Music TO GO!

2010年07月29日

アコースティックリバイブから画期的な分離型USBケーブル登場

最近オーディオ用のUSBケーブルもいろいろなメーカーからたくさん発売されています。
そうした中で7/26にオーディオ用のアクセサリーで知られるアコースティック・リバイブ(関口機械販売)が画期的なオーディオ用のUSBケーブルを発売しました。
それはこれ、なんと信号線と電源線が分離したUSBケーブルです。

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左がUSB-1.0PL、右はUSB-1.0SP (*両方とも一本のUSBケーブルです)

USBケーブルは信号線と電源線が通常一本に全部はいっています。ところが電源ラインはPC由来のノイズをいっぱい載せてる上に輻射ノイズを出して信号ラインに悪影響を及ぼします。最近のオーディオ用のUSBケーブルの中にはシールドを施してノイズを防いでいるものもありますが、この分離式は根本的に解決する方式になりそうです。

この新ケーブルには二つのタイプがあります。
USB-1.0 SP(1m 39,990円)は驚くことにホスト側にさすA端子自体が二つに別れています。つまりPC側は端子を二個使います。赤いマークのある方が電源ラインケーブルです。二本はデバイス側のB端子で一つに合流します。
USB-1.0 PL(1m 25,200円)はもう少し普通?で、A端子側も一つです。ただしラインはそこから二本に分岐します。B端子側は同じです。
ちなみにUSBはFirewireとは違って明確な主従関係があり、必ずA端子側がホスト(たいていはPC)になります。

このケーブルにはもうひとつ大きな特徴があります。それは線材が通常の細い線を集めたヨリ線ではなく、一本の太い単線を使用していることです。現在のUSB端子で可能なかぎりのもっとも太いPCOCCを使用しているそうです。このため柔軟性には欠けますが、音質的にはかなり期待できます。

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まず角田さん試聴室のフォーカルとフェーズテックのUSB DAC HD-7Aを使用してみました。
わたしのMacbook Airを使ったので、USBは一つしかないのでPLタイプの方を使いました。下記は主にPLの印象です。あとでMacbook Proを使ってSPも試しています。

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左は1.0PLのA端子側、右は1.0SPのA端子側

試聴用曲としてエリックモングレイン以降流行ってきたパワフルなアコースティックギター演奏の集大成的なGuitar Republicの生々しい演奏でまず確認してみました。こういうときの試聴に好適なディスクです。



パッと聴いて音の立ちあがり方、キレの良さ、細かい音の抽出に圧倒されます。これはいままで聞いたことがないレベルです。
その後に聴き込んでみると、強い音がバシッ、ダンッとなったときの制動感にも素晴らしいものがあります。音の制御、制動感はDACのクラスが上がったかという感じですね。低域の制動力も素晴らしく、Brian BroombergのHandsでのウッドベースのピチカートは逸品です。
またSNが良いのか微細な音の明瞭感が高く、弦のこすれる感じやアコースティック楽器の生々しさはいままでに味わったことがないくらいです。
実際にシャープだけど分析的になりすぎないで、情報量とか倍音の鳴りの豊かさが、音の印象に潤いを与えています。

単線の方が高い周波数特性に優れるそうで、倍音の豊かさの魅力はここからきているのかも知れません。
太いケーブルは低い周波数特性がよいと聞いたことがあるので、太い単線は周波数特性的には理想的なものかも知れません。

フルテックGT2からアコリバPLに変えると単に音がシャープに鳴る、キレがよいというだけでなく、粗さがあったところが豊かになるという感じがあります。
従来ケーブルとも少し比べてみましたが、比べるといままでのオーディオ用のUSBケーブルのグループのレベルとは音質的にひとレベル抜け出ているように思いますね。
それらと比べると価格とか取り回しのしづらさという点はありますが、音的には極めて魅力的です。

面白いのは電源ラインが別というところがミソではありますが、据え置きのUSB DACのようにバスパワー使わなくても効くということですね。また二本別のSPの場合は、電源(赤のほう)ラインを抜くと認識しないといういままで試せなかったこともわかって来ました。
つまりは干渉しないのがよいならバスパワー不要の場合は電源ライン自体を抜いてしまえば良いということはできないということです。こうした分離式がある意味理想的ということのようですね。

また、バスパワーのDACでも試すためにNuforce uDACでも試してみました。これはEdition8を使いました。
気になるのは二本別のSPと一本のPLの差ですが、二本のSPの方はLPと音の基本的な傾向は同じですが、より音が濃厚で豊かになる感じがします。
シャープさとか制動感とか音の性能の向上だけでなく、音楽性の高さもより贅沢に欲する時には二本のSPの方が良いかも知れません。

いずれにせよアコリバのこの分離型の単線ケーブルの音はもうFirewireレベルかというような感じですね。USBはいわば汎用規格でしたが、その長所は標準ゆえにスケールメリットでこうした世界の広がりと早い進歩・発展が見込めるということです。
オーディオ用の一万もするUSBケーブルがあるの?、なんて驚いていたのもわずか数ヶ月前のことです。もうUSBケーブルで音が変わるか、という段階はあっというまに通り越して普及期・発展期に入ってきたといえます。これが時代が変わるスピードですね。
posted by ささき at 21:05 | TrackBack(0) | __→ オーディオ用USBケーブル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月26日

Wavelength WaveLinkとUSB Class 2.0サポート

いよいよ待望のWavelengthのUSB DDCであるWaveLink HSが登場しました。$900です。
http://www.usbdacs.com/Products/Products.html
昨年のロッキーマウンテンオーディオフェスタに出展されていたものです。もちろんAsync USBでBNCコネクタを採用しています。そしてやはり192/24をサポートしています。TAS1020かはわかりませんが、Thesyconというところと協業したということです。
興味深いことにここにはMac OSX 10.6.4が出るまでは出せなかったと書いています。それはUSB Class 2.0サポートの対応です。10.6.4まではUSB Class 2.0が使えなかったということです。

前回Antelope Zodiac+のところで、USB標準ドライバーの96/24超えについてHigh Speed対応とUSB Class 2.0をごっちゃに書いてしまったのかもしれませんが、この両者は異なるのかもしれません。
Computer Audiophileでゴードンさんがそれを語っています。
http://www.computeraudiophile.com/content/2496-Above
これは前からゴードンさんは言ってたんですが、WindowsではClass 2.0サポートはされていないそうです。
わたしがZodiac+でやってみてなんのドライバーも入れずに192/24までいけたことで、はじめに疑問に思ったところも実はここで、「たしかゴードンの話だとWindowsは標準ドライバーでは192/24はいけないはずでは?」というところでした。Zodiac+はまた別の何かを使用しているのかもしれません。Zodiacはなにしろ同軸入力よりUSBのほうが音がいいくらいUSBに力入れてますからね。
ただこのスレッド、Class2.0がなにかというより半分以上は96/24以上が必要かというところで燃え上がっちゃってはいます。

それとさきのスレッドに書いてありますが、Ayreも192/24対応をするようです。ここもひとつポイントです。製品版として出荷される192/24対応のQB-9はUSB1.0と2.0の切り替えスイッチがつくようです。
交換はUSBボードとFPGAも手を加えるように言ってますね。USBボードはともかく、FPGAを変えるというところがキーのようにも思えます。単に192/176対応かもしれませんが、もしかするとなんらかのデコードのカスタマイズが必要なのではないでしょうか?
やはりClass 2.0はHigh Speed対応ではなく、従来のFull Speed対応のデバイス側のコントローラでなにかできる枠組みのようにも思えます。それに対してZodiacはHigh Speed対応できるようなデバイス側のコントローラを独自開発したのかも。

また最新のLinuxのALSAドライバーはClass 2.0に対応しているという情報もあります(これはゴードンさんは否定しています)。
http://www.computeraudiophile.com/content/Ayre-QB-9-w-USB-Audio-v20-here-w-Linux

USB標準ドライバーの192対応についてはなかなか深みがありそうです。この辺はしばらく要チェックです。
posted by ささき at 01:49 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月24日

タルカス - 吉松隆

吉松隆氏はプログレ派を自認する現代音楽の作曲家です。今年オペラシティで、伝統音楽以外のオーケストラ曲を新世代に紹介すると言うテーマで開かれた東京フィルのコンサートで、EL&Pのタルカスをオーケストラアレンジした曲を披露しましたが、そのコンサートがCD化されました。
ほかには黛敏郎氏の「BUGAKU」や四重奏曲の「アメリカ」のオーケストラアレンジも収録されています。現代曲だけど難しくなくて聴きやすいというのが一つのテーマということです。

タルカスはなんと譜面がないんで全部CDから耳コピしたそうです。
同アルバム収録のアトムハーツクラブも一部タルカスから取ってるんですが、それに比べるとかなり原曲から忠実に起こしています。
このタルカスは曲の権利を持ってるキースエマーソンにも承諾を得てるそうですが、本人にも気に入ってもらえたとか。実際聞いてると、レディース&ジェントルマンに入ってるキースエマーソンの純粋な管弦楽曲にもちょっと似てるところがあって、キース本人が一番やりたかったのではないでしょうか。ピアノパートは本人にやってもらうと言うとすごかったことでしょう。
東京フィルのコンマスもプログレファンということで、テーマにかこつけて趣味で楽しんでやってるのが良いですね。

吉松隆ではピアノ作品のプレイアデス舞曲もお勧めです。現代音楽でありながら聴きやすくきれいな作品です。ちょっとフランス印象派のような不思議な浮遊感のある美しい曲です。(下記の2100円のほうがリマスタリングされています)
また水色スカラーというギター曲が村治佳織さんのリュミエールに収録されていますがこれも吉松隆氏らしいフレーズが聴けます。
試聴は下記リンクからどうぞ。

      

それと他にもタルカスのカバーがあります。
こちら邦楽楽器グループのKoKooのタルカスです。タルカス以外にもいろんなロックのカバーが面白いですね。
http://www.kokoo.com/cd/index.html
また下記Amazonのリンクにピアニストの黒田亜樹さんの器楽アンサンブル版もあります。

もっとストレートなロックのカバーではRobert Berryのちょっとかっこよいアレンジの聴けるものが、下記のトリビュートです。またエマーソンレイク&パウエルのアルバムにも収録があります。
もちろん本家もよろしく、今年はショパンイヤーに隠れてEL&Pイヤーですね !

      

posted by ささき at 20:43 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月19日

USBオーディオ、新世代へ

いまAntelopeのZodiac+を試聴用に借りています。
これはスタジオで使われるクロックで有名なAntelope社製のヘッドホンアンプ付きDACです。こちらPCオーディオ展のときの写真ですが、真ん中の黒いのがZodiacです。

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音は素晴らしく良いですが、機材自体のレビューはここでは書きません。ここで書くのはZodiac+をいじっているうちに面白い発見をしたことです。
それはUSBの標準ドライバーでMac もWindows7も192/24までいけるということです!
Macはさらにいけるかもしれません。

いままでUSBの標準ドライバー(カスタムドライバーをインストールしないで済むタイプ)では96/24が限界だと思われていましたが、最近Wavelengthのゴードンさんがどうも現行ドライバーで192までいけるような発言をしていたので臭いと思ってたんですが、Zodiac+で確かめられました。(Zodiacも+バージョンが必要です)

それはUSB標準ドライバーのUSB High Speed modeのサポートが、WindowsとMacではすでになされているということです。(Class 2サポートと言うのかもしれません)
ただしMac OSXはスノーレパード(10.6)のみ、Windowsは7のみと思われます。(現時点での情報からの推測です)


*USB標準ドライバーとその96k限界

前にも書いたようにUSBにはクラスドライバーというOSにあらかじめ入ってる規定された標準ドライバーがあり、ハードディスクなどのマスストレージ・クラスドライバーのようにそのおかげでハードディスクをさすだけでデバイスドライバーのインストール不要で便利に使えます。

ただしUSBオーディオクラスの場合、その規定は古くて標準ドライバーの多くはずいぶん前に制定されたUSB1.1(つまりFull Speed)に基づく帯域幅で設計されていて、これでは96/24が限界です。つまりハードディスク(マスストレージクラス)はUSB2.0(High Speed)に基づく高速転送ができるのにオーディオクラスはUSB1.1(Full Speed)のまま取り残されていたという状況でした。
ただしデバイス側のUSBコントローラーもPCM270x系とかTAS1020のようにUSB1.1対応のみの古いものがいまだに多数使われているので、実質あまり影響ないということです。
パソコン(OS)側のドライバーも、デバイス側のコントローラーも古い同志ということですね。実質96kより上のハイサンプリングソースもあまりありませんし、なんとなくこれで良いと思われていたという状況です。

これを打開して192kを達成するための策として、いわばこの標準ドライバーを無視して独自のカスタムドライバーを使うのがHifaceやMusilandのようなカスタムドライバー方式です。これには主にCypress EZ-USBなどのバルク転送を行うコントローラを使用しているようです。バルク転送はハードディスクで行われている転送方式です(これに対して普通のUSBオーディオはアイソクロナス転送)。これなら2.0のHighspeedの帯域幅で転送できます。
ただしカスタムドライバーなのでインストールが必要という不便な点もあるし、サポートされるOSも限定されてしまいます。Win7でいうところの「理想的な」ドライバーという保証もありません。またHifaceを取り付けるとWindowsの安全な取り外しオプションが出たりします。つまりOSからはオーディオデバイスとして認識してもらっていないということになります。
そのため、できればOSの標準ドライバーでのサポートが望ましいわけです。

ただこれも書いたんですが、昨年5月ころにそのUSBオーディオクラス規格に改訂がはいったようです。そこで、さきのゴードンさんの言動と合わせてちょっと動向をうかがっていた所、Zodiac+を使って自分で確かめることができたというわけです。

*標準ドライバーの96k越えの実際

さきに書いたようにZodiacもZodiac+でなければ192をサポートしません。Zodiac+ではUSBのHigh speed modeをサポートするためのUH1というモードが用意されています。UH1モードに入れるためにはいったん電源を切って、モード切替の儀式をやる必要があります(マニュアルに書いてあります、なおマニュアルは英語マニュアルをご覧ください)。
このほかにUF1というモードがあり、UF1(Full Speed USB1.1対応)では普通の標準ドライバーを使うものと同じ96/24までです。これはデバイスのファームウエア側も対応が必要なので、互換性維持のために残しているのだとおもいます。

まずWindows 7で試してみました。もちろんなんのドライバーも入れていませんし、Windows7ではMacOSXやUbuntuのようにシステムを改変する作業では必ず確認ダイアログが出るので勝手にはいりません。
まず共有モードのサンプリングレート選択メニューで192/24が出て来ます。176が出ないのは88が出ないのと同じ理由でWindows7のバグでしょう。

zodiac.png     icon_hdp.png

左がZodiac+、右は比較用のIcon HDPのデバイス画面です。
Zodiacで16bitの選択がないのはZodiacが24bit native(16bitでも24bitに詰める)転送を要求しているせいと思われます。

これで192を選択するとWin7のオーディオエンジンでリサンプリングされてから標準ドライバー経由でZodiac+に送られる訳です。もちろんZodiac+側でもきちんと192でロックされています!
音的にも精細感が上がったように思えますしこれは良いですね。これはオーディオエンジンでリサンプリングするのでどんなサンプリングレートの楽曲でも同じです。

次にfoobar2000の排他モードWASAPIでPCオーディオファン2付録の88.2と176.4で収録されている同じ曲(El Choclo)をかけてみると、ちゃんとどちらも指定のレートでZodiac側でロックします。もちろん共有モードの指定も無視していますし、まさに期待どおりの動作をしています。

次にMacで試してみました。MacOSXではAudioMidiの設定パネルがWindow7の共有モード設定みたいなものですが、そこでもやはり192の選択が出てきます!しかもWin7と違ってちゃんと88.2系列も出てきます。

zodiac_mac.png     bridge_mac.png

左がZodiac+、右は比較用のHalide Bridgeです。
ここで192を選択してiTunesやPlayで出してみるとたしかにzodiac+側でもロックして192と表示されます。
おそらくMac OSXのCore AudioでのWin7のCore Audioの排他モードみたいなもの(ややこしい?)は外から見えない設定になっていると思いますが、おそらく「Win7の排他モードみたいなもの」対応と思われるAmarraは私のはminiで96までなので残念ながらそれを試せません。それで上のWindows7でのFoobar2000のテストのようなことはMacではできません。

*USB標準ドライバーの新時代

Antelopeの次のZodiac GoldではUH2というモードを搭載してMac(10.6)ならば384kまで対応できるようです。Wavelengthの次の製品であるUSB DDCのWavelinkも192対応してくるということですが、おそらく標準ドライバーで使えるでしょう。(こちらはMacのみかもしれません) Wavelengthのコードが変わるということは、、つまりそういうことかもしれません。
次は標準ドライバーで192対応の時代が来ると思うし、そうなるとカスタムドライバーを使っていたところはまた別の対応が必要になるかもしれません。
ただしデバイス側のコントローラの対応も必要ですので、普及というのはわかりません。
ちなみにここに書いたことは私の現時点での推測・考察という事を念のために書いておきます。

時代は変わるし、手法も変わる。それをうまく使って行きたいものです。
posted by ささき at 18:03 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月15日

Wadia 151 "Power DAC mini"

今回は角田さん試聴室でアクシスさん取り扱いのWadia 151の試聴をさせてもらいました。
これを見ているみなさんにはWadiaのiTransportは説明不要だと思いますが、iTransportはiPod/iPhoneからデジタル出力を取り出せるトランスポートです。
Wadia 151は、そのiTransportと組にするコンポーネントのひとつでプリメインアンプです。もうひとつはヘッドホンアンプ付きのDACが出る予定ですが、そちらはまだ分かりません。Wadia 151はすでに販売されていて好評のようです。

151b.jpg

Wadia 151はiTransportと同じ底面積でスタックできるプリメインアンプです。小さくともWadiaらしいデザインがなかなか良いですね。
デジタル入力が豊富でもちろんiTransportからもSPDIFで接続できますが、特別なアダプタが必要なわけではないので、基本的には一般的なスモールオーディオ製品と考えてよいと思います。
そこでここではiTransportをとりあえずおいといて、デジタル入力も豊富なのでWadia 151をデスクトップサイズのPCオーディオで使うシステムとして提案しようと思います。

まずWadia 151の特徴ですが、"Power DAC mini"という別名がついているように、入力から出力の最終段まですべてデジタルで処理されるところです。
こちらにメーカーページがあります。
http://www.axiss.co.jp/whatsnew_wadia151PowerDACmini.html

Power DACというのは普通のDACがデジタルデータをアナログ信号に変えるものであるのにたいし、デジタルを入力とするけれどもアナログに変換するのではなくそこでD級増幅をしてスピーカーを直接鳴らせるようにしたものということです。

デジタルオーディオのよくある質問のひとつに「CDがデジタルなんだから、デジタルアンプを使えばそのまま増幅できるのでは?」というものがあります。
たしかになんとなくそう思えますが、これはそう簡単ではありません。なぜなら、デジタルというのは単にデータをいったん符号化(数値化)する方式の総称であって、実際に符号化するやり方はたくさんあるからです。たとえばCDではPCMという方式で符号化されますが、D級アンプではPWMという方式を使います。これは前にこちらの「学研の大人の科学」の記事で少し書いたんですが、PWMという時間区分する方式はデバイスをアナログ的に制御するのに適しているからです。D級アンプの場合はパワーICの開け閉めということになります。
このため、全行程デジタルといっても実際にはPCMのデジタルデータをPWMに変換する必要があります。

Wadia 151の場合は前段にさる半導体メーカーと共同開発した「WD151D」というDSPチップを中心に、すべての入力をアップサンプリングして384kHz/24bitにしてから、PCM→PWM変換をします。それから後段でD級増幅をしてMOSFETでスピーカーを駆動できる電力を生み出します。
このようにアナログが途中に介在することはありません。


そこで実際の音ですが、こうしたコンピューターオーディオシステムを組んでみました。
ソースはMac AirとAmarra mini、そこからUSBケーブル(ゾノトーン)で直接Wadia 151のUSB入力につなぎます。
Wadia 151からはスピーカーケーブルでこの前書いたフォーカルのChorus Vにつなぎます。Macを除けばトータルで30万もしません。
こちら背面の写真です。かなり立派な端子が使われていますね。
151a.jpg

音はさすがに全行程デジタルのせいか気持ち良いくらい澄んだ端正な音を鳴らしますが、このアンプの一番のポイントは制動力というかスピーカーのコントロールだと思います。よくベンチマーク的に鳴らすアルヴォ・ペルトのオーケストラ曲でも実に堂々と鳴らします。低域もかなりよく出ます。このサイズの組み合わせですけど、ちょっと驚きます。もちろんフォーカルのスピーカーも価格の割にはかなり良いように思います。

次にUSB接続から変えてHalide Bridge(USB DDC)を使って、MacのUSBからWadia 151のSPDIF入力につなぎます。
Bridgeに変えると面白いことに音に厚みが増し、オーディオ的な艶っぽい美しさも感じられるようになります。USB接続ではちょっとデジタルアンプっぽいところもあったけど、これだと滑らかなまるでデジタルアンプとは思えないアナログアンプの音のようです。これくらいの音なら誰が聴いても納得するでしょう。
Bridgeで採用されているWavelengthのAsync方式のよさもありそうです。

ChordのCDトランスポート・コーダにもつないで見ましたが、ハイエンドCDトラポに変えても一層洗練された音になる伸びしろがあります。
ためしにフォーカルの大きなほう、スカーラにつないで見ても低域のコントロールが感じられるのはたいしたものです。こんなでかいスピーカーでもきちんとベースの制動感が感じられます。

組み合わせでだいぶ表情を変えるというのも面白いところです。ちょっとシステムを工夫すれば手ごろな価格で、これだけ音がよいシステムが組めるということですね。
iTransport用だからiTransportと組ませるということだけでなしに、iTransportから離れてもなかなか良いアンプです。このWadia 151を軸にいろいろなシステムを考えてみるのも面白いと思います。
posted by ささき at 23:39 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月12日

Shure SE535、発表会とインプレッション

SE535V_Bronze_Amp_iPod.jpg     SE535V_iPod_onwhiteLR.jpg 

今日はShure Japanさんの新製品発表会に参加してきました。
まず発表会の場所に驚きます。表参道の裏道で地図を表示させたiPhone片手にウロウロしましたが、青山のCOPON NORPというおしゃれなイベントスペースが会場です。ダイニングバーがあってドリンクやサンドイッチのサービスもあります。ちょっとオーディオの発表会とは思えない雰囲気です。

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今日の発表会の目玉はしばらくフラグシップだったSE530がいよいよ刷新されて新型SE535が出ると言うことです。CESでお目見えしてたものですね。
また中級機のSE425も発表されています。SE115はカラバリがクリアが増えて、SE115mという携帯電話向けモデルが出ます。(以下プレス用画像です)

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左:SE535(ブロンズ)、右:SE535(クリア)

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SE535とパッケージ内容

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左:SE425(シルバー)、右:SE425(クリア)

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SE115m(携帯用マイクとリモコンつき)

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SE115の新色(クリア)

ちょっと脱線しますが、このブログも元々は携帯プレーヤー(URLになってる当時のVAIO Pocket)でShureのIEM(E2cとかE3c)を使って、日々外で楽しむ好きな音楽を紹介するというコンセプトでスタートしたものでした。
いろいろあって今はなんだかいろいろやってますがそれはともかく、つまりはShureってずいぶん前からER-4なんかとならんでこの分野のパイオニアでした。当時はShureの音の良さって画期的でしたが、それはプロ用のインイヤーモニター(IEM)をコンシューマーでも売るという点も大きかった訳です。
今回のプレゼンもその辺を踏まえた会社紹介は世界ではじめてIEMを開発してコンシューマ用に流通させたという点を強調していました。

その当時を知ってる人はShureのイヤホンってE5cとかcが末尾についてたのを覚えていると思いますが、これはプロ用とは別なコンシューマー用の流通経路という意味です。
今回のポイントのひとつはプロとコンシューマーの二本立てではなく、販売ルートのみならず製品開発も統合して行くということのようです。

まず販売ルートを刷新して、コンシューマーには七月から代理店を完実電機さんにするということです。もともと完実電機さんはShureのアナログカートリッジはやっていたようですが、ヘッドホンやイヤホンもやるということです。完実電機さんは大手なので一層の販売力強化がはかれるでしょう。

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製品開発的には従来のコンシューマールートだったSEのラインとプロルートだったSCLラインを統合させるなどです。SE535ならSE530とSCL-5のクラスを一本化させたものと言うことです。

また派手な外観ではなくプロ仕様のシックな外観デザインを基調にする反面で、パッケージに商品説明を書いて売りやすくするなどの工夫をするということです。

*新製品の特徴

新製品の特徴ですが、まずケーブルが着脱式になっています。メモリーワイヤーはワイヤーフォームフィットという新機構になっています。ケーブル自体もケブラーによる強化ケーブルです。これらはまず断線に対する配慮でしょうが、もちろんケーブル交換することもできます。
Shureとしてはマイク付きの携帯用のケーブルを出すようですが、やはりHeadFi筋の人間としては高音質のリケーブルが欲しいところです。
そこでプラグの入手しやすさを香港からきたマネージャーのチャンさんに聞いてみたら、generic(一般品)であってproprietary(独自規格)ではないということでした。MMCXというやつのようです。

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またもう一つポイントとしてプラグのところが回転するようになっています。これはあとでも書きますが、耳の後ろに回すshure巻した時に回転式のロックでテンションが変えられるのでやりやすいと言うことです。
いまは一般的だけど、耳の後ろに回すのは当時は独特だったのでShureのトレードマークでした。ミュージシャンがケーブルを目立たなくするためにするものですが、タッチノイズを減らすというので一般にも広がりました。
ちなみに「Shure巻き」って私が始めにこのブログに書いたような気がします。あんまり表現が思いつかなかったんで、ぐるっと巻くんでそう書いたような覚えが。。

そしてドライバーですが、SE530とSE535のドライバーは違うということです。まず高域特性を改良していると言うことです。ここはShureでは高域がちょっと丸めでしたから、そこへの改良と言うことでしょう。また全体的にバランス重視の音にしてフラットになるようにしたようです。

クロスオーバーは他社では外注したりするところもあるが、Shureは自社デザインで、より小さいものにしたということです。またノズルの位置と角度の最適化を行っているとのこと。
この辺は実際に音を聴いたほうがよいでしょう。

*インプレッション

では実際に音を聴いたコメントですが、試聴機のSE535と比較にSE530も貸してもらいました。また試聴用にサンプル品をもらったので帰りにiPhone4やHM801でも聴いてみました。

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ケーブルはやや太めでE2cをちょっと思わせます。従来のこうしたタイプのものは耳にかけるところはメモリーワイヤー(耳にまるく絡める針金)が入ってるんですが、この新型ケーブルではワイヤーフォームフィットという機構(というかメモリーケーブルカバーみたいなもの)でよりしなやかでスムーズにケーブルを曲げられます。耳の後ろに回すShure巻きをするときには回転するプラグ部分がうまく動いてとても楽です。
Shureのブラックフォームチップの良さもあって快適性は高いように思えます。だれでも無理なくぴったりフィットできそうです。あのE2cとかE5cで巻き方に悩んだのはいまは昔です。(E3cはストレートでも使えました)


SE535はさすがにトップモデルらしい高い音の再現力を感じます。上から下まできれいに伸びてスムーズです。
立体感や音の広がりもiPhone単体でも申し分ないですね。HM801だといっそう際立ちます。音の細かさの抽出もよく声の肉質感を感じさせます。低域もたっぷり充実して高域のシャープさとうまく対比されています。
この高域の伸びきり感にいままでのShureと違うものを感じます。

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左画像は上がSE535、右画像は左側がSE535

実際に530と535を比べて聴くとかなり音が違うのが分かります。
やはり高域が伸びるのは特徴的です。530の高音は綺麗ですが鈍く丸っこい感じですが、535はさらにシャープで芯があります。
反面で低域は530より抑えめで、530のように不自然に張り出した感がなく、バランスが良いというのもうなずけます。530に変えると重心がずいぶん下がるように感じて、低域過剰と感じます。
535は530と比べると低域は抑えられているように思えますが、比較なしで535だけ聴くとむしろたっぷりと低音も出ていて深みもあります。

また、535は全体的に530よりもより洗練されていると感じます。
たぶんクロスオーバーもよくて、530より全体的に少しクリアですっきりスムーズに感じます。ここは音のバランスをフラット調にしたのとうまくあいまってます。

全体により洗練された感がありますが、バランスが変わったことで曲によっては530とは好みの差が出るかもしれません。ただし別のメーカーの音ではなく、音の色はShureのもので、高い方がよりシャープになり、低域の強調が抑えられたということです。
逆にいうと530持ってる人はこれも追加で買いたくなるかもしれません。

下記はモデルさんが装着したところです。耳のアップのほうがイヤホンが見えやすいという意見は却下します(笑)。

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SE425の基本的な考え方は535と同じなんで省きますが、SE115mについてちょっと触れておきます。
これは携帯用マイク付きのリモコン対応です。つまりiPhone対応というわけです。Shureはマイクのメーカーなので内蔵マイクの品質には自信があるとのことで、マイク穴は見えないんですが内蔵をしてます。

**

今回のポイントはプロ製品とコンシューマー製品を共通化して合理的に商品展開を図るというところにあるように思えました。音のフラット傾向の変更もそうしたプロとコンシューマーの融合戦略の一環に思えます。始めに書いたようにプロの品質をコンシューマーに提供するというのがShureらしくもあります。
価格は代理店さんか販売店さんから発表されるということです。フジヤさんではさっそく試聴機を店頭に出しているようですね。

ぜひ、この新しいShureの音に触れてみてください。
posted by ささき at 22:16 | TrackBack(0) | __→ Shure イヤフォン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月10日

Windows 7 のオーディオ設定とWASAPIについて

わたしも少しまえにWindows 7のパソコンを新調して使ってます。わたしの場合はPhotoshopなんかも使うのでメモリを12GBいれてるので64bit OSを使ってます。オーディオ環境も整えつつありますが、音はXPに比べてかなり良いです。パソコン自体の性能も違うんで単純比較できませんけど、XPのときにあったASIOでも取れない妙な曇り感はかなり薄れました。WASAPIを使うとさらに透明感は増します。Mac OSXとも十分比肩できるプラットフォームになってると思います。

WindowsはVistaで大きく進化しましたけど、オーディオ周りもそのときに見直しされてます。このWASAPIもそのひとつで、Core Audioと呼ばれるOSのオーディオ周りの新アーキテクチャの一部です。
とはいえWASAPI自体はよく比較されるASIOとはちょっと違います。わたしも混同していたところもあるので、少し整理したいと思います。

*この記事のソースは主にMSDNのCore Audio API解説です。

1. WASAPIとは

よくASIOと比較されるのですが、WASAPIはドライバーではありません。前に書いたようにWindows7はマイクロカーネル的な考えで設計されているので、本当にハードにくっつくドライバー以外はOS付属の機能といえどユーザーモードで動作します。
*ちなみにVista/7のオーディオエンジン(XPのカーネルミキサー)はユーザーモードで動きますが、アプリケーションとは別に保護されているようですので、厳密にユーザーアプリと同じではありません。

それではWASAPIとはなにをするものか、と言うことですが、これは名前を見てみると良いかもしれません。
WASAPIはWindows Audio Session APIの略です。つまりWindows Vista/7で加わった「オーディオセッション」というCore Audioの概念を統括するソフトウエア群です。
オーディオセッションと言うのは複数の「オーディオストリーム」を束ねて抽象化する概念です。オーディオストリームとはつまりミュージックプレーヤーからドライバーへの音楽データ(オーディオサンプル)の流れと言って良いでしょう。

オーディオセッションの役割ということで、例をあげてみます。
一口にミュージックプレーヤーと言っても実体は複数のプロセス(プログラムの単位)から成り立っています。例えば楽曲ファイルが著作権保護されていた場合、音楽再生するプロセスとは別に保護解除するプロセスが必要になります。しかしそれぞれ別個のプロセスから出たオーディオストリームが別だと音量がばらばらになってしまうかもしれません。それらのオーディオストリームを同じ作業の単位ということでまとめれば、ボリュームなど変更を等しく適用できます。それがオーディオセッションです。
つまりこの場合ボリュームの適用は個々のオーディオストリームではなく、オーディオセッションに対して適用されることになります。

それではよく言われるWASAPIを使うとレイテンシーが小さくて音が良い、と言うのはどういうことかと言うことですが、ここで排他モードと共有モードと言う言葉が出てきます。ここでは前のMSDNのブログに関する記事もご覧ください
またこちらにPCオーディオファン2の図の元が有ります。
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/dd316780(VS.85).aspx

2. 排他モードと共有モード

簡単にまとめると、排他モードのときはオーディオストリームの行き先はドライバー(エンドポイント)に直結されます。さらにドライバーへのデータの受け渡しはCPUを介さないDMA(Direct Memory Access)によるマッピングで行われるため、レイテンシーも最小に出来ます。ビットパーフェクトの保障ができるのもこの経路と「理想的な」ドライバーを組み合わせたときです。
よりよい音を求めるときのモードといえます。

共有モードのときはストリームの行き先はいったんオーディオエンジンになります。オーディオエンジンで他のアプリの音とミックス(つまり共有)されたあとにドライバにいきます。ここはXPではカーネルミキサーと呼ばれていたところです。
オーディオエンジンとドライバーはやはりDMAによるマッピングで直結されています。オーディオエンジンはWindows7ではVistaからさらに低レイテンシーに改良されているようです。
より自由な使い方を求めるときのモードといえます。

排他モードと共有モードの違いでレイテンシーの他はフォーマットもあります。
排他モードではPCMでなくても出力できます。DSDなどは排他モードで出せそうです。
共有モードではPCMでなければなりません。これはWASAPIではなく、経路に挟まるオーディオエンジンがPCMでなければ処理できないという制限です。

それではこの排他とか共有というモードはどこでどうやって決めるのでしょうか?
それについてもう少し深く見て行きます。(以後はプログラミング解説的な内容になります)

まず排他モードと言うのはどの単位のモードの設定なのかというと、オーディオストリーム単位です。オーディオストリームを初期化するモードが排他モードか共有モードになります。ファイルをオープンするときに読み書きのモード指定するような感じだと思います。

さきほどはWASAPIの概念的な定義を書きましたが、WASAPIの実体はWindows7でのオーディオストリームを作成管理する一連のプログラミング・インターフェイスです。下記ページに記載されているものです。
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/dd371455(VS.85).aspx
これらのインターフェイスでCore Audioで加わったオーディオ周りの動作を規定するわけです。

例えば具体的にこちらのページに排他モードでオーディオストリームを作成するプログラムの例が乗っています。
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/dd370844(VS.85).aspx
なかほどの"pAudioClient->Initialize()"でpAudioClientオブジェクトに対してInitialiseメソッドを適用しますが、ここでオーディオストリームを排他モードで初期化しているのが分かります。
第一引数"AUDCLNT_SHAREMODE_EXCLUSIVE"が列挙型で排他モードを意味しています。共有モードで初期化する時は"AUDCLNT_SHAREMODE_SHARED"になります。また最後の引数はNullですが、ここはセッションGUIDというこのストリームが属すべきオーディオセッションのIDです。これがNullと言うことはどれにも属さないということです。
Initializeメソッドに関しては下記に詳しい解説が有ります。
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/dd370875(VS.85).aspx
ここでさきの排他モードと共有モードの列挙型が記載されてます。
AudioClientというクラスはアプリケーション(ミュージックプレーヤー)とオーディオデバイスをとりもつ役割をします。
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/dd370865(VS.85).aspx

先のコードの少し上をみるとpAudioClientの対象の出力デバイスはデフォルトデバイスということがわかります。pDevice->ActivateのところでpAudioClientとのリンクがなされています。このデバイスで排他モードが使えるのかというのは、この例ではその下のGetStreamFormat関数の中で確認してます。

つまり排他モードとか共有モードというのはデバイス側のプロパティなどで決定するのではなく、あくまでアプリケーション側が明示的に宣言することで決められるということです。

3. デバイス設定

一方でデバイス側では、サウンド設定からデバイスプロパティで下記の様な共有モードと排他モードの設定ができます。これはWavelength Protonの例です。

win7a.gif

二つある排他モードの設定の上の方がこのデバイスで排他モードを許すという設定です。ただし排他モードを決めるのは上で書いたようにあくまでWASAPIを利用したアプリケーションなので、ここで設定したからといって排他モードになるわけではありません。

共有モードの設定はオーディオエンジンの設定と考えた方が良いでしょう。
共有モードではさまざまなアプリケーションからのオーディオストリームを混ぜるので、オーディオストリームのサンプリングレートが異なるときには統一せねばなりません。
XPのカーネルミキサーでは48KHz固定だったこの統一サンプルレートを、Windows7ではここでデバイスから取得した値にいろいろと可変できるということです。

またProtonではアプリケーションに基本24bitでの出力を要求していることがわかると思います。ちなみにこれがiPadがProtonでは動かない原因と考えられます。(iPadは16bitしか出せないため)

もうひとつポイントとしてここでは88KHz/24bitの設定が抜けています。これはWindows7の問題です。(PCオーディオファン2のP205参照)
ただし排他モードではどのみちこの設定は意味がないので、88KHzがここで抜けているからといってWindows7では88KHzが使えないというわけではありません。

たとえばFoobar2000のリサンプラーできれいにx2で整数倍アップサンプリングをして、44.1を88.2で出したい(DACに渡したい)というときは、排他モードで出せばよいわけです。排他モードにすれば共有モードで設定してあるサンプルレートは無視されます。
共有モードにした場合は上のダイアログでセットされた値にリサンプルされます。また共有モードの場合は仮にここでセットした値と同じサンプリングレートでプレーヤーから出したとしてもビットパーフェクトは期待できないと思います。

4. WASAPIの実際のプレーヤーでの使用例

下の図はFoobar2000でWASAPIコンポーネントを入れた場合の出力先の選択を示しています。
DS(DirectSound)経由かWASAPIかをそれぞれのデバイスで選べます。現在Proton(USB DAC)とBridge(USB DDC)が接続されています。

win7b.png

DirectSound経由の場合はサウンドエンジン経由、つまり共有モードに設定されます。この場合はリサンプラーをFoobar側で使ってもどのみちオーディオエンジンでさらにリサンプルされるのでアプリ側でのリサンプルは不要(二度手間)に思えます。
またWASAPIコンポーネントも中では排他モードでしか初期化していないようです。たとえばデバイスプロパティで排他モードのチェックをはずして排他モードを使えなくするとエラーで再生できなくなります。
このときに排他モードで開けてエラーならば、共有モードで初期化するという手も本来あるはずですがそれはしていないようです。まあそれはDSを使用してくれ、ということでしょうけれども、WASAPIでの共有モードの音も聴いてみたいとは思いますね。


ちょっと長くなりましたが、Windows 7のオーディオプラットフォームとしての能力は高いと思うし、Windowsはアプリケーションの選択も多いのでうまく使いこなしていきたいと思います。
posted by ささき at 22:16 | TrackBack(1) | __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月07日

Head-DirectのIEM、RE-ZEROとRE0

サードウェーブさんから明日7/8(木)に全世界1000個限定のHeadDirectのイヤホン、RE-ZEROが発売されます。
こちらがサードウェーブさんのページです。
http://www.twctokyo.co.jp/hifiman/HiFiMAN4.html

そこで通常品であるRE0との比較を交えて書いていきたいと思います。

*RE0

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まずRE0ですが、これはカナル型のダイナミック型ドライバーを使用したイヤホンです。
以前RE1の記事を書きましたが、RE0はシリーズとしてはその延長にあるイヤホンです。ただしインピーダンスは高くないのでアンプ無しのプレーヤー直でも鳴らせます。
国内価格約8900円というわりにはかなり音は良いと思います。

今回はRE0/RE-ZEROともiPhone4、iPad、Hifiman801などで聞いてみました。ちなみにiPhone4は前モデルに対して音質も幾分クリアに向上しています。iPadはさらに良く、単体でもけっこう満足できます。(iPadにUSB経由でuDACとかつける手もありますが、それはおいといて)

音は特定の帯域の強調が少なく、ニュートラルです。またクリアで透明感があり、こもった感じが少ないのも良い点です。価格の割には解像感もあり、高域はRE1とは違いとてもシャープです。
低域は量感はありませんが、正しいチップをつければ適度に確保できますし、タイトで腰があるのでロックなんかでのインパクト感はあります。全体にスピード感がよく、少し前に出てくるタイプの音なので、フラット・ニュートラル基調のタイプにしては音楽をリズミカルに楽しく聞かせてくれるという点も良いですね。
RE1のよいタイトさ、インパクト感を低インピーダンスでも実現しているのはなかなか良い点だと思います。

2430.jpg

このイヤホンに関してはかなりチップ選びで音が左右されます(これはRE-Zeroも同じです)。そこで低域が足りないと思ったらまず、チップをいろいろと変えて試してみると良いでしょう。大中小のシングルフランジのほかに、RE1から評判の良かったダブルフランジもあります。白いダブルフランジのほうが透明感は出やすく、黒いシングルフランジで大き目のほうがフィットしやすく低域は出やすいと思います。


*RE-ZERO

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RE-ZEROはHead-DirectブランドのREシリーズのイヤホン三周年記念ということで限定で作られるイヤホンです。11550円で販売するそうですので、それほどRE0と差があるわけでもありません。
RE0とのめだった違いとしては、
1. 巻き線に銀線を使用して低域特性を上げた。
2. 4極ミニプラグを採用している。
3. ハウジングの色など細かいところ。

また聴いてみると分かりますが、RE-ZEROの方がやや能率が高いようです。

RE0はHeadFiでもかなり評判の良い定評あるイヤホンですが、低域がもの足りないとやはり言われていました。低域特性を上げたのはそうした背景があるのでしょう。

2440.jpg

4極ミニプラグを使用しているのは、バランス化も考えているようです。これはここのHeadFiリンクに書かれているように、将来のHifimanプレーヤーへの対応ということのようです。
またここのHeadFiリンクにあるようにJHAudioのJH-3Aのようなアクティブクロスオーバー(というかクロスオーバーなし)のタイプをも想定しているということのようです。ただしこの辺はまだ分かりませんので念のため。

2438.jpg 2445.jpg

4極のままだと普通のiPodなどのプレーヤーにさしたときに音が片方しか出ません。そのため、4極→3極アダプタが標準でついているので、普通のプレーヤーで使う人はこれを使う必要があります。あと腕におぽえのあるひとはProtectorとかいろいろ出ているポータブルバランスアンプ用に自作しても良いですね。据え置きと違ってプラグに統一性がないのはポータブルバランスアンプの難点ではあります。
米国発売当初はかなりかさばるアダプターが付いていたのですが、現在は小さなアダプターがついています。けっこうHeadFiと連動してユーザーの声にこまめに対応するのもHead-Directの良いところです。また、ケーブルつきのアダプタもありますので、場合によって分けると良いでしょう。個人的にはケーブルなしアダプタのほうが良好でした。

音は上のケーブルなしアダプタを使ってiPhone4、iPadやHifiman801で聴きました。基本的にRE0との比較です。
印象はRE0の重心を少し低くしたようで、低域の量感も増えています。全体的な音のバランスは低音が増えたせいで、ピラミッドバランス的に感覚的に良くなったと感じます。ただそれでもボンボンいう低音ではありませんが、iPadなどと組み合わせると十分なくらい出ています。
バランスアンプで聴いてはいませんが、4極のセパレーションが良いのか空間表現も向上しています。少しこじんまりとしたRE0より広がり感を感じます。明瞭感もやや増した感じです。また、RE-ZEROの良い点はより質感表現が向上して少し暖かみもあります。たとえば女性ヴォーカルはより肉感的で声も甘く感じられます。
低域を適度に増強して、全体に音楽的な余裕もあり、定評あるRE0の正常進化的なイヤホンといえます。

とりあえずポータブルバランスアンプがない人でも、RE-ZEROはあるうちに買ったほうが良いと思います。
音も向上していて、アダプタを介して三極で使っても価格の割りにかなり良いイヤホンだと思います。どうしてもアダプタをかますのが好きではないと言う人は別ですが、この価格差ならRE-ZEROを買っておいたほうが良いでしょう。また将来HifiManシリーズのプレーヤーが4極プラグを採用したときにも使えます。
ちなみに予約はかなり好調のようですのでお早めに。。
posted by ささき at 23:35 | TrackBack(0) | __→ RE-ZERO, RE0, RE1, G1 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月03日

マイクロソフトのブログによるWindows7オーディオの仕組みの解説

ちょっとおもしろいことに6/28付けのMicrosoftのMSDN(デベロッパ用)のブログでWindows7のオーディオアーキテクチャについての解説がなされています。MSDNはマイクロソフトのデベロッパ用のサイトです。このブログはMSDNのサブスクリプションライセンスに関係なく見られます。
「PCオーディオファン2」が手元にある方はP200からの「Windows Vista/7の音声システムの秘密」もあわせて読むとよいと思います。エンドポイントとはなにかというようなことはそちらに書いてあります。

こちらがそのブログのアドレスです。
http://blogs.msdn.com/b/windows_multimedia_jp/archive/2010/06/28/4-windows7.aspx

これは開発者用のMSDNなのでそれなりの知識が必要ですが、けっこう胆な興味深いことがいろいろと書いてあります。また、ビットパーフェクト(バイナリ一致)の様にPCオーディオ用語を使って解説してくれてるのが新鮮です。

まずそのビットパーフェクトの保障ですけど、つまりはWindows7 Certifiedドライバー、またはMicrosoft のドライバ(標準ドライバ)でなければ、排他モードのWASAPI 経由であってもビットパーフェクトは保障されないということですね。もちろんこれはOS部分(経路)の話なので、ここに書いているようにその前後のアプリケーション(つまりプレーヤーソフト)やハード・デバイス側でリサンプルしたりデジタルボリューム処理をしていたら成り立ちません。
XPでのカーネルミキサーに代わるオーディオエンジンも、カーネルミキサーが固定小数点演算してたのに比べれば、単精度(32bit)でも浮動小数点処理しているので少しましということになります。

またレイテンシーの短縮について、アドレスマッピングで実装されているというところがちょっと面白いところです。
排他モードWASAPIのときは(ユーザー空間にある)エンドポイントバッファにアプリケーションがオーディオデータを書き込めるとありますが、これはエンドポイントバッファ経由でドライバにオーディオデータを渡す(コピーする)のではなく、直にドライバーのデータエリアに書いてることと同じということです。
基本的な話として、アプリケーションはユーザーモード(ユーザー権限)で動作しているので、ドライバーの保護されたカーネル空間に直にデータを書き込めるわけではありません。ただしこうしてマップすることであたかも直接カーネル空間に書いてることと同じということです。PCオーディオファン2の図1ではエンドポイントバッファは線にまたがる様に書かれていますが、こういうきちんとした訳があったということです。
コンテキストスイッチングするからゼロではないにせよ、コピーなしの参照で済むということはかなり時間短縮になります。逆に言うと他のシステムでもこういう実装しているのなら、レイテンシーはOSのオーバーヘッドに左右されるということでしょうか。

また、Vista/7ではOSのオーディオコンポーネントがユーザーモードにある(つまりはマイクロカーネル的な考え方をしている)というのは、本来OSの一部であるVista/7のオーディオエンジン(XPのカーネルミキサー)はカーネルモードではなくユーザー権限で動作していることでも分かります。ブログの図では明確に分かりますね。PCオーディオファン2の図1ではユーザーモードとカーネルモードの両方にまたがっていますが、ここはブログの図のように完全にユーザーモードにあると見るべきでしょうね。
このようなマイクロカーネル的な考え方をしているというのはWindows7の優れた点の一つです。ただここは少しOSのアーキテクチャの解説が必要なのでまたそのうちに書きたいと思います。

いずれにせよ、マイクロソフトでも作り手のほうがオーディオ的な考え方を意識してくれているというのはなかなか良いことですね。
ちょっと今後も楽しみにしていきたいところです。
posted by ささき at 00:37 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする