Music TO GO!

2015年01月30日

T5pをAKシリーズ用にカスタマイズしたAKT5p

本日アユートさんからAstell&Kernブランドで、ベイヤーのT5pをAKシリーズ用にカスタマイズしたAKT5pが発売されます。
http://www.iriver.jp/products/product_106.php

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AKT5pを外で実際に使ってみましたが、フラッグシップのハイエンドヘッドフォンを外でポータブルで使うことの贅沢さを味わえます。外で使うヘッドフォンというとたいていは低域ボンボン全体ぶわぶわのヘッドフォンの選択になってしまいますが、このくらいの高性能ヘッドフォンだとそれらとは別次元の音楽体験が外で可能になるという満足感が味わえます。

ベースになったベイヤーのT5pはベイヤーのフラッグシップであるT1の兄弟機で、密閉型の低インピーダンスモデルです。事実上のフラッグシップ兄弟ですね。T1,T5pは初めてベイヤーのテスラテクノロジーを採用したモデルで、1テスラを超える高い磁束密度を誇っています。
AKT5pはT5pを2.5mmのA&Kタイプのバランスプラグに付け替えたものです。A&K第二世代プレーヤーの方ではアップデートをすることでAKT5p向けの専用イコライザー設定を使うことができます。

* 開封の儀

外箱はシュリンクラップされ、Astell&Kernの赤いロゴが映えています。

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中箱を開けるとT5pが鎮座しています。

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アクセサリー箱にはケーブルと2.5mmバランス端子を普通の3.5mm端子に変換する短いケーブルのアダプタがついています。なにげにこの変換ケーブルが便利に使うことができますね。DAPだけなら2.5mmケーブル専用で良いですが、なにしろ2.5mmバランスで聞いていて、急にiPhoneで視聴したい動画を見つけた時なんかに苦労したりします。
また長い標準プラグへの変換ケーブルもあるので、AKT5pを家で使うときにはこちらの長いケーブルを使うことができると思います。

AKT5pは1.2mのケーブルにAK第二世代で使える2.5mmバランス端子がついています。まさに最高のポータブルプレーヤーのための最高のポータブルヘッドフォンですね。

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AKT5pのデザインはかっこよく、ヘッドバンドとパッドはシープスキンが使用されていますので高級感があります。またAKT5pはハンドメイドのMade in Germanyです。

* 音と使用

外に持ち出して聴いてみました。AK240に2.5mmバランスで接続して基本的にAKT5pイコライザーを適用しています。AKT5pはダイナミックのヘッドフォンなのでたっぷりエージングしてから聴いています。

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見た目よりは軽量で、装着もシープスキンパッドなどで良好です。ケーブルは1.2mとポータブルで使いやすい長さなので取り回しは良好です。外では低音域が逃げやすいものですが、十分な遮音性はあると思います。側圧も強すぎないので装着感も快適です。ただしぴったりと密着させるようにヘッドバンドを調整した方が良いですね。
折りたたんでコンパクトにするということはできませんが、思ったほどかさばるというわけではないですね。肩がけショルダーならなんとか入るかというくらいです。

まずとても上質な音で、帯域バランスが良いのが分かります。
音の印象は密閉型のこもった重い音というのではなく、明るく軽やかで広い音空間が感じられます。これはテスラドライバーの特徴だと思います。テスラドライバーは1テスラの高い磁力で能率を改善する、つまり鳴らしやすくするというのがポイントです。T1のテスト例では約+7dBも効果があったということです。
そのため本来は高性能で鳴らしにくいはずのヘッドフォンを軽やかに駆動できて、その性能を十分に発揮させることが可能です。ハイゲインがないAK240でも問題なく音量が取れます。

次に感じるのは音が整っていて帯域バランスが良くフラットだということ、偏ったベースヘビーなどの強調がないですね。全帯域で聴きやすく、ニュートラル・フラットで自然です。かつほしい低域のパワー感や高域のきらめきは十分に得られます。
音の立体感も高く、楽器の位置関係はよくわかります。たしかT1/T5pも丸いイヤカップに合わせてドライバーを傾けていたと思います。

AKT5p専用のイコライザー設定を適用すると、高音域のピーク感を落として子音のきつさを抑えてくれます。他の帯域も聴きやすく上質に安定した感がありますね。多少明るさは抑えられるのでここは好みの要素もあると思いますので、使用して確認してみても良いと思います。

Edition8だと元気すぎるとか味付けが強すぎると感じていて、高音質を欲する人にも良いと思います。AkT5pはEdition8に比べると落ち着いた高音質という感じで、電車の中でもクラシックをじっくりと楽しみたいという人にも向いていると思います。

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高性能のヘッドフォンはなかなか選択肢がないので、いままで外でポータブルを使うときは高い音質を得るにはカスタムレベルのIEMを使うのが一般的でしたが、AKT5pはイヤフォンではなかなか実現しにくい広く迫力ある音空間を提供してくれます。ベースラインではたっぷりと空気が動いている感がありますね。これだけ整った素直な帯域特性もマルチBAだとなかなか得にくいと思います。

一方でヘッドフォンだから大味かというとそうではなく、細かさはBAにも負けじって思うくらいかなり細かな表現もしてくれます。ヴォーカルがかすかにささやくようなニュアンスはぞっとするくらい繊細で生々しく聞こえます。これは外で聞いた感想ですからなかなかたいしたものです。Ak240の高い性能もフルに発揮できますね。この辺はフラッグシップの面目躍如です。
高性能のポータブルとしてはESW9とかESW10のレベルはずっと上に越えて、Edition8とならぶポータブル体験ができます。外で最高のヘッドフォンリスニングをしたいという人にお勧めです。
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2015年01月24日

GloveAudio S1プリプロダクションモデルレポート

GloveAudio S1はGloveAudio A1のSONY ZX1バージョンです。SONY ZX1と一体型でケーブルレスで接続(合体)できるDAC内蔵のヘッドフォンアンプです。

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以下プリプロダクションモデルをCEntranceから貸与してもらいましたのでレポートします。情報はGloveAudioならびにCEntrance CEOのマイケルから直接聞いたものです。ただしプリプロダクションモデルでのレポートであり、製品版では変わるかもしれませんので注意ください。
たとえばプロトタイプではX1と表示されていますが、製品版ではS1となる予定です。

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サイズはZX1に合わせてA1よりもやや大きくなっていますが、今回もぴったりと一体にはまります。ZX1のシルバーと合わせて、メカ的にカッコよいですね。なおこのS1のシルバーカラーは日本国内仕様になる予定で、国際仕様はブラックのようです。

このプリプロダクションでは組み立てはA1での六角レンチから普通のプラスドライバーに変わっています。ZX1とは底面プレートの電極プラグを経て接続します。

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端子をみるとわかりますが、ZX1とはUSB経由で接続します(A1ではAK100/120と光でつないでいました)。これでオーディオ信号の伝達と電力供給ができます。ご存知の方もいると思いますが、CEntranceはドライバーでも知られるようにPCオーディオでのUSB接続のプロであり、USB接続でのS1は彼らの能力をいかんなく発揮できると思います。オーディオ回路設計が優れていることもA1で実証済みです。

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S1の側面にはマイクロUSB B端子がひとつあります。これでS1とZX1を同時にチャージできます。またZX1へのデータ転送もできます。USB DACとしては機能しません。
充電はA1のように二股のUSBケーブルでなく、ひとつのケーブルで同時に充電が可能です。このためにはまずS1とZX1を両方電源を落としてからS1のUSB端子にケーブルを接続します。S1が動作状態ではZX1に充電できません。
充電状態はLED点滅で表示されますが、点滅の意味は製品版で変わることが確実なので書かないでおきます。

ボリュームはS1側面のボリュームを使用します。動作中はZX1のボリュームは使用できません。出力は3.5mmバランスとKobiconn(RSAタイプ)バランス、2.5mmA&Kバランスです。
DACチップはA1と同じく標準タイプのES9018です。標準タイプのES9018は一般に使われている省電力型ES9018K2Mに比べても性能が高いのが長所で、K2MがDNR 127dBのところ、標準タイプでは133dBあります。これは現時点でのDAC ICの最高レベルの性能と言ってよいでしょう。他の回路は少し改良されていますがほぼA1と同等だと聞いています。

音はA1からも想像できると思いますが大変に素晴らしく、特にバランスで素晴らしい再現性を聴かせてくれます。GloveAudio A1と比べてみると音質レベルは同じくらいだと思いますが、S1の方がややクリアで硬質に感じられます。この辺はもとのZX1の音を少し引き継いでいる感もあり興味深いところです。もちろんZX1にくらべると大幅に音質は良くなっていて、別物と考えてよいと思います。
彩との001バランスでの相性がとてもよかったですね。ちょっとあり得ないくらいの音再現を聴かせてくれました。AKR03なんかも2.5mmバランスで素晴らしい音質を聴かせてくれました。

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FitEar 彩とGloveAudio S1

問題点は電池の持ちが短いことです。これはS1の問題ではなくZX1のデジタル接続での電池消費が多いことによるもので、これは他のHPA-2などでもデジタル接続なら同じはずです。実際にここがZX2で電池が倍増された理由でしょう。ただS1では普通のUSB MicroB端子を使って手軽に5V USB充電できるので、普段使いにはあまり問題にならないと思います。

ZX2とどちらを取るかは悩むひともいるかもしれませんが、うちのブログを読むような方はGloveAudio S1でしょうね。私見ですが、ZX2での音質の改良はアナログ回路の範囲であり、肝心のS-MasterはZX1と同じです。かたやS1では最高のDACチップであるES9018を採用しています。おそらくS-MasterはASICで実装されているので、ZX2だけのリリースのタイミングでは書き換えが難しかったのではないでしょうか。ASICはFPGAに比べると書き換えに生産量が必要になります。おそらく次のS-Masterの書き換えは生産量が確保できる次のWalkmanの発表のタイミングではないかと個人的には思います。そうした意味で言うと、良くも悪くもS-Masterに束縛されてしまうZX1を音質面で大きく改善するにはS1のような外部DACアンプが最善ではないかと思います。

S1の価格と国内提供経路は後日発表になると思います。
このユニットはすでに返却しましたが、来月2/14のポタ研で試聴できるようになりそうです。興味のある方はチェックしておいてください!
posted by ささき at 12:47 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月21日

JH Audio Layla(レイラ) 登場! 開封の儀とファーストインプレ

本日アユートさんからJH AudioとAstell&KernのコラボであるLayla(レイラ)とAngie(アンジー)の待望のアナウンスがありました。

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JH Audio Layla + AK240

レイラとアンジーはまず1/21(水)12時、直販限定でのモニター先行販売実施します。詳細は下記をご覧ください。
http://www.akiba-eshop.jp/JHAudio

本稿ではまず新しいフラッグシップであるレイラについて書いていきます。レイラについては先の記事もご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/410935413.html
レイラはロクサーヌと同じ4x4x4の12ドライバーですが、ドライバーは一新されています。特にクロスオーバーに改良がくわえられ、フラットな特性のために急峻な4次クロスオーバーを使用しています。ちなみにロクサーヌは2次クロスオーバーだそうです。名称はロクサーヌに続いてロック女性名でクラプトンの名曲レイラから取られています(原曲はデレク&ドミノス)。 このまえジェリーに「次はロザーナ(TOTO)かジュリア(ビートルズ)でしょ?」と聞いたら「はは、あとはロージー(ルースターズ)とかね」と言ってたんで次はRosieだったりして。

* 開封の儀とファーストインプレ

レビュー用のレイラが届きましたので開封の儀とファーストインプレをさっそくお届けします。

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箱はシュリンクラップされていて、背面にはジェリーの写真が印刷されています。

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外箱を取ると内箱に少し隙間があって、そこにカーボン柄の内箱が覗いてるのが凝っています。

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外箱を開けると薄い内箱があり、その下にカーボンカスタムについてきたカーボンのケースが底に入っています。外箱にはアクセサリー用の箱があって、保証書とベース調整ドライバーとクリーニングキットが入ってます。

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インサートの紙でJHAudioのクライアントリストが入ってます。この外箱の外周にスペアチップが付いてます。チップはラバーとフォームのMLSが入ってます。チップはロクサーヌと同じように見えます。

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カーボンのケースには豪華なベルベットのポーチが入っていて、その中に2.5mmバランスケーブルが入っています。このポーチがレイラケースになると思います。

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中箱にはレイラが入っていて、3.5mmケーブルが付いてます。レイラはカスタムロクサーヌと同じくフルカーボンシェルで見ると思わず、おお、と出来の美しさに声をあげてしまいます。

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そしてレイラではさらにチタン枠のカーボンフェイスプレートがはめてあります。この部分はジェリーに聞いたところギターのピックをデザインしたということです。チタン枠は光の当たり方で光が変わり、ユニットごとにみな異なるはずです。

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AKR03との比較です。AKR03ではプレートのみカーボンで、シェルはクリアです。レイラは音導穴が3穴でステンレスチューブであることがわかります。

まずエージングゼロですが、ファーストインプレということで音を聴いてみました。装着感はAKR03と似た感じです。チップはラバーのLを使いました。

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まず3.5mmケーブルでAK240で聴いてみます。ベース調整は今回は初期位置から動かしていません。
音はロクサーヌと似た傾向でとても洗練された整った音調です。しかしロクサーヌよりさらに広がりがあり、音が澄んでクリアでシャープです。低音域はないわけではなく、標準位置で十分あります。チップLでけっこうシールされているということもあると思います。またベースのピークがロクサーヌより低い方にあるように思います。ベースはパンチがあり、とても引き締まった感じですね。ぱっと聴いて一言で言うとたしかにカスタムロクサーヌを上回る音質です。
音数が多く、音の遷移がなめらかです。また音の豊かさという点でも優れています。厚ぼったくならない感じで豊かな音です。比較するとロクサーヌは痩せて音が薄い感じです。それだけ聞けばそんな印象ありませんが。。生パーカッションではハッとするような打撃感のリアルさを感じます。情報量という点もありますが、歪み感が少ないのか楽器の音色のリアルさはいままでにないレベルです。ソプラノの伸びの良さも逸品です。
AK120IIではさらにシャープ感があり、楽器音が美しいですね。脚色された美しさではなく、雑味がないというか純粋な美しさです。立体感は際立っていて楽器の分離感はいままで聞いたイヤフォンの中でも最高レベルです。
しかし本当にこれが12個もドライバーが入ってるんだろうか?と思いますね。まるで調和して完全なハーモニーを奏でる小宇宙のようです。
エージング前にちょっとだけ聴こうと思ったけど、ちょっと耳から話せなくなった。聴きなれたAK240やAK120IIでもたびたびハッとしてこれはっていう音再現を聴かせてくれます。なにこのヴォーカルは、なにこのパーカッションはっていう感じでため息が出てきます。

アンジーとロクサーヌは長短があるけれども同じくらいの音質レベルのように思いますが、レイラは完全にいち抜けしてより高みにいます。私が持ってるイヤフォンではカスタムもユニバーサルも含めてさっそく一番の座を奪ったかなとも感じます。しかも完成度が高い、とちょっと興奮気味です。
あれ?もしかして私、エージングゼロのイヤフォンにこんなこと書いちゃった? 笑

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しかし正直レイラは事前情報からモニター的でドライと思ってたんで完全に肩透かしされた感じです。これは完全な性能を誇り、かつ「音楽的な」イヤフォンです。
この前12月にジェリーが来日した時にレイラとアンジーのインタビューをしたんですが、そのときにレイラとアンジーのチューニングの違いを聴いていて、「それはつまりアンジーのほうが音楽的ということですか?」と突っ込んだところ、「ははは、おれの作るものはみな音楽的だよ」って返されてしまったのを思い出します。
ジェリーに謝らないといけないなあ。。

いずれにせよさすが神様ジェリーハービー、すごいイヤフォンを作ってくれました。これこそ本当のリファレンスです。

* ジェリーのFreqPhaseによる位相制御が米国特許を取得しました。
United States Patent no. 8,925,674, issued on Jan. 6.
PHASE CORRECTING CANALPHONE SYSTEM AND METHOD
Jerry Harvey, Apopka, FL (US)
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2015年01月15日

Burson Soloist SLレビュー

Soloist SLは国内ではアユートが販売しているヘッドフォンアンプです。こちらに製品リンクがあります。
http://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_1500.php

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DACは内蔵していませんので、他にCDプレーヤーとかDACが必要になります。アユートさんではAstell & kernシリーズがUSB DACとしても使えますので、それを使用してさらに発展させるためのキーとしてSoloist SLを提案するという形になります。
たとえば話題の平面型ヘッドフォンを試してみたい、というときにはこうした専用の高出力のヘッドフォンアンプがあった方が良いわけです。
もちろんAKシリーズでなくても、普及価格のヘッドフォンアンプとして優れていますので、すでにUSB DACをもっている人で、DAC内蔵アンプを使用している人にもお勧めです。音を一ランク上げてくれます。

* Bursonのオーディオ哲学とSoloist SL

BursonはHeadFiでもよく見かけるブランドで、オーディオマニアに支持されるオーディオブランドです。もともとがオーストラリアのオーディオコミュニティがあって、その代表者がMark Bursonという人だったのですが、オーディオマニアがほしがるような製品をみんなで作ろうということでできたのがこのBursonブランドです。ですので、製品はマニアック志向で、ショートシグナルパス、オペアンプをきらったディスクリート回路設計や強力な電源が特徴です。

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Bursonの哲学としては、シンプルな回路で高品質パーツで音質を引き出し、オペアンプや既成トランスなどを使わないということです。
Bursonのホームページに掲げられている"Less is more"というのは日本語で言うとシンプルイズベスト、ということです。オペアンプを使う方がシンプルじゃないかと突っ込まれることもありますが、オペアンプはもともとPC用の汎用パーツであり、中には複雑な構成物がはいっいるので結局シンプルではなく、またオーディオに必要ない部分も通ってしまうので、はじめからディスクリートで必要なパーツだけ組んだ方がよいというわけですね。
Bursonいわく、機材が透明で音に忠実であれば、テンポ、ダイナミクス、音色は自然に生じてくるもので、元の音に不必要な着色をする必要はないということだそうです。こうした理想を達成するためにはオペアンプは排すべきだというのがBursonの主張です。
実のところ、はじめのHA-160では信号経路に32個の部品を使っていましたが、Soloistではさらに設計を突き詰めて、FETをベースに21個のみのシンプルなコンポーネントで設計されています。これも設計中に少しずつパーツを減らしていくたびに透明感が出てきたということです。
パワーサプライでもきちんとノイズを抑える工夫がなされていますが、そこでもオペアンプが使われていないという徹底ぶりです。
この辺からもBursonがマニアが立ち上げて理想を追求するメーカーと言うことが分かってくるのではないかと思います。

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Soloist SLはSoloistからプリアンプ機能をはずしてヘッドフォンアンプに特化したものです。またステップアッテネーターをはずしてAlpsボリュームにすることで低価格化も行っています。普通のメーカーだと性能を高めるためにAlpsを採用しましたと書くところも多いので、低価格にするためにAlpsにしたっていうところからもこのメーカーの真摯な姿勢が分かると思います。他にシャーシのアルミ外装も少し簡易化していますが、まだまだがっちりとしています。もともとオーバースペックだったものを適性化したという方が正しいと思います。
最大出力も4W/chから2W/chに変更されていますが、2W/chでもまだまだヘッドフォンアンプ全体からみると高出力な方です。実際に平面型のHE560でも十分駆動できます。

* Soloist SLの使用例と音質

今回はAK240をUSB DACとして使用して以下のようなシステムをセットアップしてみました。

まずPC上にオーディオ再生用の音楽再生ソフトが必要です。私は高機能で慣れているのでJRiver Media centerを使っていますが、Foobar 2000でもかまいません。この場合はASIOドライバーならば対応するコンポーネントのインストールが必要になります(JRMCでははじめから組み込んでます)。
次にPCとAK240をUSBケーブルで接続します。これは別売りで購入する必要がありますがUSBマイクロB端子が付いた高音質のUSBケーブルがお勧めです。私はFitear microを使用しました。他にはWireWorldなどでも用意されています。
AK240とSoloistを接続するケーブルはアナログ部分なのでこれも良いケーブルを使いたいところですが、このSoloist SLに添付されているRCAケーブルも意外とよいので、はじめはこれを使っていてもよいと思います。ただしAK240のイヤフォン端子に接続しますので、ミニプラグとRCAの変換プラグが必要です。これはお店とかAmazonで安く購入できます。AK240では設定においてライン出力を選択し、USBの用途をMTPではなくDACにします。

システムとしてはこんな感じです。
PC(JRiver) - USB cable(FitEar) - AK240 - RCA cable(付属) - Soloist SL - HE560

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このシステムにおいてゼンハイザーHD800とHiFiman HE560で聴きました。音楽をありのままに聞きたいときはHD800、少し強調して聞きたいときはHE560などの選択が良いですね。Soloistはパワーがあるので平面型であるHE560もぐいぐいとならせます。仮に音量が十分あったとしても、軽々と朗々となるような感じでないと駆動力不足だと思います。

まず感じる音の印象は透明感の高さで、気持ちよいくらい透明感のひときわ高い音質が堪能できます。
透明感というのも他で感じる単なるクリアさとは少し異なっていて、Soloistの良いところは鮮度感が高いということです。鮮度感というとあいまいではありますが、音に直接触れるような生々しさ、という感じでしょうか。音がベールなしでダイレクトに届く感じです。この辺はBursonの開発哲学のシンプルさが効いているんでしょう。また音色も雑味がなくすっきりとピュアに感じられます。音の立ち上がりとスピードが早いのも特徴でリズムの速い曲も軽快に鳴らしてくれます。
HE560あたりだと低音が深く重く、どっしりとした重量感もあります。中高音域はシャープで突き抜けるように上に伸びてゆく感じで、ヴォーカルはわりと近めに感じられます。楽器やヴォーカルの音は鮮明でヴォーカルの歌詞もよく聴き取れます。
周波数的な帯域バランスは整っていて、強調感をあまり感じません。音色はニュートラルで暖かみや脚色感はありません。もちろん無機的ではなく、味気ないという音ではありません。こうしたアンプはいわゆるモニター的というか客観的に感じられやすいものですが、Soloistは聴く人に近く、音楽の躍動感を届けてくれます。音の広がりは標準的ですが、ここはほかの要素を調整してゆくことでも伸ばすことが可能かもしれません。

他のUSB DACを使用してもまたいろいろと音を変えていけると思います。CHORD Hugoを持っている人にもお勧めです。Hugoは内蔵アンプも強力ですが、Soloist SLを使うことでさらに迫力のある音を楽しめます。
ハイレゾプレーヤーからオーディオ入門してイヤフォンしか聴いていなかったという方、USB DACを購入したけれども専用のヘッドフォンアンプをもっていない方には特にお勧めです。また手ごろな価格でヘッドフォンアンプを探していたという人にもお勧めです。そしてBursonの音に興味があったけれどもいままで高くて躊躇していた、というマニアの方にもBursonサウンドのエッセンスを届けてくれることでしょう。
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2015年01月12日

SONY ZX1用のGloveAudio S1登場

人気のハイレゾプレーヤー、SONY ZX1用の画期的な外付けアンプが登場しました
AK100用の一体型DACアンプ、GloveAudio A1を紹介しましたが、そのZX1版です。これは生産前版なので外観は変更があると思います。名称はX1ではなくS1になります。日本国内でも販売予定です。

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FitEar 彩バランスとGloveAudio S1

ヘッドフォン祭の時にちらっと見せてもらったんですが、そのときは前面シルバーでした。このモデルではさらに磨かれてなかなかかっこよく、高い質感はZX1に合わせてもまったく見劣りしません。

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ケーブルレスでの一体型の取り付けは六角レンチから普通のプラスドライバーになったようです。背面はZX1のふくらみに合わせて段が付けられています。A1とは異なりUSBでの接続になります。内部の回路はほぼA1に沿ったもので、出力も同じで2.5mmとKobiconnのバランス対応です。つまりZX1ユーザーも2.5mmバランスが使えるようになります。S1素晴らしい音質を聴かせてくれ特にバランスは圧巻と言える音再現です。
またあとで詳しくレポートします。
posted by ささき at 23:33 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月09日

ESSから新しいDAC/アンプ統合型ICが登場

おなじみESSの新しいラインナップが発表されました。SABRE9018Q2Cです。

ESSは少し前にヘッドフォンアンプチップも発表しました。
これは低電圧用で最近はよく使われてるDACチップrのES9018K2Mと組み合わせるためのICですが、こんどのQ2Cはこの二つを統合したもののようです。全部入り、という感じで一発で使うものなのでしょう。名前もESxxではなくSABRExxが冠されてます。

用途としては高音質スマホがまず考えられますが、低電圧で従来よりコンパクトに設計できると思うので、iPhoneのライトニングポートにさしてMMCXコネクターを持った交換ケーブル、なんてのも欲しいところです。

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2015年01月06日

Naxosがワールドワイドでハイレゾストリーミング

Naxosが月曜からハイレゾストリーミング配信を開始しました。US$14.99のサブスクリプションです。
ポイントはワールドワイドであること、192Kまでのアダプティブ方式であること、モバイル対応であること、作曲家や指揮者などクラシック対応の検索エンジンを持ってること、などです。
アダプティブ方式はOraStreamの技術提供のようです。

OraStreamとアダプティブ方式・スケーラブルロスレスについては前に記事を書きましたので下記リンクをどうぞ。




posted by ささき at 09:06 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月01日