Music TO GO!

2014年09月25日

CHORDファンミーティングレポート

今日は東京インターナショナルオーディオショウのタイムロードのブースで開催されたCHORDのファンミーティングイベントに参加して来ました。イベントはジョンフランクスとロバートワッツによるCHORD誕生の背景と技術的な解説を中心にして適時試聴を入れるというものです。
通訳はおなじみジェフリーさんです。下の写真は左からジェフリー、ロバーツワッツ、ジョンフランクスです。

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ジョン・フランクスは自らの背景とCHORDの誕生について語りました。彼は飛行機のアビオニクス(電子機器)の仕事をバックグラウンドにしています。飛行機は故障時の対応がシビアなので、対策については根本的なところを治す必要があります。その思想がオーディオにも活かされているということです。

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ジョン・フランクス (CHORD代表)

彼のアイディアは高周波電源の技術をアンプにもちこんだことですが、20年前当時はそれはなかなか評価されなかったそうです。そこにBBCがノイズに厳しいスタジオで評価してくれ、通常は一年かかる評価を二週間で評価してくれるほどCHORDの技術に惚れ込んだそうです。そこから口コミで伸びて行ってあのスカイウオーカースタジオにも採用されるまでに至りました。(そこでルーカスのサントラを384kHzで試聴します)
そして20年前に若いロバートワッツとラスベガスで「運命的に」会います。彼は普通のDACの20倍くらい高い既成のチップでないFPGAベースのDACを作っていました。それが発展してDAC64となって評価されたわけです。DAC64は音質は抜群でしたが、かなり熱くなる難点がありました。
それが20年前のことで、それから今のHugoに至るまでムーアの法則で進化して、高性能と低消費電力を両立するに至ります。つまりはワッツとフランクスの先見の明が今日をもたらしているわけです。

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ロバート・ワッツ (デジタル設計)

ワッツはまずオーディオマニアであるということがスタートで、子供のころからアンプを作ってたそうです。そのうち-200dBなんていう知覚できないようなノイズが実は音質に影響するということから興味を持ち、音は耳ではなく脳で聴くということから研究を深めています。
実際Higoを設計する際にもリスニングによる差を重視して行ったということです。これはタイミングが重要であり、計算する上でのタップ数(細かさ)がキーとなります。タップが大きければ音の止めと始まり、イメージングもはっきりしてきます。つまり元の音に近づけますが無限大はできません。
そこでFPGAの性能向上とともにDAC64->Qute->Hugoとタップ数も進化していったわけです。
Hugoの性能はロバートワッツ自身も予想していたけど、自分でも驚いたのは自然でタイミングに優れた音楽性の高さだそうです。

次に私と和田先生がファン代表ということで一言述べさせてもらいました。
私はこの最高の音をポータブルにもたらして、新しい世界を見せてくれたことに感謝し、和田博己さんがDAC64についての導入時からHugoへの期待について語りました。
Q&AではRCAの最大出力値からボリュームのステップと色の関係までHugoの質問がありました。

このミーティング通じて感じたのはロバートとジョンの絆の深さで、二人の絆はオーディオマニアということ、またアナログ(ジョン)とデジタル(ロバート)という住み分けも良い方に働いているようです。
ジョンフランクスは情熱的なオーディオ愛好家ですが、ロバートワッツは物静かなイメージもあります。しかしHeadFiの書き込みのように熱いオーディオ魂を秘めた人でもあります。
CHORD製品が単に性能が高いだけではなく、音楽性も高く評価されてるのはそうした二人のオーディオ魂から来ていると感じました。

他には新製品でプロトタイプのhugoアンプ(モノブロックで8Ω70W出せるスピーカー駆動できるタイプ)などの情報もあり、最後には新製品の黒いHugoとHugoケースも披露されました。自分の携帯をつけて使いやすいように考えられサムストラップ(グリップ)も操作性を意識しています。

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ブラックHugo

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HugoケースとAK100mkIIとタイムロードさんのOP-TL1ケーブル

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片側は余剰ケーブルの巻取りと、ぶつけたときのバンパーを兼ねています

なかなか濃い一時間でした。最後にロバートワッツとジョンフランクスのサインをHugoにしてもらいました ^.^

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実はこのあとさらに彼らとオフレコ話をしました。ちょっと内容は書けませんが、ジョンが話して良いと言ったのは、この後も興味ある製品が出てくると言うことです。私も聞いてそれちょうだいって言いたくなりました。また私もこういうの作って欲しいといろいろお願いしました。

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ブラックHugoとジョンとロバート

思うにオーディオ世界へのHugoのインパクトは大きく、私はHugoはポータブル世界に大きなインパクトがあったと感じてますが、実は同様に従来のハイエンドのオーディオ世界にも性能対価格やサイズでも大きなインパクトがあったと思います。またCHORDにとってもターニングポイントになるような製品だと思います。
Hugoはオーディオにおける新しいジャンルを作ったと言っても過言ではないし、新しいスタンダードを作りました。
これからもCHORDの動きに要注目です!
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2014年09月23日

東京インターナショナルオーディオショウとBruno PutzeysのMola Mola

今年の東京インターナショナルオーディオショウは9月ということでちょっと実感がありませんが、見に行って来ました。ちなみに写真はカレー以外はSONY RX100M3です。

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開場時には大盛況で並んでたんで、はじめに銀座のカツカレー発祥の店スイスで元祖カツカレー(千葉さんのカレー)を食しましたが、入館してみるとそれほどでもなく午後になってやや混み出した感じです。
全体を見て去年のLINNのExaktのような大物はないのですが、私が個人的に注目してたブランドが出てました。

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それはハイエンドのブースで出展されていたMola Molaです。上の写真です。
なぜ注目かというと、このMola MolaはあのiQubeの設計者であるBruno Putzeysのプロジェクトだからです。HypexやGrimm Audioも彼ですね。Mola MolaはおそらくネルソンパスのFirstWattブランドみたいな個人ブランドのイメージでしょうか。
DクラスのパワーアンプKalugaとプリアンプMokuaが展示されていました。このDクラスアンプはモノブロックで一台85万円くらいとのことですが、これはHypexブランドと同じくNCoreデザインです。Mola Molaはマンボのような魚のようですがデザインも波をうねっています。
emmLabのDACと組み合わされてなかなかの音を出してましたが、実はMola MolaのメインはDACです。これは当初はプリアンプに内蔵されるものと聞いていましたが、今回ブースで聞いてみると内蔵方式だと発熱がすごいので単体DACとして再設計しているそうです。

Mola Molaのホームページはこちらで開発ブログもあります。
http://mola-mola.nl

最近はDSDという変革期を迎えて、DAC設計においてはPS AudioやSignalyst DACのように"従来の市販DACチップ+I/V変換回路"のような枠にはまらないさまざまなアーキテクチャのDACが現れてきていますが、Mola MolaのDACもそうした新しい方向性を持ったDACです。
これは10年先を見越して設計したという、いわゆる市販のDACチップを使わないディスクリートのDACです。1bit PDMからフィルターでアナログ信号を取り出すタイプだと思います。

今年のCESでのStereophileのレポートは下記リンクです。
http://www.stereophile.com/content/mola-mola-new-dac-prototype

DACは3枚のボードから構成されていて、PCMとDSDを入力としますが、一枚目のボードで入力をすべていったん3.125MHz/32bitにアップサンプリング変換し、それをPWM経由で100MHzの高周波の1bitデータストリームに変換します。二枚目と三枚目はそれぞれR chとL chのモノDACで、1bitデータをフィルターでアナログに変換します。これで140dBものSN比を達成しているということ。

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Mola Molaのサイトより

下の記事(part2)に出て来ますが、100MHzがベースクロックで、3.125MHzの32サンプル(100/32=3.125)がPWMのサイクルに相当するようです。よくわかりませんが、こうするとジッターを排除しSNをあげられるそうです。
一回マルチビットに変換するのはボリューム制御のためではないかと思います(PS Audioも同じ)。

また面白いインタビューがこちらのultraaudioというサイトに掲載されています。
http://www.soundstageultra.com/index.php/features-menu/general-interest-interviews-menu/455-searching-for-the-extreme-bruno-putzeys-of-mola-mola-hypex-and-grimm-audio-part-one

写真 2014-09-23 20 46 36.jpg
Bruno Putzeys (上記サイトより)

クラシックのDSD配信で知られるChannel Classicsの柔らかい音のキーは単にDSDを採用しているだけではなく、使用しているGrimm Audio AD1というディスクリートADコンバーターに寄るところも大きいと思います。Channel Classicsの中でもスタジオ機材が違うと音が違いますからね。このAD1にまつわるGrimm Audioの誕生についても語られています。
Bruno Putzeysによれば1bitデルタシグマは魔法のようなものではなく、PCMでも同じような音質のものは作れると考えているが、ディスクリートADコンバーターを作るには1bitデルタシグマはよい選択であると書いています。

またPutzeysはフィリップスに在籍していました。フィリップスではNat.Labという先進技術研究所があったようですが大企業にはありがちなことで、そこにいかに良い技術があってもフィリップス自体は採用しないので、オランダにはフィリップス出身の技術者が溢れてるとのこと。彼もその一人ですね。Hypexで用いられているNCore技術もこの時の産物ということです。

あと上のKalugaとかMokuaという名前は日本に売る時には「電気ウナギ」にしようとしたけど、日本の代理店(ハイエンド?)に日本人は英語が書いてある方が喜ぶからそれはやめろと言われてハワイの魚の名にした、と書いてます。
Putzeysが来日してればiQubeにサインをして欲しかったところですが、そのうち来て欲しいですね。PutzeysについてはGrimm LS1も要チェックです。ちょっとExaktチックのスピーカーシステムです。


以下はMola Mola以外で目についたところです。

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上の今井商事さんとこのMytekのマンハッタンDACは届いたばかりであまり能力は発揮できないということ。75万円になるハイエンド機です。本来は11.2kHzのDSDネイティブ再生とか、内部でのDSD変換ができるようになるということです。

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上はスイスのThe Beastというネットワークプレーヤーです。これの注目点は内蔵されたDAC部分がMSB製だということですね。

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また上の写真のようにAIR TIGHTが小型スピーカーを出しました。聞いてみるとこれはやはり大村ユニット(47研とか)のようです。さすが大村ユニットでサイズに見合わない堂々とした音でした。

ヘッドフォン関係は少なめ。
マランツのヘッドフォンアンプはオールドファンらしき人が興味津々に試してたのが印象的でした。

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上はなにげにエレクトリに置かれていたマッキントッシュのヘッドフォンとヘッドフォンアンプ。試聴はできませんでした。

アークではマークレビンソンのDaniel Hertzのマスタークラスのカタログがありましたが、デモはCD。
ソース機材はアナログプレーヤーが目立ちました。下のトライオードブースのKronosターンテーブルは上下反転で慣性モーメントを打ち消すといういかにもオーディオ趣味らしい仕掛けです。

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ヨシノではオープンリールテープまで使ってました。アナログレコードが最近また注目されたということもありますが、「アナログの復権」とまでは言えるのでしょうか。やはり時代のインフラはあくまでデジタルとネットワークですから。そうした意味では単に時代に逆行しているのではない取り組みが必要でしょうね。
posted by ささき at 22:22 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月18日

クラウドファンディング開発のイヤフォン、AurisonicsのRocketsレビュー

話題となったPONOをはじめ、PS AudioとかLight Harmonicsなどクラウドファンディングによるオーディオ製品開発も増えてきましたが、本記事で紹介するRocketsはAurisonicsがKickstarterで募集したイヤフォンのクラウドファンディング開発による製品です。
Kickstarterでは私は$129で投資したのですが、最安は$99でした。そのうち$250くらいで市販されると思います。Kickstarterのページはこちらです。(すでに終了しています)
https://www.kickstarter.com/projects/1285259404/aurisonics-rockets-next-gen-iems-made-in-usa

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Rocketsの特徴はまずその名のようにロケットの形をした独特の3枚のタブです。また筐体はチタン製で、ケーブルはケプラーの特注品です。開発中はクラウドファンディングなので開発経過が出資者に報告されていましたが、このケーブルの遅れが出荷の遅れにかなり影響していたようです。

Aurisonicsはイヤモニの会社で、ダイナミックドライバへのこだわりで知られています。ふつうイヤモニはBAを使うことが多いわけですが、この会社はASG-1という大口径ダイナミック15mm一発のイヤモニで知られています。ちなみに他のモデルでは中高域にBAを採用したハイブリッドモデルもありますが、よく知られているのはこの大口径ダイナミック使いのメーカーということです(現行は14.2mmドライバーに変更されています)。
RocketsはShureやゼンハイザーのように最近流行りの小口径ダイナミックドライバーを採用しています。やはりダイナミックにこだわったわけですが、大口径ダイナミックドライバーでならしたメーカーが今度は小口径のダイナミックを採用したわけです。

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コンパクトな金属カンに入ってきます。私の場合はスペアのイヤチップが入っていました。
ケプラーのケーブルは赤と青のユニークなデザインがなされています。ケーブルの表面のビニールはやや摩擦があるタイプです。ここは意図的な設計だと思いますが好き嫌いがあるとは思います。またマニアック系ケーブルほどではないけれどもやや硬めです。残念ながらケーブルの交換はできません。ミニプラグがかなりがっちりしていて、はまりも上々です。ケーブルの質はこだわっただけあって価格的に考えてもかなり高いと思います。
装着についてはストレートも耳巻きも両方できると言うのがうたい文句だけどここが曲者ではあります。また特徴のタブは効果があいまいで、HeadFiなんかではよくはずされてます。

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音を聞いてまず感じるのは能率低いってことです。ボリュームは高めが必要ですがiPhoneでも音量は取れます。
音はわりと硬質でシャープ、柔らかいとか甘い音ではありません。全体にアタックやパンチはかなり鮮明で歯切れがよく、明瞭感があり、引き締まった感じです。音色はニュートラルで着色感はあまりないけれども、無機質にはそれほどなっていないのは良いところです。
低域は出すぎずに意外とあります。高音域も明瞭なので、ワイドレンジ感があります。標準の三角チップだとやや刺さる機種もあると思います。AK120IIはそれほどでもありません。
イメージングが良くてDAPによっては楽器の三次元感覚が楽しめると思います。深み、奥行き感があって、この点でAK120IIによく合うと感じます。音場の二次元的な広さ自体はそこそこですね。
ダイナミックにしては解像度高い方で、iPhoneでもオッと思うくらいですね。
解像力・情報量たっぷりのWestone W60なんかで日ごろ慣れてると、それほどでもないように思えてしまうけれども、やはりダイナミックのシングルドライバー機としてはかなり高いと思います。

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端的に言うと、硬質な明瞭系、シャープ系、スピードある系、イメージングやピントが決まる系でしょうか。音的にはチタンの筐体が利いていると思います。
相性が良く、Rocketsの魅力を引き出すと思ったDAPはAK120II、ARM1、Calyx M(FW0.97以降)でしょうか。Calyx Mは以前のファームだとややハイがきつめだと思います。iPhone5sの直も悪くないです。
HeadFiでははじめはER4Sとよく比べられていたんですが、ちょっと違うようには思います。

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イヤチップは標準のやや尖ったタイプがひとつ(M)と先端がやや丸いタイプが3つ(S/M/L)付属してきます。(わたしのには丸いタイプが一袋予備についてきました)。やや音が違っています。私の耳での変化ですけど、尖った方がやや高域が出てシャープ、丸い方はやや全体が穏やかになって低域が少し出る感じですね。アンプと合わせてきつすぎるときは丸いタイプが良いけど、どちらかというと尖ったタイプがこのイヤフォンらしい音のような気はします。ケーブルで調整できないのでチップで音を調整するとよいでしょう。

全体にかなりコストパフォーマンスが高いと思います。この価格帯にはないような高級な音が楽しめます。Kickstarterの$129だと格安ですね。$250でもかなりよいと思います。
クラウドファンディングなので開発経緯が分かるのも面白いところです。ただクラウドファンディングはプリオーダーではありませんので、あくまでリスクもあるし、納期の遅延やデザイン変更なんかは茶飯事ですから、くれぐれも注意してください。Rocketsは多少遅れはしましたが、クラウドファンディングではよいほうだと思います。
RocketsはKickstarterのみではなく、そのうち市販(予価$250)がなされると思いますのでこの記事で興味を持った人は情報に注意していてください。

いずれにせよ、クラウドファンディングによるオーディオ機器の開発も2014年のトレンドと言えるでしょう。
posted by ささき at 23:30 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月13日

"Meaty Monster" - iFI iDSD micro レビュー

*iDSD microとは

iDSD nanoでDAC内蔵ポータブルアンプの世界を席巻したiFIが満を持して発売したのがこのiDSD Microです。nanoに比べると筐体が大きくなり、第一世代のiFi機器に近いサイズとなっていますが、単にnanoの上位機種というラベルにはとどまらない高い汎用性と高い性能を兼ね備えています。基本的にはバッテリー内蔵のポータブル機器と言えますが、据え置きとしても高い能力を持っています。

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iPhone5sからCCKで接続

まず驚いたはiPhoneからのカメラコネクションキット(CCK)でのUSB入力がアダプタなしで接続できるという点です。iPhoneからDACに接続する際にはカメラコネクションキットを使用する必要がありますが、さらにカメラコネクションキットからアダプターを使うなどしてDACのB端子に入力する必要がありました。ところがiDSD microでは機器側が直接CCKのUSB端子を受けることのできる端子となっているため、アダプタを必要としません。かなりすっきりとシンプルに接続ができます。いままでのいかにも裏技でやっている感がありません。またSONYのZX1などのWalkmanでも同様にカメラコネクションキットに相当するNWH10を使用することで直接接続が可能です。まさにマニアがほしかった製品と言えます。

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実のところiDSD microはその構想をクラウドデザインとして始めました。クラウドデザインとはいまはやりのクラウドファンディングにも似たコンセプトで、ユーザー参加によって開発を進めていくというものです。クラウドファンディングとは違ってお金を出資するわけではありませんが、こういうものがほしいというアイディアを出してもらうわけです。クラウド(crowd)とは雲ではなく「皆が集まって」という意味です。その「みながほしいもの」公募はHeadFiに投稿されました。またその進捗を設計日記ということでHeadFiに書きこむというユーザーと一体になる手法を取っていました。(日本語でこの翻訳を読むことができます)
http://www.head-fi.org/t/711217/idsd-micro-crowd-designed-phase-2-smartpower-please-feed-the-meaty-monster-page-124
日本語ではこちらの開発ブログをご覧ください。
http://ifi-audio-jp.blogspot.jp/search/label/%E9%96%8B%E7%99%BA%E6%83%85%E5%A0%B1

いままでのオーディオはいわばメーカーからトップダウンに開発されてきたわけですが、このヘッドフォンやポータブルオーディオの世界はボトムアップの文化と言えるでしょう。その違いを積極的に取り入れていくというiFIの姿勢は、ハイエンド(AMR)の技術をコンシューマーに届ける、というiFIの理念に沿うものと言えます。

* ポータブルでのiDSD micro

まずこの驚きのスマートフォン直結のポータブル形態で音を聞いてみることにしました。

WalkmanとNWH10をiDSD microに直結してEdition8で聞いてみました。
後でも書きますが、このタイプの接続ではセルフパワーでバッテリーを使うために、はじめにボリュームをオンにしてからUSB ケーブルをつなぐことが必要なことに注意してください。

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Walkman ZX1からNWH10で接続

まず感じられるのは透明感が高くクリアな音空間です。ノイズレスで、純粋な雑味のないピュアな楽器の音色表現に感じ入ってしまいます。余計な付帯音がなく、着色感も少なく正確な音再現といえるでしょう。
オーディオ的には周波数特性もワイドで、高いほうはすっと上まで伸びていき、ベルの音もきれいに響きます。これだけ美しく響くならばSNも相当良いのでしょう。帯域の低いほうはロックでもかなり深いベースが絞り出されてきます。ヴォーカルは透き通ったように美しい歌声が堪能できますね。
据え置きレベルと言ってよいかなりレベルの高い音で、これがポータブルで出てくるのなら相当なマニアでも満足でしょう。Edition8のような高性能のヘッドフォンで聴きたくなるような音です。
できればこの音に見合うような高品質なUSBケーブルを作ってほしいところです。

またiDSD microは別に電源出力用のUSBポートを側面に備えていて、バッテリーはスマートフォンの外部バッテリーとしても使用することができます。いまからのインフラでもあるスマートフォンにまじめに取り組んでいると言えるでしょう。

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それに加えてiDSD microは前面に3.5mmミニのアナログ入力端子を備えています。これで聴くとDACだけではなくアンプの能力を切り出してもなかなかすぐれていることがわかります。最近はこうしたDAC内蔵のヘッドフォンアンプでは入力がデジタルだけという割り切りも多いのですが、あえてアナログを設けたのはたしかクラウドデザインでの要求だったと思います。なかなかマニアックな着眼ですね。

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真ん中の小さなプラグがアナログ入力端子

* 据え置きとしてのiDSD micro

次にiDSD microはバッテリー内蔵のポータブルヘッドフォンアンプであると同時に、PCオーディオにおいて高性能なUSB DACとしても使用することができます。この時はバッテリーからクリーンな電源を取り出すこともできます。iDSD microはバッテリーを使用するセルフパワーと、USB経由で電力を受けるバスパワーを任意で切り替えることができます。これは説明書に書かれていますが、パワーオンとUSB接続のタイミングで自分で任意に設定ができます。
もとろんiFIですからバスパワーの品質がなおざりにされているわけではなく、バスパワーでは得意のiPurifierが内蔵されています。これでUSB入力の信号をきれいに整えるわけです。据え置きのデスクトップに置いてはヘッドフォンアンプとしてだけではなく、プリアンプ、またはDACとしても使えます(出力の固定や可変が底面スイッチで設定可能です)。
クリーンな電源とそのパワフルなアンプでポータブルだけではなく、デスクトップでも能力を発揮できます。

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赤いスイッチがパワーモード切り替え

またiDSD microの大きな特徴として出力機器へのパワーを調整する機能を通常のゲインではなく、パワーモードというスイッチで電力の管理をしています。これもおいおいと説明していきます。

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Sennheiser HD800

USB DACとしての音を聴いてみました。WindowsのJRiver19をプレーヤーとしてUSB DACとして接続してバスパワーで聴いてみました。ヘッドフォンはHD800を使用しています。
音質はポータブルの時と同様にピュアでクリアな音ですが、それが一層研ぎ澄まされて、解像感が絞り出されたように情報量が多くなり、さらにダイナミックにかつスピード感のある切れのあるシャープな音が楽しめます。パワーモードはノーマルですが、HD800を十分にドライブしていると思います。バスパワーでも十分ピュアな音なのはiPurifierが効いているのでしょう。
ここでパワーをターボにするとやや力感過剰になりますが、実はこのモードの真価は...後に続きます。

* iDSD microを語るキーワード "OTW"

iDSD microを語るキーワードというか、テーマは“Outta this World (OTW)”(この世のものとは思えない)です。つまり他の機種に比べての大きなアドバンテージです。ちなみにOutta this WorldはOut of this worldのくだけた表現です。

OTWその一はPCMでの768kHz(DXDx2)、DSDでの22.6MHz(DSD512)対応です。
現状ではPCオーディオでの据え置きの先進的な機種でさえごく一部のみに11.2MHz(DSD256)が採用されているにすぎないのですが、iDSD microはコンパクトなパッケージでそれらを凌駕する22.6MHz対応を実現したわけです。
これはiDSD microの開発日記の日本語訳(下記リンク)にその詳細を見ることができます。
http://ifi-audio-jp.blogspot.jp/?m=1
上のリンクの記事で「オーディオは新しい序列を持った」とありますが、新しい序列というと意味がよくわかりません。ここの原文を読むと"New Order"であり、これを翻訳するならば「新秩序」ですね。新秩序のもとの意味は政治的なものもあるので調べていただくとして、いまでは一般的には新しい基準・新しい世界の意味として使われます。"New Standard"でも意味は通じますが、New Orderと言ったのは有名なニューウェーブのバンド名にかけてると思います。
つまりはいままでのPCMは192kHzかすごくても384kHz、DSDは進んでるといっても5.6MHz、最高でも11.2MHzだったのですが、ここで768kHz、22.6MHzという新しい基準を打ち立てたということです。標準と思われていたバーを引き上げたといってよいでしょう。iDSD microの底面には誇らしげにロゴとスペックが所狭しと印字されています。

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22.6MHzはもちろん、11.2MHzのDSD音源さえ入手がまず困難ですが、NetAudio誌のNo15に11.2MHzの音源が付録でついてきます。まずファイルサイズで一曲945MBというところに驚きますね。個人的に言うと、普通のDSD64(2.8MHz)のDSD音源だと192kHzハイレゾと比べて音が柔らかく滑らかという違いがあるくらいですが、DSD128(5.6MHz)となると音の情報量がぐっと違ってより濃密で精細な音質が楽しめるようになります。OTOTOYのCojok+徳澤青弦カルテットのQUANTなんかはよいですね。
http://ototoy.jp/_/default/p/32369
11.2MHz、さらには22.6MHzというとまた可能性が広がることでしょう。ちなみにたいていの再生ソフトは5.6MHzまでしか再生できないので、その辺から立ち上げる必要があります。この11.2MHz音源はFoobarのASIO(+SACDコンポーネント)を使わないとうまく再生できませんでしたが、これはラフに設計されたソフトの方がなまじチェックがないのでかえって柔軟性があるということかもしれません。
(9/16 追記) iOSのhibikiアプリがiDSD microとの11.2MHz(DSD128)でのDoPによるDSDネイティブ再生に対応したということです。
PCMの384KHzを超える世界についてはソフトウエアでアップサンプリングして試してみることができます。Ardivana Plusでアップサンプリングをし、表示ディスプレイで705.6kHzとか見ると新鮮です。この感覚が"OTW"ですね。

OTWその二はヘッドフォンのパワーモードに完璧にマッチしたiEMatchです。
ヘッドフォンアンプの場合には高能率でノイズを拾いやすいイヤフォンから、逆に能率が低くパワーがないと鳴らしにくいヘッドフォンまで多様な再生機器を最適にドライブする必要があります。とはいえ、多くのヘッドフォンアンプはよいところゲイン切り替えがある程度です。
iDSD microではパワーモードに小出力用のecoを設けることで電池の持ちを優先させつつ小出力のイヤフォンなどに対応ができます。さらにそれに加えてIE Matchという機能で高能率、あるいは超高能率のモードを切り替えで選択することで高能率のイヤフォンに対応しています。ここまでやるか、というレベルまで最適化を考えるのがOTWなのでしょう。
最近はやりのカスタムイヤフォンなどはみな高能率なのでこの機能は大いに役に立つでしょう。

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JHA ロクサーヌ カスタム(iPod Classicからアナログ入力)

OTWその三は8v/4000mWのターボヘッドフォン出力、上とは反対に高出力の必要性への対応です。最近のヘッドフォンのはやりの一つは平面型ヘッドフォンです。これらは音質は高いのですが、能率が低く鳴らしにくいという欠点をもっています。そこでiDSD microではパワーモードにターボモードを設けてこの高出力に対応しています。別名で平面駆動ヘッドフォンモードと言っても良いでしょう。中でも特に名指しで対応を表明しているのはHiFiMan HE6です。HE6はK1000と並び称されるほど能率が低いヘッドフォンで、下手なヘッドフォンアンプを使うとクリップさせてしまいます。
私はこのHE6も持っています。こちらについては下記のレビュー記事があります、
http://vaiopocket.seesaa.net/article/171206322.html

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HiFiMan HE560

まず同じHiFiManの最新の平面型であるシングルエンドマグネット方式を採用した平面型HE560を使ってみるとノーマルモードでは物足りなかった力感が生き返ったように生き生きと音楽を奏でてくれます。しかもバッテリー駆動でもその音が出せるのは痛快な感覚さえありますね。単にハイゲインで鳴らすというのとはパワー感も異なるように思えます。

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Audeze LCD-2

次に平面型を復活させるきっかけともなったAudezeが設計したLCD2を使ってみます。ノーマルでも音はならせますが、ターボモードではまるで音が跳ねていくように軽快にパワフルにドライブできます。低音の震える様子もターボではより明瞭に聞こえます。

さて、HE6です。これはEF6のバランスでないとふつう音量を取ることさえかなわないのでバランスプラグを付けたままなんですが、それを外してHE560のシングルエンドケーブルで聴いてみます。
普通のヘッドフォンアンプではフルに回し切っても音量が取れないほどのHE6でも意外とパワーモードがノーマルでもなんとか音量が撮れるくらいはあるので、実はノーマルでもかなりのパワーがあることがわかります。ただしこのモードでは曇り感やだるさ感が感じられます。

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HifiMan HE-6

パワーをターボモードにすると驚くことに息を吹き返したようにあのHE6がスピード感のあふれるジャズやロックを演奏してくれます。いつもはラックサイズのEF6でHE6を使っていますので、このサイズのアンプがこれだけの駆動力を持っているということにただ驚きます。

そしてiDSD microは同時に繊細なカスタムイヤフォンもIE Matchできめ細やかに鳴らすこともできるのです。それに気が付くとまた驚きますね。パワーモード切替は単なるゲインを超えたドライブコントロール力をiDSD microに与えてくれています。

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iPhoneとHE560

このようにIEmatchとパワーモードでHE6(平面型ヘッドフォン)から高感度イヤフォンまで、さきに書いたようにスマートフォンでのポータブルから家でのPCオーディオのUSB DACまで、万能に使えてハイスペックであるのがiDSD microのOTWです。

* ソフトウエアの最適化

iDSD microでは先に書いたようにターボモード、ecoモードのように電源管理を行っています。またユニークな光/SPDIF入力の兼用端子、そして入力の自動切り替えなどこれらはソフトウエアでモニタリングされています。

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SPDIF入力

このように高度なソフトウエア処理をしているのもiDSD microの隠れた特徴ですが、中でも特筆すべきものはXMOSの最適化でしょう。

データの入出力の流れの制御をつかさどるXMOSチップはそれ自体が小さなコンピュータなのでソフトウエア(ファームウエア)が重要になります。XMOSははじめに標準のプログラムコードがついてきますが、それはおまけのようなもので十分ではありません。
以前フェーズテックさんがUSB DACであるHD-7A 192のXMOSのファームウエアを書き変えて、元のコードと切り替えて試聴できるようにしたプロトタイプを聞いたことがあります。新しいXMOSコードは最適化(高音質化)をかなり考慮したものですが、おまけについてきたコードとは低域の実在感や全体の解像力が大きく向上していて、ファームウエアの違いだけでこんなに違うのかと驚いたことがあります。(下記記事)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/205289553.html

この点でも参考にする設計チームの日本語訳があります。ただし下記の日本語訳に「ストックされているXMOS USBのプラットフォーム」とありますが、ここも実は適切な訳ではなく意味が通じなくなっています。
http://ifi-audio-jp.blogspot.jp/2014/06/micro-idsd4-2.html
原文は"stock XMOS USB platform"なのですが、ここでのstockは(手が加えられていない)標準添付のとか、(カスタムではない)出来合いのという意味です。つまりここでいう「標準添付(stock)のXMOS USBのプラットフォーム}とは上で言うおまけではじめから付いてくるXMOSのファームウエアのことです。つまりこの標準コードだけでは十分ではありません。
iFIでは標準(stock)状態のXMOSコアの負荷状況を解析して、その最適化をしています。
下図の上が標準(stock)の状態で、不自然な負荷ピークがありますが、最適化後は下図のように自然な負荷分散に改善されています。

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image.jpg

またiFIではスター・クロッキング方式という独自のタイミングを考慮したファームウエアを書きあげています。
これは幾つものXMOSソフトウェアモジュールが単一の高精度マスタークロックによってタイミングコントロールされるというもののようです。解説では軍用のリアルタイム制御システムが例に取られていますが実際にメンバーはそうしたところで豊富な経験を持っているようです。

ちなみに上の記事ページに使われているミサイルの画像は最新のMBDAミーティアです。ミーティアはロケットエンジンではなくジェット(ラムジェット)エンジンです。普通ミサイルは目標に当たる時には燃料が切れて慣性で飛んでるだけですが、ミーティアはジェットで燃費制御出来るので命中時にさらに加速して目標の回避に追従できます。その点でリアルタイム制御はよりシビアなんでしょう。

* iDSD microのこだわり

iDSD microは別な言葉で言うと、これまでのiFI製品の集大成的な製品ということもできます。それは電源・信号のクリーン化へのこだわり、AMRの技術継承などです。

たとえばユニークなこだわりは極性反転スイッチにあると思います。これはなんの役に立つかというと、レコーディングの極性が間違っているときに修正ができるということだと思います。
実際のところ、XTCが極性反転エラーを修正したCDを出し直したのは有名な話で、彼らによると「極性エラーはマスターリングの世界では良くあることで、マルチとミックス間にたった一本の間違ったケーブルがあるだけで発生する」ということだそうです。本当かどうかはわかりませんが一説によるとアルバム約4枚の内1枚に起こるとも言われているとか。音が怪しいと思ったらスイッチを試してみるのもよいかもしれません。
ちなみにXTCの極性を修正したCDはこちらです。
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/B00IXL18OU?pc_redir=1404837414&robot_redir=1

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XTC - Skylarking (corrected polarity edition)

もちろん高品質パーツも、超低ノイズ&超低歪みの酸化タンタル薄フィルム、あのハイエンドオーディオで使われるテフロンにも近いというC0G絶縁体を採用したコンデンサー、無酸素銅線による金メッキ4層ボードなど第一級の品質にこだわっています。

ハイエンドAMRの技術継承という点で言うと、例えば下記のリンク記事にある電源の正負反転の精密制御などがあります。普通こんな細かいところならコストのために手を抜いて、、とするところが、iFIではすでにコスト転嫁したハイエンドオーディオから持って来てあくまでこだわるわけです。
http://ifi-audio-jp.blogspot.jp/2014/06/micro-idsd15i.html?m=1

また3つのデジタルフィルターもAMRの継承によるものです。Minimum PhaseはAyreでも有名なように他のメーカーでも使われていますが、Bit PerfectはAMR独自のデジタルフィルターです。

iFIのこだわりのひとつ、アナログによる3Dエンハンスもおなじみになりましたが今回も採用されています。iFIの3Dやベースエンハンスは自然な効果があり、実際に使えるエフェクトスイッチだと思います。これらはコンシューマー用の「ベースブースト」などとは一味違います。
またこの3DがiFIのこだわりの理由というのはこの機構がミッドサイド・ステレオ(MS処理)を利用しているからだと思います。Mid-Sideステレオ処理(MS処理)については下記に書きましたので参考までにご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/386365476.html
いまはiFIのシンボルとなった3D機能ですが、iFIのトルステン博士とインタビューしたときにもブルームレインの著書を見せて雄弁にステレオ技術の伝統について語ってくれたのを思い出しました。これはブルームレインと古き良きステレオの時代へのオマージュであるのかもしれません。

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アラン・ブルームレインと著書

普通はカタログにかけないような電源とかはコンシューマ製品ではこだわらないものですが、そこまでやるか、というのがこだわりであり、また英国の技術の伝統への誇りも感じられます。それが技術者集団としてのiFIの矜持と言えますね。

* まとめ

iFI Audioの日本語ホームページはこちらです。
http://ifi-audio.jp/
FacebookにもiFIのページがありますのでご覧ください。最新情報がわかります。
https://www.facebook.com/pages/Ifi-audiojp/449735338455976?fref=nf

IMG_4622_filtered[1].jpg

iDSD microは別名を"Meaty Monster"と呼ばれています。中身がいっぱい詰まった怪物という感じでしょうか。これはこれまでの説明からわかっていただけたと思います。
iDSD microはカメラコネクションキットのアダプタ不要での入力や、外部バッテリー機能などスマートフォンとの親和性も考慮しながら、PCM768KHz対応・DSD22.6MHz(DSD512)対応と最先端のスペックを持ち、平面型を鳴らし切ってしまうハイパワーを備え据え置きとしても一級の性能を持つ万能なオーディオ機器と言えます。スマートフォン、DSD、平面型ヘッドフォン、カスタムなどの高能率イヤフォンなどなど、業界のトレンドをとらえて上手に対応しています。
そうしてクラウドデザインによって先端のマニアのこだわりを吸い上げる一方で、極性反転や電源へのこだわりなどiFIらしいハイエンドメーカーの遺伝子を感じさせる自らのマニアックなこだわりも備えています。
まさにiDSD microはiFIのいまを感じさせる集大成的なオーディオ機器と言えるでしょう。


今年はiDSD micro、AK240、Hugoとポータブルの高性能製品が目立っていますが、これらは単に「ポータブルでは音が良い」というところにとどまっていません。AK240によってはじめてDSDの無線ネットワーク再生が実用のものとなりましたし、Hugoは据え置きのハイエンド機さえ凌駕する演算性能を持っています。そしてiDSD microは据え置き機でさえ実現していないDSD22.6MHz対応を実現しました。もはや据え置きのPCオーディオではなく、まずポータブルから革新が始まるというのが2014年に見え始めたトレンドと言えるのかもしれません。
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2014年09月11日

PhilipsのM2LライトニングヘッドフォンとMFI拡張とiPhoneのハイレゾ対応

Philipsからライトニング接続可能なDAC内蔵のヘッドフォンが発表されました。
http://appleinsider.com/articles/14/09/10/philips-announces-fidelo-m2l-the-first-ever-apple-lightning-headphones-with-24-bit-dac-audio
上のApple Insiderの記事にも記載がありますが、これは先日知られるようになったMFI拡張によるヘッドフォンへの拡張を用いていると思います。

MFIのヘッドフォンへの拡張については下の記事で書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/398729325.html
この時は48kHzどまりのように思えましたが、Philips M2Lは96/24のハイレゾ再生に対応しているようです。
MFI拡張でデジタル接続をすると言うのは、言い換えると先日の下記記事で言うアクセサリーモードで接続しているわけです。もっと一般的に言うとiDevice接続です。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/404882406.html
この接続では一般に48/16止りと思われて来ましたが、A&KのAK10で96/24対応をしていることも考えるとやはりアクセサリーモードでもハイレゾ対応できると言うことになります。

さて、AK10のところでも書きましたがこのモードでハイレゾ接続出来るための条件はアプリがHF Playerのようにハイレゾ対応をしていることです。しかしながらAppleが標準で対応を表明したということは標準のミュージックアプリもハイレゾ対応したということです。以前実際にiPadのミュージックが24bit透過してるというのは確認したことがあるのですが、今ではiPhoneのミュージックもハイレゾ対応がなされたと考えて良いと思います。

先日新しいiPhone6が発表されてそこにどこにもハイレゾ対応がなかったので失望した人も多いでしょう。
しかしながら、ハイレゾ対応の要件を考えると上で書いて来たようなことからiOSはすでに基本ソフトのCoreAudioもアプリもハイレゾ対応がなされているわけです。
じつのところスマートフォンのハイレゾ対応で難しいのはソフトの方で、Androidが引っかかってるのもそこです。一方でオーディオコーデックと呼ばれるスマートフォンのDACのハードはむしろ簡単なはずです。(ADCもDACもワンチップなのでAudio Codecチップと言います)

ちなみにiPhone 5sのオーディオ関係のハードはAudio Codec(DACのこと)がシーラスロジックの338S1201でアンプ(Dクラス)は338S1202というチップです。下記のChipworksのサイトでわかります。
http://www.chipworks.com/ja/technical-competitive-analysis/resources/blog/inside-the-iphone-5s/
338S1201はAppleのカスタムパーツナンバーだと思いますが、下記のベース技術から推測すればハイレゾ対応はこのチップでもされていると思います。
http://www.cirrus.com/en/mobile/products/c/smartphone.html
つまり机上ではiPhoneはすでに基本ソフトもアプリもハードもハイレゾ対応できてるはずです。

iPhoneのハイレゾ対応はヘッドフォンでやれば良いだろうと思ってるとか、母艦のiTunesの問題か、もしかするとiTunesストアのハイレゾ化がうまく進まなくて対になるiPhoneをハイレゾ対応と表明できないので足踏みさせてるという読みも出来なくはないですが、iPhoneのハイレゾ対応については不思議な気がします。


一方でこのiPhone6発表の熱狂に隠れてひっそりとiPod Classicが姿を消しました。13年続いて来たあの形のiPodは終焉を迎えました。
iPodははじめての"MP3プレーヤー"ではありませんが、iTunesストアと対でポータブルオーディオを立ち上げ、ひいてはいまのヘッドフォンムーブメントのもとになりました。マニアック分野でもラインアウト経由でポータブルヘッドフォンアンプを発展させました。まさに時代を変えたオーディオ機器と言えます。
別な言い方では音楽好きのジョブズがiPodとiTunesストアで音楽のあり方を変え、その功績でグラミー賞も受賞してます。
この後のジョブズ亡き後のApple新体制とオーディオの関係はどうなって行くのか不安でもありますが興味深いところです。
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2014年09月07日

スマートフォンのハイレゾ再生とDAC活用のまとめ

現時点でのスマートフォンのハイレゾ再生の対応とDACの活用についてまとめてみました。(以下スマートフォンと書いてあるところはタブレットもほぼ同様です)
また私のメモみたいなものでもあるので不明なところはそのように書いています。

このページは随時更新します
(最終更新 2014/9/3)

    iOSAndroid
    
スマートフォン単体での
ハイレゾ再生

対応状況× サポートなし△ 機種による
(LG G2やGalaxy Tablet 3など)
要件アプリダウンサンプリングでの再生は可ハイレゾ再生にはメーカー標準アプリ要のはず (Appendix2)
OS×
△ 機種による(ベンダー依存)
外部DAC
使用
アクセサリーモード
対応状況PCM
PCM44/16まで
(96/24可? *1)
PCM44/16まで
DSD対応できない対応できない
要件DACiDevice対応AOA2.0対応
ケーブルライトニング(または30pin)-USB AMicro B - USB A
アプリ依存しない *1依存しない
OSすべて対応OS 4.1以上 (AOA機能実装のため)
ホストモード
対応状況PCM192kHzまで可能 (384kHz ?)基本44/16まで。ハイレゾはソフト依存
DSDアプリ依存のネイティブ対応可能(DoP) *3アプリ依存のネイティブ対応可能(DoP) *4
要件DACUSB Audio Class1.0対応以上
(ハイレゾならクラス2.0)
消費電力制限あり *2
USB Audio Class1.0対応
消費電力制限は不明確
ケーブルカメラコネクションキットUSB OTG MicroB - MicroB
アプリCD品質では依存しない
DSDはアプリ対応が要 *3
CD品質では依存しない
ハイレゾ/DSDはアプリ対応が要 *4
OS
iPad : iOS4.1以上
(ハイレゾは4.2以降)
iPhone: iOS7.0以上
基本的に4.0以上(ホスト機能のため)
他は機種依存。Appendix 2参照。


*1 A&K AK10はハイレゾ可能との情報。その場合アプリもハイレゾ対応が必要。
*2 バスパワーの場合はHerusのような低消費電力タイプが必要。
それ以外ではバッテリーを使用したセルフパワーが必要。
*3 iOSでは標準のMusicでも24bit透過をサポートしている。
PCMハイレゾならFLAC PlayerやHF Player、DSDならHF PlayerかHibikiなど
*4 USB Audio Player Proやメーカー依存アプリなど



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iPhoneとHerus
カメラコネクションキットをホストモードで使用し、直接変換プラグでB端子に入力


Appendix 1 : アクセサリーモードとホストモードの違いについて

オーディオに限らず基本的なことですが、USBは規格上で機器関係は平等ではなく、一方がホストとなり、もう一方がデバイス(アクセサリー)となるように定められています。これはUSBのポートの形でも判別できます。A端子がついてるとホスト機器で、B端子がついているとデバイスです。なお最近C端子が規格化されましたが、これは両方を兼ねます。
ふつうPCでUSB機器を使用するときは常にPCがホストですが、スマートフォンはホストにもデバイス(アクセサリー)にもなりえます。そのためUSB機器の接続はスマートフォンがデバイス(アクセサリー)モードの場合とホストモードの場合に分けられます。

アクセサリーモードではアクセサリープロトコルに対応した特別なDACが必要です(例 Fostex HP-P1)。アクセサリーモードではスマホが周辺機器側になるため消費電力で有利ですが、アクセサリープロトコルによってデジタルの転送レートが制限されるという問題があります。
AppleではiPodのころからアクセサリーモードでのデジタル出力に対応していました。はじめの対応機種はWADIAのiTransportで2008年頃です。一般にiOSではアクセサリープロトコル対応DACはiDevice対応DACと呼ばれます。
Androidではかなり遅れて2013年のOS4.1からAndroid Open Accessesaryプロトコルのv2.0でUSB Audioが定められました(下記の記事)。このUSB Audioはよく勘違いされますが、USB オーディオクラスドライバーのことではありません。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/278202078.html
Androidではアクセサリープロトコル対応DACはAOA対応DACと呼ばれます。(例 TEAC HP50)

ホストモードでは基本的にPCオーディオのUSB DAC接続と同じ接続形態となります。そのためアクセサリーモードのようにアクセサリープロトコルに対応した特別なDACを必要としませんが、USB DACが標準ドライバー(USB Audio Class)対応である必要があります。カスタムドライバーのインストールが必要であるDACは使用できません。これはiOSでもAndroidでも3rdパーティードライバーのインストールができないためです。なぜかというと、まずふつうは管理者になれない(rootを取れない)こと、そしてOS自体にドライバーを動的に組み込む仕組みがないからです(Macのカーネルエクステンションのようなカーネルの動的リンク機能です)。例外はアプリ自体にドライバーを内蔵しているAndroidのUSB Audio Player/Recorder proです。
またホストモードの場合はDACには消費電力制限があります(iOSはきびしくAndroidは緩い)。このため特にiOSの場合はDACはセルフパワー(例 iDSD micro)であるか、バスパワーの消費電力が非常に低いか(例 Herus)のどちらかが必要です。

簡単にそれぞれの特徴をまとめると以下の通りです。

アクセサリーモード
1.スマホの電力消費が少ない
2 対応サンプルレートの制限あり
3. 特別対応DACが必要

ホストモード
1. 電力消費制限あり
2.サンプルレートは比較的自由
3. 汎用なDACを使用できる

* さきに書いたようにアクセサリーモードとホストモードはスマートフォンとUSBデバイスの接続について一般的なことであり、オーディオに限りません。たとえばAndroidのADKではアクセサリーモード接続です。これはAndroid周辺機器の開発目的なので本来はAndroidはホストモードになるところですが、消費電力を考慮してのことです。


Appendix 2 : iOSとAndroid基本ソフトのハイレゾ対応について

Macのころから音楽分野に通じていたAppleではオーディオインターフェースへの取り組みも早く、iOSでは2010年のiPadの発売当時から標準のUSB オーディオクラスドライバーが搭載されていました。はじめはCD品質(オーディオクラス1)でしたが、iOS4.2でハイレゾ対応となりアシンクロナス転送に対応しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/164939985.html

iOSから真のハイレゾが出せるかどうかについてはすでに2011年に下記の検証をしています。このときは規格上のある問題もあってWavelengthのゴードンさんとハイレゾが出るかどうかについてCA上で論争したこともあるのですが(下記記事の中に言及してます)、結局はこの検証であのゴードンさんも認めてくれました。

Androidはアクセサリープロトコルと同様にこの点でもかなり遅れていて、現時点ではOSに標準のUSBオーディオクラスドライバーは搭載されていません。Androidでは次バージョンのAndroid LでUSB オーディオクラスドライバーが搭載される予定です。この時点でホストモードでのUSB DACが使えるようになります。
ただしAndroidはベンダーのカスタマイズの幅が広いのでベンダーがすでに独自で搭載していることがあります。たとえばサムソンはGalaxy S3あたりからホストモードでの使用ができました。また改変カーネルをユーザーがインストールすることもできます。これにはルート権限が必要です。
もうひとつの手段としてはeXtreamのアプリであるUSB Audio Player/Recorder proを使用する方法があります。

ちなみにAndroidのスマートフォンOSの制限ということで言うとホストモードを使用する最低限の制限はAndroid OS 4.0以上ということになります。これはUSBホストモードをはじめてサポートしたのがTablet版の3.xであり、3.xはスマートフォンがないので、スマートフォンとしては4.0が最低限となります。

つまりAndroid OSでのDACサポートは以下のような経緯となります。
4.0(ICS) OSでホストモード接続のサポート → ベンダー対応機種かeXtreamソフトを使ったホストモードでのDAC接続が可能
4.1(Jerry Bean) USB Audio(AOA2.0)のサポート → 標準的にアクセサリーモードでのDAC接続が可能
4.5(L) オーディオクラスドライバーのサポート(予定) → 標準的にホストモードでのDAC接続が可能

またAndroidでは標準の音声システム(ミキサーを含む)であるAudioFlingerとフレームワークであるメディアライブラリーはハイレゾに対応していません。そもそもデータ型が16bitタイプしかありません。そのためALSAなどLinuxレベルの音声システムをJNIなどのインターフェースを使用してAndroidの世界と結び付けてハイレゾ対応するのが一般的だと思います。これには非標準のライブラリを必要とするため、ハイレゾ対応アプリは注意が必要です。この辺の記事をご覧ください。

ちなみにAndroidの音楽分野への取り組みでは、4.1以降はこれらの取り組みに加えて低レイテンシー化が図られています。

Appendix 3. DACとの接続ケーブル

アクセサリーモードではDACがホストでありUSB A側であるため、USB A->スマートフォン端子の形状のUSBケーブルが必要です。スマートフォン端子は旧iOS機では30ピンであり、現行iOS機はライトニングです。AndroidではMicroUSBとなります。例外はiriver AK10でAK10側は独自端子です。
ホストモードではスマートフォンがホストになりますのでスマートフォン側は本来はUSB A端子でなければなりません。しかしスマートフォン側は通常デバイス側特有(iOS)かB端子(Android)ですので、これを変換する必要があります。それがiOSではカメラコネクションキットであり、AndroidではOTGケーブルです。DAC側はデバイスとなりますのでUSB B端子となります。



posted by ささき at 23:08 | TrackBack(0) | __→ スマートフォンとオーディオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする