Music TO GO!

2014年03月30日

HQ Player最適化されたオープンハードウエアのDSD専用DACを開発中

HQ PLayer(Signalyst)のFacbookページでDACボードの写真がアップされていました。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=754755501215913&id=165263336831802&substory_index=0

聞いてみたところ、これはHQ PlayerのDSD出力に特化したDSD専用のDACで、DACチップを使用していないということ(いわゆるローパスフィルタ方式なんでしょう)。仕様は最低がDSD128で最大DSD512というもの。また面白いことにこれはCERN OHL v1.2ライセンスのもとにオープンソースハードウェアDACとして開発しているようです。CERN OHLに関しては下記参照。
http://sourceforge.jp/magazine/11/07/11/057210
つまりはDIYコミュニティーなどに設計を提供することを目指したものといえそうです。製品として出てくるかについてはわかりませんが面白い試みといえますね。
posted by ささき at 09:15 | TrackBack(0) | __→ DSD関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クラウドファンディングによりライブを実現するAlive

PonoのところでクラウドファンディングとしてKickstarterを紹介しましたが、クラウドファンディングの音楽分野応用例として海外からインディーアーティストを呼んでライブを実現するというのがAliveです。
https://www.alive.mu/
これはサイトにアーティストのライブをユーザーがリクエストして、事務局がアーティストとのライブを調整し、そのライブチケットに対して仮支払いを行い、一定数に達すると実際に呼んでくれるというシステムです。目標額に達した時点で支払いが発生し、その時点からはキャンセルはできません(ミュージシャン・開催側の都合の時は払い戻しされるようです)。このときのチケット代はKickstarterによるPledgeのように安い価格で提供されます。
デペッシュ・モードなんかはもっと来ているのかと思いましたが、意外と機会がない有名アーティストもよさそうです。実際に開催されたライブをTVで紹介していましたが、面白い試みといえますね。

posted by ささき at 09:13 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月27日

高性能ポータブルアンプ、Portaphile Micro MUSES01バージョン

*English summary is available at the end of text.

Portaphile MicroはPortaphile 627を小型にしたものです。仕様はほぼ同一でコンデンサーが一個少ないだけとされています。電池持続時間も同じということ。
プリオーダー特典で$499が$399で販売されていましたので早速オーダーしました。
ホームページはこちらです。
http://portaphile.com/shop/portaphile-627-micro-pre-order/

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今回のポイントはオペアンプの選択が出来ることで、オプションとしてJRCの「オーディオ向け高音質オペアンプ」であるMUSES01がプラス$50で選択できます。
このオプションを取ることでPortaphile Microの3チャンネルのうち左右チャンネルはMUSES01で、GチャンネルはOPA627となります。なんと贅沢な。

MUSES01はオーディオ専用の高音質オペアンプとしてJRC(新日本無線)が制作しているMUSESシリーズのフラッグシップモデルです。
http://semicon.njr.co.jp/jpn/MUSES/MUSES01.html
MUSES01は他のモデルと比較して動作電圧が高い(MUSES01は+/-9Vで他は+/-3.5V)ので、基本的には据え置きのハイエンドオーディオ向けですが、Portaphileはもともと627向けに内部昇圧しているのでMUSES01がポータブルアンプでも使用できるということなんでしょう。
MUSES01バージョンと627バージョンはLEDの色が赤(Muses01)と青(627)で判別できます。

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細かいところではプラグの食い付きが良く、QuickStepと同等になったのが良いところです。またボリュームノブも多少変わっています。ボリュームポッドまで変わったかは分かりません。(627Xはボリュームをより高品質のものに変えたと明記されてます)
USB ミニBで充電できるようになったのが改良点ですがあやしい二股のUSBケーブルがついてきて、PCのUSBから取る時は2つのプラグから取らないと電流が足りません。(付属のACアダプタはひとつで済みます)
しかも、ソースのDAPと同時に一つのPCから取ると誤動作するという謎の症状が報告されています。(PC側の供給の問題かも)
電池の持ちはPortaphile 627と同じく4時間程度ということですが、まだ3時間半程度までしか実測はしていません。いずれにせよ電圧が下がると下記の電源投入不安定問題も出やすくなるのでまめにフルチャージした方がよいと思います。SONYの2個USBソケットのあるモバイルバッテリーでは充電可能でした。

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Portaphile 627(下)とPortaphile Micro

以前のPortaphile 627では電源投入時に2回ひねらないと電源が投入されないという「儀式」があったのですが、Microでは一度で電源が入るようになりました。しかし、、はじめの数秒はノイズがあり、それはすぐに収まってほぼ無音のローノイズフロアとなりますが、音量がはじめ低レベルで少し経ってからポップノイズとともにポンっと上がるというなかなかの癖を見せてくれています。製作者のCaesarに聞くとよくわからないようなのでもしかすると個体の問題かもしれませんが、この辺がひさしぶりに海外マニアックものを感じさせてくれます。
ある程度安定すると問題なくなり、実にすばらしいというか驚きの音質を聴かせてくれます。さすがオーディオ専用とうたうMUSES01です。
Micro MUSES01バージョンはAK120のWM8741デュアル改造のRAWK120-B(S)のために注文したもので、サイズ的にもなかなかぴったりです。デジタル接続システムのAK100+Hugoにたいしてアナログ接続のハイエンドポータブルシステムとなりますね。

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MUSES01バージョンではまず音の解像度と明瞭感が半端なく、いままで良いと思っていた627バージョンと比較しても、627では描ききれず丸めてしまった音の輪郭をMUSES01版ではさらに鮮明に彫り深く描き出し、WM8741デュアルの再生品質の高さをあますところなく再現するという感じです。RWAK120-BとPortaphile MUSES01の再現力にはちょっと圧倒されますね。全体的な明瞭さもかなり鮮明さが向上して楽器音の輪郭がクッキリはっきりとしています。
また高域と低域の再現力も半端なく、かなりのワイドレンジ感があります。高域の明瞭感・鮮明さの素晴らしさと低域の重み・下への沈み込みの深さは新感覚と思えるほどです。ある曲でJH13が耳の中でぶるぶる震えるように感じられたのはちょっと驚きでしたね。
Portaphile 627に戻して聴きなおすと627はよりソフトな感じでちょっとメリハリがなくのっぺりとした感じにはなります(相対的な話ですが)。
もちろん好みの差もあって、前の627のメロウさ・中音域の甘さが良いという向きもあるかもしれません。
Portaphile 627は中音域重視のウォーム感のある音も人気のひとつでした。買う前の予想ではMUSES01バージョンはおそらくドライで分析的になるだろうと思ったのですが、思ったほどはそうドライではありません。もちろん上で書いてきたような差はあるのですが、まったくの別物的な音調になったという感じではないですね。そうした点では聴きやすいPortaphile 627の良さは適度に残していると思います。
また全体的に力強く押しが強い感覚です。Portaphileのゲインは627バージョンではLowが2xだったのですが、MUSES01バージョンでは1.2xに下げられたのもわかります。

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MUSES01の音は素晴らしいのはわかったので、電源が安定できればと思いますが、大きくても良いという人は627XのMuses01バージョンをオーダーするのも良いかもしれません。(問題が収まるかどうかは分かりませんが)
音質的にはいままでのアナログ入力のポータブルアンプでは最上級のレベルのものだと思いますし、AKシリーズと組み合わせてコンパクトなシステムにできるのも魅力です。反面で不安定さがあり、電池持ちも悪いという難点もあります。なかなか海外マニアック製品を久しぶりに堪能した感じですね。
それとMUSES01がすごいのが分かったんで、MUSES01(あるいは02)を使ったポータブルアンプをもっと見たいと思います。MUSESの普及品を使ったのはありますが、やはりトップモデルを使ってこそのマニアック製品。どうせトップモデルなんかポータブルに使っても性能は発揮できないさ、と言う前にまず作って試して聴かせて欲しいと思います。

*English summary here.
Although I experienced pop and noise unstability on the startup, the sound quality is top notch. After some burm-in time the difference between 627 and Meses01 comes to more obvious. Muses01 delivers crisper highs and more weight and details on the lower region. More articulate overall the sound spectrum. Some may say it is analytical but I feel the sound signature is not so far from the original 627 version as I thought first. I think this is not dry nor sterile. But anyway original 627 is sweeter and warmer.
posted by ささき at 22:40 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月25日

Astell&Kernの新世代フラッグシップ、AK240レビュー

ハイレゾDAPの究極というべきAstell&Kern AK240が先月から発売開始されました。

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AK240のうたい文句は"Be the Ultimate"「究極であれ」ですが、この究極という言葉は今出てきたわけではありません。
いまをさかのぼること7年前に当時のiriver CEOが「究極のプレーヤーを作ろう」と提唱しましたが、このときは技術的な制約で作ることはできませんでした。その機運はiriver内にくすぶっていたのですが、いまのヘンリーパーク氏がCEOになると「この究極のプレーヤーを作ろう」という機運が再び活性化し、そのリードを今回ポタ研にも来日してくれたジェームズ副CEOがとります。そして生まれたのがAK100(初代)です。そのときに掲げたブランドポリシーのひとつが「究極」であり、それがAK240で結実したわけです。

私は初代AK100からずっとこのシリーズを見てきたわけですが、AK100、AK120、AK100MKIIと来て、このAK240では番号が大きく変わっていることに気が付くと思います。AK240という番号からはAK120の倍という印象もあるかもしれませんが、AK240は単なるAK100番台モデルの延長にあるわけではありません。AK240は外も内も大幅に刷新された新世代のフラッグシップと言えるモデルです。そしてそれはAstell&Kernというブランドの方向性を示すコンセプトモデルでもあるといえます。それを以下解説していきます。

* AK240の特徴

まずAK240の特徴と従来シリーズからの変更をまとめます。
細かな仕様は下記AK240の日本語ホームページを参照ください。
http://www.iriver.jp/products/product_98.php

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1. 刷新されたデュアルDACシステム
DAP(デジタルオーディオプレーヤー)は大きく分けて、音源をアナログ音声信号にするDAC部分とそれを増幅してヘッドフォンを鳴らすアンプ部分に大きく分かれます。
AKシリーズはDAC部分の優秀さで知られていたわけですが、そのかなめであるDACチップはAK240ではいままでのウルフソンからシーラスロジックに変更され、定評あるCS4398に変更されました。CS4398はシーラスロジックのトップグレードモデルで、いくつもの高級オーディオ機器にも採用された実績があります。つまり普及タイプであった前のWM8740よりも単体で能力は高いということです。またCS4398はのちに述べるDAP単体でのDSDネイティブ再生の実現にも貢献しています。
AK240は旧AK120がWM8740デュアルだったように、ハイエンドモデルらしくCS4398を左右デュアルで搭載しています。デュアルDACは左右チャンネルを別々に処理できると同時にひとつのDACの負荷が減りますので性能を存分に発揮できます。

2. DAP単体でのDSDネイティブ再生
またAK240は単体でDSDネイティブ再生を実現している点が画期的です。いままでのAK100や120でもファームアップでDSD再生に対応していましたが、それはPCMに変換してDSD再生に対応していたわけです。これはDACチップのWM8740自体がDSD対応できなかったからです。AK240ではCS4398を採用することで、DAP単体でDSDネイティブ再生に対応しました。AK240は最大DSD128(5.6MHz)のネイティブ対応が可能です。
AK240では処理能力の高いデュアルコアプロセッサを採用するとともに、DSD再生の際に負荷がかかると補助的なプロセッサコアが作動してなめらかな再生を保証するようです。これはnvidiaのARMプロセッサにあるようないわゆる+1コアのようなものだと思いますが詳細はわかりません。(これはDSDデコードさせてるXMOSのことかもしれません)
なおPCMでの再生は最大192kHz/24bit、32bit(Float/Integer 24bitダウンコンバート)です。
1.09アップデートでダウンサンプリングですがDXD再生に対応しました。

3. 単体でヘッドフォンのバランス駆動に対応
AK240では単体でヘッドフォンのバランス駆動に対応しています。ポータブルでのヘッドフォンのバランス対応にはさまざまな端子があるので注意が必要ですが、AK240は独自の2.5mmマイクロミニ端子という専用規格を用いています。2.5mmバランス端子のピンアサインは先端からR-/R+/L+/L-です。
これは現在国内でもFitEarやWagnusなどから提供が予定されています。また海外でもMoon Audioなどで対応が考えられているようです。

4. 内蔵メモリ容量は256GB
AK240は内蔵で256GBもの広大なメモリーを有しています。これは現在のDAPで最大のものです。MicroSDカードのスロットはひとつになりましたが、256GBもの内蔵メモリがあるために、むしろスロットは開けておいて購入したハイレゾMicroSDや試聴曲などを使うために取っておいてもよいと思います。

5. 転送はMTPに変更
また、パソコンからAK240への転送は従来のマスストレージクラスではなくMTPで接続されるようになりました。MTPというと難しいのですが、Windowsなんかではドライブのところではなく、ポータブルメディアプレーヤーとして下のほうに出るアイコンです。
注意点はWindowsPCでは特にありませんが、MacではAK240とのやりとりで別途ソフトのインストール(Android data transferなど)が必要です。

6. 刷新されたボディデザイン
まずAK240を見て目を引くのは刷新されたユニークなデザインでしょう。筐体はハイエンドオーディオ並みの航空機グレードのジュラルミン(アルミ合金)です。ボディデザインはかなりユニークですが、これは光のシェードを表したものです。つまり右のボリューム側の張り出し部分は光の陰になるわけです。

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また最近はオーディオ機材にカーボンを使うのが流行りですが、AK240ではカーボンをバックパネルに採用しています。ディスプレイは有機ELの3.31型タッチパネルで広くなりました。

7. 刷新されたプラットフォームと操作系
AK240は外観だけではなく、中身も大きく進化しています。ソフトウエアの中核部分にAndroidを採用したことでプラットフォームが刷新されています。Androidベースではありますが、Walkmanのように素のAndroidをそのまま使うのではなく、高度に手を加えていてふつうの人はまずAndroidが使われていることがわからないでしょう。そうした点を意識することなく、タッチ操作系とWiFiをはじめとする機能に大きなアドバンテージを得ることができています。
またデュアルコアプロセッサが採用され、ソフトウエアの演算性能も向上させました。これはハイレゾやDSD音源の広帯域再生で効果を発揮して再生のもたつきなどの根本的な解決となるでしょう。

8. 多彩なWiFi機能
最後に書きましたが、実のところ個人的に注目度が高いのはこの点です。まずAK240ではWiFiネットワークを使ってスマートフォンのようにアップデートが可能になりました。また家においてはWindowsPC/Macの中にある音源をストリーミングすることが可能です。ワイヤレスにおけるハイレゾデータのストリーミングはPCオーディオの世界においても稀有な実現例です。
そしてWiFi経由でAK240から直接ハイレゾ音源を購入することが可能です(日本では準備中)。

このほかには好評だった光出力、USB DAC機能は継承されました。AKシリーズはファームアップで進化するプラットフォームですのでさらなる進化も期待できるでしょう。

* AK240インプレッション

次に実際にAK240を使ってみてのインプレッションを書いていきます。

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箱には"Native DSD"のラベルが貼ってあり、これがAK240の売りであると主張しているかのようです。箱はAK120よりも大きくなっています。また中箱がフェルト調になり、いままでよりパッケージも高級感があります。中箱はAstell&Kernと印刷されたタブを持って持ち上げてからAK240を取り出した方が良いようです。
本体にははじめ薄くラップがあるので剥がします。液晶にははじめからプロテクトカバーが貼ってあります。

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AK240を手にとってまず思ったのは高級感です。いままでのAK100ラインよりクラス上というより別格にも思えます。AK240の造りの良さには感銘します。AK100/120シリーズの無骨な造形に比べるとエレガントで質感の高さを感じますね。
筐体はハイエンドオーディオ並みの航空機グレードのアルミ合金(ジュラルミン)です。ボディデザインはかなりユニークですが、これはユニークさとともに左手で持った時に指がかかるところに張り出し部分を持つことで握りやすくなっています。また向かって左下の角が取れているのもシェードを表現したデザインだけではなく、手のひらにぶつかる角を削ることで手にやさしくホールドできるように人間工学的にも優れています。デザインはライカのデザイナーに依頼したということです。ライカというとレトロなイメージもありますが、工業デザインには秀でていて、デジタルカメラのS1などもかなりユニークでかつ人間工学的なホールドを意識したモダンなセンスにあふれています。
高級オーディオ機器のような斬新なデザインと航空機グレードアルミの質感は小さいながらハイエンドオーディオの風格があります。

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AK120からついている革製の付属ケースもAK240で引き継がれています。もちろんイタリア製の保証書(CONCIATA AL VEGETALE - イタリアなめし本皮組合)のついた本革で、箱を開けると革製品の匂いがたち、本格的な革製品という感じがします。この上質感はAK240の質感の良さに花を添えます。AK100シリーズがブッテーロ革であるのに対して、今回のAK240ではミネルバ革になりました。個人的には実用を感じさせる前のブッテーロよりも、美しく革製品らしく艶やかさを感じますね。
AK120だとあまり考えずに革製ケースに入れましたが、AK240では本体の質感が高いことから、ケースなしでも持ちたいところです。この辺は箱を開けた段階で悩ましく楽しい選択と言えるでしょうね。

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JH13 + AK240

音質ですがエージングなしの箱を開けた状態でまず旧AKシリーズとはレベルの違いを感じます。
まずはじめにアップデートをしてくださいと言われていたのですが、その前にちょっとだけ聞こうと思ってJH13を取り出しましたが、そのままJH13を離せずにずっと聴き入ってしまいました。以下主にJHAudio JH13で聴いています。
音を聴くとAKシリーズとの違いに愕然としますね。豊かな音再現、さらに洗練された緻密な細部表現は圧巻です。
たとえて言うと、まるでポータブルアンプをつけてるかのような豊かな音再現です。実際にいくつかポータブルアンプを後でつけてみましたが、個性としては音の着色の違いをたのしめますが、性能的にはそう決定的な差にはならないと思います。これは以前にプロトタイプを聞いたときにも思ったのですが、製品版ではさらに細部に磨きがかかっています。

AK120でもAK100とは差を感じましたが、いうなればAK100からAK120は細かさなどDACの差、または出力インピーダンスなどの部分・部分での差だったと思います。AK120からAK240はもっと全体的な差を感じますね。完全に別物という感じです。AK120と同じ曲で比較すると、AK240では細部がより音数があり重なり合いが立体的で、全体に豊かで音の濃密感・豊かさが違います。
つまりいままでのAK100/120シリーズとはDACの部分でもアンプの部分でも大きな差を感じます。ディスクリートで設計されたといいますが、いままでのAKシリーズではDACはよいけれどもアンプが弱くてポータブルアンプと組み合わせたいと思っていましたが、AK240ではそれが改良された払拭された感があります。

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また高性能でもいわゆるモニタライクではなく、ドライになりすぎず音楽性が高いのも特徴的です。
ファームウェアのバージョンにも幾分左右されますが、かなりロックポップにも向いたアグレッシブさも聞かせてくれます。良録音のクラシックからオールドロックも対応できるオールジャンルで使えると思います。
最近発売されたアイオナ(IONA)ライブのようにアイリッシュでありながらビートの聴いたロック、またはYuka&Chronoshipのような新しい古いロックの和製プログレバンドでもAK240はカッコ良くスピード感があります。ドラムスやらベースのブンブンビシバシいうインパクトの打撃感が気持ち良く効いています。
またAK240聴いてて思うのはダイナミックとBAの差が良く分かるということです。例えばハイブリッドのUltrasone IQをEstronあたりでリケーブルして使用するとベースのアタック感・インパクトが半端なくクセになります。写真のIQはMMCX Estronでリケーブルしています。

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Ultrasone IQ + Estron MMCX + AK240

オーケストラでのスケール感も一級品だと思います。Reference Records HRX(192kHz/24bit)のブリテン・青少年のための管弦楽入門は文字通りオーケストラのさまざまな要素が紹介され、テストのためのリファレンスに好適ですが、これをAK240で聴くとワイドレンジを感じさせます。とても低い低域までずーんと出て、高い方は鮮明でもきつさはまったくありません。CS4398的な美点も感じますが、高解像度なのにきつさがないというのはハイエンドオーディオのような品質の良さを感じさせます。
もちろん迫力もたっぷりとあります。音空間が広大というか雄大さを感じさせます。AK240の音の良さの特徴は音空間が広いということが挙げられます。これはバランス駆動でなくても実感できますし、いままで音が広いと思っていたZX1よりも格が違います。ZX1では平面でしたがAK240は空間を感じます。ZX1にHPAを加えようと思ってる人は間違いなくこっちの方が良いと思いますね。ZX1も良いと思ってたけど、AK240と比べるとAK240はひとクラスレベルが上という感じです。AK240からZX1に変えると音が薄くなり、力が抜けて、音が歯抜けした感じです。ZX1はDSSEオンでAK240はCD品質ままでも同じで、基本性能の格の違いを感じさせます。

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AK240とSONY ZX1

iBasso DX100あたりと比べても差を感じさせてくれます。音全体のレベルがAK240のほうが高いということもありますが、それよりもAK240では音質の均質性が高くよく整った高レベルな音つくりを感じさせてくれます。ここは老舗iriverの底力というか開発力の高さを改めて感じさせます。

またAK240は圧縮音源でも十分いい音で聴かせてくれます。ロスレスとの音質の違いも明確に描き出す一方で、音作りのバランスが良いので圧縮音源でも破綻しない感じです。iTunes購入のBen HowardのOats in the waterも雰囲気よく鳴らしてくれました。これはWaking Deadのシーズン4でハーシェル医師が自分の無力さに悩み聖書をめくるシーンで印象的に使われてるんで、ネットで曲名調べて買ったものです。はじめアメリカの逝ってる擦れたカントリーSSWかと思ったけど、イギリスの青年SSWだったとは意外でした。日本ではCDで売ってないようですが、こういう音との出会いもあるので、実のところいまだiTunes Storeなんかも欠かせません。

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電池の持ちに関しては、はじめエージングしていた時の感触からするとさまざまなビットレートの曲を入交って使用してだいたい8時間ほどでしょうか。使ってると少し暖かくなるのでまじめに仕事している感じです。
はじめに入っていたファームウエアは1.03でした。これはわりとウォーム感を感じさせるオーディオ寄りのものでしたが、1.05でスタジオ寄りと思われるフラットでより自然な1.05になり、リリース時点では少しまたオーディオ寄りに振ったと感じられる1.07となりました。1.08では大きく変わっていないと思います。ただし上で描いたような音の基本的な特徴は同じです。いまのところ最新は1.09ですがこれはまた少し音が変わって1.05に近く戻った気がしますが、AK240の高性能を生かしていると思います。


またAK240の大きく特徴の一つはDSDネイティブ再生に対応しているということです。いままでのAK100/120シリーズでもファームウェアアップでDSD再生に対応していましたが、これらはいったんPCMに変換をしていました。AK240ではついにDSDをそのまま再生できるDSDネイティブ再生に対応しました。DSD音源は基本的なSACDレベルのDSD64(2.8MHz)とDSDのハイレゾともいえるDSD128(5.6MHz)に対応しています。DSD128対応はPCオーディオ的にも最新のスペックと言えます。ファイルとしてはDFF(DSDIFF)もDSFも両方対応しています。
DSD音源ではオールDSD製作されたというジャズの類家心平の4AMを聴いてみました。AK240で聴いてみるとちゃんとDSDらしい硬さの取れた柔らかいアナログチックな音が出るので感激します。一曲目はかなり派手なうるさい音楽ですが、うるさく感じません。70年代ジャズっぽいと言われる4AMをアナログ的な音で聴くと録音意図がよくわかりますね。パラメータとかいじりながらPCM変換して聞いてたのはなんだったという感じです。4AMってやっぱりこういう音楽だった、と感を新たにさせてくれます。

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FitEarバランスケーブル(試作品)

さらにAK240では音質を高めるためにヘッドフォンのバランス駆動を採用しています。これは2.5mmマイクロミニ端子という専用独自4極プラグの規格を用いています。
これは専用に作られたケーブルが必要ですが、実際にFitEarの須山さんから試作品をお借りして試してみました。パルテールや335DWで比べてみましたが、001標準ケーブルなのでありなしの差がわかります。バランス駆動のAK240はかなり差があると感じます。立体感だけではなく、音の表現力がひとクラス上となります。4芯で空間表現力は音の洗馬レーションが良くなるのはもはや当たり前として、バランス駆動は力もあるのでイヤフォンの能力を引き出してくれる感じが必要です。AK240ではそうした独自の世界をもたらしてイヤフォンの音質を高めてくれることでしょう。
バランス駆動へは設定メニューから切り替えますが、アンバランスと排他的でどちらかしか使えませんので注意ください。

AK240は音質的に高性能で音楽性も高く、アンプ部分を含めたトータルの能力が向上しています。それを外付けのアンプなしでコンパクトなパッケージのまま実現しています。多くの人が、欲しかったのはこれだ、と感じることでしょう。
AK100/120はスタジオ用としても重宝されてきましたが、AK240はAstell&Kernの中でもスタジオ用というよりはオーディオ用のリファレンスモデルとして位置づけられています。
音を聞いてもいわゆるモニターライクな音ではない、これはまぎれもない堂々たる上質なオーディオの音です。
AK240の音質はポタ研の試聴会でも実際にMacbook+据え置きDACと聴き比べて試してみました。堂々とした据え置きDACと高性能スピーカーを組み合わせたシステムでも実証できたのではないかと思います。AK240とAKスピーカーを組み合わせた音は堂々としたサウンドで東京インターナショナルオーディオショウに出品させたいと思わせるほどのレベルの高さを聴かせてくれました。

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Astell&Kernのスピーカーとアンプ

* AK240の機能

次にAK240の機能面での向上を見ていくことにします。

AK240で目立つ特徴の一つは内蔵メモリ容量が内蔵256GBもの大容量を実現したことです。さらに一基のmicroSDXCカードスロットでDAP随一の大容量を実現しています。これも世界最大(14/2/21時点)です。256GB(128GBx2)のメモリを単一ボリュームにしたのも苦労があったということです。
はじめにAK120にはいっていた音源をすべてAK240にコピーしたんですが、60GBもの音源をコピーし終わって、メモリ使用情報を見るとちょっとしか(1/4ほど)減っていないので驚きましたね。これだけあればFLACではなくWAVで入れるというぜいたくな使い方も可能でしょう。

またデータ転送についてAK240では方法がMTPに変わったのも注意すべき点です。MTPはマイクロソフトのものなので、WindowsPCでは問題ありませんがMacでは注意が必要です。
MTPというと難しく聞こえますが、これはWindowsのエクスプローラーでは右下に出てくる小さなポータブル機器アイコンのことです。スマートフォンなんかはよくこれで転送しますね。対して従来のAK100/120ではマスストレージクラスで接続していたのでドライブのところに表示されていたはずです。
少し詳細に書くと、マスストレージクラスの場合はPCのハードディスクにあるのと同じく自分のファイルシステムにあるわけですから、低レベル(ハード寄り)のブロック単位で転送します。つまりマウントが必要であり同時に「安全に取り外し」が必要となります。もし転送中にぬいたりすればパソコンもDAPも痛める危険性があります。
MTPの場合はパソコンから見てDAPがあたかもファイルサーバーであるように転送しますので高レベルのファイル単位の転送です。つまりマウントする必要はありませんし、「安全に取り外し」の要もありません。転送中にぬいてもパソコンもDAPも痛める心配はありません。
しかし基本はWindowsとかAndroid世界のものなので、MacではAK240とのやりとりで別途ソフトのインストール(Android data transferとか)が必要です。ここを注意してください。

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Android data transfer(Mac)

このMTPに見られるようにAK240では随所でAndroid的な振る舞いがかいま見えてきます。AK240では内部的にAndroidプラットフォームに切り替わったのも大きな変化です。
ただしSONYのZX1はほぼ素のAndroidを使用していますが、AK240はたぶん普通では気がつかないでしょう。AK240では作り込みのレベルが違います。AK240におけるAndroid化はWalkmanのように汎用プラットフォームを狙ったものではなく、その中核機能をうまく利用してより高いレベルの機能を実装するための手法と言えます。

たとえばメニューを開けて行くと機能と操作性の向上に気がつきます。ギャップレスやシャッフルなどの設定はAndroidのように上から引き出すメニューで行います。私なんかはシャッフルと順再生をよく使い分けるのでこれは便利ですね。
またキー配列をカスタマイズできるのも片手で操作する際に指で使いやすいように配置ができます。またメディアスキャンやファームウェアの確認には通知ウインドウが使われます。

しかし、やはりAK240におけるAndroid利用の最大のメリットはWiFi機能を大幅に取り入れられたことでしょう。
これには大きく分けると、スマートフォンのようなWiFi経由でのファームウェアアップデート(OTA - Over the Air)、ワイヤレスでのストリーミング再生、そして日本ではのだ準備中ながらワイヤレスでAK240単体でハイレゾ音源の入手が可能となったことがあげられます。WiFi機能を使うためにはあらかじめWiFi設定をしておく必要があります。設定メニューからWiFiをオンにして、WiFiネットワークを選択するとソフトキーボードが現れて文字と数字が入力できます。そこから暗号化キーを入力します。

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まずOTAによるファームウェアアップデートですが、いままでのファームウェアアップデートではまずネットなどでアナウンスを聞いてアユートさんのサイトに見に行って取ってきて、AKに転送して入れて更新するという手順が必要でした。AK240ではWiFiをオンにした時に自動的にアップデートの確認をして、もしあればそのままダウンロードが可能です。

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具体的な手順はまずAK240をWiFiネットワークにつなぎます(インターネットにつながってる必要があります)。この時点で新ファームウェアがあると通知ウインドウにその旨が表示されます。次にAK240の設定からアップデートを選択すると、システムとアプリケーションアップデートがあります。更新があるとNEWと出てきます。選択して進むとすぐにアップデートがオンラインではじまります。どのバージョンのどのファイルをメーカーサーバーから落としてくるかと悩む必要がありません。
ただしWiFi環境がないユーザーでもアップデートができるようにアユートさんではこけまで同様のダウンロードファイルでのアップデートも用意しています。これは日本独自のサービスだそうです。

そしてAK240で白眉と言える機能は実のところWiFiワイヤレスによるストリーミング機能かもしれません。
これはPCに内蔵される音源をWiFiワイヤレス経由でAK240にストリーミングして再生するというものです。これはなんとハイレゾ音源のストリーミングにもワイヤレスで対応しています。またiriverの人に聴くところによるとDSDネイティブ再生もワイヤレスストリーミングで可能にしているとのこと。

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MQSサーバー(Mac)

具体的にいうとPC(またはMac)にサーバーソフトをインストールして、公開する音楽フォルダーを指定します。次にサーバーをオンにするとストリーミング可能になります。AK240ではMQSストリーミングをオンにするとサーバーをWiFiネットから検索して、接続します。見つかってPC/Macのサーバーに接続されると、AK240ではいままで内蔵音源が見えていたものが、PCサーバーの中の曲やアルバムを表示するようになります。音源を選んで再生するとPCからAK240にワイヤレスでのストリーミングが開始されAK240でPC内の音源を再生します。
DLNAをご存じの人は、AK240がコントローラとメディアレンダラーが合体したようになると言えばわかりやすいかもしれません。ただDLNAではなく独自のシステムです。
ここまで進歩したハイレゾDSD対応というストリーミング、しかもワイヤレスでそれを行うという高度なシステムは数百万円を誇示するPCオーディオの世界でもまだありません。AK240はそれほど高度な「オーディオ機器」なのです。

* AK240とAstell&Kernの目指すところ

これはもう"MP3プレーヤー"なんていうカテゴリーの機器ではありません。スピーカーの世界の普通のオーディオ機器と同じもので、ただ、とても小さいだけです。もしかするとそれ以上かもしれません。なにしろDSDネイティブ再生やワイヤレスでのハイレゾストリーミング再生など、PCオーディオ機器として考えても最先端の機器でもあります。AK240は高価をよく揶揄されますが、試聴会で披露したように据え置きオーディオと比べてもその音質をゆずるものではありません。

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ポタ件でのAK240発表会の様子(左端は私が発表しているところ)

試聴会ではAstell&Kernブランドのスピーカー・アンプも披露いたしました。一見スピーカー・アンプとAK240は関連なく思えますが、Astell&Kernのポリシーを示すという点で共通しているのです。
それは先日のNewyork Timesの記事が示唆しています。この中でAstell&KernのOwen KwonはAK240は"showing the direction we are headed in hi-fi. (AK240は我々がHiFiへ進むことを示すものだ)”と語っています。この言葉からAK240とハイエンドスピーカー・アンプ製品の結びつけも感じられるでしょう。つまりAK240はAstell&Kernのブランドとしての意思を示すデモンストレーターとしての役割を持ってると思います。上のNewYork TimesのインタビューでもAK240は多くは売れないだろうとiriver側でも考えていたことがわかります。iriverではたとえ売れる製品ではなくとも「究極のプレーヤー」としてこれからAstell&Kernが歩む道を示したかったわけです。
しかし、ふたを開けてみると、AK240はフジヤさんをはじめ各オーディオ店で初回予約完売があいつぐ人気商品となり、ひと月以上たったいまでもたくさんのバックオーダーを抱えています。
iriverのジェームズ副CEOは日本からの意見は特に重要と考えているということを話していました。それはフィードバックが細かく正確で、使いこなすマニア層が多いからということです。そうしてAK100を育てた日本のユーザーが今またAK240の世界を育てようとしています。

いまポータブルオーディオの世界は進化しています。ハイエンドメーカーのCHORDやAyreがポータブル製品を作ると数年前にだれが想像しえたでしょうか。ハイエンドオーディオは死につつあるといいますが、実は形を変えただけなのかもしれません。
進化したスマートフォンが旧来のパソコンに取って代わりつつあるように、進化したポータブルオーディオが旧来のオーディオに代わりつつあるというだれも経験したことのない新しい世界への扉を開けるのはAK240を手にした人なのかもしれません。
posted by ささき at 22:55 | TrackBack(0) | __→ AK100、AK120、AK240 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月24日

DENON初のUSB DAC、DA-300USBレビュー

DENON DA-300USBはDENONが発売したはじめてのヘッドフォンアンプ内蔵のUSB DACです。USB DAC機能がついたCDプレーヤーはありましたが、単体の製品としては初となります。

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USB DACとしては後発になってしまいましたが、その分でDA-300USBには価格付けとそれに対する音質・機能の充実度で作り込みの高さが見られます。そしてDA300においては老舗オーディオメーカーとしてのDENONがそのCDプレーヤー開発のノウハウを注ぎ込んでいるという点も見逃せません。PCオーディオ機器ですが従来のオーディオ製品のエッセンスが詰まっているということです。

* オーディオ機器としてのDA-300USB

まずDA-300USBではAdvanced AL32 Processingというビット拡張の技術が採用されている点が特徴です。これはPCMの入力信号を32bitに補完しながら拡張するということです。CDの16bit精度を32bit精度相当にアップするわけです。
注目すべき点はその拡張された32bit信号を、DA-300USBの心臓でもあるPCM1795 DACチップに伝送するということです。PCM1795は32bit対応のDACチップですから、32bit DACで32bitデータを受けることでPCM1795の性能を最大限に発揮することができるというわけです。
PCM1795はバーブラウンの32bit対応DACチップICで、最近はバーブラウンの主力といってもよいと思いますが、特にDSD対応製品によく使われてます。また同時にサンプリングレートも44kHzならば16倍、192kHzならば4倍相当のアップサンプリングを行います。これも単純な変換ではなく、高精度に補完計算をしながら処理を行います。
普及機(DCD755RE)では普通のAL32 Processingですが、DA-300USBでは高級機(SX1)並みの進化したAdvanced AL32 Processingが採用されているのがポイントです。

また高性能オーディオ機器らしいのはDACマスタークロックデザインです。これはDACの持つクロックをソースのデジタル回路のマスターとして使うことで音質を高めるというものです。
例えばDENONではSACDプレーヤーDCD SX1で、SX1に内蔵されるSACDドライブの部分とDACの部分において音を変換するDAC側のクロックをドライブ側に送ることによってトータルの音質を高めています。これも高級機SX1ならではの機能であり、普及機(DCD755RE)では採用されていません。DA-300USBの設計はDCD1500よりも洗練されていてSX1により近くなっています。
PCオーディオのUSB DACにおいてはもちろんドライブはありませんが、同じく音の入り口であるPCとのUSBインターフェイスの回路部分にDACがマスターとなってクロックを供給することで音質を高めています。つまり仕組みとしては高級機と同じ内容のものを採用しているというわけです。下の図では右がマスタークロック方式で左が従来方式です。クロックの位置に注意してください。

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DA-300USBにおけるマスタークロックデザイン

このようにDA-300USBはオーディオ機器としての機能が普及機ではなく、高級機なみの技術が採用されている点がポイントです。このほか、デジタル・アナログ独立電源などオーディオ回路設計が価格にしてはかなり贅沢に作られています。これは当初は価格的に機能設計はDCD1500RE相当の予定だったんですが、音質を突き詰めていくうちに結局Advanced AL32やらマスタークロックデザイン、その他でSX1相当になったということです。
これは実売5万円以下の価格を考えるとたいしたもので、USB DAC後発メーカーとしての戦略的な価格設定であると言えるでしょう。


* PCオーディオ製品としてのDA-300USB

PCオーディオ製品としてのDA-300USBの特徴は対応フォーマットが広いことです。最近はハイレゾ対応製品が気になる人も多いと思いますが、DA-300USBでは話題のDSD再生も含めて市販の高品質音源のほとんどに対応しています。USB伝送制御はアシンクロナスですからDA-300USB側のクロックを使用して高精度のDA変換ができます。
PCMでは192/24bitまでに対応していますが、これはUSBオーディオクラス2で実現しています。そのためWindowsではカスタムドライバーのインストールが必要です。これはASIOドライバーなので、WindowsではDSDはASIOでネイティブ再生ができます。DSDでは5.6MHzまでDSDネイティブ再生に対応しています。

WindowsにおいてはまずDENONのサイトからドライバーをダウンロードしてください。これをPCにインストールします。音楽再生ソフトではDENONのドライバを選択してください。ASIOを使うにはソフトにASIO対応が必要です。ASIO対応されていない場合には通常のドライバとして使うことができます。

つまりWindowsの場合は2つのパターンに分けられます。
1. 使用している音楽再生ソフトがASIO対応の場合
たとえばJRiver Media Centre(JRMC)です。この場合にはAudio DeviceではASIOドライバを選択して、DSDネイティブ再生でもASIOを使うことをお勧めします。この場合はDSDの再生は簡単で、JRMCならば設定からBitstreamを選んでDSDを選択しておけば終わりです。

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JRMC19のDSD設定画面

2. 使用している音楽再生ソフトがASIO対応ではない場合
たとえば素のfoobar2000とかiTunesです。この場合にはWindowsのサウンド設定でデフォルトにDENONドライバーを選択します。foobarならoutputの項目で単にDENONドライバーを選択します。前述したようにDENONドライバーはASIOでなくても使用できます(この場合はASIOインタフェースとしては働きません、念のため)。
またfoobar2000の場合はコンポーネントでASIO対応にすることができますので、無料で始めたい場合にはfoobarがよいかもしれません。この場合はDSD設定はややこしいんですが、以前書いたQuteHDのfoobarでの使用記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/271984782.html

WindowsにおいてはJRMCが機能も豊富で音質もわりと良いので、JRMCは用意していた方がよいと思います。JRMC19であればPCM音源でもDSD5.6MHzに変換して出力することができます。この設定方法はDSP Studio->output encoding->2xDSD in native ASIOです。ちなみにここでDoPを選んだ場合は2.6MHzでDA-300USB側でロックしますのでPCでもAISOだけではなくDoPが使えることがわかります。
WindowsではASIOを使ったほうがDoPのミュート・ポップ音問題に悩まされない分で良いかもしれません。ただDA-300USBの場合はDoPでも問題はないと思います。

Macにおいては192kHz再生であってもドライバーのインストールは必要ありません。これはWindowsと違ってMacは内部にUSBオーディオクラス2ドライバーを持っているからです。その代わりMacにおいてはASIOドライバーは使えませんので、MacでのDSDネイティブ再生はDoP方式を使用します。
Macの場合には音楽再生ソフトは設定の簡単さと音質の高さでAudirvana Plusがお勧めです。DSDネイティブ再生の設定はPreferenceからNative DSD CapabilityのところをDSD over PCM 1.0と設定してください。これだけなので簡単です。DoPでの曲切り替え時のノイズなどはかなり極小だと思います。

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Audirvana PlusのDSD設定画面

MacからはDA-300USBはUSB HighSpeed Audioドライバーという名前で見えますが、注意点はDA-300USBが192kHzまでしか対応しないのにMacからは352kHzまで対応と見えていることです(上の画像でも353が可能になっていることが分かります)。実際に352kHzを出力すると無音です。
この理由はDSD128(5.6MHz)をDoPでサポートするためには352kHzが必要であるため(2.8MHzの場合は176kHzだから)、352kHzを形式上通す必要があるからです。PCMではあくまで192kHzが上限ですから注意ください。
一方でこれにより潜在的な問題が発生すると思います。たとえばAudirvana Plusなどで整数倍の最大値をアップサンプリング指定する場合、44kHzの最大値はこの場合に352kHzに自動的に計算されてしまい無音となりますので、別の設定にするように注意が必要です。

このほか入力はUSBだけではなくSPDIFや光にも対応してるので広いソースに対応しています。

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DA-300USBの背面

また、DA-300USBのハードとして見るとPCオーディオ対応に対応する特徴はポイントは、PCノイズを遮蔽するためにデジタル・アイソレーターを採用していることです。これはトランス結合タイプでPCからのノイズを信号から効率よく切り分けることができます。

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デジタル・アイソレーターのダイアグラム図とその効果

ここでもDA-300USBにおいて価格以上にこだわりのある設計をしていることが分かります。この辺は国産老舗オーディオメーカーとしての矜持を感じますね。

* ヘッドフォンアンプとしてのDA-300USB

DA-300USBはUSB DACとしてヘッドフォンアンプも内蔵しているので単体でも高音質で音楽が楽しめます。ヘッドフォンアンプ部分でもフルディスクリート構成のバッファーアンプを後段に採用し、十分な駆動力を確保しています。HD800でも問題あるとは思えません。

ヘッドフォンアンプ部は下図のような構成となっています。
da300-amp.png
@ボリューム回路前段にアナログ出力との相互干渉を排除するバッファアンプを搭載
A電圧増幅段にハイスピード・ローノイズ高音質オペアンプを採用
B出力バッファにはディスクリート回路を採用

ただスペックを見ると出力インピーダンスが32Ωと高い点が気にはなりますが、ここはさまざまなヘッドフォンとの相性や初期のAK100と同様に安全面などや海外での基準なども考慮して決められたようです。ヘッドフォンアンプもガレージメーカー製が先行していたせいでこの辺は気になりませんでしたが、海外に広く展開するメーカー品が多くなるといろいろな事情も重なって来るようです。
ただ音的に聞く限り、300オームだけでなく32オーム程度のヘッドフォンを使っても低域も十分なレスポンスを得ているので、DA-300に関しては実際的には大きな問題ではないと思います。


* 製品インプレッション

製品を実際に見てみると、パッケージング、梱包などがきれいでメーカー品らしいと感じます。いつもは段ボールにプチプチで無造作に入れられている海外製マニアックオーディオ機器に慣れているので新鮮に感じられます。
説明書もきれいに整えられていますが、マニアック製品を買う人は自分でDSD再生などは調べると思いますが、メーカー品を買う方はもっとコンシューマーよりだと思うので、PCオーディオ周りについてはもう少し詳しい手順書があった方がよいかもしれません。ただDSD再生では海外製再生ソフトを使うことが多いので、その辺まで踏み込むのは難しいとは思いますが、DA-300に限らずこうした製品の課題と言えるかもしれません。

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ヘッドフォンプラグはなかなかきっちりとはまって抜けにくいと思います。こうした細かい点までしっかりしてると手を抜いてないという気がします。
外形的には縦横置きのコンバーチブルという点が特徴で、表示画面も縦横に対して回転します。外観デザイナーは女性を起用したということでなかなか滑らかなアールを描いたデザインです。ビスレスを意識したそうで、すっきりした外観です。

音のコメントですが、以下私のリファレンス機であるところのHD800で聴きました。(標準ケーブルです)

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まず中高音域は聴きやすい帯域特性を持っています。音調が整っていて音色がきれいと感じますね。高いほうも鋭すぎずに、かつきちんとしたレスポンスを持っています。価格は安いほうですが、高いパーツに頼らずに粗さきつさが少ないのはなかなか注意深く設計しているのだと思います。Goldmundの"All will prosper"でのシンプルなアコースティックギターによる音の細かさも、アーティストが録音に凝っているところが分かるほどに表現を引き出してくれています。
中音域ではヴォーカルが前に出過ぎないので、全体にアグレッシブさがやや抑え目になっているのは自然な感じがするところです。ケイトブッシュの"50words for snow"での落ち着いてしっとりとしたヴォーカルは極めて魅力的でした。
また音空間の表現力もよく、音が滑らかでかつ音空間に深みを感じるのはAdvanced AL32の32bit化の効果が生きているのかもしれません。かなりレベルの高い音だと思います。

全体の音の感じはダイナミックでロックのドラムスではインパクトがよく伝わり、リズムの刻みが活き活きとして活力を感じます。
海外メーカーのオーディオ機器は個性的で知られていますが、国産のブランドでもさまざまな個性があると思います。Accupahseは偉大な中庸、Luxmanはおとなしめで上品などなど、DENONは濃くてダイナミックな印象があります。DA-300USBはわりと洗練された音だと思いますが、そうしたダイナミックさも引き継いでいるように思います。
ダイナミックさを特徴とするDENONのD600ならもっとロック・ポップにあった音を出してくれるでしょう。

コントラバスソロのグループSoNAISHの"AMAPOLA"を聞くとHD800でも十分な低域の量感があり、かなり低いところまで低域のレスポンスが伸びて言っているのがわかります。オーケストラでは録音にもうるさい作曲家アルヴォ・ベルトの"交響曲3番"で聴いてみると、各楽器の再現性は悪くないけれども、オーケストラの迫力という点ではHD800では今少しのところもありました。
クラシックはスケール感豊かなDENONのD-7100あたりで聴くととても良くなるでしょう。

一方でHD800で聴いていると、若干ゲインが低めなのでHigh/Lowのゲイン切り替えがあった方が良いと思いました。HD800でもポップ系の高めにマスタリングされている場合はだいたいは十分な音量で聴けますが、良録音のレベルの低い録音の場合は少しぎりぎりな場合もありました。ただDENONでは先に書いた海外の音量制限も考慮しているので、最大音量でも割れないで聴ける音という点に注意して設計しているということです。

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そしてDA-300USBにはDSDネイティブ再生機能がついていますので、これはぜひ活用したいところです。DSD5.6MHzで聴くと音楽もいっそう引き立ちます。これはDA-300USBを買った人の特権みたいなものでぜひ体験してもらいたいところです。

DACとしてはDA-300USBのRCA出力から高性能ヘッドフォンアンプのHifiMan EF6につないでみました。同じくHD800で聴いてみましたが、これはちょっと驚きの音ですね。音の再現力に力感と温かみが加わり、かつ細かな音の再現は一級品です。EF6は平面型を鳴らすためのハイパワーマシンですが、その能力を十分に引き出しているように思います。楽器の音の切れの良さと引き締まったところからはDACとしてのDA-300USBのたしかな基本性能を感じ取ることができます。スタジオ系のDACにあるようないわゆる無機的とも言える着色感のなさではなく、音楽的な抑揚が感じられるのでモニターと言うよりはオーディオに使うDACに向いていると思います。

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EF6+DA-300USB

DA-300USBは気軽に直接ヘッドフォン端子から再生してもなかなか楽しめる良い音ですが、DACとしてこうした高性能ヘッドフォンアンプあるいはスピーカーアンプにつなぐとさらに素晴らしい音の世界を楽しめるでしょう。

* まとめ

DA-300USBはさまざまなソース機器、さまざまな音源を入力として、デスクトップでの気軽なヘッドフォンアンプとしての単体使用から、オーディオシステムにDACとして本格的に組み込むところまで安い価格で多様に使える製品だと思います。

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とにかく価格の割には音質が高く、DA-300USBを選んで聴きたくなるような魅力的な音楽再生が楽しめます。PCオーディオ機材としては5.6MHzのDSDネイティブ再生など最新の音源に対応するのもポイントです。コストパフォーマンスはかなり良いと言えるでしょう。
ヘッドフォンアンプとしてはゲインや出力インピーダンスなど、もうちょっと改良してほしい点はありますが、現状でも問題といえるほどでもないように思います(私みたいなマニアは突っ込みますけど)。
いろいろな基準・規制をクリアしなければならない大手メーカーの場合はマニアックメーカーほどの尖った仕様は作りにくいとは思いますが、反面で国産メーカー品としての品質やサポートでの安心感があります。人によって求めるものは様々なので、こうした選択の余地が広がったのは良いことでしょう。

総じて言うと、後発ではありますが、その分で価格を安く設定していて、設計も高級機のノウハウを上手に使い、DENONらしさ・老舗のオーディオメーカーとしての強みをうまく活かした製品に仕上がったと言えるでしょう。

      


     

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2014年03月23日

iFI Audioの"クラウドデザイン"

Kickstartのところでクラウドファンディングの良いところは、作り手と買い手の近しい関係にあると書きましたが、iFI Audioも面白いアプローチを始めています。それが"クラウドデザイン"です。下記のiFi Audio(日本)のFacebookページに情報が載っています。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=644038755663254&id=449735338455976

もともとLightHarmonicがKickstarterでLH Labsとしてコンシューマーブランドを立ち上げたのはAMRに対するiFI Audioのようなビジネスモデルを意識したのではないかと思います。ゆっくりと重いハイエンドブランドが早くて軽いコンシューマーの流れに対応するブランドの試行です。

iFIの試みはクラウドファンディングではありませんが、人気の高いnano iDSDの次のMicro iDSDの開発においてユーザーの声を聴きながら行っていくということです。これは前に書いたようにindiegogoのLH LabsでのGeek Pulseを思わせます。Geek Pulseでもユーザーコメントを活用したり、メーカーからの提案をアップデートするなどして、プロジェクトの開始時と終了時では大きく異なった形になりました。はじめは低コストDACのように見えましたが、しまいにはFemtoクロックやデュアルDACのオプション提案にまで至っています。またLH LabsではGeek Forceというユーザーの声を聴くためのフォーラムも立ち上げています。
http://geek.lhlabs.com/force/home
iFIの方式ではHead-FiやiFIのFAcebookを使用しています。コメントやアップデートといったKickstarterやindiegogoなどクラウドファンディングにみられるユーザーとの相互関係を重視してそうした仕組みを取り入れていくということですね。
Head-Fiのスレッドは下記です。ちなみにスレッドのタイトルに入っているスカンク・ワークスはもともとロッキード社の先端技術ラボのことです。SR-71とかケリージョンソンとかこの辺を語りだすと私も長くなるので自制してやめておきますが、ケーブルの名前などを見るにトルステン氏もなかなかの航空宇宙マニアのようです。
(いまでは英語の慣用句として一般に秘密開発部門をskunk worksということもあります)

iFI skunkworks....micro iDSD. Crowd-Design - by you, for you
http://www.head-fi.org/t/711217/ifi-skunkworks-micro-idsd-crowd-design-by-you-for-you

すでにみながいろいろなアイディアをコメントしていますね。中にはデザインを含めてかなり具体的な提案もあります。

最近はいままでヘッドフォン世界にいなかったメーカーがこの分野に参入してきていますが、中には首をひねってしまうような仕様のものも多々あります。新しいオーディオの世界は作り手と買い手の近しさが必要だと思います。DIYとかガレージメーカーだけだった時代では当たり前だったけど、いまは考える必要が出て来ていると言うことでしょう。
オーディオがスピーカーの前で正座して聞くものから、外でヘッドフォンで自由に楽しむように劇的に変化していくとメーカー側も細かいノウハウを得るためにはやはり使っている人たちに聞くのが良いのではないでしょうか。もっと良いことは外から見ているのではなく、この世界に飛び込んできてくれることです。そしていままで持っていたハイエンドの技術とオーディオ機器のノウハウを反映してくれることです。iFI Audioはそれをやろうとしています。
posted by ささき at 10:48 | TrackBack(0) | __→ USB DAC全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月22日

The Red Book - ペンギン・カフェ(アーサージェフス)

新生ペンギンカフェの新作"The Red Book"が発売され、プロモーションで来日しているアーサージェフス(オリジナルのペンギンカフェオーケストラのサイモンジェフスの息子)とヴァイオリ二ストのオリ・ランフォードがタワレコでインストアライブを行い、私も見て来ました。今日は新作からNASAのケプラープロジェクトでのコミッションで作曲された2曲、前アルバムから2曲とサイモン時代の一曲を演奏しました。ピアノとヴァイオリンだけに編曲したものですがこれもなかなか良い感じ、ピアノ演奏するときにピアノの天板をかなり寝せてセットしてたのがちょっとユニークでしたね。ミニライブですがすっかり前列に座って至近距離から演奏を聴いて感動しました。

下記は新作Red BookからNASAのコミッションによるSOLARISです。もちろん有名なあれにかけているタイトルです。


サイモンジェフスがペンギンカフェをやっていたときはいわゆる環境音楽の一派で家具の音楽とも称されました。つまり家具のように部屋に流れていて溶け込んでいる、けれども生活を豊かにすると言うわけです。
これはともすると主張がない音楽とも取られますが、息子アーサーのペンギンカフェはもっと主張が強くなっていると思います。アーサーはペンギンカフェの他にもSUNDOGというユニットもやっていて、そちらはもっとアグレッシブなアプローチです。おとなしめで父の血筋のペンギンカフェともっとアーサーらしいSUNDOGという感じでしょうか。
現代的な器楽曲という根源は同じでも、サイモンのときとアーサーのいまでは立ち位置も変わるでしょう。かつてトールキンは現実逃避するのも勇気であるとして指輪物語を書きましたが、今の時代のさなかであえて一歩おいて自分を見つめるために現実から離れさせてくれるきっかけになっていると思います。こんな静かな音楽なのに心はハードロックよりも揺さぶられるのですから。

ちなみにタイトルの"Red Book"はユングの著書のタイトルから来ています。ただアーサーに言わせると(CDという意味の)レッドブックマスターにもかけていると言うこと。レッドブックのレッドブックマスターと言うのが面白いからだそうです。
ちょっと個人的に思ったのはこうした質の高い音楽がなぜCDではなくハイレゾででないのか、ということです。ウタダとかもいいかもしれませんが、音楽は生きてます。たとえばヒラリーハーンとも共作した現代音楽家なのかポップアーティストなのかユニークなハウシュカの新作とか、音楽シーンの先端にいるアーティストの新作がハイレゾで出ないでそれが本当に新しいフォーマットと言えるのでしょうか。
まず普及が大事だと売れ線ばかりハイレゾで出ても、いまの消費者は情報も豊富で賢いのでハイレゾって言って高付加価値でまた金を取るんだろう、と気がついてしまいます。ハイレゾとか言っても昔アーティストのデラックス版CD再発DVD付き(リマスター何回目だよ)なんてのと変わらないじゃない、と。(まあそれを買っちゃう私もなんですが)
もし本当に時代に合わせて音楽というものをより進化させるためにフォーマットを考えるなら、そこは変えていく必要があるでしょう。ハイレゾの問題は22kHzより上が聴けるかなんてことより大事なことが別にあると思います。

ちなみにペンギンカフェは9月に楽団員を引き連れて本格的な来日公演を予定しています。詳細は下記リンクから。
http://plankton.co.jp/penguin/

          
posted by ささき at 20:34 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月19日

Ponoの音質

一般メディアでも取り上げられることも多くなってきたニールヤングのPonoですが、そのわりには音質コメントがありませんでしたが、AudioStreamの下記記事に音質コメントがありました。
http://www.audiostream.com/content/sound-pono

ニールのインタビューをしたときのリスニングルームにAyreのアンプとTADのCR1スピーカー、ゼンハイザーのMomentumがあり、それを使って聴いたようです。
音は明瞭でクリアかつ豊かな音ということですが、特にTADスピーカーでは繊細な細やかさがあり、全体的に落ち着いて自然な音だということです。期待以上という感じのよう。
自然な音再現はアーティファクトの少ないMPフィルタあたりのAyre技術が効いてるかな、とかオーディオファイル的なコメントしたくなりますが、興味深い点はここで引用されてるニールヤングの言葉で、「我々はこれをメインストリームに持っていくつもりだ」というやつです。
つまりはDX90だのX5といったマニアックなオーディオファイル向けではなく、一般の人向けにiPodのように普及させようと言うわけです。
ジョブズなき後はオーディオ・音楽系とはますます縁遠くなってきた感のあるAppleですが、ニールヤングは親交深かったジョブズの代わりに俺がやる、っていう意気込みなのかもしれません。
(Appleでは最近エディキューがリードしてSXSWでiTunesライブなんてやってますが、さて)
Ponoはもう一万台ちかくオーダーを得ています。しかしPonoのKickstarterですごいと思うのはただの$5のThank youのところに750も入ってるということです。これは単に気持ちでお金を寄付するだけなので、普通商品目当てだとここにはあまり入らないですね。いかにニール個人とPonoのコンセプト自体が受け入れられているかが分かります。これらを考えるとあながち夢物語とも言えないかもしれませんね。


またKickstarterでPonoの情報更新がありQ&Aに答えています。
お勧めヘッドフォンはという質問には、高性能なものはなんでも良いけど、AyreはリファレンスにゼンハイザーMomentumを使ってるということ。上の環境にもありますね。またAudezeやEtymoticでも良い結果を得てるということ。これらの名前が出るあたりはけっこうマニアックですね。
Linuxで使えるかという質問にはソフトの提供はしないけど、MicroSD経由で音源を入れてくださいとのこと。
増額はManage Your Pledgeを使ってくださいということ。キャンセルする場合はそこでCancel Pledgeを使います。これはKickstarterの普通の操作です。
バッテリーの持ちは8時間くらい、500-800回くらいの充電が可能。そのあとはおそらく工場交換でしょう。iTunesで使ってた音源はPono再生ソフトでも使えます。Ponoストアのダウンロードだけでなく、手持ちの音源も使えるって明記してます。これは前書いたようにたぶんJRMCのOEMバージョンでしょう。ソフトが出るのは10月です。JRMCは前に書いた下記リンクのSonataみたいにOEM版もいくつか出てます。Ponoソフトウエアもそうしたものになるでしょう。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/248701945.html
またPonoとTシャツが両方欲しいけど、にはいまのKickstarterの仕組みでは出来ない、と言ってます。しかしこれは前記事で書いたようにオプションにしてサーベイで調整すればいいんですが、Pono Team側もまだKickstarterには不慣れな様子。
ニールヤングのアーティストモデルは早々に売り切れたんでもっと作って、というリクエストには限定モデルなんで残念ながら対応しないということ。$200のEarly Birdも当然追加はない。
DSD再生は対応するの?にはこのファーストリリースでは対応しないということ。PCMに注力したいのとまだDSDは一般的でないという判断です。
MacのPonoソフトでFLAC再生できるの?はイエス、Bluetoothは無し、DRMもなし。
Pono Musicストアは米国、 イギリス、カナダから開始して拡張して行きたいということ。これ以外の地域ではダウンロードはできません。
またアーティストモデルにメタリカやライル・ラヴェットが追加されました。インタビューに出ていたスティングのモデルを追加したらもう一個欲しくなるかも。アーティストモデルにはシリアル番号がつくそう。


それとついでながらKickstarterのオーディオものでは前から書いているGeek outもあります。
これはハイエンドのSuper Duperモデル(小さいのに1W出力)から出荷が開始されています。私はSuper Duperと通常モデルを頼んでいますが、この組み合わせのために出荷が遅れているよう。
こちらのサイトにすでに届いた人の記事がありますが音質コメントはまだありません。
http://parttimeaudiophile.com/2014/03/16/super-duper-geek-out-arrives/

次のKickstarterものはAurisonicsのRocketsイヤフォンですかね。現在はケーブル調達で遅れてます。Kickstarterやる人は更新とメールは注意するのが大切です。特に期間後のサーベイのお知らせに注意が必要です。
posted by ささき at 08:06 | TrackBack(0) | __→ iMod | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月18日

ヘッドフォンブック2014に執筆しました

恒例のヘッドフォンブックが今年も発売されました。
まず今回は付録のカスタムブックが注目です。FitEar須山さんの情熱編集による気合いの入ったカスタムイヤフォンブックです。こちらでは私はジェリーハービーのインタビューとキーマンに聞くを書いています。インタビュー
ではロクサーヌや現行品のところを担当しています。ジェリーってとてもまじめな人でこちらからの質問にはとても真摯に答えてくれます。個人的には須山さんとジェリーの絡みをもっと入れこみたかったところです。
こちらはいくつかインタビュー中のスナップです。

headphone3.jpg  headphone5.jpg

headphone1.jpg  headphone6.jpg

他ではP114からのAKシリーズの特集を書いていますが、これは字数4000の大作。またP118でWalkman ZX1も1000字程度で書いています。
また今回もP22でヘッドフォン大賞を書かせてもらっています。個人的には昨年はやはりDita Audioかなあと思います。きちんとポリシーを持っている点がまず良いですね。
あとはP131からのメモリスティックタイプのUSB DAC特集も書かせてもらっています。これも昨年のトレンドですね。
あとはレビユーでパルテールやDita Answer,音茶楽ドングリなどを書いています。

売れ行きは絶好調のようです。ぜひ手に取って読んでください。


posted by ささき at 23:45 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月13日

はじめてのKickstarter

Ponoはわずか9時間で目標額達成し、一日ちょっとで5000個もオーダーが入りました。
おもしろいことにコメント欄などをみると、これがはじめてのKickstarterと書いている人も多く、ハイレゾDAPだけではなく、クラウドファンディングもすそ野を広げてくれたと思います。
PonoでKickstarterに興味を持った人もいると思いますので、基本的なことを書いていきます。

Kickstarterはみんなの投資で製品を開発するクラウドファンディングを運営するサイトです。別な言い方をすると、Start-Up(ベンチャー企業)を支援するサイトです。ちなみにクラウドは雲の意味のクラウド(cloud)ではなく、民衆の意味のクラウド(crowd)です。
各自の出資はPledgeと呼ばれプリオーダーみたいなものですが、期間内に目標額に満たない場合は製作されません。また開発期間の前に出資するのでたいていリードタイムが長い点が製品のプリオーダーとは異なりますので注意が必要です。あくまで購入ではなく出資です。
Kickstarterは名の通りにStart-Upを支援するものですから、ベンチャーゆえに量産に対しては見込みが甘く遅延することも多いのでそこも考慮しておかねばなりません。たとえばPonoにしてもAyreやAQが開発に参画しているといっても、製品を作るのはあくまでPono Teamですからそこは未知数です。念のため。

Kickstarterのサイトはこちらです。
https://www.kickstarter.com/

Kickstarterの場合はウエブとiPhoneアプリで参加ができます(iPadネイティブアプリはいま現在ありません)。
Kickstarterに参加するためにはまずアカウントが必要です。Pledgeは米国Amazonのアカウントが必要でクレジット払いです。目標額に届かなかった場合は、KickstarterではPledgeはキャンセルされて支払いは発生しません。予定額に届いてプロジェクト期間が終了した時点でクレジット支払いが発生します。

Kickstarterのキャンペーンが開始されたら、プロジェクトの内容を見ていくら投資するか決定します。たいていはリストを見て、製品が対価としてもらえるところに出資します。賛同表明で$1だけ、なんていうのもかまいません。日本の場合は送料が別になっていることが多いので注意が必要です。
たとえばPonoの場合には$300 or moreという欄にBlack Pono Playerまたはもう一行あってYellow Pono Playerとありますので、そこが製品が対価として手に入るところです。moreとあるのは賛同する気持ちですのでそれ以上出してもかまわないということです。(またあとで書くようにオプションのための追加支払いもある場合があります)
その欄を見ると海外へは+$15とあります。ここでクリックすると次では+$15の送料も含めてトータルでの支払額があります。おそらくは自動で計算されていると思います。ここを次に進めるとAmazon USでのクレジット支払の画面となります。支払を終了させるとPledge手続きは終わりです。Pledgeをした人はbackerとよばれます。私のtweetを見ている方は私がI just backedというtweetをたまにしていますが、それはこのタイミングです。

プロジェクトの期間中は出資金額を増減したいときはPledge Managerを使用します。これは後で書くようにオプションが途中で追加されてオプション分の金額を増やしたいときに活用できます。また期間中であればキャンセルもできますが、それもPledge Managerから行います。

Kickstarterの各プロジェクトはUpdateとして途中経過が報告されますので、ここは目を通す必要があります。またメールでも知らせが来ます。開発状況、出荷遅れなどが書かれたりします。
プロジェクトが成功して目標額に達成すると、期間が終わったあとにサーベイという調査のメールが来ます。サーベイはbacker kitとも呼ばれることがあります。サーベイでは発送住所とオプションの確認が主な目的です。例えばRingでは海外送料はPledgeの際に加えますが、指輪のサイズはPledgeでは指定しないのでサーベイで聞かれるはずです。

オプションはPledgeで固定される場合とサーベイで後で決める場合があります。オプションが一個だけの場合は前者、複数オプションの場合は後者が多いようです。例えば、
ベース製品: $100
オプションA: $10
オプションB: $20
オプションC: $30

という組み合わせがあり、AとBが欲しい場合はPledgeではとりあえず$130払っておいて、サーベイでAとBを指定するというやり方です。このときCに変更しても良いと思いますが、出資金総額はこの時点では変更できないのが普通です。このサーベイはいくつかシステムがあるらしく、サーベイの方法はプロジェクトによってまちまちなのでメールをよく見て注意が必要です。

私が思うに、Kickstarterの一番のだいご味は開発中にコメント入れられるという点です。出資して作らせるのでフォーラムに好き勝手書けるのがクラウドファンディングの良い点です。もちろん聞いてくれるかどうかはわかりませんが、言うだけは言っておくというのが海外的なやり方でもあります。(日本的だとはじめから言わないでおく、という感じですが)
また実際に開発に取り入れてくれたりもします。Geekでは高出力を主張してたら高出力バージョンも追加してくれました。Kickstarterではありませんが似たようなクラウドファンディングのIndiegogoの方のGeek Pulseではキャンペーン開始時と終了時ではまるでちがったUSB DACになっています。外形デザインもユーザーコメントを取り入れ、オプションもどんどん追加され、ミニモンスター的になりました。
あとはiPhoneのポータブルフラッシュNovaではアプリへのSONYのレンズカメラのライブラリ対応を依頼しましたが、検討するとはありましたが対応不明。Ponoでは出力インピーダンスは低くしてね、DSD対応してねってコメントしときました。
いずれもこれらは単なるプリオーダーでは不可能なことで、開発中にユーザーが参画しているからこそできることです。このユーザーと作り手の関係が新しい点です。

クラウドファンディングによる開発はいままでにないユーザー参加型の製品開発でもあります。また、従来のビジネスモデルに対する変革でもあります。あるいは変革というよりは時代の変化に対する順応といった方がよいかもしれません。ハイエンドオーディオメーカーのLight HarmonicがStart-Up版の分身としてLH Labsを作り、Geek outを開発したのもそうしたトライアルであると思います。LH Labsではユーザーの声を直接聞くサイトも立ち上げました。Ayreも自分で製品を作るわけではありませんが、こうした新しい仕組みに参画することで得ることは大きいと思います。
作り手が買い手の顔が見えない、という時代からいまはもっと作り手と買い手の距離が近くなっています。その変化の背景にはIT進化があります。こうした新しい時代の新しいビジネスモデルとしてクラウドファンディングは面白い展開を見せていくでしょう。
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2014年03月12日

PONOプレーヤーのKickstarterキャンペーン開始

本日日本時間の2:55にPonoプレーヤーのKickstarterキャンペーンが開始されました。3/15からと当初描かれていましたが、のちにプレスリリースが改定されました。Geek out、Rocketsに続いてクラウドファンディングでのオーディオ製品開発もだんだんと増えてきました。
ページはこちらです。
PonoMusic - Where Your Soul Rediscovers Music
まず上記ページではPonoのイントロ動画がありますが、その出演ミュージシャンの顔ぶれがすごい。かつてこんなに多くの豪華ミュージシャンが登場したPVってないのでは。ニールヤングの人脈すごしです。
音質インプレも各ミュージシャンが語ってますが、たいていは「すげーぜ、こんな音聴いたことねーぜ」みたいなのはそこはそれ。ハイレゾの説明をソニーなんかでは理系で説明してますが、ミュージシャンがハイレゾ説明するとこんな感じ。でもセッションミュージシャンなんかはさすがに音が広くて楽器の配置が立体的でわかりやすいとか的確なコメントしています。ニールヤングはハイレゾをダイビングに例えて解説し、192kHzで水面で息が継げるって言ってます。

私も開始2時間後くらいに見に行ったところ、すでに100台限定のEarly Birdスペシャルは無し。早いよ!
私は$400のニールヤングスペシャルモデル(500台限定)をゲットしました。私がゲットした時点ですでに194台残り程度でした。この時点ですでに1000人以上が参加しています。
キャンペーンは4月16日までです。目標額は$80万ドル、Kickstarterにしては高いほうですが、これに満たないとキャンペーンがキャンセルされます。ただこの分だと大丈夫でしょう。開始後3時間ですでに目標額の半分いっています。かなりのスピードの立ち上がりです。これを書いてる時点ですでにKickstarterの電機部門の最も人気あるプロダクトになっています。
出荷は今年の10月の予定です。クラウドファンディングのKickstarterではプリオーダーと言っても製品量産開始前ですので、リードタイムが長くかかりますので注意してください。

Ponoプレーヤーはさきに書いたようにAyreのほかにAudioQuestの名前もあります。PCオーディオ周りがAudioQuestということですが、もしやゴードンも絡んでいるか?
三角形にしたのは円筒形のバッテリーを積むことで電源容量を確保するためだそう。フラットより円筒形の方が容量を稼げるようです。またデスクトップに置く時も安定してるからだとか。画面は縦横回転します。
Ponoプレーヤーの重さは128gでmicro USBで同期(PCとMac)と充電をします。電池は8時間ほどです。DACはES9018(CA情報)でバッファはディスクリートとたいしたスペックで、AyreのMPフィルタを採用して、自然な音再現を標榜しています。ただし内蔵メモリは128GBと書きましたが、64GBで、MicroSDの追加でトータル128GBということのようです。操作はタッチパネルで縦横回転します。
サポートフォーマットはFLAC、ALAC、mp3、WAV、AIFF、AAC(DRMなし)と一通り揃ってます。Appleロスレスもサポートしてるのは良いですね。
また、PC/Mac上の音楽ソフトウエアですが、この辺を見るとおそらくJRMCのOEMバージョンになるのではないかと思います。

Ponoミュージックストアのアナウンスもあり、配信フォーマットはFLACです。最大で192/24です。オールメジャーレーベルが用意されていると書いてあります。一つのアルバムで価格は$14.99 - $24.99です。
ストリーミングは予定しているが、当初はないようです。
前にニールヤングが新フォーマットを策定しているとうわさがありましたが、これははじめMeridianとやっていたのでMLPのことではないかとも言われています。(MLPは使われていないようです)

クラウドファンディングではPledge(出資額)に応じて対価がもらえます。PonoでのKickstarterキャンペーンの内容は以下の通りです。ちなみに製品化した後のPonoプレーヤーの予価は$399です。

$5 - Thanks - ただの謝意。ふつうどのKickstarterキャンペーンでもあるんですが、製品目当ての場合はここは名目だけのことが多くパスします。でもPONOではけっこうここにも人が入っています。ニールヤングに共感したぜ、という人が多いんでしょう。
$50 - PONO Music founders club - Tシャツとステッカー
$100 - ニールヤングのサイン入りポスター
$200 - Early Bird(早割) - ブラックのPonoプレーヤーを一台。100台限定であっというまに売り切れ。
$300 - ブラックまたはイエローのPonoプレーヤーを一台。海外へは送料で$15プラス。
$400 - 以下のアーティストスペシャルモデル。各タイプ500台限定。色はクロームでサインの浮彫。各ミュージシャンの代表曲の2アルバムが初めから入っています。レザーケース付き。
ニールヤング、ウィリーネルソン、トムベティ、パティスミス、パールジャム、ベック(ジェフベック?)、クロスビー・スティルス・ナッシュ、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(ニールヤングの加入ありなしで別)、デイヴ・マシューズ・バンド、フー・ファイターズ、ノラジョーンズ、レニー・クラヴィッツ、アーケイドファイア
$5000 - どれかアーティストモデル一台、ニールヤングとお食事権

一般へのお披露目は開催中のSXSWで、ニールヤングのスピーチ・インタビューは下記リンクで見ることができます。
http://sxsw.com/live
さて、Ponoはどう成長していくかはこのKickstarter次第ですね。書いてるうちからすごいスピードで伸びていてニールヤングモデルはもう売り切れです。ソニーがハイレゾのコンシューマーへの間口を広げたように、Ponoも別な層にアピールしてハイレゾのマーケットを切り開くかもしれませんね。

追記: 開始後9時間ほどで目標額達成しました!量産にGOです。
すごいハイペースです。
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2014年03月08日

ニールヤングがPono Musicを発表

ニールヤングが噂されていたPonoMusicの発表をしました。
http://www.computeraudiophile.com/f8-general-forum/neil-young-announces-launch-ponomusic-19703/

PonoMusicは単にDAPだけではなく、ハイレゾ音楽配信ストアのPonoMusic.comとそれを再生するポータブルプレーヤーのThe PonoPlayerからなります。
ユーザーはパソコン上のiTunesみたいな音源管理ツールであるPono desktop media managementというアプリケーションでPonoMusic.comからダウンロード購入してPonoPlayerに転送して聴くというエコシステムのようです。アプリケーションからは他のDAPにも同期できるようです。メジャーやインディー系の音源を用意するようですが、DRMは適用しないそうです。

ハイレゾDAPとしてのPonoPlayerはMeridianが開発に参画してたと言われてましたが実際に開発したのはなんとAyreです。(中を読むとわかりますが途中までMeridianが実際にかかわっていたと思います)
Ayreはポータブル作りそうにありませんでしたが、ハイエンドオーディオメーカーではChordに続いてAyreもポータブルに参入です。Ayreの総帥チャーリーハンセンがニールヤングに共感した旨を書いてます。
PonoPlayerのDACはESS ES9018です。おそらくは2Mでしょう。バッファはディスクリートです。またZX1なみの128GBのストレージを備えています。メモリカードも使えるようです。操作はタッチ式のLCDで、縦置きも横置きも対応しているようです。だからボディが三角形なんでしょう。上部の端子にはヘッドフォン端子とラインアウトが見えますね。またAyre得意のMP(ミニマムフェイズ)デジタルフィルター技術も採用されているようです。ハード的にはAyre的なものになるといってもよいかもしれません。価格は$399で、DAPとしてのPonoも予想以上で来ましたね。

で、、面白いのはニールヤングはこのシステムをクラウドファンディングのKickstarterで立ち上げようとしているようです。3/15から開始します。
私もKickstarterでは最近ウエアラブルデバイスのRingとかコンシューマ向けドローンのPocketDroneなんかに手を出してます。オーディオとしてはAurisonicsのRocketイヤフォンとかLH Labs(LightHarmonic)のGeek Out DACですね。
はじめこのAK240とかZX1の時代にPonoはジョブズの言葉を借りればDOA(dead on arrival - 生まれた時に死んでいる)みたいなもんではないかと思ってましたが、ニールヤングに賛同するかどうかはさておき、Ayre製のDAPってところにちょっとひかれます。ハード的にも思ってたよりハイスペックです。
またAyreもLightHarmonicのようにクラウドファンディングに参入しようとしているところも注目です。Ayre的にはそこがうまみなんでしょう。
価格は$399ですが、後発なので戦略的な価格付けできたというところでしょうか。Kickstarterではさらに安くプリオーダー価格で買えそうです。PonoMusic.comは音源だけではなくハードも購入できるようです。

なおリリースの日付が3/10ですが、CAは早期リリースの許可を得ているようです。先日Computer Audiophileの管理者のクリスさんがニールヤングに会いに行くって書いてましたがこの件だったんですね。
あとはニールヤングが言っていたといわれる新しい音楽フォーマットの件(スケーラブル・ロスレスのやつ)はどうなったかなど気になりますが、Ponoも忘れられた存在から今後の展開に注目できるレベルになったというところでしょうか。

追記3/11: Kickstarterキャンペーン開始は3/12に変更されたようです。
また現在開催中のSXSWにおいて米時間の本日ニールヤングがPonoを発表するようです。
posted by ささき at 23:31 | TrackBack(0) | __→ ハイエンドDAP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月07日

BitPerfect2.0とハイブリッドDSDフォーマット

Macの高音質音楽再生ソフトであるBitPerfectが2.0アップデートされました。このポイントはハイブリッドDSDという形式でiTunesライブラリ内でDSD音源を管理できることです。
この辺は前の記事に書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/385973395.html

上の記事では「ただどうやって埋め込むかは書いてませんので、続報待ちではあります。」と書きましたが、その手法が分かりました。
下記のDSD Masterというソフトを用いて作成するようです。
http://dsdmaster.blogspot.ca/p/bitperfect-introduces-hybrid-dsd-file.html?m=1

これはDSD音源を読み込んで、DSDからPCM変換したPCM部分とDSDオリジナル部分の二つをAppleロスレスにエンコードするという仕組みのようです。これがHybrid-DSDになるわけですが、通常ではPCM部分が再生されます。
ファイル名はmyfilename.DSDh.m4aのように.DSDhが挿入されることで区別できます。(これは単に識別のためでDSDhを手で削っても問題ありません)

PCM版を作る際に44-352kHzまで44k整数倍の範囲でサンプリングレートも指定できます。変換品質にも自信ありということ。AIFF, WAV, FLACにも変換できるということですので、DSD-PCM変換ソフトとしても使えるのかもしれません。

ちなみにBitPerfect2.0ではエンジン部分も改良されてプラグイン対応になったようです。
posted by ささき at 08:43 | TrackBack(0) | __→ DSD関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月02日

1964 Ears V6 stageレビュー

カスタムイヤフォンで最近人気を集める1964 EarsのV6 Stageを試す機会がありましたので、以下レビューを書いていきます。

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まず記事に入る前に簡単におさらいをしますと、ここでいうカスタムイヤフォンというのは個人の耳型をベースに最適なシェルを受注生産して製作するものをさします。対してユニバーサルイヤフォンというのは一般的なお店で買えるイヤフォンです(ユニバーサルとは汎用のという意味です)。そのためカスタムイヤフォンは一般にユニバーサルタイプより高価になる反面で最適な装着感と遮音性を実現できます。カスタムイヤフォンはプロミュージシャンが主に使うものでイン・イヤー・モニター(海外ではIEM、日本では通称イヤモニ)とも言います。しかしながらプロでなくてもオーディオ向けにもカスタムイヤフォンの高音質が人気を博してきます。

私がカスタムイヤフォンというものを始めて注文したのは2007年のUE11にさかのぼります。世界的にみるとミュージシャン以外でもUE10あたりからやっていた人も多いので早いわけではありませんが、それでもUE11のころから比べると現在のカスタムイヤフォンの情勢は大きく様変わりしています。そのころからHeadFiなどでもカスタムの世界は注目されてきました。
HeadFi的に海外のカスタムイヤフォンの世界を俯瞰してみると、大きく二つに分けられると思います。まず一つ目は老舗のグループです。この世界を創始したのはUEにいたジェリーハービーであり、ヴァン・ヘイレンのドラマーに制作した新しいイヤーモニターに端を発しています。
また、古くからイヤーチップの製作をしていたWestoneも老舗といえるでしょう。つまりUltimate Ears,WestoneそしてUEを出たジェリーが率いるJH Audioなどがこの老舗(あるいは大手)グループにあたるでしょう。カスタムではありませんがイヤモニという点ではShureも入れたほうがよいかもしれません。
もう一つは新興のグループです。これは2008年あたりにはじめはFreQとかLiveWirersなどが老舗グループに対して低価格を打ち出してはじまりました。しかしながら、これらはとても品質やサービスの点で問題が多く、そうそうに店じまいをしています。わたしもカスタムイヤフォンの出来には寛容なほうだと思いますが、FreQでは何度も手直しが必要でありうんざりした覚えがあります。
この辺の経験があったので、私は老舗グループ以外にはあまり手を出してはいなかったのですが、その間もカスタムイヤフォンの世界は進化していき、Unique MelodyやHeir、Nobleそのほか多くのメーカーが参入してきました。

HeirもユニバーサルのTZar 350などは試してみましたが、カスタムに手を出さなかったのはその辺もあります。
1964earsもそうした新興のブランドですが、今回1964earsのトップモデルであるV6 stageを試してみたところ音質・品質が共にとても高く上の新興ブランドへの考えが大きく変わりました。
こちらは代理店のMixwaveさんのサイトです。
http://www.mixwave.jp/audio/1964ears/1964ears.html

*1964 Earsとは

まず1964 Earsというユニークなブランド名称ですが、これは1964年がビートルズやローリングストーンズ、あるはフェンダーに代表されるように音楽のモニュメンタルな年だからです。つまり1964 ears(イヤーズ)を1964 year(イヤー)にかけているということですね。

創設者のVitaliy Belonozhkoはプロデューサー・サウンドエンジニアでありまた音楽家でもありました。彼自身がさまざまなブランドのカスタムイヤフォンを試しているうちにさまざまな長所や欠点に気がつき始めました。たとえばダイナミックドライバーでは中高音域に弱点があるが、バランスド・アーマチュアなら低域に問題があるという感じです。その辺を独自コンポーネントで解決する策を模索し始めたということです。つまり会社の成り立ちは既存のカスタムイヤフォン(あるいはイヤモニ)ブランドに不満があったということですね。そして独自に研究調査を開始したのが2008年で、1964 Earsとしてブランドを立ち上げたのは2010年の7月ということです。
ちなみにUE11が2007年で、JH13は2009年、UE18は2010年なのでカスタムイヤフォンがオーディオマニアにも盛り上がってきたあたりです。

会社の理念としては高品質のカスタムイヤフォン(イヤモニ)を手ごろな価格でミュージシャンとオーディオマニアに提供するというものです。1964 earsはカスタムイヤフォンが一部のロックスターのものではなく、高音質を求めるものだれしもが入手できるものにしたいということです。望むところはカスタムイヤフォンの標準となることです。

*V6 Stage

V6 stageは現在の1964 Earsのトップモデルです。
1964 Earsにはいくつかのモデルがあります。ここではV6 stageをレビューしますが、もうひとつV6というモデルもあります。このV6とV6 stageの違いというのは帯域レスポンスでV6 stageはwarmerということ。メーカーのほうではV6 stageはミュージシャン向けで、V6はオーディオマニア向けと考えているようです。(私はV6は試していないのでなんとも言えませんが)

V6 stageで採用されているCenterDrive技術というのはバランスド・アーマチュアドライバーにおいて、アーマチュアからダイアフラムに振動を伝えるドライブピンが従来のBAドライバーでは端のほうにあるのに対して、CenterDriveでは中心に近い位置にドライブピンを置いているというのが特徴で、それでセンタードライブと称しているようです。この効果としては低音域を効率的に出すことができるということです。
3D SoundというのもこのCenterDriveが寄与しているということです。

*インプレッション

届いたイヤフォンはペリカンケースに入っていてオリジナルの紙バンドで止められているのもユニークだしブランド性を感じます。ステッカーがついているのはアメリカ製品によくあるので、これもアメリカ製をよくあらわしていると思います。

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ケースにはクリーニングキットや標準プラグアダプタ、ケーブルクリップなどが入っています。ケーブルのコード長は1.2mです。プラグはカスタムイヤフォンとしては一般的な2ピンタイプで幅広いリケーブルも可能です。またこのプラグの精度もかなり高く、しっかりはまっているのでふつうはなかなか外れにくいと思います。この点リケーブルにも多少しんどいんですが、ミュージシャンなんかは抜けにくいので安全でしょう。

V6Stageを手に取ってみるとまず驚くのはシェルの透明度がかなり高いことです。気泡もなく完成度が高いと感じますね。

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実際にUE18と比べてみましたがこのくらいの差があります。まあUE18は年季が入ってはいますが。

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1964 Earsではシェルはドイツ製のアクリル素材を使用していて、何工程かのパフ研磨で仕上げているそうです。また音導孔の穴もトリプルボア(3穴)を実現しています。これは音の立体感などに大きく貢献しますね。かなり技術力の高い会社だと思います。

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まえがきでも書きましたが、私はカスタムイヤフォンの新興グループの初期の失敗からいささか偏見を持っていたところがありましたが、この時点でかなり見方が大きく変わりました。標準ケーブルも見た目になかなか品質が高そうです。シェルやプラグなどはUEやWestoneに比べてさえトップレベルです。
装着してみると、すっと気持ちよく耳にフィットします。ここがカスタムでは肝心なところですが、シェルのモールドは作りも装着感もかなりハイレベルだと思います。

音質は第一印象からかなり良いものです。透明感が高くすっきりして、曇りがなくクリアで見通しの良さが印象的です。解像力も文句ないですね。音の個性としては軽快感も感じられます。
いくつかDAPを試してみましたがAK100MKIIがお勧めです。

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AK100MKII + V6 stage

次に気が付いた点は音の広がりが良く立体感があるというところです。特に楽器の音が鮮明かつ明瞭でわかりやすいということと、定位感がきっちりと感じられることで楽器の位置関係がつかみやすいということです。このことによって三次元的な音の遷移も明確になります。特に気に入ったのはヴォーカルが際立って浮き上がって聴きやすい点です。歌詞の明瞭感も高いですね。
ミュージシャンのことは分かりませんが、音はバランス良く、ヴォーカルが聴き取りやすいのでモニターにも良いかもしれません。

もうひとつのV6Stageの良さは帯域バランスが程よいことです。標準ケーブルだと適度なピラミッドバランスで適度な低域の量感により音楽の雰囲気表現も厚みが出てきます。ベースが強い印象はあまり大きくなく、JH13同等か少ないくらいです。十分な量感はあるが誇張されて中音域に悪さをしているようではありません。超低域はよく低いところまで沈んでいるようです。本来的には軽快な音調のイヤフォンだと思いますが、このことにより音楽表現に多彩さが加えられます。中高音域はきれいな印象ですっきりと上に伸びていきます。アコギやヴァイオリンの音色もよいですね。

楽器の音は低域でも立体感を感じられます。ベースはタイトでアタック感、インパクトが十分あります。私がよく低域のリファレンスに使うBraian BrombergのHandsのソロアコベースで聴いてみると細かな解像力の高さとともにソリッドなベースの重みとインパクトもしっかりと伝わってきます。低域は豊かな感じですね。
ヘルゲリエンのジャズトリオでは楽器の分離感と定位感に優れ、楽器の位置がよくわかります。またさきに書いたようにピラミッドバランス的な程よい帯域バランス感が音楽を心地よく感じさせます。標準ケーブルだと低域に重心があるように思います。ジャズトリオのノリの良いリズム感も良好で、気持ち良くグルーブ感に浸れますね。

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iPhone5s + V6 Stage

次にAK100MKIIのように高性能なDAPではなく、iPhone5Sでも聴いてみました。再生アプリはNeutronで聴いてみましたが、やはり豊かでインパクト感のあるベースがよい下支えとなって音楽を豊かにします。また中音域や高音域もよく、クエンティン・サージャックの新作Piano Memoriesのプリペアドっぽい硬質なピアノの響きも美しく再現してくれます。ちょっとごちゃごちゃしたポップ曲なんかでも楽器やヴォーカルが埋もれずによく聞き分けられます。渋谷慶一郎のThe End - Aria for Deathなんかも電子音のビートとたどたどしいボーカロイドの描き分けがよくできていてかっこいいですね、かつリズム感もよく音楽に乗っていくことができます。
iPhoneで圧縮音源でも悪くありません。音の作りがよくまとまっているのでiPhoneから直でアンプなどを通さずでも満足できると思います。V6 Stageの空間表現の巧みさはiPhoneでも十分発揮されます。

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V6 stageの標準ケーブル

ここまでは標準ケーブルでの試聴ですが、次にリケーブルして聴いてみます。
ケーブル差し替え時のピンのはまりは固めで作りの良さと加工精度の高さを感じます。Heirのようにゆるいかきついかばらつくというのではなしに、適度な硬さであると思います。おそらくリスニング中や演奏中に不意に外れるということはないでしょう。

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ケーブルをWhiplashのTWagに変えると全体に透明感が増してよりシャープになるとともに、やや低域が抑えられるのがわかります。おそらく標準ケーブルが低域を少し増していると思います。素のV6 Stageはもっとフラット傾向なんでしょう。

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HiFi M8 + Beat SuperNova + V6 stage

Beatのバランスケーブルを使ってみても面白いですね。ただでさえ広いV6Stageの表現力がHIFiM8+バランスで加速するかのように豊かな音空間を作り出してくれるのもなかなか独特の世界です。

いろいろ試すとEstronケーブルのVocal(2pin)が相性が良いと思いました。Estron Vocalケーブルは中音域だけではなく全域のレスポンスが巧みで透明感も高いのでV6Stageとはよく合いますね。楽器の音がきれいに広く伸びて行く感じが秀逸です。低域もこの程度が程よい感じだと思います。
また、より切れ味が鋭くなる感もあります。パーカッションのインパクトも切れよく、打撃感がよく伝わってきます。もちろん名の通りにすっきりとして聴きやすいヴォーカルはV6stageの魅力をよく引き出します。
V6 Stage+Estron(Voval)とiPhoneなんかもかなり良い組み合わせで、iPhone単体でこれだけの音が出ることに驚くでしょう。もちろん超高性能のAK240でも優れた性能を聞かせてくれます。AK240で再生すると楽器の音再現がとても美しく、中高音域でありえないような音空間が再現できますが、低域の迫力も一級でワイドレンジを感じさせます。(Estronの中ではBassとVocalがワイドでMusicがナロウです)

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AK240 + V6 stage + Estron vocal

標準ケーブルの音バランスも好ましいので、ここは好みではありますが、本来のV6Stageの良さはEstronとの組み合わせのような気がします。V6Stageはこのように少しいじっていくだけでもカスタムイヤフォンの中でもかなりトップクラスの音になると思います。

他のメーカーと比較すると価格も手ごろさと、音の透明感や軽快感、シェルの透明感などで優位感があると思います。
いままでは老舗グループのUEやJHA以外には手を出さなかったんですが、知らなかったのがもったいなかったと自戒しました。1964 Earsは音質・品質ともそうした老舗グループに立派に匹敵する優れたカスタムイヤフォンだと思います。


    
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