最近私がはまっていることといえば、BandCampでお気に入りのアーティストを見つけることです。
いままではタワーレコードに行って新譜を試聴しながら同じことをしていたわけですが、いまではそれが家でできます。
以前フランスのPrikosnovenieやアメリカのProjekt、そして欧州Pagan音楽系のマイナー音楽を紹介しました。
Prikosnovenieレーベルの紹介ページ
Projektレーベルの紹介ページ
古い神話の国の新しい音楽
私はこういうマイナー・インディー系レーベルの音楽もよく買うんですが、問題もあります。まずCDを海外通販すると送料が高くつくということです。また海外のようにCDがなくなるのが現実味を帯びてくると、配信の必要性がまして来ますが、大手メジャーレーベルは良くともかえってこういうマイナーレーベルでは配信サイトの運営に難がありそうと感じていたわけです。
Bandcampとは
BandCampは主にそうしたマイナー・インディー系レーベルのための配信サイトです。そういう点では日本でいうとe-Onkyoよりototoyに近いと思います。どちらかというと音楽が好きなマニア向けですから、必然的に扱っている音楽ジャンルも少し偏りが出てきて、たとえばストレートなジャズやクラシックもありますが、BandCampではジャズやクラシックでもアバンギャルドや実験系が多くなります。多いのは広くエレクトロニカ系、オルタナ系、インディーポップやロック、またジャズでもユーロジャズやエレクトロニカに近い系(たとえばGoGo Penguin)などです。クラシックでも現代音楽はあります(たとえばBang on the Can)。
BandCampのトップページはここです。
https://bandcamp.com/
BandCampはもともとCD通販がメインだったと思いますし、グッズなども販売されていますが、いまの主はデジタル配信だと思います。配信形式ではMP3の他にFLACやALACでも配信されていて、落として見るとデータのなかにはハイレゾもあります(48/24や44/24など)が特に明記されていません。また配信を購入すると同時にiPhoneなどの専用アプリでストリーミングも可能です(これもOTOTOYみたいな感じ)。
CDでは売り切れでも配信は可能で、価格は$5-$10とだいぶ安く設定されています。またアルバムではなく、シングルでも購入は可能です(アーティストによる)。支払いはPaypalです。
BandCampでまず面白いのは買い手が値段を決められることです。たいてい価格ではクラウドファンディングのように$7 or moreと書いてあります。つまり最低価格以上ならいくらで買っても良いんです。気に入ったら$7を$10出しても構いません。面白いのは$0以上というアルバムもけっこうあります(you name it"あなたが決めて"と書いてあります)。サンプラーはもちろんですが、ミュージシャンによっては普通に「あなたが決めて」販売してます。もちろんいくら払っても構いません。ただし0円で買った場合はストリーミングオプションが適用されませんし、多くはアーティストのメーリンググループ登録が必要となります。条件なしで無料の場合はFreeと書いてあります。
なかにはor moreという表示がなく、定価で$10というものもあります。この辺はミュージシャンしだいですね。
また売り上げは全ていったんミュージシャン(あるいはレーベル)のものとなります。Paypalの支払先は直接ミュージシャンです。そのため価格は現地通貨ですので注意してください。そこからPaypalが4%引いて、BandCampが15%取ります。(そのためアルバム買いではなくシングル書いをするとアーティストへの実入りが減ります)
またBandCampでは試聴がたっぷりと出来ます。というかアルバム全部聴けるというのが普通です。なかには1-2曲のみというミュージシャンもいますが、いずれにせよ一曲はまるまる試聴できます。
実際アーティストはインディーズ以外に学生とかアマチュアもみられて、そうした人が自分の曲を売るのに使っています。そのため質は玉石混交ですので、試聴はたっぷりした方がよいですね。タワレコだとバイヤーが一次フィルターになって良いものを入れてくると思いますが、ここは本当に直接ミュージシャンに接すると言ってもよいでしょう。
そういう意味でBandCampはSNS的な側面があります。曲を買うときにはコメントが残せますので、良かった、とかこの曲聴いてこんなこと思った、などいろいろ書きこめて直にミュージシャンに伝わります。また買ったミュージシャンは自動的にフォローされるので、新曲の情報はメールで分かります。またBandCampでユニークなのはファン同士がフォローできるということです。これは次に説明します。
Bandcampの歩き方
さて、Bandcampでまず困難にぶちあたるのは、どうやって曲を探すの?という点です。
一番良いのはすでにこうしたバンドを知っている場合、その名前を検索してください。上のジャンルに合うような欧米のマイナーバンドです。たとえばMirablisとタイプすると、Mirablisのアルバムがリストされ、さらにProjektレーベルがたくさん他にBandcampで売られていることが分かります。Projektレーベル以外のアルバムを探すには、下にタグがありますのでそれをクリックしてください。たとえばGothicとかAlternativeなどで同傾向のバンドが出てきます。もしバンド名が分からなければ、検索欄に直接post rockとかelectronicaなどのキーワードを検索欄にタイプします。するとそれにタグつけられたリストが出てきます。これを芋づる式にやっていきます。また、DiscoverリンクではいまBandCampで売れているバンドを探すこともできます。
あとはBandCampならではの方法はSNS的な広がりです。Bandcampに登録している買う立場の人(我々)はFanと言います。BandCampに登録した時のアカウントがFanのアカウントになり、自分のページをもちます。そこに購買したリストやWish listが見られます。これらはデフォルトは公開です。Bandcampでアルバムを買うと自動的にそのアーティストのFanとして登録されます。そしてBandcampにいると定期的にお勧めのアルバムとともにお勧めのFanのリストが出てきます。つまりアーティストだけではなく、他のFanもフォローできます。フォロー関係はtwitterに似ています。また自分をフォローしてくれる人が出てきます。
たとえば自分をフォローしてくれた人はたいてい自分と好きな音楽傾向が似ています。その人の買ったリストを見ていくとだいたい自分も買うようなもので、それをAmazonのお勧めリンクのようにシステムが解析して、お勧めFanのリストを送ってくるわけです。ですのでフォローした/されているFanの買ったアルバムを試聴していくとけっこうはまります。またミュージシャンの新譜だけではなく、フォローしているFanの購入履歴もメールで送られてきます。そうするとこの人はこれ買ったのか、よし聴いてみよう、となるわけです。この辺は学校で友達同士で最近どんなミュージシャンの曲買った?なんて話すのと同じです。なかには私が買った曲もあって、ああ私の買ったの見てこの人も買ったんだ、ということもあります。この辺がBandCamp使いこなしのポイントの一つです。
BandCampでの購入方法
購入についてはそのアルバムのページに行き、配信であればDigital Albumのところを探してその下のBuy Now $7 or moreと書かれたBuy Nowのボタンを押してください。(CDと別にあることが多いので注意ください。たいてい価格が高い方がCDです。)
シングルの場合は曲の横にマウスをもっていくとDownloadとボタンが出てくるのでそこを押してください。(ない場合もあります)
するといくら入れるか聞いてくるので、金額を入力してください。前に書いたように表示が$7でもとても気に入ってたら$10と入れてかまいません(低い金額はだめです)。あるいは全額募金の場合もあるのでその趣旨に賛同するときは多く入れても良いでしょう。
金額が書かれてなくてname your price とあれば、0以上です。ただし0を入れると多くの場合は無料リンクを別にメールで提示され、MLへの参加のためのメールアドレスを聞かれます。
金額を入力したらPaypalの画面になるのでPaypalのパスワードを入れて支払いをしてください。
最後にダウンロード画面になります。ここでダウンロード形式をFLACとかロスレスに変更すると良いでしょう。MP3がよければそのままでよいでしょう。少し時間があってダウンロードの準備ができるとリンクが表示されます。
またここでそのミュージシャンお勧めの他のミュージシャンのリンクが表示されるので、そこに飛んでも世界を広げられます。
BandCampのお勧めアーティスト
私のお勧めアルバムを10枚ほど紹介します。
Adrian H & wounds
debut
https://projektrecords.bandcamp.com/album/debut-2
前に書いたProjektレーベルの新作で、くせになりそうなユニークなヴォーカルスタイルと世界観をもった個性派バンドAdrian H & wounds。ゴシックやオルタナ好きの人に。
Alex Cook ensemble
The Deacon of Myrká
https://alex-hler-ensemble.bandcamp.com/
作曲を学ぶ学生であるAlex Cookがバレエのために書き下ろした作品。荒削りながらも感動的な作品で、アコースティック楽器主体だけれども適度なエレクトロのブレンドもよい。これはname your price で0円から好きなだけ。
Tiny Leaves
A Good Land, An Excellent Land
https://tinyleaves.bandcamp.com/album/a-good-land-an-excellent-land
もともとアンビエント系音楽を書いていたTiny Leavesによる端正で美しい室内楽。ジャケットのイメージ通りの自然を生楽器により描き出す心象風景が見事です。7曲目がお勧め。
GoGo Penguin
v2.0
https://gogopenguin.bandcamp.com/album/v20
ユーロジャズだけど、もっといま風のエレクトロニカ的な解釈がはいって、いわばポストロックに対するポストユーロジャズみたいな感じ。スピード感があってノリが良い。かなりお勧め。
Zoe Keating
Into The Trees
http://music.zoekeating.com/album/into-the-trees
クラシックのチェリストだけど、現代的でかつポップな曲を多く書いています。BandCampでもわりと人気の高いアーティスト。
Rhian Sheehan
Stories From Elsewhere
https://rhiansheehan.bandcamp.com/album/stories-from-elsewhere
基本アンビエントの人だけど、ポストクラシカル的なドラマ性が良い。美しい音楽好きな人に。
Julia Wolfe feat. Bang on a Can All-Stars
Steel Hammer
https://cantaloupemusic.bandcamp.com/album/steel-hammer
いわゆるBang on a canの尖った現代音楽グループによる尖った音楽。ミニマル好きな人に。難しいというより癖になります。この系統では私はDavid Langがわりと好き。
Mili
MuNiCa - Cry of Pluto
https://project-mili.bandcamp.com/album/munica-cry-of-pluto-original-sound-track
BandCampで人気の高い日本のエレクトロニカバンドMiliのストレートなエレクトロニカ。サントラらしいドラマティックな展開が良い。BandCampの日本のバンドだとkaninaもよい。name your priceです。
KING CRIMSON tribute The Letters
Mellow Records
https://mellowrecords.bandcamp.com/album/king-crimson-tribute-the-letters-3cd
イタリアのプログレレーベルのMellow Recordsによるクリムゾントリビュート。私は9曲目のEpitaphの壊れ具合が好き。
他にもイエス、フロイド、ジェネシスはもとよりVGGやカンタベリーものトリビュートなどネタが豊富。BandCampはオールドロックが少ないのでわりと貴重かも。
... and darkness came
https://headphonecommute.bandcamp.com/album/and-darkness-came
87曲で$10、FLACで2.8GBというCDではありえないコンピ。アンビエント・エレクトロニカ好きの人に。Helios、Nils Frahm、Max Richterなど日本でも有名なアーティストをはじめとしてたくさん入っています。これは100%を2012年のハリケーン・サンディ災害の募金に当てられます。
あとはページの左下にtagがありますので、そこをクリックしていけばいろんな音楽に出会えると思います。
Bandcampの世界をお楽しみください !
Music TO GO!
2014年10月29日
2014年10月27日
ヘッドフォン祭2014秋レポート
今回のヘッドフォン祭も盛況で、さまざまな製品が集結しました。
以下、トピックごとにまとめてみました。
* SONY技術者の情熱
まず今回思ったことはソニーという会社の影響力と、モノ作りの情熱から飛び出した製品です。
はじめはソニーエンジニアリングがJust EarというブランドでカスタムIEMを発表したということです。
これはハイブリッド(BA+ダイナミック)のカスタムIEMで、ユニークな点は耳穴に入る部分はWestoneのフレックスチューブのように体温で柔らかくなる素材でできています。
Just Ear
リスニング・モニター・クラブとあらかじめ3種類のチューニングがなされていて、実際に聴いてみるとたしかにそれぞれ特色のある味付けがなされています。20-30万を予定しているということで、一般にも販売するということです。
Just Ear
もうひとつはRE・LEAFという昨年出来たベンチャーでソニーの技術の人と営業の人が共鳴して良いものを作りたいという目的の元に始めた会社です。大企業では仕方のない制約がない製品をやりたいということでノーリミットを目指しているそうです。具体的には良い録音が増えている中でストレートで原音忠実を目指すけれども、情報量は多くともピュアで、多少は設計者の意図を入れたいということです。
もうひとつは町工場の技術を活かしたいということです。匠の世界を作りたいということでMade in Japanの再生から世界一、世界初を目指したいということでした。これには生まれ育った大田区の町工場に良い技術があるのに減っていくのが忍びないという気持ちが含まれているということです。
RE・LEAF E1
なぜヘッドフォンアンプかと聴くと、ヘッドフォンの世界にわかっていただける人がいる。あとヘッドフォンの世界には(マークレビンソンのような)ハイエンドがないのでそこを目指したいということ。
製品はDAC内蔵のE-1という機種で150万円、月産1-5台ということです。鏡面仕上げのモデルもありました。12月中旬くらいに出荷を目指しているようです。底面はすごいスパイクがついていて、このスパイク一つでもかなりのノウハウが注ぎ込まれているようです。DACチップはPCM1792ですが、E-1の設計のポイントは電源ということでコンデンサーの影響を廃して着色をなくすということがテーマだそうです。
ヘッドフォンアンプはXLRx2のバランス駆動です。ユニークなのは3つのポッチの電源スイッチですがこの3つのドットを会社のアイコンにしたいということです。
音はクセがなくピュアで鮮度感が高いという印象です。ベールを何枚か剥がした感じで、スピードがあります。いわゆるモニター的でない、音楽を直接掴めるようなダイレクト感、鮮度感の高さがあると感じました。話していて、このお二人の情熱がよくわかりました。
いまは我々におなじみの音茶楽さんもソニーの出身で、今回はFLAT4新型やサラウンドなどラインナップを充実させていました。
実は会場でたまたま(ではないけど)もうひとりソニーのOBの方にお会いして少しお話ししたのですが、ソニーという会社とそこに働く人のオーディオに書ける意気込みというのを教えてもらいました。
* 国産ポータブル製品の隆盛
いままでヘッドフォンの世界は海外製品が主導してきた経緯もあるのですが、ソニーのみならず今回は国産製品が充実していた印象です。
すでに好評のDENONのポタアンDA-10は前の記事に書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/407520367.html
パイオニアからはDAC内蔵のポータブルアンプXP700が出ています。見た目にソリッドで、カスタマイズ項目や入力が豊富なのが特徴です。
前に書いたUSB DACであるU-05の良い機能も引き継いでいます。またポータブルでバランス駆動を採用していますが、端子は角型4pin(我々Headfierの言うKobiconn)を選んだ理由はまずポータブル仕様でがっちりはまるということだそうです。RSAやALOなど海外でよく使われるのでケーブルが用意できるのも良い点でしょう。
パイオニア XP700
今回の注目の一つだったTEACのHA-P90SD はハイレゾDAPとポータブルアンプの両方の使い方ができるユニークな製品です。またDSDネイティブ再生も可能です。ただしアンドロイド・アクセサリープロトコルのサポートはなくなったようです。
選曲は昔懐かしい感じのメニュー方式ですが、音質はなかなか良かったと思います。
TEAC HA-P90SD
オーディオテクニカPHA100はボリュームが真ん中にあるのが特徴でボリュームガードをつけるよりは真ん中にしたほうが良いということです。バッグに入れた時の調整はいまひとつに思いますが、、さて。
PHA100
SONYのPHA3は大きめでこれもバランス駆動を採用しています。大きめですが、音もわりと余裕のある据え置きに近い音に思えました。
PHA3
なおJabenのSpiral StrandsケーブルがさっそくSONYバランス対応をしています。
Jaben Spiral Cable SONYバランス
国産ポータブルアンプはみなデザインが良く作りもしっかりしています。これも海外アンプに慣れているとちょっと新鮮なことではありますね。一方で国産アンプは一様にボリュームガードにこっていますが、これも不意の誤作動からユーザーを守るための基準が厳しいのでしょうね。
* ポータブル・バランス端子規格の乱立
しかし、ポータブルバランス駆動の規格の乱立はどうにかならないか、っていう問題は実のところいまではなく、2010年にRSAが初のポータブルバランス駆動アンプProtectorを作ってKobiconn(角型4pin)を採用したんですが、一方でiBassoやHiFimanが3.5mm TRRSを採用したあたりから、言っていたことではあります。
RSA Protectorの記事
http://vaiopocket.seesaa.net/article/143564141.html
いまでは3.5mm x 2とか2.5mmなど乱立してしまっていますがどうなのでしょうか。
据え置きの場合はXLRx2というのは何回か書いたようにHeadroomのBlockheadがはじめてヘッドフォンアンプの筐体を2個並列使用してバランス駆動(Balanced Headphone drive)という形式を立ち上げた時いらいしばらく事実上一つしかバランス駆動アンプがなかったので、デファクトとしてそれに決まったという背景があります。それからいくつかバランス駆動アンプが出てきても、HeadFiコミュニティーのなかで作り手がユーザーに近いのでユーザーや同じ仲間であるケーブルメーカーの得を考えてなんとなく統一する暗黙の了解があったように思います。ポータブルの場合もHeadFiコミュニティーは人気のあるRSAからはじまってKobiconnでいきそうではあったのですが、iBassoやHiFimanなど中国系ポータブル機材の隆盛と時期が重なったために、ばらばらになってしまったと思います。
これもこのヘッドフォン世界をHeadFiコミュニティーが単独で引っ張っていた時代から、世界各地に多様化することで起こってきた課題と言えるのかもしれません。
* ハイエンドアンプの世界
今回はすでに書いたRe・Leafもそうですが、スピーカーの世界で言うハイエンドオーディオクラスのヘッドフォン機材も注目点だったと思います。
Aurender FLOW
まず注目だったのはエミライさんのところで展示されていたAurendar Flowです。ストレージと操作部とバッテリーをもったUSB DACです。独立したDAPではなくPCやスマートフォンなどなんらかのホストが必要です。主なターゲットはノートPCやスマートフォンなど本体に制約のあるモバイル機材だと思います。たとえばMacbook AirなどUSB端子の数が少ないものに向いていますね。独立した操作部を持つのもなにかワープロをやりながら音楽操作でiTunesに切り替える手間を省けます。
HeadFiのJudeがすでにデモ機をもっていたのでiPhoneに付けられるというということも確認しました。音質は聴いてみると驚くことにさすがAurenderというかハイエンドオーディオの音ですね。
実のところポータブル系の今回の新製品ではこれが音質的には抜きんでていたように思います。今年はAK240,Hugoにはじまり夏のiDSD microと音質レベルの高いポータブルが目白押しでしたが、年も押し迫ってAurendar FLOWも2014年組プレミアクラス仲間に加わったようです。
こちらは今井商事・メースさんのところのMytekマンハッタンDACです。DSDネイティブ再生を世に流行らせたスタジオ機Mytekのコンシューマー向けハイエンド機です。75万円と言うことですが、HD800で聴いたところMytek Stereo192とはかなり違うレベルの高い音でした。音もコンシューマー寄りで音楽を聴いて楽しい音ですね。東京インターナショナルショウのときより好印象でした。表面仕上げも面白いですね。
Mytek マンハッタンDAC
こちらはトライオードさんブースで、おなじみハイエンドメーカーGoldmundのTelosヘッドフォンアンプです。165万円ということでおいそれと手が出せませんが、EIDOS CD Playerから同軸で出して内部のAries DACからヘッドフォンで聞いたところ堂々としたスケールある音でした。さすが電源しっかりしているという感じです。
GOLDMUND Telosヘッドフォンアンプ
* カスタムIEMとユニバーサルIEM
まず今回は須山さんFitEarが意外というかはじめての製品発表会を行いました。サンプラザ内教会を使った発表会で満席になるまで人が詰めかける人気の高さでした。
内容はFitEarのこれまでと、Sonyの補聴器ST56Bから、初代iPodを買った日にバラしてイヤフォンを作ってみたという話、そこから業務系のカスタム作成までイヤモニの歴史、Shure E1、E5、ジェリーハービーのUE5、そしてアニソンまで、須山さんの情熱が感じられる熱い発表内容でした。
表向きはfitearの発表会ですが、萌音は中音域を意図的に沈めたこともあって、というところからワンモアシングがあり、実は新作カスタム彩の発表会でした。
彩の私のレビュー記事はこちらで。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/407581687.html
私も一言コメントさせてもらいましたが、ついつい「彩は女性ヴォーカルが聴きとりやすく気持ちよく聞こえるのも大きな特徴で、さきほどの萌音での振り返りがよく生きているなと須山さんの発表を聴いていて思いました」という一言が抜けてしまいました。。。
WagnusさんブースではNobleの偉い人も来て、K10ユニバーサルが展示されていました。しかし、見て一言、「え、こんなちっちゃいの?」って二度聞き返しました。聴いてみるとさすがキングと言われるだけあって、上も下もすんごく伸びて音も広大でメリハリがくっきりした音です。なかなか。
K10ユニバーサル
台湾のJM Plusのみなさんは今回も登場してレギュラーになりそうな感じです。すでに人気も獲得していて人も途切れなく来ていたようです。
JM Plusブース
またミックスウェーブさんのところではUMの12ドライバーユニバーサルのメイソンがあり、これはものすごく元気良い音でしたね。ロクサーヌやK10とも別な音になっているように思います。ハイブリッドのマーべリックもなかなか良かったと思います。
* 新しいヘッドフォン・イヤフォン
今回もたくさんのヘッドフォン・イヤフォンの新作がありました。
まず今回のヘッドフォン祭の写真にも使われたのはKuradaのFP10、響というヘッドフォンです。名は体を表すと言いますが、響はピアノの調律師が楽器的な価値観で作りたいということで設計されたヘッドフォンです。特徴は楽器と同様に内部にスプルース(ハウジングの中に貼ってある板)という木材を張ってあることで、吸音や拡散に効果があり高音は吸収して低音を増幅するそうです。これは楽器の考え方と同じで振動板の出す音をスプルースが大きくするということで、楽器でいうと弦の鳴りをスプルースが増幅するということだそうです。
右のハウジングの内側に張ってある板がスプルース
聴いてみましたが、さすが調律師が作っただけあって音は整っていて、帯域バランスがとてもよいと思います。また狙い通りにとても響きが良く、広がりと音の響で心地よく音楽的に聞けます。スピーカーで言うと箱を積極的に鳴らすタイプということですね。
Kurada 響
18万で12月初旬目標だそうです。
またTaylor madeで織物やバーズアイメープルなどがあり、客で指定があればそれも使えるそうです。
タイムロードさんのところではEdition5 unlimitedバージョンがアナウンスされました。これはUltrasoneのマイケルCOOとライターの山本さんのインタビュー会でメインはPerformanceシリーズの紹介ですが、ワンモアシングでEdition新バージョンの発表が行われました。
Performanceでは840が低音が強調されたポップ向け、860はリニアでスタジオ向け、880はパンチのある低音とシルキーな中高域でフラッグシップということです。ケーブルはみな着脱式です。
位置付けとしてはHFIシリーズはエントリーで、Proシリーズはプロ向けのケーブル交換などハードな仕様になっていますが、Performanceはその中間ということです。
Edition5 unlimited
Edition5 unlimitedはS-Logic EXを使ったEdition5の派生形で木材ではなくルテニアムのハウジングになりました。
音は同じ(材質は違うけど同じようにチューンした)ということで、実際に聞いてみるとウッドとルテニアムのレゾナンスの違いはあるけど、性能レベルは同じだと思います。価格は32万です。
またタイムロードがultrasoneを扱って10年ということで、Edition5を購入した人から一組をドイツの本社に招待するそうです。
私がKickstarterでRocketsを買ったオーリソニクスは社長のDaleが来ていました。というか、Rocketsの耐久力があるというケプラーケーブルで社長のDaleと本気で綱引きやったけど、手に食い込んでしまいました。
Dale社長とRocketsケーブル
Rocketsは11/7発売で27500円ということです。Kickstarterは特別なので通常定価は向こうでも$250ですから、円ドルレートを考えるとなかなかお得な価格です。これは社長が配慮してくれたということ。
Rocketsは下記にレビューを書きましたが、これを見てほしいけど海外じゃなあと思った方はぜひどうぞ。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/405639160.html
またAurisonicsではハイブリッド機のASG2.5も展示してありました。こちらの方が従来のオーリソニクス的な製品ですね。ハイブリッドの2BA+大型ダイナミックドライバーで、低音がパワフルで迫力のある音が欲しい人にはお勧めです。また音の広がりも良いですね。これは音楽を楽しく聴くのにとても向いていると思います。
Aurisonics ASG2.5
Astell&KernではAK専用シリーズとしてベイヤーのT5pをチューンしたAKT5pを出展していました。今回はハードと言うよりもソフトをチューンしていて、専用イコライザーが用意されています。専用イコライザーをオンに入れると音の重心が落ちて、落ち着いて聞きやすくなるように思いました。
AKT5p
DanのRP modであるAlpha Primeです。ここまで来ると元がRPってわからないくらい良い音になっていました。なお代理店募集中ということです。
MrSpeaker Alpha Prime
JabenのウイルソンとCEntranceのマイケル
こちらはJabenにあった新ブランドのヘッドフォンとイヤフォンです。
ヘッドフォンは静電型とダイナミックのハイブリッドで、さきの記事に書いたように、やはり聞いてみたら開発者もAKG K340を意識していたということです。価格も安く音もよいという印象でした。
イヤフォンの方は静電型ではありませんが、TFATという謎技術を採用したものですが、$99とは思えない良い音でした。TFATというのは台湾の政府主導で行われたPC新興政策の中で研究されたPCスピーカー用技術のスピンアウトで、特徴はドライバーを薄くできる(剛性が高いのdr薄くできる)ということです。
オーディオテクニカの謎技術はフルデジタルのdnoteヘッドフォンです。これはDACを使用するというのではなく、振動版自体をデジタル駆動するというもの。音量はパソコンのソフトで調整します。
音はわりと普通に聴けますが、逆にいまひとつ長所が分かりにくいところもあります。あるいはワイヤレス伝送で使うと面白いのではと思いました。
dnoteヘッドフォン
こちらは人気のDita Answerの2.5mmバランスバージョンです。今回は2.5mmプラグにこだわってるようで、バランスのプラグの半田付けがとてもコストがかかるということです。AK240とはかなり良い感じでした。限定になるかも。
Dita Answer true balanced 2.5mm
* 期待のポータブルヘッドフォンアンプ
さて前に私が記事にしたので「ほしいけど海外じゃなあ」と思った人もいるでしょう。EncoreのmDACが完実電気のフューレンさんブースで出ていました。価格もかなり手ごろな価格になりそうで、急いでeBayで買わなくてよかった、と思うことでしょう。特にSONY ZX1の人にはお勧めです。
こちらは私の記事です。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/406918263.html
Encore mDAC
またもうひとつフューレンさんブースで私が注目していたところのCELSUS Companion1も参考展示されていました。これはスマートフォンと無線でつながるタイプのDACアンプです。ワイヤレスと言うとBluetoothと考えがちですが、BTは手軽ですが音質は悪くなり、Kleerは音質はよいんですがドングルが必要になります。CELSUS Companion1はWiFiでつながります。つながったあとはDLNAのレンダラーとして動作するか、あるいはAirPlayの相手先として音を鳴らせます。つまりは手のひらのポータブルDLNAネットワークプレーヤーです。
こちらはまだプリプロダクション段階ですが興味をそそられます。
CELSUS Companion one
CEntranceのマイケルはindieGoGoでキャンペーンを展開しているi5を持ってきました。iPhone5に合体させるDACアンプです。またiPhone6対応もするようです。
i5
こちらはA2Pの世界初のSITポータブルアンプTR07hpです。音がなめらかにスムーズになるという印象でした。
TR07hp
OppoはポータブルDACアンプのHA-2を参考展示していました。これは未発表のクローズタイプである平面型PM-3と組み合わせてOppoのポータブル戦略を展開できるものですね。これも期待できそうです。
OPPO HA-2
それとCalyx MはJabenではなくJカンパニーというファイナルオーディオの関連会社が販売することになるようです。
* ケーブル雑感
ずっとなんだかばたばたしていましたが、時間が空くとWestone ES60に合わせるMMCXケーブルを探そうと会場のケーブルコーナーをいろいろと歩いて試して回りました。
Wagnusケーブル
高いのだとAstell&KernのクリスタルケーブルズかWagnusのドイツビンテージケーブルが良かったですね。価格中くらいだとWagnusのソ連ビンテージケーブルが味があったと思います。安いのだとオヤイデのHPC-MXとかJabenのSpiral Strandsが良かったと思います。
Estronケーブル
またEstronは今回も独立ブースを持っていました。ここで聞いたらES60の極細はMMCXプラグが違う特注品だそうです。下がWestoneバージョンで深くプラグに刺さるようになっています。また耳の部分にカールがついています。やはりES60を買う方はWestoneならではの極細オプションをお勧めします。
Estron MMCX(下がWestone版)
* まとめ
今回はサプライズが多かったですね。最近のヘッドフォン祭は目玉がないかと思いきや、隠し玉が続々、というパターンになってきていて、当日朝の情報戦が必須になってきました。来年もますますいろいろ発展することでしょう。
といったんまとめたところで、、
実は今回の一番の収穫は中野に天然温泉があるのが分かったということです。中野寿湯温泉というところで、中野ブロードウエイからわずか徒歩数分です。2013年に使用していた井戸水の成分でメタケイ酸の成分が認められて温泉認定がなされたようです。
中に入ると昭和の銭湯です。あのテルマエロマエに出てくるやつみたいな。ただし富士山の絵はなくてそこに美肌の湯という効能が書いてあります。中はバブルぶくぶくのすっかり普通の銭湯ですが、思ってたより良い感じで入浴できました。
シャンプー・ボディシャンプー無料でドライヤーは20円です。この20円という感覚がまた昭和です。手ぶらでも100円でタオルレンタルがありますので、ブロードウエイにいったさいにはぜひ中野の秘湯へどうぞ!、
以下、トピックごとにまとめてみました。
* SONY技術者の情熱
まず今回思ったことはソニーという会社の影響力と、モノ作りの情熱から飛び出した製品です。
はじめはソニーエンジニアリングがJust EarというブランドでカスタムIEMを発表したということです。
これはハイブリッド(BA+ダイナミック)のカスタムIEMで、ユニークな点は耳穴に入る部分はWestoneのフレックスチューブのように体温で柔らかくなる素材でできています。
Just Ear
リスニング・モニター・クラブとあらかじめ3種類のチューニングがなされていて、実際に聴いてみるとたしかにそれぞれ特色のある味付けがなされています。20-30万を予定しているということで、一般にも販売するということです。
Just Ear
もうひとつはRE・LEAFという昨年出来たベンチャーでソニーの技術の人と営業の人が共鳴して良いものを作りたいという目的の元に始めた会社です。大企業では仕方のない制約がない製品をやりたいということでノーリミットを目指しているそうです。具体的には良い録音が増えている中でストレートで原音忠実を目指すけれども、情報量は多くともピュアで、多少は設計者の意図を入れたいということです。
もうひとつは町工場の技術を活かしたいということです。匠の世界を作りたいということでMade in Japanの再生から世界一、世界初を目指したいということでした。これには生まれ育った大田区の町工場に良い技術があるのに減っていくのが忍びないという気持ちが含まれているということです。
RE・LEAF E1
なぜヘッドフォンアンプかと聴くと、ヘッドフォンの世界にわかっていただける人がいる。あとヘッドフォンの世界には(マークレビンソンのような)ハイエンドがないのでそこを目指したいということ。
製品はDAC内蔵のE-1という機種で150万円、月産1-5台ということです。鏡面仕上げのモデルもありました。12月中旬くらいに出荷を目指しているようです。底面はすごいスパイクがついていて、このスパイク一つでもかなりのノウハウが注ぎ込まれているようです。DACチップはPCM1792ですが、E-1の設計のポイントは電源ということでコンデンサーの影響を廃して着色をなくすということがテーマだそうです。
ヘッドフォンアンプはXLRx2のバランス駆動です。ユニークなのは3つのポッチの電源スイッチですがこの3つのドットを会社のアイコンにしたいということです。
音はクセがなくピュアで鮮度感が高いという印象です。ベールを何枚か剥がした感じで、スピードがあります。いわゆるモニター的でない、音楽を直接掴めるようなダイレクト感、鮮度感の高さがあると感じました。話していて、このお二人の情熱がよくわかりました。
いまは我々におなじみの音茶楽さんもソニーの出身で、今回はFLAT4新型やサラウンドなどラインナップを充実させていました。
実は会場でたまたま(ではないけど)もうひとりソニーのOBの方にお会いして少しお話ししたのですが、ソニーという会社とそこに働く人のオーディオに書ける意気込みというのを教えてもらいました。
* 国産ポータブル製品の隆盛
いままでヘッドフォンの世界は海外製品が主導してきた経緯もあるのですが、ソニーのみならず今回は国産製品が充実していた印象です。
すでに好評のDENONのポタアンDA-10は前の記事に書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/407520367.html
パイオニアからはDAC内蔵のポータブルアンプXP700が出ています。見た目にソリッドで、カスタマイズ項目や入力が豊富なのが特徴です。
前に書いたUSB DACであるU-05の良い機能も引き継いでいます。またポータブルでバランス駆動を採用していますが、端子は角型4pin(我々Headfierの言うKobiconn)を選んだ理由はまずポータブル仕様でがっちりはまるということだそうです。RSAやALOなど海外でよく使われるのでケーブルが用意できるのも良い点でしょう。
パイオニア XP700
今回の注目の一つだったTEACのHA-P90SD はハイレゾDAPとポータブルアンプの両方の使い方ができるユニークな製品です。またDSDネイティブ再生も可能です。ただしアンドロイド・アクセサリープロトコルのサポートはなくなったようです。
選曲は昔懐かしい感じのメニュー方式ですが、音質はなかなか良かったと思います。
TEAC HA-P90SD
オーディオテクニカPHA100はボリュームが真ん中にあるのが特徴でボリュームガードをつけるよりは真ん中にしたほうが良いということです。バッグに入れた時の調整はいまひとつに思いますが、、さて。
PHA100
SONYのPHA3は大きめでこれもバランス駆動を採用しています。大きめですが、音もわりと余裕のある据え置きに近い音に思えました。
PHA3
なおJabenのSpiral StrandsケーブルがさっそくSONYバランス対応をしています。
Jaben Spiral Cable SONYバランス
国産ポータブルアンプはみなデザインが良く作りもしっかりしています。これも海外アンプに慣れているとちょっと新鮮なことではありますね。一方で国産アンプは一様にボリュームガードにこっていますが、これも不意の誤作動からユーザーを守るための基準が厳しいのでしょうね。
* ポータブル・バランス端子規格の乱立
しかし、ポータブルバランス駆動の規格の乱立はどうにかならないか、っていう問題は実のところいまではなく、2010年にRSAが初のポータブルバランス駆動アンプProtectorを作ってKobiconn(角型4pin)を採用したんですが、一方でiBassoやHiFimanが3.5mm TRRSを採用したあたりから、言っていたことではあります。
RSA Protectorの記事
http://vaiopocket.seesaa.net/article/143564141.html
いまでは3.5mm x 2とか2.5mmなど乱立してしまっていますがどうなのでしょうか。
据え置きの場合はXLRx2というのは何回か書いたようにHeadroomのBlockheadがはじめてヘッドフォンアンプの筐体を2個並列使用してバランス駆動(Balanced Headphone drive)という形式を立ち上げた時いらいしばらく事実上一つしかバランス駆動アンプがなかったので、デファクトとしてそれに決まったという背景があります。それからいくつかバランス駆動アンプが出てきても、HeadFiコミュニティーのなかで作り手がユーザーに近いのでユーザーや同じ仲間であるケーブルメーカーの得を考えてなんとなく統一する暗黙の了解があったように思います。ポータブルの場合もHeadFiコミュニティーは人気のあるRSAからはじまってKobiconnでいきそうではあったのですが、iBassoやHiFimanなど中国系ポータブル機材の隆盛と時期が重なったために、ばらばらになってしまったと思います。
これもこのヘッドフォン世界をHeadFiコミュニティーが単独で引っ張っていた時代から、世界各地に多様化することで起こってきた課題と言えるのかもしれません。
* ハイエンドアンプの世界
今回はすでに書いたRe・Leafもそうですが、スピーカーの世界で言うハイエンドオーディオクラスのヘッドフォン機材も注目点だったと思います。
Aurender FLOW
まず注目だったのはエミライさんのところで展示されていたAurendar Flowです。ストレージと操作部とバッテリーをもったUSB DACです。独立したDAPではなくPCやスマートフォンなどなんらかのホストが必要です。主なターゲットはノートPCやスマートフォンなど本体に制約のあるモバイル機材だと思います。たとえばMacbook AirなどUSB端子の数が少ないものに向いていますね。独立した操作部を持つのもなにかワープロをやりながら音楽操作でiTunesに切り替える手間を省けます。
HeadFiのJudeがすでにデモ機をもっていたのでiPhoneに付けられるというということも確認しました。音質は聴いてみると驚くことにさすがAurenderというかハイエンドオーディオの音ですね。
実のところポータブル系の今回の新製品ではこれが音質的には抜きんでていたように思います。今年はAK240,Hugoにはじまり夏のiDSD microと音質レベルの高いポータブルが目白押しでしたが、年も押し迫ってAurendar FLOWも2014年組プレミアクラス仲間に加わったようです。
こちらは今井商事・メースさんのところのMytekマンハッタンDACです。DSDネイティブ再生を世に流行らせたスタジオ機Mytekのコンシューマー向けハイエンド機です。75万円と言うことですが、HD800で聴いたところMytek Stereo192とはかなり違うレベルの高い音でした。音もコンシューマー寄りで音楽を聴いて楽しい音ですね。東京インターナショナルショウのときより好印象でした。表面仕上げも面白いですね。
Mytek マンハッタンDAC
こちらはトライオードさんブースで、おなじみハイエンドメーカーGoldmundのTelosヘッドフォンアンプです。165万円ということでおいそれと手が出せませんが、EIDOS CD Playerから同軸で出して内部のAries DACからヘッドフォンで聞いたところ堂々としたスケールある音でした。さすが電源しっかりしているという感じです。
GOLDMUND Telosヘッドフォンアンプ
* カスタムIEMとユニバーサルIEM
まず今回は須山さんFitEarが意外というかはじめての製品発表会を行いました。サンプラザ内教会を使った発表会で満席になるまで人が詰めかける人気の高さでした。
内容はFitEarのこれまでと、Sonyの補聴器ST56Bから、初代iPodを買った日にバラしてイヤフォンを作ってみたという話、そこから業務系のカスタム作成までイヤモニの歴史、Shure E1、E5、ジェリーハービーのUE5、そしてアニソンまで、須山さんの情熱が感じられる熱い発表内容でした。
表向きはfitearの発表会ですが、萌音は中音域を意図的に沈めたこともあって、というところからワンモアシングがあり、実は新作カスタム彩の発表会でした。
彩の私のレビュー記事はこちらで。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/407581687.html
私も一言コメントさせてもらいましたが、ついつい「彩は女性ヴォーカルが聴きとりやすく気持ちよく聞こえるのも大きな特徴で、さきほどの萌音での振り返りがよく生きているなと須山さんの発表を聴いていて思いました」という一言が抜けてしまいました。。。
WagnusさんブースではNobleの偉い人も来て、K10ユニバーサルが展示されていました。しかし、見て一言、「え、こんなちっちゃいの?」って二度聞き返しました。聴いてみるとさすがキングと言われるだけあって、上も下もすんごく伸びて音も広大でメリハリがくっきりした音です。なかなか。
K10ユニバーサル
台湾のJM Plusのみなさんは今回も登場してレギュラーになりそうな感じです。すでに人気も獲得していて人も途切れなく来ていたようです。
JM Plusブース
またミックスウェーブさんのところではUMの12ドライバーユニバーサルのメイソンがあり、これはものすごく元気良い音でしたね。ロクサーヌやK10とも別な音になっているように思います。ハイブリッドのマーべリックもなかなか良かったと思います。
* 新しいヘッドフォン・イヤフォン
今回もたくさんのヘッドフォン・イヤフォンの新作がありました。
まず今回のヘッドフォン祭の写真にも使われたのはKuradaのFP10、響というヘッドフォンです。名は体を表すと言いますが、響はピアノの調律師が楽器的な価値観で作りたいということで設計されたヘッドフォンです。特徴は楽器と同様に内部にスプルース(ハウジングの中に貼ってある板)という木材を張ってあることで、吸音や拡散に効果があり高音は吸収して低音を増幅するそうです。これは楽器の考え方と同じで振動板の出す音をスプルースが大きくするということで、楽器でいうと弦の鳴りをスプルースが増幅するということだそうです。
右のハウジングの内側に張ってある板がスプルース
聴いてみましたが、さすが調律師が作っただけあって音は整っていて、帯域バランスがとてもよいと思います。また狙い通りにとても響きが良く、広がりと音の響で心地よく音楽的に聞けます。スピーカーで言うと箱を積極的に鳴らすタイプということですね。
Kurada 響
18万で12月初旬目標だそうです。
またTaylor madeで織物やバーズアイメープルなどがあり、客で指定があればそれも使えるそうです。
タイムロードさんのところではEdition5 unlimitedバージョンがアナウンスされました。これはUltrasoneのマイケルCOOとライターの山本さんのインタビュー会でメインはPerformanceシリーズの紹介ですが、ワンモアシングでEdition新バージョンの発表が行われました。
Performanceでは840が低音が強調されたポップ向け、860はリニアでスタジオ向け、880はパンチのある低音とシルキーな中高域でフラッグシップということです。ケーブルはみな着脱式です。
位置付けとしてはHFIシリーズはエントリーで、Proシリーズはプロ向けのケーブル交換などハードな仕様になっていますが、Performanceはその中間ということです。
Edition5 unlimited
Edition5 unlimitedはS-Logic EXを使ったEdition5の派生形で木材ではなくルテニアムのハウジングになりました。
音は同じ(材質は違うけど同じようにチューンした)ということで、実際に聞いてみるとウッドとルテニアムのレゾナンスの違いはあるけど、性能レベルは同じだと思います。価格は32万です。
またタイムロードがultrasoneを扱って10年ということで、Edition5を購入した人から一組をドイツの本社に招待するそうです。
私がKickstarterでRocketsを買ったオーリソニクスは社長のDaleが来ていました。というか、Rocketsの耐久力があるというケプラーケーブルで社長のDaleと本気で綱引きやったけど、手に食い込んでしまいました。
Dale社長とRocketsケーブル
Rocketsは11/7発売で27500円ということです。Kickstarterは特別なので通常定価は向こうでも$250ですから、円ドルレートを考えるとなかなかお得な価格です。これは社長が配慮してくれたということ。
Rocketsは下記にレビューを書きましたが、これを見てほしいけど海外じゃなあと思った方はぜひどうぞ。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/405639160.html
またAurisonicsではハイブリッド機のASG2.5も展示してありました。こちらの方が従来のオーリソニクス的な製品ですね。ハイブリッドの2BA+大型ダイナミックドライバーで、低音がパワフルで迫力のある音が欲しい人にはお勧めです。また音の広がりも良いですね。これは音楽を楽しく聴くのにとても向いていると思います。
Aurisonics ASG2.5
Astell&KernではAK専用シリーズとしてベイヤーのT5pをチューンしたAKT5pを出展していました。今回はハードと言うよりもソフトをチューンしていて、専用イコライザーが用意されています。専用イコライザーをオンに入れると音の重心が落ちて、落ち着いて聞きやすくなるように思いました。
AKT5p
DanのRP modであるAlpha Primeです。ここまで来ると元がRPってわからないくらい良い音になっていました。なお代理店募集中ということです。
MrSpeaker Alpha Prime
JabenのウイルソンとCEntranceのマイケル
こちらはJabenにあった新ブランドのヘッドフォンとイヤフォンです。
ヘッドフォンは静電型とダイナミックのハイブリッドで、さきの記事に書いたように、やはり聞いてみたら開発者もAKG K340を意識していたということです。価格も安く音もよいという印象でした。
イヤフォンの方は静電型ではありませんが、TFATという謎技術を採用したものですが、$99とは思えない良い音でした。TFATというのは台湾の政府主導で行われたPC新興政策の中で研究されたPCスピーカー用技術のスピンアウトで、特徴はドライバーを薄くできる(剛性が高いのdr薄くできる)ということです。
オーディオテクニカの謎技術はフルデジタルのdnoteヘッドフォンです。これはDACを使用するというのではなく、振動版自体をデジタル駆動するというもの。音量はパソコンのソフトで調整します。
音はわりと普通に聴けますが、逆にいまひとつ長所が分かりにくいところもあります。あるいはワイヤレス伝送で使うと面白いのではと思いました。
dnoteヘッドフォン
こちらは人気のDita Answerの2.5mmバランスバージョンです。今回は2.5mmプラグにこだわってるようで、バランスのプラグの半田付けがとてもコストがかかるということです。AK240とはかなり良い感じでした。限定になるかも。
Dita Answer true balanced 2.5mm
* 期待のポータブルヘッドフォンアンプ
さて前に私が記事にしたので「ほしいけど海外じゃなあ」と思った人もいるでしょう。EncoreのmDACが完実電気のフューレンさんブースで出ていました。価格もかなり手ごろな価格になりそうで、急いでeBayで買わなくてよかった、と思うことでしょう。特にSONY ZX1の人にはお勧めです。
こちらは私の記事です。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/406918263.html
Encore mDAC
またもうひとつフューレンさんブースで私が注目していたところのCELSUS Companion1も参考展示されていました。これはスマートフォンと無線でつながるタイプのDACアンプです。ワイヤレスと言うとBluetoothと考えがちですが、BTは手軽ですが音質は悪くなり、Kleerは音質はよいんですがドングルが必要になります。CELSUS Companion1はWiFiでつながります。つながったあとはDLNAのレンダラーとして動作するか、あるいはAirPlayの相手先として音を鳴らせます。つまりは手のひらのポータブルDLNAネットワークプレーヤーです。
こちらはまだプリプロダクション段階ですが興味をそそられます。
CELSUS Companion one
CEntranceのマイケルはindieGoGoでキャンペーンを展開しているi5を持ってきました。iPhone5に合体させるDACアンプです。またiPhone6対応もするようです。
i5
こちらはA2Pの世界初のSITポータブルアンプTR07hpです。音がなめらかにスムーズになるという印象でした。
TR07hp
OppoはポータブルDACアンプのHA-2を参考展示していました。これは未発表のクローズタイプである平面型PM-3と組み合わせてOppoのポータブル戦略を展開できるものですね。これも期待できそうです。
OPPO HA-2
それとCalyx MはJabenではなくJカンパニーというファイナルオーディオの関連会社が販売することになるようです。
* ケーブル雑感
ずっとなんだかばたばたしていましたが、時間が空くとWestone ES60に合わせるMMCXケーブルを探そうと会場のケーブルコーナーをいろいろと歩いて試して回りました。
Wagnusケーブル
高いのだとAstell&KernのクリスタルケーブルズかWagnusのドイツビンテージケーブルが良かったですね。価格中くらいだとWagnusのソ連ビンテージケーブルが味があったと思います。安いのだとオヤイデのHPC-MXとかJabenのSpiral Strandsが良かったと思います。
Estronケーブル
またEstronは今回も独立ブースを持っていました。ここで聞いたらES60の極細はMMCXプラグが違う特注品だそうです。下がWestoneバージョンで深くプラグに刺さるようになっています。また耳の部分にカールがついています。やはりES60を買う方はWestoneならではの極細オプションをお勧めします。
Estron MMCX(下がWestone版)
* まとめ
今回はサプライズが多かったですね。最近のヘッドフォン祭は目玉がないかと思いきや、隠し玉が続々、というパターンになってきていて、当日朝の情報戦が必須になってきました。来年もますますいろいろ発展することでしょう。
といったんまとめたところで、、
実は今回の一番の収穫は中野に天然温泉があるのが分かったということです。中野寿湯温泉というところで、中野ブロードウエイからわずか徒歩数分です。2013年に使用していた井戸水の成分でメタケイ酸の成分が認められて温泉認定がなされたようです。
中に入ると昭和の銭湯です。あのテルマエロマエに出てくるやつみたいな。ただし富士山の絵はなくてそこに美肌の湯という効能が書いてあります。中はバブルぶくぶくのすっかり普通の銭湯ですが、思ってたより良い感じで入浴できました。
シャンプー・ボディシャンプー無料でドライヤーは20円です。この20円という感覚がまた昭和です。手ぶらでも100円でタオルレンタルがありますので、ブロードウエイにいったさいにはぜひ中野の秘湯へどうぞ!、
2014年10月25日
FitEar彩(あや) - 3DプリンタによるカスタムIEM
FitEar彩(あや)はFitEar初の3Dプリンター出力シェルのカスタム製品です。
3DプリンターをカスタムIEMに使用した際の利点ですが、以下のようなものです。
従来の手法で樹脂を化学工程で硬化させるシェルの制作においては、複雑な整形をする際にシェルの部分によって硬化のタイミングが異なってしまい、それで不均一が生じるという問題がありました。この問題によりシェルの成型に悪影響をする場合があるわけです。
しかしながら積層する3Dプリンタを使用する場合には原理的にこの問題を生じません。そのためより正確で複雑な設計が可能となります。
その一例は彩に採用されたホーン形状の高域音導孔です。BA型ではどうしても高音域の伸びに制約が出てしまいますが、この形状によって最高域の拡大とともに、肩特性の緩やかな減衰を得られる特性を得ています。
また3Dプリンターの採用により、最悪ひとつしか音導孔をあけられない場合でも、それをホーン形状に形成し、ホーン開口部あたりにもう一本の音導孔を合流させるといった複雑な設計も可能になったということです。
彩のもうひとつのポイントは改良された新設計のネットワークです。これは過度の帯域重複を避けて特にヴォーカル域での特性に注目したもののようです。
また、彩は事前にうわさされていたようにパルテールのカスタム版ではありません。彩ではウーファーにはアコースティックローパスフィルタはなく、基本広い帯域を担当させているということです。
実際に使ってみたところブラックペイントがカッコ良く、思わず写真をいっぱい撮ってしました。軽くて装着感良く、かなりぴったりフィットします。ちなみにこの感想メモは、彩が3Dプリントと聞く前のメモでバイアスはありません。
音質はきれいな音鳴りで、一つ一つの音は細身で贅肉が取れたすっきりとした音です。他のカスタムIEMと比べたときの特徴は抜けの良い清涼感とも言える透明感です。プレーヤーなどの組み合わせもあるかもしれないけど、この二点は個性として感じられます。
録音の良いジャズトリオのドラムやウッドベースの音の鮮明さ、生っぽさとリアルさは特筆モノかと思います。特にAK120IIと組み合わせたときですね。濁りのないピアノの純な響きも気持ちよく感じられます。
ヴォーカルもとても明瞭で聞き取り安く、特に声の透明感や高域方向の伸びが良い感じです。女性ヴォーカルにはかなり向いたイヤフォンと言えます。特にAK120IIと組み合わせたときの女性ヴォーカルは逸品だと思いますね。
3Dプリンターの採用はよく製作が簡単にできるという誤解を生みますが、実はむしろ手間がかかるという面が大きいようです。つまり3Dプリント化は我々が普通考える簡素化よりも、今までできなかったことをするというプラスの要素が高いということになります。ユニバーサルタイプはすでに3Dプリンター化しているということですが、カスタムにおける3Dプリンターの効果も可能性が感じられます。
3DプリンターをカスタムIEMに使用した際の利点ですが、以下のようなものです。
従来の手法で樹脂を化学工程で硬化させるシェルの制作においては、複雑な整形をする際にシェルの部分によって硬化のタイミングが異なってしまい、それで不均一が生じるという問題がありました。この問題によりシェルの成型に悪影響をする場合があるわけです。
しかしながら積層する3Dプリンタを使用する場合には原理的にこの問題を生じません。そのためより正確で複雑な設計が可能となります。
その一例は彩に採用されたホーン形状の高域音導孔です。BA型ではどうしても高音域の伸びに制約が出てしまいますが、この形状によって最高域の拡大とともに、肩特性の緩やかな減衰を得られる特性を得ています。
また3Dプリンターの採用により、最悪ひとつしか音導孔をあけられない場合でも、それをホーン形状に形成し、ホーン開口部あたりにもう一本の音導孔を合流させるといった複雑な設計も可能になったということです。
彩のもうひとつのポイントは改良された新設計のネットワークです。これは過度の帯域重複を避けて特にヴォーカル域での特性に注目したもののようです。
また、彩は事前にうわさされていたようにパルテールのカスタム版ではありません。彩ではウーファーにはアコースティックローパスフィルタはなく、基本広い帯域を担当させているということです。
実際に使ってみたところブラックペイントがカッコ良く、思わず写真をいっぱい撮ってしました。軽くて装着感良く、かなりぴったりフィットします。ちなみにこの感想メモは、彩が3Dプリントと聞く前のメモでバイアスはありません。
音質はきれいな音鳴りで、一つ一つの音は細身で贅肉が取れたすっきりとした音です。他のカスタムIEMと比べたときの特徴は抜けの良い清涼感とも言える透明感です。プレーヤーなどの組み合わせもあるかもしれないけど、この二点は個性として感じられます。
録音の良いジャズトリオのドラムやウッドベースの音の鮮明さ、生っぽさとリアルさは特筆モノかと思います。特にAK120IIと組み合わせたときですね。濁りのないピアノの純な響きも気持ちよく感じられます。
ヴォーカルもとても明瞭で聞き取り安く、特に声の透明感や高域方向の伸びが良い感じです。女性ヴォーカルにはかなり向いたイヤフォンと言えます。特にAK120IIと組み合わせたときの女性ヴォーカルは逸品だと思いますね。
3Dプリンターの採用はよく製作が簡単にできるという誤解を生みますが、実はむしろ手間がかかるという面が大きいようです。つまり3Dプリント化は我々が普通考える簡素化よりも、今までできなかったことをするというプラスの要素が高いということになります。ユニバーサルタイプはすでに3Dプリンター化しているということですが、カスタムにおける3Dプリンターの効果も可能性が感じられます。
Windows 10 preview版でのUSB Audio Class 2の実装の状況
Windows 10 preview版でのUSB Audio Class 2の実装ですが、Computer AudiophileでMicrosoftに直訴しようということで、下記のMicrosoft Communityに直接書き込みしました。私も投票してます。
http://answers.microsoft.com/en-us/windows/forum/windows_tp-hardware/windows-support-for-usb-audio-20/0d633b9f-3193-4c63-8654-fb10b3614a04?msgId=218053c6-b08d-45df-a925-ff773a0e2ddf
そこでMicrosoftのWindoows Audio quality divisionの人から返信があって、状況を教えてくれています。
現在のWindows 10 Technical Previewでの状況は以下の通りでWindows 8.1同等だそうです。
基本的なUSB1.0-3.0のコントローラーの対応、Audio Classについては1.0で、USB Audio Class 2デバイスについてはやはりサードパーティードライバーが必要ということです。
native support for USB 1.0, USB 2.0, and USB 3.0 controllers
native support for USB Audio 1.0 audio devices
but, as you point out, USB Audio 2.0 devices require a third-party driver.
お話は聞くよ、ということですので、ぜひUSB Audio Class 2.0を実装して欲しいですね。
http://answers.microsoft.com/en-us/windows/forum/windows_tp-hardware/windows-support-for-usb-audio-20/0d633b9f-3193-4c63-8654-fb10b3614a04?msgId=218053c6-b08d-45df-a925-ff773a0e2ddf
そこでMicrosoftのWindoows Audio quality divisionの人から返信があって、状況を教えてくれています。
現在のWindows 10 Technical Previewでの状況は以下の通りでWindows 8.1同等だそうです。
基本的なUSB1.0-3.0のコントローラーの対応、Audio Classについては1.0で、USB Audio Class 2デバイスについてはやはりサードパーティードライバーが必要ということです。
native support for USB 1.0, USB 2.0, and USB 3.0 controllers
native support for USB Audio 1.0 audio devices
but, as you point out, USB Audio 2.0 devices require a third-party driver.
お話は聞くよ、ということですので、ぜひUSB Audio Class 2.0を実装して欲しいですね。
2014年10月23日
ヘッドフォン祭2014秋の私的見どころ
さて、恒例のヘッドフォン祭が開催されます。なにしろ膨大な出展数がありますので、毎度のことですが私的な見どころを紹介します。
まずAstell&Kernですが例のブルーノートAk240の他に目玉はAKT5pのバランス版です。これはベイヤーT5pのAK240向けバージョンのものですが、バランス版は世界初公開です。またいままでのAKRシリーズとは異なって専用イコライザーがついてくるようです。
それと15FではあのAKの300B真空管アンプとAccutonユニットのスピーカーが再び登場してデモをします! このアンプとスピーカーは実に素晴らしいですよ。
http://www.iriver.jp/information/entry_767.php
またエミライ・OPPOさんのところではAurender FLOWが注目ですね。これはUSB DACに操作部とストレージが内蔵可能なもので、少し前まではAurender WAVEと言ってました(モデル名はV1000だったと思います)。情報を検索したい人は"Aurender WAVE"って検索ください。
あとOPPOではHA-2の展示があるようです。PM-3はどうなんでしょうか。
http://www.monoandstereo.com/2014/10/aurender-wave-dac-new.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+monoandstereo%2FHOym+%28MONO+AND+STEREO+Ultra+High-End+Audio+Magazine%29
Jabenでは謎の静電型ヘッドフォンが出展されるようです。専用のドライバー不要と言うことですからエレクトレットタイプですね(STAXはコンデンサータイプ)。静電気の反発で振動板を動かすのが静電型ですが、電荷を得るのに外から供給するのがコンデンサー型で専用のドライバーが必要です。対して内部に電荷を保持しているのがエレクトレット型です。ただしエレクトレット型でもトランスを外に持つか内部に持つかの違いがあり、正確に言うと専用ドライバーが不要なのはエレクトレット型で内部トランスのものです。お、ひさびさにマニアックになってきたぞ 笑。そうなんです。ハイブリッドという情報もあって、これはおそらくAKG K340の現代版かもしれません。K340はAKGファンの皆様はK1000同様に通過した道かと思います。私の場合の下記記事を参照。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/1059886-1.html
またコストパフォーマンスの高いイヤフォン向けバランスケーブルを出すようです。Kobicon(私の言うRSAタイプ)や3.5mmTRRS、AKの2.5mm方式のほかにソニータイプのプラグも用意するそうです。最近はポータブルバランスの規格乱立も問題ですが、これで解決?
あと何回か取り上げてきましたが、例のフルアーマーAKのGlobeAudio A1も出てくるそうです。それとなにげにCalyx Mはやっと発売です。
それとA2Pの世界初のSITポータブルアンプTR07hpがJabenブースで聴けるようです。試聴はイヤフォンよりヘッドフォンが向いています。
https://www.facebook.com/JabenJapan
あとはNobleのユニバーサルK10やPrestageも聴いて(見て)みたいですね。
今回もJM Plusもきます。またMrSpeakerはAlpha Primeを持ってきてくれるんでしょうか。
タイムロードさんのところでは新ラインナップのPerformerとマイケル・ジルケルCOOのインタビューなどあるようです。
http://www.timelord.co.jp/blog/news/event-20141022/
それと今回のヘッドフォン祭のシンボルとなっているKuradaのヘッドフォンも新作があるようです。
それと今回の注目はずばり完実ブースです。最近私のブログを見て「これほしいけど海外じゃなあ」と思ってた人はぜひ見にきてください。まずAurisonicsのRocketsが国内で買えるようになります!
あと1点あるかも。それとHeadFiで私が食いついているものが分かる人はそれもあるといいですね〜。
このほかにもたくさん、、
おっと、今回初めて発表会を行う須山さんとこにも注目です!
まずAstell&Kernですが例のブルーノートAk240の他に目玉はAKT5pのバランス版です。これはベイヤーT5pのAK240向けバージョンのものですが、バランス版は世界初公開です。またいままでのAKRシリーズとは異なって専用イコライザーがついてくるようです。
それと15FではあのAKの300B真空管アンプとAccutonユニットのスピーカーが再び登場してデモをします! このアンプとスピーカーは実に素晴らしいですよ。
http://www.iriver.jp/information/entry_767.php
またエミライ・OPPOさんのところではAurender FLOWが注目ですね。これはUSB DACに操作部とストレージが内蔵可能なもので、少し前まではAurender WAVEと言ってました(モデル名はV1000だったと思います)。情報を検索したい人は"Aurender WAVE"って検索ください。
あとOPPOではHA-2の展示があるようです。PM-3はどうなんでしょうか。
http://www.monoandstereo.com/2014/10/aurender-wave-dac-new.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+monoandstereo%2FHOym+%28MONO+AND+STEREO+Ultra+High-End+Audio+Magazine%29
Jabenでは謎の静電型ヘッドフォンが出展されるようです。専用のドライバー不要と言うことですからエレクトレットタイプですね(STAXはコンデンサータイプ)。静電気の反発で振動板を動かすのが静電型ですが、電荷を得るのに外から供給するのがコンデンサー型で専用のドライバーが必要です。対して内部に電荷を保持しているのがエレクトレット型です。ただしエレクトレット型でもトランスを外に持つか内部に持つかの違いがあり、正確に言うと専用ドライバーが不要なのはエレクトレット型で内部トランスのものです。お、ひさびさにマニアックになってきたぞ 笑。そうなんです。ハイブリッドという情報もあって、これはおそらくAKG K340の現代版かもしれません。K340はAKGファンの皆様はK1000同様に通過した道かと思います。私の場合の下記記事を参照。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/1059886-1.html
またコストパフォーマンスの高いイヤフォン向けバランスケーブルを出すようです。Kobicon(私の言うRSAタイプ)や3.5mmTRRS、AKの2.5mm方式のほかにソニータイプのプラグも用意するそうです。最近はポータブルバランスの規格乱立も問題ですが、これで解決?
あと何回か取り上げてきましたが、例のフルアーマーAKのGlobeAudio A1も出てくるそうです。それとなにげにCalyx Mはやっと発売です。
それとA2Pの世界初のSITポータブルアンプTR07hpがJabenブースで聴けるようです。試聴はイヤフォンよりヘッドフォンが向いています。
https://www.facebook.com/JabenJapan
あとはNobleのユニバーサルK10やPrestageも聴いて(見て)みたいですね。
今回もJM Plusもきます。またMrSpeakerはAlpha Primeを持ってきてくれるんでしょうか。
タイムロードさんのところでは新ラインナップのPerformerとマイケル・ジルケルCOOのインタビューなどあるようです。
http://www.timelord.co.jp/blog/news/event-20141022/
それと今回のヘッドフォン祭のシンボルとなっているKuradaのヘッドフォンも新作があるようです。
それと今回の注目はずばり完実ブースです。最近私のブログを見て「これほしいけど海外じゃなあ」と思ってた人はぜひ見にきてください。まずAurisonicsのRocketsが国内で買えるようになります!
あと1点あるかも。それとHeadFiで私が食いついているものが分かる人はそれもあるといいですね〜。
このほかにもたくさん、、
おっと、今回初めて発表会を行う須山さんとこにも注目です!
2014年10月21日
DENONのDAC内蔵ポータブルアンプ、DA-10 レビュー
まえに今年のポタ研でDENONのDA-10の発表会の記事を書きました。今回はDA-10を実際に使用してみてのレビューと解説などを書きます。
DA-10は国産オーディオメーカーの老舗であるDENONが開発したDAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプです。入力はアナログ入力のほかに2系統のUSB入力をもっています。
DA-10底面
Appleが30pinドックコネクタを採用していた時はアナログのラインアウトがあったので、アナログ入力で済んだのですが、Appleがライトニングコネクタに変えてからはアナログの出力が出せなくなったので、iPhoneから品質の良い音の取り出しをするためにはこうしたDAC付きのポータブルアンプが必要となってきたという経緯があります。
DA-10のUSB端子はUSB AとUSB microBの二つあります。これは簡単に言うとUSB AがiPhoneとのデジタル接続をする端子で、USB MicroBはPCと接続をするための端子となります。これについて詳細は以降書いていきます。DACチップはいまやバーブラウンの主力であるPCM1795です。DSD再生など最新の技術動向に向いています。
DA-10正面
出力はミニステレオ端子ひとつで、ヘッドフォン出力です。ただしこれは出力を固定することでアクティブスピーカーなどデスクトップでも使えるようにしてあります。
DACの入力はDA300に準じたもので、最大でPCMが196kHz/24bitまで、DSDは5.6MHz(DSD128)までのネイティブ再生が可能です。iPhoneとの接続では48kHz/24bitが上限です(例外はあとで)。
* 技術的特徴 - Advanced AL32ありき
いわく、アーキテクチャの踏襲という意味ではSX1をデスクトップにしたのがDA300で、町に持ち出すのがDA-10ということです。
DA-10はポータブル版のDA300ともいうべき多くの特徴を持っています。まずDENONの看板でもあるAdvanced AL32(以下AL32)です。
これはまずビット拡張で32bitにしてからアップサンプル(時間軸拡張と言っている)をしています。
特徴的なのは搭載するPCM1975 DACチップの特性を生かして、出来合いのPCM1975のデジタルフィルターをバイパスして、より高精度のAdvanced AL32をデジタルフィルターとして置き換えているということです。
このようにまずアルファプロセッシングありきで設計がなされ、このアップサンプリング・32ビット拡張とフィルター部分の置き換えによってPCM1975の能力を最大限に発揮できるというわけです。アップサンプリングはDA-10に入力されるサンプリングレートによって調整が行われ、ハイレゾデータを生かすことができます。
この効きと言うのはデータの下位ビットに相当するところで、例えば静寂の部分から音の立ち上がりが滑らかと言うことです。前の記事でも書きましたが、この下位ビットの処理が実のところハイレゾのかなめですね。
ちなみにAdvanced AL32はFPGAで実装されています。またAL32はPCM向けのものですから、DSD再生時ではAL32はバイパスされます。
* 技術的特徴 - ちいさくともオーディオ機材
それとDA300と同様にオーディオ機器らしいこった設計もDA-10のポイントです。
DA300のレビューのときも書きましたが、DA-10でもDACマスタークロックデザインを取り入れています。これはDACのクロックを主(マスター)と明示することで、周辺回路との正しい同期を取るというものです。クロックというのはデジタル機器の基本ですから、これによってより正確なクロックタイミングが得られることが期待できます。
ピュアオーディオ製品ではクロックのマスター・スレーブというのは良くありますが、ポータブルでは初めて聞くように思います。ポータブルの場合にはスペースのために実装的にも難があって、例えば他のDAC内蔵ポータブルアンプではUSBコントローラの近くにクロックがあったりしますが、DA-10ではDACの近くにクロックがあり、DACのクロックがあくまでマスターとして周辺機器であるところのUSBコントローラが従になるわけです。
アンプ部分は±6.5Vの高電圧で駆動し、後段(バッファ部分)がディスクリートで設計されて十分な性能を確保しています。パーツもオーディオグレードコンデンサーの採用や、ポータブルヘッドホンアンプでは標準的な角型チップ抵抗よりも低ノイズ、低歪みのメルフ抵抗(丸いやつ)を採用するなど考慮がなされています。
また独立電源回路基板もポータブルにしてはかなりこっています。一般的なポータブルアンプだとオーディオ回路と同一基盤に電源があるわけで、これはある意味仕方無いですが、DA-10ではDC-DCコンバーターのノイズの影響を低減させるために基盤構成を2階建てとして電源を別基盤化しています。GNDもデジタルとアナログ部分を分離してノイズを考慮したレイアウトを行っています。
つまり回路・電源別、デジタル・アナログ別という基本も守っています。
* 技術的特徴 - 小型化への挑戦
まさにDA-10は小さくともオーディオコンポーネントらしいという感じです。DA300が手のひらに入ったというイメージでもありますが、小さくすることはそう容易ではありません。
実際に設計は音質にかかわる主要部品をDA300同等にするというところからスタートしたということです。まずCADなどでシミュレーションを行いますがこの時点で部品の占める面積が多すぎるという問題に直面します。そこで従来ならば基盤構成は4層ですが、DA-10では6層ビルド基盤を採用します。これはウエハースのように基盤を組み合わせたもので、これによりGNDのポテンシャルの向上や、クロックラインの最短接続、パターン干渉の低減などの効果がうまれました。
コスト的にはかなりアップしましたが、音質やサイズの相反する問題をこれで解決できたということです。
DA300みたいなサイズのUSB DACならともかくも、スペースに制約のあるポータブルまでこうしたオーディオの基本を実直に守るのには頭が下がります。これもDENONがまじめなオーディオメーカーである証なのでしょう。
* DA-10のさまざまな機能
DA300からの改良という点では、DA300ではゲインがなくてHD800などが音量が取れなかった問題をDA-10では改良しています。DA300ではHD800は音量的に苦しかったのですが、DA-10ではうるさいくらいに音量が取れます。これで録音レベルの低い高音質録音の音源にも十分対応できます。スペック的には8-600オームまで駆動できます。
DA-10側面
ラインアウト端子はないのですが、ヘッドフォン出力は可変(var)と固定(Fix)が選べるので、外部出力機器に接続するときは固定で出力することができます。三段システムでDACとして使いたい人もいますからね。
なお可変と固定の切り替えには電源をいったんオフにしなければなりませんので、注意してください。
電池の持ちに関しては、大容量(3200mAh)のリチウムイオンバッテリーにより、iPod接続時(USB AでのiDevice接続時)で7.5時間の再生が可能ということです(USB microBで電池使用した場合には6.5時間ということです)。アナログだけなら24時間は持つのもなにげにすごいところです。この辺は電源管理が徹底されていることもうかがえますね。
電源を投入するときにチャージランプの色点灯でだいたいの残量がわかります。
* DA-10の使いこなしと音質インプレ
パッケージを見ると、箱や梱包の時点で満足感が高いですね。パイオニアのU05でも思ったけど、こういうところはさすが国産で、私みたいに海外の怪しいものに慣れてるとこういうのが新鮮です。なにしろ保証書の代わりに名刺が一枚入ってるというのが当たり前だと思ってましたので(それもない場合がほとんど)、化粧箱に入ってアンプがくるだけで新鮮です。
iPhoneと合わせるためのケースが付属してきます。ケースを使用した時にはケーブルをガードしてくれるので、入力と出力が逆側なのでバッグの中で収まりにくいという問題を緩和してくれます。
筐体はデザインや質感は高く高級感があります。DA-10のデザインは表面がヘアライン、テーパー部分が梨地仕上げとなっており、その違いを強調するために処理の境目に段差を設けています。この辺はかなり試行錯誤をしたということで、たしかにすばらしい高級感のある仕上げとなっています。ヘアラインはプレートを張っているのではなくアルミの一枚板です。
金属のシャーシはRFノイズ対策にもなるでしょう。中ではさらにパネルと基板の導通を工夫することでシールド効果を生じさせています。実際に電波を輻射させる状態でiPhoneを置いても全くと言ってよいほどノイズはDA-10に影響しません。
サイズ的にはやや大きめですが、軽いので携帯にはそれほど苦になりません。デザインはiPhone5に合わせたようですが、iPhone6でも大丈夫です。
DA-10はスマートフォンに向いたアンプということが言えます。それゆえにまたDA-10を手にしたときに、これをどうやって使いこなすかというのが悩みどころなのではないでしょうか。いままでのアナログ入力だけのポータブルアンプだと話は簡単なのですが、デジタル接続ではさまざまな決めごとがあります。これはまずソースであるプレーヤーになにを使うかというところから始まると思います。
そこでソースの場合分けをしながら以降の記事を書いていきます。
1. DA-10とアナログ接続
プレーヤーが旧iPodやAK100などの場合は、いままで通りに3.5mmミニ端子の付いたラインアウトドック(LOD)やミニ・ミニケーブルでアナログ接続が可能です。
DA-10の場合にはアナログ入力端子とヘッドフォン出力端子が反対側にあるので、バックのなかで立てておきたい場合にはケーブルにストレートではなくL字型の端子をもったものを使うとよいでしょう。(あるいはケースとの兼ね合いです)
iPod ClassicとDA-10
付属のケースを使うこともできますが、私は慣れた背面直置きでバンド留めを使っています。アルミボディの黒いポッチはラバーで、そのままiPhoneをおいてクッションになります。黒いポッチはデザイン的なアクセントにもなってます。海外製品だと両面テープが入ってくれば良い方なので、この辺の細かさは国産メーカー品ですね。
この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: AUXにします
ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いでしょう。
iPod classicにラインアウトドックを使ってアナログ出ししてDA-10のAUXに接続し、Ultrasone Edition8で試聴しました。
分厚い力強い音で、Edition8のベースを十分生かして迫力を生んでくれます。滑らかでほどよく暖かいところが良いですね。
高音域から低音域までしっかりと再現され、アナログアンプとしての解像力もかなり良く、Edition8クラスでも文句がないくらいの音質です。楽器の音の明瞭感も良く、音色は優しい鳴り方です。ヴォーカルの再現も同様に良いですね。小さくてもデノンらしい厚みがあって力強いデノンサウンドが楽しめます。
iPodソースにしてはかなり良く、アンプ単体としても良い出来だと思います。ただ音の広がりは悪くないけど標準的です。
2. DA-10とデジタル接続
ソース機器がiPhone/iPadやPCに接続する場合にはデジタル接続が向いています。(iPodでも可能です)
この場合、DA-10では2系統のデジタル接続があるため、デジタル接続では二つのUSB端子をどう使い分けるかが問題となるでしょう。主にソースと端子の組み合わせで3通りが考えられます。普通の使い方が2通りと、マニアックな使い方がひとつです。(下記の2-1,2-2,2-3です)
まず簡単に話を始めると、USB AはiPhone/iPad用(2-1)で外で使いたいとき、USB microBはPC用(2-2)で家で使いたいときに使います。
2-1 USB Aを使用する - 外でiPhone/iPad/iPodを使う
これはいわゆるiDevice接続というやつで、ケーブルは同梱のライトニング - USB Aケーブル(10cm)またはApple 30pinドックコネクタ - USB Aケーブル(10cm)を使います。
この接続方式は旧iPod時代からありましたが、最近Appleでは30pinコネクタを排してライトニングになり、アナログラインアウトがライトニングではなくなったので必要性が増したと言えます。また最近この方式は拡張されてPhilipsのM2Lみたいにデジタル接続のヘッドフォンも現れています。iPodでは5.5世代(iPod Video)以降でサポートされていますがDENONの保証はClassic以降です。
この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: iPod/iPhoneにします
入力をiPod/iPhone位置に切り替えてから同梱のケーブルでDA-10のUSB AにiPod/iPhoneをつないでください。
ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いでしょう。
試聴はiPhoneに標準の白いケーブルを使ってDA-10のUSB Aに接続し、Edition8で試聴しました。
デジタル接続にすると透明感とクリアさがぐっとまして、情報量もかなり増えます。楽器の音鳴りがシャープになり、キレが良く、音色が鮮明にわかります。低域も深くなり、かつ膨らみがあまりなくタイトですね。
全体にかなり音質は向上し、このDAC(+AL32)部分の性能は高いと思います。4万円とは思えないくらい。細部は荒くなくなめらかに音像の面取りが丁寧にされているようで、DAC部分の上質さが分かります。
iPodとのアナログ接続だとやや中低域寄りでしたが、デジタルだと少し高音域にあがって帯域バランスが良くなり、全体も引き締まる感じです。デジタルただとワイドレンジ感もあります。
力強いがやや荒削りのアナログに比べると、デジタルでは上質で整ってHiFiチックに感じられます。けれどもやはり濃厚さと元気さは残り、分析的とかドライさはないですね。
iPhone6+DA-10+ベンチャークラフトケーブル
標準の白ケーブルでもこのくらいデジタルの良さはわかりますが、さらにケーブルが変えられます。このライトニング - USB Aのタイプのオーディオグレードの交換ケーブルはVentureCraftとフルテックが出しています。
白ケーブルをVentureCraftにするとさらに一・二枚ベールが剥がれたように音空間が晴れあがってクリアになります。いっそう滑らかで音に重みが出る感じで、細部のなめらかさがさらに上質となり、粗さはほぼ消えます。低音域もさらに深く、低い音が自然にぶおっと出てくる感じです。豊かさが増して、全体に音質のかさ上げがあります。このくらいになるとかなりのマニアでも納得する音だと思います。42000円のアンプに15000円のケーブルを足すのかという話もありますが、15000円のケーブルを加えてもコストパフォーマンスはかなり良いと思いますね。
またVentureCraftのケーブルだとL字プラグなので、ケーブル側を下にしてバッグに入れることができます。入力と出力が逆側についているDA-10ではこれがとても便利ですね。
iPhone5S+DA-10+iQube V3
専用のラインアウト端子はありませんが、出力をFixにして3段重ねの別ポータブルアンプに入れることもできます。(Fixにしたらいったん電源オフが必要です)
こうするとDA-10のDAC部分の音の上質さもよくわかると思います。
また、このようにiPhoneをプレーヤーとして使ったシステムで面白いのはアプリを使って音を変えられるという点だと思います。
たとえば、素直に高音質で聴きたいときはNeutron Playerがお勧めです。iPhoneのライブラリの音源も、FLACなどの音源も聴くことができます。もちろんこれは好みでもあります。
音を変えたいときはAudiophile Playerがお勧めです。これはMaXX AuidoというDSPで信号処理をするので大胆に音が変わります。もちろんRadsonやTxDolbyやCanOpenerなどが良いという人もいるでしょう。この辺ができるのもスマートフォンならではだと思いますね。
AudioPhileアプリ
最近ではプレーヤー+ポータブルアンプという形態は話題性でハイレゾプレーヤーに押され気味だと思いますが、スマートフォン+ポータブルアンプって面白い展開があると思います。ハイレゾDAPのハード・CPUに比べると最新スマートフォンははるかに強力な演算性能があります。HF Playerの記事でも書きましたが、ソフトウエアの方が柔軟で高精細に信号処理ができます。あるいはアプリでHF Playerのようにアップサンプリングも可能だし、そのうちリアルタイムDSD変換なども可能になるかもしれません。ハイレゾDAPだと機能は固定ですので、アプリを入れ替えられるスマートフォン+ポータブルアンプは面白い展開ができるかもしれません。
2-2 普通にUSB MicroBを使用する - 家でPCで聴く
DA-10は家ではPCにつないでUSB DACとして使えます。このときはUSB MicroBを使用します。
Macではドライバーが不要で、Windowsではドライバーが必要です。オーディオクラス2ですね。下記ページからダウンロードできます。
http://www.denon.jp/jp/Product/Pages/Product-Detail.aspx?Catid=382c2279-a153-4d3c-b8fa-81b930454f67&SubId=USBDAC&ProductId=DA-10
この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします。ただしアクティブスピーカーにつなぐときはFixが良いでしょう。
充電モード切り替えスイッチ: 充電したいときはONですが、OFFにして電池給電にすると充電のノイズが減ります。
入力ソース切り替えスイッチ: USB DACにします
ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いとおもいますが、HD800などをつなぐときはHighにします。
USB microB端子のケーブルが同梱されているので、これでPCと接続できますが、オーディオ用のUSBケーブルを使うことでここでも音質をあげられます。
microB端子をPCに接続するときはPCMが192/24まで、DSDは5.6MHzまでです。なお352kHzがソフトによっては見えることがありますが、これはDoP 5.6MHzを通すための一時措置でPCMで352kHzは使えません。(DA300でも同じです)
2-3 マニアックにUSB MicroBを使う - ハイレゾ・DSD対応をポータブルで使う
この辺はちょっとマニアックな世界です。DA-10の場合にはUSB microBもiPhoneで使えました。ただしiOS7.0以上が必要です。
この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: USB DACにします
iPhoneにLightningUSBカメラアダプタ(カメラコネクションキット)を接続して、それにUSB A - micro BのUSBケーブルを接続するか、直結アダプタを使ってmicroBに接続します。
スマートフォンをプレーヤーとして使った場合のUSB microBとUSB Aの使い分けはハイレゾ再生とプレーヤーの再生時間のトレードオフ、または自由度の高さと便利さのトレードオフになります。
これは簡単にいうとmicroBのときは基本的にPCと同じ理屈だからで、USB Aのときはいわゆる専用のiDevice接続だからですね。むずかしくいうとプレーヤー(iPhone)をアクセサリーモード(USB A)とホストモード(USB microB)で使う場合の違いによるもので、下記のリンクをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/404882406.html
* 2-1方式(いわゆるiDevice接続)の利点は次のようなものです。
簡単にケーブル一本で使える(高音質ケーブルもある)。
iPhone側の電池消費が少ない(理屈では)。
音源が48/24までのPCMのみ。
* 2-3方式(ホストモード接続)の利点は次のようなものです。
ケーブルにLightningUSBカメラアダプタ(または30ピンのカメラコネクションキット)が必要。(これはOTGケーブルとおなじです)
iPhone側の電力消費が多い(理屈では)。
入力レートの規制がない。ハイレゾ再生が可能。PCMで192kHzまで、DSDネイティブ再生も可能。
もうひとつの利点としてAndroidでも接続できると書きたかったんですが、やってみたらAndroidはWalkman ZX1+NWH10でもUSB Audio Player Pro+OTGでも対応できないようです。たぶんドライバーとDA-10ファームの問題かと思います。Android 5.0ではどうなるかは分かりません。
iPhone5S+DA-10+LightningUSBカメラアダプタと直結プラグ
というわけでiPhoneにLightningUSBカメラアダプタと直結プラグを使って、ハイレゾ再生をしてみました。まずアプリはHF Playerを使ってヘルゲリエンの192/24を聴くとちょっとポータブルで聴いてるとは思えないくらい豊かな音を楽しめます。DA-10の場合はAdvanced AL32でアップサンプリングをしているのですが、入力サンプリングレートが高いほど低いリサンプリング率で済みますので(改変が少ない)、やはりハイレゾ音源の効果はあると思います。HF Playerでアップサンプリングしたら、というときにはどちらの補完性能が高いかによると思いますが、この辺はもう自分でいろいろ変えて確かめてみる、という世界だと思います。ちなみにPCM1795のスペック上の最大値は768kHzです。
Hibikiを使ったDoPによるDSDネイティブ再生
次にアプリにHibikiを使ってDoPでDSDネイティブ再生をしてみました。これは丸くアナログ的なDSDネイティヴ再生オンで、DSDの良さがポータブルでも楽しめます。DSDはAL32を通りませんので純粋にDACの良さです。
3. DA-10のお勧めの使い方
DA-10の一番のお勧めの使い方はUSB Aを使用したいわゆるiDevice接続でのポータブル使用だと思います。簡単に高音質で聴けます。電車の中でiPhoneでSNSやネットニュースを見終わってから、さあゆっくりしようというときにDA-10にiPhoneをつないで寝ながら音楽タイム、という感じで使えます。
あるいはiPod Touchと化した以前モデルのiPhoneを専用機として有効活用という手もあります(私は主にこれ)。
DA-10 + HD800
音質が良いので家に帰ったらPCにUSB microBでつないでmini/標準変換のアダプターを使って大きなヘッドフォンで聴くということもできます。ゲインがついたのでゼンハイザーHD800クラスを使うこともできます。
ポータブルでもハイレゾやDSDネイティブを試してみたい人にはポータブルでのUSB microB使用がよいですね。ただケーブルの取り回しがちょっと難です。
iPhone + DA-10 + LightningUSBカメラアダプタとUSBケーブル
ヘッドフォンの相性で言うと、Edition8はDENONらしい躍動感とDA-10の緻密さを堪能させてくれます。またW60+Estronが滑らかで音楽的、かつ緻密な側面を再現してくれます。Aurisonics Rocketsはダイナミックで動感あふれる側面を再現してくれます。
* まとめ
長く書いて来ましたが、簡易バージョンで言うと、DA-10は力強いアンプ部分と上質なDAC部分があいまって、価格以上の音を出しています。ボディもアルミの仕上げが上等でカッコ良いですね。ポータブルオーディオの初心者でも簡単なiPhoneとのデジタル接続で手軽に高音質が取り出せます。マニアなら、さらにDSDネイティブ再生をしてみたり、三段重ねのシステムに使ったりという拡張性もあります。
価格を考えるとかなりオススメのDAC内蔵ポタアンと言えるでしょう。
あらためて普通の量販店に行って国産オーディオメーカーのポータブルヘッドフォンアンプが買えて保証もきちんと受けられるという時代になったんだなあと感銘します。私みたいに個人輸入してSR71とかXinとか言ってた昔からやっている人には隔世の感があります。今回いろいろと調べてみてさらにその感を強くしました。
DENON DA-10はスマートフォンに向いたDAC内蔵のポータブルアンプで、私みたいに海外マニアック製品マニアでも納得してしまうくらいの音質の高さがあります。また音へのこだわりがきちんと音質につながっていると思います。はじめはDENONもポータブルアンプを出したかと思ったくらいでしたが、中を調べて音を聞くとよく作られているので納得しました。
DA300でもなかなかと思ったんですが、DA-10では感服するくらい良く出来てると思います。特に音質レベルと価格を考えると、かなりコストパフォーマンスは高いと思います。
DA-10ではちゃんとデノンらしい音が楽しめるのもよいと思いますね。同じD&Mでもマランツがポータブルアンプを作ったらまた音は違うのではないでしょうか。DA-10とは別のラインをマランツブランドで出すという展開もあってよさそうです。
ただ有線でアンプ接続時はやはりiPhoneは使いづらくなりますので、DA-10がAirplay対応でこの音質だったら、とも思います。Airplayはライセンス問題とかもあると思いますが、DENONはAirplayに強いのでぜひトライしてもらいたいですね。
これから長年使うとさらに国産ブランドの信頼性の高さ・故障のなさという良い面も見えてくるかもしれません。これはパイオニアのU-05でも思ったんですが、たぶん国産メーカーは技術的には地力はかなりあると思うので、あとは企画の問題だと思います。さらにはトレンドを作っていくということも期待したいですね。
これからもこのポータブルの世界に国産の品質の高いが出てくることを期待しています。
DA-10は国産オーディオメーカーの老舗であるDENONが開発したDAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプです。入力はアナログ入力のほかに2系統のUSB入力をもっています。
DA-10底面
Appleが30pinドックコネクタを採用していた時はアナログのラインアウトがあったので、アナログ入力で済んだのですが、Appleがライトニングコネクタに変えてからはアナログの出力が出せなくなったので、iPhoneから品質の良い音の取り出しをするためにはこうしたDAC付きのポータブルアンプが必要となってきたという経緯があります。
DA-10のUSB端子はUSB AとUSB microBの二つあります。これは簡単に言うとUSB AがiPhoneとのデジタル接続をする端子で、USB MicroBはPCと接続をするための端子となります。これについて詳細は以降書いていきます。DACチップはいまやバーブラウンの主力であるPCM1795です。DSD再生など最新の技術動向に向いています。
DA-10正面
出力はミニステレオ端子ひとつで、ヘッドフォン出力です。ただしこれは出力を固定することでアクティブスピーカーなどデスクトップでも使えるようにしてあります。
DACの入力はDA300に準じたもので、最大でPCMが196kHz/24bitまで、DSDは5.6MHz(DSD128)までのネイティブ再生が可能です。iPhoneとの接続では48kHz/24bitが上限です(例外はあとで)。
* 技術的特徴 - Advanced AL32ありき
いわく、アーキテクチャの踏襲という意味ではSX1をデスクトップにしたのがDA300で、町に持ち出すのがDA-10ということです。
DA-10はポータブル版のDA300ともいうべき多くの特徴を持っています。まずDENONの看板でもあるAdvanced AL32(以下AL32)です。
これはまずビット拡張で32bitにしてからアップサンプル(時間軸拡張と言っている)をしています。
特徴的なのは搭載するPCM1975 DACチップの特性を生かして、出来合いのPCM1975のデジタルフィルターをバイパスして、より高精度のAdvanced AL32をデジタルフィルターとして置き換えているということです。
このようにまずアルファプロセッシングありきで設計がなされ、このアップサンプリング・32ビット拡張とフィルター部分の置き換えによってPCM1975の能力を最大限に発揮できるというわけです。アップサンプリングはDA-10に入力されるサンプリングレートによって調整が行われ、ハイレゾデータを生かすことができます。
この効きと言うのはデータの下位ビットに相当するところで、例えば静寂の部分から音の立ち上がりが滑らかと言うことです。前の記事でも書きましたが、この下位ビットの処理が実のところハイレゾのかなめですね。
ちなみにAdvanced AL32はFPGAで実装されています。またAL32はPCM向けのものですから、DSD再生時ではAL32はバイパスされます。
* 技術的特徴 - ちいさくともオーディオ機材
それとDA300と同様にオーディオ機器らしいこった設計もDA-10のポイントです。
DA300のレビューのときも書きましたが、DA-10でもDACマスタークロックデザインを取り入れています。これはDACのクロックを主(マスター)と明示することで、周辺回路との正しい同期を取るというものです。クロックというのはデジタル機器の基本ですから、これによってより正確なクロックタイミングが得られることが期待できます。
ピュアオーディオ製品ではクロックのマスター・スレーブというのは良くありますが、ポータブルでは初めて聞くように思います。ポータブルの場合にはスペースのために実装的にも難があって、例えば他のDAC内蔵ポータブルアンプではUSBコントローラの近くにクロックがあったりしますが、DA-10ではDACの近くにクロックがあり、DACのクロックがあくまでマスターとして周辺機器であるところのUSBコントローラが従になるわけです。
アンプ部分は±6.5Vの高電圧で駆動し、後段(バッファ部分)がディスクリートで設計されて十分な性能を確保しています。パーツもオーディオグレードコンデンサーの採用や、ポータブルヘッドホンアンプでは標準的な角型チップ抵抗よりも低ノイズ、低歪みのメルフ抵抗(丸いやつ)を採用するなど考慮がなされています。
また独立電源回路基板もポータブルにしてはかなりこっています。一般的なポータブルアンプだとオーディオ回路と同一基盤に電源があるわけで、これはある意味仕方無いですが、DA-10ではDC-DCコンバーターのノイズの影響を低減させるために基盤構成を2階建てとして電源を別基盤化しています。GNDもデジタルとアナログ部分を分離してノイズを考慮したレイアウトを行っています。
つまり回路・電源別、デジタル・アナログ別という基本も守っています。
* 技術的特徴 - 小型化への挑戦
まさにDA-10は小さくともオーディオコンポーネントらしいという感じです。DA300が手のひらに入ったというイメージでもありますが、小さくすることはそう容易ではありません。
実際に設計は音質にかかわる主要部品をDA300同等にするというところからスタートしたということです。まずCADなどでシミュレーションを行いますがこの時点で部品の占める面積が多すぎるという問題に直面します。そこで従来ならば基盤構成は4層ですが、DA-10では6層ビルド基盤を採用します。これはウエハースのように基盤を組み合わせたもので、これによりGNDのポテンシャルの向上や、クロックラインの最短接続、パターン干渉の低減などの効果がうまれました。
コスト的にはかなりアップしましたが、音質やサイズの相反する問題をこれで解決できたということです。
DA300みたいなサイズのUSB DACならともかくも、スペースに制約のあるポータブルまでこうしたオーディオの基本を実直に守るのには頭が下がります。これもDENONがまじめなオーディオメーカーである証なのでしょう。
* DA-10のさまざまな機能
DA300からの改良という点では、DA300ではゲインがなくてHD800などが音量が取れなかった問題をDA-10では改良しています。DA300ではHD800は音量的に苦しかったのですが、DA-10ではうるさいくらいに音量が取れます。これで録音レベルの低い高音質録音の音源にも十分対応できます。スペック的には8-600オームまで駆動できます。
DA-10側面
ラインアウト端子はないのですが、ヘッドフォン出力は可変(var)と固定(Fix)が選べるので、外部出力機器に接続するときは固定で出力することができます。三段システムでDACとして使いたい人もいますからね。
なお可変と固定の切り替えには電源をいったんオフにしなければなりませんので、注意してください。
電池の持ちに関しては、大容量(3200mAh)のリチウムイオンバッテリーにより、iPod接続時(USB AでのiDevice接続時)で7.5時間の再生が可能ということです(USB microBで電池使用した場合には6.5時間ということです)。アナログだけなら24時間は持つのもなにげにすごいところです。この辺は電源管理が徹底されていることもうかがえますね。
電源を投入するときにチャージランプの色点灯でだいたいの残量がわかります。
* DA-10の使いこなしと音質インプレ
パッケージを見ると、箱や梱包の時点で満足感が高いですね。パイオニアのU05でも思ったけど、こういうところはさすが国産で、私みたいに海外の怪しいものに慣れてるとこういうのが新鮮です。なにしろ保証書の代わりに名刺が一枚入ってるというのが当たり前だと思ってましたので(それもない場合がほとんど)、化粧箱に入ってアンプがくるだけで新鮮です。
iPhoneと合わせるためのケースが付属してきます。ケースを使用した時にはケーブルをガードしてくれるので、入力と出力が逆側なのでバッグの中で収まりにくいという問題を緩和してくれます。
筐体はデザインや質感は高く高級感があります。DA-10のデザインは表面がヘアライン、テーパー部分が梨地仕上げとなっており、その違いを強調するために処理の境目に段差を設けています。この辺はかなり試行錯誤をしたということで、たしかにすばらしい高級感のある仕上げとなっています。ヘアラインはプレートを張っているのではなくアルミの一枚板です。
金属のシャーシはRFノイズ対策にもなるでしょう。中ではさらにパネルと基板の導通を工夫することでシールド効果を生じさせています。実際に電波を輻射させる状態でiPhoneを置いても全くと言ってよいほどノイズはDA-10に影響しません。
サイズ的にはやや大きめですが、軽いので携帯にはそれほど苦になりません。デザインはiPhone5に合わせたようですが、iPhone6でも大丈夫です。
DA-10はスマートフォンに向いたアンプということが言えます。それゆえにまたDA-10を手にしたときに、これをどうやって使いこなすかというのが悩みどころなのではないでしょうか。いままでのアナログ入力だけのポータブルアンプだと話は簡単なのですが、デジタル接続ではさまざまな決めごとがあります。これはまずソースであるプレーヤーになにを使うかというところから始まると思います。
そこでソースの場合分けをしながら以降の記事を書いていきます。
1. DA-10とアナログ接続
プレーヤーが旧iPodやAK100などの場合は、いままで通りに3.5mmミニ端子の付いたラインアウトドック(LOD)やミニ・ミニケーブルでアナログ接続が可能です。
DA-10の場合にはアナログ入力端子とヘッドフォン出力端子が反対側にあるので、バックのなかで立てておきたい場合にはケーブルにストレートではなくL字型の端子をもったものを使うとよいでしょう。(あるいはケースとの兼ね合いです)
iPod ClassicとDA-10
付属のケースを使うこともできますが、私は慣れた背面直置きでバンド留めを使っています。アルミボディの黒いポッチはラバーで、そのままiPhoneをおいてクッションになります。黒いポッチはデザイン的なアクセントにもなってます。海外製品だと両面テープが入ってくれば良い方なので、この辺の細かさは国産メーカー品ですね。
この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: AUXにします
ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いでしょう。
iPod classicにラインアウトドックを使ってアナログ出ししてDA-10のAUXに接続し、Ultrasone Edition8で試聴しました。
分厚い力強い音で、Edition8のベースを十分生かして迫力を生んでくれます。滑らかでほどよく暖かいところが良いですね。
高音域から低音域までしっかりと再現され、アナログアンプとしての解像力もかなり良く、Edition8クラスでも文句がないくらいの音質です。楽器の音の明瞭感も良く、音色は優しい鳴り方です。ヴォーカルの再現も同様に良いですね。小さくてもデノンらしい厚みがあって力強いデノンサウンドが楽しめます。
iPodソースにしてはかなり良く、アンプ単体としても良い出来だと思います。ただ音の広がりは悪くないけど標準的です。
2. DA-10とデジタル接続
ソース機器がiPhone/iPadやPCに接続する場合にはデジタル接続が向いています。(iPodでも可能です)
この場合、DA-10では2系統のデジタル接続があるため、デジタル接続では二つのUSB端子をどう使い分けるかが問題となるでしょう。主にソースと端子の組み合わせで3通りが考えられます。普通の使い方が2通りと、マニアックな使い方がひとつです。(下記の2-1,2-2,2-3です)
まず簡単に話を始めると、USB AはiPhone/iPad用(2-1)で外で使いたいとき、USB microBはPC用(2-2)で家で使いたいときに使います。
2-1 USB Aを使用する - 外でiPhone/iPad/iPodを使う
これはいわゆるiDevice接続というやつで、ケーブルは同梱のライトニング - USB Aケーブル(10cm)またはApple 30pinドックコネクタ - USB Aケーブル(10cm)を使います。
この接続方式は旧iPod時代からありましたが、最近Appleでは30pinコネクタを排してライトニングになり、アナログラインアウトがライトニングではなくなったので必要性が増したと言えます。また最近この方式は拡張されてPhilipsのM2Lみたいにデジタル接続のヘッドフォンも現れています。iPodでは5.5世代(iPod Video)以降でサポートされていますがDENONの保証はClassic以降です。
この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: iPod/iPhoneにします
入力をiPod/iPhone位置に切り替えてから同梱のケーブルでDA-10のUSB AにiPod/iPhoneをつないでください。
ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いでしょう。
試聴はiPhoneに標準の白いケーブルを使ってDA-10のUSB Aに接続し、Edition8で試聴しました。
デジタル接続にすると透明感とクリアさがぐっとまして、情報量もかなり増えます。楽器の音鳴りがシャープになり、キレが良く、音色が鮮明にわかります。低域も深くなり、かつ膨らみがあまりなくタイトですね。
全体にかなり音質は向上し、このDAC(+AL32)部分の性能は高いと思います。4万円とは思えないくらい。細部は荒くなくなめらかに音像の面取りが丁寧にされているようで、DAC部分の上質さが分かります。
iPodとのアナログ接続だとやや中低域寄りでしたが、デジタルだと少し高音域にあがって帯域バランスが良くなり、全体も引き締まる感じです。デジタルただとワイドレンジ感もあります。
力強いがやや荒削りのアナログに比べると、デジタルでは上質で整ってHiFiチックに感じられます。けれどもやはり濃厚さと元気さは残り、分析的とかドライさはないですね。
iPhone6+DA-10+ベンチャークラフトケーブル
標準の白ケーブルでもこのくらいデジタルの良さはわかりますが、さらにケーブルが変えられます。このライトニング - USB Aのタイプのオーディオグレードの交換ケーブルはVentureCraftとフルテックが出しています。
白ケーブルをVentureCraftにするとさらに一・二枚ベールが剥がれたように音空間が晴れあがってクリアになります。いっそう滑らかで音に重みが出る感じで、細部のなめらかさがさらに上質となり、粗さはほぼ消えます。低音域もさらに深く、低い音が自然にぶおっと出てくる感じです。豊かさが増して、全体に音質のかさ上げがあります。このくらいになるとかなりのマニアでも納得する音だと思います。42000円のアンプに15000円のケーブルを足すのかという話もありますが、15000円のケーブルを加えてもコストパフォーマンスはかなり良いと思いますね。
またVentureCraftのケーブルだとL字プラグなので、ケーブル側を下にしてバッグに入れることができます。入力と出力が逆側についているDA-10ではこれがとても便利ですね。
iPhone5S+DA-10+iQube V3
専用のラインアウト端子はありませんが、出力をFixにして3段重ねの別ポータブルアンプに入れることもできます。(Fixにしたらいったん電源オフが必要です)
こうするとDA-10のDAC部分の音の上質さもよくわかると思います。
また、このようにiPhoneをプレーヤーとして使ったシステムで面白いのはアプリを使って音を変えられるという点だと思います。
たとえば、素直に高音質で聴きたいときはNeutron Playerがお勧めです。iPhoneのライブラリの音源も、FLACなどの音源も聴くことができます。もちろんこれは好みでもあります。
音を変えたいときはAudiophile Playerがお勧めです。これはMaXX AuidoというDSPで信号処理をするので大胆に音が変わります。もちろんRadsonやTxDolbyやCanOpenerなどが良いという人もいるでしょう。この辺ができるのもスマートフォンならではだと思いますね。
AudioPhileアプリ
最近ではプレーヤー+ポータブルアンプという形態は話題性でハイレゾプレーヤーに押され気味だと思いますが、スマートフォン+ポータブルアンプって面白い展開があると思います。ハイレゾDAPのハード・CPUに比べると最新スマートフォンははるかに強力な演算性能があります。HF Playerの記事でも書きましたが、ソフトウエアの方が柔軟で高精細に信号処理ができます。あるいはアプリでHF Playerのようにアップサンプリングも可能だし、そのうちリアルタイムDSD変換なども可能になるかもしれません。ハイレゾDAPだと機能は固定ですので、アプリを入れ替えられるスマートフォン+ポータブルアンプは面白い展開ができるかもしれません。
2-2 普通にUSB MicroBを使用する - 家でPCで聴く
DA-10は家ではPCにつないでUSB DACとして使えます。このときはUSB MicroBを使用します。
Macではドライバーが不要で、Windowsではドライバーが必要です。オーディオクラス2ですね。下記ページからダウンロードできます。
http://www.denon.jp/jp/Product/Pages/Product-Detail.aspx?Catid=382c2279-a153-4d3c-b8fa-81b930454f67&SubId=USBDAC&ProductId=DA-10
この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします。ただしアクティブスピーカーにつなぐときはFixが良いでしょう。
充電モード切り替えスイッチ: 充電したいときはONですが、OFFにして電池給電にすると充電のノイズが減ります。
入力ソース切り替えスイッチ: USB DACにします
ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いとおもいますが、HD800などをつなぐときはHighにします。
USB microB端子のケーブルが同梱されているので、これでPCと接続できますが、オーディオ用のUSBケーブルを使うことでここでも音質をあげられます。
microB端子をPCに接続するときはPCMが192/24まで、DSDは5.6MHzまでです。なお352kHzがソフトによっては見えることがありますが、これはDoP 5.6MHzを通すための一時措置でPCMで352kHzは使えません。(DA300でも同じです)
2-3 マニアックにUSB MicroBを使う - ハイレゾ・DSD対応をポータブルで使う
この辺はちょっとマニアックな世界です。DA-10の場合にはUSB microBもiPhoneで使えました。ただしiOS7.0以上が必要です。
この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: USB DACにします
iPhoneにLightningUSBカメラアダプタ(カメラコネクションキット)を接続して、それにUSB A - micro BのUSBケーブルを接続するか、直結アダプタを使ってmicroBに接続します。
スマートフォンをプレーヤーとして使った場合のUSB microBとUSB Aの使い分けはハイレゾ再生とプレーヤーの再生時間のトレードオフ、または自由度の高さと便利さのトレードオフになります。
これは簡単にいうとmicroBのときは基本的にPCと同じ理屈だからで、USB Aのときはいわゆる専用のiDevice接続だからですね。むずかしくいうとプレーヤー(iPhone)をアクセサリーモード(USB A)とホストモード(USB microB)で使う場合の違いによるもので、下記のリンクをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/404882406.html
* 2-1方式(いわゆるiDevice接続)の利点は次のようなものです。
簡単にケーブル一本で使える(高音質ケーブルもある)。
iPhone側の電池消費が少ない(理屈では)。
音源が48/24までのPCMのみ。
* 2-3方式(ホストモード接続)の利点は次のようなものです。
ケーブルにLightningUSBカメラアダプタ(または30ピンのカメラコネクションキット)が必要。(これはOTGケーブルとおなじです)
iPhone側の電力消費が多い(理屈では)。
入力レートの規制がない。ハイレゾ再生が可能。PCMで192kHzまで、DSDネイティブ再生も可能。
もうひとつの利点としてAndroidでも接続できると書きたかったんですが、やってみたらAndroidはWalkman ZX1+NWH10でもUSB Audio Player Pro+OTGでも対応できないようです。たぶんドライバーとDA-10ファームの問題かと思います。Android 5.0ではどうなるかは分かりません。
iPhone5S+DA-10+LightningUSBカメラアダプタと直結プラグ
というわけでiPhoneにLightningUSBカメラアダプタと直結プラグを使って、ハイレゾ再生をしてみました。まずアプリはHF Playerを使ってヘルゲリエンの192/24を聴くとちょっとポータブルで聴いてるとは思えないくらい豊かな音を楽しめます。DA-10の場合はAdvanced AL32でアップサンプリングをしているのですが、入力サンプリングレートが高いほど低いリサンプリング率で済みますので(改変が少ない)、やはりハイレゾ音源の効果はあると思います。HF Playerでアップサンプリングしたら、というときにはどちらの補完性能が高いかによると思いますが、この辺はもう自分でいろいろ変えて確かめてみる、という世界だと思います。ちなみにPCM1795のスペック上の最大値は768kHzです。
Hibikiを使ったDoPによるDSDネイティブ再生
次にアプリにHibikiを使ってDoPでDSDネイティブ再生をしてみました。これは丸くアナログ的なDSDネイティヴ再生オンで、DSDの良さがポータブルでも楽しめます。DSDはAL32を通りませんので純粋にDACの良さです。
3. DA-10のお勧めの使い方
DA-10の一番のお勧めの使い方はUSB Aを使用したいわゆるiDevice接続でのポータブル使用だと思います。簡単に高音質で聴けます。電車の中でiPhoneでSNSやネットニュースを見終わってから、さあゆっくりしようというときにDA-10にiPhoneをつないで寝ながら音楽タイム、という感じで使えます。
あるいはiPod Touchと化した以前モデルのiPhoneを専用機として有効活用という手もあります(私は主にこれ)。
DA-10 + HD800
音質が良いので家に帰ったらPCにUSB microBでつないでmini/標準変換のアダプターを使って大きなヘッドフォンで聴くということもできます。ゲインがついたのでゼンハイザーHD800クラスを使うこともできます。
ポータブルでもハイレゾやDSDネイティブを試してみたい人にはポータブルでのUSB microB使用がよいですね。ただケーブルの取り回しがちょっと難です。
iPhone + DA-10 + LightningUSBカメラアダプタとUSBケーブル
ヘッドフォンの相性で言うと、Edition8はDENONらしい躍動感とDA-10の緻密さを堪能させてくれます。またW60+Estronが滑らかで音楽的、かつ緻密な側面を再現してくれます。Aurisonics Rocketsはダイナミックで動感あふれる側面を再現してくれます。
* まとめ
長く書いて来ましたが、簡易バージョンで言うと、DA-10は力強いアンプ部分と上質なDAC部分があいまって、価格以上の音を出しています。ボディもアルミの仕上げが上等でカッコ良いですね。ポータブルオーディオの初心者でも簡単なiPhoneとのデジタル接続で手軽に高音質が取り出せます。マニアなら、さらにDSDネイティブ再生をしてみたり、三段重ねのシステムに使ったりという拡張性もあります。
価格を考えるとかなりオススメのDAC内蔵ポタアンと言えるでしょう。
あらためて普通の量販店に行って国産オーディオメーカーのポータブルヘッドフォンアンプが買えて保証もきちんと受けられるという時代になったんだなあと感銘します。私みたいに個人輸入してSR71とかXinとか言ってた昔からやっている人には隔世の感があります。今回いろいろと調べてみてさらにその感を強くしました。
DENON DA-10はスマートフォンに向いたDAC内蔵のポータブルアンプで、私みたいに海外マニアック製品マニアでも納得してしまうくらいの音質の高さがあります。また音へのこだわりがきちんと音質につながっていると思います。はじめはDENONもポータブルアンプを出したかと思ったくらいでしたが、中を調べて音を聞くとよく作られているので納得しました。
DA300でもなかなかと思ったんですが、DA-10では感服するくらい良く出来てると思います。特に音質レベルと価格を考えると、かなりコストパフォーマンスは高いと思います。
DA-10ではちゃんとデノンらしい音が楽しめるのもよいと思いますね。同じD&Mでもマランツがポータブルアンプを作ったらまた音は違うのではないでしょうか。DA-10とは別のラインをマランツブランドで出すという展開もあってよさそうです。
ただ有線でアンプ接続時はやはりiPhoneは使いづらくなりますので、DA-10がAirplay対応でこの音質だったら、とも思います。Airplayはライセンス問題とかもあると思いますが、DENONはAirplayに強いのでぜひトライしてもらいたいですね。
これから長年使うとさらに国産ブランドの信頼性の高さ・故障のなさという良い面も見えてくるかもしれません。これはパイオニアのU-05でも思ったんですが、たぶん国産メーカーは技術的には地力はかなりあると思うので、あとは企画の問題だと思います。さらにはトレンドを作っていくということも期待したいですね。
これからもこのポータブルの世界に国産の品質の高いが出てくることを期待しています。
2014年10月19日
海外レポートに見るCanJam2014とRMAFの新製品
先週末にロッキーマウンテンオーディオフェストがデンバーで開催され、HeadFiのお祭りであるCanJamもそこで同時開催されています。
前の記事でCanJamで発表予定の新製品について書きました。
本記事ではショウの海外のレポート記事からのそこから面白そうな新製品などを紹介します。
Oppo PM-3 HA2
OppoのPM-3はクローズタイプになりました。ポータブルでも使えそうで、実際にOppoはHA2というDAC内蔵のポータブルアンプも出展してます。HA2はES9018Mで、DSD256対応?。
デジタル入力はDA10みたいにiDeviceとmicroB両用のようです。端子にわかりやすくABCってふってるのが面白い。
ながらくEdition8の代わりになるようなハイエンドポータブルヘッドフォンってなかったので(T5pくらいが例外)、HA2とPM-3には期待したいですね。
HeadFiにあったコメントによると、ちょっと開口部が小さいけどPM1より軽く締め付けも少ないということ。
Audeza-Z
なんと1200オームというインピーダンスの平面型ヘッドフォン。
これは新設計のボイスコイルとダイアフラムを採用しています。
1200オームの利点は(通常は良くないと言われる)アンプの出力インピーダンスが高くても十分なダンピングが確保できるということで、たとえば高出力OTL真空管アンプも作れるだろうということ。また電流駆動タイプのアンプにも向いてるだろうとのこと(普通の電圧駆動のアンプだとかなりボリュームを回すというわけです)。
Woo WA8
真空管アンプで知られるWooの真空管ポータブル。まだ数ヶ月先ということですが、大きさはiPhone6 plusくらいということ。3本の真空管はロシア製でまだちょっと分かりませんが、左二本が低出力モード、右の一本が高出力モードのようです。DACはWA7に準じているようです。
なんとなくA2Pを思わせる真空管ポータブルアンプですね。
Alpha prime
TH500RPをRPの純正modというなら、サードパーティーRP modの雄はAlpha Dogです。
Mad Dog, Alpha DogときてAlpha Primeではチューニングもずいぶん進化したようです。 (もとHeadroomの)TyllもRPがこんなに良くなるとは思わなかったって言ってます。ヘッドフォンもチューニング次第ですね。
Noble Audio
NobleはさきのHeadFi TVのように高級版のPrestageとK10ユニバーサルが目玉です。
こちらに展示がよくわかる動画がアップされています。
こちらはCanJamのNobleとChordの合同ブースの様子です。アメリカでは他の展示会でもよくChordとNobleは合同ブースを設けてます。
PS Audio Sprout
これもKickstarterオーディオもので、クラウドファンディングのDAC内蔵の一体型、50Wスピーカーアンプ、AptX対応BluetoothからMM対応フォノアンプも入って全部入りです。
i5はCEntranceのマイケルがindieGoGoで展開中のクラウドファンディングもの。
M8と同じDACチップでオーディファイル向けのiPhone5ケースというもの。仕上がりは良さそうです。またiPhone6バージョンも考えてはいるようです。
Schiit AudioのUSBメモリ型DACのFullaはわずか$89。
PCオーディオの初期はゴードンランキンが引っ張っていたわけですが、最近表に出てなかったゴードンがFPGAベースのUSBモジュールを作ったのもちらっと気になりました。
この前の東京インターナショナルオーディオショウの記事で私がBruno PutzeysのMola Molaの事を書いて唐突に思った人もいると思いますが、StereophileのJohn AtkinsonもRAMFのラップアップ記事でMola Molaについて特記してます。やはり見てる人はちゃんと見てますね〜
次はヘッドフォン祭!
2014年10月18日
Android 5.0 LollipopでUSB ドライバーサポート
前の記事に書いたようにいったんは棚上げとなったAndroidの標準ドライバーサポートは先日正式発表されたAndroid 5.0 Lollipop(旧称 Android L)でとうとう正式に実装されたようです。
Android now includes support for standard USB audio peripherals, allowing users to connect USB headsets, speakers, microphones, or other high performance digital peripherals.
上で参照されているOpus CodecについてはWikiをご覧ください。
それとプログラミング的にはAudioTrak APIのオーディオデータタイプに浮動小数点型が追加されました。AudioTrackはaudioTrack.play()みたいに使うインターフェイスでオーディオ再生の基本です。
これでAndroidのDAWアプリにプラスになるのでしょう。今までは8bitと16bitしかありませんでしたが32bit floatが増えたわけです。相変わらず24bitはないけど、32bit floatでキャストして代替できそうにも思いますが。
public static final int ENCODING_PCM_FLOAT
Audio data format: single-precision floating-point per sample
Constant Value: 4 (0x00000004)
さて、ついでにもう一方のUSB DAC方面の懸案であるWindowsのUSBオーディオクラス2ドライバーの実装ですが、先日リリースされたWindows 10TPでの状況はいまのところあちこちみると実装されたっていうひとと、されてないってひとがいて不思議な状況です。
私も古いPCで試してみたけど、今までは弾かれてたドライバーのインストールしてるメッセージは出るので認識してるっぽいけど、パネルに出てこないですね。もしかするとプレビュー版ゆえハードによってなんかあるのかもしれません。
2014年10月12日
Encore mDAC - 隠れnuforce?のスマートフォン向けDACアンプ
ひさびさにまた怪しいものの紹介です。と思いましたが、よく調べるとあまり怪しくありませんでした。
Encore mDACはHeadFiで良いレビューを見かけて興味を持って買ってみたDAC内蔵のポータブルアンプです。レビューではPICO DAC/AMPの組み合わせより良いような雰囲気で、価格の割には期待以上だったという感じです。US$129ですので、ほんとうかいなという感じですが書いてたのが信頼おけるHeadphoneAddictなのでちょっと買ってみたしだいです。
そのあとにnuforceのJasonが書き込みして、実はmDACはuDAC3の後にデザインしたものでチャージャーやアンプを向上させたものだと書いてました。uDAC4となるべきものだったのでしょうか、その後にブランドをEncoreとして販売したものだそうです。調べてみるとEncoreは香港でのnuforceの代理店のようですが、おそらく自ブランドで製品をもちたいということではないかと思います。あるいはnuforceのIcon系の低価格品を移管するのかもしれませんが、そこまでは分かりません。
いずれにせよ性能の高さの秘密のひとつはこれが実質的にnuforceの設計だということが分かります。
またフランスで賞を取ったということでむこうの雑誌に詳細な記事があります。Quobzなので、スマートフォンでストリーミングを聞くときの機材によいですよ、ということでしょうか。ここで内部写真も見られます。DAC-ICはES9023で、アンプICはTPA6133Aということのようです。ちなみにES9023は直接2Vのラインレベル電圧出力が取り出せるので回路を単純化できます。
http://www.qobuz.com/fr-fr/info/Hi-Fi-Guide/Bancs-d-essai/Encore-mDAC-en-exclusivite176113
mDACはとてもシンプルなDAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプです。入力はUSB (microUSB)のみでアシンクロナス対応です。最大は96/24です。おそらくUSBオーディオクラス1でしょう。つまりドライバーレスです。(ホームページのUSB1.1/2.0はオーディオクラスではないと思います)
スマートフォン向けをかなり意識していると思いますが、まず添付のケーブルがOTGなのでAndroid接続用ですね。またUSBの口が二つあって、片側は再生用の入力ですが、片側はチャージ専用です。おそらく再生用はセルフパワーなのだと思います。つまりxDuooみたいにチャージon/offスイッチがない代わりにUSBの口が二つあるということなのでしょう。
DSD64対応とフランスのサイトの表にありますが(本文読んでませんけど)、AudirvanaにつなげてみるとDSDのサポートはないことが分かります。
出力はヘッドフォン端子(ステレオミニ)のみです。他にはボリュームのアップ・ダウンボタンがあります。これは読んでみるとデジタルではなく内部的にはアナログボリュームでステップをデジタルでコントロールしているということ。Dragonfly形式ですね。
また内部的にはDC-DCコンバータで昇圧をしてアンプ部分の電圧を稼いでいるようです。Xinの昔からこれはあるんですが、最近のは進歩してかなり静粛化したようですね。また回路的にはコンデンサーレスが特徴です。
ちょっと問題はバッテリーの持ちが6時間というところでしょうか。
私はeBayで香港の人から買いました。おそらくEncore関係者ではないかと思います。国慶節というのに即日発送してくれて、国際送料もなしとなかなか良かったのですが、いまどきの円安から14000円くらいにはなってしまいます。それでもまだ安いですが。。ちなみにAmazon(USA)で買える人にはレビューを書けば25%オフというクーポンをJasonが書いています。
iPhone5sとの大きさ比較
届いてみるとたしかにかなりコンパクトです。つくりもヘアライン仕上げがきれいで$129ではこの時点でも満足感が高いでしょう。
右はQuickStep
パッケージにはAndroid用にUSB OTGケーブルが入っています。マニュアルは簡単なものがついてきます。はじめに4時間ほど充電するように指示があります。
電源オンは3秒間押し続けで、オフも同じです。またオートパワーオフがないという質実剛健仕様なので、使用を終えるときには注意が必要です。
LEDは赤になるとチャージで、青がデータ再生中です。家で使うときはチャージUSBとデータUSBを両方使うこともできます。
mDACの使い方としてはPC/Macに接続する方法と、スマートフォンで使う方法があります。
PC/Macでは単にmicroUSB Bのケーブルに接続するだけです。標準ドライバーのクラス1だと思うので、PC/Macにおいてはドライバーインストールは不要です。
まずPC/Macに須山さんケーブルを使ってmDACを接続して、Edition8で聞いてみました。
音の特徴は歯切れがよくスピード感があることで、透明感に優れています。それでいてドライや分析的に陥ることなく、音楽的というほどでもないけれどもわりとなめらかで聴きやすさを持っています。この辺はさすがnuforce設計かもしれません。
音はわりとニュートラルで、コンデンサーレスであることも関係しているかもしれません。またベースのインパクトもけっこうあって、Edition8あたりを使うとかなり満足感の高いベースサウンドが楽しめます。
スマートフォンでも同様に接続するだけですがホスト接続ですので、iPhoneではカメラコネクションキット、ZX1ではNWH10、そのほかのAndroidではOTGケーブルが必要です。またAndroidではUSB Audio Player Proを使うことでどの端末でも接続が可能になります。
Walkman ZX1⇒NWH10⇒FitEar USB microBケーブル
iPhone5S⇒Lightningカメラアダプタ(CCK)⇒FitEar USB microBケーブル
外で使うときはさらに短くするため、直結プラグを使用してみました。
Walkman ZX1⇒NWH10⇒USB A/Micro B直結プラグ
直結プラグだとケーブルの固有着色が少なくなり、よりニュートラルに鮮度感も高くなるように感じます。使っているとやや暖かくなりますが、それほど熱くはなりません。電池の持ちについては、朝にWalkman ZX1とmDACをフルチャージにしておいて、同時に使ったところZX1の方が先に切れたので実用上はあんまり問題にならなそうです。
この組み合わせでの音質はかなり優れています。静粛で高感度イヤフォンでもヒスノイズが乗るということはありません。XinのころはDC-DCブースト方式だとかなりノイズが乗りましたが、さすがに進んでいます。
全体的に音質レベルも価格を考えるとかなり高く、コンパクトでスマートフォンにも向いているところがなかなか魅力的と言えるでしょう。特にWalkman ZX1でも動作するということでZX1ユーザーにはお勧めです。
*追記 10/12 21:03
どうやらnuforceは分裂したようで、表にたっていたJasonが外に出て新しいブランドを立ち上げている、というのが実際のところのようです。
Encore mDACはHeadFiで良いレビューを見かけて興味を持って買ってみたDAC内蔵のポータブルアンプです。レビューではPICO DAC/AMPの組み合わせより良いような雰囲気で、価格の割には期待以上だったという感じです。US$129ですので、ほんとうかいなという感じですが書いてたのが信頼おけるHeadphoneAddictなのでちょっと買ってみたしだいです。
そのあとにnuforceのJasonが書き込みして、実はmDACはuDAC3の後にデザインしたものでチャージャーやアンプを向上させたものだと書いてました。uDAC4となるべきものだったのでしょうか、その後にブランドをEncoreとして販売したものだそうです。調べてみるとEncoreは香港でのnuforceの代理店のようですが、おそらく自ブランドで製品をもちたいということではないかと思います。あるいはnuforceのIcon系の低価格品を移管するのかもしれませんが、そこまでは分かりません。
いずれにせよ性能の高さの秘密のひとつはこれが実質的にnuforceの設計だということが分かります。
またフランスで賞を取ったということでむこうの雑誌に詳細な記事があります。Quobzなので、スマートフォンでストリーミングを聞くときの機材によいですよ、ということでしょうか。ここで内部写真も見られます。DAC-ICはES9023で、アンプICはTPA6133Aということのようです。ちなみにES9023は直接2Vのラインレベル電圧出力が取り出せるので回路を単純化できます。
http://www.qobuz.com/fr-fr/info/Hi-Fi-Guide/Bancs-d-essai/Encore-mDAC-en-exclusivite176113
mDACはとてもシンプルなDAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプです。入力はUSB (microUSB)のみでアシンクロナス対応です。最大は96/24です。おそらくUSBオーディオクラス1でしょう。つまりドライバーレスです。(ホームページのUSB1.1/2.0はオーディオクラスではないと思います)
スマートフォン向けをかなり意識していると思いますが、まず添付のケーブルがOTGなのでAndroid接続用ですね。またUSBの口が二つあって、片側は再生用の入力ですが、片側はチャージ専用です。おそらく再生用はセルフパワーなのだと思います。つまりxDuooみたいにチャージon/offスイッチがない代わりにUSBの口が二つあるということなのでしょう。
DSD64対応とフランスのサイトの表にありますが(本文読んでませんけど)、AudirvanaにつなげてみるとDSDのサポートはないことが分かります。
出力はヘッドフォン端子(ステレオミニ)のみです。他にはボリュームのアップ・ダウンボタンがあります。これは読んでみるとデジタルではなく内部的にはアナログボリュームでステップをデジタルでコントロールしているということ。Dragonfly形式ですね。
また内部的にはDC-DCコンバータで昇圧をしてアンプ部分の電圧を稼いでいるようです。Xinの昔からこれはあるんですが、最近のは進歩してかなり静粛化したようですね。また回路的にはコンデンサーレスが特徴です。
ちょっと問題はバッテリーの持ちが6時間というところでしょうか。
私はeBayで香港の人から買いました。おそらくEncore関係者ではないかと思います。国慶節というのに即日発送してくれて、国際送料もなしとなかなか良かったのですが、いまどきの円安から14000円くらいにはなってしまいます。それでもまだ安いですが。。ちなみにAmazon(USA)で買える人にはレビューを書けば25%オフというクーポンをJasonが書いています。
iPhone5sとの大きさ比較
届いてみるとたしかにかなりコンパクトです。つくりもヘアライン仕上げがきれいで$129ではこの時点でも満足感が高いでしょう。
右はQuickStep
パッケージにはAndroid用にUSB OTGケーブルが入っています。マニュアルは簡単なものがついてきます。はじめに4時間ほど充電するように指示があります。
電源オンは3秒間押し続けで、オフも同じです。またオートパワーオフがないという質実剛健仕様なので、使用を終えるときには注意が必要です。
LEDは赤になるとチャージで、青がデータ再生中です。家で使うときはチャージUSBとデータUSBを両方使うこともできます。
mDACの使い方としてはPC/Macに接続する方法と、スマートフォンで使う方法があります。
PC/Macでは単にmicroUSB Bのケーブルに接続するだけです。標準ドライバーのクラス1だと思うので、PC/Macにおいてはドライバーインストールは不要です。
まずPC/Macに須山さんケーブルを使ってmDACを接続して、Edition8で聞いてみました。
音の特徴は歯切れがよくスピード感があることで、透明感に優れています。それでいてドライや分析的に陥ることなく、音楽的というほどでもないけれどもわりとなめらかで聴きやすさを持っています。この辺はさすがnuforce設計かもしれません。
音はわりとニュートラルで、コンデンサーレスであることも関係しているかもしれません。またベースのインパクトもけっこうあって、Edition8あたりを使うとかなり満足感の高いベースサウンドが楽しめます。
スマートフォンでも同様に接続するだけですがホスト接続ですので、iPhoneではカメラコネクションキット、ZX1ではNWH10、そのほかのAndroidではOTGケーブルが必要です。またAndroidではUSB Audio Player Proを使うことでどの端末でも接続が可能になります。
Walkman ZX1⇒NWH10⇒FitEar USB microBケーブル
iPhone5S⇒Lightningカメラアダプタ(CCK)⇒FitEar USB microBケーブル
外で使うときはさらに短くするため、直結プラグを使用してみました。
Walkman ZX1⇒NWH10⇒USB A/Micro B直結プラグ
直結プラグだとケーブルの固有着色が少なくなり、よりニュートラルに鮮度感も高くなるように感じます。使っているとやや暖かくなりますが、それほど熱くはなりません。電池の持ちについては、朝にWalkman ZX1とmDACをフルチャージにしておいて、同時に使ったところZX1の方が先に切れたので実用上はあんまり問題にならなそうです。
この組み合わせでの音質はかなり優れています。静粛で高感度イヤフォンでもヒスノイズが乗るということはありません。XinのころはDC-DCブースト方式だとかなりノイズが乗りましたが、さすがに進んでいます。
全体的に音質レベルも価格を考えるとかなり高く、コンパクトでスマートフォンにも向いているところがなかなか魅力的と言えるでしょう。特にWalkman ZX1でも動作するということでZX1ユーザーにはお勧めです。
*追記 10/12 21:03
どうやらnuforceは分裂したようで、表にたっていたJasonが外に出て新しいブランドを立ち上げている、というのが実際のところのようです。
2014年10月07日
WestoneのカスタムIEM、ES60レビュー
Westone ES60とは
Westone ES60は老舗のイヤフォンメーカーであるWestoneのカスタムIEMです。IEM(In Ear Monitor)は日本で言うところのプロ用のイヤモニですが、高性能なのでオーディオマニアにも好まれています。IEMは基本的にはイヤフォンですが、設計目的がミュージシャンのモニター用と言う点に特徴があります。
カスタムIEMとは個人の耳型に合わせて特注するもので、それに対して店で一般的に売られているイヤフォンはユニバーサル(汎用)タイプと言います。ES60は現行のWestoneカスタムIEMのフラッグシップモデルです。W60はユニバーサルタイプのフラッグシップです。カスタムIEMは単にシェルを耳に合わせるだけではなく、音導菅の長さも個人に合わせて作るので最高の音質が得られます。
ES60の発音体の構成は片側6ドライバーの3Wayです。これはつまり高音域、中音域、低音域の3つの周波数帯域(3Way)にそれぞれ2つの発音体(ドライバー)が割り当ててあるということです。この方式自体はユニバーサルのWestone W60でも取られていますし、他のカスタムIEMでも採用されていますので珍しいことではありません。ひとつの帯域に2つのドライバーを割り当てるメリットとしては、ひとつのドライバーの負担が減るので歪み感も少なくなることだといわれています。
6ドライバーのカスタムはWestoneでは初となります。ちなみに周波数特性は8kH - 20kHz、インピーダンスは46Ωです。インピーダンスはカスタムIEMとしては高めですが鳴らしやすさに問題はありません。
私はこのひとつ前のWestoneのカスタムIEMとしてES3Xを使用していました。ES3Xは2009年1月頃に発表されたものでこの当時のフラッグシップモデルです。わたしの書いた記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/114308257.html
もともとカスタムIEMはプロ用とは言われていますが、WestoneではこのES3Xからイヤモニをプロ用とコンシューマー用を両立させるとしていました。(次の年の2010年にはShureもSE535で同じようなプロ・コンシューマーラインの統一を表明しています)
また同時期のカスタムとユニバーサルは兄弟関係になることも多く、ES3XがWestone3の兄弟であったようにES60もまたW60の兄弟であろうことは型番やドライバー構成からも推測ができます。ただしWestoneに聞いてみたところ、ES60とW60のドライバーは同じだけれども、音質は直径や長さ、音の出口など設計のさまざまな要因により変わるものであり特にES60のようなカスタムはユーザーに合わせて設計するためにまったく異なったデザインアプローチが必要になる、ということです。
実際にES60は単にW60のカスタム版なのか、ということについては続く記事をご覧ください。
注文について
カスタムIEMは個人の耳型を取得して個人に合わせて製作するので、まず耳型の取得が必要です。またシェルにはさまざまな色やデザインの指定が可能です。これはもともとステージで他のバンドのIEMと間違わないためでしたが、いまではカスタムIEMの個性を発揮する魅力ともなっています。
このようにカスタムは特徴品であるゆえに、カスタムの注文と言うと耳型の取得と英語でのやり取りが大きな障害になっていたと思います。しかしWestoneについては代理店のテックウインドが注文を受けてくれますので安心して注文することができます。もちろんオプションの指定も日本語でかまいません。
こちらにテックウインドの注文ページがあります。
http://www.tekwind.co.jp/products/entry_11576.php
また大きなニュースとしては大手販売店のビックカメラでもWestoneのカスタムIEMの注文を受けてくれるようになったということがあります。これはビックカメラの3店舗に限られますが、カスタムiEMを身近なものにしたという点は大きいと思います。詳しくは下記のテックウインドさんのホームページをご覧ください。
http://www.tekwind.co.jp/information/WST/entry_294.php
オプションについて
まず上記注文ページからオーダーフォームをダウンロードして、プリントして注文を書きこみます。これはES60だけではなくESシリーズでは共通の手順です。
1.本体カラー
全62色から好みの色を選ぶことができます。また左右違うものにすることもできますので右を赤系にするなど即座に分かりやすくすることも可能です。
私は前回のES3Xでもそうだったので左右ともSmokeを選びました。
2.ケーブル
標準ではWシリーズと同じWestoneのEPICケーブルですが、オプションで極細132mm MMCXというのも選べます。
EPICはW60に付属していたので、ここは別な極細ケーブルのオプションを頼んでみたところ、来たのはなんと私がよく書いているところのデンマークのEstron Linumでした(Westoneではオリジナル製品としています)。W60とLinumの相性は良く、もともとこれにリケーブルしようと思っていたのでちょうど良い選択でした。ケーブルは好みもありますが、このオプションはお勧めです。これも後で書きます。
3. フェイスプレート
オールクリアのシンプルなものを好む人もいますのでこれは完全に見た目の問題ですが、フェイスプレートもあった方がデザイン的にはカスタマイズされた感は強まります。
カーボンやウッドなどさまざまな素材や、Abloneなど貝をイメージさせる鼈甲のようなシェルもあります。また表面にはロゴがプリントできます。カスタムロゴもここで指定できます。素材がReflectionの時はロゴもレーザーエッチング(彫り物)となり、この時はカスタムアートは指定できないなど組み合わせで注意事項がありますので注意してください。
実際、カスタムIEMの注文ではここが一番悩ましく、一番面白いところでしょう。カーボンは最近のはやりですが、私はちょっと変わったSilver Carbonにしてみました。
4. ロゴ
私は両方ともWestone+モデル名でロゴカラーはカーボンの黒に映える白としました。
しかし、Silver Carbonだとちょっと白と干渉することがあるので、フェイスプレートは黒のみのカーボンの方が良かったかもしれません。
またロゴの代わりにイメージを送ってそれをペイントしてもらうこともできます。
耳型取得について
もし販売店から耳型取得について指示があった場合にはまずそれに従ってください。
私の場合は東京ヒアリングケアセンターの大井町店に行きました。東京ヒアリングケアセンターは青山と大井町にありますが、もともとは大井町店の方がはじまりで、店長さんは某大手企業出身でこの道19年のベテランです。大井町店はちょっと駅からは遠いのですが、青山より予約は取りやすく行ったさいにいろいろとオーディオ話をするのも楽しみの一つです。
耳型を採取するときには口の開け方に工夫が必要です。これで出来上がる耳型のフィットが変わってきます。これには採取するところでいろいろと方法があります。以前は東京ヒアリングケアセンターではお箸を使って口をあけていたのですが、今回は1インチのバイトブロック(バイトは噛む)を使いました。これはメーカーであるJH AudioやUEが文書で指定してきた方式で、1インチのブロックを縦に噛みます。なおヴォーカリストが採取する場合にはこれではなくもっと大きなブロックを使うそうです。
なお耳型取得をする際には行く前にまず耳掃除をすることと、絶対に自分では耳型を取らないということが重要です。
到着と開封
9/2に注文して、届いたのは9/27でした。
カスタムはプロ向けなので化粧箱には入っていません(他のメーカーも同じです)。段ボールに直接オレンジ色のケースが入ってきます。
同梱物はオーナーズマニュアル、クリーニングクロス、クリーニングキットなどです。またケーブルはマネジメントリングというプラスチックのループに巻きついて入っています。
オプションは指示通りに抜けもれなくされてきました。さきにも書いたようにオプションで極細ケーブルを選んだところ、私のよく使うEstronのLinumケーブルと思われるケーブルが入っていました。ただメーカーに聞いてみるとあくまでWestoneモデルだということなのでなにかOEMとして特注のポイントがあるのかもしれません。いずれにしろチョーカー(ケーブルを締める部分)についた赤青のLR表示などベースモデルはあきらかにEstron LinumのMMCX仕様だと思います。Estronは下記リンクでも記事にしましたが、軽くて音もよいのでW60にもよく使っていました。そういう意味ではW60+Estronの音に慣れているので比較もしやすかったと思います。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/393184677.html
カスタムでいつも届く前に心配するのはシェルがうまく耳にはまるかということです。これはうまくぴったりとはまりました。はめるときは3次元的に少しひねるようにするとうまく入ります。作る時の1インチバイトブロックの使用も良かったかもしれませんが、Westonならではの工夫もあります。
Westoneでは耳に入る部分が体温で柔らかくなる独自のフレックスチューブを採用しています。これがフィット感を一層増しているポイントです。フレックスチューブは耳にはいる部分が体温によって変化する素材を用いているため、耳に挿入するとその部分が柔らかくなり耳穴に密着します。これは快適性と遮音性をともに向上させます。
またフレックスチューブのメリットはリスナーが動いた時に発揮されます。人の体ではあごや頭が動くと耳の穴も同時に変形します。通常の硬いシェルであれば耳穴が変化しても追従できませんが、フレックスチューブの場合はリスナーが動いて耳穴が変形してもそれに追従して柔らかくフィットするというわけです。これで抜群の遮音性を確保します。
実際使ってみるとES60はおそらくカスタムIEMの中でも随一の遮音性を持っていると思います。いかにもカスタムIEMを使ってる感を堪能できるでしょう。反面でかなりまじめに周りの音が聞こえなくなるので注意してください。
ES3Xでもそうでしたが、他のメーカーと比べるとES60はシェルのフェイスプレートにやや厚みがあるのが特徴ですが、これは多少かさばりますが外す時に指がかりになるのでとても着脱はしやすくなります。
フェイスプレートのシルバーのはいったカーボンはなかなか個性的です。フェイスプレートからはMMCXプラグも出ています。
UEは2007年に私がUE11を注文した時に比べると2010年のUE18ではシェル作成では劣化した感があったので、ジェリー離脱の影響があったのかもしれませんが、Westoneは2009年のES3Xとはそう変わっていないように思います。ただフレックスチューブ部分にやや気泡がありますが、これは素材上仕方ないのかもしれません。他の部分のシェルは良い出来だと思います。
音が出る穴は2穴ですが、出口ではまとまって一穴で少し深くなって二穴になるタイプです。
音質
最近はWestone W60をEstronでリケーブルして、AK240で聴くというのが定番でした。そこでW60をそのままES60に変えて、ES60に付属してきたオプションの極細ケーブル(Estron)でAK240で聴いてみました。ケーブルとDAPは同じということになりますね。(ケーブルは少しエージングさせてから聴いています)
そうした意味で純粋にイヤフォンとしての性能変化がよく分かったと思います。
ES60で聴くと、一聴してハッとするほどの高音質だということがすぐに分かります。音が想像より良すぎてちょっと驚くって言った方が良いくらいです。
はじめはドライバー構成も同じであろうW60にカスタム化して毛が生えたものかと想像していたんですが、すぐにそれはちょっと違うぞ、と思いました。つまりW60も音質面では相当評価は高いし、中身のドライバーは同じ構成だろうからそれ以上は難しいだろう、W60をカスタムにして低音のシーリングが良くなって、というくらいに考えていたわけです。しかしW60からの音の変化はよく聞けば違うというレベルではなく、かなりはっきりと良くなっています。特に音のクリアさ・透明感の高さと空間表現力はまるでDSP信号処理機能が追加されたかと思うほど大きく違います。
そして聴き進めていくと、基本的な中高域での解像力の高さ・情報量の多さ、バランスの良さを崩さない低域の豊かな迫力と言ったW60の良さも兼ね備えていることが分かります。
まずES60を特徴づけているのは一聴して気がつく際立つ透明感の高さと独特の立体的な音場再現です。これは他のIEMと比べてもトップレベルだと思います。W60でも音の広がりの良さに圧倒されましたが、ES60はさらに左右が平面的に広いだけではなく、3次元的な包まれる感じが独特です。立体感とヴォーカルや楽器の位置にかなり奥行きがあります。空間の広がりが三次元的でコンサートホールに居るみたいというか、DSPでホールモードを選んだようです。それでいて遠くに聞こえるかというと、そうではなく耳との距離は近めで迫力があります。ライブ会場にいるかのような生々しさと芯のある力強さを感じます。大編成のアカペラヴォーカルなどは重なり合わせが感動的で、バランスでないのにバランスのようなというか、イヤフォンをつけてるというよりヘッドフォンのような感じでもあります。ちょっと独特ですね。
おそらくはこの音の広がりと楽器の立体感はなにか音導管の長さかなんかで位相の調整をやってるのかもしれません。この辺はカスタムの利点を生かしてなにか個人個人の耳に合わせてあるのではと思います。
そしてW60を大きく超えるのは抜群の透明感です。このクリアさと鮮明な音再現がES60の際立った特徴と言ってよいかもしれません。透明感が高いだけではなく、さきの空間表現ともあいまってとてもクリアで見通しの良い音空間が広がっているという感じです。またW60よりも音調がやや明るめに聞こえます。
中高域の解像度はW60的に良く、全体に厚みを与えています。この情報量の豊かさと、空間の透明感の高さ、そしてカスタムならではの遮音性が高くなったおかげでさらに細かく小さな音まで分かるようになったと思います。よく雑踏の音が音楽の効果音で入っていますが、その街の音のざわめきや雑踏や金属音など情報量に圧倒されます。
また音と音との間の空隙が分かりやすくなったことで、音の立ち上がりと立ち下がりがよりスムーズに分かるようになりました。楽器の鳴り、ヴォーカリストがふうっと息を継ぐ音、ちっと唇を鳴らす音の艶かしさ、艶っぽさは一級だと思います。
ピアノの響きの良さは音質の良さを測るものさしのひとつでもありますが、ES60でも鳴りが鮮明で歯切れよくかつ美しく感じます。楽器音はニュートラルからちょっと美音がかったとても良い鳴り方をします。ただこれはケーブルの個性も入っていて、もっと音色をニュートラルにしたければケーブルを変えるとそのように変わりますので、もともとの着色感はあまりないと思います。
全体的に滑らかで音楽的でもあり、ここはW60というかES3Xでもそうでしたし、Westoneの良い伝統を引き継いでいると思います。
これは透明感の高さにも関係しますが、ヴォーカルというか人の声がものすごく聴きやすいというのもES60の特徴です。
後で書くようにiPhoneでも音楽再生を試聴してみたのですが、そのとき英語の勉強にも取り組んでたので、音楽ばかり聞かないでiPhoneアプリで英語の聴き取り問題もやらなきゃと思って、イヤフォンをW60に戻すのもなんだからそのままES60で聴いたんですが、これがびっくりしました。すごく明瞭に発音の違いがわかります。いままで使ってたW60との差は唖然とするほどです。これは冗談でなく、くっついて聞こえがちな細かい発音のニュアンス(特に慣れてないイギリス英語など)がはっきりわかります。空間の見通しがよく晴れ上がっていることもありますが、ひとつひとつの発音の音の形が明瞭で鮮明さがあります。これだけ人の声が明瞭に聞けるイヤフォンは他にはないんではないかとさえ思いますね。
低域もW60よりさらに改良されています。W60のようにベースのインパクトもあるのでロックもカッコ良く、オーバーになりすぎずパワーを感じられます。カスタムになって低域が多くなったわけではなく、あくまでW60の良さであったバランスの取れた音です。そしてカスタムのシーリングの高さゆえか、ベースの深みはより深く沈んで聞こえます。
あとでも書きますが全体にガッチリとソリッドなので、ドラムスのインパクトがあります。W60でのウイークポイントはややベースが膨らみがちな低音域でしたが、ES60はシャープというか、かちっとしています。パーカッションやドラムの打撃音は鋭いですね。ここもW60から良くなったところです。
高音域がよく伸びてきつくないのはW60でもあった美点ですが、ES60はその上品な高音域に加えてさらに輝き感が感じられます。これは高音域だけがシャープなのではなく、全体的にW60に比べると音がソリッドというか強固になっているからのように思えます。
W60に比べると全体に音がよりソリッドに芯が強くなっているので、高域では輝きが増し、中音域では発声が明瞭となり、低音域ではインパクトがあるように感じられます。そのため音楽のテンポのきざみもしっかりとしてよく、ノリも良く感じられます。低域が歯切れよくなった感もあります。
激しいロックを聴いてもオーバーパワーになりすぎずにインパクトフルでスピード感も良いですね。
全体に能率はよく、ならしやすさに問題はありません。W60よりボリューム位置は低いのですが、カスタムで遮音性は良いのであげなくても良いということもあります。
私はレコーディングとかアーティストに向いているかは分かりませんが、余分な誇張感がなく、これだけ明瞭に録音の機微まで洗い出せるなら十分使えるのではないかと思います。
最近ES60で聴いていて思ったのは音源の質がよくわかるということです。MP3やAACなどのロスする圧縮音源とCDリッピングなどのロスレスではヴォーカルや楽器の鮮明さ、全体の空気感が違うのがはっきりわかります。配信のハイレゾでは音楽の豊かさからより音楽が描き出す世界に没頭できます。
実のところそれがこの前のうちのブログで「ハイレゾとは」の記事を書くきっかけとなりました。BAドライバー機は高域で20kHzを超えることは難しいため、ハイレゾ対応のロゴがつくことはないでしょう。しかしカスタムIEMの抜群の遮音性がもたらす静粛性とBAドライバーの細かな音の描写はハイレゾ音源の良さを堪能させてくれます。
ES60は真の意味で「ハイレゾ対応機」と言って良いのではないでしょうか。
リケーブルとDAPとの相性
DAPとの相性でいうと、やはりAK240がベストです。これは特にEstron Linumをベースにしたと思われる標準ケーブルのときにはやや暖かみが乗るのでAK240と合いやすいということもあります。EstronでもBaXなどを使うときはAK120IIが良い選択となってきます。
また、このときにはZX1やCalyx MのようなHiFi硬め系もあうようになります。これらにはニュートラル系のケーブルか、銀線系を合わせることでDAPの性能が上がったかのような感覚を得られるでしょう。
iPhone6から直で聴いてみたところ、まるでiPhoneが高性能DAPになったかと錯覚するくらいです。iPhoneでもよくあいますね。
EPICケーブル
またWeston標準のEPICケーブルにすると音場再現は減退してしまいますが、音のシャープさはそう悪くはありません。また着色感はEstronより少ないこともありますし、ケーブルは好みの問題なのでEPICのほうが好きという人もいるかもしれません。ただ個人的には極細オプションをオススメします。Estronは独特の軽さも良いですが、絡みやすくなるので注意ください。
他のカスタムIEMとの比較
それではES60は音質レベル的にはどのくらいか、ということで他のトップクラスのカスタムIEMと比べてみます。
まず同じく片側6つドライバーということで音に慣れているUltimate EarsのUE18を使います。比較で同じ条件にするために2pinのEstron Linumをつけて、同じケーブルで同じAK240で比べてみます。
比べてみるとES60のほうが音空間が広く、楽器の明瞭さも上です。UE18はES60と比較すると全体に透明感が劣って曇り感があり、音のエッジも鈍って甘く聞こえます。低音域もES60のほうがインパクトが強く迫力があります。また装着感もES60のほうが上で、遮音性もより高いとおもいます。これはES60のほうが最近の耳型ということもあるかもしれませんが、やはりフレックスチューブなどの良さだと思います
まあUE18も音は悪くないと思っていたんですが、最新のES60と比べるとやはり音質はひと世代分は違いますね。
ES60とUE18
それでは最新のものと比べてみたら、ということで同様に2pinのEstronをつけてケーブルとAK240を同じくして、1964EarsのV6-Stageと比べてみます。
こちらも最近ES60と同じところで取った耳型ですが、比較するとややV6-Stageがフィットが甘く感じられます。ただV6-Stageだけで考えるとそうは感じません。耳の中でそう感じるので違いはやはりWestoneのフレックスチューブかもしれません。ただシェルはV6Sのほうが薄くコンパクトに作られているように思います。ややWestoneはシェル大きめなのがわかります。
音ではES60と比べるとV6-Stageは全体にこじんまりと音空間が小さめです。V6-Stageはそれだけ聴くとかなりクリアに思えましたが、ES60と比べるとややクリアさに劣り、楽器音のシャープさに関してはES60のほうがかなり明瞭ではっきりとわかります。ES60は電気オーディオ的にいうとSN比が高いという感じですね。音のあるところとないところがすごく鮮明です。もしかすると遮音性の高さもかなり貢献しているように思います。
ES60とV6-Stage
前の記事でV6-Stageはヴォーカルが聴き取りやすいって書いたんですけど、それを上回るES60のヴォーカルの明瞭さはちょっと別格レベルかもしれません。低域はV6-Stageのほうが控えめで、これは好みもあるかもしれません。
V6-Stageもシェルの作りの良さも含めてコストパフォーマンスはよいとは思いますが、絶対的な音性能ではやはりES60に軍配が上がります。シェルはES60の方がややかさばりはしますが、遮音性はES60のほうがかなり上です。
まとめ
けっこう気に入ったので長々と書いてきましたが、簡単バージョンで書くと、Westone ES60は現行カスタムでもトップレベルの音質で、音がクリアで立体的、楽器や声がメリハリがあってシャープで鮮明に聴こえる点が特徴です。またカスタムIEMとしての遮音性も抜群です。
少し付け加えると、ES60は音的にはW60の生々しい中高域の解像感や低域の迫力をうけついで、音場はさらに立体的で、そしてW60にない明るくクリアな音空間を提供しています。またW60より音がタイトで締まっています。
はじめはW60をカスタムにして毛が生えたようなものだろうと思っていましたが、実際のES60はそんなものではない凄さがあります。W60の遺伝子はあるけど別のレベルのモンスターです。AK240とよくあい、あのAK240の能力をさらに一回りアップさせられます。
W60との比較でなしに聴いても、際立つのは透明感の高さと音の明瞭さ、独特の音場再現です。カスタムとしてのフィットも抜群で遮音性はおそらくカスタムIEMの中でもトップでしょう。W60から引き継いだ美点の大きなものは音楽性です。もっともこれはW60というより、Westoneの良さであり、WestoneのDNAです。
私は前にも書いたようにES3Xを2009年から使っているのですが、Westoneにそのころから今までのカスタムIEM製作においての進歩は何かと聞いてみたところ、やはりドライバーとクロスオーバー設計の複雑さはかなり大きく変わったと言っていました。つまりはよりノウハウが必要なわけです。
改めて思ったのはカスタムイヤフォンの設計はドライバーだけではないということです。
なんでES60ではこんな良い音が出るのか、なんでこんなにクリアなのか、よくわかりません。私は最近はW60を気に入ってよく聴いてただけにちょっとショックを受けたくらいです。W60とどうせドライバーは同じだろうなんて思っていた私みたいな技術おたく系は敗北感を味わってしまいます。普通入手できないような特殊レアメタルを内部線材に使ったんじゃないかとか、小さいDSPが隠してあるんじゃないかとさえ思いますね。
ここにはカタログの売り文句となるような「スーパーXXサウンド技術」というものはなく、Westoneの音質担当者は単にひとこと、「それは経験さ」と言うでしょう。
W60の記事でも書きましたが、それはWestoneの歴史、膨大な数のイヤピースを製作してきた経験ですね。老舗のWestoneならではの熟練した設計の妙と経験を改めて感じさせます。
今年はWestoneの当たり年でした。
W60の記事を書いていた時は、音はよいけど高いし地味なので販売は大丈夫かなと思ったこともあったのですが、W60はかなりバックオーダーを抱えるほど売れているようです。派手なカタログ言葉がなくても良いものが売れる日本の市場は成熟していると思います。そしてES60も聴けば良さがわかると思います。ヘッドフォン祭などの機会にぜひ試聴してみてください。
2014年10月06日
CHORD Hugoケースの装着例 (iPhoneとCCK編)
この前のCHORDファンミーティングでHugoケースの発表があり、そこでさっそくAK100MK2と光ケーブルの接続例を紹介しました。下の記事です。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/405968825.html
そこで今回はiPhone5Sとカメラコネクションキットを使った時の装着例を紹介します。
まずこちらがHugoケースでボタンとベルクロテープで留めるようになっています。それぞれにはバンパーの役目とケーブルリールの役目も兼ねています。背面にはベルトがついています。
こちらがiPhone5Sにカメラコネクションキットを付けてUSBケーブル(須山さんケーブル)でHugoに接続した例です。iPhoneの上下をバンドで固定させるので操作性は損なわれません。iPhoneのアプリはNeutronです。右側は接続がわかるようにあえてだらっとさせています。
下がケーブルを巻き付けた例です。巻取りはケーブルにも寄ると思います。イヤフォンケーブルもライトアングル(L字)だとうまく収まります。ちなみにケーブルはロクサーヌケーブルです。
またグリップは親指かけも兼ねていてこんな感じでグリップできます(右手でカメラ持ってる都合上やや不自然ですがご容赦)。
Hugoをガードしながらきれいに保つHugoケースはなかなか機能的で便利でもあります。
これで私もせっかくもらったサインが消えないというものです ^^)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/405968825.html
そこで今回はiPhone5Sとカメラコネクションキットを使った時の装着例を紹介します。
まずこちらがHugoケースでボタンとベルクロテープで留めるようになっています。それぞれにはバンパーの役目とケーブルリールの役目も兼ねています。背面にはベルトがついています。
こちらがiPhone5Sにカメラコネクションキットを付けてUSBケーブル(須山さんケーブル)でHugoに接続した例です。iPhoneの上下をバンドで固定させるので操作性は損なわれません。iPhoneのアプリはNeutronです。右側は接続がわかるようにあえてだらっとさせています。
下がケーブルを巻き付けた例です。巻取りはケーブルにも寄ると思います。イヤフォンケーブルもライトアングル(L字)だとうまく収まります。ちなみにケーブルはロクサーヌケーブルです。
またグリップは親指かけも兼ねていてこんな感じでグリップできます(右手でカメラ持ってる都合上やや不自然ですがご容赦)。
Hugoをガードしながらきれいに保つHugoケースはなかなか機能的で便利でもあります。
これで私もせっかくもらったサインが消えないというものです ^^)
CanJam20014の見どころと新製品
今年もHeadFiの祭典であるところのCanJam2014が開催されます。RMAF(ロッキーマウンテンオーディオフェスト)との共同開催です。
それに先立ってHeadFiのJudeさんが動画ニュースのHeadFi TVで新製品を紹介しています。下記のリンクです。
http://www.head-fi.org/t/731471/2014-canjam-rmaf-october-10-12-2014-the-canjam-exhibitor-list-has-been-finalized-and-what-a-lineup/180_30#post_10935857
やはり注目はNobleの新製品でしょうか。(1:00あたり)
Nobleはシェルの造形が美しいことで知られてますが、超高級シェルのPrestageラインが追加され、美麗なシェルを見ることができます。これはPrestage K10のように従来のラインの豪華シェルモデルのようです。
またK10のユニバーサルモデルも登場しています(2:50あたり)。
あと面白いのはWooのポータブル真空管アンプです。Woo WA8はUSB DAC内蔵のポータブル真空管アンプで、特徴は真空管2本使用モード(エコ・イヤフォン)と3本使用モード(ハイパワー)が選べるところです。 (23:25あたり)
MrSpeakerのAlpha PrimeはAlpha Dogに使われてるフォステクスの平面ドライバーを改良したモデルのようです。下記に記事があります。
http://www.monoandstereo.com/2014/10/mrspeakers-alpha-prime-headphones-new.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+monoandstereo%2FHOym+%28MONO+AND+STEREO+Ultra+High-End+Audio+Magazine%29
LH LabのUSB DACやPS AudioのSproutのようにKickstarterものの展示もあるようです。またShiitも小型のUSB DACを出すようです。
またCEntranceもKickstarterやってるようですね。
https://www.indiegogo.com/projects/i5-audiophile-battery-case-for-iphone#description
ここで紹介されてる製品のいくつかをヘッドフォン祭でも見られると良いですね!
それに先立ってHeadFiのJudeさんが動画ニュースのHeadFi TVで新製品を紹介しています。下記のリンクです。
http://www.head-fi.org/t/731471/2014-canjam-rmaf-october-10-12-2014-the-canjam-exhibitor-list-has-been-finalized-and-what-a-lineup/180_30#post_10935857
やはり注目はNobleの新製品でしょうか。(1:00あたり)
Nobleはシェルの造形が美しいことで知られてますが、超高級シェルのPrestageラインが追加され、美麗なシェルを見ることができます。これはPrestage K10のように従来のラインの豪華シェルモデルのようです。
またK10のユニバーサルモデルも登場しています(2:50あたり)。
あと面白いのはWooのポータブル真空管アンプです。Woo WA8はUSB DAC内蔵のポータブル真空管アンプで、特徴は真空管2本使用モード(エコ・イヤフォン)と3本使用モード(ハイパワー)が選べるところです。 (23:25あたり)
MrSpeakerのAlpha PrimeはAlpha Dogに使われてるフォステクスの平面ドライバーを改良したモデルのようです。下記に記事があります。
http://www.monoandstereo.com/2014/10/mrspeakers-alpha-prime-headphones-new.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+monoandstereo%2FHOym+%28MONO+AND+STEREO+Ultra+High-End+Audio+Magazine%29
LH LabのUSB DACやPS AudioのSproutのようにKickstarterものの展示もあるようです。またShiitも小型のUSB DACを出すようです。
またCEntranceもKickstarterやってるようですね。
https://www.indiegogo.com/projects/i5-audiophile-battery-case-for-iphone#description
ここで紹介されてる製品のいくつかをヘッドフォン祭でも見られると良いですね!
2014年10月01日
デジタルオーディオのいま、ハイレゾとは
34年前の今日、1980年10月1日にはじめてのCDプレーヤーであるSONY CDP101が誕生して、世界初のCDソフトであるビリージョエルの「ニューヨーク52番街」が発売されたそうです。デジタルデータによる初の音源ですね。実質的にそれからずっと今日まで、少なくとも日本ではCDが音楽メディアの主力となっています。
CDという規格は1979年にSONYとPhilipsで制定されたわけですが、CDDAというCDの記録形式は論理的なデジタルフォーマットであるにもかかわらずコンピューターとは互換性がなく、現在ではリッピングという作業によってこの古いCDDAフォーマットのデータをコンピューターにインポートする必要があります。これはある意味仕方がありません。1979年の当時に650MBものデータを扱えるコンピューターなど家庭にはなかったのですから。
コンピューターでCDをメディアとして使うには1985年のハイシェラフォーマット(のちのISO9660)を待たねばなりません。ここでやっとCDがコンピューターから直接認識つまりマウントができる時代になります。
1990年代も後半となると、CDの次世代規格としてSACDが登場しますが、物理メディアとしてのSACDは失速してCDに取って代わることはできず、中身のDSDが後に生き残ります。
2000年代になるとPCオーディオが台頭してきて、それまでの44kHz/16bitという物理メディアに縛られたCD規格に依存する必要は薄れてきます。そしてLINNがStudio Masterという名前で24bitデータを配信を始めて話題となります。ハイレゾ、High Resolutionの音源です。ただしそれは一部の人のものでした。
2013年にSONYが「ハイレゾ」をたからかにうたいあげると、ハイレゾは晴れて市民権をもつに至ります。そして2014年には日本や米国でハイレゾという規格はそもそもどういうものだ、ということでハイレゾの規格化が始まります。
このようにハイレゾというキーワードが浸透してきたことで、最近ハイレゾ対応をうたったオーディオ機材が出てきていますが、違和感を覚えることもあります。たとえば最近のハイレゾ再生機の定義として使われるJASの「高域再生性能 40kHz以上」ですけど、このままだと前にも書いたように40kHzでどれだけ減衰しているのかという基準がないとそもそも規格にならない、とも思いました。最近では自主的に「-10dB@40kHz」とか掲げるメーカーもありますのでこれはよしとして、もうひとつの問題点はそもそもJEITAが音源の定義で44/24もハイレゾ音源と決めているのに、JEITAを基本踏襲すると言っているJASのハイレゾ再生機器の定義が40kHz以上とだけ決めてるのは矛盾してるんではないかということです。
オーディオにおける24bitデータのポイントは、単にダイナミックレンジが広がるということよりも、16bitから24bitに増えたさいの差分の8bitは最下位バイトであるということだと思います。ここはもっとも小さな音の情報がはいっているところです。
16bitしか扱えないソフトやOSの場合には、よく24bitのデータは単に左詰めされて最下位の8bitはなくなります。ディザ処理とか高度な処理がなされる場合もありますが、たいていはそのまま再生されます。これで音が割れたりするわけではなく、単に極小音の情報がなくなるわけです。それは24色の色鉛筆を16色に変えた時に減るのが微妙な変化を担当する中間色だということに似ていると思います。音を豊かにする情報が足りなくなるわけです。音の奥行とかスムーズなつながりが減退するという感じでしょうか。
つまりはこの場合にはいかに小さな音が再現できるかということにハイレゾ再生機の定義がなされるべきかもしれません。これは以前に書いた「遮音性とダイナミックレンジ」の記事にも通じているでしょう。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/403635836.html
弱小音再現の指標としてはSN比などがあるかもしれませんが、それを提案したりするつもりはありません。ただ考え方として、40kHzという一面だけを取り出してとりあえずそれを定義としてしまうのはどうか、ということです。実際はそうした微細な豊かさはもっとトータルに音再現として現れると思います。
高い周波数と倍音に着目するのは良いと思いますが、それがゆき過ぎて耳は20kHzまでしか聞こえないけど顔とか体の表面で40kHzも感じるからハイレゾは意味があるんだ、とかいう話になるとどうなんでしょうか。証明されてないことを前提に仮説をたてるのは「ミステリーサークルはUFOが作ったと仮定すると一番合理的に説明できる」と言ってるのと同じで、便利だけど危険です。
また測定上は40kHzを保証しない機材であっても、測定上40kHzを保証する機材よりも実際に聞いてみてハイレゾ音源の音の豊かさが分かるということはオーディオの世界ではざらにあると思います。メーカーはハイレゾプレーヤーにはハイレゾ対応ヘッドフォンを買って下さい、と言いたいと思いますが、実のところ普及機の「ハイレゾ対応」ヘッドフォンよりも、ハイレゾ対応表明していなくてもフラッグシップクラスのヘッドフォンの方がハイレゾ音源の良さはよく分かるでしょう。
私は個人的にもハイレゾ音源の方が好ましいし、オーディオ業界の活性化を考えるとハイレゾムーブメントはあっていいと思います。またハイレゾに目が向くことで配信がみなおされ、いまCDに束縛されて硬直化してる日本の音楽業界を変えることもできるかもしれません。
しかし、あまりにハイレゾという言葉を便利に使うのは諸刃の剣となりうることを考えておくべきではないかと思います。
CDという規格は1979年にSONYとPhilipsで制定されたわけですが、CDDAというCDの記録形式は論理的なデジタルフォーマットであるにもかかわらずコンピューターとは互換性がなく、現在ではリッピングという作業によってこの古いCDDAフォーマットのデータをコンピューターにインポートする必要があります。これはある意味仕方がありません。1979年の当時に650MBものデータを扱えるコンピューターなど家庭にはなかったのですから。
コンピューターでCDをメディアとして使うには1985年のハイシェラフォーマット(のちのISO9660)を待たねばなりません。ここでやっとCDがコンピューターから直接認識つまりマウントができる時代になります。
1990年代も後半となると、CDの次世代規格としてSACDが登場しますが、物理メディアとしてのSACDは失速してCDに取って代わることはできず、中身のDSDが後に生き残ります。
2000年代になるとPCオーディオが台頭してきて、それまでの44kHz/16bitという物理メディアに縛られたCD規格に依存する必要は薄れてきます。そしてLINNがStudio Masterという名前で24bitデータを配信を始めて話題となります。ハイレゾ、High Resolutionの音源です。ただしそれは一部の人のものでした。
2013年にSONYが「ハイレゾ」をたからかにうたいあげると、ハイレゾは晴れて市民権をもつに至ります。そして2014年には日本や米国でハイレゾという規格はそもそもどういうものだ、ということでハイレゾの規格化が始まります。
このようにハイレゾというキーワードが浸透してきたことで、最近ハイレゾ対応をうたったオーディオ機材が出てきていますが、違和感を覚えることもあります。たとえば最近のハイレゾ再生機の定義として使われるJASの「高域再生性能 40kHz以上」ですけど、このままだと前にも書いたように40kHzでどれだけ減衰しているのかという基準がないとそもそも規格にならない、とも思いました。最近では自主的に「-10dB@40kHz」とか掲げるメーカーもありますのでこれはよしとして、もうひとつの問題点はそもそもJEITAが音源の定義で44/24もハイレゾ音源と決めているのに、JEITAを基本踏襲すると言っているJASのハイレゾ再生機器の定義が40kHz以上とだけ決めてるのは矛盾してるんではないかということです。
オーディオにおける24bitデータのポイントは、単にダイナミックレンジが広がるということよりも、16bitから24bitに増えたさいの差分の8bitは最下位バイトであるということだと思います。ここはもっとも小さな音の情報がはいっているところです。
16bitしか扱えないソフトやOSの場合には、よく24bitのデータは単に左詰めされて最下位の8bitはなくなります。ディザ処理とか高度な処理がなされる場合もありますが、たいていはそのまま再生されます。これで音が割れたりするわけではなく、単に極小音の情報がなくなるわけです。それは24色の色鉛筆を16色に変えた時に減るのが微妙な変化を担当する中間色だということに似ていると思います。音を豊かにする情報が足りなくなるわけです。音の奥行とかスムーズなつながりが減退するという感じでしょうか。
つまりはこの場合にはいかに小さな音が再現できるかということにハイレゾ再生機の定義がなされるべきかもしれません。これは以前に書いた「遮音性とダイナミックレンジ」の記事にも通じているでしょう。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/403635836.html
弱小音再現の指標としてはSN比などがあるかもしれませんが、それを提案したりするつもりはありません。ただ考え方として、40kHzという一面だけを取り出してとりあえずそれを定義としてしまうのはどうか、ということです。実際はそうした微細な豊かさはもっとトータルに音再現として現れると思います。
高い周波数と倍音に着目するのは良いと思いますが、それがゆき過ぎて耳は20kHzまでしか聞こえないけど顔とか体の表面で40kHzも感じるからハイレゾは意味があるんだ、とかいう話になるとどうなんでしょうか。証明されてないことを前提に仮説をたてるのは「ミステリーサークルはUFOが作ったと仮定すると一番合理的に説明できる」と言ってるのと同じで、便利だけど危険です。
また測定上は40kHzを保証しない機材であっても、測定上40kHzを保証する機材よりも実際に聞いてみてハイレゾ音源の音の豊かさが分かるということはオーディオの世界ではざらにあると思います。メーカーはハイレゾプレーヤーにはハイレゾ対応ヘッドフォンを買って下さい、と言いたいと思いますが、実のところ普及機の「ハイレゾ対応」ヘッドフォンよりも、ハイレゾ対応表明していなくてもフラッグシップクラスのヘッドフォンの方がハイレゾ音源の良さはよく分かるでしょう。
私は個人的にもハイレゾ音源の方が好ましいし、オーディオ業界の活性化を考えるとハイレゾムーブメントはあっていいと思います。またハイレゾに目が向くことで配信がみなおされ、いまCDに束縛されて硬直化してる日本の音楽業界を変えることもできるかもしれません。
しかし、あまりにハイレゾという言葉を便利に使うのは諸刃の剣となりうることを考えておくべきではないかと思います。