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2012年07月01日

AudioQuest Dragonfly - USBメモリ型の超小型ヘッドフォンアンプ内蔵USB DAC

以前CES2012のときにニュースとして書いたのですが、ケーブルメーカーのAudioQuestのDAC製品が先日リリースされました。このDragonfly(とんぼ)です。これはUSBメモリ型でコンパクトなDAC内蔵ヘッドフォンアンプです。USBメモリ型ではdenDACがありましたが、DragonflyはHD対応の本格的なものです。価格は$250となっています。こちらがホームページです。
http://www.audioquest.com/usb_digital_analog_converter/dragonfly-dac
これはノートPCのお伴としてかなり興味があったんですが、2週ほど前に発売されましたのでさっそく入手しました。

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コンパクトという点ではnuforce uDAC、HRT Head Streamerなんかも良いですが、USBケーブルを付けねばならないので結果的にかさばるのが難点です。
DragonflyはdenDACと同じようなUSBメモリタイプでUSBポート直結なのでUSBケーブルは不要です。ただケーブルメーカーのAQがケーブルレスのUSB DACを作るというのも面白い点ではあります。
そもそもなぜケーブルメーカーのAudio Questがヘッドフォンアンプ内蔵DACを、と思いますが、これはAQの技術者が自分たちがほしいものを作ったということです。とはいえ実際に設計したのはAudio Questの人ではなく、ここでも何回か書いているあのWavelengthのゴードンさんが外装以外はみな設計したということです。ただしAQからはフェイズフィルターを最小限にしてくれなどの仕様要求はあったそうで、Wolfsonなども含めたプロトタイプを5つくらい作成して、AQの人たちの試聴で音決めしていまのESS Sabreを使うモデルにしたということです。(DACチップはODACなどでも使われているES9023のようです)

つまりAQ内のたまたま設計できる人が作った未知数のものというのではなく、米PCオーディオ界トップのゴードンが設計したということで性能的には安心できるというわけです。実際にDragonflyはWavelengthのDACの流れを引く次のような特徴が見られます。

* ゴードンのコード、アシンクロナスUSB搭載

ゴードンさんといえば、Wavelength Protonで「USBアシンクロナス転送」によるUSB DACの高音質化をはたしたことで有名です。それがAyreのQB-9でも採用されてUSB DACというものがオーディオのなかで市民権を得ていくきっかけともなりました。このコントロールプログラム(ファームウエア)をWavelength Streamlengthといいます。
いまではStreamlengthはXMOSを使用した192k対応になっていますが、DragonflyではTAS1020に対応した96/24対応のバージョンが採用されています。ここでいうXMOSとかTAS1020というのはUSBの入力をつかさどるコントローラチップのことです。(TAS1020はディスコンだったような)
Dragonflyでは入力サンプルレートに応じてロゴのLEDの色がQuteHDのように変わり、現在のサンプルレート確認が可能です。

* 64ステップの内蔵式アナログボリューム

これもProtonで使われた手法です。Dragonflyには外側にボリュームつまみがありませんが、内部にアナログのボリュームが内蔵されていて、いわゆるデジタル的な音質ロスを最小限にして音量調整が可能です。音量調整はPC/Macのシステムボリュームと連動します。

- DAC内蔵ヴォリュームについては後でもう少し詳しく書きます。

* 実際の使用と音質

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箱から出すと思ってたよりも小型で本当にUSBメモリサイズです。ただ見かけよりはずっしりした感じはしますね。表面はラバーコーティングされていて滑りにくく高級感もあります。

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標準ドライバー(ドライバーのインストール不用)で素姓も良いので広く使うことができます。Macbook、Windows PC、Linuxタブレットなどで使ってみました。接続性はみな良好で簡単に使うことができます。

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まずMacbook Air 11インチで使ってみました。標準ドライバなので、Macbookに接続するとすぐに使うことができます。
実のところMacbook Air 11インチの内蔵音源もいいんですが、やはり潤いにかけます。Dragonflyに変えると音の明瞭感があがり楽器の音鳴りが鮮明になるとともに、音に潤いがあるオーディオ的な豊かさが感じられます。また内蔵音源に比べると全体的に音がかなり整った滑らかさも感じられます。中高域の透明感や低域の深みもなかなか良いですね。背景ノイズも低く高感度イヤフォンで使っても問題ないと思います。
ただし音の広がりや力感はさすがにいまひとつかもしれません。こじんまりとしているけれども良く整った音空間という感じでしょうか。またEdition8やK3003などのポータブル機では文句ありませんが、HD800ではさすがに鳴らし切ると言うわけには行きませんね。

Windows7の高性能デスクトップPCでも良い音を聞かせてくれます。もっともこの辺に使うなら据え置きのきちんとしたものが良いですが、ヘッドフォンリスニングのためにちょっと足したいという人もいるでしょう。
JRMCなどのプレーヤーソフトを使うとなかなかの高音質で楽しめます。音は細かく解像され、ベースやドラムの音のタイトさ、切れの良さ、制動力もこのサイズにしてはなかなかのものがあります。音調はニュートラルで帯域バランスも良好です。テンポもよくスピードもある方です。
ここではより音の特徴は際立ってわかるように思えます。ゴードンさんは今はPCオーディオで有名ですが、もともとは真空管畑の人なのでProtonなどもそうですが柔らかな音が好きなようです。一方でDragonflyはESSっぽいというか、どちらかと言うとニュートラル・分析的な感じがします。この辺はやはり音決めはAQの人のテイストなのかもしれません。

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LinuxではひさびさにSharpのLinuxタブレットPC-T1を取り出してみましたが、これはすばらしく相性が良かったですね。接続も問題ないようです。(多少あやしい感もありますが)
PC-T1はubuntu 9.04をベースにしています。ドライバーはOSSもALSAも使えるようですが、OSSの方が安定しているように思います。プレーヤーソフトはARM向けなので限られてはいますが、ExaileとかListenが使えます。これらは機能的には十分です。
持ち運べて最小のPCオーディオシステムとも言えますが、音質も素晴らしく良いことに驚かされます。これとEdition8を組みあわせるとちょっとこの小さなシステムの音とは思えないくらいです。
ただしPC-T1は遅くて普通にタブレット用として使えるようなものではありませんので、念のため。パワーがないのでハイレゾもちょっと難しいですが、44/16を再生するうえではかなり良い音で楽しめます。

iPad はパワー供給制限のため使えませんが、ゴードンさんによるとこれは音質の都合でアンプ部分で使う電流を大きくするためにiPad対応は意図的に削ったということです。

Dragonflyはコンパクトでいて音も良く、特にノマドワーキングをして喫茶店や図書館で良くノートPCを使いながらも、BGMを良い音で聴きたいという人にお勧めしたいですね。

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---別項 : PCオーディオのボリュームコントロールとDAC側ボリュームについて (この項は後で別に分離させるかもしれません)

ボリューム調整というのは当たり前のようでいてなかなか深く、オーディオのポイントの一つです。それはPCオーディオでもまた例外ではありません。
この項ではDragonflyやProtonのように内部にボリュームのあるDACの使い方について説明します。

1. DAC内蔵ボリューム(Device Volume)とは

PCオーディオではビットパーフェクトを保つためにPC側のボリュームはフル(100%)にしておくことがよく書かれていると思いますが、これはPC側でオーディオデータを再計算することで精度を落としてしまうという前提に基づいています。しかし、DAC側でDragonFlyのような内蔵ボリュームを備えているものにおいてはPC/プレーヤーソフトのボリュームとDACの内蔵ボリュームの連動が可能です。
つまりデータは再計算しない状態でDACに渡して、同時にボリューム位置の情報も渡すというものです。この場合はソフト側でボリュームを変えていてもビットパーフェクトになります。これはUSB Audio Class 1.0のControl規定を使用しているようで、DACがDevice Volumeを備えているかはハンドシェイクのデスクリプタ(記述子)交換でわかると思います。なおこれはCoreAudioの機能ではなく、ドライバーの機能なのでAudirvanaでダイレクトモードを使ってCoreAudioをバイパスさせても問題ありません。

DACがDevice Volumeを備えているときはDAC側では2通りの処理が行えます。ひとつはDAC側でデジタル領域で再計算するという方法で、ESSはDACチップレベルでこれをサポートしているようです。もうひとつはアナログ領域でアナログボリュームの制御に用いるというもので、Dragonflyがそうです。Protonでもこの手法が使われていました。内部ではI2CシリアルIFを使用してDACアナログ段の後のアナログボリュームをコントロールしているそうです。

2. DAC内蔵ボリュームとPC側のボリューム調整について

OS側ではシステムボリュームでも可変できますが、プレーヤーソフトではAudirvanaのDAC Only/if availableやDecibelのdevice volumeで明示的に指定ができます。Decibelの場合はDigital volumeとDevice Vollumeが独立しているのでわかりやすいと思います。このときはDigital Volumeを最大にしたままで、Device volumeで音量を調整してください。(Device VolumeがグレイになっていたらDigital Volumeを使います)

dragonfly1.gif     dragonfly2.gif
左:Audirvana Plusと右:Decibel

Decibelのdevice volumeについての記述は下記にありますが、やはりProtonなどを対象にしているとありますね。
http://forums.sbooth.org/viewtopic.php?f=22&t=5125
WindowsではJRMCはやはりボリュームを二系統持っていて、System Volumeを選択すると上で書いているDevice Volumeと同じになります。サウンド>プロパティ>レベル(ボリューム)と連動するのがわかると思います。Internal Volumeが64bit高精度ソフトウエアボリュームです。
iTunesなどの場合はプレーヤー側のボリュームは最大にしておいて、システムボリュームで調整できるはずです。Macではこのときメニューバーにボリュームを表示させておくと便利です。キーボード上のボリュームコントロールを動かすとシステムボリュームを動かします。

ただしプレーヤーソフト側がディザ対応などの高精度デジタルヴォリュームを採用しているときはこのかぎりではないので、device Volumeとdigital volumeのどちらが良いかは自分の試聴で決めると良いのではと思います。(DAC側のdevice volumeがすべて高精度とは限らないので機器と場合によります)
JRMCではこの切り分けについて無録音テスト音源を使用して行う方法がマニュアル(ヘルプ)の中で紹介されています。

posted by ささき at 22:51 | TrackBack(0) | __→ USB DAC全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする