ミュンヘンハイエンドショウで発表された新型AKモデルですが、先行してAK120IIが先に発売されます。AK120IIは本日予約開始、6/13日に発売開始予定です。スペックなどは既報の通りですが、今回は付属ケースも明らかになりました。また直販予定価格は、208,000円(税込)です。
店頭試聴機は本日から設置されているようです。
AK100IIに関しては7月中旬ころの発売を目指していると言うことです。
なお名称についてですが、AK100MK2は第一世代で改良型という意味、AK100IIは第二世代のAK100シリーズという意味になります。
AK新モデルの音質などのインプレッションはまた後でアップいたします。
Music TO GO!
2014年05月30日
2014年05月27日
タイムロードの短い光ケーブル、TL-OP1
Chord HugoなどDAC内蔵で光入力のポータブルアンプを使用する方は短い光ケーブルの入手にまず悩むことになると思います。いままではそんな短い光ケーブルはなかったからです。普通短くて1mか、あったとしても60cmくらいでした。
私はいつもカナダのSys-conceptに頼むのですが、オーダーメイドなのでアンプの入力位置に合わせた長さを測定する必要があります。また海外通販は苦手という人も多いでしょう。
そこでタイムロードさんがChord発売に合わせて光ケーブルも用意してくれました。TL-OP1というモデルでミニ丸端子と角端子を13.5cmの長さで繋ぎます。
http://www.timelord.co.jp/blog/news/140507_tl-op1/
これは発売前に試聴テストを行い、適切な音質や各種製品との接続スタイルを検討して長さを調査して製作しています。その結果として13.5cmになったということです。
TL-OP1は透明度と柔軟性に優れるアクリル素材の光ファイバー導体を採用することにより、業務用通信機器の仕様に準拠した高信頼性の伝送特性をもたせたと言うことです。またスリムながら装着時の安定性に優れた業務用高信頼性コネクターの採用により、接続時のグラつきが低減され光軸の安定に貢献しているそうです。ハイレゾの伝送にも強いようです。
製品は13.5cmですが、試用で作った12cmのものを貰い受けましたのでレポートします。
製品版とは長さの違いだけで、線材は同じです。
またSys-conceptも通常のケーブルではHugoのプラグに対応できないので、Hugo対応のモデルを注文したので比較して見ます。
価格はSys-conceptが日本円で約6700円、TL-OP1はオープン(約2500円くらい)です。
タイムロードTL-OP1(左)とSys-Concept Hugoモデル
TL-OP1ではSys-conceptのように上が平たくならないけど、Hugoは上にイヤフォンと光ケーブルをどちらもまとめられるので大きな問題ではありません。
タイムロードTL-OP1(左)とSys-Concept Hugoモデル
TL-OP1もSys-conceptも両方とも問題なく192/24音源にロックします。
TL-OP1の音質は高く明瞭感もよいのですが、特徴はバランスが良いことです。柔らかさと硬さ、周波数的な高低のバランスがよく取れています。音色として楽器の音は爽やかに聴こえる感じですね。
Sys-conceptと比べると、Sys-conceptの方が音が濃密で低域のレスポンスがあります。またより曇りが取れて明瞭感が高くも感じられます。ただTL-OP1もSys-conceptと比べても価格差を考えると音質レベルはそんなに遜色ないと思います。むしろ好みの問題もあって、整理されてすっきりした音を好む人はTL-OP1が良いかもしれません。
タイムロードのTL-OP1は入手しやすく、安く、十分に満足できる音レベルだと思います。いつもSys-Conceptから買ってるなら別ですが、一般的にはまずTL-OP1を買って試してみて、さらに別の音が欲しいときはSys-Conceptに挑戦してみるというステップが良いのではないかと思います。
私はいつもカナダのSys-conceptに頼むのですが、オーダーメイドなのでアンプの入力位置に合わせた長さを測定する必要があります。また海外通販は苦手という人も多いでしょう。
そこでタイムロードさんがChord発売に合わせて光ケーブルも用意してくれました。TL-OP1というモデルでミニ丸端子と角端子を13.5cmの長さで繋ぎます。
http://www.timelord.co.jp/blog/news/140507_tl-op1/
これは発売前に試聴テストを行い、適切な音質や各種製品との接続スタイルを検討して長さを調査して製作しています。その結果として13.5cmになったということです。
TL-OP1は透明度と柔軟性に優れるアクリル素材の光ファイバー導体を採用することにより、業務用通信機器の仕様に準拠した高信頼性の伝送特性をもたせたと言うことです。またスリムながら装着時の安定性に優れた業務用高信頼性コネクターの採用により、接続時のグラつきが低減され光軸の安定に貢献しているそうです。ハイレゾの伝送にも強いようです。
製品は13.5cmですが、試用で作った12cmのものを貰い受けましたのでレポートします。
製品版とは長さの違いだけで、線材は同じです。
またSys-conceptも通常のケーブルではHugoのプラグに対応できないので、Hugo対応のモデルを注文したので比較して見ます。
価格はSys-conceptが日本円で約6700円、TL-OP1はオープン(約2500円くらい)です。
タイムロードTL-OP1(左)とSys-Concept Hugoモデル
TL-OP1ではSys-conceptのように上が平たくならないけど、Hugoは上にイヤフォンと光ケーブルをどちらもまとめられるので大きな問題ではありません。
タイムロードTL-OP1(左)とSys-Concept Hugoモデル
TL-OP1もSys-conceptも両方とも問題なく192/24音源にロックします。
TL-OP1の音質は高く明瞭感もよいのですが、特徴はバランスが良いことです。柔らかさと硬さ、周波数的な高低のバランスがよく取れています。音色として楽器の音は爽やかに聴こえる感じですね。
Sys-conceptと比べると、Sys-conceptの方が音が濃密で低域のレスポンスがあります。またより曇りが取れて明瞭感が高くも感じられます。ただTL-OP1もSys-conceptと比べても価格差を考えると音質レベルはそんなに遜色ないと思います。むしろ好みの問題もあって、整理されてすっきりした音を好む人はTL-OP1が良いかもしれません。
タイムロードのTL-OP1は入手しやすく、安く、十分に満足できる音レベルだと思います。いつもSys-Conceptから買ってるなら別ですが、一般的にはまずTL-OP1を買って試してみて、さらに別の音が欲しいときはSys-Conceptに挑戦してみるというステップが良いのではないかと思います。
2014年05月22日
Astell&KernのAKR03イヤフォンレビュー
Astell&KernフラッグシップであるAK240向けにチューニングされたイヤフォン、AKR03が登場しました。
ベースはあのジェリーハービーのロクサーヌです。まさに最高のDAPと最強のイヤフォンの組み合わせと言えます。
AKR03の紹介に移る前にまず今回はAKRシリーズを振り返ってみたいと思います。
* AKRシリーズとは
Astell&KernはAK100をはじめとするハイレゾDAPの他にさまざまな周辺の製品も企画しています。たとえばこれまでにイヤフォンメーカーと共同でAKRシリーズとしてイヤフォンの企画を行ってきました。これはAKシリーズのDAPに合うようなイヤフォンをユーザーに提供するために既存の機種をベースにチューニングやロゴなどのカスタマイズを行って販売するというものです。
一番初めにはFitEarと共同でFitEar F111をチューニングしたモデルAK100-111iSを販売しましたが、これはAKRシリーズになる前のことです。いわばAKRゼロという感じでしょうか。
AK100-111iS
AKRシリーズとしての第一弾はAKR01ですが、これはファイナルオーディオデザイン(FAD)と共同でheaven IV をベースにしたイヤフォンです。音的には音響フィルタを使用したチューニングを行い、ロゴの変更をしています。AKR01はAK100をリファレンスとしてチューニングをしています。
ただし日本ではAKR01という名前では出ていません。なぜかというと、これはもともと日本の企画だった「新生活セット」のバンドル品として製造されたもので、それを海外企画として発展させたものがAKR01となったからです。
新生活セットのheaven IVとAK100
音質的にはAKR01をAK100と組み合わせた音はバランスドアーマチュアながら高域のきつさもよく抑えられ、より重心が下がるようにチューニングされたおかげか低域も十分な量感を確保していました。初期AK100は出力インピーダンスの高さから低インピーダンスのイヤフォンと合わせた時の低域のレスポンスに難点がありましたが、それはきちんと確保されるようにチューニングされていました。またカチッとした正確なAK100の音をよく活かしていたモデルだと思います。ステンレス筐体がよかったですね。
なお「新生活セット」ではeonkyoのダウンロードクーポンとmicroSDカードの32GBがセットにされていました。
次にAKR02は同じくFADのFI-BA-SSをベースにしたイヤフォンです。これはFI-BA-SSをAK120をリファレンスとして音響フィルタとケーブルをオリジナルのPCOCCに変えてチューニングしたモデルです。FI-BA-SS自体がheaven IVに比べればレベルの高いもので、AK120用という用途にあっています。これは日本でも販売され、価格は145,000円でした。
AKR02とAK120
私はシンガポールのヘッドフォンショウではじめてみましたが、ベースのインパクトも良いし、全体にクリアで明瞭感も高く躍動感もあります。これもBAMというFAD独自のエアフロー最適化の仕組みを持っています。
シンガポールで見たAKR02とAK100MK2
* AKR03の登場
これまでのAKRを見てもらうとわかるように、AK100をリファレンスとしてAKR01を作り、AK120をリファレンスとしてAKR02を作っています。つまり各世代ごとのAKシリーズに合わせたモデルを出していたわけです。そしていよいよAK240をリファレンスとしたAKRシリーズが登場しました。
それがIEMの神様ジェリーハービー率いるJH Audioのフラッグシップ、最強のイヤフォンであるロクサーヌのユニバーサルモデルをベースにしたAKR03です。
プロ用のスタジオモニターとして使われるIEM(イヤモニ)ですが、このユニバーサル版では通常のイヤチップを使いますので、耳型を取る必要もありません。耳型を使って個人に合わせて作成するカスタムIEM版のロクサーヌでは制作期間が4カ月という待ちも伝えられますが、これならば特に待ちもありません。また中古で手放すときのリセールバリューも高くなります。
私はカスタム版のロクサーヌのユーザーですが、実際に使っていてAK240は普通でもロクサーヌとの相性が抜群であると思いますが、AKR03は自らがAK240ユーザーでもあるジェリーも加わってAK240に合わせてチューニングしたということです。加えて従来ロクサーヌの可変ベースも健在ですのでさらに音を自分でも調整できます。
また、なんといっても最大のAKR03のポイントは標準でAK240用の2.5mmバランスケーブルが付属するということです。ロクサーヌは後述するように専用のケーブルが必要ですが、2.5mmバランス版はまだ市販していませんので、これは大きなポイントです。
* ベースモデルのロクサーヌに関して
まずベースとなったロクサーヌについて解説します。詳しくはこちらの私の書いたレビューを参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/396209255.html
ロクサーヌはTHE SIRENS SERIESという新しい製品系列のフラッグシップとして位置づけられたカスタムIEMです。IEM(In Ear Monitor)とは主にミュージシャンがステージで使うモニター用のイヤフォンのことで、日本ではイヤモニなどといわれます。これは高性能なので、ミュージシャンでなくても、オーディオマニア層によく使われるようになってきたというわけです。IEMは個人の耳型を取得して作成されるカスタムIEMと、通常のカナル型イヤフォンのようないやチップを使用して誰でも使えるユニバーサルに分かれますがロクサーヌではユニバーサル版も用意されていて、AKR03はこのユニバーサル版をベースにしています。
ちなみにTHE SIRENS SERIESという名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(セイレーン)から来ています。
ロクサーヌではまず、バランスドアーマチュアドライバーを片側で計12基も搭載した点がポイントです。バランスドアーマチュアはダイナミックに比べてより細かな音を出すことができますが、帯域特性が広くないのでマルチユニットを合わせて高性能イヤフォンを設計するのが一般的です。
ロクサーヌは低域、中音域、高音域に分かれた3Wayですが、各帯域ごとに4基のBAドライバーが採用されています。これは1ユニットで2個ドライバーのデュアルユニットを2ユニット組合わせているようです。それが帯域ごとに3組あるので計12基というわけですね。これによってひとつのドライバーの負担が軽減されてよりゆがみの少ない正確な音が再現できます。このためロクサーヌはイコライゼーション無しに23KHzまで周波数特性が延びた初めてのイヤフォンとなりました。
JH16では4基の低域ドライバーをすでに採用していたのですが、ロクサーヌではそれを中音域と高音域にも拡張したわけです。
また各帯域の位相を極限まで正確に制御した「FreqPhase」を採用しています。
これはどういうものかというと、位相は各ドライバー間の音の遅れ・不揃いなどによるもので、位相特性を改善することで音のイメージングやフォーカス(音のピント)を改善します。低音域、中音域、高音域とドライバーが分かれている時はそれぞれから出た音に時間特性の違いが起きます。低域から出た音は遅れ、高音域から出た音は早く着きます。それをイヤピースのところで同じにするために長さを調整して音導菅を作り、同時に到達するようにしたものです。ロクサーヌでは改良されたこの技術を使用しています。
またケーブルとプラグも改良があります。いままでの2ピンプラグには抜けやすくイヤピースをなくしやすいという欠点がありました。
独自開発した4 pinコネクターは、アーティストがライブパフォーマンス中でも耐えられるように設計されたものです。
この4ピン・コネクターは従来のものより頑丈である上に、低中高の回路の信号線がそれぞれ独自に本体に接続されているので、コントロールできる範囲がより広くなっているのも特徴です。このため後述の可変ベース機構も可能となりました。
ロクサーヌはまた、低域用ドライバーをフラットから+15dBまで調節できる点でも初めてのイヤフォンです。だからどんな低域でもリスナーは自由に調整をすることができるわけです。
* AKR03のインプレッションと試聴レビュー
AKR03はユニバーサルですから、一般の箱に入って提供されます。
AKR03はカーボンのフェイスプレートを採用しています。この辺も高級感があるところですね。シェルは半透明で12ドライバー(6ユニット)の構成がよくわかります。12ドライバーは2個ずつドライバー(発音体)が格納されたデュアルのBAユニットが並列配置で2個ずつ、一帯域ごとに組になり、(2x2ドライバー)x3wayで12個のドライバーが効率よく格納されているのが分かります。
特徴的なのはステムの部分で、ここは以前のユニバーサルの試聴機と比べると新設計のようです。やや大柄で3穴が確保されています。帯域ごとに別のポートになるのは正しい周波数特性を得るうえでも重要なポイントです。
この太めのステムと12ドライバーをおさめたやや大きめのシェルのために、全体は少し大柄なイヤフォンとなっていますが、装着性は悪くありません。ただ人によってはステムがやや太すぎるきらいはあるかもしれません。
イヤチップは少ないほうですが大中小のラバーとフォームチップがはいっています。私はもっぱらラバータイプを使用しています。理由は後でも書くようにAKR03は十分なベースレスポンスがあるので、フォームだとベース過剰になりがちだからです。
ケースは円筒形のユニバーサル版についてくるものが使われています。またシェルのロゴはJH Audioのロゴと、Astell&kernのロゴがそれぞれ左右に別々にプリントされたカスタムロゴを使用しています。
以下の試聴では主にカスタム版のロクサーヌと比べてみました。もちろんカスタムとユニバーサルではそれ自体が違いますが、ロクサーヌの純正のユニバーサル版は持っていませんし、音傾向の比較をするという点であればカスタム版との比較でもかまわないと思います。
主に標準(ミッドのラバー)チップをつけて聴いています。ケーブルは同じく3.5mmのシングルエンド(バランスでないもの)を使用しています。また使用している機材はAK240です。
まずぱっと聞いた音質はさすがロクサーヌでかなりの音質レベルの高さを感じます。またカスタム版と同様にユニバーサルの試聴機とは音が違うことが感じられます。違いは高音域の伸びと華やかさですね。
またカスタム版と共通した音の広がりの良さ、深みがあって厚みを感じる立体感の高さを感じます。そして音再現のこまやかさ、音色の良さ・音の色彩感の豊かさを感じるところもカスタムと同じです。
違いは周波数特性です。とても整ってベースがやや強めながらフラットな感じのある標準のカスタムロクサーヌに比べると、AKR03はかなり低音域が豊かで、音の雰囲気感・空気感がより出ている全体にメリハリがついた強調感のある音になっています。これはベースを基底にピラミッドバランスの音でもあり、骨太でより脚色感があります。比較するとカスタム版はほっそりとした感じ、引き締まってより正確な感じですね。高域もAKR03の方がやや強調感があるかもしれません。
プロ用のカスタムロクサーヌに比べると、よりコンシューマー的な味付けともいえるでしょう。これはAK240がAK120に比べれば、スタジオしようというよりも、むしろハイエンドオーディオ的な音楽リスニングを目指していることを考えると方向性はあっているかもしれません。AK240自体はあまり着色感は強くありませんが、もともとバランスが良いので、こうしたコンシューマー的な味付けのイヤフォンと組み合わせることで、より音楽を楽しく聞くことができると思います。
これはたとえるとJH13とJH16にも似ている気がします。AKR03がJH16に相当します。また音圧が違っていて、ユニバーサルの方が能率が高い気がしますね。おそらくインピーダンス低めにして良い意味で柔らかく甘めの表現にしてると思います。
さらに低域を可変ベースで高めてみるとベースヘビーになりますが、音楽再生的には魅力的でもあります。なぜかというと、AKR03の興味深い点はかなり強調された音作りと言っても、破綻してるほどドンシャリではなく、全域に派手めですが、きちっとまとまった音つくりもしっかりと感じられる点です。派手なロックを聴くとベースがブンブンと唸ってドラムスがバリバリと音を立てても、次の曲のバラードではアコースティック楽器やしっとりとしたヴォーカルが普通にさらっと聴けてしまいます。キレがあるのでカッコ良く、ヴォーカルも明瞭なので、迫力はありますが丸まったダンゴ感がありません。
性能が低いイヤフォンがベースヘビーだとうるさいだけですが、ベースのロクサーヌがとても音が整っているのでこの辺がなみのイヤフォンとは血統が違うことを感じさせます。逆にもとのロクサーヌの魅力も再確認できますね。
ちょっと聴いていてAKR03はEdition7/9を思い出しました。久々にEdition7/9的な「高級ドンシャリ」みたいな感覚もちょっとあります。つまり高性能でかつモニター的でない遊び要素を持っているといいましょうか。もちろんJH13とJH16のたとえのように失われた低域をカバーする必要がある場合にモニターにも使えるのかもしれませんが、もっと楽しめるベクトルを持ったものといった方がよいでしょう。
高性能なイヤフォンはたいてい「モニター的」で落ち着いた「クラシック・ジャズ向け」なんだよなーと嘆く人に高性能だけどロックポップ・エレクトロをカッコ良く迫力満点に聞かせてくれるイヤフォンでもあります。
でもジャズもカスタムのように細身でよく切れる代わりに、AKR03は太く厚く迫力があります。現代的なジャズトリオよりはスモーキーな雰囲気が合うとは思いますが。もちろん太いといっても比較的ということで、普通のイヤフォンよりはずっと切れ味は鋭いですね。
写真フィルムではかつて富士フィルムのベルビアが派手な色再現と強いコントラストで記憶色と評されたことがあります。これは忠実ではないかもしれないけど、こうであったと強い印象で記憶に残った色、あるいはこうでて欲しいという色ですね。
ロックやジャズはこうなっていてほしい、ライブはこんなカッコよかったよな、というそうした人の記憶・願望に正しいイヤフォンがAKR03なのかもしれません。
カスタムロクサーヌと2.5mmバランスケーブル
そしてバランスケーブルですが、今度はAKR03でバランスケーブルを使うと立体感が増すというより、音場がリアルで自然になるという方が良さそうに思います。また音が端正に聴こえるようになりますが、AKR03自体はわりとシングルエンドで迫力ある再現でも十分良いので、このバランスケーブルはカスタムロクサーヌによりよくあうように思います。
カスタムロクサーヌに2.5mmバランスケーブルを使うとヘッドフォン・イヤフォン的な不自然さが少なくより自然に聴くことができます。これはちょっと独特の音世界ですね。
*そして
というわけでレビューを書きましたが、このAKR03、なんと発売初日で即売り切れてしまいました。。これは香港でも同じだったそうですが、さすがに人気が高いですね。
ただAKRシリーズというものを俯瞰的に見てみるのもまた別な意味で、AKシリーズの世界を知る糸口になるのではないかと思います。
ベースはあのジェリーハービーのロクサーヌです。まさに最高のDAPと最強のイヤフォンの組み合わせと言えます。
AKR03の紹介に移る前にまず今回はAKRシリーズを振り返ってみたいと思います。
* AKRシリーズとは
Astell&KernはAK100をはじめとするハイレゾDAPの他にさまざまな周辺の製品も企画しています。たとえばこれまでにイヤフォンメーカーと共同でAKRシリーズとしてイヤフォンの企画を行ってきました。これはAKシリーズのDAPに合うようなイヤフォンをユーザーに提供するために既存の機種をベースにチューニングやロゴなどのカスタマイズを行って販売するというものです。
一番初めにはFitEarと共同でFitEar F111をチューニングしたモデルAK100-111iSを販売しましたが、これはAKRシリーズになる前のことです。いわばAKRゼロという感じでしょうか。
AK100-111iS
AKRシリーズとしての第一弾はAKR01ですが、これはファイナルオーディオデザイン(FAD)と共同でheaven IV をベースにしたイヤフォンです。音的には音響フィルタを使用したチューニングを行い、ロゴの変更をしています。AKR01はAK100をリファレンスとしてチューニングをしています。
ただし日本ではAKR01という名前では出ていません。なぜかというと、これはもともと日本の企画だった「新生活セット」のバンドル品として製造されたもので、それを海外企画として発展させたものがAKR01となったからです。
新生活セットのheaven IVとAK100
音質的にはAKR01をAK100と組み合わせた音はバランスドアーマチュアながら高域のきつさもよく抑えられ、より重心が下がるようにチューニングされたおかげか低域も十分な量感を確保していました。初期AK100は出力インピーダンスの高さから低インピーダンスのイヤフォンと合わせた時の低域のレスポンスに難点がありましたが、それはきちんと確保されるようにチューニングされていました。またカチッとした正確なAK100の音をよく活かしていたモデルだと思います。ステンレス筐体がよかったですね。
なお「新生活セット」ではeonkyoのダウンロードクーポンとmicroSDカードの32GBがセットにされていました。
次にAKR02は同じくFADのFI-BA-SSをベースにしたイヤフォンです。これはFI-BA-SSをAK120をリファレンスとして音響フィルタとケーブルをオリジナルのPCOCCに変えてチューニングしたモデルです。FI-BA-SS自体がheaven IVに比べればレベルの高いもので、AK120用という用途にあっています。これは日本でも販売され、価格は145,000円でした。
AKR02とAK120
私はシンガポールのヘッドフォンショウではじめてみましたが、ベースのインパクトも良いし、全体にクリアで明瞭感も高く躍動感もあります。これもBAMというFAD独自のエアフロー最適化の仕組みを持っています。
シンガポールで見たAKR02とAK100MK2
* AKR03の登場
これまでのAKRを見てもらうとわかるように、AK100をリファレンスとしてAKR01を作り、AK120をリファレンスとしてAKR02を作っています。つまり各世代ごとのAKシリーズに合わせたモデルを出していたわけです。そしていよいよAK240をリファレンスとしたAKRシリーズが登場しました。
それがIEMの神様ジェリーハービー率いるJH Audioのフラッグシップ、最強のイヤフォンであるロクサーヌのユニバーサルモデルをベースにしたAKR03です。
プロ用のスタジオモニターとして使われるIEM(イヤモニ)ですが、このユニバーサル版では通常のイヤチップを使いますので、耳型を取る必要もありません。耳型を使って個人に合わせて作成するカスタムIEM版のロクサーヌでは制作期間が4カ月という待ちも伝えられますが、これならば特に待ちもありません。また中古で手放すときのリセールバリューも高くなります。
私はカスタム版のロクサーヌのユーザーですが、実際に使っていてAK240は普通でもロクサーヌとの相性が抜群であると思いますが、AKR03は自らがAK240ユーザーでもあるジェリーも加わってAK240に合わせてチューニングしたということです。加えて従来ロクサーヌの可変ベースも健在ですのでさらに音を自分でも調整できます。
また、なんといっても最大のAKR03のポイントは標準でAK240用の2.5mmバランスケーブルが付属するということです。ロクサーヌは後述するように専用のケーブルが必要ですが、2.5mmバランス版はまだ市販していませんので、これは大きなポイントです。
* ベースモデルのロクサーヌに関して
まずベースとなったロクサーヌについて解説します。詳しくはこちらの私の書いたレビューを参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/396209255.html
ロクサーヌはTHE SIRENS SERIESという新しい製品系列のフラッグシップとして位置づけられたカスタムIEMです。IEM(In Ear Monitor)とは主にミュージシャンがステージで使うモニター用のイヤフォンのことで、日本ではイヤモニなどといわれます。これは高性能なので、ミュージシャンでなくても、オーディオマニア層によく使われるようになってきたというわけです。IEMは個人の耳型を取得して作成されるカスタムIEMと、通常のカナル型イヤフォンのようないやチップを使用して誰でも使えるユニバーサルに分かれますがロクサーヌではユニバーサル版も用意されていて、AKR03はこのユニバーサル版をベースにしています。
ちなみにTHE SIRENS SERIESという名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(セイレーン)から来ています。
ロクサーヌではまず、バランスドアーマチュアドライバーを片側で計12基も搭載した点がポイントです。バランスドアーマチュアはダイナミックに比べてより細かな音を出すことができますが、帯域特性が広くないのでマルチユニットを合わせて高性能イヤフォンを設計するのが一般的です。
ロクサーヌは低域、中音域、高音域に分かれた3Wayですが、各帯域ごとに4基のBAドライバーが採用されています。これは1ユニットで2個ドライバーのデュアルユニットを2ユニット組合わせているようです。それが帯域ごとに3組あるので計12基というわけですね。これによってひとつのドライバーの負担が軽減されてよりゆがみの少ない正確な音が再現できます。このためロクサーヌはイコライゼーション無しに23KHzまで周波数特性が延びた初めてのイヤフォンとなりました。
JH16では4基の低域ドライバーをすでに採用していたのですが、ロクサーヌではそれを中音域と高音域にも拡張したわけです。
また各帯域の位相を極限まで正確に制御した「FreqPhase」を採用しています。
これはどういうものかというと、位相は各ドライバー間の音の遅れ・不揃いなどによるもので、位相特性を改善することで音のイメージングやフォーカス(音のピント)を改善します。低音域、中音域、高音域とドライバーが分かれている時はそれぞれから出た音に時間特性の違いが起きます。低域から出た音は遅れ、高音域から出た音は早く着きます。それをイヤピースのところで同じにするために長さを調整して音導菅を作り、同時に到達するようにしたものです。ロクサーヌでは改良されたこの技術を使用しています。
またケーブルとプラグも改良があります。いままでの2ピンプラグには抜けやすくイヤピースをなくしやすいという欠点がありました。
独自開発した4 pinコネクターは、アーティストがライブパフォーマンス中でも耐えられるように設計されたものです。
この4ピン・コネクターは従来のものより頑丈である上に、低中高の回路の信号線がそれぞれ独自に本体に接続されているので、コントロールできる範囲がより広くなっているのも特徴です。このため後述の可変ベース機構も可能となりました。
ロクサーヌはまた、低域用ドライバーをフラットから+15dBまで調節できる点でも初めてのイヤフォンです。だからどんな低域でもリスナーは自由に調整をすることができるわけです。
* AKR03のインプレッションと試聴レビュー
AKR03はユニバーサルですから、一般の箱に入って提供されます。
AKR03はカーボンのフェイスプレートを採用しています。この辺も高級感があるところですね。シェルは半透明で12ドライバー(6ユニット)の構成がよくわかります。12ドライバーは2個ずつドライバー(発音体)が格納されたデュアルのBAユニットが並列配置で2個ずつ、一帯域ごとに組になり、(2x2ドライバー)x3wayで12個のドライバーが効率よく格納されているのが分かります。
特徴的なのはステムの部分で、ここは以前のユニバーサルの試聴機と比べると新設計のようです。やや大柄で3穴が確保されています。帯域ごとに別のポートになるのは正しい周波数特性を得るうえでも重要なポイントです。
この太めのステムと12ドライバーをおさめたやや大きめのシェルのために、全体は少し大柄なイヤフォンとなっていますが、装着性は悪くありません。ただ人によってはステムがやや太すぎるきらいはあるかもしれません。
イヤチップは少ないほうですが大中小のラバーとフォームチップがはいっています。私はもっぱらラバータイプを使用しています。理由は後でも書くようにAKR03は十分なベースレスポンスがあるので、フォームだとベース過剰になりがちだからです。
ケースは円筒形のユニバーサル版についてくるものが使われています。またシェルのロゴはJH Audioのロゴと、Astell&kernのロゴがそれぞれ左右に別々にプリントされたカスタムロゴを使用しています。
以下の試聴では主にカスタム版のロクサーヌと比べてみました。もちろんカスタムとユニバーサルではそれ自体が違いますが、ロクサーヌの純正のユニバーサル版は持っていませんし、音傾向の比較をするという点であればカスタム版との比較でもかまわないと思います。
主に標準(ミッドのラバー)チップをつけて聴いています。ケーブルは同じく3.5mmのシングルエンド(バランスでないもの)を使用しています。また使用している機材はAK240です。
まずぱっと聞いた音質はさすがロクサーヌでかなりの音質レベルの高さを感じます。またカスタム版と同様にユニバーサルの試聴機とは音が違うことが感じられます。違いは高音域の伸びと華やかさですね。
またカスタム版と共通した音の広がりの良さ、深みがあって厚みを感じる立体感の高さを感じます。そして音再現のこまやかさ、音色の良さ・音の色彩感の豊かさを感じるところもカスタムと同じです。
違いは周波数特性です。とても整ってベースがやや強めながらフラットな感じのある標準のカスタムロクサーヌに比べると、AKR03はかなり低音域が豊かで、音の雰囲気感・空気感がより出ている全体にメリハリがついた強調感のある音になっています。これはベースを基底にピラミッドバランスの音でもあり、骨太でより脚色感があります。比較するとカスタム版はほっそりとした感じ、引き締まってより正確な感じですね。高域もAKR03の方がやや強調感があるかもしれません。
プロ用のカスタムロクサーヌに比べると、よりコンシューマー的な味付けともいえるでしょう。これはAK240がAK120に比べれば、スタジオしようというよりも、むしろハイエンドオーディオ的な音楽リスニングを目指していることを考えると方向性はあっているかもしれません。AK240自体はあまり着色感は強くありませんが、もともとバランスが良いので、こうしたコンシューマー的な味付けのイヤフォンと組み合わせることで、より音楽を楽しく聞くことができると思います。
これはたとえるとJH13とJH16にも似ている気がします。AKR03がJH16に相当します。また音圧が違っていて、ユニバーサルの方が能率が高い気がしますね。おそらくインピーダンス低めにして良い意味で柔らかく甘めの表現にしてると思います。
さらに低域を可変ベースで高めてみるとベースヘビーになりますが、音楽再生的には魅力的でもあります。なぜかというと、AKR03の興味深い点はかなり強調された音作りと言っても、破綻してるほどドンシャリではなく、全域に派手めですが、きちっとまとまった音つくりもしっかりと感じられる点です。派手なロックを聴くとベースがブンブンと唸ってドラムスがバリバリと音を立てても、次の曲のバラードではアコースティック楽器やしっとりとしたヴォーカルが普通にさらっと聴けてしまいます。キレがあるのでカッコ良く、ヴォーカルも明瞭なので、迫力はありますが丸まったダンゴ感がありません。
性能が低いイヤフォンがベースヘビーだとうるさいだけですが、ベースのロクサーヌがとても音が整っているのでこの辺がなみのイヤフォンとは血統が違うことを感じさせます。逆にもとのロクサーヌの魅力も再確認できますね。
ちょっと聴いていてAKR03はEdition7/9を思い出しました。久々にEdition7/9的な「高級ドンシャリ」みたいな感覚もちょっとあります。つまり高性能でかつモニター的でない遊び要素を持っているといいましょうか。もちろんJH13とJH16のたとえのように失われた低域をカバーする必要がある場合にモニターにも使えるのかもしれませんが、もっと楽しめるベクトルを持ったものといった方がよいでしょう。
高性能なイヤフォンはたいてい「モニター的」で落ち着いた「クラシック・ジャズ向け」なんだよなーと嘆く人に高性能だけどロックポップ・エレクトロをカッコ良く迫力満点に聞かせてくれるイヤフォンでもあります。
でもジャズもカスタムのように細身でよく切れる代わりに、AKR03は太く厚く迫力があります。現代的なジャズトリオよりはスモーキーな雰囲気が合うとは思いますが。もちろん太いといっても比較的ということで、普通のイヤフォンよりはずっと切れ味は鋭いですね。
写真フィルムではかつて富士フィルムのベルビアが派手な色再現と強いコントラストで記憶色と評されたことがあります。これは忠実ではないかもしれないけど、こうであったと強い印象で記憶に残った色、あるいはこうでて欲しいという色ですね。
ロックやジャズはこうなっていてほしい、ライブはこんなカッコよかったよな、というそうした人の記憶・願望に正しいイヤフォンがAKR03なのかもしれません。
カスタムロクサーヌと2.5mmバランスケーブル
そしてバランスケーブルですが、今度はAKR03でバランスケーブルを使うと立体感が増すというより、音場がリアルで自然になるという方が良さそうに思います。また音が端正に聴こえるようになりますが、AKR03自体はわりとシングルエンドで迫力ある再現でも十分良いので、このバランスケーブルはカスタムロクサーヌによりよくあうように思います。
カスタムロクサーヌに2.5mmバランスケーブルを使うとヘッドフォン・イヤフォン的な不自然さが少なくより自然に聴くことができます。これはちょっと独特の音世界ですね。
*そして
というわけでレビューを書きましたが、このAKR03、なんと発売初日で即売り切れてしまいました。。これは香港でも同じだったそうですが、さすがに人気が高いですね。
ただAKRシリーズというものを俯瞰的に見てみるのもまた別な意味で、AKシリーズの世界を知る糸口になるのではないかと思います。
2014年05月20日
Geek Wave DAPリブート
以前書いたクラウドファンディングのハイレゾDAP、LH LabsのGeek Waveが再始動ということで新しいキャンぺーンを始めました。
https://www.indiegogo.com/projects/geek-wave-it-s-not-a-next-gen-ipod-it-s-a-no-compromise-portable-music-player
Da Vinch DACという300万円のDACで使用した技術を応用しているというところがポイントで、たとえばアップサンプリングなしで音質を倍にできるとうたっているDuet Engineという処理エンジンと、3層のデコードバッファ?(ソース層、デカップリング層、I2S層)のデータのデコード、Instant Powerという電源投入(または信号入力イベント)即時フル稼働できるという仕組みなどを採用しています。
プロセッサにはMIPSを使用しているのがちょっと面白いところ。またXMOSを採用していて、USB DACとしても万全のようです。
容量は64GBと128GB版に別れました。256GBはなくなったようです。
Xがついているものはバランス出力ができます。3.5mmTRRSです。この場合はアンプ部分(TPA6120A2)が4ch(2xLR)となります。
XDがついているのはデュアルモノで、ES9018K2M DACのデュアルでIV回路や前段オペアンプ(OPA1612)がデュアルとなります。アンプもバランスです。またXDではフェムトクロックを採用してます。ポータブルでのフェムトクロック採用は始めてでしょう。
以前のGeek Waveに出資していた人は新しいGeek Waveにアップグレードできます。これはスタンドアローンDAPに出資していた人のことだけで、model-Sに出資していた人は少し待ってくれと書いてあります。
まず前に出資した時と同じアカウントでIndiegogoにログインします。新しいGeek WaveのOne Dollar Confirmation Perkを見てここで$1出資すれば新しいGee Wave X 128にアップグレードされるはずです。
もしXD128にしたい場合は、変更してからUpgrade X 128 to XD128にすればよいと思います。
https://www.indiegogo.com/projects/geek-wave-it-s-not-a-next-gen-ipod-it-s-a-no-compromise-portable-music-player
Da Vinch DACという300万円のDACで使用した技術を応用しているというところがポイントで、たとえばアップサンプリングなしで音質を倍にできるとうたっているDuet Engineという処理エンジンと、3層のデコードバッファ?(ソース層、デカップリング層、I2S層)のデータのデコード、Instant Powerという電源投入(または信号入力イベント)即時フル稼働できるという仕組みなどを採用しています。
プロセッサにはMIPSを使用しているのがちょっと面白いところ。またXMOSを採用していて、USB DACとしても万全のようです。
容量は64GBと128GB版に別れました。256GBはなくなったようです。
Xがついているものはバランス出力ができます。3.5mmTRRSです。この場合はアンプ部分(TPA6120A2)が4ch(2xLR)となります。
XDがついているのはデュアルモノで、ES9018K2M DACのデュアルでIV回路や前段オペアンプ(OPA1612)がデュアルとなります。アンプもバランスです。またXDではフェムトクロックを採用してます。ポータブルでのフェムトクロック採用は始めてでしょう。
以前のGeek Waveに出資していた人は新しいGeek Waveにアップグレードできます。これはスタンドアローンDAPに出資していた人のことだけで、model-Sに出資していた人は少し待ってくれと書いてあります。
まず前に出資した時と同じアカウントでIndiegogoにログインします。新しいGeek WaveのOne Dollar Confirmation Perkを見てここで$1出資すれば新しいGee Wave X 128にアップグレードされるはずです。
もしXD128にしたい場合は、変更してからUpgrade X 128 to XD128にすればよいと思います。
2014年05月16日
ハイレゾDAPのDSDネイティブ再生について
AK100II/AK120IIが発表されましたが、AK240との大きな違いはDSDの再生をAK240ではネイティブ再生ができるのに対して、AK100II/AK120IIではPCM変換ということです。しかし、使用しているDACチップICはどちらも同じです。違いはAK240にはあるXMOSがAK100II/AK120IIにはないことです。
本稿ではこれについて少し考察してみます。
DSD音源の再生は最近のオーディオのトレンドですが、長らくオーディオ世界に君臨していたPCM方式とはことなりますので、さまざまなところでPCMのしばりを受けたボトルネックで制限されます。それをクリアしてDSDのまま再生するのがDSDネイティブ再生です。
このクリアの仕方にはいろいろありますが、例えばUSB DACでいえばPCからDACへの伝送経路がボトルネックになりますので、それをクリアするためにdCS方式から始まってDoPやASIOなどがありました。またネットワークオーディオではネットワークのプロトコルがボトルネックとなりますので、DoPEやバッファロー方式NASなどのクリアの方法があります。
その点でハイレゾDAPの場合には自己完結しているわけですから、単にDACチップICがDSD対応していればよいように思えます。しかしながら実のところはやはりPCMの制約がボトルネックになると思います。それはI2Sです。
ふつうDACの内部ではPCMのデータはI2S形式で伝送が行われ、DACチップICにデータが入ります。ところがI2SはPCMを伝送する形式ですから、DSDデータをDACチップに伝送する際にはI2SではなくDSDに沿ったDSD-rawなどの形式で伝送する必要があります。このためDAC内部で入力コントローラとして使用していたICが、DACチップICへの出力をするためにはI2Sだけではなく、DSD-rawなどに対応する必要があります。
この条件を満たすのはたとえばXMOSやAmaneroなどです。XMOSは当初I2Sだけでしたが、昨年くらいからDSDにも対応したようです。
AK240やCalyx Mは両方とも単体でのDSDネイティブ再生ができますが、両方ともやはりXMOSを採用しているのでこの要件を満たしています。以前AK240が出たときに、DSDの時に働くプロセッサがある、という表現が話題になりましたが、これはおそらくXMOSのことだと思います。XMOSはそれ自体がプロセッサです。
対してFiiO X5, iBasso DX90, AK100II/AK120IIなどはDACチップICはDSDに対応していますが、おそらく回路がI2Sの経路のみで組んであるのでしょう。そのためDSD再生にはPCM変換が必要になるのだと思います。反面でその分価格は下げられると思うので、これもトレードオフの問題かもしれません。
本稿ではこれについて少し考察してみます。
DSD音源の再生は最近のオーディオのトレンドですが、長らくオーディオ世界に君臨していたPCM方式とはことなりますので、さまざまなところでPCMのしばりを受けたボトルネックで制限されます。それをクリアしてDSDのまま再生するのがDSDネイティブ再生です。
このクリアの仕方にはいろいろありますが、例えばUSB DACでいえばPCからDACへの伝送経路がボトルネックになりますので、それをクリアするためにdCS方式から始まってDoPやASIOなどがありました。またネットワークオーディオではネットワークのプロトコルがボトルネックとなりますので、DoPEやバッファロー方式NASなどのクリアの方法があります。
その点でハイレゾDAPの場合には自己完結しているわけですから、単にDACチップICがDSD対応していればよいように思えます。しかしながら実のところはやはりPCMの制約がボトルネックになると思います。それはI2Sです。
ふつうDACの内部ではPCMのデータはI2S形式で伝送が行われ、DACチップICにデータが入ります。ところがI2SはPCMを伝送する形式ですから、DSDデータをDACチップに伝送する際にはI2SではなくDSDに沿ったDSD-rawなどの形式で伝送する必要があります。このためDAC内部で入力コントローラとして使用していたICが、DACチップICへの出力をするためにはI2Sだけではなく、DSD-rawなどに対応する必要があります。
この条件を満たすのはたとえばXMOSやAmaneroなどです。XMOSは当初I2Sだけでしたが、昨年くらいからDSDにも対応したようです。
AK240やCalyx Mは両方とも単体でのDSDネイティブ再生ができますが、両方ともやはりXMOSを採用しているのでこの要件を満たしています。以前AK240が出たときに、DSDの時に働くプロセッサがある、という表現が話題になりましたが、これはおそらくXMOSのことだと思います。XMOSはそれ自体がプロセッサです。
対してFiiO X5, iBasso DX90, AK100II/AK120IIなどはDACチップICはDSDに対応していますが、おそらく回路がI2Sの経路のみで組んであるのでしょう。そのためDSD再生にはPCM変換が必要になるのだと思います。反面でその分価格は下げられると思うので、これもトレードオフの問題かもしれません。
2014年05月15日
Astell&KernのAKシリーズの新作AK100IIとAK120IIの詳細について
Astell&KernのAKシリーズの新作がドイツハイエンドショウで発表されます。
この前少しテザー画像を載せましたが、その正式発表となります。
Astell&Kern 『AK120II 128GBストーンシルバー』 及び『AK100II 64GBスモーキーブルー』です。
AK120II、AK100IIともAK240と共通した特徴を持っています。例えば2.5mmバランス端子、大型タッチスクリーン、WiFi機能、光出力などです。
DACチップもCS4398と三機種共通ですが、AK120IIはデュアル、AK100IIはシングルです。
AK120II、AK100IIともDSD再生に対応しますが、AK240はネイティブ再生なのに対して、AK120II、AK100IIはPCM変換です。これはAK240だけXMOSが採用されているからのようです。Ak240でDSDの時に働くチップというのがありましたが、あれはXMOSのことかもしれません。
AK120IIのアンプ部分はほぼAK240に準ずるようですが(いまの時点で完全にそうとも言えませんが)、AK100IIはバランス端子はありますがやや出力電圧は低くなってSNや歪みなどの性能もやや低くなっているようです。出力インピーダンスはAK100II、AK120IIともバランスで1Ω、シングルエンドで2Ωです。
AK240はジュラルミンですが、AK120II、AK100IIはアルミニウムです。またカラーが異なります。
AK240は内蔵256GB、AK120IIは128GB、AK100IIは64GBです。増設はどれもMicroSD一個です。
サイズについては画像を参考にしてください。
重さはAK120IIは177g、AK100IIは170gです。
実際に聴いてみないとわかりませんが、AK120IIの方は中身はDSD以外はAK240にかなり近いのかもしれません。AK100IIは普及機という感じでしょうか。
なおスペック詳細などは下記iriverのサイトを参照ください。
http://www.iriver.jp/information/entry_740.php
なお日本での発売日、発売価格は未定です。
この前少しテザー画像を載せましたが、その正式発表となります。
Astell&Kern 『AK120II 128GBストーンシルバー』 及び『AK100II 64GBスモーキーブルー』です。
AK120II、AK100IIともAK240と共通した特徴を持っています。例えば2.5mmバランス端子、大型タッチスクリーン、WiFi機能、光出力などです。
DACチップもCS4398と三機種共通ですが、AK120IIはデュアル、AK100IIはシングルです。
AK120II、AK100IIともDSD再生に対応しますが、AK240はネイティブ再生なのに対して、AK120II、AK100IIはPCM変換です。これはAK240だけXMOSが採用されているからのようです。Ak240でDSDの時に働くチップというのがありましたが、あれはXMOSのことかもしれません。
AK120IIのアンプ部分はほぼAK240に準ずるようですが(いまの時点で完全にそうとも言えませんが)、AK100IIはバランス端子はありますがやや出力電圧は低くなってSNや歪みなどの性能もやや低くなっているようです。出力インピーダンスはAK100II、AK120IIともバランスで1Ω、シングルエンドで2Ωです。
AK240はジュラルミンですが、AK120II、AK100IIはアルミニウムです。またカラーが異なります。
AK240は内蔵256GB、AK120IIは128GB、AK100IIは64GBです。増設はどれもMicroSD一個です。
サイズについては画像を参考にしてください。
重さはAK120IIは177g、AK100IIは170gです。
実際に聴いてみないとわかりませんが、AK120IIの方は中身はDSD以外はAK240にかなり近いのかもしれません。AK100IIは普及機という感じでしょうか。
なおスペック詳細などは下記iriverのサイトを参照ください。
http://www.iriver.jp/information/entry_740.php
なお日本での発売日、発売価格は未定です。
2014年05月13日
ヘッドフォン祭2014春のレポート
2014年春のヘッドフォン祭が中野に戻って開催されました。中野に戻ってきたせいか、気持ちよい晴天で行われかなりの人でにぎわいました。以下、今回のヘッドフォン祭でのポイントを書いていきます。
1. 平面型ヘッドフォンの最新事情
今回の注目のひとつはまず新世代平面型ヘッドフォン対決です。フォステクスのTH500RPが発表され、HiFiManではHE560、HE400iの新製品が展示され、OppoではPM-1の製品版が展示されました。
平面型のヘッドフォンは最近注目されてきましたが、その低価格化と高能率化が課題となっています。実のところ平面型というのは最近発明された技術ではなく、オーディオの黄金期と言われた時代には理想的な形式としてスピーカー・ヘッドフォンを問わずに追求された時期もあったのですが、オーディオビジネスが冷え込んでくるとコストのかかるこの方式からメーカーは離れていき、やがて少数のみが残るという歴史があります。その少ない残った代表例はSTAXとフォステクス RPです。STAXが一部に熱狂的なファンがいるのと同様にフォステクス RPにも特に海外で熱烈なファンがいます。
フォステクスさんの発表を聞くとその歴史を再確認できたと思います。フォステクスの初代RPモデルではネオジウムマグネットがない時代においても広帯域の再生ができたと言います。
TH500RPはいままでの延長とも言えます。デザインはT50のデザインを踏襲したのもその現れの一つでしょう。デザインはA8やHP-P1のデザイナーを起用しています。インピーダンスが少し変わったほかは最大入力も現行RPと同じです。
RPはフォステクスでの全面駆動の平面型ヘッドフォンの呼び名ですが、Regular Phase(均一の位相)という名の通り、全面駆動により全体が動くので共振が分散できて不要音がないという利点があります。今回測定すると共振点がないというより、振幅が少なくても音が出るので共振点が目立ちにくい、というのが分かったそうです。つまりスムースに振動板を動かせるわけです。TH900は振幅自体は速いが、振幅の動き自体はRPが滑らかという感じのようです。これも測定を重ねるという手法がキーとなります。
もう一方のTH500RPの改良点はチューニングするということで、まずエアフローをチューニングしています。とくに低域のエアフローの改善はTH900のノウハウを使ったということ。以前のRPはこもって抜けが悪かったが、それはエアフローのチューニングで改良されたということです。
つまりドライバーのチューニング、エアフローのチューニング、イヤパッド、ケーブルの改善で音を改良したのがTH500RPです。
さきにふれたように海外ではフォステクスというとRPというほど平面型が代名詞となっており、いくつものmod(改造品)が作られてきました。最近のAlphaDogもそのひとつです。つまりRPドライバ自体は完成度が高いのですが、ガワに不満があったわけです。AlphaDogは3Dプリントという手法でそれを解決しています。言い換えるとガワを変える=チューニングするという考え方は一般的な認識であった訳です。
そうしたチューニングをオフィシャルで行い、しかも測定を重ねるという手法で完全な「セルフmod」をしたのがTH500RPとも言えるでしょう。
またそういう意味では完全新規の新設計平面型もそのうち期待できるかもしれません。
RPも当初はプロ用を目的としていたため、鳴らし難さはあまり目立つ問題ではありませんでしたが、最近コンシューマーの世界でヘッドフォンが注目されてくると平面型の問題である能率の低さがまた問題となってきました。
能率が高くするポイントとしてはTH500RPでは磁気回路の印刷技術が上がってること、そしてさきの測定器を使った解析があげられるということです。なおRPの特徴的な山形パターンは同じということです。
実際に聞いてみるとたしかに自然で素直な音が感じられました。
HiFimanも平面型に重点を置いており、こちらは海外のマニア層を中心に出てきた新興の勢力といえましょう。いままでにいくつもの平面型を制作していますが、今回は新型であるHE560とHE400iを発表しました。
HE560はドライバーにシングルエンド・片側マグネット(Singled ended planer magnetic)を採用するなど新機軸を採用しているのがポイントです。この方式を取るとダイアフラムがより自由に動くので広大な音空間を生むが、歪みをコントロールするのが難しいということ。今回それを解決するダンピング素材をJade(以前静電型を作ったメーカー)と見つけたそう。またマグネットが一つなので軽量化でき能率もあがるということ。HE400iとも能率の向上をポイントとしてあげています。HE560はそういっても能率はまだまだ低いのでホーム用できちんとしたアンプを必要とします。
HE400iはポータブルでも使えるくらい能率高いもので音質もとても高いですね。音色も美しいです。
HE560
Oppo PM-1は以前発表会でプレゼンしたのですが、製品版となって登場しました。こちらはこれがはじめての平面型というかヘッドフォン製品です。
PM-1は平面型的なスムースさとダイナミック型のようなロックPOPに向いた迫力を持ってます。能率が高いところもポイントです。PM-1は独特の二重のダイアフラム構造を持っていて、コイルのパターンはスパイラル(螺旋)です。コイルのパターンはコイルの長さを左右するので平面型では重要なポイントで、フォステクスのRPでは山型ですね。
また全体にパーツも高級感があり、Editionシリーズを少し意識しているようにも見えます。
PM-1
Fostex、HiFiman、Oppoはそれぞれ老舗、新興勢力、新人という違いがあります。また音も個性的という点でちょっと注目していきたいところです。
2.カスタムイヤフォン世界の充実
ヘッドフォンを中心に発展して来たこの世界ですが、時代の趨勢はかなりポータブル方向に動いています。そうした中で、かつてヘッドフォン世界を牽引してきたHD800やEdition9などのハイエンドヘッドフォンに変わって注目されてきたのがカスタムイヤフォンです。高性能ユニバーサルも含めてハイエンドのイヤフォンと言い換えてもよいかもしれません。
かつては一部のものだったカスタムは国内扱いも増え、いまや多くのひとが楽しめるものとなってきました。
カスタムの世界は前に書いたようにジェリーハービーが創始して人気をあつめ、日本およびアジア圏では須山さんが人気を博しています。そうした東西両雄にくわえて人気を集めている個性派が"Wizard"ジョンモールトンで、彼のひきいるのがNobleです。
今回はWagnusさんが自らのケーブルとともに、Nobleのカスタムやユニバーサルを日本に紹介してくれました。
ます注目はフラッグシップの10ドライバー機のKaiser 10(K10)です。試聴機を聞いてみましたが音域は広く各帯域にドライバーが広く配置されているという感じです。4+4+4と2+2+2+2+2というドライバー構成の違いというのもあるかもしれません(K10はクロスオーバー的には4wayだったと思います)。特に低域はでかいCIユニットがはいっているせいかかなり豊かですね。中低域に重点がある感じでロックポップを含めた様々なジャンルでのオーディオリスニングにはよさそうです。ロクサーヌの方は中高域を重点に音が整っている感じです。ロクサーヌの低域は量感というよりパンチがあるという感じです。
Kaiser 10
ロクサーヌだけ聞いているとそう思いませんが、他のIEMと比べると整った音で正確な再現を目指すというロクサーヌの強みもわかってきます。ライバルあればこそ、という感じでしょうか。
もうひとつNobleの注目はユニバーサルのNoble PR/FRでこれらはスイッチ式でクロスオーバーとユニットの組み合わせが代えられます。スイッチで音が大きく変わり、プレイリストにロックとクラシックが混ざってるなんて人には好適だと思いました。
Noble PR
須山さんブースは本人不在でしたがとても人気で試聴の列が途切れずにできていました。注目はあたらしい"fitear"です。fitearという名前もひとつの原点回帰を示しているのかもしれません。
私が持ってるfitearのプロトは標準の黒い001ケーブルですが、製品版?ではオヤイデの白ケーブルで展示されていました。聴いてみると001よりこっちの方が空気感がよく出ていてよりfitearの魅力を引き出しているように思えます。実は向かいのアユートさんのところにもfitearがおいてあってこちらは並ばずに聴けました。またAK240バランス版も用意されていました。
fitear
アユートさんのところではロクサーヌユニバーサルのAKR03がありましたが、これは即日完売の瞬殺でした。香港でも即日完売だったそうです。
もうひとつのカスタムの注目点であるJM Plusはまずは無事到着してほっとしたという思いです。新しいところ呼ぶときはけっこういつも大変です。ここではさまざまな世界のカスタムを聴くことができます。
rhines Stage5は明るくクリアで歯切れ良い音でした。
Rooth LSX3はハイブリッドらしく重厚でベースたっぷりです。
custom art Harmonyはカスタムだけど小さめに作ってるので試聴に使います。バランスの取れた音って感じでした。custom art はシリコンですけど、ACSみたいにゴムみたいにものすごく柔らかいわけではないです。フィットが気持ち良いですね。
ブースも人気で二日目はおそろいのTシャツでいそがしく動いていました。JM Plusの人たちもすっかりヘッドフォン祭が気に入って次もぜひ出たいって言ってました。
3.個性派ポータブルヘッドフォンアンプ
ポータブルの中でも趨勢がハイレゾDAPに向かうなかで、ポータブルのヘッドフォンアンプでは大手企業が参加してきたという点と、小規模メーカーの世界では個性派が増えてきたということが変化としてあげられると思います。
今回のヘッドフォン祭での一番のサプライズは(AK100II/120IIを除くと)、GloveAudioのCEOがCEntranceのマイケルだったということでした。15Fのエレベーターでばったりあって、なにしてるの?と言って名刺を渡されてびっくり。これは私も知らされていませんでした。
実のところGloveAudioの話を聞いても、正体の知れない新会社では肝心の音が不安だ、と思っていたのですが、これで一気に解決しました。あのDACportとHiFi M8のCEntranceです。音質はいわずもがな折り紙付き、です。
GloveAudioのThe Glove A1はAK100とAK120をケーブルを使わずにクランパーであるアダプタではさんで合体させるDAC内臓のヘッドフォンアンプです。AKからは光端子でデジタルだけ入力します。DACはES9018K2Mです。またアンプはバランス出力が可能で、RSAタイプとAk240の2.5mmバランスの二基が装備されています。バランスケーブルをつかったAKR03でも素晴らしい音が楽しめました。ハイレゾのクラシックも堂々とスケール感豊かに鳴らします。音の純度の高さはCEntrance品質です。シングルエンドでもすんごく良い音です。まさに画期的なアンプですね。
AK100とAk120はスペーサーのアダプタで調整できます。クランパーはビス止めです。(へクスレンチ)
絶対はずれません。まさに一体型。私も長いことプレーヤー+ポータブルアンプという組み合わせを使っていますが、Glove A1は新感覚です。フルアーマーという異名もすでに頂戴していますがメカっぽさもよいですね。AK100ユーザーは画期的な高音質化ができるとともに増えつつある2.5mmバランス資産も使えます。
価格は7万前後のようで、来月以降に出荷を予定しているということです。
もうひとつのJabenの驚きはこのPortaTubeの後継である真空管アンプです。PortaTubeはかなり人気を博したのでこちらも注目ですね。
真空管アンプ
こちらはいまでは人気ブランドとなったiFIの新製品Micro DSDです。つれはクラウドデザインで募集した成果ということでしょうか。すごいのはポータブルなのにDSD256(11.2MHz)に対応します!
またプリとしても使用可能です。電池内蔵でポータブル使用も可能ですが、やや大きいのでポータブルというよりはバッテリー駆動によるプリとしてジェフローランドなみのクリーン電源駆動プリとしての使用も想定しているようです。
こちらはアナログスクエアペーパーさんとのコラボによるミニ05(小さいほう)。トランジスタは交換可能です。これはいわゆるバッファアンプで電圧増幅しないタイプ(ゲインゼロ)ですね。ネタだけじゃなくけっこう音も良いですね。
CEntranceはHifiM8のミニを参考展示しました。スリムになっただけではなく一台でUSBもiDeviceも光も同軸も入力可能です。
HiFi M8 mini(上)と現行のM8(下)
4. 大手企業メーカーのポータブルヘッドフォンアンプ
ポータブルのヘッドフォンアンプというと少し前まではニッチの世界であり、ガレージメーカーの独壇場だったのですが、フォステクスHP-P1あたりから流れが変わり始め、いまでは大手企業のソニー、Teacについで今回はビクターとオンキヨーからも新製品が出てきました。
TEACとソニーのポータブルアンプ
ビクターのポータブルアンプSU-AX7はアナログ回路にも手を抜いてないのが特徴ということで、RWAK120でアナログ入力させて使うと柔かく落ち着いたオーディオらしい音でした。なかなか良いと思います。DACチップはAK4390ということですが、AKMの音っていうのともまた違うかも、とも思いました。DACはアナログ回路しだいということはメーカーのノウハウなんかも生きているんでしょう。またビクターお得意のK2回路を使用しているのもポイントです。
SU-AX7
オンキヨーのポータブルヘッドフォンアンプDAC-HA200(参考出品)はTeacと兄弟機となり提携関係の結果だそうです。こうした関係も大手企業の世界ならではかもしれません。Teacとはオペアンプ違いで、こちらの方が明瞭感は高いように感じました。またオンキヨーのiPhoneアプリもTeacで使われていますね。
オンキヨーのポータブルアンプ
5. 最新のハイレゾDAP
今回驚いたのは人気のAstell&KernでAK100IIとAk120IIがドイツのハイエンドショウで発表されるということです。みたところ2.5mmプラグやUIなどでAK240のとの共通性も期待されます。
これについてはチャンネルはそのまま、という感じで続報をまっていてください。
AK100II,AK120II
今回気合が入っているJabenのテーマは上クラスのCalyx M(販売は不明)、中クラスのAP100、エントリーのCookie/Buiscuitと揃えたDAP、そしてGloveや新真空管、A2P小型など個性派アンプを揃えたことです。
注目DAPのCalyx Mも日本初登場でJabenブースにCEOみずからが持ってきました。聞いてみるとやや大柄ながらかなり引き締まったタイトでシャープな音でジッター低そうです。さすがPCオーディオのDACメーカーが作ったDAPという感じではありますね。またUSB DACとしてオーディオクラス2のきちんとした設計がなされているのもポイントです。
Calyxのイ・スンモクCEOとCalyx M、右はマグネットボリュームを外したところ
M:useというコントロールソフトはLinuxベースです。これはAndroidのハイレゾ通らない問題を避ける意味もあります。またマグネット式のボリュームノブを採用しているのも面白く、これはスリットレスでごみが入らないようにするためです。USB DACとしても機能します。
Hidizs AP100も安いながら音いいです。正確系で特にハイレゾ曲の再生がとても良い感じでした。ロクサーヌとも良く合いました。
AP100
Biscuit+(7000円)とCookie(12000円)、CookieはBiscuitに液晶とFLAC対応がついたもの。Biscuit+は前モデルにシャッフル機能がついたもの。残念ながらFLAC対応はなし。
Biscuit+とCookie
またオヤイデさんのところではX5が出展されていました。思っていたよりはちょっと大きい感じです。
アユートさんのところではAK240のゴールドも展示されています。(ホワイトバランスとらずにすんません)
6.ケーブルの充実
2.5mmバランス規格が普及始めたのも今回のヘッドフォン祭のポイントです。
AK240自体も売れてますし、AK100IIやAK120II、またはGloveAudioのように他でも2.5mmバランスが採用されています。
2.5mm AKタイプのケーブルでは以下のものが目に留まりました。
(左)ALOのSXC24-IEM MMCX。43000円くらい。 (右)Beat AudioのSignal 、価格未定。2ピン。
Wagnusさんの2.5mm、Voskhod、Meridian、Proton
2.5mm - RSAタイプのインターコネクト。WagnusのProgress。
6FではEstronのLinum(ライナム)ケーブルのデモをやってました。これは新型のタングルレス(絡みにくい)タイプです。前のケーブルの弱点は絡み安いところだったのでよい改良です。
なぜJabenと別ブースかというと6Fでは日本のB2B代理店の人が担当してたからです(JabenはB2C代理店になります)。Estronの特徴は音をケーブルで変えるのをうたってることで、それを証明するのにこんなユニークなイヤフォン切り替え器を用意してます。
二組のケーブルが同時に入ってます。イヤフォンにはこんな感じで二組入ってます。Estronは細いけど強靭ということで思いっきり引っ張るデモもやってくれました。
タイムロードではHugoで便利に使える光ケーブルを展示していました。価格も安くなかなか音もよいと思います。ほかのアンプでも使えそうですね。
7. エントリークラスからステップアップクラスのイヤフォン事情
カスタムだけではなく、エントリーからミッド、ハイクラスの各クラスの通常のイヤフォンも充実してきています。
まず今回の注目は激戦区の5000円に投入されるShureのSE112です。215との違いはケーブルが固定でチップがラバーのみです。ケーブルは耳巻きではなくストレート装着を想定しています。Shureの黒フォームチップとか耳まき式の装着はIEMなみのものですが、本当に一般人にはなじみにくいと思いますのでよいことでしょう。ドライバー自体は215と似ていますがチューニングを変えてます。音は215の方がwarm感あり、112はややすっきりでしょうか。215譲りで音質もいいので今後が注目されます。
SE112
音茶楽さんでは新ブランド、茶楽音人(サラウンド)が紹介されていました。ブランドの差異は下記のようにまとめられています。Donguri-楽はドングリベースですがより安く、より元気でベースたっぷりです。これは価格を考えるとかなりオススメのように思います。
音茶楽さんのもうひとつの展示てはFlat4の外耳道によってチューニングが違うもの、Flat4-緋弐型(赤)とFlat4-玄弐型(黒)が展示されています。これは位相補正チューブの長さによる違いです。もともとFLAT-4があれだけスムーズな音を出せていたのは位相補正チューブの働きがあるのですが、その長さをユーザーの外耳道に応じて変えるというもの。ある意味カスタムですね。
Flat4-緋弐型(赤)とFlat4-玄弐型(黒)
聴き比べるポイントは高域サ行のきつさです。試してみると確かに違いますね。私は赤の方がより自然に感じられましたが、外耳道が長めということのようです。
これは実際にお店で試聴してどちらかを選んでください。とても面白い試みだと思います。
人気ブランドとなったDita AudioではスペシャルAnswerがありました。どうスペシャルかというとAK240のバランスに対応しています。これはぜひ製品版でもほしいところですね。
Balanced Answer
またオーディオテクニカの新機軸“DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS”を取り入れた新製品CKR10なども展示されていました。オーディオテクニカの音つくりのそつなさという点でこの新機軸があっているようにも思います。
CKR10
8. PCオーディオの最新事情
ヘッドフォン祭では新しいオーディオの波ということでPCオーディオも取り込んでいます。
フックアップさんではLynxのHiloとMacのサンダーボルト接続のデモをやってました。これすごく画期的だと思います。端的にいうとサンダーボルト接続ということはPCI接続と同じということです。いままでPCIボードを使っていたことがサンダーボルトケーブルで可能ということです。ケーブル経由でも実質ボードをさしたのと同じということは転送性能だけではなく、従来資産の両面で有利です。そこがLynxの強みでもありますね。 またサンダーボルト接続ということはPCI接続と同じということですからドライバーが必要です。
画像では上下同じHiloでわかりやすく展示していました。
Hilo自体の音もスタジオ向けというだけでなくオーディオリスニングにも向いている感じでした。これのオーディオ向けDACのみのバージョンが出るとよいんですけど。
Audivana Plusの次期バージョン(iTunesライブラリとAudirvanaプレイリストの統合版)はヘッドフォン祭のフェーズメーションさんブースで先行公開でした(Damienの許可をとっています)。一般にはまだ公開されてません。
AudirvanaとEPA007X
フェーズメーションさんの新ヘッドフォンアンプはEPA007の改良型です。電源が改良されてより押しが強く音が先鋭になっています。なかなかよいと思います。
PCオーディオ関係ではPS AudioのDirect Stream DACも注目です。ポール社長のブログにあったDSDがメインでDACチップ使ってないやつです。
自然で高精細な音です。ただ高価なのがネットかと思いますが、まずリファレンスクラスを出したいというメーカーの意向があるようで、今後DLIIIクラスの同様なDACを期待したいところです。
Direct Stream DAC
角田さんのネットワークオーディオ講座も開催されていました。かなり人が入っていて立ち見が出るほどでした。
*
しかしこのレポート書いていても大変で、9000字の大作となってしまいましたが、今回も盛りだくだんでした。ヘッドフォン祭の直前のポタ研でAK240とHugoというデカイネタを出してしまったんで心配していた面もありましたが、こうしてたくさん書くことがあるというのはこの世界が成熟しているということでしょうね。
今回はサンプラザに戻ったことで呪いが解け?晴天に恵まれました。出展社数は約110社、入場者数は2日で7000人ということです。青山より増えていますね。あの伝統の東京インターナショナルオーディオショウでさえ3日で9000人くらいですからすごい人です。海外ではCanJamが2000人くらいです。
次は10/25と26で同じ中野サンプラザで行うということ。すでに次回のタネも今回いくつかありましたので次回も楽しみなことです。
1. 平面型ヘッドフォンの最新事情
今回の注目のひとつはまず新世代平面型ヘッドフォン対決です。フォステクスのTH500RPが発表され、HiFiManではHE560、HE400iの新製品が展示され、OppoではPM-1の製品版が展示されました。
平面型のヘッドフォンは最近注目されてきましたが、その低価格化と高能率化が課題となっています。実のところ平面型というのは最近発明された技術ではなく、オーディオの黄金期と言われた時代には理想的な形式としてスピーカー・ヘッドフォンを問わずに追求された時期もあったのですが、オーディオビジネスが冷え込んでくるとコストのかかるこの方式からメーカーは離れていき、やがて少数のみが残るという歴史があります。その少ない残った代表例はSTAXとフォステクス RPです。STAXが一部に熱狂的なファンがいるのと同様にフォステクス RPにも特に海外で熱烈なファンがいます。
フォステクスさんの発表を聞くとその歴史を再確認できたと思います。フォステクスの初代RPモデルではネオジウムマグネットがない時代においても広帯域の再生ができたと言います。
TH500RPはいままでの延長とも言えます。デザインはT50のデザインを踏襲したのもその現れの一つでしょう。デザインはA8やHP-P1のデザイナーを起用しています。インピーダンスが少し変わったほかは最大入力も現行RPと同じです。
RPはフォステクスでの全面駆動の平面型ヘッドフォンの呼び名ですが、Regular Phase(均一の位相)という名の通り、全面駆動により全体が動くので共振が分散できて不要音がないという利点があります。今回測定すると共振点がないというより、振幅が少なくても音が出るので共振点が目立ちにくい、というのが分かったそうです。つまりスムースに振動板を動かせるわけです。TH900は振幅自体は速いが、振幅の動き自体はRPが滑らかという感じのようです。これも測定を重ねるという手法がキーとなります。
もう一方のTH500RPの改良点はチューニングするということで、まずエアフローをチューニングしています。とくに低域のエアフローの改善はTH900のノウハウを使ったということ。以前のRPはこもって抜けが悪かったが、それはエアフローのチューニングで改良されたということです。
つまりドライバーのチューニング、エアフローのチューニング、イヤパッド、ケーブルの改善で音を改良したのがTH500RPです。
さきにふれたように海外ではフォステクスというとRPというほど平面型が代名詞となっており、いくつものmod(改造品)が作られてきました。最近のAlphaDogもそのひとつです。つまりRPドライバ自体は完成度が高いのですが、ガワに不満があったわけです。AlphaDogは3Dプリントという手法でそれを解決しています。言い換えるとガワを変える=チューニングするという考え方は一般的な認識であった訳です。
そうしたチューニングをオフィシャルで行い、しかも測定を重ねるという手法で完全な「セルフmod」をしたのがTH500RPとも言えるでしょう。
またそういう意味では完全新規の新設計平面型もそのうち期待できるかもしれません。
RPも当初はプロ用を目的としていたため、鳴らし難さはあまり目立つ問題ではありませんでしたが、最近コンシューマーの世界でヘッドフォンが注目されてくると平面型の問題である能率の低さがまた問題となってきました。
能率が高くするポイントとしてはTH500RPでは磁気回路の印刷技術が上がってること、そしてさきの測定器を使った解析があげられるということです。なおRPの特徴的な山形パターンは同じということです。
実際に聞いてみるとたしかに自然で素直な音が感じられました。
HiFimanも平面型に重点を置いており、こちらは海外のマニア層を中心に出てきた新興の勢力といえましょう。いままでにいくつもの平面型を制作していますが、今回は新型であるHE560とHE400iを発表しました。
HE560はドライバーにシングルエンド・片側マグネット(Singled ended planer magnetic)を採用するなど新機軸を採用しているのがポイントです。この方式を取るとダイアフラムがより自由に動くので広大な音空間を生むが、歪みをコントロールするのが難しいということ。今回それを解決するダンピング素材をJade(以前静電型を作ったメーカー)と見つけたそう。またマグネットが一つなので軽量化でき能率もあがるということ。HE400iとも能率の向上をポイントとしてあげています。HE560はそういっても能率はまだまだ低いのでホーム用できちんとしたアンプを必要とします。
HE400iはポータブルでも使えるくらい能率高いもので音質もとても高いですね。音色も美しいです。
HE560
Oppo PM-1は以前発表会でプレゼンしたのですが、製品版となって登場しました。こちらはこれがはじめての平面型というかヘッドフォン製品です。
PM-1は平面型的なスムースさとダイナミック型のようなロックPOPに向いた迫力を持ってます。能率が高いところもポイントです。PM-1は独特の二重のダイアフラム構造を持っていて、コイルのパターンはスパイラル(螺旋)です。コイルのパターンはコイルの長さを左右するので平面型では重要なポイントで、フォステクスのRPでは山型ですね。
また全体にパーツも高級感があり、Editionシリーズを少し意識しているようにも見えます。
PM-1
Fostex、HiFiman、Oppoはそれぞれ老舗、新興勢力、新人という違いがあります。また音も個性的という点でちょっと注目していきたいところです。
2.カスタムイヤフォン世界の充実
ヘッドフォンを中心に発展して来たこの世界ですが、時代の趨勢はかなりポータブル方向に動いています。そうした中で、かつてヘッドフォン世界を牽引してきたHD800やEdition9などのハイエンドヘッドフォンに変わって注目されてきたのがカスタムイヤフォンです。高性能ユニバーサルも含めてハイエンドのイヤフォンと言い換えてもよいかもしれません。
かつては一部のものだったカスタムは国内扱いも増え、いまや多くのひとが楽しめるものとなってきました。
カスタムの世界は前に書いたようにジェリーハービーが創始して人気をあつめ、日本およびアジア圏では須山さんが人気を博しています。そうした東西両雄にくわえて人気を集めている個性派が"Wizard"ジョンモールトンで、彼のひきいるのがNobleです。
今回はWagnusさんが自らのケーブルとともに、Nobleのカスタムやユニバーサルを日本に紹介してくれました。
ます注目はフラッグシップの10ドライバー機のKaiser 10(K10)です。試聴機を聞いてみましたが音域は広く各帯域にドライバーが広く配置されているという感じです。4+4+4と2+2+2+2+2というドライバー構成の違いというのもあるかもしれません(K10はクロスオーバー的には4wayだったと思います)。特に低域はでかいCIユニットがはいっているせいかかなり豊かですね。中低域に重点がある感じでロックポップを含めた様々なジャンルでのオーディオリスニングにはよさそうです。ロクサーヌの方は中高域を重点に音が整っている感じです。ロクサーヌの低域は量感というよりパンチがあるという感じです。
Kaiser 10
ロクサーヌだけ聞いているとそう思いませんが、他のIEMと比べると整った音で正確な再現を目指すというロクサーヌの強みもわかってきます。ライバルあればこそ、という感じでしょうか。
もうひとつNobleの注目はユニバーサルのNoble PR/FRでこれらはスイッチ式でクロスオーバーとユニットの組み合わせが代えられます。スイッチで音が大きく変わり、プレイリストにロックとクラシックが混ざってるなんて人には好適だと思いました。
Noble PR
須山さんブースは本人不在でしたがとても人気で試聴の列が途切れずにできていました。注目はあたらしい"fitear"です。fitearという名前もひとつの原点回帰を示しているのかもしれません。
私が持ってるfitearのプロトは標準の黒い001ケーブルですが、製品版?ではオヤイデの白ケーブルで展示されていました。聴いてみると001よりこっちの方が空気感がよく出ていてよりfitearの魅力を引き出しているように思えます。実は向かいのアユートさんのところにもfitearがおいてあってこちらは並ばずに聴けました。またAK240バランス版も用意されていました。
fitear
アユートさんのところではロクサーヌユニバーサルのAKR03がありましたが、これは即日完売の瞬殺でした。香港でも即日完売だったそうです。
もうひとつのカスタムの注目点であるJM Plusはまずは無事到着してほっとしたという思いです。新しいところ呼ぶときはけっこういつも大変です。ここではさまざまな世界のカスタムを聴くことができます。
rhines Stage5は明るくクリアで歯切れ良い音でした。
Rooth LSX3はハイブリッドらしく重厚でベースたっぷりです。
custom art Harmonyはカスタムだけど小さめに作ってるので試聴に使います。バランスの取れた音って感じでした。custom art はシリコンですけど、ACSみたいにゴムみたいにものすごく柔らかいわけではないです。フィットが気持ち良いですね。
ブースも人気で二日目はおそろいのTシャツでいそがしく動いていました。JM Plusの人たちもすっかりヘッドフォン祭が気に入って次もぜひ出たいって言ってました。
3.個性派ポータブルヘッドフォンアンプ
ポータブルの中でも趨勢がハイレゾDAPに向かうなかで、ポータブルのヘッドフォンアンプでは大手企業が参加してきたという点と、小規模メーカーの世界では個性派が増えてきたということが変化としてあげられると思います。
今回のヘッドフォン祭での一番のサプライズは(AK100II/120IIを除くと)、GloveAudioのCEOがCEntranceのマイケルだったということでした。15Fのエレベーターでばったりあって、なにしてるの?と言って名刺を渡されてびっくり。これは私も知らされていませんでした。
実のところGloveAudioの話を聞いても、正体の知れない新会社では肝心の音が不安だ、と思っていたのですが、これで一気に解決しました。あのDACportとHiFi M8のCEntranceです。音質はいわずもがな折り紙付き、です。
GloveAudioのThe Glove A1はAK100とAK120をケーブルを使わずにクランパーであるアダプタではさんで合体させるDAC内臓のヘッドフォンアンプです。AKからは光端子でデジタルだけ入力します。DACはES9018K2Mです。またアンプはバランス出力が可能で、RSAタイプとAk240の2.5mmバランスの二基が装備されています。バランスケーブルをつかったAKR03でも素晴らしい音が楽しめました。ハイレゾのクラシックも堂々とスケール感豊かに鳴らします。音の純度の高さはCEntrance品質です。シングルエンドでもすんごく良い音です。まさに画期的なアンプですね。
AK100とAk120はスペーサーのアダプタで調整できます。クランパーはビス止めです。(へクスレンチ)
絶対はずれません。まさに一体型。私も長いことプレーヤー+ポータブルアンプという組み合わせを使っていますが、Glove A1は新感覚です。フルアーマーという異名もすでに頂戴していますがメカっぽさもよいですね。AK100ユーザーは画期的な高音質化ができるとともに増えつつある2.5mmバランス資産も使えます。
価格は7万前後のようで、来月以降に出荷を予定しているということです。
もうひとつのJabenの驚きはこのPortaTubeの後継である真空管アンプです。PortaTubeはかなり人気を博したのでこちらも注目ですね。
真空管アンプ
こちらはいまでは人気ブランドとなったiFIの新製品Micro DSDです。つれはクラウドデザインで募集した成果ということでしょうか。すごいのはポータブルなのにDSD256(11.2MHz)に対応します!
またプリとしても使用可能です。電池内蔵でポータブル使用も可能ですが、やや大きいのでポータブルというよりはバッテリー駆動によるプリとしてジェフローランドなみのクリーン電源駆動プリとしての使用も想定しているようです。
こちらはアナログスクエアペーパーさんとのコラボによるミニ05(小さいほう)。トランジスタは交換可能です。これはいわゆるバッファアンプで電圧増幅しないタイプ(ゲインゼロ)ですね。ネタだけじゃなくけっこう音も良いですね。
CEntranceはHifiM8のミニを参考展示しました。スリムになっただけではなく一台でUSBもiDeviceも光も同軸も入力可能です。
HiFi M8 mini(上)と現行のM8(下)
4. 大手企業メーカーのポータブルヘッドフォンアンプ
ポータブルのヘッドフォンアンプというと少し前まではニッチの世界であり、ガレージメーカーの独壇場だったのですが、フォステクスHP-P1あたりから流れが変わり始め、いまでは大手企業のソニー、Teacについで今回はビクターとオンキヨーからも新製品が出てきました。
TEACとソニーのポータブルアンプ
ビクターのポータブルアンプSU-AX7はアナログ回路にも手を抜いてないのが特徴ということで、RWAK120でアナログ入力させて使うと柔かく落ち着いたオーディオらしい音でした。なかなか良いと思います。DACチップはAK4390ということですが、AKMの音っていうのともまた違うかも、とも思いました。DACはアナログ回路しだいということはメーカーのノウハウなんかも生きているんでしょう。またビクターお得意のK2回路を使用しているのもポイントです。
SU-AX7
オンキヨーのポータブルヘッドフォンアンプDAC-HA200(参考出品)はTeacと兄弟機となり提携関係の結果だそうです。こうした関係も大手企業の世界ならではかもしれません。Teacとはオペアンプ違いで、こちらの方が明瞭感は高いように感じました。またオンキヨーのiPhoneアプリもTeacで使われていますね。
オンキヨーのポータブルアンプ
5. 最新のハイレゾDAP
今回驚いたのは人気のAstell&KernでAK100IIとAk120IIがドイツのハイエンドショウで発表されるということです。みたところ2.5mmプラグやUIなどでAK240のとの共通性も期待されます。
これについてはチャンネルはそのまま、という感じで続報をまっていてください。
AK100II,AK120II
今回気合が入っているJabenのテーマは上クラスのCalyx M(販売は不明)、中クラスのAP100、エントリーのCookie/Buiscuitと揃えたDAP、そしてGloveや新真空管、A2P小型など個性派アンプを揃えたことです。
注目DAPのCalyx Mも日本初登場でJabenブースにCEOみずからが持ってきました。聞いてみるとやや大柄ながらかなり引き締まったタイトでシャープな音でジッター低そうです。さすがPCオーディオのDACメーカーが作ったDAPという感じではありますね。またUSB DACとしてオーディオクラス2のきちんとした設計がなされているのもポイントです。
Calyxのイ・スンモクCEOとCalyx M、右はマグネットボリュームを外したところ
M:useというコントロールソフトはLinuxベースです。これはAndroidのハイレゾ通らない問題を避ける意味もあります。またマグネット式のボリュームノブを採用しているのも面白く、これはスリットレスでごみが入らないようにするためです。USB DACとしても機能します。
Hidizs AP100も安いながら音いいです。正確系で特にハイレゾ曲の再生がとても良い感じでした。ロクサーヌとも良く合いました。
AP100
Biscuit+(7000円)とCookie(12000円)、CookieはBiscuitに液晶とFLAC対応がついたもの。Biscuit+は前モデルにシャッフル機能がついたもの。残念ながらFLAC対応はなし。
Biscuit+とCookie
またオヤイデさんのところではX5が出展されていました。思っていたよりはちょっと大きい感じです。
アユートさんのところではAK240のゴールドも展示されています。(ホワイトバランスとらずにすんません)
6.ケーブルの充実
2.5mmバランス規格が普及始めたのも今回のヘッドフォン祭のポイントです。
AK240自体も売れてますし、AK100IIやAK120II、またはGloveAudioのように他でも2.5mmバランスが採用されています。
2.5mm AKタイプのケーブルでは以下のものが目に留まりました。
(左)ALOのSXC24-IEM MMCX。43000円くらい。 (右)Beat AudioのSignal 、価格未定。2ピン。
Wagnusさんの2.5mm、Voskhod、Meridian、Proton
2.5mm - RSAタイプのインターコネクト。WagnusのProgress。
6FではEstronのLinum(ライナム)ケーブルのデモをやってました。これは新型のタングルレス(絡みにくい)タイプです。前のケーブルの弱点は絡み安いところだったのでよい改良です。
なぜJabenと別ブースかというと6Fでは日本のB2B代理店の人が担当してたからです(JabenはB2C代理店になります)。Estronの特徴は音をケーブルで変えるのをうたってることで、それを証明するのにこんなユニークなイヤフォン切り替え器を用意してます。
二組のケーブルが同時に入ってます。イヤフォンにはこんな感じで二組入ってます。Estronは細いけど強靭ということで思いっきり引っ張るデモもやってくれました。
タイムロードではHugoで便利に使える光ケーブルを展示していました。価格も安くなかなか音もよいと思います。ほかのアンプでも使えそうですね。
7. エントリークラスからステップアップクラスのイヤフォン事情
カスタムだけではなく、エントリーからミッド、ハイクラスの各クラスの通常のイヤフォンも充実してきています。
まず今回の注目は激戦区の5000円に投入されるShureのSE112です。215との違いはケーブルが固定でチップがラバーのみです。ケーブルは耳巻きではなくストレート装着を想定しています。Shureの黒フォームチップとか耳まき式の装着はIEMなみのものですが、本当に一般人にはなじみにくいと思いますのでよいことでしょう。ドライバー自体は215と似ていますがチューニングを変えてます。音は215の方がwarm感あり、112はややすっきりでしょうか。215譲りで音質もいいので今後が注目されます。
SE112
音茶楽さんでは新ブランド、茶楽音人(サラウンド)が紹介されていました。ブランドの差異は下記のようにまとめられています。Donguri-楽はドングリベースですがより安く、より元気でベースたっぷりです。これは価格を考えるとかなりオススメのように思います。
音茶楽さんのもうひとつの展示てはFlat4の外耳道によってチューニングが違うもの、Flat4-緋弐型(赤)とFlat4-玄弐型(黒)が展示されています。これは位相補正チューブの長さによる違いです。もともとFLAT-4があれだけスムーズな音を出せていたのは位相補正チューブの働きがあるのですが、その長さをユーザーの外耳道に応じて変えるというもの。ある意味カスタムですね。
Flat4-緋弐型(赤)とFlat4-玄弐型(黒)
聴き比べるポイントは高域サ行のきつさです。試してみると確かに違いますね。私は赤の方がより自然に感じられましたが、外耳道が長めということのようです。
これは実際にお店で試聴してどちらかを選んでください。とても面白い試みだと思います。
人気ブランドとなったDita AudioではスペシャルAnswerがありました。どうスペシャルかというとAK240のバランスに対応しています。これはぜひ製品版でもほしいところですね。
Balanced Answer
またオーディオテクニカの新機軸“DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS”を取り入れた新製品CKR10なども展示されていました。オーディオテクニカの音つくりのそつなさという点でこの新機軸があっているようにも思います。
CKR10
8. PCオーディオの最新事情
ヘッドフォン祭では新しいオーディオの波ということでPCオーディオも取り込んでいます。
フックアップさんではLynxのHiloとMacのサンダーボルト接続のデモをやってました。これすごく画期的だと思います。端的にいうとサンダーボルト接続ということはPCI接続と同じということです。いままでPCIボードを使っていたことがサンダーボルトケーブルで可能ということです。ケーブル経由でも実質ボードをさしたのと同じということは転送性能だけではなく、従来資産の両面で有利です。そこがLynxの強みでもありますね。 またサンダーボルト接続ということはPCI接続と同じということですからドライバーが必要です。
画像では上下同じHiloでわかりやすく展示していました。
Hilo自体の音もスタジオ向けというだけでなくオーディオリスニングにも向いている感じでした。これのオーディオ向けDACのみのバージョンが出るとよいんですけど。
Audivana Plusの次期バージョン(iTunesライブラリとAudirvanaプレイリストの統合版)はヘッドフォン祭のフェーズメーションさんブースで先行公開でした(Damienの許可をとっています)。一般にはまだ公開されてません。
AudirvanaとEPA007X
フェーズメーションさんの新ヘッドフォンアンプはEPA007の改良型です。電源が改良されてより押しが強く音が先鋭になっています。なかなかよいと思います。
PCオーディオ関係ではPS AudioのDirect Stream DACも注目です。ポール社長のブログにあったDSDがメインでDACチップ使ってないやつです。
自然で高精細な音です。ただ高価なのがネットかと思いますが、まずリファレンスクラスを出したいというメーカーの意向があるようで、今後DLIIIクラスの同様なDACを期待したいところです。
Direct Stream DAC
角田さんのネットワークオーディオ講座も開催されていました。かなり人が入っていて立ち見が出るほどでした。
*
しかしこのレポート書いていても大変で、9000字の大作となってしまいましたが、今回も盛りだくだんでした。ヘッドフォン祭の直前のポタ研でAK240とHugoというデカイネタを出してしまったんで心配していた面もありましたが、こうしてたくさん書くことがあるというのはこの世界が成熟しているということでしょうね。
今回はサンプラザに戻ったことで呪いが解け?晴天に恵まれました。出展社数は約110社、入場者数は2日で7000人ということです。青山より増えていますね。あの伝統の東京インターナショナルオーディオショウでさえ3日で9000人くらいですからすごい人です。海外ではCanJamが2000人くらいです。
次は10/25と26で同じ中野サンプラザで行うということ。すでに次回のタネも今回いくつかありましたので次回も楽しみなことです。
2014年05月11日
Astell&Kern、独ハイエンドショウで新型DAP AK120IIとAK100IIを発表へ
2014年05月08日
春のヘッドフォン祭2014の私的みどころ
さて、全世界が注目するところのヘッドフォン祭が今週末再び開催されます。場所は中野サンプラザですので注意ください。下記はフジヤさんの開催案内です。
http://www.fujiya-avic.jp/user_data/headphone_fes.php
今回の注目はまずカスタムイヤフォンですね、広い意味ではカスタムに近いTogo334のようなユニバーサルも含むと思います。
いくつも出ると思いますが、まずFitEar須山さんとこではこの前書いた謎のユニバーサルを始めネタも含んでいろいろ出ると思います。これは14F須山歯研ブースで。
そしてJH Audio ロクサーヌ、ロクサーヌユニバーサル、そして派生版のAKR03です。これは14Fミックスウエーブさんと14Fアユート(iriver)さんブース。ミックスウエーブさんではユニークメロディとか1964Earsもあるでしょう。(InEarは取り扱いがないということ)
それとHeadFiではロクサーヌのライバルとして言われることが多いNobleのKaiser 10(K10)も登場します。これはWagnusさんが展示してくれるそうです。日本でもこのロクサーヌVS K10の最高峰のライバル対決が聴けるというわけです。Nobleは他にもほぼ全部持ってくるようで、私的にはユニバーサルのNoble FR/PRで、スイッチ切り替え式のクロスオーバーを持つユニークなモデルが興味津々。他にも"Wizard"モールトン氏手製のワンオフユニットであるWizardモデルも来るようです(おそらくLot2の#1のやつ)。これは13FのWagnusさんブースで。机一つで大丈夫かな。
こうしてJH AudioのジェリーとFitEarの須山さんの人気東西両雄に個性派NobleのWizard(ジョン・モールトン)がからんでくる、っていう構図が面白いところだと思います。
それにバリエーションを加えてくれるのが前に書いたJM Plusです。Rhines、Clear Tune、Custom art、Roothとまさに多彩な世界各地のカスタムが百花繚乱です。こちらは14Fです。あと14Fにはヘッドフォン祭は初というくみたてlabさんも居ますね。
人気上昇株のハイレゾDAPでも新しいモデルがいろいろ見られそうです。15FのJabenでは話題のHidizs AP100、Jaben新作のCookie、Buiscuit+、またCalyx Mも来ることになりました。(ただしCalyx Mはおそらく土曜の午後です)
オヤイデさんのところではX5でしょうか。DX90はだれかが持ってくるでしょう。
また直前にはいったAK用DAC/AmpのThe Grove A1も世界初披露で注目ですね。
またiFIではこれも世界初披露というMicro iDSD "Meaty Monster"が展示されるようです。これはクラウドデザインの結論でしょうか、注目ですね。iFI Audioは13Fトップウイングさんブースです。
タイムロードさんではChordのHugoに向いた短い光ケーブルを出展します。6Fフラワーです。
ヘッドフォンではフォステクスの新RPとHiFimanのHE560のわりと入手しやすそうな価格での平面型対決が興味を引くところでしょうか。フロアも同じくフォステクスは6F、HE560は6F HiFimanのブースで。なおHE560は13Fトップウイングブースとは別になるようです。HM901などは13Fです。
また平面型では昨年発表されたOppo PM-1の製品版を14Fのエミライブースで展示するそうです(2テーブルの一つをOppo用とするそうです)。
また6FにはLinum by EstronとしてEstronケーブルが独自ブースを持ちます。
私も日本語カタログつくりに手伝ってたんですが、Estronから偉い人が来て新モデルも持ってくるかも。これはEstronの弱点である絡みを防止するものになります。
またイヤフォンではエントリーでShureからSE112が登場します。イヤフォンの激戦区に投入されるShureの新作に期待ですね。Shureは11Fです。
また音茶楽さんからは位相補正チューブの長さを違えたモデルを用意したというFlat4-玄弐型、Flat4-緋弐型など新作が展示されます。こちらは14Fです。
Dita AudioはAnswer TrueのゴールドバージョンとTrueのケーブルを使ったインターコネクトケーブルを出展します。来場特典もあるかも。Dita Audioは14Fです。
あとは評論家の角田さんが15Fに独自ブースを持ってオーディオイベントをするようなのでこちらもどうぞ。
また今回もHeadFiメンバーも来てくれ、日本メンバーのほかにHeadFiのリーダーであり主席管理者のJudeも来てくれます。
今回はカスタムIEMなどマニアックなところにポイントがあるように思いますが、「原点回帰」というテーマにはあっているかもしれません。
そういう意味ではヘッドフォン祭の当日に発売される音元出版さんの「プレミアムヘッドフォンマガジン Vol2」に私がヘッドフォン祭の歴史について、キーマンのフジヤエービック(Part3)の谷口店長へのインタビューを元に記事を書きました。ヘッドフォン祭の歴史とともに、この隆盛のヘッドフォン業界の成立を知るのにとても興味深い内容になったと思います。ぜひ手にとってお読みください!
http://www.fujiya-avic.jp/user_data/headphone_fes.php
今回の注目はまずカスタムイヤフォンですね、広い意味ではカスタムに近いTogo334のようなユニバーサルも含むと思います。
いくつも出ると思いますが、まずFitEar須山さんとこではこの前書いた謎のユニバーサルを始めネタも含んでいろいろ出ると思います。これは14F須山歯研ブースで。
そしてJH Audio ロクサーヌ、ロクサーヌユニバーサル、そして派生版のAKR03です。これは14Fミックスウエーブさんと14Fアユート(iriver)さんブース。ミックスウエーブさんではユニークメロディとか1964Earsもあるでしょう。(InEarは取り扱いがないということ)
それとHeadFiではロクサーヌのライバルとして言われることが多いNobleのKaiser 10(K10)も登場します。これはWagnusさんが展示してくれるそうです。日本でもこのロクサーヌVS K10の最高峰のライバル対決が聴けるというわけです。Nobleは他にもほぼ全部持ってくるようで、私的にはユニバーサルのNoble FR/PRで、スイッチ切り替え式のクロスオーバーを持つユニークなモデルが興味津々。他にも"Wizard"モールトン氏手製のワンオフユニットであるWizardモデルも来るようです(おそらくLot2の#1のやつ)。これは13FのWagnusさんブースで。机一つで大丈夫かな。
こうしてJH AudioのジェリーとFitEarの須山さんの人気東西両雄に個性派NobleのWizard(ジョン・モールトン)がからんでくる、っていう構図が面白いところだと思います。
それにバリエーションを加えてくれるのが前に書いたJM Plusです。Rhines、Clear Tune、Custom art、Roothとまさに多彩な世界各地のカスタムが百花繚乱です。こちらは14Fです。あと14Fにはヘッドフォン祭は初というくみたてlabさんも居ますね。
人気上昇株のハイレゾDAPでも新しいモデルがいろいろ見られそうです。15FのJabenでは話題のHidizs AP100、Jaben新作のCookie、Buiscuit+、またCalyx Mも来ることになりました。(ただしCalyx Mはおそらく土曜の午後です)
オヤイデさんのところではX5でしょうか。DX90はだれかが持ってくるでしょう。
また直前にはいったAK用DAC/AmpのThe Grove A1も世界初披露で注目ですね。
またiFIではこれも世界初披露というMicro iDSD "Meaty Monster"が展示されるようです。これはクラウドデザインの結論でしょうか、注目ですね。iFI Audioは13Fトップウイングさんブースです。
タイムロードさんではChordのHugoに向いた短い光ケーブルを出展します。6Fフラワーです。
ヘッドフォンではフォステクスの新RPとHiFimanのHE560のわりと入手しやすそうな価格での平面型対決が興味を引くところでしょうか。フロアも同じくフォステクスは6F、HE560は6F HiFimanのブースで。なおHE560は13Fトップウイングブースとは別になるようです。HM901などは13Fです。
また平面型では昨年発表されたOppo PM-1の製品版を14Fのエミライブースで展示するそうです(2テーブルの一つをOppo用とするそうです)。
また6FにはLinum by EstronとしてEstronケーブルが独自ブースを持ちます。
私も日本語カタログつくりに手伝ってたんですが、Estronから偉い人が来て新モデルも持ってくるかも。これはEstronの弱点である絡みを防止するものになります。
またイヤフォンではエントリーでShureからSE112が登場します。イヤフォンの激戦区に投入されるShureの新作に期待ですね。Shureは11Fです。
また音茶楽さんからは位相補正チューブの長さを違えたモデルを用意したというFlat4-玄弐型、Flat4-緋弐型など新作が展示されます。こちらは14Fです。
Dita AudioはAnswer TrueのゴールドバージョンとTrueのケーブルを使ったインターコネクトケーブルを出展します。来場特典もあるかも。Dita Audioは14Fです。
あとは評論家の角田さんが15Fに独自ブースを持ってオーディオイベントをするようなのでこちらもどうぞ。
また今回もHeadFiメンバーも来てくれ、日本メンバーのほかにHeadFiのリーダーであり主席管理者のJudeも来てくれます。
今回はカスタムIEMなどマニアックなところにポイントがあるように思いますが、「原点回帰」というテーマにはあっているかもしれません。
そういう意味ではヘッドフォン祭の当日に発売される音元出版さんの「プレミアムヘッドフォンマガジン Vol2」に私がヘッドフォン祭の歴史について、キーマンのフジヤエービック(Part3)の谷口店長へのインタビューを元に記事を書きました。ヘッドフォン祭の歴史とともに、この隆盛のヘッドフォン業界の成立を知るのにとても興味深い内容になったと思います。ぜひ手にとってお読みください!
2014年05月07日
AK120をすっぽり包むDAC内蔵バランスアンプ "The Glove"登場!
ヘッドフォン祭の直前ですごい製品の情報がJabenからはいって来ました!世界初公開です。
The Grove(ザ・グラブ) - GloveAudio A1は名の通りにAK120を覆うように装着するDAC内蔵のバランス駆動対応のヘッドフォンアンプです。ケーブルはありません。前のHP-P1のプロトにも似てますね。
現時点で多くの情報はないのですが、光端子に装着してDACを使うようです。DACはSaberと言うのでESSですね。192/24対応です。AKシリーズを強化するパワードスーツにも見えます。
注目はヘッドフォン出力でKobikonn 4pin コネクタとAK式の二つのバランス出力付きです。KobikonnとはいわゆるRSAタイプのポータブル用のバランス端子です。この二つのおかげでポータブルのバランス駆動についても悩む必要は少ないでしょう。AK120ユーザーがAK240の資産である2.5mmバランス端子を使えるようになるのも画期的です。電池は充電池のようです。
GloveAudio は Jaben が全世界配給権をもっていますので、日本でも販売します。ただルートなど詳細はわかりません。価格の目安は6万から7万円でその前半くらいにしたいそうですが、基本的には未定です。
デモ機はヘッドフォン祭にJabenが持ってくると思います。
またJabenではたくさんのDAPを持ってきます。
最近話題となって来たHidizs AP100(下左)もあります。
またCookie(下右)はディスプレイがついて、flacをサポート、音も磨きをかけたそうです。ただハイレゾサポートはないようです。
Biscuit+はシャッフルを付けた他は変わっていませんが、もともと音はいいのでこれも楽しみです。
ヘッドフォン祭では15FのJabenブースへGO!
*追記
Jaben JapanのFacebookにアップされました。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=439427949526792&id=248060828663506
Analog Squared Paperとのコラボアンプも面白そうですね。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=439423072860613&id=248060828663506
The Grove(ザ・グラブ) - GloveAudio A1は名の通りにAK120を覆うように装着するDAC内蔵のバランス駆動対応のヘッドフォンアンプです。ケーブルはありません。前のHP-P1のプロトにも似てますね。
現時点で多くの情報はないのですが、光端子に装着してDACを使うようです。DACはSaberと言うのでESSですね。192/24対応です。AKシリーズを強化するパワードスーツにも見えます。
注目はヘッドフォン出力でKobikonn 4pin コネクタとAK式の二つのバランス出力付きです。KobikonnとはいわゆるRSAタイプのポータブル用のバランス端子です。この二つのおかげでポータブルのバランス駆動についても悩む必要は少ないでしょう。AK120ユーザーがAK240の資産である2.5mmバランス端子を使えるようになるのも画期的です。電池は充電池のようです。
GloveAudio は Jaben が全世界配給権をもっていますので、日本でも販売します。ただルートなど詳細はわかりません。価格の目安は6万から7万円でその前半くらいにしたいそうですが、基本的には未定です。
デモ機はヘッドフォン祭にJabenが持ってくると思います。
またJabenではたくさんのDAPを持ってきます。
最近話題となって来たHidizs AP100(下左)もあります。
またCookie(下右)はディスプレイがついて、flacをサポート、音も磨きをかけたそうです。ただハイレゾサポートはないようです。
Biscuit+はシャッフルを付けた他は変わっていませんが、もともと音はいいのでこれも楽しみです。
ヘッドフォン祭では15FのJabenブースへGO!
*追記
Jaben JapanのFacebookにアップされました。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=439427949526792&id=248060828663506
Analog Squared Paperとのコラボアンプも面白そうですね。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=439423072860613&id=248060828663506
2014年05月04日
JH Audioのカスタムイヤフォン、ロクサーヌ(Roxanne)レビュー
Roxanne(ロクサーヌ)はジェリーハービー率いるJH Audioのカスタムイヤフォン(IEM)の新世代フラッグシップモデルです。実のところ、このカスタムイヤフォンの世界自体がジェリーの創始したものであり、ロクサーヌにはその歴史とノウハウの蓄積が詰まっています。
そこでまずその歩みからロクサーヌに至るまでを昨年カスタムブックのインタビューをしたときの記録から明らかにしていきます。
JH Audio Roxanne Custom
* ロクサーヌへの道
ジェリーハービーはミズーリ州のセントルイスに生まれました。空手を教えていた時にあるミュージシャンと知り合いとなり、以後深く音楽業界にかかわっていくことになります。やがてサウンドエンジニアの道を歩んだ彼はバンドのライブサウンドミキシングの世界に入り込んでいきました。そしてタスコサウンドでトップエンジニアたちとの交流の中から技術力を身につけていき、デビッド・リー・ロスやヴァンヘイレン、キッス、リンキンパークなど一流ミュージシャンのサウンドを担当しています。
そして1995年、ヴァン・ヘイレンのライブサウンドの担当をしていた時、バンドのドラマーであるアレックス・ヴァンヘイレンにインイヤーモニター(以降IEM)を使用してもらう機会を得ました。当時のIEMは未成熟でメーカーもイヤフォンよりもアンプ機材のほうに気を取られていたといいます。アレックスはそのIEMが気に入らず、ジェリーにもっと良いものを探すかあんたが作ってくれよ、といったそうです。その言葉をきっかけにジェリーはイヤフォンの開発に取り組むことになり、その時に生まれたイヤフォンはのちにUE5になりました。
アレックスはそれを気に入ってくれ、他のミュージシャンもその噂を聞きつけてジェリーに依頼するようになっていきます。そこでジェリーはIEMを商売にすることを思いつきます。Ultimate Earsという名前はツアーの最中に生まれ、それがジェリーの会社の名前となりました。
やがてUE5は業界のスタンダードになり、エアロスミスがグラミー賞授賞式の演奏でも使用したんですが、ジェリーはそれを見て感銘したといいます。ジェリーがUEの製品で気に入っているのはTriple.Fi 10 proだそうですが、やはり一番初めに生まれたUE5は格別だそうです。
Shure E5c
この時にシェルの制作をしていたのはWestoneでした。Westoneはヒアリングエイドでは老舗ということもあったんでしょう。
ShureがIEMの開発をするという際にもジェリーが協力して、UE5はShure E5のベースとなりました。そのさいにもWestoneがシェルの設計をしていたといいます。WestoneはUEと別れた後にShureのユニバーサルを作成していた技術を応用してUMシリーズを作成することになります。
これがIEMの誕生と、それにまつわる我々のよく知るIEMの老舗であるUE、Shure、Westoneの関係です。
その後UEは大きくなっていき、ジェリーのコントロールも利かなくなっていきます。そのためTriple.Fiの開発も会社ともめながら隠れてやっていたほどだったそうです。Triple.Fi 10 proはそれまでのカスタムを母体としていないユニバーサル独自設計というユニークなものでした。
やがてジェリーは大きくなりすぎたUEを去ることになります。設計者が現役のプロエンジニアという起業精神を守るために。
これはAppleとスティーブジョブスの関係を想起させますね。アメリカではベンチャー精神と大企業のはざまではこうしたことはよくあるのでしょう。
JH Audio JH13
その後ジェリーは自らの会社であるJH Audioを起業します。キャッチフレーズはHear No Evil。これはEvil(悪)を悪い音に例えて、Hear No Bad-Audio(悪い音は聴くな)と言う意味でつけたそうです。(ちなみにHear no evil, Speak no evil, See no Evilで日本語で言うところの、みざる・きかざる・いわざるの意味になる)
そして記念すべき初代フラッグシップであるJH13を発表します。これは2009年のHeadFiのCanJamでのことです。JH13は片側6基のドライバーを持つ画期的なIEMでした。3Wayですが同じ帯域に二個のドライバーをタンデム配置することで、一つのドライバーの負荷を減らします。これはライブ経験の多いジェリーのPAを応用した発想によるものです。
このJH13をきっかけに、IEM業界はさらなるマルチドライバー化に動かされていくことになります。
JH Audio JH16
次にJH Audioが発表したのはJH16です。これはライブパフォーマンスを行うドラマーがステージ上で消えやすい低域を補完するために開発されました。そのため低域ドライバーを4基タンデム(クワッド)配置して片側8基としています。ひとつの帯域にドライバーを4基配置するという発想はこのままロクサーヌに引き継がれます。また消えやすい低域を補完するために低域を増強するという考え方もロクサーヌの可変ベース機構につながります。
JH Audio JH3Aと専用JH16
この同じ帯域でのドライバーの複数配置の他にもうひとつジェリーが注力した特徴があります。それは位相の適正化です。バランスド・アーマチュアドライバーは音の細かな再現性には秀でていますが、一つのドライバーの帯域が狭いため、広帯域化するには低音や高音を別々に担当させ、マルチドライバーとすることが一般的です。
しかしながらマルチドライバーになれば、ドライバーの発する音はバラバラに耳に届くことになり時間的な(位相の)ズレが生じて音がぼけたり立体感が喪失したりする原因となります。
それを根本的に解決しようとしたのが帯域ごとにアクティブクロスオーバーを持つJH3Aです。これはもともとジェリーがUEに居た時代の特許でしたが、ジェリーがUEを離れたことで、彼がその特許を使えなくなるという皮肉なことになり、完全には実現できませんでした。
そこでパッシブに位相の問題を解決しようとしたのがFreqPhaseです。さきに書いたように低音域、中音域、高音域とドライバーが分かれている時はそれぞれから出た音に時間特性の違いが起きます。低域から出た音は遅れ、高音域から出た音は早く着きます。それをイヤピースのところで同じにするために長さを調整して音導菅を作り、同時に到達するようにしたものです。
普通は音が中心から5度ほどずれてしまいますが、これによりヴォーカルもドラムのキックもぴったりと中心に会うようになります。また位相に問題があると音が滲んでしまいますが、その問題も解決できます。
そして、これらのFreqPhase、4基のドライバー、ベースの補強という考え方を総括したものとして、最新のフラッグシップ、ロクサーヌが生まれたというわけです。
ロクサーヌはこのようにジェリーとIEMの長い道のりの上に設計されたものです。
JH Audio Roxanne
* ロクサーヌの特徴
ロクサーヌはTHE SIRENS SERIESという新しい製品系列のフラッグシップとして位置づけられたカスタムイヤフォンです。またユニバーサル版も用意されています。AK240用のAKR03モデルにはAK240用のバランスケーブルも付属します。
THE SIRENS SERIESという名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(セイレーン)から来ています。これはいままで数字で名前を付けてきて、それに飽きてもっと楽しくセクシーな名前を付けたかったことによるそうです。サイレーンとは声の魅力で船乗りたちを岩に引き寄せてしまう一種の魔女です。もともとはギリシャ神話ですけど発音が問題なので英語名にしたそうです。
そのサイレーン姉妹の長女がロクサーヌというわけです。これは女性の名まえとしてはイヤフォンによく合うからということです。技術的なものよりセクシーな名前を付けるというのが面白いだろう、とジェリーは語っていました。
下記はJH Audioのロクサーヌ商品紹介ページです。
http://www.jhaudio.com/content/sirens-roxanne
ジェリーはロクサーヌは正しい位相で広帯域を誇るフラッグシップにふさわしいIEMと言っていました。この一言がロクサーヌの特徴を端的に物語っています。
ロクサーヌの特徴とは以下のものです。
1. 片側で計12ドライバーを搭載した「soundrIVe Technology」を採用
帯域特性、周波数特性という点では片側で計12ドライバーという点がポイントです。
ロクサーヌは低域、中音域、高音域に分かれた3Wayですが、各帯域ごとに4基のBAドライバーが採用されています。これは1ユニットで2個ドライバーのデュアルユニットを2ユニット組合わせているようです。それが帯域ごとに3組あるので計12基というわけですね。
ジェリーはロクサーヌはイコライゼーション無しに23KHzまで周波数特性が延びた初めてのイヤフォンだと語っています。それはこの帯域ごとの4基のドライバーの機構によって達成されたといいます。
JH16では4基の低域ドライバーをすでに採用していたのですが、ロクサーヌではそれを中音域と高音域にも拡張したわけです。これには内部配線にも工夫が必要でした。
2. 各帯域の位相を極限まで正確に制御した「FreqPhase」を採用
位相特性はジェリーのもうひとつのテーマです。位相は各ドライバー間の音の遅れ・不揃いなどによるもので、位相特性を改善することで音のイメージングやフォーカス(音のピント)を改善します。
ロクサーヌ開発においては、先に述べたFreqPhaseとその役割においても大きな発見があったと言います。この技術をいち早く応用したロクサーヌの位相はかなり正確ということですね。
3. 新開発のケーブルとロック式プラグを採用
独自開発した4 pinコネクターは、アーティストがライブパフォーマンス中でも耐えられるように設計されたものです。
いままでの2ピンプラグには抜けやすくイヤピースをなくしやすいという欠点がありました。スタジオでミュージシャンがイヤピースをなくすというのは一大事であり、それを避けるためには、もっとしっかりとしたプラグを持つケーブルが必要だったのです。ジェリーが作るものはこのようにまずプロユースを前提とした頑強なものですが、それらは同時にオーディオファイルでももちろんうまく使えるというわけです。
この4ピン・コネクターは従来のものより頑丈である上に、低中高の回路の信号線がそれぞれ独自に本体に接続されているので、コントロールできる範囲がより広くなっているのも特徴です。このため後述の可変ベース機構も可能となりました。
このケーブル用パーツは技術的にオープンにする予定で、WhiplashやMoon Audioなど他のメーカーにもパーツを提供して作れるようにするつもりだということです。
4. 可変ベース調整機構を採用
ロクサーヌはまた、低域用ドライバーをフラットから+15dBまで調節できる点でも初めてのイヤフォンです。だからどんな低域でもリスナーは自由に調整をすることができるわけです。
5. カーボン製のシェルをオプションとして採用
最近ではイヤフォンにチタンなどいろいろな素材も使われてきていますが、反面みな似たり寄ったりになってきています。
ジェリーはカーボンは金属材よりセクシーだし、ほかのメーカーとの差別化になると言っています。これは音質面よりは単にデザインの問題ですが、軽くて強固という利点もあります。
また航空機にも使用される頑丈なアルミニウムにカーボンを使用した高級感あるオリジナルキャリングケースも用意されています。
* 耳型取得 (東京ヒアリングケアセンター大井町店)
まずカスタムIEMの注文は耳型(インプレッション)の取得から始まります。今回は東京ヒアリングケアセンターの大井町店にお願いしました。
下記はホームページです。
http://tokyohearing.jp
ここは大井町のNikon光学通り(大井町光学通り)を少し行ったところにあります。大井町店は行きづらいですが、こちらの方が予約は取りやすいという利点もあります。
東京ヒアリングケアセンターは青山店の方が有名ですが、もともとは大井町店がはじまりで、ここのおやじさんの息子さんが青山に店舗を拡張したということです。ここも超有名アーティストのインプレッション採取などがあり、青山という土地柄が大事でもあるのでそちらにも店舗を増やしたということです。この大井町店のおやじさんは某オーディオメーカーSのOBで、かなりオーディオ系にも詳しいのでオーディオ話で盛り上がってしまいました。またこの方はこの道19年というベテランでもあります。ただそれでも人の耳は千差万別なので日々勉強と話していました。
プロのイヤモニ経験も豊富なのでプロフェッショナルという点で耳型採取に関しては安心だと思います。実際に技術的にも丁寧に対応してくれました。耳の毛の立ち具合で耳型の遮音性も異なるようで、そうした点や個人の耳の左右差などかなり細かいところまで注意を払って取ってくれました。(ただしここは採取した耳型についてはウエブへの写真アップは禁止という注意事項があります)
またどこでも同じですが耳型採取に関しては下記2点を厳守願います。
1. 自分で耳型を取らない
2. 行く前に耳掃除をする
注文は国内代理店ミックスウェーブさんのホームページをご覧ください。
http://www.mixwave.jp/audio/jhaudio/roxanne.html
またこちらはフジヤさんの販売ページです。
http://fujiya-avic.jp/products/detail57784.html
いまはそれなりに時間がかかると思いますので納期は確認した方がよいかもしれません。
* 到着とファーストインプレ
だいたい発注から4カ月くらいで手元に届きました。注文したのはフルカーボンシェルにロクサーヌのロゴ入りのオプション設定です。フルカーボンシェルはフェイスプレートだけではなく、シェル全体をカーボンで成型するものです。
フルカーボンシェルモデルは航空機グレードアルミとカーボンの立派なケースに入ってきます。
しかしロクサーヌのカーボンシェルモデルの存在感は感動的です。思わず興奮気味にTwitterで何件か写真を撮って連続tweetしてしまいました。まるでモデル撮影みたいにずっと写真を撮っていたくなった、とその時に書きこんでますが、まさにジェリーの言うとおり、ロクサーヌはセクシーです。私もいくつもカスタムIEMを注文してきましたが、出来をみて感動したというのははじめてですね。例えるとAK100とAK240のようなもので、質感と高級感で他のカスタムIEMと比べてもまるで別格に思えます。
ちょっと高いけれどもロクサーヌをオーダーするときはカーボンオプションをオススメします。所有感・もつ喜び満足感がちがうと思います。
良くライカや時計なんかでも「持つ喜び」って表現がありますが、カーボンロクサーヌとAK240で思うのはポータブルオーディオで言われることのなかった持つ喜びという言葉が当てはまることです。従来のハイエンドオーディオにはそれがあったと思います。
ポータブルオーディオが文化という面でもそうした先達にならんだ文化の成熟に来たかという感を新たにしますね。ライカも外見だけでなく100年経ってもいまだに画質でもカメラ世界のトップクラスです。そうした外見と中身が高い次元で調和したレベルの高さがポータブルオーディオでも出てきたと思います。
ちなみにカスタムIEMとしてのフィットもピッタリです。これはインプレッションの東京ヒアリングケアセンターとJH Audioの両方がよいということですね。
改良されたケーブルはかなり太く、これまた存在感があります。いまのところまだ交換ケーブルは他のメーカーから出ていませんが、期待したいところです。またロクサーヌは標準ケーブルでも音質は悪くないと思うので、この標準ケーブルのAK240バランス版が早くほしいところです。
またロクサーヌで画期的なのはL字タイプのプラグなのにステムが長いんでHugoでもミニプラグにちゃんとはまるところです。
* 音質検証と考察
試聴では主にAK240を使いました。断りがない限りはAK240での感想です。
まず思ったのは試聴で聴いた印象からだいぶ改良されたということです。特に高音域のレスポンスです。ロクサーヌは昨年あたりは試聴ユニットで何回か聞きました。試聴機ではやや高域が出ないという感もありましたが、この製品版のロクサーヌはそうしたことはなく、鮮明でのびやかな高音域が感じられます。これは23kHzまで伸びることをうたった主張通りに思えますね。このことはワイドレンジ感・広帯域感につながります。
AK240とRoxanne
全体的な音質のレベルはかなり高く、フラッグシップとしての余裕が感じられます。直前まで聴いていたそれまでのフラッグシップモデルであるJH13やJH16の音質をエージングゼロの時点でも軽く凌駕しています。JH13やJH16はリケーブルしていて、ロクサーヌは標準ケーブルなのに、です。
JH13(標準ケーブル・non-FP)とロクサーヌを聴き比べてみると、JH13にしたときに音空間が小さく感じられます。またロクサーヌでは楽器がより明瞭に分離されていて位置関係が団子にならずに聞き取れます。ロクサーヌは音が濃いというより音が豊かという感覚でしょうか。それと細かいところでロクサーヌのほうがきつさが少なくなめらかな点も感じられますが、これはケーブルの違いもあるかもしれません。また全体に音楽をより正確に再現しているように感じられます。
周波数特性的にはJH13に近いと思います。フラットに近く低域がやや強調されているという感じでしょうか。これは可変ベースを調整しないデフォルトでの印象です。一般的にはデフォルト位置でベースレスポンスも十分に得られていると思います。以下音の印象は可変ベースのデフォルト位置によるものです。
ロクサーヌで聴いてぱっと一番初めに感じることは音空間の広さとスケール感の豊かさです。これはエージングされてなくてもそう思いますが、この音空間の再現力が優れているのはFreqPhaseによるものではないかと思います。私のJH13は最も初期のものなのでFreqPhaseではありませんから一層そう思のでしょう。ロクサーヌにはJH13のこじんまり感がなく、ヴォーカルの口の大きさとか、楽器配置の立体感などもフォーカスがあったピントがはっきりしてる感があります。おそらくこれで楽器の音像の解像感もエッジが立っていてより高く感じられるのだと思います。
これは上で書いたワイドレンジ感と合わせてオーケストラものを聴くときにスケール感豊かに再生できます。またジャズトリオでは切れのあるライブが再現できます。
音色の良さ、正しさ、描き分ける色彩感もロクサーヌの良さです。楽器の音の明瞭感が高く、高音域のレスポンスがよいこととあいまってとてもクリアでみずみずしい感じがします。全体的な音の濃さと濃密感はJH13に似ていて、1964Earsなどに感じられる軽いものではありません。楽器の音色はリアルで脚色なく音色の美しさを堪能できます。このリアルな感覚は解像力の高さと関係していて、情報量がとても高いために楽器の再現がリアルであると感じるのだと思います。
音の豊かさはアコースティックで複雑な要素をもった楽曲でよくわかります。単に濃いというより色彩感の描き分けに優れていて、音色がリアルです。赤ん坊の鳴き声が効果音で入った曲では思わずその方向に振り向いてしまったほどです。方向までわかったというのはFreqPhaseの威力でしょう。
様々な楽器が紹介されるマイクオールドフィールドのチューブラーベルズ後半パートの楽器音も単にきれいとかではなく、いままで気がつかなかったくすんで響きれない金属質の音色までわかります。ヴォーカルの声質も上質です。
このようにスケール感よく、JH Audioらしい音の密度感も濃いところもさらに磨かれ、AK240の音がさらに良くなるのが感じられます。AK240と合わせると掌に50万円近くの機器をにぎっていることになりますが、それに見合う音の豊かさがあります。
また、個人的に思うロクサーヌのポイントは鳴りの良さだと思います。
音が濃いと書きましたが、JH13的なやや暗さはなく、軽快感があります。発音体が軽やかによく動くという感じです。かといって音自体は1964的な軽さではなく、濃密だが軽快という相反する要素の両立も感じられます。たとえば1964 V6SとJH13を比べた時のようなJHの重厚さは感じられるが、暗いという印象ではなく明るくはつらつとした方にやや振られている感じです。
鳴らしやすいゆえにソース機器の性能を120%出しきれて空気に伝えているという感じが味わえます。能率が高いというのもありますが、それより「鳴りが良い」と言うオーディオ用語をあてはめる方があってると思います。
これは理由の一つには4x4x4のタンデム(クワッド)ドライバー配置が利いていると思います。同じ帯域に複数のドライバーを配する手法はジェリーがUE11で低域デュアルを採用した時から試行していたようですが、二個のドライバーを採用することでヘッドルームに余裕ができて歪みを減らすことが出来るとジェリーから聞きました。
これは歪みが少なくリアルな楽器の音色再現ができるということもあるし、負担が減ることによる余裕が鳴らしやすさにもつながると思います。それを1帯域ドライバー4つにまで拡張したのがJH16の低域だし、それを中音域と高音域にまで適用したのがロクサーヌだとジェリーは言っていました。こうした並列(タンデム)のドライバー駆動はジェリーが長年携わってきたライブステージでのPA運用からもノウハウを得ているのでしょう。これによりロクサーヌはJH13より軽く明るく動くようになっているのだと思います。
そのため、ロクサーヌはアンプ二段重ねのような本格的なポータブルシステムの音を受け止められケーブルの微妙な違いまでよく再現するだけではなく、iPhone直やハイレゾDAPのようなシンプルなシステムでもその能力を発揮します。
この点で特筆すべきはやはりさきにも書きましたがAK240との相性の良さでしょう。AK240とロクサーヌの両方の高い性能がより高めあい、磨きあいます。音的にもきつさは少なく、上質であることをうかがわせます。ここはバランス再生をそのうちぜひ試したいところです。
AK100MKIIとも相性よく再生ができます、やはり音が美しくバランスが良いのでかなり上質な感覚があります。
これは須山さん曰くですが10-12kHzをいかに伸ばすかがイヤモニ設計の一つのポイントだそうです。須山さんは得意のチタン加工技術によるチューブでそれを稼いでいくようです。
作り手によってイヤモニもさまざまな考え方があると思いますが、ドライバーを二基にすれば3dBあがり、より高域特性を稼ぐことができます。また位相を揃えることで原音に揃えるのがジェリーの考え方なんでしょう。複数ドライバーで一つのドライバーの負担を減らすともども、PAの経験がベースになっているようです。23kHzをうたうロクサーヌはそこから始まっていると思います。
* ロクサーヌの新機軸
ロクサーヌではケーブルが刷新されたとともに可変ベース機構と新型プラグが導入されました。可変ベース機構は左右独立の小さなダイヤルを付属のマイナスドライバーで調整するものです。デフォルトでは中央よりややベース強めになっているように思います。左方向に回すと低域が減少しますが同時によりすっきりとした音再現になるように思います。反対に回すと低域が増すとともによりアグレッシブになるように思います。EstronケーブルのVocalとBaXの違いにも似ています。同じような考えでケーブルのインピーダンスを変えるんでしょうか。単に低域を増減するというよりも、標準のロクサーヌをもっとモニターライクにもできますし、もっとロックポップ向けにもできるという感じです。
プラグは今回の目玉の一つです。いままでの2ピンと呼ばれるカスタムのプラグは脆弱なものでしたが、ロクサーヌではロック機構がついてより確実に止められるようになりました。これもジェリー曰く「私の作るものはすべてプロ前提で作られる」ということです。
ロクサーヌの発売された初期のころにここの部分が弱いといった批判が出ていたこともあるのですが、いまのものは強化されています。それにしても力を変な風にかけすぎてはいけないということで、ジェリーが下記のYoutubeに正しいプラグの着脱方法についての説明をしています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZBCRR7oRM6s
それと付属品としてカスタム用のコンプライフォームがついてきました。JH Audio向けのOEM品となっています。カスタムの隙間にいれることでさらに密着性を高めるというものです。いまひとつ低域がでないというときには使ってみるのもよいかと思います。
* まとめ
マルチドライバーIEMのドライバー数は片側2個か3個から、最近は10個、12個と大幅に増えてきています。これはあたかもデジカメの画素数競争のようなインフレーションにも見えるかもしれません。しかし、それにはさまざまな理由と方向性があると思います。
たとえばNobleのK10のように10ドライバーがあるが2個ずつデュアルは同じ帯域でペアごとには違う帯域を受け持つというものもありますし、ロクサーヌのようにデュアルをさらにペアにして帯域は増やさずに並列配置するドライバー数を増やすという考え方もあります。それはひとえに設計者の思想によるものです。
ロクサーヌの良さはさまざまな言葉で表現できます。空間の広さ・密度感・解像力・情報量の豊かさ・音色再現性の高さ、などです。しかしながらそのポイントは鳴りの良さと正確な位相特性にあり、それが優れた空間表現力や音の再現力の高さを実現しているのだと思います。
これらは一帯域に複数のドライバーを配し、位相を正確にするFreqPhaseを採用するということで、JH13のタンデムドライバー、そして同じ帯域に多くのドライバーを並列で使うというPAの発想とそれを拡張したJH16の4基拡張(可変ベースにもつながる)、FreqPhaseモデルの位相適正化、そしてJH3の試行の線の延長にあるものといえます。いわばいままでのジェリーのイヤモニ制作とライブステージエンジニアとしての膨大な経験とノウハウの集大成と言えるでしょう。
つまりロクサーヌはイヤモニの歴史を作ってきたジェリーハービーの長い経験に裏打ちされたもので、他ではまねできないような高い完成度を誇っていると言えます。
JH Audioはジェリーがやりたいことをやるための会社です。そのためにさきに書いたように大企業化したUEを辞めてまで自分の会社を持ったわけです。将来の計画について聞いた時も、適度にぼやかしながら、うちは小回りの効く会社だから柔軟にいろいろ開発できるよ、とも言っていました。
JH Audioについてはカスタマーサポート・納期で不満の声も聞かれますが、JH Audioのシェアは全米で活動するバンドのかなり多くであると聞いています。そのユーザー数の多さと、小回りの効く小さな会社で居続けるという両立をジェリーは試行錯誤しているのでしょう。
そうまでして頑張る理由についてジェリーはこう言います。
「つまるところ、私たち誰もが音楽を愛しており、自分が設計したイヤフォンを通して音楽を聞いたリスナーが良い気分になったり、感動を得られたりすれば、私の使命は達せられたことになる。」
イヤモニの神様であるジェリーハービーと、その集大成ともいえるロクサーヌ、それはユーザーからの支援が結実したものとも言えます。そしてジェリーはインタビューの最後にこう言ってくれました。
「ミュージシャンでもない私自身がファンを持つというのは光栄なことだ。私も彼らを失望させないような良い製品を作っていきたいね。そしてユーザーからの厚い支持のお陰で、何よりも自分がやりたいことをさせてもらっている。本当にありがとう!」
そこでまずその歩みからロクサーヌに至るまでを昨年カスタムブックのインタビューをしたときの記録から明らかにしていきます。
JH Audio Roxanne Custom
* ロクサーヌへの道
ジェリーハービーはミズーリ州のセントルイスに生まれました。空手を教えていた時にあるミュージシャンと知り合いとなり、以後深く音楽業界にかかわっていくことになります。やがてサウンドエンジニアの道を歩んだ彼はバンドのライブサウンドミキシングの世界に入り込んでいきました。そしてタスコサウンドでトップエンジニアたちとの交流の中から技術力を身につけていき、デビッド・リー・ロスやヴァンヘイレン、キッス、リンキンパークなど一流ミュージシャンのサウンドを担当しています。
そして1995年、ヴァン・ヘイレンのライブサウンドの担当をしていた時、バンドのドラマーであるアレックス・ヴァンヘイレンにインイヤーモニター(以降IEM)を使用してもらう機会を得ました。当時のIEMは未成熟でメーカーもイヤフォンよりもアンプ機材のほうに気を取られていたといいます。アレックスはそのIEMが気に入らず、ジェリーにもっと良いものを探すかあんたが作ってくれよ、といったそうです。その言葉をきっかけにジェリーはイヤフォンの開発に取り組むことになり、その時に生まれたイヤフォンはのちにUE5になりました。
アレックスはそれを気に入ってくれ、他のミュージシャンもその噂を聞きつけてジェリーに依頼するようになっていきます。そこでジェリーはIEMを商売にすることを思いつきます。Ultimate Earsという名前はツアーの最中に生まれ、それがジェリーの会社の名前となりました。
やがてUE5は業界のスタンダードになり、エアロスミスがグラミー賞授賞式の演奏でも使用したんですが、ジェリーはそれを見て感銘したといいます。ジェリーがUEの製品で気に入っているのはTriple.Fi 10 proだそうですが、やはり一番初めに生まれたUE5は格別だそうです。
Shure E5c
この時にシェルの制作をしていたのはWestoneでした。Westoneはヒアリングエイドでは老舗ということもあったんでしょう。
ShureがIEMの開発をするという際にもジェリーが協力して、UE5はShure E5のベースとなりました。そのさいにもWestoneがシェルの設計をしていたといいます。WestoneはUEと別れた後にShureのユニバーサルを作成していた技術を応用してUMシリーズを作成することになります。
これがIEMの誕生と、それにまつわる我々のよく知るIEMの老舗であるUE、Shure、Westoneの関係です。
その後UEは大きくなっていき、ジェリーのコントロールも利かなくなっていきます。そのためTriple.Fiの開発も会社ともめながら隠れてやっていたほどだったそうです。Triple.Fi 10 proはそれまでのカスタムを母体としていないユニバーサル独自設計というユニークなものでした。
やがてジェリーは大きくなりすぎたUEを去ることになります。設計者が現役のプロエンジニアという起業精神を守るために。
これはAppleとスティーブジョブスの関係を想起させますね。アメリカではベンチャー精神と大企業のはざまではこうしたことはよくあるのでしょう。
JH Audio JH13
その後ジェリーは自らの会社であるJH Audioを起業します。キャッチフレーズはHear No Evil。これはEvil(悪)を悪い音に例えて、Hear No Bad-Audio(悪い音は聴くな)と言う意味でつけたそうです。(ちなみにHear no evil, Speak no evil, See no Evilで日本語で言うところの、みざる・きかざる・いわざるの意味になる)
そして記念すべき初代フラッグシップであるJH13を発表します。これは2009年のHeadFiのCanJamでのことです。JH13は片側6基のドライバーを持つ画期的なIEMでした。3Wayですが同じ帯域に二個のドライバーをタンデム配置することで、一つのドライバーの負荷を減らします。これはライブ経験の多いジェリーのPAを応用した発想によるものです。
このJH13をきっかけに、IEM業界はさらなるマルチドライバー化に動かされていくことになります。
JH Audio JH16
次にJH Audioが発表したのはJH16です。これはライブパフォーマンスを行うドラマーがステージ上で消えやすい低域を補完するために開発されました。そのため低域ドライバーを4基タンデム(クワッド)配置して片側8基としています。ひとつの帯域にドライバーを4基配置するという発想はこのままロクサーヌに引き継がれます。また消えやすい低域を補完するために低域を増強するという考え方もロクサーヌの可変ベース機構につながります。
JH Audio JH3Aと専用JH16
この同じ帯域でのドライバーの複数配置の他にもうひとつジェリーが注力した特徴があります。それは位相の適正化です。バランスド・アーマチュアドライバーは音の細かな再現性には秀でていますが、一つのドライバーの帯域が狭いため、広帯域化するには低音や高音を別々に担当させ、マルチドライバーとすることが一般的です。
しかしながらマルチドライバーになれば、ドライバーの発する音はバラバラに耳に届くことになり時間的な(位相の)ズレが生じて音がぼけたり立体感が喪失したりする原因となります。
それを根本的に解決しようとしたのが帯域ごとにアクティブクロスオーバーを持つJH3Aです。これはもともとジェリーがUEに居た時代の特許でしたが、ジェリーがUEを離れたことで、彼がその特許を使えなくなるという皮肉なことになり、完全には実現できませんでした。
そこでパッシブに位相の問題を解決しようとしたのがFreqPhaseです。さきに書いたように低音域、中音域、高音域とドライバーが分かれている時はそれぞれから出た音に時間特性の違いが起きます。低域から出た音は遅れ、高音域から出た音は早く着きます。それをイヤピースのところで同じにするために長さを調整して音導菅を作り、同時に到達するようにしたものです。
普通は音が中心から5度ほどずれてしまいますが、これによりヴォーカルもドラムのキックもぴったりと中心に会うようになります。また位相に問題があると音が滲んでしまいますが、その問題も解決できます。
そして、これらのFreqPhase、4基のドライバー、ベースの補強という考え方を総括したものとして、最新のフラッグシップ、ロクサーヌが生まれたというわけです。
ロクサーヌはこのようにジェリーとIEMの長い道のりの上に設計されたものです。
JH Audio Roxanne
* ロクサーヌの特徴
ロクサーヌはTHE SIRENS SERIESという新しい製品系列のフラッグシップとして位置づけられたカスタムイヤフォンです。またユニバーサル版も用意されています。AK240用のAKR03モデルにはAK240用のバランスケーブルも付属します。
THE SIRENS SERIESという名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(セイレーン)から来ています。これはいままで数字で名前を付けてきて、それに飽きてもっと楽しくセクシーな名前を付けたかったことによるそうです。サイレーンとは声の魅力で船乗りたちを岩に引き寄せてしまう一種の魔女です。もともとはギリシャ神話ですけど発音が問題なので英語名にしたそうです。
そのサイレーン姉妹の長女がロクサーヌというわけです。これは女性の名まえとしてはイヤフォンによく合うからということです。技術的なものよりセクシーな名前を付けるというのが面白いだろう、とジェリーは語っていました。
下記はJH Audioのロクサーヌ商品紹介ページです。
http://www.jhaudio.com/content/sirens-roxanne
ジェリーはロクサーヌは正しい位相で広帯域を誇るフラッグシップにふさわしいIEMと言っていました。この一言がロクサーヌの特徴を端的に物語っています。
ロクサーヌの特徴とは以下のものです。
1. 片側で計12ドライバーを搭載した「soundrIVe Technology」を採用
帯域特性、周波数特性という点では片側で計12ドライバーという点がポイントです。
ロクサーヌは低域、中音域、高音域に分かれた3Wayですが、各帯域ごとに4基のBAドライバーが採用されています。これは1ユニットで2個ドライバーのデュアルユニットを2ユニット組合わせているようです。それが帯域ごとに3組あるので計12基というわけですね。
ジェリーはロクサーヌはイコライゼーション無しに23KHzまで周波数特性が延びた初めてのイヤフォンだと語っています。それはこの帯域ごとの4基のドライバーの機構によって達成されたといいます。
JH16では4基の低域ドライバーをすでに採用していたのですが、ロクサーヌではそれを中音域と高音域にも拡張したわけです。これには内部配線にも工夫が必要でした。
2. 各帯域の位相を極限まで正確に制御した「FreqPhase」を採用
位相特性はジェリーのもうひとつのテーマです。位相は各ドライバー間の音の遅れ・不揃いなどによるもので、位相特性を改善することで音のイメージングやフォーカス(音のピント)を改善します。
ロクサーヌ開発においては、先に述べたFreqPhaseとその役割においても大きな発見があったと言います。この技術をいち早く応用したロクサーヌの位相はかなり正確ということですね。
3. 新開発のケーブルとロック式プラグを採用
独自開発した4 pinコネクターは、アーティストがライブパフォーマンス中でも耐えられるように設計されたものです。
いままでの2ピンプラグには抜けやすくイヤピースをなくしやすいという欠点がありました。スタジオでミュージシャンがイヤピースをなくすというのは一大事であり、それを避けるためには、もっとしっかりとしたプラグを持つケーブルが必要だったのです。ジェリーが作るものはこのようにまずプロユースを前提とした頑強なものですが、それらは同時にオーディオファイルでももちろんうまく使えるというわけです。
この4ピン・コネクターは従来のものより頑丈である上に、低中高の回路の信号線がそれぞれ独自に本体に接続されているので、コントロールできる範囲がより広くなっているのも特徴です。このため後述の可変ベース機構も可能となりました。
このケーブル用パーツは技術的にオープンにする予定で、WhiplashやMoon Audioなど他のメーカーにもパーツを提供して作れるようにするつもりだということです。
4. 可変ベース調整機構を採用
ロクサーヌはまた、低域用ドライバーをフラットから+15dBまで調節できる点でも初めてのイヤフォンです。だからどんな低域でもリスナーは自由に調整をすることができるわけです。
5. カーボン製のシェルをオプションとして採用
最近ではイヤフォンにチタンなどいろいろな素材も使われてきていますが、反面みな似たり寄ったりになってきています。
ジェリーはカーボンは金属材よりセクシーだし、ほかのメーカーとの差別化になると言っています。これは音質面よりは単にデザインの問題ですが、軽くて強固という利点もあります。
また航空機にも使用される頑丈なアルミニウムにカーボンを使用した高級感あるオリジナルキャリングケースも用意されています。
* 耳型取得 (東京ヒアリングケアセンター大井町店)
まずカスタムIEMの注文は耳型(インプレッション)の取得から始まります。今回は東京ヒアリングケアセンターの大井町店にお願いしました。
下記はホームページです。
http://tokyohearing.jp
ここは大井町のNikon光学通り(大井町光学通り)を少し行ったところにあります。大井町店は行きづらいですが、こちらの方が予約は取りやすいという利点もあります。
東京ヒアリングケアセンターは青山店の方が有名ですが、もともとは大井町店がはじまりで、ここのおやじさんの息子さんが青山に店舗を拡張したということです。ここも超有名アーティストのインプレッション採取などがあり、青山という土地柄が大事でもあるのでそちらにも店舗を増やしたということです。この大井町店のおやじさんは某オーディオメーカーSのOBで、かなりオーディオ系にも詳しいのでオーディオ話で盛り上がってしまいました。またこの方はこの道19年というベテランでもあります。ただそれでも人の耳は千差万別なので日々勉強と話していました。
プロのイヤモニ経験も豊富なのでプロフェッショナルという点で耳型採取に関しては安心だと思います。実際に技術的にも丁寧に対応してくれました。耳の毛の立ち具合で耳型の遮音性も異なるようで、そうした点や個人の耳の左右差などかなり細かいところまで注意を払って取ってくれました。(ただしここは採取した耳型についてはウエブへの写真アップは禁止という注意事項があります)
またどこでも同じですが耳型採取に関しては下記2点を厳守願います。
1. 自分で耳型を取らない
2. 行く前に耳掃除をする
注文は国内代理店ミックスウェーブさんのホームページをご覧ください。
http://www.mixwave.jp/audio/jhaudio/roxanne.html
またこちらはフジヤさんの販売ページです。
http://fujiya-avic.jp/products/detail57784.html
いまはそれなりに時間がかかると思いますので納期は確認した方がよいかもしれません。
* 到着とファーストインプレ
だいたい発注から4カ月くらいで手元に届きました。注文したのはフルカーボンシェルにロクサーヌのロゴ入りのオプション設定です。フルカーボンシェルはフェイスプレートだけではなく、シェル全体をカーボンで成型するものです。
フルカーボンシェルモデルは航空機グレードアルミとカーボンの立派なケースに入ってきます。
しかしロクサーヌのカーボンシェルモデルの存在感は感動的です。思わず興奮気味にTwitterで何件か写真を撮って連続tweetしてしまいました。まるでモデル撮影みたいにずっと写真を撮っていたくなった、とその時に書きこんでますが、まさにジェリーの言うとおり、ロクサーヌはセクシーです。私もいくつもカスタムIEMを注文してきましたが、出来をみて感動したというのははじめてですね。例えるとAK100とAK240のようなもので、質感と高級感で他のカスタムIEMと比べてもまるで別格に思えます。
ちょっと高いけれどもロクサーヌをオーダーするときはカーボンオプションをオススメします。所有感・もつ喜び満足感がちがうと思います。
良くライカや時計なんかでも「持つ喜び」って表現がありますが、カーボンロクサーヌとAK240で思うのはポータブルオーディオで言われることのなかった持つ喜びという言葉が当てはまることです。従来のハイエンドオーディオにはそれがあったと思います。
ポータブルオーディオが文化という面でもそうした先達にならんだ文化の成熟に来たかという感を新たにしますね。ライカも外見だけでなく100年経ってもいまだに画質でもカメラ世界のトップクラスです。そうした外見と中身が高い次元で調和したレベルの高さがポータブルオーディオでも出てきたと思います。
ちなみにカスタムIEMとしてのフィットもピッタリです。これはインプレッションの東京ヒアリングケアセンターとJH Audioの両方がよいということですね。
改良されたケーブルはかなり太く、これまた存在感があります。いまのところまだ交換ケーブルは他のメーカーから出ていませんが、期待したいところです。またロクサーヌは標準ケーブルでも音質は悪くないと思うので、この標準ケーブルのAK240バランス版が早くほしいところです。
またロクサーヌで画期的なのはL字タイプのプラグなのにステムが長いんでHugoでもミニプラグにちゃんとはまるところです。
* 音質検証と考察
試聴では主にAK240を使いました。断りがない限りはAK240での感想です。
まず思ったのは試聴で聴いた印象からだいぶ改良されたということです。特に高音域のレスポンスです。ロクサーヌは昨年あたりは試聴ユニットで何回か聞きました。試聴機ではやや高域が出ないという感もありましたが、この製品版のロクサーヌはそうしたことはなく、鮮明でのびやかな高音域が感じられます。これは23kHzまで伸びることをうたった主張通りに思えますね。このことはワイドレンジ感・広帯域感につながります。
AK240とRoxanne
全体的な音質のレベルはかなり高く、フラッグシップとしての余裕が感じられます。直前まで聴いていたそれまでのフラッグシップモデルであるJH13やJH16の音質をエージングゼロの時点でも軽く凌駕しています。JH13やJH16はリケーブルしていて、ロクサーヌは標準ケーブルなのに、です。
JH13(標準ケーブル・non-FP)とロクサーヌを聴き比べてみると、JH13にしたときに音空間が小さく感じられます。またロクサーヌでは楽器がより明瞭に分離されていて位置関係が団子にならずに聞き取れます。ロクサーヌは音が濃いというより音が豊かという感覚でしょうか。それと細かいところでロクサーヌのほうがきつさが少なくなめらかな点も感じられますが、これはケーブルの違いもあるかもしれません。また全体に音楽をより正確に再現しているように感じられます。
周波数特性的にはJH13に近いと思います。フラットに近く低域がやや強調されているという感じでしょうか。これは可変ベースを調整しないデフォルトでの印象です。一般的にはデフォルト位置でベースレスポンスも十分に得られていると思います。以下音の印象は可変ベースのデフォルト位置によるものです。
ロクサーヌで聴いてぱっと一番初めに感じることは音空間の広さとスケール感の豊かさです。これはエージングされてなくてもそう思いますが、この音空間の再現力が優れているのはFreqPhaseによるものではないかと思います。私のJH13は最も初期のものなのでFreqPhaseではありませんから一層そう思のでしょう。ロクサーヌにはJH13のこじんまり感がなく、ヴォーカルの口の大きさとか、楽器配置の立体感などもフォーカスがあったピントがはっきりしてる感があります。おそらくこれで楽器の音像の解像感もエッジが立っていてより高く感じられるのだと思います。
これは上で書いたワイドレンジ感と合わせてオーケストラものを聴くときにスケール感豊かに再生できます。またジャズトリオでは切れのあるライブが再現できます。
音色の良さ、正しさ、描き分ける色彩感もロクサーヌの良さです。楽器の音の明瞭感が高く、高音域のレスポンスがよいこととあいまってとてもクリアでみずみずしい感じがします。全体的な音の濃さと濃密感はJH13に似ていて、1964Earsなどに感じられる軽いものではありません。楽器の音色はリアルで脚色なく音色の美しさを堪能できます。このリアルな感覚は解像力の高さと関係していて、情報量がとても高いために楽器の再現がリアルであると感じるのだと思います。
音の豊かさはアコースティックで複雑な要素をもった楽曲でよくわかります。単に濃いというより色彩感の描き分けに優れていて、音色がリアルです。赤ん坊の鳴き声が効果音で入った曲では思わずその方向に振り向いてしまったほどです。方向までわかったというのはFreqPhaseの威力でしょう。
様々な楽器が紹介されるマイクオールドフィールドのチューブラーベルズ後半パートの楽器音も単にきれいとかではなく、いままで気がつかなかったくすんで響きれない金属質の音色までわかります。ヴォーカルの声質も上質です。
このようにスケール感よく、JH Audioらしい音の密度感も濃いところもさらに磨かれ、AK240の音がさらに良くなるのが感じられます。AK240と合わせると掌に50万円近くの機器をにぎっていることになりますが、それに見合う音の豊かさがあります。
また、個人的に思うロクサーヌのポイントは鳴りの良さだと思います。
音が濃いと書きましたが、JH13的なやや暗さはなく、軽快感があります。発音体が軽やかによく動くという感じです。かといって音自体は1964的な軽さではなく、濃密だが軽快という相反する要素の両立も感じられます。たとえば1964 V6SとJH13を比べた時のようなJHの重厚さは感じられるが、暗いという印象ではなく明るくはつらつとした方にやや振られている感じです。
鳴らしやすいゆえにソース機器の性能を120%出しきれて空気に伝えているという感じが味わえます。能率が高いというのもありますが、それより「鳴りが良い」と言うオーディオ用語をあてはめる方があってると思います。
これは理由の一つには4x4x4のタンデム(クワッド)ドライバー配置が利いていると思います。同じ帯域に複数のドライバーを配する手法はジェリーがUE11で低域デュアルを採用した時から試行していたようですが、二個のドライバーを採用することでヘッドルームに余裕ができて歪みを減らすことが出来るとジェリーから聞きました。
これは歪みが少なくリアルな楽器の音色再現ができるということもあるし、負担が減ることによる余裕が鳴らしやすさにもつながると思います。それを1帯域ドライバー4つにまで拡張したのがJH16の低域だし、それを中音域と高音域にまで適用したのがロクサーヌだとジェリーは言っていました。こうした並列(タンデム)のドライバー駆動はジェリーが長年携わってきたライブステージでのPA運用からもノウハウを得ているのでしょう。これによりロクサーヌはJH13より軽く明るく動くようになっているのだと思います。
そのため、ロクサーヌはアンプ二段重ねのような本格的なポータブルシステムの音を受け止められケーブルの微妙な違いまでよく再現するだけではなく、iPhone直やハイレゾDAPのようなシンプルなシステムでもその能力を発揮します。
この点で特筆すべきはやはりさきにも書きましたがAK240との相性の良さでしょう。AK240とロクサーヌの両方の高い性能がより高めあい、磨きあいます。音的にもきつさは少なく、上質であることをうかがわせます。ここはバランス再生をそのうちぜひ試したいところです。
AK100MKIIとも相性よく再生ができます、やはり音が美しくバランスが良いのでかなり上質な感覚があります。
これは須山さん曰くですが10-12kHzをいかに伸ばすかがイヤモニ設計の一つのポイントだそうです。須山さんは得意のチタン加工技術によるチューブでそれを稼いでいくようです。
作り手によってイヤモニもさまざまな考え方があると思いますが、ドライバーを二基にすれば3dBあがり、より高域特性を稼ぐことができます。また位相を揃えることで原音に揃えるのがジェリーの考え方なんでしょう。複数ドライバーで一つのドライバーの負担を減らすともども、PAの経験がベースになっているようです。23kHzをうたうロクサーヌはそこから始まっていると思います。
* ロクサーヌの新機軸
ロクサーヌではケーブルが刷新されたとともに可変ベース機構と新型プラグが導入されました。可変ベース機構は左右独立の小さなダイヤルを付属のマイナスドライバーで調整するものです。デフォルトでは中央よりややベース強めになっているように思います。左方向に回すと低域が減少しますが同時によりすっきりとした音再現になるように思います。反対に回すと低域が増すとともによりアグレッシブになるように思います。EstronケーブルのVocalとBaXの違いにも似ています。同じような考えでケーブルのインピーダンスを変えるんでしょうか。単に低域を増減するというよりも、標準のロクサーヌをもっとモニターライクにもできますし、もっとロックポップ向けにもできるという感じです。
プラグは今回の目玉の一つです。いままでの2ピンと呼ばれるカスタムのプラグは脆弱なものでしたが、ロクサーヌではロック機構がついてより確実に止められるようになりました。これもジェリー曰く「私の作るものはすべてプロ前提で作られる」ということです。
ロクサーヌの発売された初期のころにここの部分が弱いといった批判が出ていたこともあるのですが、いまのものは強化されています。それにしても力を変な風にかけすぎてはいけないということで、ジェリーが下記のYoutubeに正しいプラグの着脱方法についての説明をしています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZBCRR7oRM6s
それと付属品としてカスタム用のコンプライフォームがついてきました。JH Audio向けのOEM品となっています。カスタムの隙間にいれることでさらに密着性を高めるというものです。いまひとつ低域がでないというときには使ってみるのもよいかと思います。
* まとめ
マルチドライバーIEMのドライバー数は片側2個か3個から、最近は10個、12個と大幅に増えてきています。これはあたかもデジカメの画素数競争のようなインフレーションにも見えるかもしれません。しかし、それにはさまざまな理由と方向性があると思います。
たとえばNobleのK10のように10ドライバーがあるが2個ずつデュアルは同じ帯域でペアごとには違う帯域を受け持つというものもありますし、ロクサーヌのようにデュアルをさらにペアにして帯域は増やさずに並列配置するドライバー数を増やすという考え方もあります。それはひとえに設計者の思想によるものです。
ロクサーヌの良さはさまざまな言葉で表現できます。空間の広さ・密度感・解像力・情報量の豊かさ・音色再現性の高さ、などです。しかしながらそのポイントは鳴りの良さと正確な位相特性にあり、それが優れた空間表現力や音の再現力の高さを実現しているのだと思います。
これらは一帯域に複数のドライバーを配し、位相を正確にするFreqPhaseを採用するということで、JH13のタンデムドライバー、そして同じ帯域に多くのドライバーを並列で使うというPAの発想とそれを拡張したJH16の4基拡張(可変ベースにもつながる)、FreqPhaseモデルの位相適正化、そしてJH3の試行の線の延長にあるものといえます。いわばいままでのジェリーのイヤモニ制作とライブステージエンジニアとしての膨大な経験とノウハウの集大成と言えるでしょう。
つまりロクサーヌはイヤモニの歴史を作ってきたジェリーハービーの長い経験に裏打ちされたもので、他ではまねできないような高い完成度を誇っていると言えます。
JH Audioはジェリーがやりたいことをやるための会社です。そのためにさきに書いたように大企業化したUEを辞めてまで自分の会社を持ったわけです。将来の計画について聞いた時も、適度にぼやかしながら、うちは小回りの効く会社だから柔軟にいろいろ開発できるよ、とも言っていました。
JH Audioについてはカスタマーサポート・納期で不満の声も聞かれますが、JH Audioのシェアは全米で活動するバンドのかなり多くであると聞いています。そのユーザー数の多さと、小回りの効く小さな会社で居続けるという両立をジェリーは試行錯誤しているのでしょう。
そうまでして頑張る理由についてジェリーはこう言います。
「つまるところ、私たち誰もが音楽を愛しており、自分が設計したイヤフォンを通して音楽を聞いたリスナーが良い気分になったり、感動を得られたりすれば、私の使命は達せられたことになる。」
イヤモニの神様であるジェリーハービーと、その集大成ともいえるロクサーヌ、それはユーザーからの支援が結実したものとも言えます。そしてジェリーはインタビューの最後にこう言ってくれました。
「ミュージシャンでもない私自身がファンを持つというのは光栄なことだ。私も彼らを失望させないような良い製品を作っていきたいね。そしてユーザーからの厚い支持のお陰で、何よりも自分がやりたいことをさせてもらっている。本当にありがとう!」
2014年05月02日
ロクサーヌのAK240用チューニングモデル、AKR03登場
Astell&KernはAKシリーズに合わせたイヤフォンをイヤフォンメーカーとのコラボで実現して来ましたが、なんと新作AKR03はジェリーハービーのJH Audioフラッグシップ、12ドライバーの高性能イヤフォンであるロクサーヌのユニバーサルモデルがベースになっています!
まさに最高のDAPと最強のイヤフォンの組み合わせと言えます。ユニバーサルですから耳型を取る必要もありません。
最近実際に使っていてAK240は普通でもロクサーヌとの相性が抜群であると思いますが、AKR03は自らがAK240ユーザーでもあるジェリーが特にAK240に合わせてチューニングしたということです。加えて従来ロクサーヌの可変ベースも健在のようですのでさらに音を自分でも調整できます。
しかも、、なんとこのAKR03には標準でAK240用の2.5mmバランスケーブルが付属します!これ欲しかったんですよね。普通の3.5mmももちろんついて来ます。
まさにAK240を120%堪能するためのイヤフォンと言えます。
なお私が把握している限りではAKR03の販売予定数はAK240のいまの流通量より圧倒的に少ないので、AK240ユーザーは速攻予約をお勧めします!
5/4: 完売しました!
Astell&Kern AKR03は、2014年5月10日(土)よりiriver直販eストアも兼ねている「アキハバラe市場(http://www.akiba-eshop.jp/)」及び、アキハバラe市場楽天市場支店(http://www.rakuten.co.jp/akiba-eshop/)にて順次発売をいたします。
またフジヤエービック、eイヤホンのお店でも販売するということです。直販予定価格は、169,800円(税込)です。
尚、2014年5月10日(土)・5月11日(日)と2日間サンプラザ中野で開催される世界最大級のヘッドホン展示会「春のヘッドホン祭2014(http://www.fujiya-avic.jp/user_data/headphone_fes.php) 」にて試聴も可能です。
個人的にはこれが今回のヘッドフォン祭の目玉かなあと思います。
まさに最高のDAPと最強のイヤフォンの組み合わせと言えます。ユニバーサルですから耳型を取る必要もありません。
最近実際に使っていてAK240は普通でもロクサーヌとの相性が抜群であると思いますが、AKR03は自らがAK240ユーザーでもあるジェリーが特にAK240に合わせてチューニングしたということです。加えて従来ロクサーヌの可変ベースも健在のようですのでさらに音を自分でも調整できます。
しかも、、なんとこのAKR03には標準でAK240用の2.5mmバランスケーブルが付属します!これ欲しかったんですよね。普通の3.5mmももちろんついて来ます。
まさにAK240を120%堪能するためのイヤフォンと言えます。
なお私が把握している限りではAKR03の販売予定数はAK240のいまの流通量より圧倒的に少ないので、AK240ユーザーは速攻予約をお勧めします!
5/4: 完売しました!
またフジヤエービック、eイヤホンのお店でも販売するということです。直販予定価格は、169,800円(税込)です。
尚、2014年5月10日(土)・5月11日(日)と2日間サンプラザ中野で開催される世界最大級のヘッドホン展示会「春のヘッドホン祭2014(http://www.fujiya-avic.jp/user_data/headphone_fes.php) 」にて試聴も可能です。
個人的にはこれが今回のヘッドフォン祭の目玉かなあと思います。
シーラスロジックがWolfsonを買収
おなじみ英国のDACチップICのメーカーであるWolfsonがおなじみDACチップメーカーである米国のCirrus Logicに買収されることになったとBBCニュースが伝えています。買収額は$467ミリオンです。
http://m.bbc.com/news/uk-scotland-scotland-business-27202322
Wolfsonは英アーカムはじめ多くのオーディオブランドに採用され、iPodも初めはWolfsonでしたね。
今年二月の同ニュースによるとWolfsonは2012年に比べても巨額の損失を2013年に計上し「ライバルとの競争に負けた」と評されていました。加えて昨年は10%人員削減をしたようです。
http://m.bbc.com/news/uk-scotland-scotland-business-26044177
他のソースによると今年の第一四半期の業績も予測より低かったようです。
Wolfsonはスマートフォン関係の低消費電力チップやサムスンなどへの供給で強みを見せてたんですが、反面で過去からBlackBerryに依存していた点が大きかったようです。
代わりにシーラスがその資産を使うことになりそうです。またこうしたDACメーカーの主戦場が実のところ携帯機器・スマートフォンであることも改めてちょっと考えさせられます。