Music TO GO!

2014年09月23日

東京インターナショナルオーディオショウとBruno PutzeysのMola Mola

今年の東京インターナショナルオーディオショウは9月ということでちょっと実感がありませんが、見に行って来ました。ちなみに写真はカレー以外はSONY RX100M3です。

DSC00702[1].jpg   IMG_5515[1].jpg  IMG_5517[1].jpg

開場時には大盛況で並んでたんで、はじめに銀座のカツカレー発祥の店スイスで元祖カツカレー(千葉さんのカレー)を食しましたが、入館してみるとそれほどでもなく午後になってやや混み出した感じです。
全体を見て去年のLINNのExaktのような大物はないのですが、私が個人的に注目してたブランドが出てました。

DSC00753[1].jpg   DSC00748[1].jpg

それはハイエンドのブースで出展されていたMola Molaです。上の写真です。
なぜ注目かというと、このMola MolaはあのiQubeの設計者であるBruno Putzeysのプロジェクトだからです。HypexやGrimm Audioも彼ですね。Mola MolaはおそらくネルソンパスのFirstWattブランドみたいな個人ブランドのイメージでしょうか。
DクラスのパワーアンプKalugaとプリアンプMokuaが展示されていました。このDクラスアンプはモノブロックで一台85万円くらいとのことですが、これはHypexブランドと同じくNCoreデザインです。Mola Molaはマンボのような魚のようですがデザインも波をうねっています。
emmLabのDACと組み合わされてなかなかの音を出してましたが、実はMola MolaのメインはDACです。これは当初はプリアンプに内蔵されるものと聞いていましたが、今回ブースで聞いてみると内蔵方式だと発熱がすごいので単体DACとして再設計しているそうです。

Mola Molaのホームページはこちらで開発ブログもあります。
http://mola-mola.nl

最近はDSDという変革期を迎えて、DAC設計においてはPS AudioやSignalyst DACのように"従来の市販DACチップ+I/V変換回路"のような枠にはまらないさまざまなアーキテクチャのDACが現れてきていますが、Mola MolaのDACもそうした新しい方向性を持ったDACです。
これは10年先を見越して設計したという、いわゆる市販のDACチップを使わないディスクリートのDACです。1bit PDMからフィルターでアナログ信号を取り出すタイプだと思います。

今年のCESでのStereophileのレポートは下記リンクです。
http://www.stereophile.com/content/mola-mola-new-dac-prototype

DACは3枚のボードから構成されていて、PCMとDSDを入力としますが、一枚目のボードで入力をすべていったん3.125MHz/32bitにアップサンプリング変換し、それをPWM経由で100MHzの高周波の1bitデータストリームに変換します。二枚目と三枚目はそれぞれR chとL chのモノDACで、1bitデータをフィルターでアナログに変換します。これで140dBものSN比を達成しているということ。

写真 2014-09-23 21 16 46.gif
Mola Molaのサイトより

下の記事(part2)に出て来ますが、100MHzがベースクロックで、3.125MHzの32サンプル(100/32=3.125)がPWMのサイクルに相当するようです。よくわかりませんが、こうするとジッターを排除しSNをあげられるそうです。
一回マルチビットに変換するのはボリューム制御のためではないかと思います(PS Audioも同じ)。

また面白いインタビューがこちらのultraaudioというサイトに掲載されています。
http://www.soundstageultra.com/index.php/features-menu/general-interest-interviews-menu/455-searching-for-the-extreme-bruno-putzeys-of-mola-mola-hypex-and-grimm-audio-part-one

写真 2014-09-23 20 46 36.jpg
Bruno Putzeys (上記サイトより)

クラシックのDSD配信で知られるChannel Classicsの柔らかい音のキーは単にDSDを採用しているだけではなく、使用しているGrimm Audio AD1というディスクリートADコンバーターに寄るところも大きいと思います。Channel Classicsの中でもスタジオ機材が違うと音が違いますからね。このAD1にまつわるGrimm Audioの誕生についても語られています。
Bruno Putzeysによれば1bitデルタシグマは魔法のようなものではなく、PCMでも同じような音質のものは作れると考えているが、ディスクリートADコンバーターを作るには1bitデルタシグマはよい選択であると書いています。

またPutzeysはフィリップスに在籍していました。フィリップスではNat.Labという先進技術研究所があったようですが大企業にはありがちなことで、そこにいかに良い技術があってもフィリップス自体は採用しないので、オランダにはフィリップス出身の技術者が溢れてるとのこと。彼もその一人ですね。Hypexで用いられているNCore技術もこの時の産物ということです。

あと上のKalugaとかMokuaという名前は日本に売る時には「電気ウナギ」にしようとしたけど、日本の代理店(ハイエンド?)に日本人は英語が書いてある方が喜ぶからそれはやめろと言われてハワイの魚の名にした、と書いてます。
Putzeysが来日してればiQubeにサインをして欲しかったところですが、そのうち来て欲しいですね。PutzeysについてはGrimm LS1も要チェックです。ちょっとExaktチックのスピーカーシステムです。


以下はMola Mola以外で目についたところです。

DSC00724[1].jpg

上の今井商事さんとこのMytekのマンハッタンDACは届いたばかりであまり能力は発揮できないということ。75万円になるハイエンド機です。本来は11.2kHzのDSDネイティブ再生とか、内部でのDSD変換ができるようになるということです。

DSC00742[1].jpg   DSC00743[1].jpg

上はスイスのThe Beastというネットワークプレーヤーです。これの注目点は内蔵されたDAC部分がMSB製だということですね。

IMG_2690[1].jpg

また上の写真のようにAIR TIGHTが小型スピーカーを出しました。聞いてみるとこれはやはり大村ユニット(47研とか)のようです。さすが大村ユニットでサイズに見合わない堂々とした音でした。

ヘッドフォン関係は少なめ。
マランツのヘッドフォンアンプはオールドファンらしき人が興味津々に試してたのが印象的でした。

DSC00756[1].jpg

上はなにげにエレクトリに置かれていたマッキントッシュのヘッドフォンとヘッドフォンアンプ。試聴はできませんでした。

アークではマークレビンソンのDaniel Hertzのマスタークラスのカタログがありましたが、デモはCD。
ソース機材はアナログプレーヤーが目立ちました。下のトライオードブースのKronosターンテーブルは上下反転で慣性モーメントを打ち消すといういかにもオーディオ趣味らしい仕掛けです。

DSC00734[1].jpg   DSC00723[1].jpg

ヨシノではオープンリールテープまで使ってました。アナログレコードが最近また注目されたということもありますが、「アナログの復権」とまでは言えるのでしょうか。やはり時代のインフラはあくまでデジタルとネットワークですから。そうした意味では単に時代に逆行しているのではない取り組みが必要でしょうね。
posted by ささき at 22:22 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする