Music TO GO!

2024年12月07日

MQAのQRONO d2a技術とは何か、技術白書からの考察

先日発表されたMQA Labsの新技術、QRONOラインナップのひとつである「QRONO d2a」技術とは"d2a(Digital to Analog)"という名称から、DA変換に関する技術であることは容易に想像がつきます。またQRONOは時間を意味するChronoのアナグラムであり、時間に関する技術とも推測できます。
端的にいうとQRONO d2aとは、DACにカスタマイズしたデジタルフィルターです。それでは従来のものとはどのように違うのかというところをMQA Labsの発行した技術白書から考察します。

まず技術白書のサブタイトルが「アナログの魂を持つデジタルオーディオ」というところからも「QRONO d2a」の目指すところが推し量れると思います。
前書きではアナログオーディオからデジタルオーディオに移行して、数値的には性能が改善されたが、音は生き生きとしたものではなかった。それを聴覚的に探っていくところから始まったとあります。

まず従来のデジタルフィルターはデジタル変換に起因する問題(エイリアシング)を避けて、測定的な数値を向上するのが目的であり、そのことが副作用としての時間的なスミア(にじみ)を生じていたとしています。これは「ブリックウォール(レンガ壁)」設計ともいうべきもので、特定の周波数を壁のように急峻に切り立たせています。
なぜブリックウォールにすると時間的な滲みが出るかというと、車が道路の段差を通過する際、段差を超えた後も車が長時間揺れ続けるようなものです。この揺れが音のスミアに相当します。スミアとは絵の線がぼやけてしまうようなもので、この揺れはデジタルのアーティファクト(副作用)でよく出てくるポスト・リンギングでもあります。ポスト・リンギングは実際の音の後に聞こえないはずの音が生じることです。実際の音の前に音が聞こえるプリ・リンギングは車の例えでは表せませんが、それはつまり自然界にない不自然なものだということです。それゆえプリ・リンギングの方がより悪質です。

「QRONO d2a」はこうした当たり前と思われていたデジタルっぽさにメスを入れたものです。つまりプリリンギングは生じないようにし、スミア、ポストリンギングも最小に抑えるということです。
従来のフィルターは周波数に関係なく一様に適用されていましたが、これは88kHzなど高解像度の音楽信号に対してフィルターが過剰に働きすぎて(不要な処理を行い)、音質に悪影響を与えることがあるいうことです。それに対してQRONO d2aのフィルターは、88kHz以上についてサンプリング周波数に合わせて最適化されて設計されています。
次にノイズシェーピングを用いて信号の低レベルの部分を可聴帯域外に移動し、その部分をノイズマスキングします。低レベルの信号がマスクされるということは、データのビット数の下位ビット(24ビット目など)があまり重要ではなくなるということです。低レベルの信号部分はDACの精度が低いので、これはDAC自体のみかけの性能を向上させるのに役立ちます。つまりDAC性能のもっとも美味しい部分を取り出しやすくなり、それゆえにQRONO d2aのフィルターはDACハードに応じてカスタマイズされた設計になっています。
つまりQRONO d2aとは、入力周波数ごとにそのDACの最も美味しいところを取り出すことのできるデジタルフィルターということができます。

fig5 48kHz.png fig7 192kHz.png
48kHz(左)と192kHzにおける従来フィルター(赤)とQRONO d2a(緑)の違い
(MQA Labs WHITE PAPERより)


それでは実際にどのような効果があるかというと、上の技術白書のデータに表れています。
どちらも赤線が従来のDACの内蔵フィルターで、緑線がQRONO d2aフィルターです。QRONO d2aは48kHzでは従来のフィルターに対して1/2の時間で鳴り止んでいます。そして192kHzでは1/20もの短さで鳴り止んでいます。つまりQRONO d2aはハイレゾ領域でより有効に機能するということができます。
MQA labsではQRONO d2aによるCDレベルの再生は、従来の96kHzハイレゾファイルの時間応答に相当し、QRONO d2aで再生した192kHzハイレゾファイルは、最高のアナログ・システムの時間性能を超えるとさえ語っています。
聴覚上の効果としては、以前は不明瞭だったテクスチャーが明らかになり、ミクロレベルのダイナミクスが改善され、楽器の輪郭がはっきりし、ステレオの音場とイメージが向上するとしています。それによって音楽は自然に再生され、臨場感が増し、リスナーの疲労を軽減するということです。

まとめると、QRONO d2aとは数値的に優れたデータそのままの音再現よりも、音楽を聴いたときの音の良さを最大限に引き出すための技術ということができると思います。
またQRONO d2aが下位ビットを使わないで高音質を志向すると言うことは、MQAが下位ビットにデータを埋め込む技術であることを考えると、MQAの互換性を保ちながらも、その制約を克服してさらに高音質を目指した進化系の技術と言うことが考察できると思います。
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2024年12月06日

MQA LabsがQRONOを市場投入、Bluesoundの新製品に搭載

またMQAに動きがありました。

まずここまでの流れを整理すると、2023年の9月にMQAはカナダのLenbrookグループに買収されます。レンブルックグループは傘下にBluesoundやNAD、PSB Speakersなどのオーディオブランドを擁しています。
アスキー記事: カナダのLendbrookがMQAを買収

その後に今年のCES2024直前の1月、再スタートすることをリリースで宣言しています。
アスキー記事: MQAのその後、衝撃の経営破綻から買収、再スタートへ
このリリースでは"監督"するに"oversee "というニュアンスを使ったことから、MQAの独立性に考慮してMQAには組織としての独立性には介入しないが戦略に関しては口を出すというようなスタンスでいると考えられます。MQAの業界スタンダードのポジションを考慮したと考えられます。

そして今年(2024年)の6月にはMQAの中核技術が「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」という3つの技術であることをリリースで表明しています。
アスキー記事: MQAに新動向、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは?
「AIRIA」はワイヤレスを考慮したMQAの延長線であるSCL6のリブランドであると考えられます。ただし残りの「FOQUS」と「QRONO」についてはあまり情報はなく、「FOQUS」はアナログ/デジタル変換における革新的なアプローチ、「QRONO」は再生機器内で様々なオーディオ処理を強化するものであるとだけアナウンスがありました。
ただし名称から推測すると、FOQUSは焦点が定まったという意味のFocus、QRONOは時間を意味するChronoに由来する造語と考えられます。つまりFOQUSはなんらかの解像度を上げる処理、QRONOはMQAのフィルタリングがそうであるような時間領域に関する処理であると推測できます。

そして12月5日、MQA Labは「QRONO」についての詳細を発表しました。
MQAニュースリリース: QRONO by MQA Labs Hits the Market (MQA LabsがQRONOを市場投入)

それによると「QRONO」ラインナップの中の「QRONO d2a」と「QRONO dsd」という二つの技術を発表しています。これらは(レンブルック傘下である)Bluesoundの新しいストリーマー(ネットワークプレーヤー)である「NODE ICON」に搭載されます。
端的にいうと、QRONO d2aはDACのフィルターと交換できる(DACハードに応じた)カスタムのデジタルフィルター、QRONO DSDは軽量なDSD/PCMコンバーターです。

MQA Labsのエンジニアリング・ディレクターであるAl Wood氏は次のように語っています。
「QRONO はハードウェアパートナーおよびライセンシーにソリューションを提供するプラットフォームです。我々は基本的な信号処理技術の緻密な適用に重点を置いています。これらには各DACチップから最高の性能を引き出すため、デジタル・アナログ変換の全体的なインパルス・レスポンスと透明性を向上させるフィルターやノイズ・シェイパーが含まれます。DSD変換は可能な限り軽く処理され、録音における重要な時間要素の細部までをすべて保持します。そしてBluesoundのNODE ICONにQRONOを統合した音質に満足しています」

MQA Labsのビジネス開発ディレクターであるAndy Dowell氏は次のように付け加えています。
「人間の聴覚は特に細かいディテールを聴くときにこれまで理解されていたよりもはるかに正確です。MQA Labsチームの専門知識をオーディオ再生の改善に応用することで、技術がユーザーの体験を向上させ続けるHiFi業界の繁栄というレンブルックのビジョンをさらに推し進めることができます」
このコメントはMQAのボブスチュアートがたびたび語っていたMQAの時間的処理の重要性と同じです。

BluesoundのNODE ICONはEversolo DMP-A8やA6に似た大きな液晶画面を搭載したネットワークプレーヤーです。ES9039Q2M DACをデュアル搭載し、ヘッドフォンアンプにTHX AAAを採用しています。
現在はプリオーダーとなっていますが、価格はUSD1399とあります。Bluesoundとしては新しいフラッグシップとなります。現行のNODEモデルはDSD対応がないようですが、その対応として今回の「QRONO dsd」の搭載に至ると考えられます。
https://www.bluesound.com/zz/node-icon?srsltid=AfmBOoqW2xl14dqoSZPZ7Hp8zz-u4mdLpBDgWACvBG4Kt07dBgETXMBe

MQA LabsではQRONO技術は、(デジタルでありながら)最高のアナログ・システムをさえ超える時間的性能を可能にするとしています。MQA LabsはCES、NAMMおよびISEに出展するとのことです。
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2024年12月05日

nwmブランドの新世代新製品「nwm DOTS」、「nwm WIRED」レビュー


nwm(ヌーム)はNTTソノリティが販売するブランドで、オープンイヤー型ながら周囲に音漏れがしない技術「PSZ」を特徴としています。端的に説明すると「PSZ」は背圧を逆相の音として放射して周囲の漏れを打ち消すという仕組みです。
そのnwmブランドの新製品が先日発売されました。オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォン「nwm DOTS(ヌーム・ドッツ)」(市場価格24,200円)と安価な有線イヤフォン「nwm WIRED(ヌーム・ワイヤード」(市場価格4,950円)です。NTTソノリティでは耳スピーカーと呼んでいます。

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nwm DOTS(左)、nwm WIRED

研究所のスピンオフ製品を思わせるように以前のnwm製品はいささか実験機的な性格がありました。以前のnwm製品についてはアスキーに書いた記事を参照ください。
音もれを打ち消す、ながら聴きイヤホンの新提案、NTTソノリティ「nwm MBE001」

それと比較すると、今回の製品は「nwm DOTS」、「nwm WIRED」共に同級の他社製品と比較してもイヤフォン製品として十分に完成度が高い本格的な製品群になっているのが特徴です。
デモ機を貸し出してもらったので、本稿ではインプレッションを中心に書いていきます。

* 「nwm DOTS」

オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォン「nwm DOTS」はPSZ技術の他にもデザインとカラーリングの点でとても個性的なイヤフォンです。円を基調とした個性的なデザインは"DOTS"の名前とともに点と点が繋がるという意味合いを込めているということです。「nwm DOTS」は通話性能も高く、NTTのもう一つのコア技術である「Magic Focus Voice」を搭載して通話品質を向上させています。
ドライバーの口径は旧モデルと同様に12mmですが、新規開発により以前のモデルよりも音質・音圧を向上させている点がポイントです。特に一般に低音として知覚する100Hz付近のレスポンスを上げたということです。
またPSZの音漏れ低減効果も従来より改善されています。DSPを使って逆相音を出すイヤフォンとは違い、PSZは音響のみで逆相音を実現しているのがポイントですが、その分でPSZの性能向上は単にDSPの性能を上げれば済むというものでもありません。このことを開発元に聞いたところ次のコメントをいただきました。
「音響シミュレーションをデザイン時点から活用し、新規開発ドライバの実力を十分に引き出せるよう音響構造や逆相放射用の穴形状、位置などを工夫・改善しています。実際、nwm DOTSの逆相用の穴はデザインに合わせてかなり複雑な配置・形状になっています。nwm WIREDの逆相穴に関してもデザインに馴染むよう、旧モデル(nwm MWE001)よりもすっきりした印象になっていると思います」
確かに逆相穴は筐体の周囲に開いているのですが、違和感のあるものではありません。

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実機を見ると以前のものよりも普通のイヤフォンという感じです。むしろ円のデザインが印象的で、市販のカジュアルなイヤフォンという印象を受け、PSZのような特徴的な技術が隠されているようには見えません。充電機能付きのケースも前よりもコンパクトになっていて実用的です。
本体はとても軽量で装着感はほとんどありません。極めて快適でオープンイヤータイプの中でも装着感はかなり良いと思います。この装着性の秘密として、「nwm DOTS」ではイヤーフックが特徴的で、普通のイヤーピース(テールチップ)をはめ込んでクッション代わりにし、さらに大きさも調整できるという特徴を備えています。このイヤーピースを使ったクッションがとても良くできているわけです。
また「nwm DOTS」を使い始める時にまず悩むのはこのイヤーピースの大きさの選択と、前後の位置です。大きい方がクッション効果が高いと思うけれども、まず耳のサイズに合わせて選ぶのが基本だと思います。またクッションの大きさで耳への距離が多少変わるので音も少し変わります。小さい方がより音の広がりがよく感じられ、大きい方が普通のイヤフォンに近く密度感があるように感じられます。
またイヤフックの前後でのイヤピースの装着位置も変更できます。個人的にはイヤフックは耳たぶがしっかり円弧に収まるように装着した方が良く、イヤーピースは少し後ろ側に装着した方が良いと感じましたが、耳の形は千差万別なのでここは試行錯誤しながらベストポジションを決めていくのも楽しみの一つでしょう。

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音質についてもかなり優れています。同クラスの他のオープンイヤー型と比べても遜色ありません。独特の開放的な音の広がりが良く、クリアで解像力も高く感じられます。低音はオープンイヤー型らしく軽めですが、パンチがあり引き締まっています。中高音域は普通のイヤフォンと遜色ないくらいの高い音質があると思います。特にピアノの音色が美しく感じられます。弦楽器を聴いても音色が気持ち良く、基本的な音の解像感とか歪みの少なさなど音性能は高いと思う。ベルの音が美しく響くのは歪み感が少ないからでしょう。音色はニュートラルでヴォーカルもクリアでよく歌詞が明瞭に聴き取れます。ロックでも重低音中心でなければスピード感があり、パワフルな感じは十分に楽しめます。
また従来のイヤフォンに比べると、周りの音がそのまま入ってくると同時に、いままでにないような空間が開けていて開放的な音空間が楽しめます。まるで音楽が周囲に溶け込んでいるような感覚にも陥る。中高音域は音質もしっかりしているので、不思議なリアル感が味わえます。
それと高音域にきつい刺激的な音が少ないのも特徴です。これは耳を塞がないことによるもののように思います。

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独特の音の開放感とヴォーカルの聴き取りやすさと楽器音の美しさはこのイヤフォンの長所です。例えばエリックサティの音楽を聴きながら原稿を作成するなどの用途にはうってつけです。
最近発売されたIsabelle Lewis「Greetings」では個性的なヴォーカルと軽いビート感、深みのある落ち着いた曲調が心地よさを感じさせ、ファミレスで聴いていてもどこか別空間に誘われるような感覚を受けます。
作業に向いているApple Musicの「チル・ミックス」をしばらく聴いていたが、あまり低音が足りなくて不満になるケースはなかったですね。録音の優れた曲も多いのですが、音質もミドルクラスのワイヤレスイヤフォンとしては十分に満足できます。ただし曲にウッドベースが入るようなジャズヴォーカルでは少し物足りなさはあります。
アニソンではやはり重低音はありませんが、女性ヴォーカルがとてもクリアで声が聴き取りやすいので、イヤフォンで中高域を重視して選ぶ人には向いていると思う。

音漏れはファミレスであれば多少音量をあげていても隣のテーブルで聴こえることはまずないと思います。数十センチ離れるとかなり聞こえにくいので隣の席でもかなり聴き取りにくい程度にはなるでしょう。

また細かい点ですが、操作性が良くタッチの感度が良いのも特徴的です。ただし普通の完全ワイヤレスとはフェイスプレートの位置が違うので多少の慣れが必要です。

* 「nwm WIRED」

オープンイヤー型の有線イヤフォン「nwm WIRED」は価格が安く試しやすい点がポイントで、PSZイヤフォンのエントリーモデルとして捉えることができます。
有線なので低遅延が重要なゲームで使いたいというときにも使えるでしょう。またPCの3.5mm端子にも使えるので汎用性は高いのも特徴です。後で書きますが、エントリーモデルにしては音質が高いのも特徴といえます。

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Macbook Air(M2)の3.5mm端子で聴いてみました。装着感は良く、周りの音はやはり全て聞こえてきます。
低価格モデルという先入観から音は期待できないと初め思いましたが、予想外に音がよいと感じました。安価な製品にありがちな音の雑味が少なく、中高域中心ならオーディオが好きな人でも気持ちよく聴くことができます。
こちらも原稿執筆中にApple Musicの「チル・ミックス」を聴きながら試してみましたが、滑らかで広がりが感じられる音質で、自然な音場感が感じられます。また弦が擦れるような音までわかる十分高い解像力を持っています。高音域の音がとてもクリアで、ベルの音が心地よく響く。サックスなど楽器音はリアルに聴こえます。ピアノの音色がとても美しく感じられる。
音質に関しては先に書いた「nwm DOTS」との共通点が多いと思います。

オープンイヤー型とはどういうものか、PSZとはどういうものか興味を持っているが高価だと試しにくいと思っているユーザーが試してみるのにもよいでしょう。

* まとめ

nwmブランドのイヤフォンはヘッドフォン祭で初めて披露された時からチェックしていますが、今回の新製品は「nwm ONE」も含めてnwmブランドの第二世代という感じがします。
また発売は先になりますが、「nwm GO」というアウトドアの釣りとかジョギングに向いたモデルが用意されています。もともとビジネス用だったnwmブランドの適用範囲がさらに拡大して行くようです。先日NTT武蔵野研究所の見学をした際にも「nwm」製品が単に音楽を聴くだけではなく、インフラの一部としても機能するということがわかりました。様々な今後の展開にも要注目です。






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もう一つのMEMSスピーカーのメーカー「USound」の記事をPhilewebに執筆

もう一つのMEMSスピーカーのメーカー「USound」の記事をPhilewebに執筆しました。
MEMSスピーカーに興味のある方はご覧ください。

https://www.phileweb.com/sp/review/column/202412/05/2485.html
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FIIOのヘッドホンアンプ「K11」の通常版とR2R版の違いの記事をPhilewebに執筆

FIIOのヘッドホンアンプ「K11」の通常版とR2R版の違いの記事をPhilewebに執筆しました。

https://www.phileweb.com/review/article/202412/03/5784.html
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Shanling「EC Smart」の記事をPhilewebに執筆

Shanlingのスマートなデザインでかつ音も良いCDプレーヤー「EC Smart」の記事をPhilewebで執筆しました、

https://www.phileweb.com/review/article/202411/11/5783.html
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2024年11月21日

xMEMSがスピーカーにも応用できるニアフィールドタイプのMEMSスピーカーを発表

いままでMEMSスピーカー(MEMSドライバー)は主にイヤフォンに応用されてきましたが、11月19日にxMEMS社は小型スピーカーにも応用できるMEMSスピーカー「Sycamore」(シカモア)を発表しました。
用途としては、いわゆる「ながら聴きの完全オープンイヤフォン」であるオープンワイヤレスステレオ(OWS)イヤホン、スマートウォッチ、スマートグラス、AR/VRヘッドセット、そしてPCスピーカーやスマートフォンスピーカーが考えられます。さらにカーオーディオやポータブルBTスピーカーも応用が考えられているようですが、この場合はツィーター用途になるようです。xMEMSではニアフィールドタイプのMEMSスピーカーと呼んでいます。

「Sycamore」のサイズはわずか8.41 x 9 x 1.13 mmで、重さはわずか150ミリグラムです。これは従来のダイナミックドライバー・パッケージのサイズの1/7、暑さは1/3です。またIP58規格の防水性能があります。
この技術は超音波変調を用いたxMEMS「Cypress」と、ICの空冷ファンであるxMEMS「XMC-2400」の技術を応用したもののようです。これにより超低域では従来のダイナミックドライバーを超え、中音域では同程度、高音域はより高性能というパフォーマンスを得られるようです。

xMEMS「Cypress」については下記のPhileweb記事をご覧下さい。
https://www.phileweb.com/review/article/202403/13/5517.html
xMEMS「XMC-2400」については下記の当ブログ記事をご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504455112.html

xMEMSでは「Sycamore」について次のように語っています。
「スマートフォンでは、Sycamoreはよりクリアな通話とプライバシーのため、車の中ではSycamoreのサイズ、重量、性能により、ヘッドレスト、天井部分、ピラーに搭載できるマイクロサイズのツイーターになります。そしてもちろん、Sycamoreのオーディオパフォーマンスは、スマートウォッチやメガネに最適なサウンド体験を提供するだけでなく、そのサイズにより、デザイナーはより洗練されたファッショナブルな製品を製作できます」

xMEMSは2025年第1四半期にSycamoreをサンプリングし、2025年10月から量産を開始するとのことです。おそらくはCES2025になんらかの展示があるでしょう。
ちなみにsycomore(シカモア)とは西洋カエデのことで過酷な環境で生育できるので、海外ではよく街路樹として使われているそうです。


参考リンク: xMEMSリリース
https://xmems.com/press-release/xmems-introduces-sycamore-the-worlds-first-1-mm-thin-near-field-full-range-mems-micro-speaker-for-smart-watches-xr-glasses-and-goggles-open-fit-earbuds-and-other-applications/
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2024年11月19日

Softears開発者インタビュー

先日当ブログでSoftears「Enigma」のレビューを書きました。実際に聴いてみるとかなり特徴のあるメーカーだと思いましたが、開発者たちが先日のヘッドフォン祭の時に来日した際にインタビューをしました。以下はそのインタビューとメールでのやり取りから構成した内容です。

Softears製品は国内ではJaben Japanから購入できます。
https://jabenjapan.thebase.in

* Softears開発メンバーインタビュー

今回来日したメンバーの名前と担当は以下の通りです。

来日メンバー.jpg
(左から) ゼネラルマネージャ:杜(Crade Dio)、創業者・主任技術者:NKウォン(NK WONG)、海外担当マネージャ:翁昊(Hao Weng)

Q: みなさんが来日した今回の目的を教えてください

ヘッドフォン祭に参加して日本市場を調査するために来日しました。我々はこれから日本市場にもっと深く参入したいと考えています。

Q: Softearsの設計哲学について教えてください

まず我々の目標は中国を代表するハイエンド・カスタム・イヤホン・ブランドになることです。Softearsのスローガンは 「HEAR THE TRUTH (真実を聴く)」で、創業者のNKウォンは完璧をあくなき追求する人物であり、その性格はビジネスへのアプローチにも反映されています。彼はSoftearsが発売するすべての製品に美的な感覚も追求し、(音的に)クリアなモデルは見た目でも透明に見えるように作ろうとしています。接着部から隙間に至るまで、細部に至るまで綿密に管理され、そのすべてが均質でなければならないわけです。品質基準の適合度合いについては国や業界の基準を超えています。このように目に見える部分と見えない部分の両方で考え抜かれた設計がなされ、イヤホンひとつひとつが優れた職人技として扱われなければならないと考えています。
Softearsはクラフトマンシップの精神を持ち、常に卓越性を追求し、消費者に高品質でハイエンドの中国製イヤホンを提供することに尽力しています。

Q: Softearsのこれまでの歩みについて教えてください

創業者のNKウォンはイヤホンの研究開発で10年の経験を持っています。当初、Softearsは深センの華強北にあるスタジオとして、カスタムオーダーを受けるところからスタートしました。しかし、より大きな飛躍のためNKウォンは、自社ブランドの設立を決意。彼はMoondrop(水月雨)のCEO鄭氏とも協力し、成都に移ってSoftearsを設立しました。
2017年に設立されたSoftearsは、1000平方メートルの工場を拠点に、研究開発、撮影、販売、生産、管理、財務、倉庫スタッフを含む40人以上の従業員を擁しています。
いまでは優れた設計と革新的技術のおかげで、我々は国家ハイテク企業として認められるようになりました。

Q: Softearsの現在の業務について教えてください

我々はイヤホンの設計、チューニング、オーディオ検査機器の開発を専門とし、はダイナミックドライバー、バランスド・アーマチュア、その他各種スピーカーの開発にも注力しています。Softearsは若い会社ですが経験豊富な企業として、研究開発、製造、販売を総合的に行っています。我が社は独立した問題解決能力と研究開発能力、標準化された業務手順を有しています。また、2台の小型5軸CNC精密フライス盤や10台の3Dプリンターなど、さまざまな研究開発支援設備も保有しています。
Softearsは自社開発の他にOEMとODMサービスも行っており、国内外の数多くのブランドに研究開発と製造を提供しています。我々はほぼすべてのインイヤーモニタービジネスのニーズにワンストップソリューションを提供できます。

Q:Softearsの代表的なイヤフォン製品と技術について教えてください

2019年にSoftearsは最初の2つの製品、「RS10」と「ケルベロス」を正式に発売しました。特にRS10は、そのユニークで精巧な透明のデザインと、片側15個の部品からなる複雑な内部構造で際立っています。当時としては最も複雑なクロスオーバーのひとつであり、真の5ウェイ・クロスオーバーと10+1バランスド・アーマチュア・ドライバーの組み合わせが特徴です。
RS10は高音域に2基のKnowles製のBAドライバー、中音域に4基のeaudio(中国メーカー)製のBAドライバーを搭載、eaudioのドライバーはフルレンジタイプでNKウォンが設計しています。低音域には4基のSonion製BAドライバーを搭載、他にBAのパッシブドライバーを搭載しています(後述)。
中国では、オーディオファンの間でイヤホンのリファレンスとして知られるようになりました。この成功によりSoftearsは大きな注目と賞賛を集めることになったのです。その後、ユニークな外観と優れた音質の「Turii」は、さらに多くのユーザーを魅了して、高い評価を得ています。

RS10とEnigma.jpg
Softears RS10(左)とEnigma

我々は技術と革新に重点を置いています。一例を挙げるとパッシブドライバーの開発に注力していることです。Enigmaにはダイナミックドライバーのパッシブドライバーを搭載していますが、RS10には革新的なBAドライバーのパッシブドライバーを搭載しています。

Q: BAドライバーのパッシブドライバーというのは聞きなれない言葉ですが、どのようなものですか

従来のBAドライバーからコイルとアーマチュアを取り外したBAドライバーのことです。このRS10の画像をみるとBAドライバーに結線されてなく、音導管のみで接続されているのが分かると思います。
RS10.jpg RS10のパッシブBA.jpg
RS10と赤丸部分がパッシブドライバー、ちなみにRS10のシェルは空洞ではなく樹脂が詰まっています

パッシブドライバーは他のBAドライバーから発生する音圧を吸収する吸音体として効果的に機能します。これによってより良いエアフローを作ることができ、鼓膜に対する圧力を軽減でき、低音の音質を向上させることができます。

Q: 今回の新製品について教えてください

まず人気のあった「Voleme」の後継機である「Volume S」です。Volumeにはなかった音質切り替えのスイッチを搭載し、低音の量感を変えることができます。
アルミとカーボンの筐体で、ドライバー構成はBAドライバー2基、ダイナミックドライバー1基、ダイナミックのパッシブドライバーを1基搭載しています。
位相を電気的に制御する技術も採用しています。
パッシブ・ダイナミック・ドライバーは、ウール素材から作られた素材を反転させて低音ユニットのドームに配置したものです。それにより低音ユニットの高域成分を吸収し、低音をよりピュアにしてエネルギー性能を向上させます。

VolumeSb.jpg
Softears Volume S

新たなエントリーモデルは「Studio2」で、従来プロメーカー向けだったStudio4の下位機種ですが、リスニング目的にも向くように設計しました。
「22955(knowles)」、「29689(knowles)」という人気のある「クラシックな」構成に似た設計を採用しています。オールBAドライバーですが高域のBAには外部に通じるベントがあり、これによって鼓膜の負担を軽減します。

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Softears Studio2、右の写真にベント穴が見えます

またUSB/3.5mmアダプターの「S01」も販売します。我々はこれを"Softtail"と呼んでいます。軽量化を念頭に開発しました。

Softtail.jpg IMG_1058.jpeg
"Softtail" USBアダプター、右はiPhoneにSofttail経由でStudio2を接続

Q: 今後の製品計画について教えてください

今度はダイナミックドライバー構成のみのマルチドライバー機を計画しています。3-4基の帯域別のダイナミックドライバーを搭載する予定です。
ダイナミックドライバーのマルチドライバーにしたのは低音を増やすためではなく、シングルダイナミックモデルは中音域が薄くなりやすいからです。これにより解像力とヴォーカルの魅力を引き出せるでしょう。
またシングルダイナミックでハイエンドの機種も検討しています。

ワイヤレスイヤフォンについても開発しています。まだ明かせませんがとてもユニークな特徴を搭載する予定です。

Q: 最後に日本のイヤフォンファンへのコメントをお願いします

日本のみなさん、私たちは研究開発と技術に専念するブランドです。真面目に心を込めて制作していますので、みなさんに我々の製品を気に入ってもらえたら幸いです。よろしくお願いします。

* 製品インプレッション

今回の新製品をいくつか聴かせてもらったので、そのインプレッションを最後に掲載します。

「Volume S」はクリアで鮮明な音で、低音のパンチが気持ち良いサウンドです。ヴォーカルの明瞭感も高く、全体にリスニングよりのサウンドです。
スイッチを切り替えて「クラシック」モードにすると低音が減ることで低域の量感が変化します。

「Studio」はプロ機ベースらしく、モニターライクなサウンドでスピード感があります。すっきりとした音調で音楽聴くにも躍動感があって歯切れが良い。音の開放感がある。解像度が高い。

それと「Softtailアダプター」も小さい割に優れた音質で躍動感があります。

Softearsはとてもユニークな技術を持っている技術志向のメーカーだと感じました。これからの展開にも期待できるメーカーです。



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2024年11月18日

DAP時代のCD再生機Shanling 「CR60」

中国メーカーではCDプレーヤーのアナウンスが相次いでいます。その中で本格的なCDプレーヤー「ET3」や可愛らしいCDプレーヤー「EC Smart」を開発してCDづいているShanlingがまた新たなCD再生機を発売しました。それが異色のCD再生機である「CR60」です。単純にCDプレーヤーと書かずに「異色の再生機」と書いたのは、CR60があまりいままでにない機材だからです。

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*CR60の特徴

端的に言えば、CR60はCDトランスポート機能とCDリッピング機能をスイッチで切り替え可能なオーディオ機材です。
ちなみにCDトランスポートというのは本体にDACが無く出力がデジタル出しのみという意味です。DACが搭載されていてアナログで出力できるものを一般にCDプレーヤーと言います。
トランスポートとして見ると、CR60のデジタル出力で特徴的なものはSPDIFや光デジタルなど一般的な出力の他に、USBデジタル出力がついていることです。これにより出力先にUSB DAC機能内蔵のDAPなどオーディオ機材を接続することができます。
またCR60のリッピング機能は一般的なPCに接続するCDドライブではありません。その代わりにスマホや一部のDAPに接続してリッピングすることができます。一般的なPCに接続するCDドライブではありませんが、PCに接続してリッピングすることもできます。
つまり、昔のCDトランスポートはオーディオラックに据えられた据え置きDACに接続するものでしたが、CR60はその接続先がより現代的になっています。

CR60_disk.jpeg

CR60はCDトランスポート機能とCDリッピング機能を搭載した機材ですが、ひと捻りあるのはShanlingの強力なOSが搭載されている点です。CR60の前面には小さいながらも精細なカラー液晶画面(1.14インチ)が設けられていて、これが日本では見慣れた昔のCDプレーヤーとは異なります。画面横のボタンで機能や出力先を切り替えます。
背面を見ると興味深いことにUSB端子がたくさんついていて、USB-A、USB-B、USB-Cのすべての種類のUSB端子が勢揃いして、電源用のUSB-C端子まであります。それは互換性のためというよりも、CR60自体がデバイスにもホストにもなれるからです。ちなみにUSB端子のAはホスト用、Bはデバイス用という意味で、Cは両用です。USB機器としてみると、トランスポートとして出力する際にはホストになりますが、リッピングする際にはスマホやDAPからデバイスとして接続することになります。CR60はこれを背面のハードスイッチと内蔵OSで切り分けています。出力先は通常は自動に判別されますが、ボタンを使用して手動でも切り替えが可能です。

CR60背面.jpeg

トランスポート機能はUSBで出力できる以外は普通に使えますが、リッピング機能は少々特殊です。
CDリッピングは通常の外付けCDドライブではなく、基本的には専用のアプリから使用します。この場合にはCDDBのようなデータベースからタグ(曲名やジャンルなど)付けができます。アプリを使用する場合にはアプリがタグを検索する機能を有しています。リッピング機能をフルに活用するには「Eddict Player 」アプリを使用します。これはAndroid端末とShanlingの特定のDAPから使用することができます。
PCの一般的な外付けCDとしては使用できませんが、PCではWAVとして保存することができます。そのためEAC(Exact Audio Copy)などは使えません。USBストレージデバイスを接続することで直接USBストレージにWAVで格納することもできます。こうしたWAVで保存する際にはタグ付けはできません。
CDリッピング機能はCR60のUSB-BまたはCを使用します(CR60はデバイスだから)。リッピング機能はiOSからは使用することができません。

つまりCR60は古風なCDと現代的なDAPのギャップを埋めて、それを結ぶことができる機材とも言えます。

*実際の使用について

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CR60は説明するにはややこしい機材ので、実際に使用してみるのがわかりやすいかもしれません。
ここではDAPにShanling「M3 Ultra」を用いて説明します。M3 UltraはSnapdragon 665を搭載したAndroid 10ベースのDAPで、AGLO(Android Global Loss-less Output)というミキサーをバイパスする機能を有しています。DACはFPGAを用いたES9219Cのデュアル DAC方式です。シャープで鮮明なサウンドのDAPで、コンパクトなので持ち運んで使い回すのに良さそうです。

CDトランスポートとしてCR60はコンパクトなデスクトップ向けのサイズです。筐体は重く、がっしりとした作りです。機能からはガジェット的な感じがしますが、実物はオーディオ機器らしいがっしりとした作りです。本格的なオーディオ機材に先進的なOSを内蔵させるという点がShanlingらしいところです。
電源はUSB-Cの5V電源と12V DC電源を使用することが可能です。電源にUSB端子も使えるのが便利ですが、据え置きで使用する際には12V DCがおすすめです。(ただしDCケーブルは付属していません)

* トランスポートモードでの使用
1 付属のUSB A - Cケーブルを用いてA端子をCR60に接続、C端子をM3 Ultraに接続します
2 背面スイッチを「トランスポート」に変更します。CDを挿入します。CDの操作は一般的なCDプレーヤー通りです
3 M3 Ultraの画面上部からシステムステータスバーを表示させ、二段に広く表示させてDACモードをUSB-DACに変更します。すると自動的にUSB出力が選ばれます
4 CR60の再生ボタンを押下するとM3 UltraからCDの音楽が再生されます

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トランスポートモードでのUSB DAC画面

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トランスポートモードでのCR60画面

トランスポートモードでは、iBasso DX260やAstell & KernのDAPでもUSB DACモードにすることで簡単に使用することができました。USB出力のできるコンパクトなCDプレーヤーというのはほとんどないと思うので、オーディオ機器はDAPだけ持っていて、CDも使いたいという人にはこれだけでも便利に使えると思います。音質もなかなか良好です。

* リッピングモードでの使用
1 USB-C - Cケーブル(別売)でCR60とM3 Ultraを接続。USB-CケーブルはOTGではなく通常のデータケーブルです
2 背面スイッチを「リッピング」に変更します。CDを挿入します
3 M3 UltraはWi-Fiに繋ぎます。M3 UltraでEddict Playerアプリを立ち上げます。(Shanlingプレーヤーではありません)
4 Eddict PlayerのCDリッピングメニューを選択
5 自動的に曲情報をCDDBなどから取り出して、アルバムの候補をリストします。これは一致が複数あるためです。どれか選んで確定するとリッピングを開始します。リッピングは数分かかります。
6 終了すると曲名がついてM3 Ultra内に保存されます。アルバムアートは手動で設定できます
7 この後は普通にShanlingプレーヤーなどから再生できます。ジャンルや年代など曲情報も入っています

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Eddict Playerのリッピング中画面

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CR60のリッピング中画面

PC、MacではWAVでタグなしでリッピングが可能です。例えばMacでの手順は以下の通りです。
1 USB-C - Cケーブル(別売)でCR60とMacを接続。USB-CケーブルはOTGではなく通常のデータケーブルです
2 背面スイッチを「リッピング」に変更します。CDを挿入します。
3 MacのデスクトップでAudioというアイコンを探してクリック
4 アイコンを開けるとフォルダの中に楽曲がWAVとして見えます
5 それらを任意のフォルダーにコピーすると(ファイルのコピーではなく)リッピングが開始されます。そのため数分程度かかります

Mac画面.jpg
Macで開けたCR60フォルダの画面

Eddict Playerが動作すればShanling「M3 Ultra」など以外のAndroid DAP/スマホでも使えるように思えますが、iBasso DX260では使用できませんでした。ただしDX260でもAndroidからPCのような手順でWAVでのリッピングはできます。

* まとめ

CR60は今までにないタイプの製品ですが、前提として中国市場は経済発展の度合いにより日本よりも遅れてCDプレーヤーの全盛期を迎えているわけですが、現在はDAPやスマートフォン全盛期でもあります。つまりその時代のずれを是正することが必要になります。端的に言えばCR60はそうした意味で、CD時代と現在のギャップを埋める役目をする機材ということができます。つまりDAPからでも使えるCD機材ですね。
これは中国市場だけではなく、日本のスマホネイティブ世代の若者層にも物理メディアであるCDの人気が再燃していますし、同じ需要があるのではないでしょうか。

CR60使い方.jpeg

家では据え置きのオーディオ機材はなくて、スマホやDAP、USB DACなどだけで聴いている人が、CDを使いたいという時に便利な機材と言えると思います。
トランスポートモードは、DAC以外にもおそらくUSB DACモードのある多くのDAPで使用することができると思います。
ただしリッピングモードは対象機を選ぶと思います。Shanling DAPでEddict Playerが動作すればかなり快適に使えます。もしかするとAndroidスマホでも使えるかもしれませんが、店頭などで念のためにテストをさせてもらった方がよいでしょう。

CR60はまるでCDが最近発明された世界線の製品のような個性的でニッチな製品で、ニーズにはまると使いやすい製品といえるでしょう。




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2024年11月05日

ヘッドフォン祭2024秋レポート

先週末に恒例のヘッドフォン祭が開催されました。場所は今回もステーションコンファレンス東京で、約80社が展示しました。いくつか興味をひいたものを紹介します。

まずDITA AudioではCEOダニー氏が来日、注目の新モデル「KA1」についていろいろ詳しく聞くことができました。
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まずKA1のヘッドバンド付きでイヤーピース無しというセミオープンのコンセプトについては、アイディアとしては最近流行りのフルオープンタイプのように外の音を聞くことができる開放型イヤホンというコンセプトです。しかし、フルオープンだと低音のコントロールができないので、そこはDITAらしく音質を高めるためにセミオープンという形式を採用したとのこと。
日本の地下鉄でも使用できるだろうということ。音漏れも最小限とのことです。
実際に低音もよく出るようです。ドライバーはダイナミックで、詳細は明かせませんがかなり良いものを使用していますので音質は期待できます。
もう一つのポイントはケーブル端子がMMCXと2ピンの二つあるということです。これは音質重視のイヤフォンなので、どちらでもケーブルが使えるようにするという意味もありますが、ポイントは2ピンが側面についているということで、これはShure掛けを可能にするとともに、フォステクスTM2やiFi GO PodなどのTWSタイプのBTアダプターを使用可能とするためだそうです。
このほかにも稼働部はかなり考え抜かれた設計になっており、多機能性も期待できます。価格はターゲット価格がUSD299近辺ということです。

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DITA KA1プロトタイプ

DITA Audioはこのほかにも「Mecha」という新製品が登場。
比重がアルミニウムの約半分という超軽量なLiMa(リチウムマグネシウム)合金振動板+高効率デュアルマグネットを採用したメカっぽいイヤホンです。ちなみにDITA Audioの関連会社は金属加工に長けています。価格は12万前後とのことで、音はシャープで鮮明、クリアな音で、ニュートラル傾向でした。

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DITA Mecha

finalでは11月14日に発売される「A6000」がおそらく関東初出展ではないかと思います。かなり小さく、低域も深く中高域もシャープです。A4000の上位機種という感じで、音傾向はA4000に似ているがより高品質なサウンドという感じでした。A3000とはちょっと違うように思います。
また高音質TWSの草分けだった「ZE3000」にANCがついた「ZE3000SV」も展示。ANCは音質重視でマイルド調整ということ。ANC以外にも音質はより向上していて、よりクリアで特に空間再現力が高くなったように思います。

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fina A6000(左)とZE3000SV(右)


次にお馴染みのFitEarですが、今回は一層怪しい「謎のイヤフォン・大」と「謎のイヤフォン・小」を展示。
これはいままでのFitEarにない設計を試行したもので、特に大きい方は新設計のフィット感を試してほしいとのこと。小さい方はIMargeに似た造形のようです。
どちらもノズルの音導管の奥に「白い何か」が詰まっているのが特徴で、これも新採用のようです。
聴いてみると、両方とも今までのfitearとちょっと違うサウンドで、最近のシャープ傾向の堀田サウンドよりも柔らかくリッチで、開放感が感じられます。大きい方はより音楽的で、装着感はやや大きめですが悪くはないです。小さい方は大きいのに比べると正確系ですが一般的にはリスニング寄りと思えます。

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FitEar謎のイヤフォン大小(左)と謎のイヤフォンの謎の白い何か

アユートブースではFir Audioの新製品に注目。Fir Audio「Projeck K」は全域高性能で、大きなベントホールはATOMのものだと思います。「第二の鼓膜技術」に共通したATOMらしい音抜けがよいイヤフォンでひときわクリアなリスニング寄りの音です。
Fir Audio「FR10」はエレクトロダイナミック形式というよくわからない形式のシングルドライバーですが、かなり音は良く、モニター的でやはりATOMらしく音抜けが良い印象です。
四角く回転しないMMCX端子も特徴。

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FiR Audio Project K

MUSINブースではiBasso Audioの新製品「DX340」の先行版を展示。位置付けとしてはDX260の上で、MAXラインとは異なるそう。特徴は「D16 TAIPAN」で採用された1bitディスクリートDACを採用していること。電源をデジタルとアナログで完全に分ける方式を採用し、設定画面ではDACとアンプで別々のゲインが設定できるのが面白い。
音はDX260系統の音で、より鮮明な感じです。DX260は音が細かい、DX340は音がシャープという感じでしょうか。

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iBasso DX340

Jaben JapanのブースではSoftearsの新製品を展示。「Volume S」は人気のあったVolumeの後継機ですが大幅に改良されています。低音の強さを二種類選べるスイッチ搭載。
「Studio2」はモニター傾向の音だけど躍動感があって、リスニングでも使いやすいと思います。また「Soft Tail」というUSB-C/3.5mmアダプターも展示していましたが、これは小型ながら音は良かったです。

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Softears Volume S(左)とStudio2(右)

Softearsは技術力に長けていて、「RS10」にはBAドライバーのパッシブタイプ(ダイナミックのパッシブラジエーターに相当)なども搭載しています。
下の図では赤丸のBAに結線されていないのでそれがわかります。効果についてはまた後で書きます。
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RS10と赤丸部分がパッシブBA


FIIOでは「RR11」という普通のポータブルFMラジオが展示されていたのがユニーク。日本は災害時の必要性もあって意外と出そうな気がします。

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FIIO RR11

またNIPOという中国のメーカーではヘッドフォン祭初展示となる「N2」というDAPを展示していました。
AndroidベースのDAPでES9039を搭載しています。音は解像力が高く、試聴曲の手嶌葵の声の掠れ具合もよく再現していました。ニュートラルでややドライのESSらしい音です。
また面白いのは「A100」というスティックDACとは言えませんがスマホ用のDACです。これはまだ開発中ですが、やや平たい筐体の背面が磁石(magsafe?)でスマホにくっつくというもの。音質はN2の90%近くまで持って行きたいとのこと。

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NIPO N2(左)とA100(右)

Campfire AudioではCamJamに登場していた「Clara」は展示がありませんでした。

今回は平面磁界型イヤフォンの共演も聴きどころでした。Campfire Audioの「Astrolith」の他に、ミックスウェーブでは64 Audioの初の平面磁界型イヤフォン「SOLO」を展示。
どちらかというとリスニングよりの音で、音が速いのもAstrolithと似ています。歯切れが良く、低音もたっぷり出ていて、パンチが強く、正確性も高いのもAstrolithと共通の特徴に思えます。ただ高域がややきつい点があり、ここは2wayで高域専用チャンバーのあるAstrolithに部がありそうです。ちなみにSOLOも高域で共振するヘルムホルツ・レゾネーター方式のチャンバーを備えています。
FIIOも「FP3」という平面型のイヤホンを展示していました。こちらもクリアさが高く、きれいなサウンドが楽しめました。

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64 Audio SOLO(左)とFIIO FP3(右)

こうした平面型イヤフォンの音質性能の高さを考えると、今後ともますます平面磁界型イヤホンが加熱していくのかもしれません。
posted by ささき at 11:58 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする