Music TO GO!

2012年10月10日

iriver Astell&Kern AK100レビュー

今年はハイレゾ対応デジタルオーディオプレーヤー(以下DAP)が本格的に展開された当たり年でもあります。iBasso DX100とそれをベースにしたヒビノのR10、元祖ハイレゾDAPの進化系というべきHM901、そしてまた新しい『星』が現れました。DAPでは老舗と言えるiriverのAstell&Kern AK100です。このAstell&Kern(アステル・アンド・ケルン)とは星の中心という意味だそうで、 iriverの中でのフラッグシップクラスを示すブランド名になります。標準価格は54800円とR10ほど高価ではなく、この手の高性能DAPでは中間的なミッドレンジの値段となります。
評価機(FW1.0.0)を一足先に提供してもらいましたのでレビューを書きます。だいたい二週間ほど使用しています。
こちらは販売元のマウスコンピューターさんのプレスリリースです。
http://www.iriver.jp/company/press/160.html

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とてもコンパクトなサイズであのTera Playerよりも少し大きい程度です(上右画像はTera Playerと比較したところ)。そのため完全に胸ポケットに入ります。まさに「ポケットの中にありのままの音を」という言葉がピッタリときますね。原音忠実をコンセプトに据えた音はピュアで澄み切った音で、マスター音源の瑞々しさを伝えてくれます。

* AK100の特徴

AK100の最大の特徴はコンパクトサイズで192kHz、24bitまで対応するという点です。(Tera Playerは24bitはデコードしていません)そのDACチップはWolfson WM8740を使用しています。設計段階において入念なチューニングを行って8740の性能を限界まで引き出したということです。

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外観はDAP老舗メーカーがフラッグシップとして作ったというように、ソリッドでしっかりとしたつくりが高級感を感じさせます。ヘアライン加工を施したアルミボディです。この辺はいわゆるガレージメーカーものとは一線を画していますね。一番気に入った点はやはりコンパクトなところで、あのTera Playerより少し大きい程度です。それで192kHz対応までして液晶操作画面もついているのだからたいしたものです。重さも112gと78gのTeraほどではないにせよ、持ち運びはほとんど苦になりません。完全に胸ポケットに入れられます。

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コンパクトなボディには2.4型 320x240ドットのIPS液晶パネルがついています。静電容量型タッチパネルなのでここで選曲ができます。IPS液晶なのでアルバムアートも美しく表示されます。操作パネルに半透過でアルバムアートが表示されるのもうまい演出です。表示されているのはLINNのスタジオマスターのハイレゾFLAC(Barb Jungr - 88kHz/24bit)です。

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ファームウエアはDX100(R10)のようにAndroidではなくLinuxベースの独自のもので軽く安定した操作ができます。ブートもやや時間はかかりますがAndroidほどではありませんので、Androidベースが苦手っていう人にはよいと思います。ちなみに音源ファイルはハードウエアでデコードされます。イコライザーの設定もタッチパネルで行うことが可能です。

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ボリュームは向かって右側についた小さなノブを使って回転させて行います。細かい音量調整も問題ありません。左側面には小さなハードボタンが3つついていて、それぞれ早送り、巻き戻し、再生/ポーズに対応しています。再生/ポーズボタンは細かいながらも少しだけ大きめです。

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上面には長細い電源ボタンのほかに2つ端子が出ていて、左端がイヤフォン端子・兼用・光出力端子になっています。もうひとつは光入力です。AK100の大きな特徴の一つがこの光出力ができるという点です。iriverで光出力というとあのiHP140を思い出しますね。その頃はiRiverと表記されていた昔です。唯一光出力ができるDAPとしてiBasso D1/D10など光入力のついたポータブルアンプ/DACとの使用で重宝しました。私もスペアを入れていくつか持っていましたが、もうヤフオクで難儀をすることはありません。この辺はまた後で触れます。残念なのはアナログのラインアウトが無い点です。ここは改良してほしいところです。
光入力では入力チップの都合で176kHzに対応していません。(ちなみにメモリに格納した音源であれば88kHzも176kHzも問題なく再生可能です、念のため)

底面にはデュアルでMicroSDスロットがついています。引き出しをスライドさせると中にMicroSDスロットが二枚させて同時に使用できます。内蔵メモリは32GBですから、それに32GBx2を加えることができます。USB端子はデータ転送と充電のみでDAC機能はありません。このほかにはBluetooth機能も搭載しているようです。(本稿では都合で評価していません)
対応ファイル形式はWAV WMA FLAC APE OGG MP3です(現在AACは対応がありません)。下はオンラインマニュアルです(*画像中にはASF表記がありますがASFは非対応です)。

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特徴をまとめると以下の通りです。

1. 胸ポケットに入るコンパクトサイズ
2. 192kHz/24bit対応で高音質
3. タッチ操作可能
4. 光出力可能
5. 内蔵32GBメモリとデュアルMicroSDスロット
6. 手ごろな価格



* 実際の操作の流れについて

AK100をUSBでPCに接続すると充電/再生か充電/データのどちらかの接続モードを選択します。データを転送するときは後者を選びます。PCからは内蔵メモリとMicroSDカードが見えますので、そのどこかのフォルダにデータを格納します。フォルダー単位で転送しても構いません。
格納したデータのメタデータ(タグ)を曲選択に反映するためにはAK100の設定メニューから「データベースの更新」を選択します。ここで自動に設定するとPCへの接続毎に自動的にデータベース更新をしますが、更新は差分だけではなくすべてのファイルについて毎回行われるので多少時間がかかります。タイミングを見て手動でやったほうが良いかもしれません。フォルダー階層をたどれるので必ずしもタグがなくてもかまいません。

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選択はタッチ操作で行えます。またボリュームはノブを回転させることで画面にボリュームレベルが表示されます。

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操作の仕方ですが、画面にアルバムアートのみが表示されているときは画面上を左にフリック(iPhoneみたいにはじく)することで巻き戻し、右にフリックすることで次の曲に進みます(上はオンラインマニュアル)。アルバムアートをタッチすると操作パネルが表示されますのでここで巻き戻しや早送りができます。左下のメニューボタンでミュージックリストが表示されます。

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ここでアルバムやアーチスト、曲単位で選ぶメニューが選べます。上はアルバムを選択して曲メニューを開いていったところです。
また面白いのはマスター音質というメニューでハイレゾ音源のみ選ぶことができることです(下左)。メニューでフォルダーを選ぶとフォルダー階層で移動ができますので、タグがうまく作れないときはこのメニューで直接ファイルを選択できます(下のブラウザという画面です)。

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曲の情報表示の時に+ボタンを押すことでプレイリストに入れることができます。またユーザーEQも細かくタッチ操作で設定できますが、もちろんEQを切ることも可能です。

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すっとポケットに入れられ、軽く無理なく使うことができます。操作性も快適です。DX100/R10やHM801など重量級のDAPを持っている人はサブとしてもほしくなることでしょう。
再生時間も十分です。DX100のように電池の持ちを気にしながらということはありません。一日つけっぱなしにして、朝7時から夜10時に帰るまで問題なく再生でき、その段階で1/4くらい残りの目盛りでした。(これは音源にもよりますので念のため)

* 音質について

まずはじめに聴いて感じるのは高い透明感、クリアさです。そしてとても細かい音が浮き上がってくるのがわかります。普及品のDAPと比べると情報量の豊かさに圧倒されるでしょう。AKG K3003はもっともあうイヤフォンの一つですが、こうしたハイエンドイヤフォンでAK100は生きてきます。K3003ではよく伸びるシャープな高域、深い低域の重みと帯域の広さに改めてK3003の魅力を感じることでしょう。立体感もなかなかのものです。K3003が良いのは普通のイヤフォンとして使えるので、小さなAK100と使用感もベストマッチするということです。カジュアルに高音質が楽しめます。高感度イヤフォンでの背景雑音もほとんどありません。JH16+Twagリケーブルもなかなかいい感じです。
はじめはやや硬めですが、きつさは一晩エージングするとわりと取れます。

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音のひとつひとつはとてもピュアで明瞭感が高く、かつニュートラルで素姓の良い素直な音です。これは録音の良しあしをも浮き彫りにして、J-Popでは硬めながらメリハリがあり、ハイレゾの良録音192/24音源では滑らかで微細なニュアンス表現が良く伝わります。まさに原音忠実というか、録音忠実ですね。
もちろんただおとなしく無機的でいわゆるモニター的なわけではなく、低域に適度なインパクトがあってロックのダイナミックさもよく伝わります。Reference RecordsのHRX(176kHz)のブリテン「青少年のため管弦楽入門」を再生すると堂々としたスケール感に圧倒されます。一瞬再生が遅れるのでバッファに入れてるのかもしれません。
WM8740の性能を絞り出したということですが、たしかに同じ8740のSONYのPHA-1と比べても一段細かい音を聴くことができるように思います。AK100ではかなり音の細かいところまで鮮明に聴き取ることができます。
iBasso DX100と比べてみると透明感・クリアさはむしろAK100の方が良いことに驚きますが、音楽の全体的な表現力はやはりDX100の方が上回るかもしれません。これはES9018ゆえかアンプなどアナログ部分の差があるのでしょうが、おそらくDX100持っている人はAK100のコンパクトさやピュアでクリアな音表現も気になることでしょう。価格や大きさも違いますが、ライバルというよりも住み分けでしょうか。Tera Playerとは音の好みの差かと思います。滑らかなTeraとシャープなAK100という感じですね。

AK100にもっと表現力がほしいというときはiHP140の再来ともいうべき光出力機能を使うことができます。

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iQube v3と組み合わせると一つの音が磨きこまれてしっかりとした実体感を持ち、音の濃さ・厚みが向上してよりスケール感のある音が楽しめます。なにしろFLAC再生するためにRockbox入れなくて済みますし、光出力のためにQLS QA350のような無理のあるような大型DAPを付けることもありません。iQube v3にちょっとたされる程度ですからね。もちろんいまでもiHP140を使っている人はやっと解放された気持ちになるでしょう。上の写真でAK100を裏返しにしているのは光ケーブルがiHP140に合わせているからです。厚みも余ってしまいます。新しくSys-Conceptにケーブルオーダーしなければ。
メーカーの人に聞くと一時期修理に持ち込まれるiHP140の多くはRockboxがインストールしてあったそうです。私も一端を担っているかもしれませんが、もうRockboxを入れる必要もなくFLACが再生できます。下の画像はAK100と歴戦のiHP-140です。もうお休み、と言いたいですね。

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もう一つ良い点はマウスコンピューターさんが扱うということでコンピューター関連のサポートは手厚いように思います。PC関連の質問などをしても反応が早く報告も詳細でした。この辺はいまからのオーディオ機器のあり方として良い傾向かもしれません。ただ残念なのはAK100にUSB DAC機能がないことです。光入力だけでなく、もう少しPCオーディオ的な機能が強力ならばマウスコンピューターさんとの連携も意義のあるものとなっていくでしょう。またこれからのAstell&Kernの展開も楽しみになってきます。

iPodや普及クラスDAPからステップアップしたい人にお勧めで高性能イヤフォンの真価がわかることでしょう。またすでに高性能DAPを持っているけれども重さに辟易している人にも良いですね。
発売開始はヘッドフォン祭当日の10月27日です。予約は本日開始です。フジヤさんの販売予約のページはこちらです。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail14429.html
フジヤさんの販売価格は49800円です。なおおまけに32GBのMicroSDカード(標準添付は2GB)がついて、中には聴き比べ用の192kHz、96kHz、48kHzのサンプル音源が付属するということです。

ぜひヘッドフォン祭の楽しみに加えておいてください !
posted by ささき at 17:01 | TrackBack(0) | __→ AK100、AK120、AK240 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする