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2014年07月26日

平面型ヘッドフォンの新機軸、HiFiMan HE560

HE560は平面型に力を入れているHiFiManが平面型ヘッドフォンに新機軸を取り入れた自信作です。

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* HE560の特徴

平面型(海外ではPlanar)というのは従来のヘッドフォンが(スピーカーのように)ある点で振動を振動板に伝えるのに対して、振動板の全面が振動することによって振動板の真ん中から端まで均質に振動することによって周波数特性が自然に再現されるという特徴があります。真ん中で振動していると端まで振動が伝わるのが振動板の物的な特性で左右されてしまうからです。

HiFiManではHE6という平面型のフラッグシップがありました。これは音質は素晴らしいのですが能率が異常ともいえるほど低く、ヘッドフォンアンプを選ぶというより、専用に設計されたようなハイパワーアンプでもなければ駆動できないというものでした。以前こちらにレビューリンクを書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/171206322.html

HE560はHE6に代わるフラッグシップともなり得るもので、ドライバーにシングルエンド・平面マグネット(Singled ended planer magnetic)を採用するなど新機軸を採用して音質と能率の両面で改良を図ったのがポイントです。これは通常両側にあるマグネットが片側だけにあるという方式です。
この方式を取るとダイアフラムがより自由に動くので広大な音空間を生むのですが、歪みをコントロールするのが難しいということです。今回それを解決するダンピング素材をJade(以前静電型を作ったメーカー)と共同開発で見つけた点がキーです。またこの方式ではマグネットが一つなので軽量化できて能率もあがるということです。

製品をレビューのために送ってもらいましたが、パッケージもいままでのHiFiManよりこなれているように思います。

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製品版ではデモ版よりもさまざまな点で改良されています。まず手にもって軽いと思ったのもそのひとつです。これもシングルエンド方式のゆえでしょうか。
ハウジングやイヤパッド、ヘッドバンドなどの作りもなかなか高級感があると思います。

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* HE560の音質

HE560に関しては能率が向上したこともあり、まず普及タイプのコストパフォーマンスのよいUSB DAC+ヘッドフォンアンプで試してみました。まずDENONのDA300USBです。これも音的にはよい相性を聴かせてくれるのですが、ゲインがないのでやや音量が取りづらいですね。ただポップスなどの高めの録音レベルなら問題ないくらいだと思います。また高コストパフォーマンスというとAudioGdのNFB11.32を取り出してきました。こちらに以前書いたレビューリンクがあります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/291164866.html

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HE560とNFB11.32

HE560の音はとてもクリアで透明感が高いのがまず感じられる特徴です。楽器の音の鳴り方が自然で分離感がよく浮き上がって聞こえます。中高音域は美しい音のなり方が感じられます。低域は突出しているわけではないけれども、量感は豊かで、重いベースラインが堪能できます。おそらくかなり低いところまでなっているせいかと思います。音はかなり細かいところまで抽出して解像力は高いように感じられます。楽器音などの音像を明瞭に浮き彫りにするというタイプです。立体感も優れていて、三次元的な音空間の楽器や音の配置がわかりやすいと思います。
音の切れ味が鋭く、ハイスピード表現が可能ですが、ここは電源が外部のDA300USBではやや不利なので、やはり電源はなるべく強力なアンプを使うのが良いと思います。これは後で書くEF6でもっとはっきりわかります。

出音は平面型にしては軽やかなのも特徴です。HE6との大きな違いはここだと思います。また他の平面型と比べても特徴的だと言えるでしょう。一聴するとまるで低インピーダンスの鳴らしやすいようにも聴こえます。

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もう少し聞きすすめるとHE560のもうひとつの特徴がわかってきます。それは出音の滑らかさ、です。実際HE560で特筆する点はこの音の立ち上がりがなめらかさ・スムーズ感だと思います。FOSTEXのTH500RPの発表会の時にも、測定すると振幅が少なくても音が出るので共振点が目立ちにくい、つまりスムースに振動板を動かせるということが言われていました。たとえばTH900は振幅自体は速いが、振幅の動き自体はRPが滑らかというわけです。実際に実機のTH500RPを聴いてもそう思います。
HE560でもそうした特徴があって、ハイスピードとか切れが良いという表現は普通の高性能のヘッドフォンでも言えることなのですが、HE560では特にスムーズさ滑らかさが一段と上質感を感じさせてくれます。

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HE560とHiFiMan EF6

次に平面型用のハイパワーアンプ、HiFiMan EF6とも組み合わせてみました。DENON DA300USBをDACとして使用します。さすがにこの組み合わせではより優れた音再現ができます。ぐっと力感が上がり、たたみかけるようなドラムスでは圧倒的な迫力を感じます。音もより引き締まって贅肉が取れてふくらみ感がなくなってきます。前に書いたように電源が強力であればあるほど、リニアに反応が上がっていくポテンシャルの高さをHE560が持っていることがわかります。特にスピード感・音楽のダイナミズム・ベースのパワー感で向上が聴き取れます。
ただEF6はHE6でさえ駆動できますが、ここまでハイパワーでなくてもHE560は大丈夫な気はします。ひとつにはHE560の良さは音の出だしのスムーズさというのがあるので、そこは力感とかタイトさともちょっと違った部分だからです。

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意外と面白いのは大柄なEF6と対極にコンパクトなRessonessenseのHerusです。この組み合わせでiPhoneから考えられないような高音質でDSDネイティブ再生を楽しめるというのはちょっと愉快な体験です。(アプリはhibiki)
能率の改善は手軽さと可能性も引き出すという好例とも言えます。ただしやはりパワー的には物足りなさはあります。

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HE560とHD800

ハイエンドヘッドフォン対決ということでゼンハイザーHD800と比べてみると、中高域での音のシャープさと細やかさはもはやどちらがとは言えないけれども、中低音域での音の充実感と全体的な厚み・豊かさという点でHE560が上回っていると思います。HE560の独特の滑らかさもこの点で有利です。音場はHE560は空間的な広がり感が良く、HD800はステージ的な平面的な広がりに優れるというところでしょうか。
もともとモニターとして使われるHD800に比べれば、普通に音楽を楽しく聞くための個性としてはHE560はよくできていると思います。低音域の強すぎる強調感はない程度で重厚なベースの良さも感じさせてくれます。
ただHD800よりもややボリュームの位置は高めとなります。HE560の能率は微妙なところで、平面型用とうたわれるようなハイパワーアンプが必要なほどではありませんが、やはりそれなりのヘッドフォンアンプは必要です。

* まとめ

HiFiMan HE560はシングルエンド・平面マグネットという新方式を採用して、性能と平面型の能率の問題を解決しています。能率はHE6にくらべると、というくらいでまだ低いのでパワーのある(電源の強力な)アンプが向いているという側面はまだ持っています。ただしいわゆる平面型向けのハイパワーヘッドフォンアンプが必要なほどでもなく、平面型ならではのスムーズさも楽しめます。

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http://www.fujiya-avic.jp/products/detail62468.html
posted by ささき at 09:34 | TrackBack(0) | __→ HifiMan HE5, HE6 平面ドライバ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする