「借りぐらしのアリエッティ」のテーマを担当したことで日本での知名度がぐっと上がったセシルコルベルの新譜です。
内容はキープコンセプトで、トラッドをベースにした聴きやすく優しいポップ音楽を提供しています。トラッドの哀愁を帯びた美しい旋律にセシルのちょっとフレンチポップ風の甘いヴォーカルがからんでちょっと面白い独特の世界を作っています。
前作のSongbook1、2に比べてもこの人は軸がぶれないという印象です。Songbook3というネーミングもまさにシンプルにしてその通りです。(実際にはSongbook2の後に「アリエッティ」のイメージアルバム"karigurashi"も作っています)
アリエッティのテーマを担当したことで、ずいぶんいろんな面でインパクトはあったと思いますが、そうしたことによる音楽性が変わるということはないようです。
トラッドのアレンジという点で似たタイプのロリーナマッキニットは全米ヒットの前後でけっこう音楽的な振れ幅があって、最新作ではまたシンプルにトラッドベースに回帰するという変化を見せてますが、セシルコルベルはそういうのが感じられないですね。
たとえばセシルコルベルのこのSongbook3にも、ロリーナマッキニットの最近のアルバム(wind that shakes the barley)にもトラッドの"Brian Boru"がアレンジされて入っているんですが、聴き比べてみると今回のロリーナマッキニットはマッキニット節を付けながらもシンプルでストレートにアレンジしていますが、セシルコルベルはやはりヴォーカルを入れてポップに味付けしています。
ひとくちにケルト系と言ってもかなり広い範囲があるのですが、ロリーナマッキニットの場合はそれを旅しながらケルト音楽を見つめ直していきたいという思いがあり、セシルコルベルの場合は自分の作りたいファンタジーの世界観をしっかりと持っていてそれをひたすら実現しようとしているというように感じます。