Music TO GO!

2018年08月13日

SONY DMP-Z1とS-Masterの功罪について考える


SONYが香港AVショウで超ド級のDAP、DMP-Z1を発表したと下記Philewebなどに報じられて話題をまいています。
https://www.phileweb.com/news/audio/201808/09/20057.html
少し調べてみるとこのDMP-Z1で興味を引いたのが、ウォークマンのみならず据え置きのTA-ZH1ESまで採用されていたSONY自慢のS-Masterが採用されず、一般的なDAC IC(AK4497)+アンプIC(TPA6120)という組み合わせに収まっているということです。

本稿ではこの辺の理由を考え、SONYのこれからを推察していくことにします。

まず下記のスペックからDMP-Z1ではDSD Remastering engineという機能でPCMを 5.6MHz DSDに変換するということが書かれています。ここから推察されるのはDMP-Z1がDSD中心のアーキテクチャになっているということです。これはDSDをネイティブ処理する能力に長けているAKMのAK4497を採用していることでもわかります。
http://www.sony.com.hk/en/electronics/walkman/dmp-z1
また下記のHeadFi投稿にありますが、このDSD Remasteringを行うDSPはSONYの自家製だが、Walkmanでも採用されていたがS-Masterとの相性が悪いのでRemastering機能は使えず、TA-ZH1ではそのためにFPGAを使う羽目になったと書かれています。
https://www.head-fi.org/threads/official-sony-dmp-z1-thread.886122/page-9#post-14417586
つまりS-Masterから決別した第1の理由はここで、S-MasterはPCMに特化した設計であったため、DSDを中心とするアーキテクチャには向いていないと言えます。

次に下記のPhileweb記事にも乗っているSONY自身の説明にもあるように、S-Masterでは大出力が取り出しにくいということがあります。HeadFiでも同様なことを開発者から聴いたという投稿がありましたが、これもそれを裏付けています。
https://www.phileweb.com/news/d-av/201808/11/44729.html

また、これらを解決するためにはDSD中心で大出力のS-Masterを開発すればよいのでは、と思われる人もいるかもしれません。しかしS-Masterのような大規模なカスタムICは設計開発費がかさむので、小ロット高利益率のような製品には向いていないということがあります。一般ウォークマンのようなコンシューマ向け大量生産品の性能を上げるには向いていますが、似た用途でも高級オーディオのカスタムICではCHORDのようにFPGAか、XMOSのような小回りの利くものが向いています。おそらくS-MasterはASICのようなものだと思います。

そして、これまで出てきた断片からDMP-Z1が新技術のテストベッドではないかということも推測できます。ほんとのワンオフの特別モデルであれば最高性能を追求するためにはDACはともかくアンプはディスクリートを使う手もあります。しかしあえてDAC IC+アンプICというスキーム(図式)を取っているのは、周辺のガワとか高級パーツを簡易化すれば、のちにもっと求めやすい「なにか」になるのではないかということです。それがWMなんとかかはわかりませんが。
ソニーはかつて技術の最高のものを集めてコスト度外視でクオリアを作りましたが、これは次につながるものにはなりませんでした。DMP-Z1は新しい技術を試したくてコスト度外視となり、次につなげたいということがあるのかもしれません。


以上からソニーはS-Masterを捨てて、DAC IC+アンプICでDMP-Z1を開発したのではないかと推測します。もちろん省電力の良さもあってコンシューマープロダクトではS-Masterは継続すると思いますが、DMP-Z1はひとつのマイルストーンになるのかもしれません。


ところで蛇足ながら最後にもっと推測をひとつ。
ソニーは自分の固有形式・技術にこだわる会社で、この場合それはDSDだと思います。ソニーはDSDをソニーが生み出した形式として捉えているのではないでしょうか。PCMに縛られるS-Masterを捨てることで、そこに立ち返ろうとしたのではないかとふと思いました。まあ私のただの思いつきですけれども。

posted by ささき at 14:09| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月30日

Bluetoothのマルチキャストオーディオ技術、Tempow Audio Profile

最近はSonos、Roon、ChromecastやAirPlay 2などのように一つのソース機器から複数の再生機器にストリーミングするマルチルーム、マルチキャスト機能が流行りつつありますが、Bluetoothでは1:1の接続しかできないことはよく知られています。完全ワイヤレスイヤフォンも片側ユニットに送ってから、そこからさらにBTないしはNFMIでもう片方に転送しているのはこの1:1制限によるものです。
しかし、BluetoothでもBTヘッドフォンを聴きながら、BTマウスやキーボードを同時に使うなどのようにひとつのスマートフォンから複数のBluetooth接続をすることはもちろん可能です。つまりオーディオにおける1:1制限はBluetoothの制限というよりも、オーディオプロファイル(ドライバー)であるA2DPの制限です。

それに興味ある取り組みをしているのが、TEMPOWです。TEMPOWは2016年に設立されたフランスのベンチャー企業(Startup)で、マルチキャストの可能なTAP(Tempow Audio Profile)というオーディオプロファイルを提案しています。TAPに対応することで最大4つまでの機器と同時に音楽再生の接続ができます。しかし再生デバイス側ではTAPの対応の必要はありません。対応が必要なのはスマホなどホスト側だけです。

TEMPOWホームページ
https://tempow.com/

tempow1.png
TEMPOWホームページから転載

これはどういう仕組みかということをTempowのビンセント氏に少し聞いてみました。TAPはA2DP互換ですが、A2DPを直接書き換えたものではなく、スマホ側にA2DPと併存可能です。そのTAPをインストールしたスマホ側の設定で"Multi Bluetooth Audio"という設定項目があり、それを切り替えることでアプリがどのオーディオプロファイルを経由するかを選択できるということです。TAPにすれば同時に複数機器とやり取りできますが、ひとつひとつはA2DP互換ですから、再生デバイス側には対応不要というわけです。なかなかスマートな解法ですね。

現在はAndroidとLinuxだけ対応のようですが、レノボ、モトローラとパートナーシップを結んでいるようです。
ホームページを見ると完全ワイヤレスへの対応も考えられているようで、ちょっと面白そうですね。
posted by ささき at 22:20| __→ 完全ワイヤレスイヤフォン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月23日

Chordの新製品発表会

Chordは7/15の発表会で3機種を新たに発表しました。そう、2機種と言われていたのですが、サプライズで1機種が加わりました。
それらはDAVE向けパワーアンプのetude、よりデスクトップに適合したHugoTT2、そしてサプライズのHugo M scalerです。

IMG_6763_filtered[1].jpg   IMG_6785_filtered[1].jpg
左写真の左:Hugo TT2とToby、右:etude、奥:Blu Mk2とDave
右写真はサプライズで取り出されるHugo M Scaler


1. 新パワーアンプetude
etudeはDaveに合わせたパワーアンプを作るという発想で、Daveのプリ出力を使ってDACからダイレクトでパワーアンプにつなぐものです。クラス的には同社のChoralシリーズに相当します。

IMG_6771_filtered[1].jpg

Etude High Right[1].jpg  Etude - Rear[1].jpg
Chord etude

etudeはフランス語のstudyという意味で、文字通りDaveのトランジェントの良さと低歪に気づかされて一から作り直すということで、Daveに合わせた高速アンプのために「フィードフォーワード」という新たなトポロジーを採用しています。これはRobert Cordellという人の研究に基づくもので、従来のフィードバックループでは早い処理に追いつけないので、ループで戻すというのではなく、あらかじめ予測した補正量をモニタリングと同時に合成して歪みを打ち消すというトポロジーのようです。

IMG_6754_filtered[1].jpg
Chord etude

つまり言い方を変えるとオーディオ世界にはアンプのフィードバックの功罪について議論が昔からあって、従来はNFBアンプではSNが良い(明瞭)が音が遅い(だるい)、ノンNFBアンプでは音は早い(生き生きとする)がSNが悪い(不明瞭)ということがトレードオフとして言われていましたが、このフィードフォーワードではSNが良く早いという両方の利点を持つということが言えるかもしれません。

IMG_6773_filtered[1].jpg  IMG_6775_filtered[1].jpg

この考え方は1986年からあるそうですが、従来は高速デジタル処理の分野の話で、オーディオでは必要ないものでしたが、Daveによってその領域に踏み込んだということを言っていました。

IMG_6755_filtered[1].jpg

etudeではコンパクトアンプですが、BTLによってさらなるハイパワー化が可能です。このコンパクトさは4つの静音ファンによるものだということ。

2. Hugo TT2

Hugo TT2はHugo TTをさらにテーブルトップに向けて改良したもので、バッテリーではなく電源を持つことで、FPGAの持つ力を開放したさらなる処理能力を持ち、98304タップというDaveの半分程度というかなり高性能化がなされました。

IMG_6761_filtered[1].jpg
Chord Hugo TT2とTToby

この電源はスーパーキャパシターを使うもので、素早い電流の取り出しに対応しています。
またボリュームを手前に持ってくることなどさらなる改良が図られています。またゲインを設けるなど高感度IEMに向けた対応もなされるのは最近HeadFiでも活躍するワッツならではでしょう。

HugoTT2Rear 2[1].jpg  HugoTT2Front 2[1].jpg
Hugo TT2

発表会の写真でTT2の下の銀色はTTobyという国内未発表のアンプです。こちらは100w/chでAB級とのこと。


3. Hugo M scaler

サプライズはHugo M scalerです。この「M Scaler」という名称はこれがはじめてではなく、前にBlu MkIIが登場した時にその100万タップのデジタルフィルターをM Scalerと呼称していました。Mはミリオンのことでしょう。タップ数は処理の細かさです。

IMG_6788_filtered[1].jpg
Hugo TT2の右にあるデバイスがHugo M Scaler

このHugo M Scalerを使用すれば、DaveにたいしてBlu MkIIを使用して100万タップのアップサンプラーとして使用したのと同じことができます。下記のBlu MkIIの記事もご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/446340304.html

IMG_6789_filtered[1].jpg
M scalerについて解説するロバートワッツ

つまりM Scalerはデジタル信号を入力し、100万タップの高精度で768kHZにアップサンプリングして、Chordの2本のBNC端子を採用しているDAC(Dave,Qutest,HugoTT2)に出力して音質を向上させるデバイスというわけです。下記のChordホームページに詳細があります。
https://chordelectronics.co.uk/product/hugo-mscaler/
Daveの16万タップに対して、M Scalerは100万タップと大幅な処理力の向上をもたらしてトランジェント・空間再現力の向上をもたらしますが、それだけデジタル回路のノイズも増えるのでDACとは別筐体のほうがよいわけです。

IMG_6796_filtered[1].jpg

端的にいうと"Hugo M Scaler"とはBlu Mk2のCDドライブメカを取ったものと考えてよいです。これはロブワッツにも確認してみましたが、そうだと言ってました。ただしFPGAなども同じ(ザイリンクスXC7A200T)だそうですが、筐体や電源など厳密には異なりますので念のため。
ちなみに100万タップというのは16bitにとっても到達点であり、24bitに対してはまだまだということですので極めるとは大変なものです。

IMG_6803_filtered[1].jpg  IMG_6799_filtered[1].jpg
右のデバイスがHugo M Scaler

Hugo M Scalerは機能オンオフのバイパス機能があるため、ありなしの聴き比べを試聴できました。
HugoTT2のみでも自然で高精度な音ですが、Hugo M Scalerをオンにすると合唱曲のマニフィカートではより透明感が出て高域がより伸びる感じがします。ジャズのヘルゲリエンのTake5では音のエッジがよりシャープで楽器のキレが良くなり、高域の音がきれいで低域もより深く感じられます。ヴァイオリン曲では倍音の響きがより豊かに聞こえる感じです。効果はわりと高いと感じられました。

IMG_6769_filtered[1].jpg
Chordの発展について語るジョンフランクス

Chordは5年前より12倍の売上規模となり、より開発に投資したいということです。今後ともまた新製品を楽しみにしたいものです。
posted by ささき at 10:05| ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月20日

FitEarの意欲作、静電型ツィーター搭載のFitEar EST UIEMレビュー

ESTとは静電型ツイーター(Electro Static Tweeter)の略称で、FitEar ESTは形式としては静電型ツイーターとフルレンジのBAユニットのハイブリッド・イヤフォンです。FitEar ESTにはカスタムとユニバーサルがありますが、本稿はユニバーサル版(UIEM)のレビューです。

DPP_0465[1].jpg

*静電型ドライバーのしくみとは

静電型ドライバーではSTAXが有名ですが、磁石による力を利用した動電型(Electrodynamic)とは根本的に異なる駆動方式で、固定電極(バックプレート)と発音体となる振動膜間に生じる静電気の吸引反発力によって振動膜を振動させるもの(静電型:Electrostatic)です。

静電型では固定電極と振動膜の間に静電気を生じさせる必要がありますが、これには2つのタイプがあります。STAXで採用される方式は外部電源ユニットから振動膜に一定の高電圧が供給されます(直流バイアス型)。振動膜に対する固定電極にはトランスで昇圧され高電圧となった音楽信号が送られ、振動膜と固定電極間に生じる静電気力の変化により振動膜が吸引反発し発音体として作動します。STAX製品では振動膜を二つの固定電極で挟む形で構成され、振動膜が片方の電極に対してはプッシュ、もう一方の電極に対してはプルの関係で動作します(プッシュプルタイプ)。

DPP_0464[1].jpg DPP_0463[1].jpg

振動膜に外部から直流電圧をかける方式に対し、半永久的に電荷を蓄える高分子化合物を用いるエレクトレット方式(エレクトレット型)があります。固定電極にエレクトレット素子をもつものをバックエレクトレット方式と呼び、ダイヤフラムの材質に制限がないため特性的に有利になります。同方式の採用メリットとしては高電圧を供給する外部電源ユニットを必要とせず、音楽信号の昇圧のためのトランスのみで動作させることができる点が挙げられますが、振動膜の駆動力や再生周波数に対しては制約もあります。

FitEar ESTの場合は静電型のエレクトレットタイプで、トランス内蔵の静電型イヤフォンと言えます。このタイプは過去にはヘッドフォンではAKG K340のような採用例もありますが(こちらのうちの記事を参照)、イヤフォンのサイズに小さくしたのは例がないと思いますが、ここはかなりユニットメーカーが開発で苦心したのではと思います。
(エレクトレットタイプで外部にトランスを持つというヘッドフォンも過去にはありました)

DPP_0466[1].jpg

基本的にスピーカー(イヤフォン)とマイクは向きが逆なだけでこうした原理は同じです。静電型のスピーカーの記事は少ないので、原理的に興味がある人はマイクを調べるとよいと思います。Shureではコンデンサマイクの技術があったからKSE1500が実現できたのでしょう。

ちなみに振動膜と固定電極の関係から言うとFitEar ESTで利用される静電型ツイーターはプッシュプルタイプではなくシングルタイプとなります。通常は吸引反発力の非線形性が生じますが、振動膜と固定電極の位置関係が逆となったもう一つのユニットと組み合わせて同時に動作させることでこの問題の解消とゲイン上昇を得ているということです。

*静電型ドライバーの利点とは

静電型では振動板が軽いために音が細かいとか音の立ち上がりが速いなどの利点があります。たいてい静電型では振動板の薄さが何ミクロンというところが競い合いになりますよね。
また振動個所が点となる通常のダイナミック型とは異なり、静電型の場合は振動個所は面ですから全面(平面)駆動としての良好な周波数特性も得られます。なぜかというと一点で振動板を振動させると、その点から離れた場所は振動板の物性でたわみますので、均一な振動が得られにくいからです。全面(平面)で振動すればそうした問題はなくなります。これは分割振動と呼ばれる問題です。

DPP_0461[1].jpg

静電型に対して最近よく言われる平面駆動型はダイナミックタイプのものが多く、オルソダイナミックやアイソダイナミックと呼ばれます(呼び方はメーカーに寄る)。これは全面(平面)駆動としての良好な周波数特性は同じですが、振動板に磁石のためのコイルのパターンが組み込まれる必要があるために、静電型ほどは振動板を薄く軽くは作れません。
ただし静電型・直流バイアス型のような専用ドライバーは不要です。

*FitEar ESTの特徴

FitEar ESTにおいて静電型ツイーターはハイパスフィルタを介して6kHzよりも上の高音域を担当するということなので、フルレンジスピーカー&補助ツィーターの組み合わせに近いとも言えます。この形式ではほとんどの可聴帯域の音はフルレンジユニット(FitEar ESTの場合はBAユニット)で出すのですが、それを静電型ツィーターのスムーズな中高域特性(倍音特性)で補うという考え方です。

ESTの特徴としては先に書いたようにピークのないスムーズな周波数特性にありますが、その結果中・高周波数帯域において音響フィルターの利用を排することができたということです。
通常イヤモニは周波数特性のチューニングにおいて、ユニットが持つピークを抑制するために音響抵抗というメッシュのようなフィルタを音導孔にセットしていますが、これはマスクをしながら少し甲高い声で話すことで、あたかも「丁度良い」バランスに聞かせるアプローチです。

FitEar ESTはBA側には不要なピーク抑制のための音響抵抗を使用していますが、ESTドライバーの方には音響抵抗がありません。これがESTイヤフォンの鮮烈で高い透明感の高域表現の理由のひとつと言えるでしょう。
FitEar Universalで開発されたオーバルホーンステムと同様の形状のステムにはサウンドポート(音導孔の開放口)は2穴空いているように見えますが、静電型ツイーターに対してはホーン形状、BAフルレンジユニットについてはストレートな開口部形状に整形され、それぞれに独立したアコースティック条件が付与されています。

DPP_0470[1].jpg

もう一つのESTのポイントはこれが密閉型だということです。
今回のステム(ノズル)がやや短いのはミドルレッグ・シェルと言われるもので、AirのようにショートレッグシェルではありませんがこれはBAとダイナミックというメインドライバの違いによるものだということです。この方式の利点の一つは耳穴の個人差を減らして、万人に最適に近い音響特性を得られるとも言います。

またこうした特殊ドライバーを採用したイヤフォンでは普通は感度が低くなりがちですが、ESTでは感度(能率)が高いのも特徴です。プレーヤーのボリュームはさほど上げる必要はありません。これは静電型ユニットをフルレンジではなくツイーターとしての用途に限定したユニット開発によるところが大きく、BAユニットとのバランスを取り、日常の音楽鑑賞利用において十分に高い能率を確保することができたということです。


* 音質について

FitEar ESTではケーブルの006ケーブルが標準でついてきます。標準でも装着感はよいと思いますが、AZLA SednaEarfitがはまって私の耳によくフィットしたのでこれを使用しました。ケーブルはメーカー推奨の006のまま使用しました。006は音に関してはよいのですが、硬いので取り回しはしずらいほうかもしれません。

DPP_0460[1].jpg

FitEar EST UIEMは端的に非常に優れた音で、ハイエンドクラスの音世界を堪能させてくれます。音のレベル的に言うと、AK380では物足りずに、SP1000クラスがあいふさわしいレベルにあると思います。特に音の高い透明感と、音の抽出の細かさの点においてですね。特にSP1000CPがお勧めです。能率は高く、あまりボリュームを上げる必要はありません。
全体的な音の印象はとてもすっきりとして、周波数特性は高中低ともバランスよく思えます。ワイドレンジで特に高い方の伸びが今までのイヤフォンとは一線を画すほどのレベルだと思います。ヴァイオリンも含めてほとんどの楽器音が実のところは中音域なんですが、純粋に高音域であるベルの音の透明感の高さ、純度の高さにはハッとさせられます。

IMG_4884[1].jpg  IMG_4902[1].jpg

中高域の音再現力は圧倒的で、独特の高い透明感と高い解像力、輪郭のはっきりとした明瞭感の高い音像を聴かせてくれる楽器音はSP1000の音性能をいかんなく発揮して感動的です。
またそれでいてきついかというと、そうではなく、特にギターやピアノなどアコースティック楽器の音再現の自然で滑らかな点も特筆かもしれません。これは全体的な帯域バランスの良さ、ピークやディップの少ないESTの素直な特性も大きく貢献していると思います。
ただしそれなりにエージングはしっかりしたほうが良いと思います。

DPP_0471[1].jpg  DPP_0467[1].jpg

また優れた透明感・解像感のほかに、音空間の広がりと独特の開放感もFitEar ESTのポイントだと思います。まるで開放型のような気持ちの良い開けた音世界は透明感と相まって独特の心地よさを感じさせてくれます。
音空間の深みと濃さもとても魅力的に感じられます。

DPP_0469[1].jpg

iFI Audio xDSDのようなハイパワーのDAP/アンプのシステムで聴いてもパーカッションやドラムの切れの良い打撃感が半端なく、ロックやポップスを聴いても楽しめるイヤフォンだと思います。女性ヴォーカルも透明感あふれて、感動的なほどです。
音の立ち上がりの良さも楽器音のリアルさに直結しているようで、まさに音の水道管のような音源を生で楽しめるような感覚が味わえます。

とにかくDAPやアンプが高性能なら高性能なほど良い音がどんどん飛び出してくるような楽しみがFitEar ESTにはあると思います。

* まとめ

FitEar ESTは意欲作ですが、全体的な音のバランスの良さから感じられる完成度の高さはやはり手慣れたFitEarならではのまとまりの良さも感じさせてくれます。そのベースがあって、圧倒的な透明感の高さや開放感の良さという個性の部分が際立っているのでしょう。

DPP_0462[1].jpg

またFitEar ESTではESTドライバの特性の良さそのものもさることながら、ディップやピークを減らして音響フィルターを排せたというのが実のところは効果として大きいとも思えます。そうした点ではアコースティックチャンバーなどで音響フィルターレスにしたAndromedaなどの人気モデルにも通じるところはあるかもしれません。

FitEar ESTではこのESTドライバーの可能性を示してくれ、さらなる展開にも期待を持たせてくれます。個性的でこれならではの音世界を持たせしてくれるという面もありながら、そのESTという要素技術を音レベルの高さにうまく結びつけたのがFitEar ESTです。

それはこれまでにはなかったアプローチによる個性的で高性能の新しい意欲作と言えるのではないでしょうか。
posted by ささき at 09:43| __→ 須山カスタム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月19日

Net Audio Vol31に執筆しました

本日発売のNet Audio Vol31に「ファイルとディスクの共存術」ということでMQA-CDの記事を書きました。
MQA-CDとはなにかということから、ケース別の使い方についてまで広範囲にまとめていますので、ぜひご購入の上でご一読ください。

posted by ささき at 14:26| ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月18日

PhilewebにDita Audio fealty/Fidelityの記事を執筆しました

PhilewebにDita Audioの"Twins"、FidelityとFealtyの記事を書きました。写真も私が撮ったものです。
Twinsコンセプトの開発秘話から、Twinsの技術、そして音源によるそれぞれの使い分けまで詳細に書きましたので下記リンクからご覧ください。
https://www.phileweb.com/review/article/201807/18/3093.html

10_1s.jpg
posted by ささき at 15:48| ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月07日

ポタ研夏 2018レポート

今日は恒例のポタ研を見てきました。はじめよりも後になってからの方が混んで来たのは、みな慣れてゆっくり来ているからのようです。

IMG_4856[1].jpg  IMG_4857[1].jpg
今日けっこう気になったのはこのiFI AudioのxDSD/micro用の新しいケーブルです。これはあのAudioQuestのDragonTail(左)と同等以上の音質あるのに驚きます。また取り回しはより柔らかいですね。iFI Audio持ってる人は要注目かと思います。

IMG_4843[1].jpg
アユートさんではSE100を中心に展開してました。これはヨーロッパでは有名なムシューシャというキャラとのSE100コラボとのこと。

IMG_4849[1].jpg
ミックスウエーブの展開するF・Audioのフラッグシップ。ここはフルレンジのBAでまず音を作って、ドライバーを増やすごとに弱いところにBAを足すという考え方とのこと。透明感が高く、ちょっと独特な空間の広がりがありますね。

IMG_4867[1].jpg  IMG_4866[1].jpg
Colorflyの流れをくむLUXURY & PRECISIONのLP5の特別版。L6などL系統は完全ポータブルでLP系は据え置きも念頭に入れてるとのこと。
聴いてみると音に細かさだけではなく、深みがあって高級パーツを使ったアナログ回路の設計の良さを感じさせてくれます。

IMG_4860[1].jpg  IMG_4861[1].jpg
Complyが輸入するInEarz(インイヤーズ)というカスタムイヤフォン(Nirvana)のデモユニット。ADELモジュールが付いてますね。
ADELモジュールついてるユニットらしく音の独特の開放感というか立体的な広がりが良い感じで、スケール感があります。

IMG_4847[1].jpg
A2PさんのSTAXポータブル真空管アンプの完成品。真空管らしく音色がきれいで、意外と低域もしっかり出てます。音が速くキレが良いという静電型の良さもちゃんと出てると思いますね。

IMG_4845[1].jpg
ファイナルで売り切れのLab4がシンガポールでストックが見つかったそうです。興味ある人はJabenジャパンへ。

IMG_4870[1].jpg  IMG_4871[1].jpg
ファイナルのE4000(クロ)とE5000(シロ)。さすがの良い出来ですが、私にはE4000の方がE3000の上位バージョンで、E5000はE2000の上位バージョンに思えました。ケーブルのせいかもしれませんが、E5000はちょっと演出系気味かもしれません。
posted by ささき at 17:39| ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月24日

Audirvana PLusのWindows版、ベータ版

Audirvana PlusのWindows版のベータ版を試してみました。
下記フォーラムにログインしてBeta Windows(ログインしないと見えない)を押下します。
https://audirvana.com/forums/

Get Audirvana Plus for Windows 10 beta → You can get the beta version at xxxxのリンクを押下。
* Visual C++ "14" Runtime Libraries (x64)、Microsoft .NET Framework 4.7.1 (x86 and x64)が必要です。ない場合にはInstallボタンを押す。ある場合にはlaunchボタンほ押してください。

aplus-win1.png

Windows版ではいわゆるフラットデザインで設計されなおされています。
ライブラリを設定して、右下のUSBアイコンからUSB DACを選択してWASAPIかASIOを選択、名前の横の>を押すと詳細な設定が可能です。

aplus-win3.png

iFI micro iDSD BLを選ぶとMQA設定は自動でレンダラーが設定されています。
全体的にスピードが遅い気がします。UIの遅さは製品版では改善されるようには思いますが、ライブラリについては巨大なライブラリだとかなり遅いことがフォーラムでも指摘されていて、ダミアンはMacなみに向けて改善中と答えています。
https://audirvana.com/forums/viewtopic.php?f=11&t=1649
おそらく音質優先のためにサウンド再生スレッドの優先度をかなりあげ、操作性の優先度を大きく下げているように思えます。

音質的にはわずかですがRoonより良いようには思いますね。ただ分析的に聴かないとわからないくらいの差だとは思います。ベールが一枚とまでは言わないけれども、薄皮一枚がはがれているようには思います。特にパーカッションの打撃感などや中高音域の瑞々しさなどです。

カーネルストリーミングも使えるようになると書いてあるので、これがMacでのインテジャーモードに相当するかもしれません。ちなみにhogモードは排他WASAPIに相当します。
カーネルストリーミングはXP時代にはよくミキサーのバイパスに使われていましたが、Vistaになって排他モードWASAPIが導入してからはあまり使われなくなりました。ただJPlayとか一部ではまだ使われていると思います。WASAPIよりもさらに低いレベルのアクセスによってさらなる低レイテンシーが狙えると思います。

まだ動作速度で問題はありますが、期待感はありますね。
posted by ささき at 10:31| __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月20日

PhilewebにRoon1.5のMQA再生の記事を執筆しました

PhilewebにRoon1.5のMQA再生機能の記事を執筆しました。
MQA-CDリッピング音源のRoonとAudirvana plusの挙動の違いやAudio MIDIでみるデータ転送幅など細かいところにも着目してMQAの実体に近づこうというものなのでぜひご覧ください。

https://www.phileweb.com/sp/review/article/201806/20/3077.html
posted by ささき at 09:11| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月17日

MQAのポータブルオーディオ最前線についてボブスチュアート氏の話

xDSDの特徴の一つはMQA対応ですが、いまのところはデスクトップでAudirvanaやTidalと接続しなければなりません。それではxDSDのコンパクトさを生かすポータブルでは使えないのか、という課題をかかえつつ週末のOTOTENに行き、またボブスチュアート氏とも話をする機会を得たのでこの辺も聞いてきました。

IMG_4570_filtered[1].jpg

前提として、ポータブルオーディオではコンパクトさが優先されるため、ハードウエアでは低プロセッサパワーでも動作可能なMQAレンダラーが採用されるということがあります。レンダラーはコアデコーダーがないとMQAファイルを認証できないので、つまり外部にMQAコアデコーダーが必要です。

xDSDをポータブルでMQA再生するための一つ目の方法はMQA対応しているDAPを使用することです。DAPはアナログ出力が必要なので、MQA対応するためには単体完結できるMQAフルデコーダーが搭載されている必要があります。MQAフルデコーダーとはMQAコアデコーダーとMQAレンダラーが一体になったものでもあるため、MQAフルデコーダーは設定によってMQAコアデコーダーとしても動作が可能です。

このことから、まずxDSDをActivo CT10やOnkyo DPX1とUSBで接続してみました(AQ Dragontailケーブル)。ちなみにAstell & Kern DAPも近々MQA対応するはずです。

IMG_4563_filtered[1].jpg  IMG_4566_filtered[1].jpg

上はActivo CT10のUSB出力設定画面ですが、MQAソフトウエアデコードが選択できることがわかります。また実際にxDSD側でもマジェンタのLEDがついているのでMQAで入力されていることがわかります。

IMG_4574_filtered[1].jpg

上の写真はONKYO DPX1をスチュアート氏が操作しているところ。ONKYOはUSB接続によって自動選択されるようです。

xDSDをポータブルでMQA再生するための次の方法はスマートフォンです。EssentialなどMQA対応を表明しているアンドロイドスマホも出てきていますが、iPhoneの場合にはアプリが必要です。これは開発中のアプリをボブスチュアート氏が見せてくれたのですが、実はMQA Ltd.がiPhone用の再生アプリを開発しています。

IMG_4572_filtered[1].jpg

さっそくたまたま持っていた()カメラキットケーブルでiPhoneと接続してxDSDにiPhone上でMQAアプリを使用したMQAコアデコードを行ってみました。上の写真を見てわかるようにxDSD側でマジェンタのLEDがついているのでMQAで入力されていることがわかります。

IMG_4573[1].jpg


また、もうひとつiPhoneアプリではAmarra Playアプリもあります。これは現在でも使えるのですが、同一のWiFi上に親のAmarra luxeが必要です。ただし将来のアップデートでスタンドアローンで動作するバージョン(V1.6)を予告しています。ボブスチュアート氏はすでにこのスタンドアロンの開発版も持っていてデモを見せてくれました。上の写真のようにやはりxDSD側でマジェンタのLEDがついているのでMQAで入力されていることがわかります。また左下にAmarraのマークが表示されているのが見て取れるでしょう。


このようにMQAのポータブル応用はすでに始まりつつあります。
MQAの特徴の一つは階層的ともいいますが、さまざまな分野への応用力・柔軟性が高いことです。MQAはすでにファイル再生だけではなく、CDでも適用可能なことを見せてくれました。16bitでも32bitでも対応できるし、ハードも様々な対応が可能です。

IMG_4578_filtered[1].jpg

上はボブスチュアート氏が書いてくれたMQAコアデコーダーとMQAレンダラーの関係のメモです。ここではさらにレンダラーがチャンネルデバイダやデジタルクロスオーバーなども経由して、周波数帯別やチャンネル別のマルチアンプとの対応も可能であることが示されています。
MQAはまだ緒についたばかりですが、ポータブルへの応用をはじめ可能性の多様さに興味が惹かれます。
posted by ささき at 17:40| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする