Music TO GO!

2013年04月29日

iFi Audioの新製品、USB DDCのiLinkレビュー

iFi AudioのDACやヘッドフォンアンプのレビューを前の記事で書きましたが、新製品でiLinkというUSB DDC(Digital to Digital Converter)が出ました。USB DDCはhiFaceのようにUSBデジタル入力をSPDIFデジタル出力に変換する機器です。

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こちらがiFi iLinkの製品ページです。
http://www.ifi-audio.com/en/iLink.html

iLinkの筐体やパッケージは他の製品と同じタイプです。はじめから必要なケーブル類が付属しているのも同じです。iLinkはバスパワーで動作するので、付属品はUSBケーブル、光ケーブル、同軸ケーブルです。今回のポイントは付属の同軸ケーブルで、ショートタイプのBNC同軸ケーブルにRCAアダプタが両端で装着されています。(これは後で出てきます)

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筐体の片側はBタイプのUSB端子があり、USB接続はUSB Audio class 2.0対応です。Mac 10.6.4以降はドライバー不要ですがWindowsではドライバーインストール(ホームページから)が必要です。サンプリングレートは192kHz 24bitまでの対応となります。
反対側は出力端子がまとめられていて、光出力とSPDIF(NormalとHigh)出力、JETのオンオフスイッチがあります。
iFi Audioらしいユニーク機能としてiLinkの特徴的な技術はJETとSuper Digital Outputですが、私がAMR技術者に直接問い合わせて確認した内容を以降で解説して行きます。

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音はMac (10.8)で聴いてみました。ドライバーのインストールは不要です。USBケーブルは添付のものを使ってみました。SPDIFの同軸デジタルはhiFaceと比較するためにWireWorldを使用しています。添付のUSBケーブルでもhiFaceに比べるとスケール感も向上し、細部は滑らかで上質な音と感じられます。
全体にiFi製品はノイズ対策にとても気を配って音を荒さ・きつさのないものにしてるように思います。これはJETをONにするとさらに明らかで、いままで感じられた硬質感が取れて滑らかで音楽的ないかにもiFi/AMRがめざすアナログっぽい音になります。USB DDCでこういう効果があるのはあまり聴いたことがありませんね。今ではハイレゾUSB DACが当たり前になり必要性という意味ではUSB DDCの必要性は後退してるけれども、iLinkは音を上質にするという面白い可能性を提示しているように思います。

技術的にいうとJETは20kHz以下のベースバンドのジッターを効率よく高い周波数にシフトさせるというもので、こうすることで受け手のレシーバーICの性能が悪くても効果的にジッターを低減できるようになるということです。ただしこうすることでDACによっては176kHzや192kHzのような高い周波数でのロックがうまく働かなくなることがあるようです。そこで通常はONでよいけれどもこうした場合にはOFFでも試してみるとよいそうです。低価格帯でのDACの実情というものをよく考慮したシステムと言えるでしょうね。

さて、JETとならんでiLinkのもう一つの特徴はSuper Digital Outputです。Super Digital OutputはiLink独自のHigh/Normalに別れたSPDIF出力のことです。こうした出力端子はあまり見たことがないでしょう。
これは以前の記事で少し触れたのですが、その時はHighは対応機器が限られると書きました。一方でiLink製品版のマニュアルでは基本的にHighにしておいた方が良いと説明があるのでちょっと矛盾するようですが、以下もう少し細かく補足します。

iLinkのSPDIF出力のHighとNormalは電圧のことで、Normalが通常でHighがそれよりも高い電圧で出力しているということを示しています。しかしSPDIFにHigh規格ってあったのか、という人もいると思います。このSPDIFのHigh/Normalというのは規格ではなくDACの実装で使い分けるものです。

市販のさまざまなDACに使われているSPDIF入力レシーバーにはさまざまなDAC個別の違いがあります。たとえばシーラスロジックのCS841x系のチップを使ったレシーバーは本来SPDIFより高い電圧(5V)を使用するバランス(プロ仕様)のAES/EBU向けのチップですが、より低電圧(0.5V)が一般的なSPDIFにも使用できます。こうしたチップを使った実装ではSPDIFであってもやはり高い電圧の方が最適でジッターも低いということです。AKMでも似たようなものがあるようです。
反面でそれ以外の多くのSPDIF対応DACはやはりSPDIFの低い電圧に最適化していて、高い電圧を送れば音が良くなるというものではありません。やはり適材適所で最適な電圧を送るのがジッター低減にも寄与するというわけです。

他のメーカーでもDAC側でこうした違いに着目した例もあり、一例をあげるとマークレビンソンのDAC No36ではSPDIF入力端子とレシーバーの間にアンプ回路が入っていて、レシーバー回路に最適な電圧に増幅しているようです。つまりこうした最適化をDDC側であらかじめ行っておくというのがiLinkのHigh端子です。
No36の場合はAES/EBUとデジタルレシーバーが共通だからSPDIF入力の方はそうしたアンプが入っているのかもしれませんが、似たような実装は他にもありそうです。

送り出し側で工夫した例としては日本の47研究所があります。47研のDACはSPDIFレシーバーにCS8412/8414を採用していてiLinkのHigh向きですが、47研究所のCDトランスポートではDCカップリングとACカップリングという二つのSPDIF出力端子があって、DCカップリングの方がiLinkのHighの考え方に近いそうです。(ただしiLinkはよりインピーダンスマッチやアイソレーションを考慮した設計をしているということです)

こうしたことからiLinkのHigh/Normalの使い分けは使用するDACがどういうレシーバーでどういう設計をしているかに左右されます。とはいえ、普通の人はそういうのはわかりませんから、違いについては両方試してみて音の良い方を選んでほしいということです。NormalとHighを両方入れてみてDACやiLinkが壊れるとかそういうことはないということです。
つまり47研のようなSPDIFレシーバーのDACはHighを使用するのが最適ですが、もちろんNormalでもロックして音は普通に再生できます。ただしHighの方がより最適で音が良いだろうということです。またそうでないDACはNormalを使用するのが最適ですが、Highでもロックして音は普通に再生できるようです。ただしNormalの方がより最適で音が良いだろうというわけです。

またマークレビンソンのNo36の場合はレシーバーはHighに最適化されているはずですが、SPDIF入力からはアンプ回路を入れて既に内部的にHighに対応していますからiLinkからの出力はNormalが最適になるはずです。この辺も実装の問題になりますね。そういうわけでこの辺は複雑なところもありますから、とりあえずHigh/Normalを使い分けて音を試してほしいということになります。
実際にやってみるとどちらも普通に使えます。音の変化はJETのON/OFFに比べると微妙な差ではありますが、High対応の機器でちょっと試してみたいですね。

さきほども少し書きましたが、iLinkのSPDIF出力はNormal/Highが分かれているだけではなく、アイソレーションやインピーダンスマッチという観点からもしっかりと設計しているということです。それも音質向上に寄与しているでしょう。
USB DDCとしての総合的な性能はだいぶ高いようで、iFiのページに比較表がありますが、Emprical AduioのOff-Rampよりもジッターが低いというものです。Emprical Audioは日本ではあまり知られていませんがアメリカのPCオーディオ系ではよく出てくる中堅メーカーで、その$1000を超える立派なデスクトップUSB DDCより低いというからたいしたものです。
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ちなみにiFiでは12インチ(30cm)以下のデジタルケーブルを推奨しているそうです。これはインピーダンスマッチング問題における末端反射によるものだそうで、DAC側はBNCが推奨でその場合はiLink側にBNCアダプターを付けて対応してほしいということです。これはつまり先に書いた付属のケーブルのことですね。

しかし100万円のマークレビンソンならともかく、この価格でここまで細かい音にこだわるとはiFiオーディオには改めて驚かされます。先に書いたように電源のフィルタリングやインピーダンスという点でも細かい配慮があります。
普通はAMRというハイエンドブランドがあるなら、差別化のためこちらは手を抜きそうなものですがiFiの場合はこの価格の範囲(あるいはそれを超える)での最高を目指そうとしているようです。おそらく今まで低価格機を買うのはマニアではないから音質もこのくらいで良いだろうという妥協があったと思います。iFiの考え方はこれからの新基準というか、現在のオーディオ市場を的確にとらえて考えていると思います。
iUSB Powerなんかでも面白いと思ってましたが、iLinkで改めてiFiはなかなかの注目ブランドだと思いました。

製品情報としてiLinkは5/11(ヘッドフォン祭)で発売開始、価格は39800円だそうです。
下記にiFi Audioの日本語サイトがありますのでこちらも参照ください。
http://ifi-audio.jp/
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2013年04月19日

ネットオーディオVol10に執筆しました

本日発売のネットオーディオVol10にいくつか記事を書きました。
まずiFi Audioのレビュー記事を書いています(P104)。ここではiFiだけではなくバックグランドとしてのAMRも解説しているところがポイントです。なお補足ですが、iFiでは最近iLinkというUSB DDCが発表されています。 http://www.ifi-audio.com/en/iLink.html
これはSPDIF出力にNormalとHighと二つ端子があるところがポイントです。このNormalとかHighというのは電圧振幅のことで、Normalは通常の(アンバランス)SPDIFの規格で通常はこちらを使います。Highはそれより高いので、この規格に合うDACでないと対応できません。いまわかっているのはAMRと一部の国内外のDACのみです。性能的にも高いようで、日本では出ていませんがアメリカでは有名なEmpirical AudioのOff-ramp(据え置きタイプの立派なDDC)よりも低ジッターということです。iFiもなかなかにユニークで注目のブランドですね。

それと再生ソフトウエアの技術的解説の記事を書きました(P62)。ここでは各ソフトウエアの技術的な解説と序文のみ書いています。音の感想などはほかの方ですので念のため。
またいつも書いているオーディオ最前線ではAndroidのデジタル出力対応についてまとめて書いています。興味のある方はどうぞご覧下さい。


posted by ささき at 20:24 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月15日

ニールヤングのPONO続報

しばらく知らせのなかったニールヤングのPONOプロジェクトですが、Facebookに近況として更新がありました。
PONOのFacebookページ (Facebookのアカウントが必要)
あまり大きな更新ではないのですが、いまのところ順調で音質面とUIの向上に取り組んでいるとありますね。ここで書かれている"measure twice, cut once"はことわざで切り出す(cut once)前に二回測るというもので慎重に進めているということですね。つまりAK100などPONOの理念をすでに体現したようなデバイスの登場などで見ると進み方が遅い、中止されたのか、という観測を消すためにゆっくりやっているだけと言っているようにも思えます。

もっともPONOはポータブルプレーヤーだけではなく、配信やレーベルへのネゴも含めたトータルなプロジェクトだと思いますが、最近は欧米ではSpotifyなどストリーミングタイプが無視できなくなってきているのでこうしたストリーミング配信で高音質を目指すような、前に下記で書いたOra Streamのようなアダプティブタイプのストリーミングのサポートを望みたいですね。WiFiストリーミングに対応したファームウエアを搭載してスマートフォンのテザリングと組み合わせるとか。
OraStream、adapt(適応)型ストリーミングとスケーラブル・ロスレス圧縮
前にニールヤングがアダプティブタイプの新フォーマットを開発中とのうわさもありましたが、ないとは言えないかもしれません。
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2013年04月14日

青雲寺の桜2013

今年の桜は開花時期が早すぎたことと週末の天候不良であまり写真が撮れませんでしたが、いつもの青雲寺の桜を撮ってきました。ここのメインの天然記念物の桜はもうすでに終わっていますが、その周りのしだれは遅咲きなのでそれを狙っていきました。

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今回はDP3 Merrill一本でいくつもりでしたが、シャープなDP3とソフトフォーカスを組み合わせてみようと思いました。ソフト効果を得るにはフィルター(52mm)を使用しています。

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左はフィルターあり、右はフィルターなしです

下はフィルターなしの写真で、左は本来はメインの青雲寺の桜です。葉桜もきれいではありますが、来年はきちんと良いタイミングで撮りたいものです。

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posted by ささき at 22:08 | TrackBack(0) | ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月12日

春のヘッドフォン祭2013まで一ヶ月

いよいよ今年も恒例の春のヘッドフォン祭まで一ヶ月となりヘッドフォン祭のページがオープンされました。
下記にフジヤさんの案内ページがあります。

http://www.fujiya-avic.jp/user_data/headphone_fes.php

http://www.fujiya-avic.jp/blog/?p=9271&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

イベントのページを開くと分かりますが、今回は私は午後のHM901のデモで参加します。
ちなみにHM901デモの詳細は来日チームと協議で決めて行きますけど、ドックと901を組み合わせてハイエンドスピーカーシステムで鳴らすというデモは取り入れる予定です。
これは特製のラインアウトケーブルを使って、今回とは別なところで試験的に既にやってみたんですが、素晴らしい音でしたね。ハイエンドスピーカー機材に負けないように立派に鳴らしてた点がポイントで、901のDAC部分が優れていることが分かりやすいと思います。興味ある方は必聴だと思います。会場は10Fの予定ですのでどうぞ視聴ください。
他にも私が関係する予定はありますが、まだ公開前ですので伏せておきます。ちなみに今回の私関連で呼ぶ外国勢はJabenのみの予定です。

今回もけっこう見どころあるヘッドフォン祭となると思いますのでぜひ来場ください!
posted by ささき at 12:13 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月06日

Mac miniのオーディオ用外部電源

Mac miniはなかなかPCオーディオに向いていますが、より高音質化するためにローノイズのオーディオ用外部電源が出ました。これはClones Audioという香港のアンプなどを作っているオーディオメーカーの製品です。$499+送料と115Vへの改造費で日本だと$550くらいです。(対応は2010年モデル以降)
http://www.clonesaudio.com/#!product/prd1/667867321/mpsu

以前アメリカの会社でMac miniを引き取ってスパイクまでつけて専用のオーディオ向けに改造するというところはありましたが、こちらはユーザーインストーラブルというところがユニークです。電源を上のサイトで買って送ってもらったら自分で改造をします。
下に設置の解説ビデオがアップされていますが、Mac mini内蔵の電源を取って専用のケーブルに差し替えるというものです。工程は約10分ほどとのこと。Macとしてサポートしてほしいときはまた元に戻すというわけです。ちなみに電源本体とのケーブルは1mです。



電源本体はシンプルなキューブ状というのもApple製品にマッチします。Mac miniを主に音楽再生に使用している人にはちょっと面白い製品ですね。
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2013年04月02日

地中海音楽 - ラルペッジャータ

前作「十字架の道」では演奏の素晴らしさとともに録音も良くて私の一時期のリファレンスアルバムだったバロックアンサンブル・ラルペッジャータ(Christina Pluhar)の新作がこの地中海音楽です。古楽アンサンブルなのに地中海の音楽ということで素材もユニークですが、演奏もユニークです。楽器は古楽器だけではなくウッドベースも含まれています。



古楽アンサンブルでジャズの楽器や要素を入れるのはラルペッジャータのAll'improvviso、あるいはダウランド・プロジェクトあたりからよく行われるようになったことではありますが、ラルペッジャータのアルバムを古さを感じさせないで軽快なテンポで楽しむことができます。また本作では楽曲を地中海のテイストあふれるものにしたこともあってとてもノリの良さもより感じさせます。加えてイベリアあたりのファドの哀愁も感じさせながら歌の要素も濃く取り入れて、あきのこないバランスの良いアルバムの出来になっていると思います。

   
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Off The Record - カールバルトス

クラフトワークのキーメンバーであったカールバルトスの新作です。いつのアルバムだよと言いたくなるくらい全力で80年代サウンドを繰り広げています。これは俺らのものだと言わんばかりに堂々とボコーダーを前面に立てているところはPerfume世代からするとむしろ新しく感じるかもしれません。
またカバーアートもそうですが、クラフトワークの新作と言っても良いくらいクラフトワークのアルバムを思わせるメロディーラインも感じられます。実際クラフトワーク自体はもともと電子音楽の実験的グループらしいのですが、このカールバルトスの加入によっていわゆる「テクノポップ」的なポップサウンドを全面に出したという点もあるようです。ライナーノートを中野フジヤエービックさんと同じ階にある80年代音楽ショップ、ショップメカノの店長が書いているところもポイントですね。

こちらタイトル曲AtomiumのPVがあります。Atomiumとはベルギーにあるユニークな原子の形をした建造物のことです。



ちなみにテクノポップというのは日本だけの言葉のようです。一般的にはメジャー系YMOの影響と考えられますが、そのあとマイナー音楽シーンではテクノというよりもむしろニューウェーブというジャンルで膨らんでいって、インディーズブームにつながっていくという流れとなりますね。

posted by ささき at 21:10 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする