Music TO GO!

2022年01月27日

final新社屋訪問

finalの直営ストアと本社が移転して川崎駅近くのビルに統合されましたので見学してきました。場所は川崎駅のラゾーナ側からすぐで、和風の暖簾の衣装が玄関にあるのがfinalらしいところ。
ビルは元は学習塾だったもので一棟まるごとfinalのビルとなります。内装は2001年宇宙の旅のような真っ白の内装でこれは塗り替えたそうです。

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5Fは多目的ホールで100人くらい入るそうです。もちろんfinal主催のイベントも行いますが、見たところファンミーティングやヘッドフォンイベントにちょうど良さそうで、スクリーンとプロジェクターも用意可能で一般貸し出しも相談次第とのことです。

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面白かったのはこの階の一角にKlippelレーザー測定器が設置されていることです。これは振動板の動きを正確に測定するものです。注目は台座に振動を相殺するためのアクティブ制御の台座が据えられていることです。

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4Fはfinal storeで、一般のお客さんは直接この階にエレベーターで上がってきます。いままでにfinal storeにあった機材もありますが、中央のテーブルはユニークで、finalはこれからチョコの製作のみならず酒の開発も行うようです。

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置物もイヤフォンデザイナーさんが別の仕事で作ってるということで、こうした空間はオーディオを軸とした箱庭的な世界をプロデュースするという意味合いがあるそうです。例えば良い音楽を聴きながら良い置物において楽しみ、チョコや酒も楽しむというような感じです。

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そこに様々なプロトタイプも置かれています。

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D6000(プロトタイプ)

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D8000のプロトタイプ

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羽生選手に進呈された限定生産モデル

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D8000あるいは汎用のヘッドフォン用アタッシュケース(新製品) サムソナイトと同じ工場で作られ強度が高い

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防音室も予約で借りられます

また興味深いのはその隣に開発ルームがあることです。一般は立ち入り禁止ですが、販売と開発がこんなに近接していることに驚きます。

3Fは試聴部屋で、ソニーの360オーディオの開発規格にも準拠してるマルチスピーカーが置かれています。これは研究開発用でASMRやゲーミングなどの方向感覚の実験なども行われているとのこと。

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このフロアには製造室もあります。

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F7200の組み立て

2Fにはオフィスと配信ルームがあり、final liveの配信スタジオがあります。

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このように基礎研究から開発、販売ストア、情報発信までが、ひとつのビルにあり得ないほど接近して設けられているのがとてもユニークでfinalらしいと思います。すべてが完結していて、凝縮されて、分野横断的にミックスされていままでにないような化学反応を起こしていきそうです。これから出てくるいままでにないような製品群にも期待が高まる思いがしました。
posted by ささき at 17:45| ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月07日

CES2022でGaNトランジスタのパワーアンプが登場

CES2022でGaN(窒化カリウム)採用のクラスDパワーアンプが展示されています。これはオーディオ向けクラスDチップメーカーのAxignと素子提供するGaN Systemsのコラボによるもので、製品と言うよりデモとかリファレンスモデルになります。この展示モデルでは250W/chx2の出力です。

https://www.embeddedcomputing.com/technology/analog-and-power/gan-based-500w-heatsinkless-audio-amplifier-from-axign-and-gan-systems

普通トランジスタには半導体としてシリコン (ケイ素) が使用されますが、これはシリコンの代わりにGaN(窒化ガリウム)を半導体としてトランジスタを作成したもので、従来の製品とは根本的に異なります。
GaNはシリコンのトランジスタよりも高効率で電力損失が少なく発熱が少なくなります。また低抵抗でスイッチング回路にもむいています。GaNはアンカーのACアダプタやソニーのSA-Z1のD.A.ハイブリッドアンプなどにも採用されていますが、今後注目の技術と言えます。
posted by ささき at 13:20| ○ ホームオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月03日

うわさのAirPods Pro2にロスレスサポートのうわさ

アップル関連アナリストのミンチークオ氏が今年AirPods Pro2が出ると言っていましたが、今朝の海外メディアはさらにクオ氏がこのAirPods Pro2がロスレスをサポートするという情報を加えたとしています。
これが事実ならばアップルがなんらかのロスレス・ワイヤレス伝送の用意をしてるということになりますね。「ハイレゾ対応」ならばいわゆる「ハイレゾ相当」でサンプルレートだけ96kHzまで拡張して非可逆圧縮で送る手はありますが、「ロスレス対応」というからにはハードルは上がることになります。
しかしアップルの場合はハード・OSを抱えているので不可能なことではないと思います。コーデックだけではなくハードを変えることができるからドングルが必要だったロスレスワイヤレスの手段を内蔵させることもできます。一方でいままでアップルの独自ワイヤレス伝送の特許はあまり見たことがないので、既存技術を使用するという気もします。

考えられる方法としては、

1. Bluetoothを拡張する

Bluetoothはいまでは規格自体は楽に1.4Mbps以上いけるから、A2DPを独自に廃して独自のドライバー(BTプロファイル)を作る手もあるでしょう。この場合はiPhone側にハードの追加は不要です。

Bluetoothでの1:1制限にしてもBluetooth基幹部ではなくプロファイルであるA2DPの制限ですから、TempowのTAPプロファイルのような前例がすでにあります。そしてそれをロスレス拡張できなくもないでしょう。

参照: Bluetoothのマルチキャストオーディオ技術、Tempow Audio Profile
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460813992.html

またすでにソニー/McSunc方式やクアルコムの新しいTrueWireless Mirroringで対応しているように同時伝送もできるでしょう。

参照: 完全ワイヤレスの「左右同時伝送」とMCSync方式の謎の解明
http://vaiopocket.seesaa.net/article/476629761.html

もうひとつの可能性としてはアップルがBluetooth SIGに働きかけてLE Audioにロスレス対応を盛り込むというのもないわけではないですが、この場合には事前に分かってしまうことになりますね。

2. WiFi等とAirPlay

WiFiは消費電力を考えると難ですが、ホットスポット機能を追加してAirPlay対応という手はあるかもしれません(Poly+Mojoでやっているような)。この場合もiPhone側にハードの追加はないでしょう。

2. Kleerなど新伝送方式を使用

ジョブズ時代にはKleer採用のうわさがちょっとありました。またカメラではジョブズ時代にLYTROとのうわさがあって消えたんですが、結局いまマルチレンズで似たようなライトフィールド的技術してるからそれが生きてないというわけでもありません。ただしこの場合はiPhone側にハードの追加が必要となります。

3. 独自2.4GHz帯通信とか赤外線

これもゲーム分野を考えると低遅延が可能なのでありえなくはありませんが、iPhone側に追加ハードが必要です。省電力通信のThreadのAirPlay拡張もなくはないですが、見込みは低いように思います。


要はやる気になればアップルはなんでもできたんですが、今までやる気にならなかったわけです。今は自らがハイレゾストリーミングのベンダーになったので、気が熟したということもあるかもしれません。
ただし今のぎゅうぎゅう詰めのiPhoneの中でチップ一個増やすのも大変でしょうからハードの追加は可能性少ないかなとも思いますが、この場合にはiPhone14を待つことになるでしょう。ただハード追加の場合には既存モデルでは対応できないし、AirPods側がiPhone専用になってしまいます(ほとんど現実そうなので問題ないと思いますが)。
いろいろ考えてみると既存技術を使うのが一番かなとは思います。

クアルコムのaptX losslessもあるし、今年はロスレス・ワイヤレスが来るとなかなか面白いかなとは思います。
posted by ささき at 09:47| __→ 完全ワイヤレスイヤフォン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月31日

2021年を振り返る

今年2021年は新型コロナの影響を受けつつも光が見え始めたような年でした。今回も2021年を振り返る記事をまとめてみたいと思います。
2020年の振り返り記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/479310611.html

今回は2021年の注目の技術とトレンドについてはまとめ記事を書いておきました。

2021年の注目技術1 MEMSスピーカー
http://vaiopocket.seesaa.net/article/484949223.html

2021年注目の技術2 音響メタマテリアル
http://vaiopocket.seesaa.net/article/484949260.html

2021年注目の技術3 音質優先配信技術 KORG Live Extreme
http://vaiopocket.seesaa.net/article/485024082.html

2021年のトレンド1  ゲーミング分野と有線イヤフオン
http://vaiopocket.seesaa.net/article/484997881.html

2021年のトレンド2  ASMRとイヤフォン
http://vaiopocket.seesaa.net/article/484998066.html


機材の話題ではやはり音質を重視した完全ワイヤレスの決定版としてfinal ZE3000が出たことです。聴くたびに良さが実感できるスタンダードで、いろんな時代のいろんな録音の曲を聴きたくなります。

finalブランドの名を冠する完全ワイヤレスイヤフォン「final ZE3000」レビュー
http://vaiopocket.seesaa.net/article/484753970.html

おなじみ須山さんのFitEarではToGo 334の後継機のTG334が10年振りに出ました。

FitEar TG334インプレ
http://vaiopocket.seesaa.net/article/481233801.html

ちなみにうちのブログ名を冠した初代ToGo 334の記事はこちらです。ToGo 334は世界初のカスタムの手法を用いたユニバーサルイヤフオンです。

須山ユニバーサル、FitEar TO GO!334登場
http://vaiopocket.seesaa.net/article/253318386.html

FitEarではイヤピースにシリコンを詰めて簡易カスタム化するインスタチップもお気に入りのアクセサリーです。
https://ascii.jp/elem/000/004/065/4065598/

今年は半導体不足やAKM工場問題があとを引いて、LINNなど独自DACがいろいろでてきた年でもありました。ポータブルではヒマラヤDACが注目です。

HIFIMANの独自DAC「ヒマラヤDAC」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/484347310.html

ハイエンドDAPでは待望のAstell&Kernの最上位機 A&ultima SP2000Tが発売されました。真空管を積むなど新機軸とともにSE200やSE180などの実験的なモデルの成果を含む集大成的なDAPでもあります。
https://ascii.jp/elem/000/004/072/4072922/

今年はApple Musicのロスレスハイレゾ化が話題となりましたが、SP2000TならOpenAppでDAPでも高音質でハイレゾストリーミングが楽しめます。

Apple Musicのハイレゾと立体オーディオ対応発表
http://vaiopocket.seesaa.net/article/481549159.html

またこうした動きに刺激されクアルコムがSnapdrgon Sound規格やaptX Losslessを発表するなどワイヤレスの高音質化に向けた取り組みが見られた年でもありました。

有線イヤフォンではハイレゾストリーミングに対応したスティック型の小型DACがたくさん出ました。W2はバランス駆動の音が素晴らしい製品です。

iPhoneに好適なコンパクトDAC、LUXURY & PRECISION W2
http://vaiopocket.seesaa.net/article/481684789.html

ユニークな製品としては初代ウォークマンのオマージュであるOriolus DPS-L2が面白かったですね。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/482533313.html

今年は昨年のWestoneに続いてゼンハイザーにも老舗ブランドの事業移管という残念なことがありました。ただこれを契機によりよい製品が出てくれることを願います。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/480191401.html

来年はひさびさにヘッドフォン祭やポタ研がリアルイベントで復帰する予定といううれしいニュースもありますので、来年はなんとか雲間に陽の光が見えてほしいものです(と昨年も書いた)。
posted by ささき at 12:00| ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年注目の技術3 音質優先配信技術 KORG Live Extreme

2021年はハイレゾストリーミングが注目された年でしだか、動画配信にも高音質化の技術が注目されました。
従来動画配信はYoutubeなどのようにあくまで画面が優先で音質は二の次だったんですが、ライブなどはやはり高音質で楽しみたいものです。そこに登場したのが音質優先をうたう動画配信技術であるKORGのLive Extremeです。

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エンコーダーが搭載されたPC

Live Extreameとはコルグの独自技術で映像コンテンツに高音質の音声トラックをつける技術・配信システムの総称で、コルグはエンコーダーを提供します。映像も音声も対応して映像は4Kまで、音声のエンコードはハイレゾPCM・DSDで可能です。コルグだから音声トラックをDSDにするということはわかりますが、Live Extremeはさらに上をいくものです。それは音声トラックが動画よりも優先というコンセプトです。

スピーカーデモ.jpg  ヘッドフォンデモ.jpg
スピーカーとヘッドフォンによるデモ

従来の動画配信では映像に合わせてオーディオクロックをビデオのクロックから作るのでジッターが大きくなる(音声を映像に合わせねばならないため、つじつま合わせに音声が揺れる)のですが、Live Extreameでは音声を主にしているため映像が揺れてフレームが落ちる可能性はあるが音声トラックに関してはビットパーフェクトが保証されるわけです。このためLive Extremeは単にハイレゾ搬送のための技術ではなく、従来のようにAACを使用しても音質は工場するはずです。またエンコードの時点で全てHLSなどの業界標準形式になるため、専用のデコーダーやソフトウエアが不要という利点があります。ここは専用のデコーダーが必要なMQAとの大きな差となります。
この他にもASIO対応することで音楽制作用の機材が使えるという利点もあります。

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ライブチケット画面

実際にオンライン音楽配信のThumvaでLive Extremeを採用したハイレゾ音質による藤田恵美コンサートのライブ動画配信を聞いてみました。音質的には素晴らしく、アコースティック楽器の弦が擦れる音も生々しく、ヴォーカルの息遣いもリアルで高音質ダウンロード音源に匹敵するようなものです。試しにYoutubeのOpus251(128kbps相当)での同じ動画で同じハード(Mac)で聴いてみるとYoutubeは甘く楽器の音が鈍い感じです。Live Extremeの方が明瞭で鮮明に聴こえます。ちなみにいうとこれはサンプリングレートの差ではありません。なぜかというとYoutubeでもCore Audioによってアップサンプリングされているからです。
他にもたくさんのオンラインライブが行われ、来年も増えていくことでしょう。
posted by ささき at 11:49| ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月30日

2021年のトレンド2  ASMRとイヤフォン

ゲーミングと並んで今年のトレンドの一つだったのはASMRがあげられると思います。
ASMRは一般には波の音や雨音などもありますが、特に日本で人気があるのはやはり男性もしくは女性が耳元で囁くような密着感のある音源です。実際この分野ではよく知られるfinal E500がブレークしたきっかけというのは池袋界隈の女子たちが多く買い求めたことだったそうだけれども、それはつまりそうした音源に向いているということがネット・口コミで広まったということのようです。そして声優さんの「エッチなイヤフォン」というパワーワードもあってE500がASMR向けイヤフォンとして知られるようになりました。

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COTSUBU for ASMRとE500

E500は開発時からバイノーラルに強い左右の音情報を持つことができるイヤフォンとして開発されたようですが、もともとは3DとかCGなどの用途だったそうです。しかし上記のように、市場反応でASMRが向いているということでその点を音響工学的に深く掘り下げて、さらに有線だと寝ながら装着ができないのでワイヤレスとしたのがagのCOTSUBU for ASMRです。ここでポイントとなるのが集中力が途切れないための"没入感"というキーワードです。これは自然な音造りで歯擦音などを含まないという意味のようです。また耳との近さが重要です。

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通常COTSUB(クリーム)とASMRバージョン

実際に自分でも通常版のCOTSUBUとCOTSUBU for ASMRを比較してASMR音源を聴いてみるとかなりの違いがあり、通常版のCOTSUBUだと客観的で少し離れたところに音を感じますが、COTSUBU for ASMRでは耳元とか首筋の至近で語り掛けられる感じになります。刺激成分を抑えているとはいいますが、COTSUBU for ASMRの方が声が鮮明でよりリアルに聴こえます。
COTSUBU for ASMRはE500とも耳の近さという点では似ていますが、E500の方がより密着感があります。またVR3000 for Gamingも"没入感"というキーワードではASMR向けイヤフオンと似たような開発方針で作られていて、ASMR音源を聴いてもやはりこうした密着感が感じられます。ただし耳との近さには差があり、近い方からE500/COTSUBU for ASMR/VR3000 for Gamingとなります。

COTSUBU for ASMRの他にもacoustuneの完全ワイヤレスのANIMA ANW01に使われる専用アプリのANIMA StudioにもASMR向けのイコライザーのプリセットがあり、ダミーヘッドやマイクの特性を考慮しながら設定したということです。ANW01はDJのTAKU INOUE氏によるサウンドチューニングなど音造りに主眼がおかけていて、ASMR用プリセットもまたその一環なのでしょう。
当初のASMR 4Cの他にも声優さん監修によりASMR LONGが設けられ、監修した小岩井ことりさんはやはり聴き疲れしない音にポイントを置いているようです。

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ANIMA ANW01

最近は空間オーディオ流行りということで、イヤフオン・ヘッドフォンにもスピーカーらしさが求められたりしますが、物理的に違うものだからそれを求めても限界はあると思います。
昔からイヤフオン・ヘッドフォンをやっていて思うのは、むしろイヤフオン・ヘッドフォンで語られるべきは耳との近さ・親密感(海外ではよくintimateと評される)ではないでしょうか。ASMR分野はそれを再確認させてくれるように思います。
posted by ささき at 10:11| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月29日

2021年のトレンド1  ゲーミング分野と有線イヤフオン

昨年から継続しているコロナ禍でトレンドとなっているものはゲーミングです。最近行われたクアルコムのイベントでもゲーム分野の注目度の高さが伺えました。
これについてはイヤフォンの分野でも「ゲーム専用」やゲーム特化型のモデルが作られるようになってきました。そしてゲーミングに使われる機材がハイエンド化していることが特徴です。

まず今年初めに平面型のヘッドフォンで知られるAUDEZEが新製品Euclidを発売しています。これは$1,299となかなか高価格のハイエンドイヤフォンです。これ自体はAUDEZEで初めての密閉型の平面磁界型イヤフォンですが、興味ふかい点はこの新型イヤフォン解説のストリーミングをtwitchで行ったということです。twitchはゲームの実況中継を行うサイトです。HeadFiなどのオーディオサイトではなくtwitchで行ったというのは注目点です。
またAUDEZEは昨年7月にワイヤレスヘッドフォンのPenroseを発売してゲーミング分野への興味を示していましたが、この時代に有線イヤフォンを開発するということは低遅延を重視するゲーミング市場も重要に捉えているのでしょう。Penroseは2.4GHzのワイヤレスドングルが付属していて一般的なBluetoothを超える低遅延を実現しています。

今年中盤には映画館でおなじみのTHXから初のコンシューマー向け製品としてドングル型のポータブルUSB DAC Onyxが発売されています。価格はUSD$200くらいでTHX-AAAを採用した本格的な製品です。
ポータブルUSB DACを出したTHXの製品戦略を考えてみると、海外で販売されているのがゲーミングデバイスのRazerのサイトだということがキーになるように思えます。有線ヘッドフォン向けデバイスであるからゲームで重要な遅延も問題になりません。またTHXは「THX Spatial Audio」という今流行りでもある空間オーディオの技術を持っています。つまりRazerが発売しているRazer BlackShark V2のようなTHX Spatial Audioに対応したゲーミングヘッドフォンと組み合わせて、対戦ゲームで求められる高精度の立体音響と高品質でリアルな音質の実現を提供するデバイスとしてOnyxが用意されたのではないかと考えることができます。

Razerのサイト
https://www.razer.com/mobile-accessories/thx-onyx/RC21-01630100-R3M1

オーディオ製品のゲームへの歩み寄りとともに、ゲーム製品のオーディオへの歩み寄りもまたあります。
今年9月にはASUSのRepublic of Gamers (ROG)イベントにおいてゲーミングヘッドセットDelta Sが発表されています。ASUSはすでにゲーミングヘッドセットを出していますが、Delta Sで注目すべきは高音質仕様になっているということです。DAC IC(正しくはオーディオCODEC)にES9281を採用し、MQAをサポート(MQAレンダラー)した初めてのヘッドホンです。
ただしMQAレンダラーはソフトウエアでコードが必要なためにゲームアプリでは対応できないでしょう。ASUSは、MQA対応をメインの特徴とするためにES9281を採用したのではなく、従来モデルのROG DeltaでES9218を採用していたのでその延長上とも考えられますが、やはりES9821の130dBもの高音質がゲーミング分野に重要と読んだのかもしれません。

ゲーミングに好適というゲーム仕様のイヤフォンもまた発売されています。今年の6月には有線イヤフォンのAZLA AZEL Edition Gが発売されています。これはAZELのゲーミング向けバージョンで、AZELをベースにして韓国一の人気プロゲーマー監修により再設計を施したバージョンです。銃声音や足音など細かい音を一つ逃さず、敵の位置を把握しやすいサウンドバランスを実現した点が特徴で、特にFPSゲームに最適化しています。
AZLAによると、オリジナルのAZELも本国ではゲーミング用として1万台以上販売されるほどのニーズがあったということです。 Edition Gでは特に左右バランスの完璧さ(音のピンポイントの定位、音の来る方向)が最大のポイントだということです。このために高度なハイエンドイヤフォン並みのチャンネルマッチングをeditionGでは実施しています。

IMG_5156.JPG  廃棄品.JPG  
AZEL EditionGとチャンネルマッチングのために廃棄されたパーツ
IMG_5157.JPG
特性図は左右がきれいに合致している(赤青の色が重なっている)ことに注目

国内ではfinalが有線イヤフォンのVR3000 for Gamingを発売しています。
finalで重要としたポイントはプレーヤーの没入感を高めるという点だといいます。これは具体的にいうと刺激成分が少なく集中力が途切れないということです。方向感覚も大事ながらも、やはりゲーミングでも集中力を生むことのできる没入感が大事であるとfinalでは考えているということです。

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final VR3000 for Gaming

イヤフォンはワイヤレスに移行しつつありますが、ゲーミング分野では低遅延の必要からまだ有線イヤフォンが重宝されているという点も見逃せません。つまりシェアを奪われつつある有線イヤフォンが生き残る道の一つであり、高度化するゲーミングがより優れた方向性で銃撃の方向がわかることや、優れた解像力でかすかな足音がわかるようなハイエンドの特性を欲しているということでもあります。プロのeスポーツプレーヤーの反射神経はオリンピックの運動選手並みということをクアルコムのイベントでゲーマーが話してたのが印象的です。

一方でワイヤレスで有線に匹敵するような低遅延化については、今年オーディオテクニカが音楽練習用で発売した赤外線ワイヤレスEP1000IRがひとつの面白い手段ではあります(処理が単純なために遅延が少ないとのこと)、ただしドングルが必要なためゲーミングに広まるかはわかりません。

ピアノアプリとep1000ir.jpg
オーディオテクニカ EP1000IRとiPadのピアノアプリ
posted by ささき at 10:13| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月28日

2021年注目の技術2 音響メタマテリアル

これは今年というよりもオーディオ界隈では昨年くらいからの流れになります。メタというのはメタムービーが劇中劇を指すように視点の次元から一つ上の次元というような意味で「高次」とか「超越」という意味で使われます。メタマテリアル(Metamaterial)とは直訳すると「超越素材・高次素材」のような意味で、自然界にはない人造的な素材という意味です。
もともとメタマテリアルは光学分野が始まりで、自然界にはないような光の屈折をする素材の研究から生まれたものです。それがホテルの空調ノイズの低減などに利用されて、音響分野でも音響メタマテリアルとして発展してきました。
下記はKEFと協力したと言われているAMG(Acoustic Metamaterials Group)のホームページです。
https://acousticmetamaterials.org
上記ページの"CUSTOMIZATION PROCESS"という欄を見ると効果説明図がありますので、この図を描きのKEFのページにあるMATの動作動画のグラフと比較するとメタマテリアルの効果が分かりやすいと思います。
メタマテリアル技術はすべての周波数帯域に一様に適用されるものではなく、ノイズにはピークやデッィプなどの凹凸があるのでそれに応じた形状を計算的に求めてその凹凸を打ち消すという考え方です。その形状は複雑な計算により求められるので自然界にはないような迷路のような形状となります。

実際の応用例としてはまず、昨年KEFがMAT(Metamaterial Absorption Technology)という技術を発表し、KEF LS50 Metaという新型スピーカーのドライバーに音響メタマテリアルを適用しています。"Metamaterial Absorption Technology"とはメタマテリアルによるノイズ吸収技術という意味です。これはドライバー背面から生じるノイズの提言に使われています。
下記のKEFのページのMATの動作動画のグラフに注目してください。
https://jp.kef.com/pages/metamaterial

KEF_LS50_Meta.png  手に持っているのがKEFのMAT.png  KEFのMATがノイズ吸収する様子.png
手に持っているのがMAT

続いて今年Dan Clark Audio(旧称MrSpeakers)から新ヘッドフォンStealthのが発売されました。
https://danclarkaudio.com/dcastealth.html
Stealthは平面磁界型の形式でありながら、珍しいことに密閉型です。密閉型は定在波などを低減しにくいために高音質化は難しいとされていましたが、それを解決するためにStealthで導入されたのが音響メタマテリアルであるAMTS(Acoustic Metamaterial Tuning System)です。AMTSは複雑な多孔の整形物による音響フィルターでエアフローの通り道に置かれます。
StealthではこのAMTSを使用することにより密閉型で主に発生するノイズを3Khzから超高域まで低減するとしています。

Stealth本体.PNG  手に持っているのがAMST_人物はDanClark.PNG  AMST.PNG
手に持っているのが AMST

音響メタマテリアルのオーディオ機器への適用はまだ限定的ですが、そのうちに小型化されていけばという期待感もあります。これも来年どう動くか注目したい技術です。
posted by ささき at 13:17| ○ ホームオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月27日

2021年の注目技術1 MEMSスピーカー

今年注目の技術をまとめていきます。まず一つ目はMEMSスピーカーです。この分野で知られているのはUSound社とXMEMS社です。
MEMSスピーカーとは簡単に言うと「シリコンドライバー」とも言えます。つまり従来のダイナミック型ドライバーやBAドライバーのように使用することができ、イヤフオンにも使うことができます。現在ではFaunaなどオーディオグラスにダイナミックドライバー(ウーファー)とハイブリッド構成で使われたりしていますが、2022年にはXMEMSのドライバーによる完全ワイヤレスイヤフオン「IAC Chiline TR-X」がアナウンスされており、USoundも多額の資金調達に成功して市場参入を伺っています。

MontraMEMSスピーカー_xMEMSホームページから.PNG
Montra MEMSスピーカー(XMEMS社)

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とは、機能の集合体がワンチップに集積されたもののことです。SoCが機能別のICがワンチップに集積されたパッケージであるのに似ていますが、MEMSがSoCと異なる点はICなどデジタル部だけではなく機械的な稼動部を持つ点です。つまりメカトロニクス分野の産物です。メカ部分はアクチュエーターなどの機能も可能なので、シリコンチップですが空気を振動させるスピーカーも作れます。ドライバーの種類としては圧電型ドライバーとなります。
音質はFaunaを聞いた限りでは思っていたよりも良く、iPhoneの内蔵スピーカーのような無機的な音ではなくもっと滑らかで、包まれるような音場再現があります。

MEMSスピーカーの利点はまとめると以下のようなものですが、いずれも完全ワイヤレスには適しています。

1. 超小型

なんといってもICのようなシリコンチップにドライバーが統合されているため、従来型ドライバーと比べた場合には比較にならないほど薄型・小型化できます。

MEMS比較_USoundホームページから.JPG

2 超低電力

電力消費が低いのもMEMSのシリコン一体型ならではの特徴です。これは再生時間を伸ばすのに有効でしょう。

3 防水適性がある

チップはそれ自体がIP58くらいの防水でもあるために防水の必要性がある完全ワイヤレスイヤフォンにも好適です。

4 位相特性に優れる

ドライバーを組み立てるよりもシリコンから作るほうが製造公差を劇的に減少できるでしよう。ハイエンドイヤフォンでは位相特性を揃えるために両耳ユニットごとのインピーダンスマッチを取りますが、その必要性が低くなるかもしれません。この点ではおそらくは立体感の向上として現れるので、空間オーディオ流行りの今日では好適です。

5. 超高音域特性に優れる

USoundの解説によると、
https://www.usound.com/usounds-mems-speakers-extreme-bandwidth-technology/
GanymedeというタイプのUSound社のMEMSスピーカーは20kHzを超える超高域特性に優れているということです。これはMEMSスピーカーの駆動部が極めて正確に動作が可能であり、普通のドライバーと違いコイルなどがないので駆動部が極めて軽量だから特に超高域での歪みを減らすことができるからということ。
超高域での歪みが極めて少ないために、普通のドライバーよりもより高いSPLを超高域で発揮できるそうです。


このように今流行りの完全ワイヤレスに向いた特性が並びますが、位相特性が揃っていることからマルチアレイのように複数個使用する例もあるとのこと。つまりヘッドフォンのハウジングにぎっしりと複数個のMEMSスピーカーを並べるてスピーカーアレイのようにすることで、空間オーディオやVRなどに向いたものを作ることもできるでしょう。

Bamboo Installation

また最近では隈研吾氏とOPPOのコラボで制作した現代アート的なBambooインスタレーションにもMEMSスピーカーが採用されています。これは竹の共鳴で音を大きくしているようで、この動画を見るとMEMSスピーカーの音色がわかると思います。
posted by ささき at 16:42| ○ ホームオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月22日

コスパの高い静電型セットHifiman JADE II

Hifiman Jade IIは静電型ヘッドフォンとアンプのセット製品です。HIFIMANは平面磁界型のヘッドフォンの他に静電型ヘッドフォンでも海外では先駆的に取り組んできたメーカーです。静電型ヘッドフォンはバイアス電圧をかける必要があるのでSTAXで言うドライバーのような専用のアンプを必要とします。つまりJADEIIはそれがセットになっている製品です。

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静電型ヘッドフォンは振動板がとても薄く、平面型(全面駆動)方式ですが平面磁界型のようにコイルがないためとても軽量にできます。そのため可能となった独特の高精細な音の世界はオーディオファンを魅了してきましたが高価な製品が多く、しかも専用アンプまで必要なのでなかなか手を出しにくい分野ではありました。JadeIIはShangri-LaなどHIFIMANの静電型機で培った静電型の知見を活かしながら、セットで¥187000と20万円を切るようなかなり低価格に抑えた製品です。

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JadeIIは開放型のヘッドフォンで、高域は90kHzまで達するワイドレンジ設計が為されています。技術的にはShangri-La Jrを基にしていて、独特の青みを秘めたナノテクノロジードライバーや音を濁さない超薄型のダストカバーなどを引き継いでいます。ヘッドフォン自体は365gと軽量に設計されています。

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JadeIIの付属アンプはSTAX Pro端子なので、他の STAX Pro端子のヘッドフォンと互換性があるでしょう。また実際に試してはいませんが、ヘッドフォンも他のSTAX Pro端子の静電型アンプに使用できると思います。

インプレッション

静電型アンプはシンプルなミニマルデザインですが価格に似合わないくらいの堂々としたかなり本格的な作りのアンプで、操作はボリュームと入力切替のみのシンプルな構成です。
ヘッドフォンは軽く長時間聴いていても疲れは少ないと思います。側面が緑色に光るのも面白い点です。
ケーブルは平たいタイプで取り回しは悪くないですね。

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アンプ背面

音は静電型らしくとても細かく音のエッジの立ち上がりが早く感じられます。ヴァイオリンやウッドベースの弦の鳴りの豊かさが気持ち良く、これは静電型ならではの愉悦だと思いますね。ウッドベースはピチカートのキレが良くシャープだがきつさがないのも良い点です。
帯域バランスの良さは平面型ならではの良さで、誇張されている帯域はありません。どんな曲でも低域が膨らんだり、いやな音を出すピークは感じられません。高域のベルの音は美しく響き歪み感の少なさを感じさせる。
音の歯切れが良くスピード感があるのでハイテンポのジャズトリオなどもスピード感のあるライブが堪能できます。

ヘルゲリエントリオのTake Fiveではドラムスの打撃感と音の歯切れの良さ、ハイハットの音のシャープさに感嘆します。楽器音もかなり正確で再現度が高いと思います。また音と音の間にプレーヤーが、よくライブで出すようなかすれ声を入れているのがはっきりと聴こえています。楽器音の情報量の多さとともにかなり生々しいサウンドを感じさせますね。音空間も広くMCのヴォーカルと観客との距離感がよく感じられる。
Dhafer YoussefのBirds Requiemではファルセットの伸びが静電型らしく素晴らしく、民族楽器と絡んで行く様がよく表現されています。上原ひろみのAliveではロックのようにパワフルなジャズピアノがよく再現されて彼女らしい白熱したプレイを感じさせる。SHANTIも録音にこだわるアーティストですが、Memoriseではこう歌いたいという唇の動きがよく伝わってくるのがわかります。

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ダイナミックレンジの広いアルヴォ・ペルトのIn Principioを聴くと、迫力ある音圧のオーケストラのサウンドに圧倒されてしまう。家にいながらこれだけの音が楽しめるならばなにをかいわんやです。
Amazon Music unlimitedでハイレゾを聞いてみましたが、音は素晴らしくハイレゾサウンドをストリーミングで聞くのも良いものです。アニソンを聴くと普通のダイナミックヘッドフォンよりもヴォーカルと演奏が団子にならずに分離できるので、それぞれ聞き取りやすい点も優れていると思う。ダイナミックヘッドフォンと高性能アンプだと、アニソンとかポップなどはごちゃごちゃとして少しうるさい感じの音になるが、JadeIIでは音が整理されて聞こえるのも良い点だと思います。
日頃スピーカーで聴いている人が夜に聞くのにも向いていると思います。もちろん言うまでもなくDACが良いほど能力を発揮できる製品です。

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実際にShanglila JRと聞き比べてみましたが、少しダイナミックレンジがShanglilaのほうが広く余裕のある音再現ではありますが、全体的に少し譲る程度でそう大きく聞き劣りはしないのでかなりコスパは良いと言えるでしょう。国産の静電型ヘッドフォンと比べても遜色ないレベルだと思います。
価格がアンプとヘッドフォンのセットで18万円ということなので、かなりコスパが高いと言えます。音的にはセットで数十万くらいでもおかしくない感じです。平面磁界型で20万の予算でこの音クラスの良いアンプと良いヘッドフォンを揃えるのは無理なのではないでしょうか。
なおHIFIMANでは来年1/3から1/8くらいまでAmazonで最大15%オフのタイムセールを予定しているそうです。興味ある方はチェックしてください。
posted by ささき at 11:33| __→ HifiMan HE5, HE6 平面ドライバ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする