) → Hugo(USB DAC) → kimber RCAケーブル → Soloist SL
HE1000でまず感じたのはなんかSTAXっぽい、ということで、これは音が細かくて速いということから来ている感覚のように思えます。この辺は最薄ダイアフラムが効いているのでしょうかね。パーソンの音の生々しさがかなり気味悪いくらいリアルに感じられます。それと高い能率も寄与していると思います。HE560と比べると顕著ですが、音が明るく軽く感じます。重く暗い感じではないですね。
HE560よりもさらに歯切れが良く、高音域の伸びが良く突き抜ける感じで、低音域はとてもパンチがあります。低域は特に超低域がどーっと出てくる感じで、音の広さと合わせてスケール感が半端なく感じます。
HD800もHE1000に比べるとかなり甘い感じに感じられ、インパクトが軽くHD800でさえもHE1000に比べると鈍重な感じです。
プレビューなのでこのくらいにしておきますが、なかなか性能の高さは実感できました。HE560やHD800よりも性能が高いのは間違いないところです。HE1000は能率がそれほど低くないので、いわゆる平面型向けのヘッドフォンアンプでなくてもかまいません。HE560より能率が高いです。平面型の良い点が能率が改善されたことで100%発揮できているという感じでしょうか。
iPhoneでもボリュームをワンノッチ残すくらいで十分音量は取れます。またiPhoneで鳴らしてさえけっこう立体感や低域レスポンスは得られて良いヘッドフォンだということはわかります。
価格はまだ分かりませんが、それなりにお高くなりそうです。国内の取り扱いについてはそのうち案内があるのではと思います。
* HM901S
あのHM901が金属シャーシになったものがHM901Sです。これはHM901ではシャーシが電気的な問題があったそうで、この金属シャーシ化でかなり問題は解決したということです。たしかアルミ製だったと思います。
その他のDACチップや回路は変更がないそうです。アンプカードも同じだと思います。ただしデジタルフィルタースイッチがなくなり、スイッチではなくイヤフォンプラグでシングルエンドとバランスの使い分けをします。バランスは3.5mmTRRSです。
このほかにはファームウエアも改良されています(FWは太極というそうです)。ただこのバージョンではまだ不安定でした。
シャーシはかなりがっちりとして精密感があります。ただ前よりも重くはなっています。
音は前と似て濃くて繊細な音ですが、よりクリーンで洗練された気はしますね。制動力もあってしっかりイヤフォンをドライブしています。
そういえば最近ではAK240のステンレスシャーシ版のAK240SSも発表されていますが、これもA&Kの人に言わせるとシャーシが変わったことだけでグランドの変化で音の変化があるということです。ポータブルオーディオもこれだけ音が良くなってくると、いままでは気に書けなかった要素も重要になってくるということかもしれません。
* HE1000
HiFiMan(ハイファイマン)はマニアックな傾向の中国のメーカーで、平面型ヘッドフォンとハイレゾプレーヤーについては昔から手掛けてきました。
いままでのHiFimanのフラッグシップヘッドフォンはやはり平面型で、あの能率が低すぎてアンプをクリップさせちゃうHE6でしたが、HE1000はそれに代わるフラッグシップとなります。HE1000はCES 2015で発表されて話題になりました。HeadFiのJudeはHE1000をベストオブCESに選んでいます。
下記はHE1000のホームページです。
http://hifiman.com/he1000/
HE1000の特徴はまずダイアフラム(振動版)がとても薄いということで、史上最薄となりナノメーターで測るほどだそうです。静電型ではなくオルソダイナミックなのでダイアフラムのほかに導体のパターンが必要ですが、それもサブミクロン程度の薄さということです。またダイアフラムの面積もおそらく世界最大級だと思います。下記にナノメーターダイアフラムがどの程度薄いかということがわかる動画があります。
もうひとつの特徴としてはアシンメトリカル(非対称)・ドライバーを採用しているということです。HE560ではシングルサイドでしたが、HE1000はダブルサイドになります。ただしマグネットなどが対称ではなく非対称に配置されています。この利点としては通常の対称型のドライバーは干渉して位相歪みを生じるけれども、この非対称型だと干渉しないのでそうした歪みが生じないということです。これは下記の図のように片側に逃げていく逆相の音との相互作用なんでしょう。
左側が従来タイプのドライバーで右側がアシンメトリカルドライバーです。
またブラインドグリルと呼ばれるデザインのハウジングも開口性を重視して設計されています。
ケーブルは4pinのバランスが基本で、ここからコネクタで標準プラグと3.5mmミニプラグのケーブルが付けられます。
実際に使ってみるとサイズにしては重さは軽く感じられます。装着の感じはAbyssに似たかぶる感覚に近いですね。ただこの辺はプリプロダクションなのでまた変わってくるかもしれません。
音に関してはHiFiMan HE560とゼンハイザーHD800と簡単に比べてみました。ヘッドフォンはすべて標準ケーブルを使用してます。
ヘッドフォンアンプはパーソンのSoloist SLを使用してみました。次のようなシステムです。
PC(JRMC) → Hugo(USB DAC) → kimber RCAケーブル → Soloist SL
HE1000でまず感じたのはなんかSTAXっぽい、ということで、これは音が細かくて速いということから来ている感覚のように思えます。この辺は最薄ダイアフラムが効いているのでしょうかね。パーソンの音の生々しさがかなり気味悪いくらいリアルに感じられます。それと高い能率も寄与していると思います。HE560と比べると顕著ですが、音が明るく軽く感じます。重く暗い感じではないですね。
HE560よりもさらに歯切れが良く、高音域の伸びが良く突き抜ける感じで、低音域はとてもパンチがあります。低域は特に超低域がどーっと出てくる感じで、音の広さと合わせてスケール感が半端なく感じます。
HD800もHE1000に比べるとかなり甘い感じに感じられ、インパクトが軽くHD800でさえもHE1000に比べると鈍重な感じです。
プレビューなのでこのくらいにしておきますが、なかなか性能の高さは実感できました。HE560やHD800よりも性能が高いのは間違いないところです。HE1000は能率がそれほど低くないので、いわゆる平面型向けのヘッドフォンアンプでなくてもかまいません。HE560より能率が高いです。平面型の良い点が能率が改善されたことで100%発揮できているという感じでしょうか。
iPhoneでもボリュームをワンノッチ残すくらいで十分音量は取れます。またiPhoneで鳴らしてさえけっこう立体感や低域レスポンスは得られて良いヘッドフォンだということはわかります。
価格はまだ分かりませんが、それなりにお高くなりそうです。国内の取り扱いについてはそのうち案内があるのではと思います。
* HM901S
あのHM901が金属シャーシになったものがHM901Sです。これはHM901ではシャーシが電気的な問題があったそうで、この金属シャーシ化でかなり問題は解決したということです。たしかアルミ製だったと思います。
その他のDACチップや回路は変更がないそうです。アンプカードも同じだと思います。ただしデジタルフィルタースイッチがなくなり、スイッチではなくイヤフォンプラグでシングルエンドとバランスの使い分けをします。バランスは3.5mmTRRSです。
このほかにはファームウエアも改良されています(FWは太極というそうです)。ただこのバージョンではまだ不安定でした。
シャーシはかなりがっちりとして精密感があります。ただ前よりも重くはなっています。
音は前と似て濃くて繊細な音ですが、よりクリーンで洗練された気はしますね。制動力もあってしっかりイヤフォンをドライブしています。
そういえば最近ではAK240のステンレスシャーシ版のAK240SSも発表されていますが、これもA&Kの人に言わせるとシャーシが変わったことだけでグランドの変化で音の変化があるということです。ポータブルオーディオもこれだけ音が良くなってくると、いままでは気に書けなかった要素も重要になってくるということかもしれません。
2015年02月03日
単結晶銅を採用したJabenのイヤフォン用交換ケーブル、SpiralStrand
昨年の秋のヘッドフォン祭でも紹介しましたが、Jabenがヘッドフォン・イヤフォンのリケーブル用の交換ケーブルであるSpiralStrandを発売しました。長さは1.3mで主にポータブル機器のためのケーブルです。
購入は下記リンクをご覧ください。価格はバランスが17,200円(税込・送料込み - 2015/2/3現在)、アンバランスが15,200円(税込・送料込み)です。
http://jaben.net/jp/shopping/SpiralStrand.html
SpiralStrand(PONOバランス) + Ultrasone IQ
* 線材に単結晶銅を採用
SpiralStrandの特徴はまずケーブルの線材に"Single Crystal Copper(単結晶銅)"を採用していることです。単結晶銅というとあのPCOCCが思い浮かびます。OCCはOhno Continuous Castingの略で製造プロセスのことですが、このOCCプロセスにより単結晶構造(Single Crystal structure)の銅線を効率的に製造することができます。単結晶銅の利点は結晶が単一になると境界がなくなるので信号がスムーズに行き交いできるということです。
この点について聞いてみると、たしかにあのPCOCCと同様なものであるということです。このOCCプロセスで作った古河電工のケーブルがPCOCCで、PCOCCは古河の登録商標です。一方でOCC同様なプロセスを使うことでやはり単結晶銅の線材は製作が可能ということだと思います。
PCOCCと言えば少し前に古河電工が製造停止したことでオーディオ界を震撼させたというか、話題になった線材ですね。その後にポストPCOCCとも言えるような線材も出てきていますが、これもそのひとつとなれば良い選択肢だと思います。
* 対応プラグの種類が豊富
次の特徴はとても多くのヘッドフォン端子の規格と、ヘッドフォン・イヤフォン側のプラグの規格に対応しています。特にバランス端子の選択が豊富です。選択は以下の通りです(Jaben Japanのページより転載)。 2.5mm バランスはAstell&kern第二世代用、角型ミニバランスはKobiconn(RSAタイプ)のことです。PONO(SONY HPA3)バランス向けが選択できるのもポイントです。3.5mmの普通の端子(アンバランス)もありますのでJaben Japanさんに聞いてみてください。
Kobiconnバランス + FitEar, 2.5mmバランス + 2pin, 3.5mm + MMCX
A. MMCX <--> 2.5mm バランス
B. カスタムIEM用2ピン <--> 2.5mm バランス
C. IE8 <--> 2.5mm バランス
D. FitEar <--> 2.5mm バランス
E. MMCX <--> 角型ミニバランス
F. カスタムIEM用2ピン <--> 角型ミニバランス
G. IE8 <--> 角型ミニバランス
H. FitEar <--> 角型ミニバランス
I. MMCX <--> 3.5mm ペア(ソニー)
J. カスタムIEM用2ピン <--> 3.5mm ペア(ソニー)
K. IE8 <--> 3.5mm ペア(ソニー)
L. FitEar <--> 3.5mm ペア(ソニー)
なお、ソニー用のものは Pono のバランスモードにも使用できます。
以下はアンバランスです。
M. MMCX <--> 3.5mm アンバランス
J. カスタムIEM用2ピン <--> 3.5mm アンバランス
K. IE8 <--> 3.5mm アンバランス
L. FitEar <--> 3.5mm アンバランス
* 音の印象
またSpiralStrandは価格の割に音が良い点も魅力です。せっかくPONOバランスの選択があるので、PONOと組み合わせて試聴してみました。
デジタルプレーヤーはPONO Playerで、イヤフォンはWestone W60(MMCX)です。主にLINNの24bitクリスマスプレゼント曲集から聞いています。
左:標準ケーブル 右:SpiralStrand
はじめにWestoneの標準ケーブル(3.5mmステレオミニ)を使用してPONOに接続します。標準ケーブルでもなかなか良い音質で再生ができるところはさすがW60です。
そこで標準ケーブルからSpiralStrand(シングルエンド・3.5mmステレオミニ)に変えると、ぱっと音場が空間的に広がるとともに楽器やヴォーカルはより細かなニュアンスが伝わるようになります。さらに低音楽器はより低いところまで深みが増します。全体に上質感がまして感じられ、比較すると標準ケーブルでは痩せていたようにも思います。標準ケーブルでは粗さが感じられたところが、SpiralStrandだとなめらかに音の縁取りがなされる感じです。特に弦楽器の鳴りで感じられますね。SpiralStrandの方は楽器を上質なものにしたように感じられます。静かなピチカートなんかでもそれは顕著です。またThe Man who said..のジャズヴォーカルもSpiralStrandのほうが表情豊かで肉質感があるように感じられます。
差はかなりあるように感じられます。端的に言うと、ぱっと聞く全体の音の印象は透明感が高くシャープであいまいさが少ないというか、どちらかというと硬質感があってがっちりとソリッドでありながらも同時に滑らかで上質という感じです。音色はニュートラルで、特に暖かみも冷たさもないと思います。
次にこのSpiralStrand 3.5mmシングルエンドからPONO(HPA3)バランス(3.5mm x2)に変えてみます。PONOではSONY HPA3用のケーブルがそのまま使うことができます。これはPONOのBlackDragonバランスケーブルを買った時にMoon AudioのDrewにも聞いてみたんですが、やはり同じだということでした。
使い方は右プラグをLineout端子に接続して、左プラグを普通のヘッドフォンアウト端子に接続します。PONO PlayerのPlaybackの設定でBalancedを選択すると対応するケーブルを使ってくださいとワーニングが出ますのでOKを押下します。
PONO + W60バランス
3.5mmシングルエンドからPONOバランスにすると、さらに音は立体的に広くなるとともに、力強さが加わります。ブランデンブルグ協奏曲なんかも3.5mmシングルエンドだとただきれいに淡々となっていたというのが、バランスにするとぐっと力強く生き生きとして迫力も感じられます。PONOはバランスで大きく変わるのでぜひバランス化を試してほしいと思います。
AK240 + FitEar彩バランス
このほかにバランスではAK240にFitEar彩のバランス(2.5mm -> FitEar)の組み合わせもかなりお勧めです。切れがよくパンチがあり、彩のわかりやすい音の良さがよくわかります。
SpiralStrandは春のヘッドフォン祭のJaben Japanブースで展示販売される予定ですので、興味ある方はぜひ中野にどうぞ。
なおこのほかにはJaben JapanではベイヤーのDT1350のバランスやCalyx系(CESで出た新型?)も展示されると思います。また今回JabenブースはAnalog Squre Paper(A2P)さんと合同になるそうですので、A2Pファンの方もJabenブースへお越しください。
購入は下記リンクをご覧ください。価格はバランスが17,200円(税込・送料込み - 2015/2/3現在)、アンバランスが15,200円(税込・送料込み)です。
http://jaben.net/jp/shopping/SpiralStrand.html
SpiralStrand(PONOバランス) + Ultrasone IQ
* 線材に単結晶銅を採用
SpiralStrandの特徴はまずケーブルの線材に"Single Crystal Copper(単結晶銅)"を採用していることです。単結晶銅というとあのPCOCCが思い浮かびます。OCCはOhno Continuous Castingの略で製造プロセスのことですが、このOCCプロセスにより単結晶構造(Single Crystal structure)の銅線を効率的に製造することができます。単結晶銅の利点は結晶が単一になると境界がなくなるので信号がスムーズに行き交いできるということです。
この点について聞いてみると、たしかにあのPCOCCと同様なものであるということです。このOCCプロセスで作った古河電工のケーブルがPCOCCで、PCOCCは古河の登録商標です。一方でOCC同様なプロセスを使うことでやはり単結晶銅の線材は製作が可能ということだと思います。
PCOCCと言えば少し前に古河電工が製造停止したことでオーディオ界を震撼させたというか、話題になった線材ですね。その後にポストPCOCCとも言えるような線材も出てきていますが、これもそのひとつとなれば良い選択肢だと思います。
* 対応プラグの種類が豊富
次の特徴はとても多くのヘッドフォン端子の規格と、ヘッドフォン・イヤフォン側のプラグの規格に対応しています。特にバランス端子の選択が豊富です。選択は以下の通りです(Jaben Japanのページより転載)。 2.5mm バランスはAstell&kern第二世代用、角型ミニバランスはKobiconn(RSAタイプ)のことです。PONO(SONY HPA3)バランス向けが選択できるのもポイントです。3.5mmの普通の端子(アンバランス)もありますのでJaben Japanさんに聞いてみてください。
Kobiconnバランス + FitEar, 2.5mmバランス + 2pin, 3.5mm + MMCX
A. MMCX <--> 2.5mm バランス
B. カスタムIEM用2ピン <--> 2.5mm バランス
C. IE8 <--> 2.5mm バランス
D. FitEar <--> 2.5mm バランス
E. MMCX <--> 角型ミニバランス
F. カスタムIEM用2ピン <--> 角型ミニバランス
G. IE8 <--> 角型ミニバランス
H. FitEar <--> 角型ミニバランス
I. MMCX <--> 3.5mm ペア(ソニー)
J. カスタムIEM用2ピン <--> 3.5mm ペア(ソニー)
K. IE8 <--> 3.5mm ペア(ソニー)
L. FitEar <--> 3.5mm ペア(ソニー)
なお、ソニー用のものは Pono のバランスモードにも使用できます。
以下はアンバランスです。
M. MMCX <--> 3.5mm アンバランス
J. カスタムIEM用2ピン <--> 3.5mm アンバランス
K. IE8 <--> 3.5mm アンバランス
L. FitEar <--> 3.5mm アンバランス
* 音の印象
またSpiralStrandは価格の割に音が良い点も魅力です。せっかくPONOバランスの選択があるので、PONOと組み合わせて試聴してみました。
デジタルプレーヤーはPONO Playerで、イヤフォンはWestone W60(MMCX)です。主にLINNの24bitクリスマスプレゼント曲集から聞いています。
左:標準ケーブル 右:SpiralStrand
はじめにWestoneの標準ケーブル(3.5mmステレオミニ)を使用してPONOに接続します。標準ケーブルでもなかなか良い音質で再生ができるところはさすがW60です。
そこで標準ケーブルからSpiralStrand(シングルエンド・3.5mmステレオミニ)に変えると、ぱっと音場が空間的に広がるとともに楽器やヴォーカルはより細かなニュアンスが伝わるようになります。さらに低音楽器はより低いところまで深みが増します。全体に上質感がまして感じられ、比較すると標準ケーブルでは痩せていたようにも思います。標準ケーブルでは粗さが感じられたところが、SpiralStrandだとなめらかに音の縁取りがなされる感じです。特に弦楽器の鳴りで感じられますね。SpiralStrandの方は楽器を上質なものにしたように感じられます。静かなピチカートなんかでもそれは顕著です。またThe Man who said..のジャズヴォーカルもSpiralStrandのほうが表情豊かで肉質感があるように感じられます。
差はかなりあるように感じられます。端的に言うと、ぱっと聞く全体の音の印象は透明感が高くシャープであいまいさが少ないというか、どちらかというと硬質感があってがっちりとソリッドでありながらも同時に滑らかで上質という感じです。音色はニュートラルで、特に暖かみも冷たさもないと思います。
次にこのSpiralStrand 3.5mmシングルエンドからPONO(HPA3)バランス(3.5mm x2)に変えてみます。PONOではSONY HPA3用のケーブルがそのまま使うことができます。これはPONOのBlackDragonバランスケーブルを買った時にMoon AudioのDrewにも聞いてみたんですが、やはり同じだということでした。
使い方は右プラグをLineout端子に接続して、左プラグを普通のヘッドフォンアウト端子に接続します。PONO PlayerのPlaybackの設定でBalancedを選択すると対応するケーブルを使ってくださいとワーニングが出ますのでOKを押下します。
PONO + W60バランス
3.5mmシングルエンドからPONOバランスにすると、さらに音は立体的に広くなるとともに、力強さが加わります。ブランデンブルグ協奏曲なんかも3.5mmシングルエンドだとただきれいに淡々となっていたというのが、バランスにするとぐっと力強く生き生きとして迫力も感じられます。PONOはバランスで大きく変わるのでぜひバランス化を試してほしいと思います。
AK240 + FitEar彩バランス
このほかにバランスではAK240にFitEar彩のバランス(2.5mm -> FitEar)の組み合わせもかなりお勧めです。切れがよくパンチがあり、彩のわかりやすい音の良さがよくわかります。
SpiralStrandは春のヘッドフォン祭のJaben Japanブースで展示販売される予定ですので、興味ある方はぜひ中野にどうぞ。
なおこのほかにはJaben JapanではベイヤーのDT1350のバランスやCalyx系(CESで出た新型?)も展示されると思います。また今回JabenブースはAnalog Squre Paper(A2P)さんと合同になるそうですので、A2Pファンの方もJabenブースへお越しください。
2015年02月01日
Radsoneの新アプリ、スマートフォンの音質を向上させるRadsone DCT
スマートフォンの高音質の音楽再生アプリとして、Radsoneというアプリがかなり前からありましたが、その新しいバリエーションが登場しています。Radsone DCTです。DCTは昨年の11月に出て、いま現在は3.0が最新です。従来のRadsoneはそのままあるので、これはまったく別のアプリです。
左SONY ZX1、右iPhone6
* Radsone DCTとは
Radsone DCTはAndroidとiOS版の両方があり、両方とも基本音楽機能は無料です。アドインとして、DCT機能とHRAというハイレゾ出力機能があります。Androidでの要件は4.1以上です。無料版では一日20分まではDCT機能を使用できますが、それ以上使う場合にはアドインの購入が必要です。
そもそもRadsoneで使われている音質を向上させる「Radsone再生エンジン」というのはなにかというと、実のところここでDCTと呼ばれている機能と同じもののようです。(前はMuseflowと言っていたと思います)
DCTというのはDistinctive Clear Technologyの略で、具体的にはデジタル音楽信号を解析してアーチファクト(デジタル演算による副作用成分)を取り除くというものです。これはアダプティブ・ディザリングという技術を応用したものということです。ディザ処理は不自然なギザギサのところに音を足す・丸めることで滑らかにするとかそういうものです。DCTの働きについては古い絵画のレストアを例にして、人工的になにか付け足すのではなく、もとあった良い状態に戻すのだという説明があります。アーチファクトですから、MP3などの圧縮音源で欠損した成分という意味ではなく、ハイレゾ音源ファイルでも存在するデジタル音源そのものに起因する問題点を修正するというわけです。ですからCDリッピング音源などでも効果があります。
もうひとつの機能であるHRAは外部DACをスマートフォンに接続してサンプルレート変更なしにハイレゾ出力をするためのアドインです。DCTはHRAを使ったDAC接続でも動作します。HRAはiOSは有料ですが、Androidはわかりません(未実装?)。
もとあったオリジナルRadsoneとRadsone DCTの違いは、基本的な「Radsone再生エンジン」はDCTと同じものですが、オリジナルRadsoneの方が機能(イコライザーなど)が多く価格が高いということのようです。ただし現時点ではRadsone DCTの方が最新の「Radsone再生エンジン = DCT」を実装していて、ハイレゾ再生機能があるなど逆転現象があるけれども、そのうちもとのRadsoneもアップデートしていくとサイトには書かれています。
もとのRadsoneのロングタームライセンスを持っている人もその対象になるということ。
* 実際の使用と音質
iPhoneとAndroidの両方とも使えますが、少し試してみて効果が高かったのは基本的な音質の優れたSONY ZX1です(4.1以上が必要なためDX100には使えません)。アプリで音質を変えられるのは汎用OS機の強みでもあります。以下SONY Walkman ZX1での使用例です。
操作説明(ZX1)
DCTをオンにすると音に厚みが増して豊かに感じられ、楽器の音の輪郭の明瞭感が増します。ドラムやパーカッションのインパクトもより鋭くなります。DACをひとつクラスをあげたような感じでしょうかね。元に戻すと薄く軽く感じられ、ドラムの切れも甘くなります。DCTの機器は1-10で変えられるので、不自然に思えるときは調整も可能です。Warmではやや暖かめ・柔らかめに、Brightではややぎらつきが増しますがここは好みでしょう。DynamicにするとDCT効果が強調されますが、なんらかのコンプレッサ処理によるもののように思えます(よくわかりませんが)。
Gainはいわゆるイコライザーのプリアンプ機能のようなもので、音が割れるときにはあらかじめゲインを落としておけます。もしかするとDynamicでは楽曲によっては必要になるかもしれません。
またDCTオンオフの効きはバッファを使うためにひとテンポ遅れますので注意ください。
DCT機能設定画面(左ZX1、右iPhone6)
ZX1の標準プレーヤーと比べると音質向上の効果は高いと思います。ClearSoundオンにしたほどの濃いソースをかけて味付けする感がないので、DCTだとわりと自然な音質向上が可能です。また注意して聴くと一つ一つの楽器音の質感表現はClearSoundにしても向上の効果があまりないと思いますが、DCTだとベルはより鳴りが鮮明になるのが分かります。
ただZX1を使っていたらハイレゾ楽曲が再生できないとかアップルロスレスで止まるなどいくつか問題があって不安定なところはまだあります。44/16のFLACはほとんど問題ないと思います。
またZX1の場合には仮にハイレゾ再生がうまくいっても、S-Masterにハイレゾネイティブで送られるかは分かりません、念のため。
外部DACを使用していても効果はありますので、先日紹介したGloveAudio S1なんかでも有効に使えると思います。
両方ともZX1
一般的なプレーヤーの機能も基本的なところはだいたい備えていて、シャッフルやリピートなども問題ありません。ただしギャップレスなど少し進んだ機能はありません。
iPhoneでも使えますが、iPhoneだと基本の音があまり良くないので、もっとClearSound的に音を盛るタイプのDSPアプリの方が効果的だと思います。ZX1の場合は基本の音が良いので、ちょっと表面の荒れを整えてあげるこうした音作りがよいように思えますね。
ZX1のもうちょっとっていう物足りなさを解消してくれるアプリではないかと思います。
左SONY ZX1、右iPhone6
* Radsone DCTとは
Radsone DCTはAndroidとiOS版の両方があり、両方とも基本音楽機能は無料です。アドインとして、DCT機能とHRAというハイレゾ出力機能があります。Androidでの要件は4.1以上です。無料版では一日20分まではDCT機能を使用できますが、それ以上使う場合にはアドインの購入が必要です。
そもそもRadsoneで使われている音質を向上させる「Radsone再生エンジン」というのはなにかというと、実のところここでDCTと呼ばれている機能と同じもののようです。(前はMuseflowと言っていたと思います)
DCTというのはDistinctive Clear Technologyの略で、具体的にはデジタル音楽信号を解析してアーチファクト(デジタル演算による副作用成分)を取り除くというものです。これはアダプティブ・ディザリングという技術を応用したものということです。ディザ処理は不自然なギザギサのところに音を足す・丸めることで滑らかにするとかそういうものです。DCTの働きについては古い絵画のレストアを例にして、人工的になにか付け足すのではなく、もとあった良い状態に戻すのだという説明があります。アーチファクトですから、MP3などの圧縮音源で欠損した成分という意味ではなく、ハイレゾ音源ファイルでも存在するデジタル音源そのものに起因する問題点を修正するというわけです。ですからCDリッピング音源などでも効果があります。
もうひとつの機能であるHRAは外部DACをスマートフォンに接続してサンプルレート変更なしにハイレゾ出力をするためのアドインです。DCTはHRAを使ったDAC接続でも動作します。HRAはiOSは有料ですが、Androidはわかりません(未実装?)。
もとあったオリジナルRadsoneとRadsone DCTの違いは、基本的な「Radsone再生エンジン」はDCTと同じものですが、オリジナルRadsoneの方が機能(イコライザーなど)が多く価格が高いということのようです。ただし現時点ではRadsone DCTの方が最新の「Radsone再生エンジン = DCT」を実装していて、ハイレゾ再生機能があるなど逆転現象があるけれども、そのうちもとのRadsoneもアップデートしていくとサイトには書かれています。
もとのRadsoneのロングタームライセンスを持っている人もその対象になるということ。
* 実際の使用と音質
iPhoneとAndroidの両方とも使えますが、少し試してみて効果が高かったのは基本的な音質の優れたSONY ZX1です(4.1以上が必要なためDX100には使えません)。アプリで音質を変えられるのは汎用OS機の強みでもあります。以下SONY Walkman ZX1での使用例です。
操作説明(ZX1)
DCTをオンにすると音に厚みが増して豊かに感じられ、楽器の音の輪郭の明瞭感が増します。ドラムやパーカッションのインパクトもより鋭くなります。DACをひとつクラスをあげたような感じでしょうかね。元に戻すと薄く軽く感じられ、ドラムの切れも甘くなります。DCTの機器は1-10で変えられるので、不自然に思えるときは調整も可能です。Warmではやや暖かめ・柔らかめに、Brightではややぎらつきが増しますがここは好みでしょう。DynamicにするとDCT効果が強調されますが、なんらかのコンプレッサ処理によるもののように思えます(よくわかりませんが)。
Gainはいわゆるイコライザーのプリアンプ機能のようなもので、音が割れるときにはあらかじめゲインを落としておけます。もしかするとDynamicでは楽曲によっては必要になるかもしれません。
またDCTオンオフの効きはバッファを使うためにひとテンポ遅れますので注意ください。
DCT機能設定画面(左ZX1、右iPhone6)
ZX1の標準プレーヤーと比べると音質向上の効果は高いと思います。ClearSoundオンにしたほどの濃いソースをかけて味付けする感がないので、DCTだとわりと自然な音質向上が可能です。また注意して聴くと一つ一つの楽器音の質感表現はClearSoundにしても向上の効果があまりないと思いますが、DCTだとベルはより鳴りが鮮明になるのが分かります。
ただZX1を使っていたらハイレゾ楽曲が再生できないとかアップルロスレスで止まるなどいくつか問題があって不安定なところはまだあります。44/16のFLACはほとんど問題ないと思います。
またZX1の場合には仮にハイレゾ再生がうまくいっても、S-Masterにハイレゾネイティブで送られるかは分かりません、念のため。
外部DACを使用していても効果はありますので、先日紹介したGloveAudio S1なんかでも有効に使えると思います。
両方ともZX1
一般的なプレーヤーの機能も基本的なところはだいたい備えていて、シャッフルやリピートなども問題ありません。ただしギャップレスなど少し進んだ機能はありません。
iPhoneでも使えますが、iPhoneだと基本の音があまり良くないので、もっとClearSound的に音を盛るタイプのDSPアプリの方が効果的だと思います。ZX1の場合は基本の音が良いので、ちょっと表面の荒れを整えてあげるこうした音作りがよいように思えますね。
ZX1のもうちょっとっていう物足りなさを解消してくれるアプリではないかと思います。