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2014年10月07日

WestoneのカスタムIEM、ES60レビュー


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Westone ES60とは

Westone ES60は老舗のイヤフォンメーカーであるWestoneのカスタムIEMです。IEM(In Ear Monitor)は日本で言うところのプロ用のイヤモニですが、高性能なのでオーディオマニアにも好まれています。IEMは基本的にはイヤフォンですが、設計目的がミュージシャンのモニター用と言う点に特徴があります。
カスタムIEMとは個人の耳型に合わせて特注するもので、それに対して店で一般的に売られているイヤフォンはユニバーサル(汎用)タイプと言います。ES60は現行のWestoneカスタムIEMのフラッグシップモデルです。W60はユニバーサルタイプのフラッグシップです。カスタムIEMは単にシェルを耳に合わせるだけではなく、音導菅の長さも個人に合わせて作るので最高の音質が得られます。

ES60の発音体の構成は片側6ドライバーの3Wayです。これはつまり高音域、中音域、低音域の3つの周波数帯域(3Way)にそれぞれ2つの発音体(ドライバー)が割り当ててあるということです。この方式自体はユニバーサルのWestone W60でも取られていますし、他のカスタムIEMでも採用されていますので珍しいことではありません。ひとつの帯域に2つのドライバーを割り当てるメリットとしては、ひとつのドライバーの負担が減るので歪み感も少なくなることだといわれています。
6ドライバーのカスタムはWestoneでは初となります。ちなみに周波数特性は8kH - 20kHz、インピーダンスは46Ωです。インピーダンスはカスタムIEMとしては高めですが鳴らしやすさに問題はありません。

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私はこのひとつ前のWestoneのカスタムIEMとしてES3Xを使用していました。ES3Xは2009年1月頃に発表されたものでこの当時のフラッグシップモデルです。わたしの書いた記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/114308257.html
もともとカスタムIEMはプロ用とは言われていますが、WestoneではこのES3Xからイヤモニをプロ用とコンシューマー用を両立させるとしていました。(次の年の2010年にはShureもSE535で同じようなプロ・コンシューマーラインの統一を表明しています)
また同時期のカスタムとユニバーサルは兄弟関係になることも多く、ES3XがWestone3の兄弟であったようにES60もまたW60の兄弟であろうことは型番やドライバー構成からも推測ができます。ただしWestoneに聞いてみたところ、ES60とW60のドライバーは同じだけれども、音質は直径や長さ、音の出口など設計のさまざまな要因により変わるものであり特にES60のようなカスタムはユーザーに合わせて設計するためにまったく異なったデザインアプローチが必要になる、ということです。
実際にES60は単にW60のカスタム版なのか、ということについては続く記事をご覧ください。

注文について

カスタムIEMは個人の耳型を取得して個人に合わせて製作するので、まず耳型の取得が必要です。またシェルにはさまざまな色やデザインの指定が可能です。これはもともとステージで他のバンドのIEMと間違わないためでしたが、いまではカスタムIEMの個性を発揮する魅力ともなっています。
このようにカスタムは特徴品であるゆえに、カスタムの注文と言うと耳型の取得と英語でのやり取りが大きな障害になっていたと思います。しかしWestoneについては代理店のテックウインドが注文を受けてくれますので安心して注文することができます。もちろんオプションの指定も日本語でかまいません。
こちらにテックウインドの注文ページがあります。
http://www.tekwind.co.jp/products/entry_11576.php

また大きなニュースとしては大手販売店のビックカメラでもWestoneのカスタムIEMの注文を受けてくれるようになったということがあります。これはビックカメラの3店舗に限られますが、カスタムiEMを身近なものにしたという点は大きいと思います。詳しくは下記のテックウインドさんのホームページをご覧ください。
http://www.tekwind.co.jp/information/WST/entry_294.php

オプションについて

まず上記注文ページからオーダーフォームをダウンロードして、プリントして注文を書きこみます。これはES60だけではなくESシリーズでは共通の手順です。

1.本体カラー
全62色から好みの色を選ぶことができます。また左右違うものにすることもできますので右を赤系にするなど即座に分かりやすくすることも可能です。
私は前回のES3Xでもそうだったので左右ともSmokeを選びました。

2.ケーブル
標準ではWシリーズと同じWestoneのEPICケーブルですが、オプションで極細132mm MMCXというのも選べます。
EPICはW60に付属していたので、ここは別な極細ケーブルのオプションを頼んでみたところ、来たのはなんと私がよく書いているところのデンマークのEstron Linumでした(Westoneではオリジナル製品としています)。W60とLinumの相性は良く、もともとこれにリケーブルしようと思っていたのでちょうど良い選択でした。ケーブルは好みもありますが、このオプションはお勧めです。これも後で書きます。

3. フェイスプレート
オールクリアのシンプルなものを好む人もいますのでこれは完全に見た目の問題ですが、フェイスプレートもあった方がデザイン的にはカスタマイズされた感は強まります。
カーボンやウッドなどさまざまな素材や、Abloneなど貝をイメージさせる鼈甲のようなシェルもあります。また表面にはロゴがプリントできます。カスタムロゴもここで指定できます。素材がReflectionの時はロゴもレーザーエッチング(彫り物)となり、この時はカスタムアートは指定できないなど組み合わせで注意事項がありますので注意してください。
実際、カスタムIEMの注文ではここが一番悩ましく、一番面白いところでしょう。カーボンは最近のはやりですが、私はちょっと変わったSilver Carbonにしてみました。

4. ロゴ
私は両方ともWestone+モデル名でロゴカラーはカーボンの黒に映える白としました。
しかし、Silver Carbonだとちょっと白と干渉することがあるので、フェイスプレートは黒のみのカーボンの方が良かったかもしれません。
またロゴの代わりにイメージを送ってそれをペイントしてもらうこともできます。

耳型取得について

もし販売店から耳型取得について指示があった場合にはまずそれに従ってください。
私の場合は東京ヒアリングケアセンターの大井町店に行きました。東京ヒアリングケアセンターは青山と大井町にありますが、もともとは大井町店の方がはじまりで、店長さんは某大手企業出身でこの道19年のベテランです。大井町店はちょっと駅からは遠いのですが、青山より予約は取りやすく行ったさいにいろいろとオーディオ話をするのも楽しみの一つです。
耳型を採取するときには口の開け方に工夫が必要です。これで出来上がる耳型のフィットが変わってきます。これには採取するところでいろいろと方法があります。以前は東京ヒアリングケアセンターではお箸を使って口をあけていたのですが、今回は1インチのバイトブロック(バイトは噛む)を使いました。これはメーカーであるJH AudioやUEが文書で指定してきた方式で、1インチのブロックを縦に噛みます。なおヴォーカリストが採取する場合にはこれではなくもっと大きなブロックを使うそうです。

なお耳型取得をする際には行く前にまず耳掃除をすることと、絶対に自分では耳型を取らないということが重要です。


到着と開封

9/2に注文して、届いたのは9/27でした。
カスタムはプロ向けなので化粧箱には入っていません(他のメーカーも同じです)。段ボールに直接オレンジ色のケースが入ってきます。
同梱物はオーナーズマニュアル、クリーニングクロス、クリーニングキットなどです。またケーブルはマネジメントリングというプラスチックのループに巻きついて入っています。

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オプションは指示通りに抜けもれなくされてきました。さきにも書いたようにオプションで極細ケーブルを選んだところ、私のよく使うEstronのLinumケーブルと思われるケーブルが入っていました。ただメーカーに聞いてみるとあくまでWestoneモデルだということなのでなにかOEMとして特注のポイントがあるのかもしれません。いずれにしろチョーカー(ケーブルを締める部分)についた赤青のLR表示などベースモデルはあきらかにEstron LinumのMMCX仕様だと思います。Estronは下記リンクでも記事にしましたが、軽くて音もよいのでW60にもよく使っていました。そういう意味ではW60+Estronの音に慣れているので比較もしやすかったと思います。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/393184677.html

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カスタムでいつも届く前に心配するのはシェルがうまく耳にはまるかということです。これはうまくぴったりとはまりました。はめるときは3次元的に少しひねるようにするとうまく入ります。作る時の1インチバイトブロックの使用も良かったかもしれませんが、Westonならではの工夫もあります。
Westoneでは耳に入る部分が体温で柔らかくなる独自のフレックスチューブを採用しています。これがフィット感を一層増しているポイントです。フレックスチューブは耳にはいる部分が体温によって変化する素材を用いているため、耳に挿入するとその部分が柔らかくなり耳穴に密着します。これは快適性と遮音性をともに向上させます。

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またフレックスチューブのメリットはリスナーが動いた時に発揮されます。人の体ではあごや頭が動くと耳の穴も同時に変形します。通常の硬いシェルであれば耳穴が変化しても追従できませんが、フレックスチューブの場合はリスナーが動いて耳穴が変形してもそれに追従して柔らかくフィットするというわけです。これで抜群の遮音性を確保します。
実際使ってみるとES60はおそらくカスタムIEMの中でも随一の遮音性を持っていると思います。いかにもカスタムIEMを使ってる感を堪能できるでしょう。反面でかなりまじめに周りの音が聞こえなくなるので注意してください。

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ES3Xでもそうでしたが、他のメーカーと比べるとES60はシェルのフェイスプレートにやや厚みがあるのが特徴ですが、これは多少かさばりますが外す時に指がかりになるのでとても着脱はしやすくなります。
フェイスプレートのシルバーのはいったカーボンはなかなか個性的です。フェイスプレートからはMMCXプラグも出ています。

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UEは2007年に私がUE11を注文した時に比べると2010年のUE18ではシェル作成では劣化した感があったので、ジェリー離脱の影響があったのかもしれませんが、Westoneは2009年のES3Xとはそう変わっていないように思います。ただフレックスチューブ部分にやや気泡がありますが、これは素材上仕方ないのかもしれません。他の部分のシェルは良い出来だと思います。
音が出る穴は2穴ですが、出口ではまとまって一穴で少し深くなって二穴になるタイプです。

音質

最近はWestone W60をEstronでリケーブルして、AK240で聴くというのが定番でした。そこでW60をそのままES60に変えて、ES60に付属してきたオプションの極細ケーブル(Estron)でAK240で聴いてみました。ケーブルとDAPは同じということになりますね。(ケーブルは少しエージングさせてから聴いています)
そうした意味で純粋にイヤフォンとしての性能変化がよく分かったと思います。

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ES60で聴くと、一聴してハッとするほどの高音質だということがすぐに分かります。音が想像より良すぎてちょっと驚くって言った方が良いくらいです。
はじめはドライバー構成も同じであろうW60にカスタム化して毛が生えたものかと想像していたんですが、すぐにそれはちょっと違うぞ、と思いました。つまりW60も音質面では相当評価は高いし、中身のドライバーは同じ構成だろうからそれ以上は難しいだろう、W60をカスタムにして低音のシーリングが良くなって、というくらいに考えていたわけです。しかしW60からの音の変化はよく聞けば違うというレベルではなく、かなりはっきりと良くなっています。特に音のクリアさ・透明感の高さと空間表現力はまるでDSP信号処理機能が追加されたかと思うほど大きく違います。
そして聴き進めていくと、基本的な中高域での解像力の高さ・情報量の多さ、バランスの良さを崩さない低域の豊かな迫力と言ったW60の良さも兼ね備えていることが分かります。

まずES60を特徴づけているのは一聴して気がつく際立つ透明感の高さと独特の立体的な音場再現です。これは他のIEMと比べてもトップレベルだと思います。W60でも音の広がりの良さに圧倒されましたが、ES60はさらに左右が平面的に広いだけではなく、3次元的な包まれる感じが独特です。立体感とヴォーカルや楽器の位置にかなり奥行きがあります。空間の広がりが三次元的でコンサートホールに居るみたいというか、DSPでホールモードを選んだようです。それでいて遠くに聞こえるかというと、そうではなく耳との距離は近めで迫力があります。ライブ会場にいるかのような生々しさと芯のある力強さを感じます。大編成のアカペラヴォーカルなどは重なり合わせが感動的で、バランスでないのにバランスのようなというか、イヤフォンをつけてるというよりヘッドフォンのような感じでもあります。ちょっと独特ですね。
おそらくはこの音の広がりと楽器の立体感はなにか音導管の長さかなんかで位相の調整をやってるのかもしれません。この辺はカスタムの利点を生かしてなにか個人個人の耳に合わせてあるのではと思います。

そしてW60を大きく超えるのは抜群の透明感です。このクリアさと鮮明な音再現がES60の際立った特徴と言ってよいかもしれません。透明感が高いだけではなく、さきの空間表現ともあいまってとてもクリアで見通しの良い音空間が広がっているという感じです。またW60よりも音調がやや明るめに聞こえます。
中高域の解像度はW60的に良く、全体に厚みを与えています。この情報量の豊かさと、空間の透明感の高さ、そしてカスタムならではの遮音性が高くなったおかげでさらに細かく小さな音まで分かるようになったと思います。よく雑踏の音が音楽の効果音で入っていますが、その街の音のざわめきや雑踏や金属音など情報量に圧倒されます。

また音と音との間の空隙が分かりやすくなったことで、音の立ち上がりと立ち下がりがよりスムーズに分かるようになりました。楽器の鳴り、ヴォーカリストがふうっと息を継ぐ音、ちっと唇を鳴らす音の艶かしさ、艶っぽさは一級だと思います。
ピアノの響きの良さは音質の良さを測るものさしのひとつでもありますが、ES60でも鳴りが鮮明で歯切れよくかつ美しく感じます。楽器音はニュートラルからちょっと美音がかったとても良い鳴り方をします。ただこれはケーブルの個性も入っていて、もっと音色をニュートラルにしたければケーブルを変えるとそのように変わりますので、もともとの着色感はあまりないと思います。
全体的に滑らかで音楽的でもあり、ここはW60というかES3Xでもそうでしたし、Westoneの良い伝統を引き継いでいると思います。

これは透明感の高さにも関係しますが、ヴォーカルというか人の声がものすごく聴きやすいというのもES60の特徴です。
後で書くようにiPhoneでも音楽再生を試聴してみたのですが、そのとき英語の勉強にも取り組んでたので、音楽ばかり聞かないでiPhoneアプリで英語の聴き取り問題もやらなきゃと思って、イヤフォンをW60に戻すのもなんだからそのままES60で聴いたんですが、これがびっくりしました。すごく明瞭に発音の違いがわかります。いままで使ってたW60との差は唖然とするほどです。これは冗談でなく、くっついて聞こえがちな細かい発音のニュアンス(特に慣れてないイギリス英語など)がはっきりわかります。空間の見通しがよく晴れ上がっていることもありますが、ひとつひとつの発音の音の形が明瞭で鮮明さがあります。これだけ人の声が明瞭に聞けるイヤフォンは他にはないんではないかとさえ思いますね。

低域もW60よりさらに改良されています。W60のようにベースのインパクトもあるのでロックもカッコ良く、オーバーになりすぎずパワーを感じられます。カスタムになって低域が多くなったわけではなく、あくまでW60の良さであったバランスの取れた音です。そしてカスタムのシーリングの高さゆえか、ベースの深みはより深く沈んで聞こえます。
あとでも書きますが全体にガッチリとソリッドなので、ドラムスのインパクトがあります。W60でのウイークポイントはややベースが膨らみがちな低音域でしたが、ES60はシャープというか、かちっとしています。パーカッションやドラムの打撃音は鋭いですね。ここもW60から良くなったところです。

高音域がよく伸びてきつくないのはW60でもあった美点ですが、ES60はその上品な高音域に加えてさらに輝き感が感じられます。これは高音域だけがシャープなのではなく、全体的にW60に比べると音がソリッドというか強固になっているからのように思えます。
W60に比べると全体に音がよりソリッドに芯が強くなっているので、高域では輝きが増し、中音域では発声が明瞭となり、低音域ではインパクトがあるように感じられます。そのため音楽のテンポのきざみもしっかりとしてよく、ノリも良く感じられます。低域が歯切れよくなった感もあります。
激しいロックを聴いてもオーバーパワーになりすぎずにインパクトフルでスピード感も良いですね。

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全体に能率はよく、ならしやすさに問題はありません。W60よりボリューム位置は低いのですが、カスタムで遮音性は良いのであげなくても良いということもあります。

私はレコーディングとかアーティストに向いているかは分かりませんが、余分な誇張感がなく、これだけ明瞭に録音の機微まで洗い出せるなら十分使えるのではないかと思います。

最近ES60で聴いていて思ったのは音源の質がよくわかるということです。MP3やAACなどのロスする圧縮音源とCDリッピングなどのロスレスではヴォーカルや楽器の鮮明さ、全体の空気感が違うのがはっきりわかります。配信のハイレゾでは音楽の豊かさからより音楽が描き出す世界に没頭できます。
実のところそれがこの前のうちのブログで「ハイレゾとは」の記事を書くきっかけとなりました。BAドライバー機は高域で20kHzを超えることは難しいため、ハイレゾ対応のロゴがつくことはないでしょう。しかしカスタムIEMの抜群の遮音性がもたらす静粛性とBAドライバーの細かな音の描写はハイレゾ音源の良さを堪能させてくれます。
ES60は真の意味で「ハイレゾ対応機」と言って良いのではないでしょうか。

リケーブルとDAPとの相性

DAPとの相性でいうと、やはりAK240がベストです。これは特にEstron Linumをベースにしたと思われる標準ケーブルのときにはやや暖かみが乗るのでAK240と合いやすいということもあります。EstronでもBaXなどを使うときはAK120IIが良い選択となってきます。

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また、このときにはZX1やCalyx MのようなHiFi硬め系もあうようになります。これらにはニュートラル系のケーブルか、銀線系を合わせることでDAPの性能が上がったかのような感覚を得られるでしょう。
iPhone6から直で聴いてみたところ、まるでiPhoneが高性能DAPになったかと錯覚するくらいです。iPhoneでもよくあいますね。

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EPICケーブル

またWeston標準のEPICケーブルにすると音場再現は減退してしまいますが、音のシャープさはそう悪くはありません。また着色感はEstronより少ないこともありますし、ケーブルは好みの問題なのでEPICのほうが好きという人もいるかもしれません。ただ個人的には極細オプションをオススメします。Estronは独特の軽さも良いですが、絡みやすくなるので注意ください。

他のカスタムIEMとの比較

それではES60は音質レベル的にはどのくらいか、ということで他のトップクラスのカスタムIEMと比べてみます。
まず同じく片側6つドライバーということで音に慣れているUltimate EarsのUE18を使います。比較で同じ条件にするために2pinのEstron Linumをつけて、同じケーブルで同じAK240で比べてみます。
比べてみるとES60のほうが音空間が広く、楽器の明瞭さも上です。UE18はES60と比較すると全体に透明感が劣って曇り感があり、音のエッジも鈍って甘く聞こえます。低音域もES60のほうがインパクトが強く迫力があります。また装着感もES60のほうが上で、遮音性もより高いとおもいます。これはES60のほうが最近の耳型ということもあるかもしれませんが、やはりフレックスチューブなどの良さだと思います
まあUE18も音は悪くないと思っていたんですが、最新のES60と比べるとやはり音質はひと世代分は違いますね。

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ES60とUE18

それでは最新のものと比べてみたら、ということで同様に2pinのEstronをつけてケーブルとAK240を同じくして、1964EarsのV6-Stageと比べてみます。
こちらも最近ES60と同じところで取った耳型ですが、比較するとややV6-Stageがフィットが甘く感じられます。ただV6-Stageだけで考えるとそうは感じません。耳の中でそう感じるので違いはやはりWestoneのフレックスチューブかもしれません。ただシェルはV6Sのほうが薄くコンパクトに作られているように思います。ややWestoneはシェル大きめなのがわかります。
音ではES60と比べるとV6-Stageは全体にこじんまりと音空間が小さめです。V6-Stageはそれだけ聴くとかなりクリアに思えましたが、ES60と比べるとややクリアさに劣り、楽器音のシャープさに関してはES60のほうがかなり明瞭ではっきりとわかります。ES60は電気オーディオ的にいうとSN比が高いという感じですね。音のあるところとないところがすごく鮮明です。もしかすると遮音性の高さもかなり貢献しているように思います。

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ES60とV6-Stage

前の記事でV6-Stageはヴォーカルが聴き取りやすいって書いたんですけど、それを上回るES60のヴォーカルの明瞭さはちょっと別格レベルかもしれません。低域はV6-Stageのほうが控えめで、これは好みもあるかもしれません。
V6-Stageもシェルの作りの良さも含めてコストパフォーマンスはよいとは思いますが、絶対的な音性能ではやはりES60に軍配が上がります。シェルはES60の方がややかさばりはしますが、遮音性はES60のほうがかなり上です。


まとめ

けっこう気に入ったので長々と書いてきましたが、簡単バージョンで書くと、Westone ES60は現行カスタムでもトップレベルの音質で、音がクリアで立体的、楽器や声がメリハリがあってシャープで鮮明に聴こえる点が特徴です。またカスタムIEMとしての遮音性も抜群です。

少し付け加えると、ES60は音的にはW60の生々しい中高域の解像感や低域の迫力をうけついで、音場はさらに立体的で、そしてW60にない明るくクリアな音空間を提供しています。またW60より音がタイトで締まっています。
はじめはW60をカスタムにして毛が生えたようなものだろうと思っていましたが、実際のES60はそんなものではない凄さがあります。W60の遺伝子はあるけど別のレベルのモンスターです。AK240とよくあい、あのAK240の能力をさらに一回りアップさせられます。

W60との比較でなしに聴いても、際立つのは透明感の高さと音の明瞭さ、独特の音場再現です。カスタムとしてのフィットも抜群で遮音性はおそらくカスタムIEMの中でもトップでしょう。W60から引き継いだ美点の大きなものは音楽性です。もっともこれはW60というより、Westoneの良さであり、WestoneのDNAです。
私は前にも書いたようにES3Xを2009年から使っているのですが、Westoneにそのころから今までのカスタムIEM製作においての進歩は何かと聞いてみたところ、やはりドライバーとクロスオーバー設計の複雑さはかなり大きく変わったと言っていました。つまりはよりノウハウが必要なわけです。

改めて思ったのはカスタムイヤフォンの設計はドライバーだけではないということです。
なんでES60ではこんな良い音が出るのか、なんでこんなにクリアなのか、よくわかりません。私は最近はW60を気に入ってよく聴いてただけにちょっとショックを受けたくらいです。W60とどうせドライバーは同じだろうなんて思っていた私みたいな技術おたく系は敗北感を味わってしまいます。普通入手できないような特殊レアメタルを内部線材に使ったんじゃないかとか、小さいDSPが隠してあるんじゃないかとさえ思いますね。
ここにはカタログの売り文句となるような「スーパーXXサウンド技術」というものはなく、Westoneの音質担当者は単にひとこと、「それは経験さ」と言うでしょう。
W60の記事でも書きましたが、それはWestoneの歴史、膨大な数のイヤピースを製作してきた経験ですね。老舗のWestoneならではの熟練した設計の妙と経験を改めて感じさせます。

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今年はWestoneの当たり年でした。
W60の記事を書いていた時は、音はよいけど高いし地味なので販売は大丈夫かなと思ったこともあったのですが、W60はかなりバックオーダーを抱えるほど売れているようです。派手なカタログ言葉がなくても良いものが売れる日本の市場は成熟していると思います。そしてES60も聴けば良さがわかると思います。ヘッドフォン祭などの機会にぜひ試聴してみてください。
posted by ささき at 22:17 | TrackBack(0) | __→ Westone ES3X カスタム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする