Music TO GO!

2013年05月29日

ネットワークプレーヤーにおけるDSDネイティブ再生の考察

最近ネットワーク経由のDSDネイティブ再生についてはJRMCのDoPE(DoP Ethernet)とかバッファローのDSD対応NASとかいろいろ出てきてわかりにくくなってきたんで自分なりにまとめてみました。(前回の記事も参考にお読みください)
このDSDネイティブ再生に限らずデータ伝送というものを考える際のポイントは伝送している中身はなにか?それをどう知るのか?ということです。本記事ではこの点に着目して考察していきます。

*PC上でのDSDネイティブ再生
例) PC->USB->DSD対応 DAC

まずPCの(従来の)USBでのDSDネイティブ再生ですが、まず再生ソフトウエアはハードディスクなどからDSDファイルを読みます。このときはファイルの拡張子で中身が何かを知ることができます。そして再生ソフトウエアからドライバーやCoreaudio経由でDACに転送するときは、これらの続くシステムソフトウエアが中身がPCMかDSDかを知ることが重要です。これはUSBにしろSPDIFにしろ、オーディオデータとしてハードにアクセスするときに搬送するフォーマットを知る必要があるからです。つまり単なるバイナリの塊ではなく、クロックとかサンプル、タイミングというものを意識したオーディオデータとしてドライバーがDACに送っているからですね。それゆえ中身としてDSDを認識できないシステムソフトウエア(ASIO以外のほとんど)では一般的なPCMに見せかけたDoPが必要になります。以降はこれを踏まえてご覧ください。

*ネットワークプレーヤーにおけるDSDネイティブ再生
例) NAS->DLNA->DSD ネットワークプレーヤー

- DLNAでのネットワーク接続

ネットワーク経由でのDSDネイティブ再生ですが、ネットワークにもいろいろあります。そこではじめにDLNAの話をします。
DLNAというのは決め事のようなもので、実体はプロトコルとしてuPnPを使用しています。またuPnPはつまるところhttpを使用しています(ウエブと同じ)。すなわち一番下のレイヤーはhttpです。(アプリケーション層では一番下という意味です、と書いておきます)
ここでのポイントはhttpはどうやって伝送している中身を知るか、ということです。それはファイルの拡張子ではなく、インターネット上の約束事であるMIMEタイプを使います。これは歴史的な理由からですが、MIMEは元は電子メールのためのものです。もともとインターネットはアメリカの文化ですから英字(ABC)だけ表現すればよく、それは7bitで足ります(これをASCIIコードといいます)。そのため初期のインターネットは7bitでのデータ送信を前提にしていました。
しかしネットが進化して日本語のように漢字や半角カナが使われたり画像が送られるようになると7bitではなく8bitをフルに使ってさらに2バイト以上の表現が必要になってきました。これを識別するのがMIMEです。MIMEはインターネット上の拡張子といっても良いかもしれません。MIMEを省略した場合にはインターネットの約束として7bitのASCIIテキストとみなされます。(これは見かけ上はUTF8のBOMなしと同じという点がミソなのですが、別の話なので省略します)
MIMEタイプがないとPCで言うとファイルの拡張子がないのと同じですから受け手は開き方が分かりませんし、送り手は伝送の仕方が分かりません。MIMEは具体的に書くと(audio/wav)のような記述です。
ストリーミングはファイル転送しながら逐次再生することと同じです。ストリーミング再生はhttpだけではありませんが、http(DLNA)ではMIMEタイプを知ることでストリーミング再生とかライブラリの取得ができるというわけです。

次にこれを踏まえたDLNAの問題点です。それはDSDファイルがMIMEタイプとして標準化されていないという点です。
実のところ昨年の春のハイエンドショウの時点ですでにスフォルツァートがDSD対応のネットワークプレーヤーを出していましたが、これはWAVにDoPを埋め込むといういわゆるminimServerでいうところのトランスコードしていたわけです。スフォルツァートはDLNA対応ですが、なぜこうしていたかというと、DLNAというものがMIMEタイプでDSDを規定していないからです。DSDファイル形式を考えに入れていないからメディアサーバー内(NAS)のDSDファイルがそもそも見えないということによります。下記に記事を書いています。
2012/5/19のハイエンドショウ記事

今回発表されたバッファローの「DSD対応NAS」は下記のitmediaリンクを見ると書いてありますが、「拡張子」を変えたとありますがこれはMIMEタイプのことでしょう。これを仮に規定することでDLNAでのDSDの再生やリストというものができるようになったというわけです。
itmediaリンク- DSDのネットワーク再生を推進するバッファロー

- DoPE(DoP Ethernet)とは

一方でこれまで見てきたDLNA改良の枠内でDSD再生が可能ならば、DoPEとはなにか、これは必要なのかということが問題となります。
なぜかというと、DLNAでDSDがaudioデータとして伝送されるならば、http上はサンプルとかクロックを意識しないバイナリの塊ですからファイルの中身がPCMかDSDかは気にしないはずです(PCで言えばバルク転送)。つまりPCMに見せかける必要もなく、DoPは必要ないはずです。上で書いたように本来ネットワークサーバーではDSDファイルそのままで転送できるはずなので、DoPのようにPCMエンコードというひと手間をかける必要はないように思えます。

これはJRMCのエンジニアに直接聞いてみたんですが、やはり私の上の考えは正しいようで、ネット上でDoP(PCM)にする必要性は本来はないそうです。それではDoPE(DoP Ethernet)とはなにかというと、RenduなどはもともとMinimServer(DLNAメディアサーバー)がサポートしているトランスコードの仕組みでDSDネイティブ再生がなされています。トランスコードはつまり昨年のスフォルツァートのような中身がDSD(DoP)でガワはWAVみたいなやつです。基本的にこの転送に対応しているように設計しているので、DSDに関してはDSDそのままではなく、DoPエンコードを前提としています。
つまりJRMCからRenduにDLNAの仕組み(=uPnP/http)でネット経由で送るときにも本来はDSDそのもので送れるにしても、Renduの都合を考えてDoPでエンコードして送っているわけです。DoPEではMIMEタイプはaudio/wavを使用しているということです。つまりDoPEとはMinimServerで言っているトランスコードと同じですね。ファイルはWAVで中身をDSD(DoP)にしています。
JRMCエンジニアの話によるとDoPEの必要性はこうしてDoPを必要とするレンダラーに送信できると共に、DSDフォーマットをWAVに統一できるというメリットがあるということです。

- DLNA以外のネットワーク接続

またネット越し(ネットワーク透過)といってもDLNAだけではありません。OppoではSMBではDSDネイティブ再生できているけど、DLNAではできないという問題もあったようです。(対応予定とのこと)
前述したように問題にしているのはhttpでのmimeタイプですから、OppoのSMB接続はこの点(DLNAでのMIME問題)は問題にならないですね。SMBはファイルシステムの延長ですから、中身が何かは通常のPCの拡張子でわかります。
SMBの下位はNetBIOSですから転送というより共有ですね。NetBIOSでOKということは、Samba使えばLinuxでもオーケーということです。OppoとMPDではこれで大丈夫ではないかと思います。

*

ちなみにネットワークでのDSDネイティブ再生と言っているものはどの場合でもそうですが、PC上でローカルにUSBやSPDIFでDACにDSDデータを伝送しているのとは話しているレベルが違います。ネットワークでのDSDネイティブ再生と言っているのはPC上でローカルの場合で言うと再生プレーヤーソフトがファイルを読む段階の話です。DACに出すときの話ではありません。端的に言うとPC上ではHDDからDSDファイルを簡単に読めますが、そのファイルがネット越しにあると読むのにひと工夫必要になるということです。
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2013年05月28日

清里の乗馬と写真と音楽と食と温泉の旅行記

昨年も定期的に清里に行って乗馬がてら写真も撮って楽しむという週末を過ごしてきましたが、今年もまた長い冬が明けて昨年11月以来初めて行ってきました。清里ではなんと先月の今頃まで雪が降ってました。

まずメインの外乗(遠乗り)ですが、これはいつもは馬場でレッスンを受けているのを、馬場から出て山の中を騎乗しながら歩き回ったり走ったりするというものです。こちらはお世話になってる牧場です。向こう側に見える木々の中に入っていきます。

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iPhone5

今回は乗馬の日(月曜日)は天気がやや悪かったんですが雨は降りませんでした。乗る馬はサラブレッドではなく中間種という種類で、平地で速いサラブレッドよりも山の中は足腰が強いもの。スポーツカーと4駆みたいな違いですね。ここの写真はGoPro2の写真モードで撮ったものです。VoctorのGC-XA1も試しに買ってみたんですが、これは画質がいまいちで静止画モードはさらに良くなかったですね。GoPro HERO2は超広角カメラとしても十分に使うことができます。画質も良いですね。

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GoPro2

上は出る前に馬場で馴らしをしているところ。しかしこの時に左の鐙(あぶみ)がすぽっと取れて汗かきましたが、馬場でよかった。しばらく牧場主が鐙を直してる間に片方の鐙だけで踏んで、抜けたほうは足で馬体を挟むという半裸馬状態で乗ってみましたけど、全然バランス取れない。よくローマ時代とか昔の人は鐙なくて乗ってたな〜と感心。鐙が直るといったん下馬して乗り直しますが、いつもはぬるく踏み台つかって乗るところ、踏み台なんか使わず乗れ、ということで映画みたいにひょいと乗ろうとするけど、馬はそもそも高いので一発じゃ無理。二・三回やってやっとオーケー。

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GoPro2

そうこうして牧場から出て清里の木々の中に乗り出します。今回は新緑が美しかったですね。
ちなみに馬は道交法では軽車両なので道路では左側を歩きます。

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GoPro2

だいたいの写真において前の馬との距離が一定であることに気がつかれると思います。これが外乗でのポイントで、馬はこうして隊列組んで整然としているのが一番安定してます。が、山に入ると馬にとっては周りがみなバイキング料理の皿みたいなもんですから勝手に草を食おうとしたり、乗り手に飽きたり、用足したりするのでそれを乗り手がきちんと指示して前の馬について行かねばなりません。それが遅れると即座に指導員に怒られます。そこが単に馬にまたがって見物してるわけではないというところです。まあここの馬はみな慣れてるので勝手に詰めてくれたりしますけど。。

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GoPro2

下の画像で遠くに見えるのは八ヶ岳の主峰赤岳(だと思う)で、なかなか姿を見せてくれないのですがこの時は曇りでも姿は見えました。下右は牧場に帰還するところです。

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GoPro2

そして清里に行くとやはり普通に写真も撮りたくなります。日曜は晴れてたので写真には良い日和でした。清里の周辺や野辺山の電波天文台もお気に入りの写真スポットです。下左は清里の朝、下右は電波天文台(左側)近辺の野辺山をパノラマで撮ったもの。

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iPhone5

今回の写真のメインは少し前に買ったSONY RX1でいろいろ撮りました。RX1はけっこう気に入っていてレビューページも作成中です。

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iPhone5

清里の写真もまた別にアップしますけど、今回は野辺山の天文台では見学の際に携帯電源オフが必要なのでiPhoneでは電波アンテナを撮ってません。そこでプレビュー的にRX1で撮った写真をアップします。左はJPEG撮って出しで、右はモノクロモードです。RX1の隠れた長所はモノクロが良いところです。

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SONY RX1

清里は美術館とか博物館もなかなか見所があります。下はホールオブホールズというオルゴール博物館(ここは内部写真可です)。前にユダヤの金持ちが作った自動ピアノのことを書きましたが、今回は人が少なかったので特別にリクエストしてこの自動ピアノを独占状態でたっぷりと楽しんできました。

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iPhone5

よくこのロール紙のアナログ記録だけでこんなに複雑なタッチが記録できるなと感心します。ペダルの動きももちろん加味されているとのこと。最新のヤマハのグールド再現イベントのデジタル自動ピアノよりも90年前のアナログロール紙記録の自動ピアノの方がリアルで生っぽく自然ですね。ガーシュインとラフマニノフが実際に自ら記録したラプソディインブルーと鏡を聴きましたが、本人の演奏を聴けるとはなんともぜいたくな。当時は作曲家が小銭稼ぎでよくこういう自動ピアノの記録をやったということ。操作もシンプルでロール紙の自動巻き戻しもあるなどユーザーフレンドリーです。下はガーシュイン自ら録音したラプソディ・イン・ブルーの演奏をiPhone5で撮った動画です(97MBあります)。



実際にオルゴールって初期は金装飾をして貴族のステータスだったけど、時代が移ると家庭で使われるように考えられてきて、当時のホームオーディオみたいなものだったんではないかと思います。実際このユダヤの自動ピアノなんかは現代のどんなハイエンドオーディオ機材でもかなわない究極の家庭音楽鑑賞ですね。

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iPhone5

清里の食に関してはこちらは名物ロックのカレーです。ボリューム多すぎではありますが、これを食べないとどうも清里に来た気がしません。壁の言葉"Do your best and it will be first class"(最善を尽くして一流たれ)は清里開拓の祖と言われるポールラッシュの言葉です。
それと清泉寮ソフトクリーム。こちらはKeepファームショップだと清泉寮の売り場よりあまり混まずに買えます。Keepファームショップの周りは下のような景色が広がっていて、これ見ながらゆったりと清里気分に浸りながら濃厚ソフトクリーム食べるのが定番。

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iPhone5

清里グルメ系となるとこちらは中村農場の親子丼です。やはり卵がおいしく濃厚です。鶏もいいけど、こちらは東京のきちんとした地鶏のうまい店ならこのくらい出すかなあと言う感じ。でも卵はやはりここでないとこれだけの味は無理かも。御膳と言うと余計な惣菜が付いてくるので単品スープ付きと頼むと良いです。中村農場ではラーメンもけっこう良くて、鶏ガラスープが抜群。今回はラーメンメニュー改定ということで次の日も行こうとしたんですが混んでいて断念。

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iPhone5

今回はこれのほかに仙人小屋という食事処でクマ焼肉定食を食べる予定でしたが、行ってみるとすごい混雑。ただでさえ食事出すのにすごい時間かかると言われているところなんで今回はパスしました。こちらは次回持ち越しテーマとなります。

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iPhone5

盛りだくさんの週末をいやすにはやはり温泉。上は天女の湯で、露天風呂は新緑やつつじが美しかったですね。
泉質も柔らかめで疲れた体には良い感じです。温泉で残されたテーマは増富ラジウム温泉とほったらかしの湯ですが、これもまた清里から往復一時間以上かかるので次のテーマ。

さて次の清里行は梅雨のさなかになりますが、どうなるか。。
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2013年05月23日

ゴールドベルク変奏曲(弦楽五重奏曲版) - 松原勝也

本アルバムはバッハの有名なゴルトベルク変奏曲を弦楽アレンジしたものです。ポイントは一般的なカルテットではなくコントラバスを加えて五重奏のクインテットとした点です。低域にコントラバスが加わることで全体的にも音に厚みが増し、カルテットの軽快なイメージからすると重厚さもうまく演出されています。

もうひとつ本作の長所となっているのは弦楽器の利点を生かして音をゆっくりと長く引いているところです。ゴルトベルク変奏曲というとグールドのピアノ演奏のテンポが速くリズミカルな印象が頭に浮かびますが、こうしたよく聴かれるピアノアレンジとの差が明瞭に浮き出ているのが本作品の面白いところだと思います。このため聴いていて気持ちよく、癒しの音楽的な心地よさがあります。聴いて疲れないところも良いですね。
ゴルトベルク変奏曲はチェンバロがオリジナルですが、チェンバロの発音の仕組みは弦楽器に似たものがあります。またゴルトベルク変奏曲はもともと眠れぬ貴族のために作曲されたという話ですので、さまざまな意味でとてもオリジナルの作曲意図に忠実でゴルトベルク変奏曲の本来あるべき姿なのかもしれません。

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2013年05月20日

Jaben日本語ストアオープンしました

ついにというか、Jaben日本語ストアが本日オープンしました。アドレスは下記の通りです。
http://jaben.net/jp/shopping/home.php

いままでうちのブログでJaben製品を取り上げてきました。しかし欲しい方はシンガポールのJabenストアに注文くださいと書くのもやや心苦しかったのですが、これで日本語で注文して日本から送られることができます。一部修理などは製品の性格上で海外送りになると思いますが、修理送り先や一次サポートは日本語で受けられます。
第一弾としては先に書いたベイヤーバランスヘッドフォンとアンプセット、新型イヤフォンPro One、そして私の記事がプロの手で英訳されているところのヘッドフォンブック英語版がラインナップされています。ヘッドフォンブック英語版はやや高価ですがJabenのポータブルアンプがおまけで付いてきます。

支払いはPaypalと銀行振り込みがあります。Paypalは例の10万円制限があるので、ベイヤーなど高価なものを買う際には本人確認をしておいてください、銀行振り込みは問い合わせるとあとで振込先を教えてくれるそうです。
ちなみに先に書いたベイヤーバランスヘッドフォンとアンプセットはなんと本日の正式発売前に初期ロットが売り切れたそうです。現在はアンプの入荷待ちということです。
そのうちあのPhonak PFE(フォナック)も扱うようになるそうですが、気になる人は上記サイトをチェックしていてください。
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2013年05月18日

ドイツ・ハイエンドショウ2013から

ヘッドフォンショウの熱気も覚めやりませんが、先週は地球の裏側のドイツではハイエンドショウが開催されていました。海外のサイトから注目機種などあげてみます。

まず今回一番目を引いたのはGrimm Audioのブースです。
http://www.audiostream.com/content/grimm-audio-ls1s-trendspotting
Grimm Audioはプロのスタジオ機器のメーカーで、Channel Classicsのところで触れましたがDSD対応 ADCが知られています。このスピーカーもスタジオモニター的なものだと思いますが、これは面白いことにスピーカーにあのBruno Putzeys(iQubeとか)のハイペックスのアンプモジュールを搭載してアクティブとして使用してスピーカー同志はイーサネットで接続するというものです。(どちらかがマスターとなる)
Grimm Audioがコンシューマー向けの展示をするというのも面白いのですが、もっと注目はこの参考出展されたDSD対応USB DACです! 待ってましたという感じです。
http://my-hiend.com/leoyeh/2013b/IMG_3515ss.jpg
最近DSDイベントの準備やっててChannel ClassicsのDSD音源を聴き比べてたけど、やっぱりGrimmのADC使った音源はあきらかに他より滑らかでいわゆるアナログ的な良さがあります。このDAC版があればなあ、と思ってましたがいよいよ現実になりそうです。形からプロ機材的ではありますが、DSD関連では一番の注目機種ですね。Grimmの動向に注目したいところです。

DSD対応DACというとこのナグラのDACも面白いところ。ナグラがDSDを扱うDACを出すというのも面白いですが、このデジタル部分はPlaybackのコッチ先生が設計してアナログ部分の担当がナグラということ。
http://www.audiostream.com/content/nagras-new-dac
DSD自体はハイエンドショウを通した話題でもあり、多くのメーカーのところには"DSD is coming soon"と書かれていたそうです。

DSD関連ではフランスのレーベルQuobuzでもDSD配信をするということです。これは普通のダウンロードの話ですが、QuobuzはSpotifyと並んでストリーミングでも有名なところです。
http://www.audiostream.com/content/qobuz-0
ストリーミングと言えばやはり今週行われたGoogleのカンファレンスでGoogleのストリーミングサービスが発表されアップルの先手を打ちました。日本はあいかわらず蚊帳の外ですが、このへんにも注目したいところです。ただ以前紹介したようなOraStreamのように高品質ストリーミング配信という点も進めていただきたいところですが。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/274617721.html

ヘッドフォンショウではBMCをアンプに使ってHM901のデモをしましたが、そのときにBMCの濃密でかっちり芯のある音がいいなあと思っていました。そこで注目なのはこのBMCのPureDACというDAC+ヘッドフォンアンプです。これはなんと4pinのバランス駆動も可能なヘッドフォンアンプを備えています。$1600という価格も良いですね。
http://www.audiostream.com/content/bmc-puredac

こちらはスーパーコンピューターかよというOpera Onlyパワーアンプです。なんとピーク出力16万ワットというもの。RMS 6万ワットですが、これ記事にも注釈がありますがスペックの60.000 wattというのは60ワットではなく、6万ワットです。これは欧州では日米と違ってピリオドがコンマの意味だからです。念のため。
とはいえこれただのシンボル的に作ったそうです。
http://www.audiostream.com/content/opera-only

ヘッドフォン関係ではErzetich Audioのヘッドフォンアンプが紹介されていました。東欧スロベニアの製品だそうです。ちっょとバーソンを思わせる感じ。
http://www.innerfidelity.com/content/2013-munich-high-end-show-erzetich-audio-headphone-amplifiers
BacillusについてはHeadFiにレビューがちらっと出てますね。小さくて安くてがっちりして音も良いという感じでしょうか。
http://www.head-fi.org/products/erzetich-bacillus-headphone-amplifier/reviews/8064

こちらはHIfiMan総帥のFangです。Fangはこちらに出ていてヘッドフォンショウには来られなかったので私が日本の皆さんに当てたメッセージを読みました。
http://www.innerfidelity.com/content/2013-munich-high-end-show-hifiman-re-400-and-re-600
ハイエンドショウではRE600やRE400も積極的に展示していたようです。日本では901で手いっぱいでしたが、こちらももっと展示するべきだったかも。

AK120も注目機種として紹介されています。
http://www.innerfidelity.com/content/2013-munich-high-end-show-astellkern-ak120-high-resolution-portable-audio-player
iBassoが最近発表したDX50ははじめはDX100の下位機種としてES9023など使うのかなあと思ってましたが、情報が出てみるとWM8740を使用してコンパクトでAndroidなしと、DX100の下位機種というよりもAK100の対抗馬のような機種でした。出力インピーダンスを明記しているところもAK100を意識してますね。
http://www.ibasso.com/en/news/show.asp?ID=116
この分野も切磋琢磨しながらますます成長していきそうです。
posted by ささき at 07:58 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月12日

Music To Go!本のAmazon予約を開始しました!

昨日のヘッドフォン祭では下記のように本の雑誌社さんのブースでMusic To Go本の紹介をさせてもらいました。

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本は下記のAmazonで予約を開始しましたので、よろしくお願いします !

posted by ささき at 21:56 | TrackBack(0) | ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヘッドフォン祭2013春

今年のヘッドフォン祭は私はいろいろとイベントがあったので、レポートというのはできないんですが「それぞれのヘッドフォン祭」ということでちょっと書いてみます。

朝は8時くらいからシステムの準備と10Fで使うスピーカーのセッティングなどやってました。席のどこでもそれなりに音が聴けるようにしないといけませんからね。これはHM901のラインアウトからBMCのプリアンプとパワーアンプ(プリとパワーはBMC独自の電流増幅接続)を使いELACのフロアスタンドスピーカーを鳴らすという堂々としたデモです。ハイレゾDAPの能力を示すショウケースともいえます。

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その他いろいろが終わると会場を少し見て回ります。
さっそくJHAのJerry Harveyに会いに行き、2ショット写真など撮りました。タトゥーなんか見るとこわおもてに思いますが、実際は気さくなとてもいい感じの人です。

タイムロードさんのEdition 12はEdition 10とは色違いだけではなく振動版もゴールドプレーテッドで異なっているようです。
聴いてみるとEdition 10のきつさが緩和されて良い感じになっているようです。

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こちらはiFIのUSBケーブルGEMINIです。二口というだけではなく途中三カ所にフィルタがついていてなかなか半端ないケーブルになっています。iFiもさすがですね。

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こちらはフォステクスのTE-05です。1万前後でダイナミックのアルミ削り出し、MMCXコネクタでリケーブル可能という面白いもの。音ははじめFADあたりを思わせましたがベースもどっと出ますね。ただしこの辺はまだ調整中とのこと。

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こちらはヘッドフォン祭で一番驚いたかも。あのHeadFiでも人気のフォナックのイヤフォンPFEシリーズがJabenから販売されていました。実はこれずいぶん前にもヘッドフォン祭に誘おうとしたんですがだめだったもの。今回はいろいろと経緯があるようで今後の展開はけっこう面白そうです。安価なPFE012が有名ですが、ハイエンドのPFE232もSE535とかWeston4対抗としてよく挙げられますね。

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そうこうしているうちに午前は11:00からのiriver AK120発表会です。この中ではAK120の新機能としてDSD再生とUSB DAC対応がアナウンスされました。ただどちらも詳細については良くわかりません。

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この中で5分ほどAK120についてコメントを述べさせてもらいました。こちらはしゃべった通りではないかもしれませんが、こんな感じでしゃべりましたという内容を書き起こしたものです。

「一週間ほどAK120のデモ機を借りて使用してみました。AK120という名前からはマイナーチェンジのようにも思えます。実際に外観はこのようにキープコンセプトでコンパクトであり、操作性も良いところは100に対しての120というところですが、中身の音に関してはAK200でもよかったんじゃないかということです。今回の大きなポイントは音質という点にあると思います。
レコーディング現場でのコメントという点ではさきに原田さんなどのコメントがありましたが、私の方からはオーディオ的な立場で少し解説してみます。
普通こういうiPhone(とiPhoneをみせる)のようなプレーヤーのオーディオはカスタムICで統合されてワンチップで入っています。つまり大量生産ですね。
一方で(AK120を見せて)こうしたオーディオに特化したハイレゾデジタルオーディオプレーヤーはDACと呼ばれるデジタル音源を音楽信号に変える部分と、アンプと呼ばれる音楽信号を増幅してイヤフォンを駆動する部分の二つに分かれます。今回のAK120はその二つにそれぞれ改良がなされています。
まずDACがデュアルDACとなりました。つまり左右をそれぞれ独立して担当することで音質を高めるということです。DACに使われるIC自体はAK100と同じですが、この効果は予想以上に大きかったと思います。左右独立という点から想像できる音の立体感も際立っていますが、いままでひとつのチップで2つのことをやっていたのを1つのことで済むわけですから、性能も上がります。解像力など音楽の細部の鮮やかさもAK100から大きく向上しています。AK100と同じ曲を聴いていても感動が違います。
もうひとつのアンプ部分の改良は出力インピーダンスが低くなったということです。前は22オームあったのが3オームとなりました。ここは説明がむずかしいのですが、この値が低いとダンピングという駆動力が高くなります。ユーザーではここを不満に思う人が多く、世界のあちこちで改造品が作られたりしました。今回はこれが改良されて特に低域の再現力に違いがあります。
しかしこれはiriverも知らなかったわけではなく、iriverほどの国際的な企業になると各国の安全対策のためにやっていたというわけです。しかし今回はユーザーの声を聴いてくれました。無視する企業も多いのですがこの姿勢は良いですね。また日本からのリクエストにも特に聴いてくれた気がします。そうした意味では日本のユーザーが育てたといっても良いでしょう。
一方でサイズは前と同じくらいコンパクトで、多少大きくなりましたがしばらく使っているとサイズが大きくなったことは忘れる程度だと思います。このように外から見るとキープコンセプトのAK120で、中がAK200と言えるほど変わったというのは理想的な形と言えると思います。
AK100シリーズの良さっていうのはだれもが使える高性能DAPを目指したところだと思います。その点でハイレゾ時代のiPodのようなスタンダードな存在になりうる可能性を持っていると思います。
AK120は今回のDSDとかUSB DACなどさらに深化しています。アユートさんというPCに強いところでこれらの機能を活かして可能性をさらに広げてもらいたいと思います。」


AK120はいま製品版も試聴していますが、バーンインはそれなりに必要ですね。2-3日もすると磨かれてきます。この辺も小型ながらいかにも本格オーディオ的なところです。


午後はHifiMan HM901のイベントを行いました。今回は世界中のHifiManスタッフが集まりました。アメリカからは欧米マーケティング担当のDoug Leavy、台湾からはアジアパシフィック担当のRichard Yeh、中国からも本社サポートスタッフが来ました。ただだれも日本語が話せないので私が通訳など手助けしました。スクリプトなどは彼らが持ってきたものを使用しました。
二回とも満席ということでありがとうございました、二回目は音が出ないトラブルがありましたが、すみませんでした。
流れとしてはDougがHM901の機能紹介を行い、逐次私が翻訳して(多少自分的に補足しながら)進めます。次にRichardが用意してきたスクリプトを読みながらHM901の特徴に沿ってスピーカーでデモをします。
とても小さなDAPから出ていた音とは思えないような再現力があったと思います。
最後に今回は来られなかったHifiManの総帥Fang Bien氏からのメッセージを読み上げました。こちらは下に再録します。

「日本のHifimanファンのみなさま
この青葉豊かな五月にふたたび皆様とお会いできて光栄に思います。残念ながら私自身は参加することができませんでしたが、我々のスタッフが製品版のHM901とRE600を持参しました。
お待たせしましたが、大きな改良を重ね納得の行く素晴らしいものに仕上がりましたので待つだけの価値はあったと思います。この期間我々は音質追求のためだけに時間を費やしました。
ここに集まっているすべての方にお礼を言いたいと思います。また日本スタッフにはHifiスピーカーでHM901の可能性を引き出す機会を準備していただきありがとうございました。
これからもHifimanをご愛顧お願いします。
代表 Fang Bien」


それとアンプカードの種類を紹介しましたが、アンプカードには標準のアンプカードの次にはバランス駆動アンプカードが出て、それ以後は開発中で予定となりますがHM801と同じようにマルチウエイBAイヤフォン向けのアンプカード、あるいは平面駆動向けのものも出るかもしれません。ここはまだ未定のようです。
今回デモで使用したHM901をメディア用に貸し出しできますので、トップウイングさんに連絡お願いします。
しかしデモで使用したBMCのアンプはとても濃密で芯があり良かったですね。

今回のヘッドフォン祭はこういう感じで忙しかったのでほとんど展示は見られませんでしたが、人気があったのはSE846とパルテールでしょうか。SE846は整理券を発行するほどで、パルテールは長蛇の列ができていました。新時代のイヤフォンに対する期待も大きいということですね、

HeadFi系で見せてもらったのはこのタイのAK100改造モデルで、RWAK100と同様の抵抗カットと結線の高品質化をしています。あとピアノフォルテに特化したとあるのが面白いところ。

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またHeadFi経由で某国ブランドからアンダーテーブルでハイエンドイヤフォンをちょっと見せてもらいました。あまり詳細は言えませんが、プロトタイプを聞かせてもらったところ音がイヤフォンにしては豊かな音が印象的でした。こちらは次のヘッドフォン祭に登場するかもしれません。

HeadFiチームのインプレッションは下記スレッドで始まっています。
http://www.head-fi.org/t/663501/tokyo-fujiya-avic-spring-may-2013-impressions

次はまたHeadFi関係もけっこう来日を予定している人もいるようでまた今回以上にすばらしいショウとなることを期待しています !
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2013年05月10日

Shureの新フラッグシップSE846発表会とインプレッション

昨日はShureの新フラッグシップイヤフォンの発表会に行ってきました。
今回発表されたのはSE846という3Way 4ドライバーのモデルで高域1、中音域1、低域2のドライバー構成です。

SE846CL_Beauty_01_LR.jpg     SE846CL_Highlight_01_LR.jpg

プレゼンはイヤフォン部門のマットエングストロームとショーンサリバンによって行われ、技術解説は主にショーンサリバンによって行われました。いままで5xxだったのになぜ8xx?という問いに対しては特に意味はないけどすごいのができたから8にした、ということでした。

IMG_0729.jpg     IMG_0757.jpg
ショーンサリバンとマットエングストローム、右はショーンとSE846

今回の製品に関するひとつのキーは新技術ということです。プレゼン的にもかなり濃い技術的な解説が満載でした。下はShureのポリシーに関するプレゼンです。フラットというのはスタートであってゴールではないということなどが語られました。そして新技術のキーとなるのは下記でも書かれていますがイヤフォンの物理的な制約です。そうして生まれたのが今回の新フラッグシップであるSE846です。開発には数年を要したということ。

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ティーザーのシェルのサイズから4ユニットになるのは事前に噂されてたんですが、予想外だったのは新機構の低域ドライバーのローパスフィルターです。席についてリリースを読むと、あれ、このローパスフィルターってFitearパルテールの考え方と似てる、ということに気が付きました(ローパスはつまりハイカットということ)。実際にイヤフォンにはサイズ的制約がある、という点からマルチウエイでのネットワークの最適化を図るという発想は同じですね。

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ローパスフィルターの技術解説ではまずイヤフォンに使用される技術をエレクトリカル、メカニカル、アコースティックの各領域(ドメイン)にわけて解説されました。エレクトリカルドメインはつまりクロスオーバー・ネットワークで絵画の絵の具に例えていました。メカニカルドメインはドライバーでこれは絵画のブラシ、アコースティックドメインでこの新方式であるローパスフィルターを採用しているわけです。ここは絵画ではアーティスト自身の画力に相当するということ。
いままで低域ドライバーの領域で効果的な周波数の最適化(つまりハイカット=ローパス)ができなかったのはこの前パルテールのところで書いたのと同じでイヤフォンの物理的サイズの制約でスピーカーのようなかさばるクロスオーバーが使えないということによるとのこと。
この新設計のローパスフィルターはとても複雑な仕組みであり、構造的に最近まで作ることはできなかったとのこと。ステンレス板にレーザーカッティングされた迷路のような回廊は4.5インチ(11.3cm)の長さとなるそうです。この仕組みによって90Hz近辺からなだらかにハイカットするとのこと。90Hzというポイントは試行錯誤で決められたようです。
図の青い線はSE535のような通常のイヤフォンの低域ドライバーのもので、このように高い周波数も低域ドライバーに入ることで低域ドライバーの不得意な領域を再生してしまうことで歪みが生じてしまいます。これはつまり他のドライバーの音域とオーバーラップして中音域に悪影響を与えたりします。赤はSE846のものでゆるやかにロールオフしています。つまり他の音域には影響を与えずに低域だけ担当すればよいというわけです。

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もう一つのポイントは音の個性を変えるために交換式の音響フィルターを採用したということです。これは交換式のノズルインサートという機構を採用しています。このノズルインサートは高域ドライバーと中音域ドライバーの経路だけに関係します。ここで1kHz-8kHzにおけるサウンドを調整します。これは2.5dB程度の違いがあるようです。このフィルターの後で低域ドライバーのローパスフィルターから出た音と合流するとのこと。

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この精密なノズルインサートの交換については下記のHeadFi-TVの中で実際に動画でJudeが解説してます。ちょっとすごいですね。4:20あたりからです。



ローパスフィルターともどもShureの精密工作にかける情熱にも頭が下がります。
このサイズでこれだけの技術を詰め込めたのは開発者自身が驚きだったということ。イヤフォンの開発というのはまず物理的な制約から始まるということも思わせてくれます。
SE846のスペック上のインピーダンスは9オームと低いけれども、マルチウエイBAの場合は周波数でのインピーダンス変動が大きいため目安程度に考えてほしいという感じでした。ちょっと本題とはなれますが周波数とインピーダンス変動に興味ある方は下記のTylのinner fidelityのMeridian Explorerの記事をご覧ください。
http://www.innerfidelity.com/content/meridian-explorer-case-study-effects-output-impedance
これはMeridian Explorerの出力インピーダンス高い問題(AK100みたいな)があってその解説です。見るとLCD2が周波数によるインピーダンス変動がなく平面型の長所の一つが見て取れると思います。

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さて、この新技術がSE846ではどう音に反映されているのか、音をRWAK100で聴いてみました。
全体の音の個性はSE535の延長であり、SE530の音はもう過去の話という感じです。SE535と比べてみましたが、音質のレベルは一クラス以上は上であり特にスケール感では際立ってよいですね。低域のレスポンスも強すぎない程度に十分あります。フラッグシップらしい堂々とした素晴らしい音質です。
そしてやはりパルテールに似て音が整理されているというかSE535と比べてすっきりとした音ぬけの良い印象もあります。SE846を試聴したあとでショーンサリバンにローパスフィルターの効果から期待される音質は?って聞いてみたらやはり上図の青線で示される領域(中音域など)でmuddy(濁り)にならないpurity(純粋さ)ということでパルテールの狙いと同じような答えでした。

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SE846とパルテール

ただし独特の透明感・ピュアな音色はパルテールの方が際立っているようには思えます。SE846でのこのローパスフィルターの効果はむしろ4ユニットものマルチドライバーのスケール感や豊かさを殺さずに、つながりも良く上手に自然な音の一体感を作り出しているというように感じました。大味にならず繊細で自然な音を実現しています。つまり同様な技術を採用していてもSE846とパルテールではベクトルが異なるのかもしれません。

前出のHeadFi-Tvの動画中でもJudeはSE846の音のコメントとして中音域のclarity(透明感)が素晴らしく、ベースは中音域に悪影響(harm)せずにソリッドでインパクトフル、そしてvisceral(理屈抜き, 心の底からの)であると言っています。ベースが強すぎないのでジャンルは選ばないだろうとも語っています。

SE846CL_detach_onblack_LR.jpg     SE846CL_full_length_onblack_LR.jpg

SE846はこのように単にShureの新フラッグシップで音が良いというだけではなく、パルテールともども今後のイヤフォンの進化を考える上での重要なマイルストーンとして興味深いと思いました。想定価格は12万円前後と安くはありませんが、さまざまな意味で注目製品と言えるでしょう。

Shureももちろんヘッドフォン祭に出展します。ぜひこの新技術を志向したフラッグシップを体験しに来てください !
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2013年05月09日

iriver AK120登場! デモ機レビュー

好評のiriver AK100の上級機種であるAK120が発表されました!
商品名は『Astell&Kern AK120 64GB ソリッドブラック』です。

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パッと見た感じはAK100を少し大きくした程度でコンパクトさはキープコンセプトで変わらずという感じです。私の画像はデモ機のものなのでプレスリリースの画像も参照ください。

プレスリリース用 jpg.jpg

AK100に対しての改良点は次の通りです。(現時点で公開可能な情報です)

・デュアルDAC
DACチップ自体はAK100と同じWM8740ですが、なんと今回はデュアルDACとなりました。つまり左右チャンネルをそれぞれ一個のDACで専用にDA変換しているということですね。これは予想以上の音質向上があります。

・出力インピーダンス3Ω
以前はこの出力インピーダンスが22Ωもある点が低インピーダンスイヤフォンに対しての弱みとしてユーザーサイドから指摘され、以前書いたRWAK100のように改造モデルが作られたりしました。
普通こう言うのは無視する会社も多いのですが、iriverはこの声をくみ取ってきちんとここを改良してきました。ただしiriverほどの国際的メーカーになるとさまざまな制約もあって、1オームではなく3オームとなっています。とはいえ聴いてみると十分な改良です。

・ボリュームガード
以前のAK100ではボリュームノブが軽くて不意に回りやすかったこともあり、トルク感を改良するとともにボリュームガードが付きました。サイズ変更以外で目に付く外観の変更はこの点です。

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・スリープ機能が付加
これは操作していても設定した時間が来ると電源が切れる機能です。

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・アルバムアートが全画面かフィットか選択可能
アルバムアートの表示においていままでは全画面でしたが、これは左右を黒抜きにしてアスペクト比通りにアルバムをすべて表示する機能です。この切り替えができます。

IMG_1182_filtered.jpg  IMG_1185_filtered.jpg  IMG_1184_filtered.jpg

・EQにプリセット済みの「プロ」設定が付加
いままでUSERという設定があった画面にUSER設定に追加してプロ設定という固定のイコライザー項目が増えました。これはiriverエンジニアのおすすめ設定です。(イコライザの細かさなどは変更ありません)

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・ギャップレス再生のオン/オフ設定の付加
待望のギャップレス機能が付加されました。

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・内蔵64GB+microSD64GB×2対応
いままでもFAT32で再フォーマットすることで64GBが使えていましたが、AK120からはSDカード購入時のまま(exFAT)で認識するようになりました。これは小さいですけど画期的な改良ですね。またSDXCも対応しているようです。

・レザーケースの付属
AK100ではファブリックポーチがついていましたが、AK120ではAK100の専用ケースのようなレザーケースが付属する予定です。(これはデモ機なので写真はありません)

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このほかにホーム画面が変更されています。良く使う項目がまとめられた感じで使いやすくなりました。フォルダなんかも直接指定しやすくなりましたのでデータベース更新せずともすぐに転送後に曲を聞きやすくなりました。この新ホーム画面がAK100でも追加されるかはわかりません。

* 実機インプレッション

AK120のサンプル版をお借りして一週間ほど使用しました。
サンプル自体はプレの為、製品版と外観が多少異なります。あくまで音質のインプレッション用ですが、音質はほぼファイナルと聞いています。またファームもv0.85ですが製品版では1.00の予定です。これを見るとAK100と完全に共通ファームではないようですね。

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前出の改良点以外の機能はAK100のままで、サイズは多少大きくなったという感じです。サイズ的にはAk100では多少はみだしていたXD-01がぴったりはまるくらいになったというところです。多少大きくなったと言ってもほとんど変わった感じはありません。おそらくしばらく使ったらサイズが大きくなったことは忘れるでしょう。ガードのついたボリュームは適度なトルクが増えてよい感触となりました。側面の再生・ポーズ・早送りボタンは同じです。

バッテリーは容量が増えてややスペック上の持ちは減りましたが、前が十分あったのでまだ良いレベルです。実際に一日使っていても電池の減りに関して前との差はあまり感じられません。
おそらくDAC二基ついたことでバッテリー容量は増えても持ちは減ったのだと思いますが、たっぷり電力を消費するのはオーディオ的に音が期待できる証でもありますね。逆に持ちが長くなると音質は悪くなったのかと疑ってしまいます。
新しいホーム画面はなかなか使いやすく、特にタグではなくフォルダで移動するときにホームから選択できるようになったのが使いやすいですね。他の点ではAK100の使いやすさを引き継いでいます。おそらくAK100を持っている人は大きな戸惑いはなく使えることでしょう。

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肝心の音質ですが、実のところこの音質面がAK120での一番の改良項目です。
以下でAK100でも良く使っていたUE18カスタムイヤフォンとWhiplash TWagケーブルで試聴しました。

音質の向上はかなり高いものです。はっきりと明瞭感と情報が豊かになってDACが強化されたのがわかります。情報量が増えたことで全体的に厚みがまして音の豊かさの表現力が増えています。ひとつひとつの音の明瞭感やシャープさがかなり向上しています。またデュアルの効果か立体感が際立って向上していますね。堂々とした空間の深みが感じられ、ピアノ曲でもピアノの音だけでなくホールに響き渡る深みが感じ取れます。細部の細やかさは鮮やかに曲のニュアンスを描き出し、AK100と同じ曲を聴いても感動が違います。
ヴォーカルの肉質感も上がり、唇の細かな震えも感じ取れるようです。ささやくような手嶌葵の歌ではちょっとぞくっとします。複雑なRajatonやAuraなどアカペラコーラスの声の立体的な重なりとハーモニーの豊かさは高級DACを思わせます。
これが本当にAK100と同じWM8740か?という感じですね。デュアルの効果はそれほど大きいものです。もちろん回路自体も改良はされてるとは思います。

出力インピーダンスが下がった効果もあり、低音の迫力も高く量感もたっぷりあります。オリジナルAK100ではUE18で低域レスポンスが悪かったのですが、AK120ではRWAK100と遜色なく低域もレスポンスの良さを感じます。またRWAK100のように単に低域のレスポンスが上がっただけでなくDACの改良によって、低域の解像力や厚みも上がってるのでベースの再現力はかなり上がったように思えますね。低域に凄みと細やかさも感じとれます。
楽器の音再現が正確なのは相変わらず、音のキレ味も良いのでロックでのドラムスも気持ち良いですね。民族音楽のパーカッションもリアルな打感が伝わるようです。メタルでもパワフルにかっこよく感じますね。まあメタルといっても私が聴くようなのはEluveitieとかNightwishとかそういうのですが。

全体的な音の印象もなんとなくジャズとかクラシック向きのようだったおとなしめのAK100に比べるとよりダイナミックに感じられます。音の端正さは引き継いでいるけど、端正だがちょっと平面的でのっぺりとしていたAK100に比べると音のメリハリもあって抑揚も明確ですね。おそらくAK100ではちょっと好みに合わなくてWalkman Z1000にNetronなどで聴いてた人も満足するかと思います。そういう意味ではよりオールジャンルで使えるようになったと言えるでしょうね。

全体的な音の完成度が高くハイエンドオーディオDACのようにも感じられる堂々とした品格が感じられるます。価格も高くなりましたが、やはりそのくらいの内容はあるかという感じです。ここはHM901みたいに専用のラインアウトドックのような機構もあればなぁと思いますね。
とにかくカスタムでもなんでも一番良いイヤフォンで聴いてください。個人的にツボにはまったのはFitEarパルテールとAK120の組み合わせで、なんか聞いたことのない独特な音世界が広がります。ヘッドフォンでもEdition8は問題なく鳴らせますし、AK120の高性能をいかんなく発揮できると思います。空間再現性の高さはヘッドフォンの方がわかりやすいかもしれません。



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まとめると外観的には正常進化形ながら、内面の音質的には大きく変わって新型といっても良いくらいです。音だけ聴くと120というネーミングは控えめでAK200で良いと思うほどですね。ちょっと音は予想以上でした。はじめはAK100と単体同士で比較しようかと思ってましたが、そういう微妙な差ではありません。
AK100+XD-01(光デジタル)との比較では外付けアンプの強みか力感はAK100+XD-01の方が良いけれども、音の繊細さや情報量、立体感などDAC要素が関係する項目では単体でもAK120の方が上ですね。XD-01のDACも良いと思っていたけどAK120と比べると平面的に聞こえます。もちろんAK120とXD-01をアナログで接続するとAK120の解像力とXD-01の力強さがともに味わえます。AK120の能力を発揮するにはアナログ接続が良いでしょう。アナログなので良いケーブルを使用してください。
RWAK100との比較だとAK120のベースのレスポンスが引けを取らないだけではなく、AK120ではベースの深みがあり解像力や低域のニュアンスが向上しています。ここもDAC性能の差が出ていますね。

外観変化があまり無いので物足りなく思う人もいるかもしれませんが、AK100の魅力はコンパクトながら高音質という点だと思います。ある意味ガワはほぼコンパクトであまり変わらないAK120という感じで、音は大きくグレードアップしてAK200っていうのは理想的かもしれません。
この生産直前モデルの前にもプロトタイプをちょっと聞いたことはあるのですが、それよりもこの生産直前モデルの方が音は良くなっています。ファームもかなりの頻度改良を重ねているようです。
またこのAK120は日本の要求もよく聴いて取り入れているそうです。そうした点では日本のユーザーがAK100を率先して育ててきましたし、その実りがAK120として結実したともいえるでしょう。

なお販売予価はメーカー直販価格で129,800円(税込)になります。価格も高くなってしまいましたが、音を聞くと納得してもらえるかと思います。ただ発売に合わせてなにかしらのキャンペーンを期待したいところです。
そして、、実はこの他にも隠し玉の機能があるのですが、それは新製品発表会での公開となります。

iriverの発表会は11:00からで9Fの予定です。こちらは一般の入場可能です。私も少しインプレッションを話させてもらう予定です。iriverブースは7FホールB(No11)ですのでこちらにもお越しください。
ぜひこのAK120を聴きにヘッドフォン祭にいらしてください !
posted by ささき at 17:01 | TrackBack(0) | __→ AK100、AK120、AK240 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月07日

このMusic To Go!ブログが本になります!

なんとこのMusic To Goブログが本になります!

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出版は「本の雑誌社」という椎野誠さんなんかの書評で知られるところです。こちらは「WEB 本の雑誌」というサイトです。
http://www.webdoku.jp/

内容としては過去の記事からデジタルとポータブル系にしぼって抜粋した妙録となります。収録期間はブログの開始時(2004年)から昨年末くらいまでですが、妙録といっても相当な分量になると思います。
これはこの分野の入門編であると同時にMusic To Goブログの入門にもなると思います。ちなみにこれを契機に当ブログが有料制になるとかそういうことはありませんで、いままでの記事もこれからの記事もいままでと変わりありません。ただし本ならではの読みやすさと、通して読む物語性があると思います。
情報としては古くなった機器のことも書いてますが、こうしたオーディオの歴史本としてみるとそうしたものの上にいまの機器があるので、温故知新ということもありかなと思います。

Music To Go!はなんかもう9年くらいやってるんですが、この間ほとんどコンスタントに書いているというのも我ながら驚きます。原稿確認のために読み返してみると、「ここで夜一時になりましたが、まだやめられません」とか熱かったなぁと回想したりしますね。当時はまだヘッドフォンはただのアクセサリーだし、DAPやポータブルアンプなんかは「オーディオ」の範疇にさえ混ぜられていませんでした。
ブログ開始当初あたりで"PCとポータブルとオーディオの統合"とかなんとか、いまとおんなじこと書いてるので、私自身はこの9年間というもの変わっておりませんね。変わったのは周りのオーディオの世界です。ヘッドフォン、PCオーディオ、ポータブルアンプなどなどこの9年間というものはオーディオという趣味自体が大きく変わった期間だったと思います。そうしたオーディオが変化する激動の時代を描いた歴史小説みたいなものと思って読んでいただければ幸いです。

販売はネットだけではなく一般書店でも可能になる予定です。そのほかの情報はまた確定次第書いていきます。いまのところ6月下旬の刊行予定です。そしてヘッドフォン祭でもブースを用意して予約なども可能となる予定です。「本の雑誌社」さんのブースは9FのNo28(Jabenと同じ部屋の注音部分)です。
ヘッドフォン祭の会場で配布する予定のちらしをPDFとして添付します。会場では紙面サンプルも配布する予定です。
Music To Go!/本の雑誌社版ちらし (1.35MB)

どうぞよろしくお願いします !
posted by ささき at 21:36 | TrackBack(0) | ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月06日

FitEar Parterre(パルテール) レビュー

国産カスタムの雄というか、いまや海外でも評価の高い須山さんのFitEarブランドからまた新しいイヤフォンが登場しました。ユニバーサルタイプのイヤフォンで、名はFitEar Parterre(パルテール)です。
ユニバーサルタイプは耳型に合わせるカスタムではなく普通のイヤチップを使うイヤフォンのことです。カスタムの高音質技術を応用して普通のイヤフォンを設計するというのはFitEar togo 334が嚆矢でその音質は海外cnetでも認められて世界最高のイヤフォンと評されたこともあります

今回のパルテールもそのユニバーサルタイプのイヤフォンです。ただし今回は今までのFitEarブランドでは通常付記されている334とか111というドライバー数や帯域分割(way)数を表す型番がないのに気がつかれると思います。これはドライバーの数やタイプにとらわれずに先入観なしで試して欲しいからだそうです。本記事でもドライバー構成には触れません。

パルテールとは劇場の中でも最上の席でステージから程よい距離で音響的にも優れた最高のシートだそうです。そのような席で聴いているような音を届けたいということですね。
こちらに製品ページがあります。
http://fitear.jp/music/product/parterre.html

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製品のポイントはマルチドライバー(バランスドアーマチュア型)でありながら、担当する周波数レンジを完全に独立させるアコースティックフィルタ&ネットワークにより、澱みの無いピュアで伸びやかな音質を実現したということです。

普通スピーカーのクロスオーバーはコンデンサ(ツイーターのローカット)とコイル(ウーファのハイカット)でそれぞれツイーターとウーファの最適周波数で鳴らすわけですが、イヤフォンの場合はサイズの問題でコイルによる効果的なローカットが出来ないという問題があります。そのためローからミッドに帯域重複が出てしまいます。
これはスピーカーでも往年の名器JBL4312みたいに意図的にハイカットしない例もあり、いわゆるああいう厚みの演出には良いのですが、現代スピーカーのような整理された音再現が苦手だったとのことです。
そこにメスをいれて新機軸のネットワークで挑戦したのがこのパルテールです。パルテールではツイーターのローカットはコンデンサですが、ウーファのハイカットをアコースティックフィルタで行っているということです。ドライバー構成に触れないという理由の一つはこの新システムがとても効いているからだと思います。

もう一つのパルテールの特徴はF111で採用された純チタン削り出しのテーパードポートステムを音導口に採用しているということです。これで高域が伸びやかに改善されますが、このチタン削り出しの技術を持っているというのもプロ用イヤモニの実績と共にFitEarが差別化できる点ですね。
これらの特徴によって従来とは一味違う音になっているのがパルテールというわけです。

* 実機試聴

最近よく使ってるAK100の改造モデルであるRWAK100で試聴しました。これなら上で書いているパルテールの長所を引き出しやすいでしょう。
パッケージにはいつものようにペリカンケースと、ユニバーサルですのでチップがいくつか付属します。

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はじめに音の広がりの豊かさにはっとすると、FitEar Togo 334の系統かなとも思わせますが、聴いているといままで感じたことのないようなピュアな透明感のある音再現に気がつきます。

音が綺麗で瑞々しく淀みないという感覚で、山のきれいな清流を思い起こします。特に楽器音の再現力は秀逸で、ピアノの響きは素晴らしく美しく感じられます。ピアノ曲専用にこれ買ってもいいんじゃないかと思ったくらいですね。ハープの音もとても澄んで音空間に響きます。いわゆる美音系のように演出しているのではなく、逆に混じり気なく純粋だから美しいという感じでしょうか。音色自体はニュートラルで着色は感じられません。弦もとても良く、ぜひハイレゾで聴いて欲しいと思いますね。

このピュアで透明感のある純粋な再現力はあまり聞いたことのないレベルで、togo 334と比べてもはっきり違いがわかります。ここにパルテールならではの独特の音世界があります。
この透明感を反映してか、解像力も良くライブ録音の細やかな環境音も明瞭にわかります。演奏のニュアンスも伝わりますね。このリアルな音はたしかにコンサートの一番良い席というネーミングもうなづけます。

高域はチタンチューブらしくクリアでシャープ、とてもキレが良くそれでいてキツさを感じないうまいバランスになっていると思います。低域は適度な量感がありタイトでキレ良く、ロックの畳み掛けるようなドラムスのインパクトは気持ち良く感じます。ローエンドはかなり深く沈む印象で、キレの良いシャープな高域と合わせてワイドレンジであると感じます。
パルテールの低域の良さはソリッドでシャープなアタック感、インパクトの鋭さでしょう。ピュアな音再現の他にパルテールのもう一つの長所はこのキレの良いテンポの良さです。音の歯切れが良くスピード感がありますね。低域の量感は比べてみるとtogo 334同等以上にあるので普通は十分満足できると思います。

FitEar Togo 334とパルテールの音の比較をもう少し続けますと、全体的にtogo 334の方がやや濃く厚めで音場もやや広め、Parreteはすっきりとピュアで細身、アタック感はより鋭く軽快感があります。
togo 334はカスタムのベースモデルが存在することもありますが、カスタムの性能をユニバーサルに持ち込んだということで画期的でした。パルテールはさらに独自の世界に挑戦したと思います。
価格はオープンですがtogo 334の下になると思います。このことからtogo 334の弟と思えるかもしれないけど、実際はtogo 334とは上位・下位というより好みで切り分けるべきものかと思います。
ぜひヘッドフォン祭で試聴してみてください。須山さんのブースは7F No2(いつものところ)です。
posted by ささき at 20:46 | TrackBack(0) | __→ 須山カスタム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月05日

Jaben バランススペシャルセット レビュー

二月に行われたポタ研で参考展示されて好評を博していたJabenのバランス改造ベイヤーとオーロラサウンド(音松ブランド)のバランスヘッドフォンアンプのセットがいよいよ発売されることになりました。
もちろん5/11の2013年春のヘッドフォン祭でもJabenブース(9F-29)で展示されますのでまた試聴できます。

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左からT5pバランス、T1バランス、Otomatsu BDR-HPA02アンプ

これは「Jaben バランススペシャルセット-1という商品で、バランス駆動型ヘッドフォン+アンプ+DACのセットです。ヘッドフォンはベイヤーのフラッグシップ、T1かT5pどちらかのバランス改造品が標準バランスケーブルと一緒にセットに含まれます。注文時にはどちらかを指定することになります。
価格は248,000円(消費税込)です。
音松アンプは純粋なアンプだけですのでPCとの接続を考慮して定評あるDACportが付属するのもポイントです(これだけで5万くらいします)。
またこの他にもオプションとしてクライオ処理した高性能バランスケーブルがオプションで用意されます(価格未定)。下の写真がオプションのクライオケーブルです。

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先に書いたようにヘッドフォンはBeyerdynamic社のT5p(32Ω)とT1(600Ω)のどちらかで、それぞれに専用のバランスドライブができるよう改造を施した、特製の4ピンXLRの高信頼性コネクタを装備したケーブルが付属しています。
ヘッドフォンコネクター部はミニXLRジャックに改造しバランス駆動を可能 にしています。 下の写真が改造されたプラグ部分と4pinバランスコネクターです。

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オーロラサウンド製のアンプはOtomatsu BDR-HPA02というバランスヘッドフォンアンプで4pinのXLRプラグを使うタイプです。BDR-HPA-02はJabenの要求により本ヘッドフォン用にオーロラサウンドがOtomatsuブランドで特別にチューニングしたもので4ピンXLRジャックによるバランス駆動、また標準フォーンプラグによるノーマル駆動ができるようになっています。またT5pとT1というインピーダンスや感度が異なるヘッドフォンも適正な音量で駆動できるようにゲイン切り変えスイッチを(High/Low)を備えています。

以下特性をリリースから転記します。
・・・・・・・・・
周波数特性 5Hz -80kHz
全高調波歪率THD+N 0.0046%
最大出力 1500mW x2 @45Ω負荷 Highゲイン時
ドライブ可能ヘッドフォン 16Ω - 600Ω High/Low ゲイン
電源 AC100V 50-60Hz
大きさ W230mm x D180mm x H80mm (突起物含まず)
・・・・・・・・・

販売サイトはJabenですがJaben Online のサイトに日本語ページを作っているそうで、そのオープンが5/20だそうです。これが販売開始になります。ただしヘッドフォン祭会場では会場特価で先行販売するそうです。つまり日本語で注文でき、発送も国内ということです。サポートも日本語です。(故障等はメーカーに返送になります)

本商品に関する問い合わせ先は以下の通りです。
JABEN日本代理人 : 蒼蠅堂 (そうようどう)
メールアドレス shimayutan@gmail.com
FACEBOOK https://www.facebook.com/JabenJapan

* 実機レビュー

試聴機をお借りしたので実機レビューします。アンプは金属筐体のがっちりしたものです。

IMG_1088_filtered.jpg     IMG_1092_filtered.jpg

まずアンプの特徴を聴くためにHD800で聴いてみました。標準のヘッドフォンプラグもロックがついていてがっちりとしたものです。DACはChord QuteHDを使っています。
非常に透明感のある音でピュアでニュートラルにヘッドフォンの性能、またはDACの能力を通す感じです。色付けはなく、アンプがどこか周波数を強調するというようにも思えません。解像力も高く、高性能のQuteHDを使ってハイエンドのHD800から聴きたいというレベルの音を素直に伝えてくれていると思います。ベルの美しい響きから、女性ヴォーカルの発声の明瞭さ、ベースのうねりまで楽器音の明確な表現も十分にできてますね。欲を言うともう少し低域のコントロールがほしいという気はしますが、十分なレベルではあると思います。
ゲインもHigh、LowがありHD800でもHighで10-11時前後で十分音量が取れます。ベイヤーにチューニングしたと言ってもHD800でも良い音で聴けますので十分な汎用性もありますね。

アンプはアナログ入力のみだけれどもDACportがついているのでこれをUSB DACとして使うことができます。DACportも小型ながら性能には定評ありますからね。

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T1バランスとクライオケーブル

* T1バランス+標準の黒ケーブル

ゲインはHighで試聴しました。4pinバランスを使用しています。キヤノンプラグなのでがっちりとしてロックができます。ヘッドフォン側はミニXLRでこちらもロック機構がついています。しかしこのプラグ改造はほんとに良くできていて、初めて見たときは、もともとこういうオプションあったっけ?とベイヤーのホームページを見直したほどです。改造というよりはじめからこうだったように思えるくらいよくできています。

先のHD800ノーマルで聴いてたのに比すると、低音の量感がたっぷりとして、音の広がりが大きく向上します。さきに聞いたHD800もノーマルながら音の広がりには定評ありますが、それをも軽く超えてしまう立体的な空間表現力はまさにバランス改造で期待される音になっていると思います。
T1というと正確でタイトな音を鳴らすという印象ですが、このバランス・リケーブルによってより音楽を鳴らす厚みのある濃い音が加わったのが面白い点です。個人的にはT1というとジャズトリオとか室内楽を聴きたいタイプのヘッドフォンだけれども、このバランス化でもっといろいろなジャンルを聴きたくなると思います。
ただ低域はあまり張り出してはいないのでT1の音の範疇ではあります。

* T1バランス+クライオケーブル

オプションとして用意されているクライオケーブルに変えると音のクリアさが大きく向上してベールがはがれたような明瞭感が得られます。ベースは量感だけではなく、よりタイトになりさらにT1の力を引き出しているように感じられます。細かな解像力もさらに上がり音を聴いてハッとする凄味のような魅力が加わります。SHANTIのヴォーカルの表情もより生き生きとして細かな再現力が上がります。
このケーブルはこのT1バランスシステムの魅力を最大に引き出していると思いますね。高価だとは思いますが、できればこのシステムにおいてこのクライオケーブルはぜひほしいところです。ただ曲によっては腰高できつめと感じることもあるので、元のケーブルもあったほうが良いとは思います。

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T5pバランスと標準ケーブル

* T5pバランス+標準ケーブル

ゲインはLowにして試聴しました。T5pはもともとT1の低インピーダンスバージョンというだけでなく、音の個性的にもT1よりもロックやポップに向いたダイナミックさを持っていると思います。音楽をより正確に分析的に聴きたいときはT1、より楽しく聴きたいときはT5pという感じでしょうか。このバランス改造でもそうした個性の差を引き継いでいて、T1に比べてやや緩め太めのT5pの音はダイナミックに音楽を聴くのにより適しています。生楽器と打ち込みビートの複雑に入り混じったエレクトロニカでも躍動感と音のち密さを両方聴かせてくれます。この標準の黒ケーブルはT5pの方が似合うと思います。

* T5pバランス+クライオケーブル

T5pバランスにオプションのクライオケーブルを付け替えても、やはりベールがはがれた感じを受けますが、T1の場合はベールが二枚はがれた感じだけ、T5pの場合は一枚ベールがはがれた感じです。もともとT5pの方がアンプ的に鳴らしやすいと思うので、T5pの場合は黒ケーブルでも良いかなとは思えます。
いずれにせよ、T5pとクライオケーブルの組み合わせもより細かに音も浮き彫りにして情報量の洪水をもたらすというという感じです。
音楽性と性能の高次元の調和ですね。試聴はPCオーディオでやっていて、たいていはたくさんのいろんな曲のポイントを次々に聴くんだけど、このT5pバランス+クライオケーブルの組み合わせを試聴していて最近気に入っているRhian SheehanのStory from elswhereを聴いていたらはまってしまって曲を聴きとおしてしまったというくらい魅力的な組み合わせではあります。なにより音楽的に美しく楽しく聴けますね。

挾間美帆のように軽快でスピード感あふれるジャズを聴きたいときはT1がいいけれども、情感あふれる感動的な音楽を聴くときはT5pかなあと思えます。そういう意味ではやはりT1もT5pもほしいところではありますね。なかなかどちらだけとは言い難いけど、そうしたベイヤーの新型テスラシリーズの魅力を再発見させてくれたシステムと言えるでしょう。

ポタ研でデモした時もベイヤーを持っている人から好評だったシステムですが、ぜひヘッドフォン祭で試聴ください。Jabenは9Fの29(大部屋の真ん中あたり)です。


           

posted by ささき at 20:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ○ ホームオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月01日

ネットワーク透過のDSDネイティブ再生とDoPのネットワーク版-DoPE(DSD over PCM Ethernet)

今年のはじめにタイムロードさんのショウルーム「遊」で行ったDSDのイベントで「DSDネイティブ再生はネットワークを通じても可能ですか?」という質問を受けました。そのときはあいまいにしか答えられませんでしたが、実際に製品として動作しているものが紹介されていました。
http://www.computeraudiophile.com/content/521-simple-design-rendu-ethernet-s-pdif-converter-review/

それは上のComputer Audiophileのレビューで紹介されているSimple Audio(SONOREブランド)のRenduという"ネットワークDDC"です。USB DDCがUSBデジタル入力を受けてSPDIFデジタル出力に変えるものですので、この"ネットワークDDC"はネットワークからのデジタル入力を受けてSPDIFデジタル出力に変換するというものです。DLNA対応でレンダラーとして機能します(名前もそこからきてると思います)。

普通のDSDネイティブ再生で必要なのはDSDネイティブ再生に対応した送り出しのPC/Mac上のプレーヤーソフトとDSDネイティブ再生に対応した受け手のDACです。
ここでのネットワーク透過のDSDネイティブ再生(ここではネットワーク・パススルーと言ってます)では、同様に受け手がSONORE Renduであるならば、送り出しが必要です。そこで必要なのはネットワークにDSDストリーミングする機能です。その送り手としてはJRMCとMinimServerが紹介されています。これはDLNAのメディアサーバーということになりますね。

まずMinimServerはDLNAサーバーとなるソフトウエアで、MinimServerではトランスコードオプションでRenduに食わせるためにdopwav(DOP/WAV)という形式にトランスコードしてストリーミングするということです。トランスコードはもともとFLAC対応でないレンダラーにWAVでストリーミングするなどのためのオプションです。
トランスコードというのはある形式にエンコード(コード化)したデータをデコードしないで直接別な形式にエンコードし直すことです。変換といっても良いかもしれませんが中身は変わりません。前にWAVにDoPをエンコードするツールを書きましたが、それをストリーミングしてネットワークサーバーで受ける感じでしょうか。見かけWAVをストリーミングしている形ですが、WAVの中身はPCMではなくDoP(DSD)ということなんでしょう。

JRMCではJRMCをDLNAサーバーとして設定し、中のDSD Bitstreamオプションをオンにするとネット越しにRenduを見つけられるようです。これはDoPE(DSD over PCM Ethernet)という方式を使用しています。これは少なくともJRMC、SONOREそしてOppoでもサポートされるようです。またLuminでもサポートされるかもしれません。
設定としては最新のJRMC18に更新するとネットワーク設定画面のオプションで下記のようにBitstream DSDという項目が現れます。
JRMC-DOPE.gif
この場合はMinimServerのように送出時点でトランスコードしてないように思えますがよく分かりません。

DoPEという規格をどこかで標準化提案したかどうかわかりませんが、DoPがUSBに限らないということは事実です。Renduの出力はSPDIFですが、DoPはUSBに限定されないので、SPDIFでもDoPで出力が可能です。そのためにDoP 1.0では名前についていたUSB linkを外してDoP1.1では単にDSD Over PCMとしたわけです。
すべてのDSD対応DACがSPDIFでもDoPを受けられるかはわかりませんが、この記事ではdCSのVivaldiを使用してOKだったようです。ただしEMMのDACではこの方式ではだめだったということです。

つまりこのシステムでは下記のようなフローとなっているようです。よくわかっていませんが、、
* MinimServer ->ネットワーク(DLNA)ストリーミング(DoP/WAV) -> Rendu -> SPDIF(DoP) -> DSD対応DAC
* JRMC ->ネットワーク(DLNA)ストリーミング(DoPE) -> Rendu -> SPDIF(DoP) -> DSD対応DAC

今回の記事はわからないというのが多いんですが、USB Class2やらDoPを初めて紹介した時もこんな感じでした。まあしばらくは手探りですね。
posted by ささき at 20:52 | TrackBack(0) | __→ DSD関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする