Music TO GO!

2019年05月23日

Westone新シリーズのレビューをPhilewebに執筆しました

Westoneの新シリーズのレビューをPhilewebに書きました。
どうぞご覧ください!

https://www.phileweb.com/review/article/201905/23/3443.html
posted by ささき at 21:48| ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月04日

Netflixが「スタジオなみの」高音質配信開始

Netflixがストリーミングサービスの高音質化を発表し、すでに5/1より適用開始しています。これはNetflixがやってきた4K, HDR, Dolby Atmos , Netflix Calibratedなどに続く技術的な取り組みの一つということです。
この恩恵を得るにはデバイスが5.1もしくはDolby Atmos対応(プレミアムプラン必要)でなければなりません。5.1では192kbpsから640kbpsまで、Dolby Atmosでは448kbpsから768kbpsまでの可変ビットレート(つまりAdaptiveモード)で提供されます。これについては後で詳述します。
これは5.1とAtmosをサポートするすべてのタイトルで提供されているということです。背景としては「Stranger Things 2」のカーチェイスシーンで音がミキシング(ポスプロ)時よりも明瞭に聴き取れないということがあったようで、それに対応するためにビットレートを上げたということのようです。これはオーディオファイル的に良い音というよりも、電話の鳴る音とか鳥の声がより鮮明に聴こえるというところを目的としているようです。
https://media.netflix.com/en/company-blog/bringing-studio-quality-sound-to-netflix

これは原文によると「Bringing Studio Quality Sound to Netflix」とスタジオ品質であると書かれていますが、これは具体的にどういうことかというとNetflixのブログに詳しい説明があります。
https://medium.com/netflix-techblog/engineering-a-studio-quality-experience-with-high-quality-audio-at-netflix-eaa0b6145f32
普通スタジオ品質というと24bitロスレスなわけですが、上のブログでは「我々が言っているスタジオ品質とは」という説明があります。Netflixが言っているのはそうした意味でのロスレスではありませんが、"perceptually transparent"つまり知覚的に透明だと言っています。知覚的に透明とは、実際に聴いてみるとマスターと聴き分けができないレベルにあるという意味で、これはNetflixが聴き取りのテストを行ってみた結果、Dolby Digital Plusで640 kbps以上の時にはマスターと違いが判らない、という結果に基づいているということです。640kbpsというのは5.1chの24bitマスターと比較して1/10程度の圧縮率となるとのこと。同様にAtmosでは768 kbpsをtransparentとしましたが、これはまた見直すかもしれないということのようです。
さくっと計算すると、オーディオの場合は44kx16x2=1.4MbpsがロスレスCD品質なので、映像では48kx24x6=6.9Mbpsが(マスターの)ロスレスで必要になりますね(サブウーファーの0.1chを仮に1chとみなした場合)。ですから5.1ch音声トラックの1/10というと、オーディオでは128kbps、あるいは160kbpsくらいのことを指しているように思われます。それがマスターと変わらないかどうかというのは映像とオーディオを比べても仕方ないのでなんとも言えませんけれども。

このtransparentというのはgoodから始まって一番良い、たぶんexcellentとかbestの上とかそういう使い方をしていると思います。(ちなみにアメリカ英語ではgoodは「良い」ではなくまあまあとか悪くない程度の意味ですので念のため、good→better→ bestという感じですね)

技術的にもうひとつポイントなのはNetflixがいままで固定ビットレートで音声ストリーミングしていたのを可変レート、つまりAdaptiveでストリーミングするようになったということです。さきに出たtransparentはNetflix用語ですが、adaptiveというのは回線状況に応じてビットレートを変えるという一般用語です。ちなみにすでに見ている人は知っていると思いますが、ビデオの方ではすでにAdaptiveを使っています。回線が遅くなると画質が落ちるやつです。つまりNetflixではこれでビデオもオーディオもAdaptiveストリーミングになったわけです。

ここでのポイントはこの図を見てもらうとわかるのですが、いままでオーディオは固定で送っていたので、回線品質の悪いところに合わせたビットレートを使っていたということです。つまり言い方を変えると、NetflixでオーディオもAdaptiveでストリーミングできるようになったことで、よりよい音質を提供することができるようになったということだと思います。
これを考えると冒頭で背景としては「Stranger Things 2」のカーチェイスシーンとの説明を引用しましたが、実際はオーディオでのAdaptiveモードの実用化にめどがついたので提供開始したというほうが正しいように推測できますね。
posted by ささき at 13:58| ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月29日

平成最後のヘッドフォン祭2019春

恒例のヘッドフォン祭のレポートです。

IMG_0320[1].jpg

私は今回は1日目にトップウイングさんのSONOREの紹介と、ヘッドフォンブック・ヘッドフォンアワードの司会進行を務めました。二つイベントがあると準備やら何やらで忙しく、1日目はほとんど見られませんでしたが、2日目はけっこう見て回りました。今回は10連休のせいか、土曜日のお客さんが多かったように思いましたね。

Spirit trinoの開放型twin pulse。立体的な音場が特徴的ですが、躍動感もあるように思いますね。
IMG_0362[1].jpg

Spirit Trinoの密閉型。密閉型は周波数特性を取るのが難しいので初めからイコライザーありきで設計したのがポイントということ。試聴もまず据付のDAPを使った方がとても音が良かったです。イコライザーカーブはダイナミックレンジのヘッドルームも考慮したもので、製品につけて提供するということ。
IMG_0365[1].jpg

Dream XLSベータ版。OSLOケーブルが付属してます。Dreamのシャープさを持ったまま音楽的になった印象。ドライバーも再設計されてるとのこと。
IMG_0370[1].jpg

ファイナルの新Bシリーズ。Eシリーズは万能設計だったが、Bはもっと音をモデルごとに特化させたとのこと。たとえば音にはまれば手放せない感じになってほしいとのこと。モデル名は上下を意味せず開発順。B1は解像感優先、B2はダイナミックレンジ優先、B3はB1とB2の折衷とか。音もファイナルらしくすこぶる良かったですね。特にB1。
IMG_0369[1].jpg

Campfire Audioからは新製品IOとPolaris改。IOは2ドライバーで音響抵抗レス、コスパの高いエントリーモデルで、Polarisは改良点が多数で価格は前モデルと同じくらいとのこと。
IMG_0388[1].jpg

ミックスウエーブさんではマクベスカスタム。明瞭感も高く立体感が独特で良かったですね。
IMG_0419[1].jpg

今回は以前からちょっと知り合いのベトナムの会社(会社は中国かも)のSimphonioというブランドが参加していました。某有名メーカーのOEMをやってたりするところで技術力はたしかだと思います。とにかく音質第一をあげていて、いくらなんでもやりすぎかという普通の100円イヤフォンのようなイヤフォンが5万円という Dragon3がまずすごい。チタン振動板と優秀な線材のケーブルだそうです。Yuin PK1を思い出しますね。
また右のセラミックドライバーというモデルもかなり音が良かったですね。
IMG_0343[1].jpg  IMG_0396[1].jpg

フォスター電機はDIYコンテスト。すぐユニット売り切れたとか。
IMG_0375[1].jpg

おなじみJabenのブースでは新製品tralucentのIEMがユニークなのがいっぱい出ていました。
これダイナミックが「一発で」ハイとローを受け持ち同軸BAがミッド。ダイナミックのミッドはクロスオーバーでカットしてるよう。
他にも好評ファンタジーアンプが4.4mm端子を搭載したよう。
IMG_0333[1].jpg IMG_0335[1].jpg


HIFIMAN の静電型システムJade II。ものすごく軽量で、ドライバーがキラキラ光るとか面白い。音も軽快感がありますが、アンプの駆動力が高いというか、能率が高いというか。
IMG_0351[1].jpg

エミライさんのところ、ラールレグジットのヘッドホン。これで完成形ですか?って開口一番に聞いてしまいましたが、これで完成形のフルオープンのリボン振動板だそうです。AKGのK1000みたいな感じでスピーカーアンプで駆動させます。
IMG_0328[1].jpg

WestoneはBシリーズがメインとなります。こちらについては私の書いたPhilewebの記事もどうぞ。
IMG_0418[1].jpg

LP6TI199もやはり音質の良さに関心高く、さっそく売れたそう。LP6はその低価格版。
IMG_0390[1].jpg

HugoIIの外殻の交換で5万円くらい。
IMG_0354[1].jpg

今井商事さんのところのWooオーディオの石のアンプ。バランスインのバランスアウト。20万弱くらいのよう。USB DAC付き。
IMG_0383[1].jpg  IMG_0382[1].jpg

ファーウエイのHWAレシーバー。音は悪くないけどせっかくなのでMMCX対応とかにしてちょうだいってお願いしました。
IMG_0380[1].jpg

なんだこれは。
IMG_0416[1].jpg

根元さんの中国オーディオショウ報告会は、持ち帰った怪しい機器の試聴会になりました。意外とみんな音良かったのに驚き。ただ思ってたより価格も高いですね。長細いQLSのDAPが7-8万円、小さいDAPが5万円くらいというと音は悪くないけど、ちょっと高め。
ショウの開催はJabenのようなディーラーが中心でerj.netがスタッフ参加してるような感じのよう。ほかにもCanJamはHeadFiがやってるので群雄割拠みたいな感じでいろいろなショウが行われているのでしょう。イヤフォンよりもヘッドフォンが優勢で、イヤフォンは2000元(3万円)くらいがひとつの上限のよう。
IMG_0397[1].jpg  IMG_0402[1].jpg  IMG_0405[1].jpg

IMG_0406[1].jpg  IMG_0414[1].jpg

そして、、
平成のWシリーズか、何もかも、みな懐かしい。
IMG_0423[1].jpg

ということで令和のヘッドフォン祭も楽しみです。
posted by ささき at 14:02| ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月26日

Astell & KernからKANNの新型、KANN CUBE登場

Astell & KernからKANNの新型であるKANN CUBEが登場します。

IMG_0290[1].jpg  IMG_0298[1].jpg 

これはKANNのデスクトップ的な使い方を突き詰めた新型で、旧KANNは併売されます。特徴としては従来よりひとまわり大きくなり、CDリッパーと合わせたデザインとなりました。またES9038proをデュアル搭載し、ラインアウトにmini XLRを採用しています。XLRの場合はアンプをバイパスする仕様のようです。

IMG_0301[1].jpg  IMG_0292[1].jpg  IMG_0303[1].jpg

またいままでより一段高いハイゲインが設けられましたが、これは平面型ヘッドフォンを意識してのことだと思います。(従来のハイゲインはミドルゲインになっています)
音質もなかなか良好でした。家で使うことが多いという人には興味ある新製品だと思います。

IMG_0306[1].jpg
現行KANNとの比較
posted by ささき at 10:03| __→ AK100、AK120、AK240 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月22日

DITAの新機軸、Project71レビュー

DITAはAnswerからDream、Twinsと様々な製品ラインナップを広げていき、シリアスで硬派なダイナミック型イヤフォンの代表格の一つになりました。PROJECT 71は同社の記念モデルであり、全世界で300個の限定生産販売となります。
Project71の名の由来はDITAの親会社であるシンガポールのPackager Pte Ltd.が1971年に創業されてから47年目を意味するということです。この会社は自動包装機械のメーカーであり、DITAイヤフォンの優れた機械加工技術はこの会社あってのものです。

IMG_4257_filtered[1].jpg

* Project71の哲学

他のDITAイヤフォン同様にこのProject71もCEOであるダニー・タン氏の理想の実現と言えます。ダニー氏がProject71の秘話を教えてくれたんですが、まずそのキーワードは"enjoyable"、つまり楽しめることです。
彼がProject71のアイディアを思いついた当初、2つのことを考えたということです。

まずひとつは昔ながらのイヤフォンの形を取りながらも、他から大きく違う個性を持つものです。使いやすく楽しみやすいということですね。彼は高品質なものこそ、マニアだけではなく多くの人に楽しめるものでなければならないと考えているということです。
この場合は耳に回すいわゆるShure掛けタイプのイヤフォンはプロやマニア向けであり、一般の音楽愛好家にはあまりなじみがないので、普通に耳にストレートに装着できるものを目指しているわけです。

マルチドライバーのように手段が目的になりがちな、あまりマニア的なものに陥らずにいかに音質をよくするかというところに注力したい、音楽を楽しむのに手段を忘れるようなものを作りたいというわけです。
つまり良い靴がそれを履いていことを忘れるようにしたいというわけですね。

もうひとつは従来のDITAのラインナップとは別のラインナップを作りたいということです。AnswerからTwinsのようにどこかメカニカルでオーディオファイル的なものもよいけれども、もっと別のアナログ的なものを作りたかったということですね。

* 特徴

そうした点で今回は素材・材料を重要だと考えたということです。Project71では真鍮とマッカサルエボニーという楽器にも用いられる木材を組み合わせています。
このように真鍮や木材が使われるのには音質的な意味が必要であり、よくある木製のイヤフォンのように表面だけ木材で中身がプラスチックというようなものは作りたくなかったということです。ただしここがかなり難関となります。Project71のポイントの一つはこのように真鍮と木材を組み合わせたという点で、独特の音響効果を生み出せますが、金属と木材という加工の難易度はかなり高いということです。

IMG_4262_filtered[1].jpg

Project71ではパーツを個々に製作されて重ねられていきますが、双方の加工中の熱膨張率の違いなどで精密な加工は難易度が高かったようです。特にMMCX端子の部分の接合が難しかったということです。またベント穴を設けるのも大変で、Project71では大きな独自の音響チャンバーを作ってエアフローのコントロールをしているのですが、その設計も難しかったようです。
また、音響的な効果だけではなく、この筐体は使い込むほどに味が出てくるということで、まさに持ち主の個性が出るでしょうとのこと。

ドライバーには複合材を採用した第3世代の新しいもので、音楽的な情感に訴えるような特性を持たせたということ。

IMG_4252_filtered[1].jpg

木材と真鍮製の筐体、新型のドライバーに加えてProject71のさらなるポイントは独自開発のOSLOケーブルです。
従来のVan Den Hulのケーブルは硬いこともあり、今回の製品には向いていないので、日本のケーブルメーカーと共同で開発したのがOSLOケーブルです。

IMG_4260_filtered[1].jpg

OSLOはまったく新しいケーブルでOil Soaked Long Oxygen Free cableのことです。Oil Soakedはオイルに浸したという感じの意味で、金と銀の粒子がサメ油に浮いているような感じです。これによって顕微鏡的な大きさでのPC-tripleCの高品質線材表面の不規則さを整えて、信号伝達を高めて豊かな音と細かなニュアンスの再現に貢献するということです。たぶん接点活性剤のようなものではないかと推測しています。

端子は今回はMMCXであり、ノッチがあって不要なMMCXの回転をロックするメカニズムがついています。もちろん好評のAwesomeコネクターが引き続き採用されてリケーブルを簡単にしています。このAwsomeコネクターはかなり便利で、3.5mmと2.5/4.4mmバランスをすぐに交換できるのでDAPとスマホを使い分けて聞いているときなどに便利です。端子だけポケットに入れておけばいいですからね。

* パッケージ

記念モデルということもあって、パッケージもなかなか豪華なものです。

IMG_4238_filtered[1].jpg  IMG_4241_filtered[1].jpg

IMG_4244_filtered[1].jpg  IMG_4245_filtered[1].jpg  IMG_4248_filtered[1].jpg


* 音質

Project71の最大のポイントはその独特の音質です。
音はこれまでのDITAの硬質なイメージとは変わって、暖かみのある滑らかなものです。いわば聴いていて楽しく美しい、音楽的というべきものですが、DITAらしい切れ味の良さは残していて、ダイナミックにしては解像力もかなり高いと思います。音楽的で甘いというと、クリアではなく鈍い音のように聴こえますが、Project71の場合はそうしたことはなく、甘くて滑らかな音ですが、透明感が高く歯切れの良さ・解像力はtwinsと比べてもそうひけをとらないでしょう。
基本的な性能が高く、ハイエンドDAPの底力も引き出しています。AK380よりもSP1000でより実力を発揮できるのはDITAならではで、楽器の響きが豊かで、音楽の情熱を伝えてくれると言えますね。
能率は低めですが、スマホやBTアダプターで鳴らせないほどではありません。

IMG_0010[1].jpg
SP1000CPとProject71

Project71の音の個性で際立っているのは音の滑らかさ・スムーズさの部分で、なかなか書いて説明がむずかしいのですが、ほかのイヤフォンと比べてもわりと差がわかります。バターのようにスムーズ、シルクのように滑らか、という感じです。美しくきもち良いのでもっと聞いていたくなるという感じの音です。

IMG_0114[1].jpg
Mojo+PolyとProject71

DITAはダイナミック型らしい低域の充実感が良さの一つでしたが、Project71でも低域の迫力はいっそうパワフルです。低域の量感はわりとある方ですが、膨らんで贅肉がついている感じはなく、すっきりとしてパンチがあります。音は低音に迫力があり暖かみのあるダイナミックドライバーらしい音ですが、低域の細かな再現力もDITAらしく情報量が多く、楽器の響きがよく聴こえます。中音域でのヴォーカルの深みも良いですね。

Awesomeプラグで簡単に2.5mm/4.4mmに変えることでバランス駆動でよりスケール感も楽しめます。SP1000でバランス駆動で使った音の迫力と躍動感の魅力は格別です。
音はケーブルを変えてもこうした傾向があるのでOSLOのみの効果ではありません。

* 別売りのOSLO交換ケーブル

OSLOケーブルにはリケーブル用の単体売り交換ケーブルが用意されています。MMCXと2pinです。ちなみにMMCX仕様でもProject71に付属しているケーブルとは端子部分の形状が異なり、またメモリーワイヤになっています。
MMCXはどのイヤフォンでもあまり問題がありませんが、2ピン版は最近の2ピンが出たり引っ込んだりしているので適合するのがなかなか見つからないかもしれないので、店で試着させてもらったほうが良いでしょう。

IMG_0145[1].jpg
SolarisとOSLOケーブル

MMCX版をCampfire Audio Solarisにつけてみました。Solarisの標準ケーブルもかなりよいものが付属していますが、OSLOケーブルの効果は高く、いわゆるすべての音源を聴きなおしたくなるくらい向上効果があります。
音がよりリアルで滑らかに聴こえ、音の深みが増して濃くなるという感じです。また音場がさらに少し大きくなります。適度に暖かみは加わりますが、着色感が大きいわけではないようです。

IMG_4264_filtered[1].jpg  IMG_4265_filtered[1].jpg

ケーブル替えたというよりDACを変えたような感じでもありますね。一枚ベールをはがすというよりも、音色が別な感じになるという感もあります。
標準ケーブルに戻すと少しこじんまりとして、あっさりとした感じに聴こえます。

* まとめ

Project71のポイントは、普通でありながら個性的であること。
ストレートに耳に入れられる簡単な取り扱いで、真鍮と木材、そしてOSLOケーブルのもたらす音楽的で絹のように滑らかな音質、その材料がもたらす経年変化など持つ喜びもあります。
個性的という点ではDITAの中で個性的というだけではなく、シングルダイナミックの高性能イヤフォンの中でも個性的です。
DITAのラインナップに新しい魅力が加わったと言えますね。
SP1000などのハイエンドDAPでダイナミックドライバーの音楽性を楽しみたい人に薦めたいですね
月末のヘッドフォン祭にてぜひ試してみてください。
posted by ささき at 16:14| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月13日

Poly 2.0アップデートとPolyでのAirPlay使用のヒント

Chord PolyがVersion 2.0となりました。
今回からアップデート方法が変更されましたので注意してください。まずGoFigureを最新版にする必要があります。
まず1.0.41というバージョンにいったん更新してから、GoFigureからDevice Settings→Firmware Updateです。あとはつけっぱなしでP-Statusが青赤黄色の点滅をするとファーム更新中です。今回から自動でリブートを行うようになりました。

2.0ではBluetoothやWiFiドライバーなどがより安定するとともに、今回から正式にRoonの認証を受けてRoonReady機器となりました。
Roonでつなぐと384kHzアップサンプリングをRAATで受けられるので、とてもポータブルで聴いているとは思えません。

IMG_0037.JPG

またDLNAアプリからTIDALやQobuzのストリーミングの使用が可能となりました。MQA対応していないのでTIDALではハイレゾストリーミングできませんが、FLACで送ってるQobuzならハイレゾストリーミングもいけそうです。
方法はGoFigureから下にあるUserをクリックするとログイン画面が出ますのでストリーミングサービスのアカウントを入力します。次にPolyをOther(DLNA/MPD)モードにします。
コントロールはDLNAアプリから行うので、8playerアプリにいって、Polyをサーバー(DMR/DMS)として追加。
TIDAL(またはQobuz)というタブができているのでそこから階層を辿ってジャンルとかMyMusicで曲リストが出てきます。

IMG_0041.JPG

また新規にRadio機能がついています。GoFigureからRadioを立ち上げることができます。BBCのラジオがプリセットされてますが、自分で追加できます。

ところでPolyはiPhoneを使っているときはAirPlayで接続できるのが強みです。Bluetoothと比べてみるとやはり音質的には一枚上で、特にハイエンドイヤフォンを使っているときはかなり差が出ます。Bluetoothと違ってロスレスのALACで送信していますからね。
とはいえAirPlayはWiFi環境下でないとつなげないので、外出時にはモバイルルーターを使わなければなりません。しかしPolyにはHotspotモードがあり、GoFigureが出てからはピンでつかなくてもGUIで変更できるようになりましたので、外出時でもPolyをHotspotモードに入れればAirPlayを使えます。Hotspotモードに入れて、Poly-xxxというネットワークにつなげばPoly自身が持っているローカルWiFiにつなげます。
ところが、、このままだとiPhoneがインターネットにつながらなくなり、Polyに音楽は流せますがネット作業がなにもできなくなります。
この時はWiFiとセルラー4Gを同時に使う方法があります。(以下iOS12の場合)
1.WiFiでPoly-xxxxにつないだら、その右の(i)を押下してください。
2.ipアドレスとサブネットマスクをメモって下さい。(たぶん192.168.1.xと255.255.255.0です)
3.その画面の「IPを構成」を"手動"に変えてください。
4. さきのIPアドレスとサブネットマスクを入力してください
5.画面を戻ります。これで右上に4Gと出ていたらインターネットがセルラーで使えています。音楽はいままでどおりにPoly-xxでつながっています。

IMG_0035.JPG
posted by ささき at 15:39| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月11日

トップウイングでSONORE国内導入

うちのブログでは何回か取り上げてきたSONORE(ソノーレ)の製品がいよいよ国内でもトップウイングさんから販売が開始されることになりました。月末のヘッドフォン祭で発表となります。
SONOREはmicroRenduという製品で最近話題となり、いくつか製品があるのですが、まずultraRenduとultraDigitalを5月中旬頃に発売の予定ということです。

わたしは記事を書くためにデモ機を試用してみました。まず簡単にultraRenduを紹介しますと、背面を見てもらうとわかりますが、microSDスロット、RJ45ネットワーク端子、USB-A、電源端子というシンプルなものです。端的に言うとネットワークブリッジ製品で、PCにネットワークでつなげてUSBに変換してDACに出力する、というようなものです。SDスロットはSonicorbiterというOSを入れるスロットで音源ではありません。
PCからはRoon、MPD、DLNA、Squeezelite(SqeezeBox)などの出力先として見えます。
つまりいままでPCから直差ししていたUSB DACをultraRenduを介することで音質を上げるという製品です。聴いてみるとかなり効果は高いと思います。

SONORE_Rendu.jpg  SONORE_Rendu_rear.jpg

実際に構成を見て、聴いてみるとよくわかると思いますのでPCオーディオ興味ある方はぜひヘッドフォン祭のトップウイングブースならびに発表会にお越しください。
posted by ささき at 11:13| ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月08日

Westoneのカートライト兄弟のインタビュー公開、新Bシリーズ登場

Westoneの人気Wシリーズが刷新され、新しいBシリーズが登場しました。
カートライト兄弟にわたしがその改良のポイントをインタビューしましたが、その内容がPhilewebにアップされました。
なかなかマニアックなところまで突っ込んで聞いていますので、どうぞご覧ください。
https://www.phileweb.com/interview/article/201904/08/651.html

IMG_7492[1].jpg
カートライト兄弟と真ん中がMeze Antonio氏
posted by ささき at 17:08| ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

MEZEの新フラッグシップ、平面型のEmpyreanレビュー


MEZE Empyrean(エンピリアン)はMEZE Audioの新しいフラッグシップ・ヘッドフォンで、平面駆動のダイナミック型ヘッドフォンです。このタイプは一般的に静電型と区別してマグネット設計からアイソ・ダイナミック型と言います(オルソ・ダイナミック型とも言います)。日本語で等磁力型と言っているのはこの翻訳だと思います。
MEZE Audioは工業デザイナーでありオーディオマニアでもあるMeze Antonio氏が創設したブランドで、99 Classicは昨年度の音楽出版社のヘッドフォンアワードを受賞した名機です。

IMG_5291_filtered[1].jpg

しかしMEZE Audioと言えば99 Classicなどの手ごろな価格でデザインと音質の調和したヘッドフォンのブランドというイメージでしたが、なぜ一足飛びのように平面型のフラッグシップを出したか少し疑問に思いました。これについてはもう一社、RINARO社の存在がポイントになります。EmpyreanではあちこちにRINARO社のブランド名も記載がされていますね。
この点については昨年Meze Antonio氏とRINAROの責任者とお会いして直接話を聞いてきました。

IMG_3731[1].jpg

* Empyreanのはじまり

RINAROは旧ソビエト時代からある会社でウクライナ政府出資の会社です。さまざまなエリアでヘッドフォンやカーオーディオの経験があるそうですが、なかでも平面駆動型は30年もの経験があるということです。平面ダイナミック型で30年前というとあれですか、と聞いてみたところ口を濁していたので、もしかするとその辺に関係があるのかもしれません。このようにずっとOEMのように開発してきたので、自社の名を出した製品はEmpyreanが初となるそうです。
Empyreanでの担当はRINAROがドライバー部分と音響設計の担当で、MEZEはそれ以外すべて(構造設計やハウジングデザインなど)となるそうです。

anto_desenand[1].jpg

つまりMEZEが急に平面型を出したわけではなく、他社の技術ベースがあるということです。この協業は2016の秋にドイツのショウで出あったことで、MEZEは最高の技術がほしかったし、RINAROは自分の技術を世に出したかったので協業体制が始まったということです。つまりEmpyrean(天国とか最高という意味)の始まりです。
もともとMEZEは99クラシックのようなデザインと音のバランスの良いヘッドフォンが評判だったので、実のところディーラーも99クラシックの続きのようなものを望んでいたそうです。しかし、ここでRINAROと出会ったことで、デザイナーとして最高のものを作りたい夢がかなうという機会が訪れたと考えたそうです。デザイン(快適性)と音質という最高のシナジー(相乗効果)が達成できるというわけですね。ビジネスよりも作りたいという情熱だとMEZE Antonio氏が言っていました。この情熱という部分が音質面でのチューニングにもポイントになると思います。

* Empyreanの特徴

1. ハイブリッドのコイルパターンとマグネット

平面型では振動板すべてが動くために、振動板にプリントされたボイスコイルパターン(形状)が音のキーの一つとなります。これがEmpyreanの革新なのですが、Empyreanではスイッチバック(ジクザク)とスパイラル(らせん)の組み合わされたハイブリッド型のコイルパターンが採用されています。等磁力ハイブリッド配列ドライバーと呼ばれています。
もちろんボイスコイルだけではなく、マグネットもパターンに応じたハイブリッド形状をしています。この平面型ドライバーはMZ3と呼ばれています。

Empyrean_MZ3_diaphragm[1].jpg

スイッチバック(ジグザグ)は低域に特化し、スパイラル(らせん)は中高域に特化したコイルパターンだそうです。ポイントは中高域用のパターンは耳に近い位置に置かれているということです。これによって耳の中での不要な反射を抑えて耳に直接入れるという考えです。これによって不要な共振を抑えて元の音を忠実に再現しているとのこと。低域の方はあまり指向性がないので、そこを分けたということでしょう。
従来の平面型と比べての長所としては、聴覚的に音場が良くなるとかハーモニックディストーションが低くなる。またワイドレンジが実現できるということだそうです。

2. 軽量化設計と高能率化

平面駆動型と言えば鳴らしにくいヘッドフォンの代名詞ともなっているように、アンプ側の駆動力も必要になるのが普通です。そこで高能率化、つまり鳴らしやすくすることが特に最近の平面型ダイナミックヘッドフォンのキーとなっています。Empyreanでもこの点に注意が払われています。

IMG_5298_filtered[1].jpg

Empyreanではまずドライバーを楕円形にして有効ドライバー面積を広くし、振動板を軽量化することで高効率化が図られています。
また振動板には特殊なポリマー材料を使って超軽量になりひずみも下げています。振動板の厚みは非公開なため書けませんが、だいたいこのタイプでは標準的だと思います。そのためキーはこの素材がとても特殊だということです。なぜかというと、同じ平面型と言ってもアイソ・ダイナミック型ではコイルが必要なために静電型ほど振動板は薄く作れないので、素材が軽いというのは大きく有利な点です。
このように軽量なため高音域が110kHzまで出せるという点がもうひとつのポイントです。
普通のヘッドフォンではシンプルなバーマグネットを使いますが、より高能率なマグネットを作れたので軽く済んでいる(従来他社製品の1/2くらい)ということです。これも軽量化に貢献しています。

IMG_5294_filtered[1].jpg

イヤパッドは磁石がないのに磁石のようにくっつくのですが、これはドライバー用のマグネットをうまく使っています。このイヤパッドの金属はフェライトで知られるフェロ磁性体というもので、このネットのおかげで磁場を拡散させずにドライバーに効率よく閉じ込めて12%ほど効率化し、またこの金属ネットのために人に届くような強い磁界を95%もさえぎってくれる優れた設計です。

* インプレッション

MEZEといえばやはり美しいデザインですが、Empyreanもまるで未来ガジェットを見るように優れたデザインです。
HeadFiでも発表された当時はMEZEホームページに発表されたEmpyreanの背景のレインボウカラーのデザインがスタートレックのイメージデザインと似ているので、かなりスタートレックを意識したのではないかと書かれていましたね。まさに宇宙船をほうふつとさせる美しくて頑丈なデザインです。ドライバーハウジングのメッシュもCNC加工され、デザイン性とエアフローを両立させているようです。機能的にもよく考えられている点が工業デザインという感じです。
ハイブリッド平面型コイルパターンがRINARO社の功績であるのと同様に、Empyreanの外形デザインは工業デザイナーたるMeze Antonio氏の面目躍如と言えるでしょう。
ヘッドフォンはアルミのトランクに格納されていますが、このトランクはなかなか高級感があって優れたものだと思います。

IMG_5300_filtered[1].jpg

ヘッドレストは独特の形状で頭によくフィットします。これは装着した時に頭に沿うように密着することで圧力が分散されます。頭に装着した時に感じる軽量感は手に持った時よりも高いので、圧力を分散させるヘッドバンドの設計が優れていることが良くわかります。

IMG_5301_filtered[1].jpg

サイズ調整はスライドバーを使うのですが、この感触も高級感があって、がっちりと固定されます。
また側圧は開放型にしてはわりと高い方で、頭にしっかりと密着します。装着感に関してはかなり良好で、最近ではAudioquestのNighthawkと同様に人間工学的によく考えられたヘッドフォンであると思います。
試聴で長時間聴いていても耳が痛くなるとか疲れてしまうということはありませんでした。これは音の優しさという点もあります。

ケーブルはミニXLRで接続する方式で、この方式は他でも採用されているので交換ケーブルも見つかるかもしれません。ケーブルは購入時にいくつかの端子のタイプが選べます。

IMG_5306_filtered[1].jpg

鳴らしやすさに関してはHD800と同じボリューム位置だとより大きな音になるので、平面型にしては能率もよく鳴らしやすい方だと思います。ここは最近の平面型らしい点ですね。アンプのLowゲイン位置でも音量は取れるくらいです。
ポータブルプレーヤーでも十分音は取れますが、Empyreanの性能を引き出すにはハイエンドのDAPかまたはやはり据え置きのシステムを使ったほうが良いと思います。一般的なヘッドフォンアンプでも音量は問題ないと思います。

* 音質

第一印象は楽器音や声のリアルさと、音の豊かさや厚み、音の立体的な広がりに圧倒されるということで、多声のアカペラヴォーカルを聴くと感動的です。
思っていたよりも低域の量感がたっぷりとあるのが第一印象ですが、低域に重みが感じられ質感表現に優れています。特にAudiophile Recordingsなど試聴によく使われる良録音ではかなり良質な低域を堪能できます。
高域もどこまでも伸びる感じでかなりワイドレンジ感があります。試聴のさいにはMeze Antonioもいたのですが、コメントを言うとハイはロールオフしないだろう、と言っていました。
また110kHzという領域では聴覚的には感じられませんので、倍音成分が豊かという方向に効果が出ていると思います。実際に音の厚みとか豊かさからくる音楽性というのがEmpyreanの大きな特徴だと思います。音の厚みというか濃さがスーパーツイーターのついたスピーカーに近いものを感じさせるような気がします。

また音の立体感に優れていて、音が空間を移動するタイプの録音では気持ち悪くなるくらいリアルに感じます。マルチドライバーイヤフォンだとこのイヤフォンは位相がよく合っていると言いたくなるタイプの音だけれども、この場合はおそらくこのリアルさはハイブリッドコイルパターンの良さのように思いますね。

HD800と比較して平面型を実感するのは音のトランジェントが速いことで、音の立ち上がりと立ち下がりが速く歯切れがよい音です。この辺もMeze Antonio氏にコメントを言うと、振動板の軽さが効いているんだ、と言っていました。振動板が軽いことと、剛性が高くたわまないということの両立は難しく、この実現はかなり大変だったようです。
しかし反面でシャープな音のヘッドフォンにありがちな高音域やサ行の音の痛さが少ない感じですね。これは実にHD800と比べてもより顕著で、音の高級感というようなものを感じさせます。

楽器音やヴォーカルがリアルで、細かい音の明瞭感が高く感じられます。細かい音が消え入りそうな表現にも長けていて、解像力が高いということもあるけれども、それよりも情報量が多いという言葉を使いたいですね。
バイオリンの音や楽器音がきれいで澄んでいるのも特徴的で、おそらく歪感がとても少なく正確な音が出ているのだと思います。楽器の擦れる音や金属を叩く音などの響きの良さがとても印象的です。

また開放型の典型的なHD800と比べると、少し密閉型に近い密度感のある音を感じます。モニターではなくリスニング寄りの音で、アナログ的なやさしさと滑らかさがありデジタル的に硬くてきついのではありません。音楽を楽しむタイプですね。ただ楽器の音や声など音自体はとてもリアルで高忠実に思えます。

IMG_5292_filtered[1].jpg

イヤパッドは主にアルカンターラで聴いたのですが、レザータイプにも交換してみました。、Empyreanでは着脱がとても簡単なために音を変えたいというときに手軽にできるのが隠れた魅力かもしれません。
レザータイプはとても革の高級感がありかつ装着感も柔らかい仕上がりです。高級ヘッドフォンを使用しているという満足感が得られるでしょう。レザータイプでは少し密閉型に近いようなやや重みを増した低音域のインパクトが感じられます。ただ音の広がりと開放感らしさはアルカンターラのほうが良いように思えますね。ここは着脱の容易さもあるので音楽の好みやジャンルで手軽に取り換えて使うのが良いと思います。

オーケストラや多声アカペラなど複雑で多彩な音楽で光るヘッドフォンだと思います。よく試聴に使うアカペラグループThe Real GroupのWordsではそれぞれの声の音域の広さ、豊かさに驚くとともに、声が空間のあちこちに浮かび上がり、それがまとまってひとつの厚いハーモニーを奏でるさまがよく分かります。こういう曲では空間に音のないところと、あるところがかなり明瞭にわかります。

またGo Go PenguinのようにEDMっぽいユーロジャズなどでは躍動感や重み・パワー感が楽しめます。最新アルバムのA hundrum StarのRavenでは冒頭のピアノの叩きつけるような響きが感動的なほどに美しく響き、続くハイスピードなドラムスやベースの低音の豊かさ・体が動き出すような躍動感に圧倒されてぞくぞくとする感動が味わえました。音に密度間があって躍動感があるのでこうした音楽にも良く向いてますね。

IMG_5299_filtered[1].jpg

これだけ音が分厚くて濃い音で、かつ軽やかに躍動感を感じるヘッドフォンは他にあまり例を見ないほどではないかと思います。重くて量感のある低域から、リアルな中音域、美しく伸びあがる高域までワイドレンジ感も圧倒的です。
Empyreanについては設計の様々な要素がうまく調和して最高の音を奏でているという感じです。聴いているうちに音の厚みや豊かさ、リアルさやスケール感にどんどんのめりこんでいって、音楽に引き込まれていく感じがします。豊かで深みのある音空間に音楽の感動が感じられますね。

聴くほどに良さがわかるので、じっくりと聴くと聴くたびに発見があると思いますし、それだけ手間をかけて丹念に設計した成果だと思います。
月末のヘッドフォン祭ではぜひテックウインドさんのブースで聴いてみてください。
posted by ささき at 12:48| ○ ホームオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月27日

プレミアム限定モデル、Luxury & Precision、LP6 Tiレビュー

先日の春のポタ研では70万円近くの高価なDAPが話題となりました。これはLuxury & PrecisionのLP6 Tiという機種です。(正確な価格は販売店に確かめてください)
Luxury & Precisionは中国のオーディオブランドで、HeadFiなど海外フォーラムを見ている人にはおなじみでしたが、昨年からサイラスさんが国内でも扱いを始めました。昨年L3-GT、L4、L6、LP5 Ultraの記事を書きましたのでそちらもご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460897457.html

IMG_5035_filtered[1].jpg
Luxury & Precision LP6Ti

Luxury & Precision(以下L&P)はうちのブログでもおなじみだった、ColorFly C4の流れを汲むということです。実際L&Pで話題となったのがColor Fly C4によく似たクラシカルな形をしたLP5 Ultraという限定生産モデルでした。これは上のレビューを持ていただくとわかるように音質的には据え置きなみで、ポータブルよりも格上の印象さえ受けるものでしたが、デザインや操作性も含めてクラシカルで現代的なDAPとは言い難いものでした。
L&Pでは一方でL4やL6のような現代的なタッチUIのDAPを出していましたが、この現代的なラインの延長でLP5 Ultraのような究極のDAPを目指して開発したのがLP6 Tiです。Tiはチタンのことで、ボディがチタン製であるところから名づけられています。

*LP6 Tiの特徴

インテル製のFPGAの採用

ハードウエア的にLP6Tiを特徴づけているのはまずインテル製のFPGAの採用です。これはポータブルオーディオでは世界初ということです。FPGAを採用したDACではChord社製の製品が良く知られていますが、こうした例ではいままでザイリンクス社製のFPGAがよく使われていました。LP6Tiではインテル製の「フルサイズ工業グレードの大型FPGA」が採用されているということです。これはメーカーによるとザイリンクスの上位バージョン以上の性能を持つということです。ただし消費電流に関してはすべての部分を使用してはいないので電力消費を抑えているということです。
L&Pでインテル製のFPGAを使用したのはL&PがPCパーツ由来の仕事をしていた関係もあると思いますが、中国市場でのサポートの良さもあるということです。またL&PのCTOであるWan氏はかつてAMDの中国支社で活躍していたこともあり、こうした分野には長けていると思います。

FPGAとはプログラム可能なICのことで、FPGAを用いたDACと言ってもFPGAでデジタル・アナログ変換をしているわけではありません。そのため当然のことながらDA変換を行うDAC部分が必要です。FPGAの機能としては主にDAC部分に入る信号をきれいに整形するためのデジタルフィルタがメインですが、LP6Tiではそのほかに高音質のEQ機能、ロスレスDSD/PCM変換、超低ジッターSPDIF出力、高精度のクロックソース、ワイドバンド高速通信などの機能も含まれているということです。
ちなみにロスレスDSD/PCM変換というのはこのFPGAの効率が良く他社のようにDSD/PCM変換チップやIPコアを使用する方式に比べて、インテル製のDSP並行処理能力が高いことからそう名付けているということです。

医療用R2R DACの採用

次にLP6Tiのキーとなるのは医療用R2R DACの採用です。R2R DACとはマルチビットDACとも呼ばれ、いわゆる1ビットのデルタシグマ方式ではなく、PCMの各ビットを直接変換できることから特にPCMの再生においてはデジタルっぽさが少なくアナログライクで自然な音質に優れていると言われている方式です。ただし最近では効率の良いデルタシグマ方式が席巻しているため、ほとんど採用されなくなっています。
しかしオーディオマニア向けのDACでは音が良いことからよく採用されるのですが、多くの場合はバーブラウン(TI)のPCM1704というDAC ICが使われます。ただしこのPCM1704はすでに生産が終了していて市場デッドストックの品が使われるのですが、L&PではこのPCM1704を超えるようなR2R DACを作りたかったので医療用R2R DACを採用したということです。

この医療用R2R DACはMRIなどに使われるもので、非常に高精度です。メーカーはADI製ですが、モデルはメーカー非公開品ということです。LP6TiではこのICを4基使用しています。このDAC ICの単価はわかりませんが、MRIは数億円の製品なのでそのDACも推して知るべしというところでしょうか。LP6Tiの価格の高さもちょっとわかります。
R2R DACは精度を高めるのが難しいのですが、このICはPCM1704に比べてはるかに高精度で変換誤差が非常に少なく、低歪みで温度差のばらつきも非常に少ないということです。高精度というのはICのDA変換のエラー自体が極めて少なくリニアリティ(信号の入出力の比例性が高い)があって温度変化に強いという意味です。

image2.jpg

これによって、LP6TiのダイナミックレンジはPCM1704UK(選別品)を32個搭載したDAPに相当し、SN比はPCM1704UKを8個搭載したDAPに相当するということです。また歪率でのTHDもPCM1704UK搭載DAPの約半分ということです。
つまりR2R DACというのは音は自然でよいが性能的には最新のデルタシグマDACに負けてしまいます。LP6Tiでは医療用の高精度DACを採用したことで、音の自然さも性能の高さも両立できたということですね。

そもそもオーディオ用DACでなくてもよいのか、と素人考えしてしまいますが、その点について出てくるのが先ほど説明したインテル製のFPGAです。このデジタルフィルターの性能が良いために、オーディオ用にこの医療用DACを採用できたということもあるということです。
つまりハードウエアとしてのキーはインテル製FPGAの採用とR2R DAC ICの採用で、面白いことにこの二つは関連しているということです。

購入者による音のカスタマイズが可能

LP6Tiのユニークな点のひとつはDAPに自分の音の好みを反映できるということです。カスタムイヤフォンのJust earっぽい感じのサービスです。ポータブルマニアなら電力消費はもっと多くてもよいから音質を上げてほしい、ということを思ったことのある人は多いと思いますが、それが実現できるというわけです。
これには大きく分けて2種類あって、カスタムリストの1-2はFPGAの設定で、こちらは一回程度は後で無料で変更してくれるということです。これはメーカーによるファームの直接の変更で、ユーザーが自分で変更できるわけではありません。

image3.png
カスタムリスト

1:音楽ジャンル(POP・アニソン・演歌・EDMなどなど)
2:ボーカル調整(ボーカルの遠さ近さ・横音場の広さ)


3-7の項目はハード設計を直接変えるために納品後の変更はできないということです。

3:ヘッドフォン回路オペアンプ選定(電力消費と音質の兼ね合い)
4:LPF入力電圧の調整(LPF電圧の上下で信号の歪みと動作時間の兼ね合い)
5:出力インピーダンスとZobelフィルター(出力インピーダンスの大きさと保護フィルター設定)
6:ヘッドフォン回路オペアンプ入力電圧と出力電圧(音質と電力消費の兼ね合い)
7:LPFの調整(クラシック音楽で効く信号と位相の兼ね合い)


このほかにもLP6TiではTC4チタニウムを採用したチタン製の筐体や、デジタルとアナログ別でそれぞれ高品質な電源部、高出力のヘッドフォンアンプの搭載なども特徴的です。4.4mmのバランス出力も備え、バランス出力では特に低能率のヘッドフォンでの性能を高め、シングルエンド出力では通常のヘッドフォンやイヤフォンに向けた設計をしているようです。コンデンサーなども軍用グレードの高品質品を使用しているとのこと。(オペアンプのExcelsというのは既製品オペアンプをL&Pがリブランドしたもののようですが、詳細は不明です)
このためにHD800用の専用ケーブルも開発しています。
音源はマイクロSD(FAT32のみ)と64GBの内蔵ストレージです。スペック上の再生時間は7時間となっています。

* HD800専用ケーブル(別売)について

IMG_5025_filtered[1].jpg

LP6TiではHD800を開発リファレンス機として使ったということもあり、LP6Tiの能力をフルに発揮するために高純度金メッキPCOCC銅線+らせん状の銀メッキという線材を用いた別売りのケーブルも用意されています。これはUltimate Zone U75というケーブルで4.4mmのバランス仕様です。

* インプレッション

試聴用にはマルチドライバー機のCampfire Audio Solaris(4.4mmバランス)とヘッドフォンにはHD800(6.3mm)を使いました。

IMG_5026_filtered[1].jpg IMG_5027_filtered[1].jpg

パッケージは木製の化粧箱が採用されていて、ふたをスライドして開ける方式です。開けると中にLP6Ti本体とUSBケーブル、ヘッドフォン用の標準端子アダプター、保証書が入っています。

本体はL&Pらしくいかにも精密機器というか精巧な金属の塊という感じのデザインですが、持ってみると意外に軽いのに驚きます。チタンは非常に硬くて薄く作ることができるので航空機の軽量化にもよく使われています。材質感はアルミとも違った硬質感がありますが、両側面は木製のプレートがはめ込まれていてよいアクセントになっています。

IMG_5029_filtered[1].jpg

上部には端子が並んでいます。ヘッドフォン用6.3mm、バランス用の4.4mm、ラインアウト専用(固定出力)の3.5mm端子があります。ボリュームはガード付きで適度なトルク感があるところが好印象です。

IMG_5030_filtered[1].jpg

側面には電源ボタン、再生、バック、先送りのハードボタンがあります。

IMG_5031_filtered[1].jpg

底面にはSPDIF出力のRCA端子、マイクロSDスロット、USB端子がありUSB DACとしても使えます。

IMG_5036_filtered[1].jpg

UIはタッチ操作が可能で独自OSらしいきびきびとしてとても反応が速く感じられます。
設定項目としては基本的なリピートなどの再生設定、グライコ的なEQ設定(プリセットもあり)、またかなり詳細な音質に関する設定があります。デジタルフィルター設定ではおなじみのSLOW/FAST roll-offなどのほかに低遅延やNON Over Samplingなども選択できます。
DACモードに並列モードとタイムシェアリングというのがありますが、並列モードはチャンネルごとにDAC二つが同時に動作、タイムシェアリングは1つのサンプリング周期内でDAC二つが交互に動作するということのようです。
またDCオフセットのオンオフはオンにすると直流信号の修正をするが電力消費がかさむという設定ということです。

IMG_5028_filtered[1].jpg

はじめにSolarisで4.4mmバランスで聴き始めました。ゲインは設定項目にあります。
音質はとても透明感が高くて美しく、かつパンチがあって歯切れが良いのが特徴的です。現行品と比べてみると、LP5 Ultraなみの据え置きに近いクラス上のアンプ性能と、L6のような洗練されたサウンドを併せ持つ感じですが、実のところ音質はずっと上のレベルにあることに驚きます。
静かな曲を聴くと消え入るような小さな細かい音の再現にも優れているのがわかります。透明感がとても高く、楽器の音が美しく聴こえます。またヴォーカルの声の艶やかさとリアルさも秀逸です。アコースティック楽器の音色がとても端正で澄み切った感じがするのはR2R DACの美点でもありますが、加えて回路の良さ、歪の少なさで雑味のない端正な音が出ているとも感じます。

ダイナミックレンジを強調しているだけあって、試聴曲のパイプオルガンの音域の広さは圧倒的です。Solarisのような空間再現性に長けたイヤフォンでは音の迫力に圧倒されます。低音域もかなり深く下に沈み込み、高域はどこまでも伸びていくかのようです。
パンチがあってロックやアニソンなど動的な曲での打楽器が気持ちよく、躍動感にたいへい優れています。かなりアンプのパワーがあってトランジェントにも優れているので歯切れが良いですね。おそらく電源の良さもあると思います。必要な時に素早く電流が出ている感じです。
またこうして歯切れの良さやパンチを強調してもきつくなりにくいのもR2R DACでPCM音源を聴くときの良い点だと思いますね。
かなりパワフルで高出力志向であることがうかがえます。どちらかというとヘッドフォン向けの設計がなされていると思います。

そこで次にヘッドフォンのHD800で聴いてみました。まずノーマルのケーブルを使って聴きます。
たしかにリファレンスとしてHD800を使ったというだけあってかなり良い組み合わせだと思いますね。HD800の独特の空間表現力がとてもよく再現され、自然で広い音空間が楽しめます。
また音の自然でリアルな再現力にちょっと驚かされます。アカペラコーラスなどはまさに耳元で本当に歌っているようなリアルさです。もちろんパワーもあって躍動感も楽しめます。HD800でパンチのあるベースや打ち込み音が出るのがちょっとすごいと思いますね。音の細かな残響、ホールトーンの表現も優れて聴こえる。
たしかにHD800とLP6Tiの組み合わせはR2R DACの面目躍如というか、リアルさがちょっとすごいレベルにあると思います。まさにHD800が生き生きとしているようで、おそらくLP6TiのDACもかなりハイエンドに近いようなレベルににあるのではないかとも思いますね。据え置きのヘッドフォンアンプでもなかなかこのレベルのDAC内蔵アンプはないように思います。

IMG_5039_filtered[1].jpg

HD800の別売りケーブルを付けてみると、冷っとしていた音にやや温かみが加わります。標準のケーブルが冷たく客観的な音だとすると、こちらはより音楽的な楽しみを持った音と言えるように思います。楽器音がより美しく、ベルの音も澄んで聞こえます。また楽器音もヴォーカルも滑らかで気持ちよいですね。標準ケーブルとは使い分けてみてもよいでしょう。

また平面型ヘッドフォンとしてHIFIMAN HE580を使ってみました。これはHD800よりもやや鳴らしにくいのですが、十分に音量は取れてよい音で鳴らすことができました。ただ相性としてはHD800のほうが良いと思います。

まとめ

音質の高さは圧倒的で、間違いなく現行DAPトップクラスの一つですが、LP6Tiではダイナミックレンジやトランジェントといった性能面の高さと、楽器の音色の良さといった感覚的な良さの両面に優れている点が素晴らしいですね。特に音再現の美しさ・細かさなどDACのレベルはポータブルを超えている感じで、もし試聴会に行くときはイヤフォンで日頃聞いているにしてもぜひHD800を持って行って試してみてください。

image1.jpg

カスタマイズは使用イヤフォンやヘッドフォン、また好みにもよるのでまず試聴したほうが良いでしょう。
わたしなら3はdefault、4は(2)、Zobelフィルターは3か4、出力インピーダンスは1か2、7は1か2、入力電圧は4か5、出力電圧は3か4にするかなと思います、まあオーダーできませんが(笑)考えるのもちょっと面白いですね。

LP6Tiはたしかに高価格も納得できるような高品質・高精度の設計と面白いカスタマイズのサービスですが、日本向けの数は少ないそうです。3/30(土曜日)にフジヤエービックで試聴会を行うそうなので興味のある方はどうぞ参加してこの音を確かめてください。

posted by ささき at 22:48| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする