Soloist SLは国内ではアユートが販売しているヘッドフォンアンプです。こちらに製品リンクがあります。
http://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_1500.php
DACは内蔵していませんので、他にCDプレーヤーとかDACが必要になります。アユートさんではAstell & kernシリーズがUSB DACとしても使えますので、それを使用してさらに発展させるためのキーとしてSoloist SLを提案するという形になります。
たとえば話題の平面型ヘッドフォンを試してみたい、というときにはこうした専用の高出力のヘッドフォンアンプがあった方が良いわけです。
もちろんAKシリーズでなくても、普及価格のヘッドフォンアンプとして優れていますので、すでにUSB DACをもっている人で、DAC内蔵アンプを使用している人にもお勧めです。音を一ランク上げてくれます。
* Bursonのオーディオ哲学とSoloist SL
BursonはHeadFiでもよく見かけるブランドで、オーディオマニアに支持されるオーディオブランドです。もともとがオーストラリアのオーディオコミュニティがあって、その代表者がMark Bursonという人だったのですが、オーディオマニアがほしがるような製品をみんなで作ろうということでできたのがこのBursonブランドです。ですので、製品はマニアック志向で、ショートシグナルパス、オペアンプをきらったディスクリート回路設計や強力な電源が特徴です。
Bursonの哲学としては、シンプルな回路で高品質パーツで音質を引き出し、オペアンプや既成トランスなどを使わないということです。
Bursonのホームページに掲げられている"Less is more"というのは日本語で言うとシンプルイズベスト、ということです。オペアンプを使う方がシンプルじゃないかと突っ込まれることもありますが、オペアンプはもともとPC用の汎用パーツであり、中には複雑な構成物がはいっいるので結局シンプルではなく、またオーディオに必要ない部分も通ってしまうので、はじめからディスクリートで必要なパーツだけ組んだ方がよいというわけですね。
Bursonいわく、機材が透明で音に忠実であれば、テンポ、ダイナミクス、音色は自然に生じてくるもので、元の音に不必要な着色をする必要はないということだそうです。こうした理想を達成するためにはオペアンプは排すべきだというのがBursonの主張です。
実のところ、はじめのHA-160では信号経路に32個の部品を使っていましたが、Soloistではさらに設計を突き詰めて、FETをベースに21個のみのシンプルなコンポーネントで設計されています。これも設計中に少しずつパーツを減らしていくたびに透明感が出てきたということです。
パワーサプライでもきちんとノイズを抑える工夫がなされていますが、そこでもオペアンプが使われていないという徹底ぶりです。
この辺からもBursonがマニアが立ち上げて理想を追求するメーカーと言うことが分かってくるのではないかと思います。
Soloist SLはSoloistからプリアンプ機能をはずしてヘッドフォンアンプに特化したものです。またステップアッテネーターをはずしてAlpsボリュームにすることで低価格化も行っています。普通のメーカーだと性能を高めるためにAlpsを採用しましたと書くところも多いので、低価格にするためにAlpsにしたっていうところからもこのメーカーの真摯な姿勢が分かると思います。他にシャーシのアルミ外装も少し簡易化していますが、まだまだがっちりとしています。もともとオーバースペックだったものを適性化したという方が正しいと思います。
最大出力も4W/chから2W/chに変更されていますが、2W/chでもまだまだヘッドフォンアンプ全体からみると高出力な方です。実際に平面型のHE560でも十分駆動できます。
* Soloist SLの使用例と音質
今回はAK240をUSB DACとして使用して以下のようなシステムをセットアップしてみました。
まずPC上にオーディオ再生用の音楽再生ソフトが必要です。私は高機能で慣れているのでJRiver Media centerを使っていますが、Foobar 2000でもかまいません。この場合はASIOドライバーならば対応するコンポーネントのインストールが必要になります(JRMCでははじめから組み込んでます)。
次にPCとAK240をUSBケーブルで接続します。これは別売りで購入する必要がありますがUSBマイクロB端子が付いた高音質のUSBケーブルがお勧めです。私はFitear microを使用しました。他にはWireWorldなどでも用意されています。
AK240とSoloistを接続するケーブルはアナログ部分なのでこれも良いケーブルを使いたいところですが、このSoloist SLに添付されているRCAケーブルも意外とよいので、はじめはこれを使っていてもよいと思います。ただしAK240のイヤフォン端子に接続しますので、ミニプラグとRCAの変換プラグが必要です。これはお店とかAmazonで安く購入できます。AK240では設定においてライン出力を選択し、USBの用途をMTPではなくDACにします。
システムとしてはこんな感じです。
PC(JRiver) - USB cable(FitEar) - AK240 - RCA cable(付属) - Soloist SL - HE560
このシステムにおいてゼンハイザーHD800とHiFiman HE560で聴きました。音楽をありのままに聞きたいときはHD800、少し強調して聞きたいときはHE560などの選択が良いですね。Soloistはパワーがあるので平面型であるHE560もぐいぐいとならせます。仮に音量が十分あったとしても、軽々と朗々となるような感じでないと駆動力不足だと思います。
まず感じる音の印象は透明感の高さで、気持ちよいくらい透明感のひときわ高い音質が堪能できます。
透明感というのも他で感じる単なるクリアさとは少し異なっていて、Soloistの良いところは鮮度感が高いということです。鮮度感というとあいまいではありますが、音に直接触れるような生々しさ、という感じでしょうか。音がベールなしでダイレクトに届く感じです。この辺はBursonの開発哲学のシンプルさが効いているんでしょう。また音色も雑味がなくすっきりとピュアに感じられます。音の立ち上がりとスピードが早いのも特徴でリズムの速い曲も軽快に鳴らしてくれます。
HE560あたりだと低音が深く重く、どっしりとした重量感もあります。中高音域はシャープで突き抜けるように上に伸びてゆく感じで、ヴォーカルはわりと近めに感じられます。楽器やヴォーカルの音は鮮明でヴォーカルの歌詞もよく聴き取れます。
周波数的な帯域バランスは整っていて、強調感をあまり感じません。音色はニュートラルで暖かみや脚色感はありません。もちろん無機的ではなく、味気ないという音ではありません。こうしたアンプはいわゆるモニター的というか客観的に感じられやすいものですが、Soloistは聴く人に近く、音楽の躍動感を届けてくれます。音の広がりは標準的ですが、ここはほかの要素を調整してゆくことでも伸ばすことが可能かもしれません。
他のUSB DACを使用してもまたいろいろと音を変えていけると思います。CHORD Hugoを持っている人にもお勧めです。Hugoは内蔵アンプも強力ですが、Soloist SLを使うことでさらに迫力のある音を楽しめます。
ハイレゾプレーヤーからオーディオ入門してイヤフォンしか聴いていなかったという方、USB DACを購入したけれども専用のヘッドフォンアンプをもっていない方には特にお勧めです。また手ごろな価格でヘッドフォンアンプを探していたという人にもお勧めです。そしてBursonの音に興味があったけれどもいままで高くて躊躇していた、というマニアの方にもBursonサウンドのエッセンスを届けてくれることでしょう。