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2014年06月09日

Astell & Kernの新世代機、AK120IIレビュー

先日ヘッドフォン祭期間中に簡単に紹介し、ドイツハイエンドショウでデビューを飾ったAK120IIとAK100IIですが既報のようにまずAK120IIからさきに発売されます。
本稿はAK120IIを二週間ほど使用したレビューです。(AK100IIについては次の機会とします)

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* AK120IIの特徴

AK240についで登場したAstell&Kernの新世代機はAstell&Kern 『AK120II 128GBストーンシルバー』 及び『AK100II 64GBスモーキーブルー』です。 AK120II、AK100IIともAK240と共通した特徴を持っています。例えば2.5mmバランス端子、大型タッチスクリーン、WiFi機能、光出力などです。AK240はジュラルミンですが、AK120II、AK100IIはアルミニウムです。またカラーが異なります。
AK240は内蔵256GB、AK120IIは128GB、AK100IIは64GBです。増設はどれもMicroSD一個です。重さはAK120IIは177g、AK100IIは170gです。
AK120II、AK100IIともDSD再生に対応しますが、AK240はネイティブ再生なのに対して、AK120II、AK100IIはPCM変換です。これはAK240だけXMOSが採用されているからです。ハイレゾDAPとDSDネイティブ再生に関してはこちらの記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/397192583.html

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AK120IIはAK240と同様にCS4398をDACチップとして採用しています。AK240とやはり同じくCS4398をデュアルで使用しています。またアンプ部分の出力電圧や出力インピーダンスもAk240と同じです。
このことからもAK120IIの音質はAK240同等レベルが期待できるのではないかと想像していましたが、今回実際に試すことができました。

* AK120IIの外観

箱はこれまでのAstell&Kernシリーズに準じたなかなか立派な作りになっています。Dual DACの文字はAK120と同じですね。

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AK120IIのデザインは以前のAK100シリーズに比べると細長い感じですが、ズボンのポケットには収まりがよいですね。胸ポケットだとややはみ出します。シルバーのデザインは精悍で、音の良さを想像させてくれます。AK240の斬新なデザインからすると実用性を感じさせます。画面デザインは高級感を表したシボ革風のAK240に比べると立体感を取り入れたモダンでシンプルなデザインが基調です。
この外見から見たシャープさと、実用性の高さはそのまま性能を表したものとも言えます。これはまた後で書いていきます。

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AK120IIのケースはブッテーロ製ですがクロコダイル柄というところがかなり個性的な点です。

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筐体は航空機グレードのジュラルミンではなく通常アルミとなりましたが、質感はかなり高く高級感があります。入出力はAK240と同じで2.5mmバランスも踏襲されています。MicsroSDスロットも一基です。細かいところではUSBのプラグの上下の向きがAK240とは逆(つまり旧AK120と同じ)になっています。微妙に違和感を覚えるところでしたからね。

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AK240とのもう一つの大きな違いは内蔵メモリが128GBということです。少し前は128GBというとかなり広大な空間を感じさせましたが、いったんAk240の256GBになれてしまいいろいろ詰め込むと、128GBでも足りなく感じられるかもしれません。
MicroSDでも128GBのタイプがありますので、それで増設することもできます。ただ、一般的には128GBもあれば十分なくらい確保されているというべきでしょう。

* 音の印象

本稿ではおもにAK240と比較しました。ヘッドフォン・イヤフォンはEdition8、FitEarカスタムMH335DW、JH Audioロクサーヌカスタム、AKR03などを使用しています。
AK120IIはスペックを聞いたときから音のレベルの高さとしてはAK240くらいと予想していました。実際にその予想はほぼ当たりましたが、予想と異なっていたのは音の個性の違いでした。
結論から簡潔に先に言うとAK240とAK120IIは音のレベルはほぼ互角で、音の作り方・個性が異なるDAPとなっています。

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まずAK120IIを聴いて印象的なのは透明感が高くシャープな音再現です。また音色はAK240に比べて色付けが少なくなっています。音場はややコンパクトですがまとまりのよい音空間が感じられます。
帯域的にはワイドレンジで、実際の周波数的な高音域と低音域のレスポンスはAK240くらいかもしれませんが、透明感が高いために高音域がより強調されているように思えます。このため弦楽器の鳴りにシャープさがあり、クリアでピュアな音を再現します。Ak240はやや丸まっていて特に高音域できつさが少なく聴きやすいとも言えますが、AK120IIの方がシャープな感じはあります。ただしやや聴き疲れするタイプにはなってるかもしれません。
中音域のヴォーカルは出すぎずに伴奏のピアノも主張は強すぎません。ここもすっきりとして余分な贅肉は感じられずにスリムな音表現です。ヴォーカルの歌詞も聞き取りやすく思えます。情報量が多いので、女性ヴォーカルのかすかなため息もリアルに感じられるでしょう。
低音域のベースは引き締まっていてタイト、贅肉はそぎ落とされた感じです。ここも過剰なベースの強調はなく、少し強めで量的にはほぼAK240相当のように思えます。ただし性格の違いがあるのでAK240とは聴こえ方がやはり異なります。AK240はAK120IIと比べてみるとやや低音域にふくらみがありやや緩く感じられます。ただしAK240ではそれが迫力につながっているとも思います。AK120IIはその点でパンチがあり、ソリッドでがっしりしている感じです。

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AK240に比べるとすこし派手めの音に聞こえますが、全体にはそう強調感はなく、フラットニュートラルと言っても厳密ではないけれどもそうおかしくはありません。またそれはアグレッシブさにつながっていると思います。
音場はAK240に比べるとややコンパクトというか細身で、Ak240のような迫力と広がりはありませんが、クリアな見通しの良さとともにオープンというかぱっと開けた感じがあります。また全体的にAK120IIの方が透明感が高いように感じられます。これは実際のSN感というよりは音つくりの問題かもしれませんが、Ak120IIの透明感の高さは印象的です。
このために情報量という観点ではほぼAK240とAK120IIは同じくらいに思えますが、解像感ではAK120IIの方が高いようにも聴こえます。ヘルゲリエントリオの新作192/24ハイレゾではベースの弦のやにが飛ぶような感じはAK120IIに軍配を上げたくなります。また高音域の透明感とあいまってAK120IIはシャープな音作りが感じられます。またリアルで臨場感が高いという感覚もあります。
一方でAK240の方が迫力があり、音作りに壮大な感じはします。たとえば三浦友里恵のラヴェルピアノ協奏曲では楽器の音はAK120IIの方がクリアで鮮明ですが、オーケストラの迫力・雄大さはAk240の方が感じられる、という感じです。

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音色的には着色感が少ないのもAK240と比べたときの特徴と言えます。これはAk240と比べてもそうですし、DAP一般としてもニュートラルな感じです。AK240と比べるとドライでクールに感じられるかもしれませんが、分析的とか無機的というところには陥っていないと思います。ZX1に比べればAK120IIは硬質感が少なくかなりアナログ的な音に感じられます。AK120IIはアクティブでスピード感があり、AK240はAk120IIと比べるとやや落ち着いた感はあります。
ZX1がすきな人ならばAK240よりもむしろAK120IIの方が好ましく感じられるかもしれません、ZX1のようにソリッド・シャープでありかつZX1にはないアナログライクです。ZX1のユーザーがより高い性能を目指すならAK120IIへの買い替えがお勧めで違和感も少ないかもしれません。ZX1を買ってもHPA-1/2などを付加してアナログライクな音を付加するならば、Ak120IIの方がほしかった音に近付くのではないかと思います。

* DSD再生について

DSD再生についてはAK240はネイティブ再生できる点が特徴です。Blue Coastのベスト盤からDog SongをPCM96/24とDSD(2.6M DFF)で、Ak240とAK120IIでそれぞれ違いがどのくらいでるかを聴き比べてみました。
たしかにAK240の方はPCMとDSDの差は大きく、DSDではより滑らかに柔らかく自然に再生されます。Ak120IIではPCMとDSDの差はありますが、大きくはなくDSD再生でも少しデジタル臭さ・硬さは残る感じです。ただしAK240は書いてきたようにもともとAK120IIより柔らかであるので、その差の方が大きく感じられるかもしれません。

* AK120IIとAK240

簡単にまとめると、AK120IIはシャープで歯切れ良くタイト、音場は細身でコンパクトにまとまった感じで、音色は無着色です。AK240は比較するとなめらかで落ち着いていて、ワイドで迫力・スケール感があります。音色はやや暖色よりです。
これはiriverのジェームス副CEOから聞いた話ですが、AK240では主にクラシックを念頭にチューニングし、Ak120IIではジャズ・ポップを念頭に置いていたそうです。その傾向的にはあってるように思います。(ちなみにiriverのヘンリーCEOはかなりのクラシックマニアだそうです)

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AK240とAK120IIではまたAstell&Kernの戦略上の位置付けも異なると思います。プロトの画像にAK220の文字があったのを目ざとく見つけた人もいたかもしれませんが、もともと私もAK120後継の機種名はAK220となると思っていました。そこでiriverの副CEOに名称をAK120IIとした理由を聞いてみました。そうすると、名称をAK120IIとしたのは連続性(continuation)のためという答えが返ってきました。
これは目的を考えると分かりやすいと思います。AK240は発売時のAstell&Kernのマップではハイエンドオーディオリスナー向けであり、そのときに当時のAK120はスタジオリファレンス向けという位置付けでした。つまりはその位置付けを考慮して、AK120というスタジオ向け機種の第二世代という設計がなされたと思います。
そのため、AK240に比べると比較的素直で無着色の音作りがなされていますし、外観デザインもAK240の実験的なものよりも実用的なものになったと思います。たしかにAK240よりもAK120IIの方が客観的に音を見つめることができるでしょう。

実のところ、私も試聴してきたはじめの数日ではAK240は音楽的でAK120IIはやや分析的でモニターライクかと思っていました。AK120IIでは録音の良否が明確に浮き出してくるという印象もあります。そうした意味ではスタジオ用途にもよいでしょう。
しかし、AK120IIを聴いて行くうちにそうした側面よりもAK240とはまた異なったテイストで音楽を聴く楽しみに没入していきました。AK240よりもスタジオ用途に向いているかもしれませんが、AK120IIは切れ味よく気持ちの良い音楽再現が楽しめます。AK120IIは明瞭感が高くよりメリハリがあって、躍動感もあります。ただし過剰ではなく必要な時にほしいくらいグイグイと出てくるという印象です。DAP性能としての地力の高さが、音楽再生にも貢献しているのでしょう。

はじめに結論付けたようにAK240とAK120IIは音のレベルはほぼ互角で、音の作り方・個性が異なるDAPとなっています。AK120IIはプアマンズAK240というものではなく、じっくり聴き比べれば音的にAK240からAK120IIに買い替えたいという人が出てもおかしくありません。また組み合わせるイヤフォン・ヘッドフォンにも寄ると思います。
これからAK240かAK120IIがほしいという人はじっくりと聴き比べて好みに合ったモデルを選んでください。

最後にもうひとつ。
先週わたしは上高地に新緑を撮りに高速バスで旅行しました。そのときに長時間のバス旅行のためにAK120IIとAK240のどちらを持っていこうかと当日の朝まで悩んだんですが、持っていったのはAK120IIでした。
もちろんAK240はだいぶこれまでに聞いたとか、このレビューの仕上げのために、というさまざまな考慮点はあります。とはいえ、そのときAK120IIの音世界に魅了されていたので長時間じっくりとこの音世界に浸りたい、という気持ちに支配されていたというのも事実ではあります。

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Appendix 購入について

AK120IIの実際の購入に関してはお店では買い替えキャンペーンを行っています。簡単にシミュレーションをしてみます。
フジヤさんの例で紹介すると、AK120からの買い替えの場合は買い取り額が通常の55000円から10%アップして60500円となり、それをAK120IIの実売価格の187110円から引き、さらにAK120は買い替えキャンペーンで30000円引きの対象ですので、96610円で購入可能ということになります。
またSONY ZX1の場合には買い取り額が通常の38000円から10%アップで41800円となり、それをAK120IIの実売価格の187110円から引き、さらにZX1はやはり買い替えキャンペーンで30000円引きの対象ですので、115310円で購入ができます。(税込 6/5調べ)
なおこの買い取り価格などは日々変動し、欠品キズなしが前提ですので状態にもよります。実際の価格についてはお店に問い合わせください。ご参考まで。
ちなみにキャンペーンは2014/6/30までとなります。
posted by ささき at 13:04 | TrackBack(0) | __→ AK100、AK120、AK240 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする